JP3932827B2 - 積層型セラミック電子部品の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、積層型セラミック電子部品の製造方法に関するもので、特に、ビアホール導体および/またはスルーホール導体が設けられた積層型セラミック電子部品の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この発明にとって興味ある積層型セラミック電子部品として、たとえば多層セラミック基板がある。多層セラミック基板は、複数層のセラミック層をもって構成される積層構造を有する積層体を備えている。
【0003】
積層体には、配線導体が設けられ、これをもって所望の回路を構成するようにされている。配線導体としては、特定のセラミック層を貫通するように延びるビアホール導体やセラミック層の主面に沿って延びる導体膜等があり、導体膜としては、積層体の内部に形成される内部導体膜および積層体の外表面上に形成される外部導体膜がある。
【0004】
図4には、多層セラミック基板の従来の一般的な製造方法が示されている。
【0005】
図4(4)には、生の積層体1が示され、この生の積層体1を得るため、図4(1)ないし(3)にそれぞれ示した工程が順次実施され、また、生の積層体1を焼成する工程を経て、目的とする多層セラミック基板が得られる。
【0006】
まず、図4(1)を参照して、複数枚のセラミックグリーンシート2が作製され、特定のセラミックグリーンシート2には、ビアホール導体またはスルーホール導体を設けるための貫通孔3が形成される。
【0007】
なお、図4に示した例では、貫通孔3は、すべてのセラミックグリーンシート2に形成され、また、これら貫通孔3は、すべて、ビアホール導体を設けるためのものである。
【0008】
次に、図4(2)に示すように、貫通孔3に導電性ペースト4が充填される。
【0009】
次に、図4(3)に示すように、特定のセラミックグリーンシート2上に、たとえば導電性ペーストを印刷により付与することにより、導体膜5が形成される。
【0010】
なお、図4(3)に示した導体膜5の形成工程は、図4(2)に示した導電性ペースト4の充填工程の前に実施されることもある。
【0011】
次に、図4(4)に示すように、複数枚のセラミックグリーンシート2が積み重ねられ、積層方向にプレスされることによって、生の積層体1が得られる。この生の積層体1において、貫通孔3内の導電性ペースト4によって、ビアホール導体6が与えられる。
【0012】
この生の積層体1は、次いで、焼成されることによって、焼結後の積層体とされた後、この積層体の外表面上に、必要に応じて、外部導体膜が形成されたり、この外部導体膜にめっきが施されたり、必要なチップ部品が搭載されたりすることによって、多層セラミック基板が完成される。
【0013】
以上説明した製造方法では、セラミックグリーンシート2の1枚ごとに、貫通孔3を形成し、貫通孔3に導電性ペースト4を充填した後、複数枚のセラミックグリーンシート2を積み重ねることを行なっているので、セラミックグリーンシート2の積層枚数が増えるほど、貫通孔3の形成工程および導電性ペースト4の充填工程が増え、そのため、生の積層体1を得るために要する時間が長くなり、結果として、多層セラミック基板のコストアップの原因となる。
【0014】
また、セラミックグリーンシート2を積み重ねるにあたって、セラミックグリーンシート2相互間の位置合わせを厳密に行なわなければならない。なぜなら、複数枚のセラミックグリーンシート2の各々に形成された貫通孔3に充填された導電性ペースト4が一連のビアホール導体6を構成する場合には、セラミックグリーンシート2相互間の位置ずれは、ビアホール導体6における導通不良を招くからである。
【0015】
また、図4では図示しないが、貫通孔3に導電性ペースト4を充填するとき、通常、セラミックグリーンシート2の一方主面における貫通孔3の周囲にも導電性ペースト4が付与されてしまう。この貫通孔3の周囲の導電性ペースト4は、本来、不要な導体膜を形成することになるが、貫通孔3の周囲に配置される回路要素との短絡または電気的影響を避けるため、この不要な導体膜と周囲の回路要素との間に十分に広い間隔を設けておかなければならない。しかしながら、このような広い間隔は、多層セラミック基板の小型化を阻害してしまう。
【0016】
これらの問題を解決し得るものとして、特開平3−283595号公報には、生の積層体の一部となる、複数枚のセラミックグリーンシートを積み重ねた後、貫通孔となるべき両端が開口とされた全貫通通路を一括して形成し、この全貫通通路に導電性ペーストを充填する工程を採用することが記載されている。
【0017】
図4を用いてより具体的に説明すると、生の積層体1の下の部分を構成する4枚のセラミックグリーンシート2については、まず、導体膜5を形成した後、予め積み重ねてから、貫通孔3となるべき両端が開口とされた全貫通通路を一括して形成し、この全貫通通路に導電性ペースト4を充填する工程が採用される。
【0018】
他のセラミックグリーンシート2については、図4(1)ないし(3)に示すように、各セラミックグリーンシート2に貫通孔3を形成し、貫通孔3に導電性ペースト4を充填し、導体膜5を形成する工程が採用される。
【0019】
そして、前述のように予め積み重ねられた4枚のセラミックグリーンシート2上に、残りのセラミックグリーンシート2を積み重ね、プレスすることによって、生の積層体1を得るようにしている。
【0020】
この従来技術によれば、生の積層体の一部については、セラミックグリーンシートの1枚ごとに、貫通孔を形成し、貫通孔に導電性ペーストを充填し、その後、積み重ねる、というような工程を経る必要がないので、貫通孔形成工程および導電性ペースト充填工程の数を少なくすることができるとともに、積み重ねにおける位置ずれの問題を低減でき、それによるビアホール導体の導通不良の問題を低減できる。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平3−283595号公報に記載の技術は、図4(4)に示した生の積層体1の下の4枚のセラミックグリーンシート2のように、すべての貫通孔3が、セラミックグリーンシート2を積み重ねた状態において、両端が開口とされた全貫通通路を形成するものでなければ適用することが不可能である。
【0022】
そのため、多層セラミック基板の設計の多様化に対応することができない。
【0023】
逆に、この従来技術をあえて適用しようとすれば、多層セラミック基板の設計の自由度が阻害されるという問題を招く。
【0024】
また、この従来技術を適用できるようにするため、すべての貫通孔が全貫通通路を与えるような態様で生の積層体をより細分化することも考えられるが、この場合には、この従来技術の前述したような効果が減殺されてしまう。
【0025】
そこで、この発明の目的は、上述したような問題を解決し得る積層型セラミック電子部品の製造方法を提供しようとすることである。
【0026】
【課題を解決するための手段】
この発明は、複数枚のセラミックグリーンシートを作製する、グリーンシート作製工程と、特定のセラミックグリーンシート上に導体膜を形成する、導体膜形成工程と、特定のセラミックグリーンシートにビアホール導体またはスルーホール導体を設けるための貫通孔を形成する、貫通孔形成工程と、ビアホール導体またはスルーホール導体を設けるため、貫通孔に導電性ペースト充填する、導電性ペースト充填工程と、複数枚のセラミックグリーンシートが積層された生の積層体を作製する、積層体作製工程と、生の積層体を焼成する、焼成工程とを備える、積層型セラミック電子部品の製造方法に向けられるものであって、上述した技術的課題を解決するため、次のような構成を備えることを特徴としている。
【0027】
すなわち、積層体作製工程は、生の積層体より少ない数のセラミックグリーンシートがそれぞれ積層された少なくとも第1および第2の予備積層体を作製する工程と、導電性ペースト充填工程の後、少なくとも第1および第2の予備積層体を積み重ねる工程とを含むことを特徴としている。
また、貫通孔形成工程は、複数枚のセラミックグリーンシートを積層した状態で、貫通孔となるべき両端が開口とされた全貫通通路だけでなく、貫通孔となるべき一方端のみが開口とされた半貫通通路を形成する工程を含むものであって、当該貫通孔形成工程において、第1の予備積層体には、一方主面側に開口を向けた半貫通通路と他方主面側に開口を向けた半貫通通路とが形成され、第2の予備積層体には、全貫通通路が形成されることを特徴としている。
【0028】
また、導電性ペースト充填工程は、全貫通通路および半貫通通路に導電性ペーストを充填する工程を含むことを特徴としている。
【0029】
生の積層体は、その両端がともに外部に露出しない非貫通のビアホール導体を備えていてもよい。この場合、第1および第2の予備積層体は、非貫通のビアホール導体を外部に露出させ得るように生の積層体を分割した形態を有していることが好ましい。
【0030】
上述の場合、生の積層体を分割する態様によって、非貫通のビアホール導体のための貫通孔が、第1の予備積層体において、半貫通通路によって与えられることがある。
【0033】
また、導体膜の少なくとも一部は、予備積層体に備える複数枚のセラミックグリーンシートの間の特定の界面に沿って位置されていることがある。
【0034】
この発明において、貫通孔形成工程および導電性ペースト充填工程の前に、予備積層体を積層方向にプレスする工程をさらに備えることが好ましい。
【0035】
貫通孔形成工程は、好ましくは、レーザ光を照射することによって半貫通通路を形成する工程を含む。
【0036】
また、貫通孔形成工程および導電性ペースト充填工程は、外側に向く少なくとも1つのセラミックグリーンシートの主面をカバーフィルムによって覆った状態で実施されることが好ましい。
【0037】
上述のカバーフィルムは、グリーンシート作製工程において、セラミックグリーンシートをその上で成形するために用いたキャリアフィルムによって与えられてもよい。
【0038】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明の一実施形態による積層型セラミック電子部品の製造方法、より特定的には、多層セラミック基板の製造方法を説明するためのものである。
【0039】
図1(5)には、生の積層体11が示され、この生の積層体11を得るため、図1(1)ないし(4)に示した各工程が順次実施され、また、生の積層体11が焼成される工程を経て、目的とする多層セラミック基板が得られる。
【0040】
図1(5)と図4(4)とを比較すればわかるように、生の積層体11は、前述した生の積層体1と実質的に同じ構造を有している。これは、従来技術との対比で、この実施形態をより容易に説明するためのものである。
【0041】
生の積層体11は、複数枚のセラミックグリーンシート12をもって構成される積層構造を有している。また、生の積層体11は、配線導体として、特定のセラミックグリーンシート12を貫通するように延びるビアホール導体13、およびセラミックグリーンシート12間の特定の界面に沿って延びる導体膜14を備えている。いくつかのビアホール導体13のうち、ビアホール導体13(a)については、その両端がともに外部に露出しない非貫通のビアホール導体となっている。その他のビアホール導体13については、その一方端が外部に露出している。
【0042】
このような生の積層体11を得るため、次のような工程が実施される。
【0043】
まず、図1(1)を参照して、複数枚のセラミックグリーンシート12が作製される。
【0044】
次に、特定のセラミックグリーンシート12上に導体膜14が形成される。導体膜14の形成には、たとえば、銀、銅またはニッケル等を導電成分として含む導電性ペーストを用い、これをスクリーン印刷法等によって付与する方法、あるいは、蒸着法、スパッタリング法、フォトリソグラフィ法等が採用される。
【0045】
次に、複数枚のセラミックグリーンシート12は、2つのグループに分けられ、各グループについて積み重ねられ、それによって、図1(2)に示すように、第1および第2の予備積層体15および16がそれぞれ作製される。これら予備積層体15および16は、この段階で、積層方向にプレスされ、セラミックグリーンシート12相互間の密着性を高めておくことが好ましい。
【0046】
このようにして第1および第2の予備積層体15および16が得られたとき、導体膜14の少なくとも一部は、第1および第2の予備積層体15および16に備える複数枚のセラミックグリーンシート12の間の界面に沿って位置されていることになる。
【0047】
また、図1(2)に示すように、外側に向く少なくとも1つのセラミックグリーンシート12の主面を覆うように、すなわち、この実施形態では、予備積層体15および16の各々の両主面を覆うように、カバーフィルム17を配置した状態とすることが好ましい。
【0048】
カバーフィルム17は、予備積層体15および16を得た後、これを貼り付けるようにしても、あるいは、セラミックグリーンシート12を成形する際に用いたキャリアフィルムをそのままカバーフィルム17として用いるようにしてもよい。
【0049】
後者の場合、セラミックスラリーをキャリアフィルム上にシート状に付与することによって、セラミックグリーンシート12を成形し、このキャリアフィルムによって裏打ちされた状態で、セラミックグリーンシート12上に導体膜14が形成され、特定のセラミックグリーンシートについては、それを積み重ねることによって予備積層体15または16を構成した後も、キャリアフィルムが剥離されずに残され、それがカバーフィルム17として用いられる。
【0050】
次に、図1(3)に示すように、特定のセラミックグリーンシート12にビアホール導体を設けるための貫通孔18を形成する、貫通孔形成工程が実施される。この貫通孔形成工程は、複数枚のセラミックグリーンシート12を積層した状態にある第1および第2の予備積層体15および16の各々に対して一括して実施され、第1の予備積層体15については、両端が開口とされた全貫通通路19ばかりでなく、一方端のみが開口とされた半貫通通路20も形成され、第2の予備積層体16については、両端が開口とされた全貫通通路21のみが形成される。
【0051】
このような貫通孔形成工程は、カバーフィルム17によって覆われた状態で実施されるので、上述した全貫通通路19および21ならびに半貫通通路20は、カバーフィルム17をも貫通するように設けられる。したがって、カバーフィルム17の材質としては、このような穴あけに適したものであることが好ましく、たとえばポリエチレンテレフタレートが用いられる。
【0052】
貫通孔形成工程では、たとえば、レーザ(CO2 、YAG、エキシマ等)、パンチ金型、ドリリング等を適用することができる。しかしながら、特に半貫通通路20を形成するにあたっては、レーザ光を照射する方法を適用することが好ましい。なぜなら、半貫通通路20の場合には、その深さを正確に制御する必要があるが、レーザ光の照射によれば、このような深さの制御が比較的容易であるからである。
【0053】
第1の予備積層体15には、上方に開口を向ける半貫通通路20と下方に開口を向ける半貫通通路20とを形成する必要があるため、貫通孔形成工程にあたっては、上方からの穴あけと下方からの穴あけとが実施される。なお、全貫通通路19および21の形成は、通常、上下いずれかの方向からの穴あけを行なえば可能であるが、上方からと下方からの双方の穴あけを行なってもよい。
【0054】
次に、図1(4)に示すように、全貫通通路19および21ならびに半貫通通路20に導電性ペースト22を充填する、導電性ペースト充填工程が実施される。導電性ペースト22は、たとえば、導電成分として、銀、パラジウム、銅またはニッケル等を含むものが用いられる。
【0055】
この導電性ペースト22の充填にあたっては、たとえば、カバーフィルム17上に導電性ペースト22を付与し、スキージ(図示せず。)を作動させることによって、この導電性ペースト22を全貫通通路19および21ならびに半貫通通路20内に埋め込む方法、または、ディスペンサ(図示せず。)を用いて、導電性ペースト22を全貫通通路19および21ならびに半貫通通路20内へ注入する方法等を適用することができる。
【0056】
この導電性ペースト充填工程も、第1の予備積層体15については、上方からと下方からの各々について行なう必要がある。
【0057】
また、全貫通通路19および21に導電性ペースト22を充填しようとする場合、全貫通通路19および21の各々の一方開口側から真空吸引を実施しながら、他方開口側から導電性ペースト22を埋め込みまたは注入するようにすれば、全貫通通路19および21への導電性ペースト22の充填を能率的に行なうことができる。
【0058】
上述した導電性ペースト充填工程において、カバーフィルム17は、予備積層体15および16の表面が導電性ペースト22によって汚されることを防止するように作用している。
【0059】
導電性ペースト充填工程を終えた後、カバーフィルム17は、予備積層体15および16から剥離され除去される。
【0060】
次に、図1(5)に示すように、第1の予備積層体15と第2の予備積層体16とが互いに位置合わせされながら積み重ねられ、次いで積層方向にプレスされ、それによって生の積層体11が得られる。この生の積層体11において、貫通孔18内の導電性ペースト22によって、ビアホール導体13が与えられる。
【0061】
種々のビアホール導体13のうち、前述したように、ビアホール導体13(a)は、その両端がともに外部に露出しない非貫通のものである。生の積層体11を与える予備積層体15および16の分割の態様は、このような非導通のビアホール導体13(a)を外部に露出させ得るように選ばれる。
【0062】
なお、非貫通のビアホール導体13(a)を外部に露出させ得るような生の積層体11の分割態様として、図示した態様のほか、セラミックグリーンシート12の上から1枚目と2枚目との間で分割するようにしても、上から2枚目と3枚目との間で分割するようにしてもよい。
【0063】
次に、生の積層体11を焼成する、焼成工程が実施される。この焼成工程の結果、生の積層体11は、焼結された積層体となり、また、ビアホール導体13および導体膜14においても焼結が達成される。
【0064】
次に、必要に応じて、積層体の外表面上に、外部導体膜が形成され、めっき処理が施され、所望のチップ部品が搭載されることによって、多層セラミック基板が完成される。
【0065】
図2は、この発明の範囲外のものであるが、この発明においても採用し得る構成を一部に含む参考例を説明するための図1に相当する図である。図2において、図1に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明は省略する。なお、図2では図示されないが、この参考例においても、図1に示したカバーフィルム17が用いられてもよい。
【0066】
図1に示した実施形態の場合と同様、図2(1)に示すように、複数枚のセラミックグリーンシート12を作製する、グリーンシート作製工程と、特定のセラミックグリーンシート12上に導体膜14を形成する、導体膜形成工程とが実施される。
【0067】
次に、図2(2)に示すように、複数枚のセラミックグリーンシート12は、3つのグループに分けられ、第1のグループは、1枚のセラミックグリーンシート12によって構成され、第2のグループは、第1の予備積層体25となるように積層された2枚のセラミックグリーンシート12によって構成され、第3のグループは、第2の予備積層体26となるように積層された4枚のセラミックグリーンシート12によって構成される。
【0068】
第1および第2の予備積層体25および26の作製方法については、図1に示した実施形態における第1および第2の予備積層体15および16の作製方法と実質的に同様である。
【0069】
次に、図2(3)に示すように、貫通孔形成工程が実施される。最も上のセラミックグリーンシート12については、単に貫通孔18が形成されるだけである。第1の予備積層体25については、貫通孔18となるべき両端が開口とされた全貫通通路27および一方端のみが開口とされた半貫通通路28の双方が形成される。また、第2の予備積層体26については、両端が開口とされた全貫通通路29のみが形成される。
【0070】
これら全貫通通路27および29ならびに半貫通通路28の形成方法は、図1に示した実施形態における全貫通通路19および21ならびに半貫通通路20の形成方法と実質的に同様である。
【0071】
次に、図2(4)に示すように、導電性ペースト充填工程が実施される。すなわち、最も上のセラミックグリーンシート12の貫通孔18、第1の予備積層体25の全貫通通路27および半貫通通路28ならびに第2の予備積層体26の全貫通通路29の各々に、図1に示した実施形態の場合と同様の方法により、導電性ペースト22が充填され、それによって、ビアホール導体13またはその一部が設けられる。
【0072】
次に、図2(5)に示すように、最も上のセラミックグリーンシート17、第1の予備積層体25および第2の予備積層体26が積み重ねられ、次いで積層方向にプレスされることによって、生の積層体11が得られる。
【0073】
以後、図1に示した実施形態の場合と同様の工程を実施すれば、目的とする多層セラミック基板を得ることができる。
【0074】
図2に示した参考例を掲げた意義は、貫通孔18の形成の容易さや導電性ペースト22の充填の容易さ等を考慮して、得ようとする生の積層体11の分割の態様を種々の変更することができ、また、分割の結果、必ずしも予備積層体だけでなく、単に1枚のセラミックグリーンシートのみを取り扱うようにしてもよいことを明らかにすることにある。
【0075】
図3は、この発明の他の参考例を説明するための図1に相当する図である。図3において、図1に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明は省略する。なお、図3では図示されないが、この参考例においても、図1に示したカバーフィルム17が用いられてもよい。
【0076】
図3(4)に示すように、得ようとする生の積層体31は、上述した生の積層体11とは異なり、その両端がともに外部に露出しない非貫通のビアホール導体を備えていない。このような場合には、前述した実施形態の場合とは異なり、予備積層体を予め作製する必要はない。また、この参考例において得ようとする生の積層体31は、ビアホール導体13だけでなく、スルーホール導体32を備えている。
【0077】
まず、前述した実施形態および参考例の場合と同様、図3(1)に示すように、複数枚のセラミックグリーンシート12を作製する、グリーンシート作製工程と、特定のセラミックグリーンシート12上に導体膜14を形成する、導体膜形成工程とが実施される。
【0078】
次に、図3(2)に示すように、すべてのセラミックグリーンシート12が積み重ねられる。この状態において、積層方向にプレスし、セラミックグリーンシート12相互間の密着性を高めておくことが好ましい。
【0079】
次に、図3(3)に示すように、貫通孔18となるべき両端が開口とされた全貫通通路33および一方端のみが開口とされた半貫通通路34の双方が形成される。これら全貫通通路33および半貫通通路34の形成にあたっては、前述した第1の実施形態における全貫通通路19および半貫通通路20の形成方法と実質的に同じ方法を適用することができる。
【0080】
次に、図3(4)に示すように、全貫通通路33および半貫通通路34に導電性ペースト22が充填され、それによって、スルーホール導体32およびビアホール導体13が設けられた生の積層体31が得られる。
【0081】
その後、前述した実施形態および参考例の場合と同様の工程を経て、多層セラミック基板を得ることができる。
【0082】
以上、この発明を図示した実施形態に関連して説明したが、この発明の範囲内において、その他種々の変形例が可能である。
【0083】
たとえば、生の積層体におけるビアホール導体および/またはスルーホール導体ならびに導体膜の形成態様については、目的とする積層型セラミック電子部品に必要な設計に応じて、任意に変更することができる。
【0084】
また、生の積層体におけるセラミックグリーンシートの積層数についても、目的とする積層型セラミック電子部品の設計に応じて任意に変更することができる。
【0085】
また、この発明は、多層セラミック基板に限らず、複数層のセラミック層の間の特定の界面に沿って導体膜が形成され、また、特定のセラミック層を貫通するように延びるビアホール導体および/またはスルーホール導体を備えるものであれば、他の積層型セラミック電子部品に対しても適用することができる。
【0086】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、ビアホール導体またはスルーホール導体を設けるための貫通孔を形成するにあたって、複数枚のセラミックグリーンシートを積層した状態で、貫通孔となるべき両端が開口とされた全貫通通路だけでなく、一方端のみが開口とされた半貫通通路をも形成し、これら全貫通通路および半貫通通路に導電性ペーストを充填することによって、ビアホール導体またはスルーホール導体を設けるようにしているので、ビアホール導体およびスルーホール導体についての設計の多様化に対応しながら、一括して貫通孔を形成することができるセラミックグリーンシートの積層数を増加させることができる。
【0087】
したがって、ビアホール導体またはスルーホール導体を設けるための貫通孔形成工程および導電性ペースト充填工程の数を低減でき、そのため、積層型セラミック電子部品の能率的な製造が可能であり、また、セラミックグリーンシートの積み重ねにあたって、貫通孔の位置合わせ不良によるビアホール導体またはスルーホール導体の導通不良の問題を低減できる、といった貫通孔の一括形成による効果を、より複雑なビアホール導体またはスルーホール導体の形成状態を必要とする積層型セラミック電子部品の製造においても発揮させることができる。
【0088】
また、この発明によれば、得ようとする生の積層体より少ない数のセラミックグリーンシートが積層された少なくとも第1および第2の予備積層体を作製した上で、第1の予備積層体には、一方主面側に開口を向けた半貫通通路と他方主面側に開口を向けた半貫通通路とを形成し、第2の予備積層体には、全貫通通路を形成するようにしているので、積層型セラミック電子部品におけるビアホール導体の形成状態のより複雑化に対応することが可能となる。たとえば、得ようとする生の積層体において、その両端がともに外部に露出しない非貫通のビアホール導体を設けなければならない場合であっても、この非貫通のビアホール導体を外部に露出させ得るように生の積層体を分割した形態を有する第1および第2の予備積層体を作製すれば、このような非貫通のビアホール導体を、この発明による特徴的な一括形成によって設けることが可能になる。
【0089】
この発明において、貫通孔形成工程および導電性ペースト充填工程の前に、予備積層体を積層方向にプレスするようにすれば、これら貫通孔形成工程および導電性ペースト充填工程において、予備積層体に備える複数枚のセラミックグリーンシート相互間の密着性を高めることができ、これらセラミックグリーンシートが不所望にも互いに位置ずれすることを有利に防止することができる。
【0090】
また、少なくとも半貫通通路を形成するため、レーザ光を照射する方法を適用すれば、半貫通通路の深さを容易に制御することができるので、半貫通通路を適正な状態で形成することが容易になる。
【0091】
また、この発明において、貫通孔形成工程および導電性ペースト充填工程が、外側に向く少なくとも1つのセラミックグリーンシートの主面をカバーフィルムによって覆った状態で実施されると、外側に向くセラミックグリーンシートの主面を、不所望にも、導電性ペーストによって汚されてしまうことを防止することができる。
【0092】
上述のカバーフィルムを、セラミックグリーンシートの成形時に用いたキャリアフィルムによって与えるようにすれば、材料の節約とともに、カバーフィルムを貼り付けるための特別な工程を省略することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の一実施形態による積層型セラミック電子部品の製造方法に備える典型的な工程を順次図解的に示す断面図である。
【図2】 この発明の範囲外のものであるが、この発明において採用し得る構成を一部に含む参考例としての積層型セラミック電子部品の製造方法に備える典型的な工程を順次図解的に示す断面図である。
【図3】 この発明の他の参考例としての積層型セラミック電子部品の製造方法に備える典型的な工程を順次図解的に示す断面図である。
【図4】この発明にとって興味ある従来の積層型セラミック電子部品の製造方法に備える典型的な工程を順次図解的に示す断面図である。
【符号の説明】
11,31 生の積層体
12 セラミックグリーンシート
13 ビアホール導体
13(a) 非貫通のビアホール導体
14 導体膜
15,16,25,26 予備積層体
17 カバーフィルム
18 貫通孔
19,21,27,29,33 全貫通通路
20,28,34 半貫通通路
22 導電性ペースト
32 スルーホール導体
Claims (8)
- 複数枚のセラミックグリーンシートを作製する、グリーンシート作製工程と、
特定の前記セラミックグリーンシート上に導体膜を形成する、導体膜形成工程と、
特定の前記セラミックグリーンシートにビアホール導体またはスルーホール導体を設けるための貫通孔を形成する、貫通孔形成工程と、
ビアホール導体またはスルーホール導体を設けるため、前記貫通孔に導電性ペーストを充填する、導電性ペースト充填工程と、
複数枚の前記セラミックグリーンシートが積層された生の積層体を作製する、積層体作製工程と、
前記生の積層体を焼成する、焼成工程と
を備える、積層型セラミック電子部品の製造方法であって、
前記積層体作製工程は、前記生の積層体より少ない数の前記セラミックグリーンシートがそれぞれ積層された少なくとも第1および第2の予備積層体を作製する工程と、前記導電性ペースト充填工程の後、少なくとも前記第1および第2の予備積層体を積み重ねる工程とを含み、
前記貫通孔形成工程は、複数枚の前記セラミックグリーンシートを積層した状態で、前記貫通孔となるべき両端が開口とされた全貫通通路および一方端のみが開口とされた半貫通通路の双方を形成する工程を含むものであって、当該貫通孔形成工程において、前記第1の予備積層体には、一方主面側に開口を向けた前記半貫通通路と他方主面側に開口を向けた前記半貫通通路とが形成され、前記第2の予備積層体には、前記全貫通通路が形成され、
前記導電性ペースト充填工程は、前記全貫通通路および前記半貫通通路に導電性ペーストを充填する工程を含む、
積層型セラミック電子部品の製造方法。 - 前記生の積層体は、その両端がともに外部に露出しない非貫通のビアホール導体を備え、前記第1および第2の予備積層体は、前記非貫通のビアホール導体を外部に露出させ得るように前記生の積層体を分割した形態を有している、請求項1に記載の積層型セラミック電子部品の製造方法。
- 前記非貫通のビアホール導体のための前記貫通孔は、前記第1の予備積層体において、前記半貫通通路によって与えられる、請求項2に記載の積層型セラミック電子部品の製造方法。
- 前記導体膜の少なくとも一部は、前記予備積層体に備える複数枚の前記セラミックグリーンシートの間の特定の界面に沿って位置されている、請求項1ないし3のいずれかに記載の積層型セラミック電子部品の製造方法。
- 前記貫通孔形成工程および前記導電性ペースト充填工程の前に、前記予備積層体を積層方向にプレスする工程をさらに備える、請求項1ないし4のいずれかに記載の積層型セラミック電子部品の製造方法。
- 前記貫通孔形成工程は、レーザ光を照射することによって前記半貫通通路を形成する工程を含む、請求項1ないし5のいずれかに記載の積層型セラミック電子部品の製造方法。
- 前記貫通孔形成工程および前記導電性ペースト充填工程は、外側に向く少なくとも1つの前記セラミックグリーンシートの主面をカバーフィルムによって覆った状態で実施される、請求項1ないし6のいずれかに記載の積層型セラミック電子部品の製造方法。
- 前記グリーンシート作製工程は、前記セラミックグリーンシートをキャリアフィルム上で成形する工程を含み、前記カバーフィルムは、前記キャリアフィルムによって与えられる、請求項7に記載の積層型セラミック電子部品の製造方法。
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