JP3930358B2 - トンネルの構築方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、トンネルの構築方法に関するもので、特に、先行道坑を掘削してから本坑を掘削して本坑支保工構築する際に、上記先進導坑の支保工を取り壊す方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、図6に示すような、めがねトンネルと呼ばれる、隣接して並行する2本のトンネルを構築する際には、図7(a)〜(c)に示すように、中央導坑10を先行して掘削して支保工(ここでは、吹付けコンクリート)11を構築した後、上記中央導坑10の本坑20,30を掘削して本坑支保工21,31を構築する方法が行われている(図7では、本坑20のみを示した)。このとき、中央導坑10の支保工11があると本坑支保工21,31を構築することができないため、図7(b)に示すように、通常、本坑20,30の掘削を中断して、中央導坑10の支保工11を取り壊した後、本坑支保工21,31を構築し、その後、図7(c)に示すように、本坑20,30の掘削を再開するようにしている。
上記中央導坑10の支保工の取り壊し方法としては、従来、油圧ブレーカーあるいは油圧クサビなどを用いて吹付けコンクリート(支保工11)を破壊する割岩工法や、油圧圧砕機により圧砕する圧砕工法、ダイヤモンドカッターやワイヤソー、ウォータージェットなどにより切断する切断工法などが用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の工法では、上記のように、中央導坑10の支保工11を撤去してからでないと、本坑支保工21,31の構築ができないため、中央導坑10の支保工11の撤去作業中は、導坑上部に位置する長尺先受け工の施工などを先行させることができず、そのため、工期が長くなってしまうといった問題点があった。
また、本坑のインバート(底盤)が斜路の場合において、上下半同時並進にて掘削を行うと、下半20B,30Bが斜路のため、作業スペースが狭くなってしまうことや、下半20B,30Bの施工を上半20A,30Aの長尺先受け施工時に行うためには、インバート桟橋40が必要なことなどから、本坑20,30の上下半同時並進を効率的に行うことが困難であった。
また、上記取り壊し方法では、作業時の騒音や振動が大きく、地上の住宅への影響が懸念されることから、主に昼間での作業しかできないため、工期が更に長くなってしまうといった問題点があった。
そこで、中央導坑の支保工の取り壊しを本坑上半施工時に行うことのできる方法の開発が望まれている。
【0004】
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、先進導坑の支保工の取り壊しを本坑上半施工時に行って、長尺先受け工の施工ヤードを拡大することにより、トンネル掘削の工期を短縮することのできるトンネルの構築方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、中央導坑10の支保工11の、上記図6の丸印で示した本坑支保工21(または、本坑支保工31)の一部が建て込まれる位置、すなわち、支保工11の肩部11Kを早期に撤去することができれば、中央導坑10の支保工11を全て撤去することなく本坑支保工21,31を構築でき、中央導坑10の支保工11の撤去作業と並行して、本坑の掘削を進めることができるので、工期を大幅に短縮することが可能となることを見いだし、本発明に到ったものである。
すなわち、本発明の請求項1に記載のトンネルの構築方法は、トンネル本坑に先行し、その内部に本坑支保工の一部が建て込まれる位置に先進導坑を掘削して支保工を建て込む際に、上記支保工の本坑支保工の建て込み位置に対応する部位に、上記先進導坑の2枚の仕切り板を、上記先進導坑の周方向に所定の間隔を隔てて埋設しておき、本坑上半を掘削する際に上記仕切り板を撤去して、上記本坑支保工の建て込み部を開放して本坑支保工を建て込むようにしたもので、これにより、先進導坑の支保工全体を取り壊すことなく、早期に本坑の上半施工を行うことができるので、トンネル掘削の工期を大幅に短縮することが可能となる。
【0006】
請求項2に記載のトンネルの構築方法は、上記2枚の仕切り板に代えて、箱型の型枠を作製し、この型枠を上記本坑支保工の建て込み位置に予め埋設したことを特徴とする。
請求項3に記載のトンネルの構築方法は、本坑上半を掘削する際に、上記2枚の仕切り板または上記型枠を、油圧ジャッキを用いて先進導坑の支保工から本坑側に押出して撤去して、上記本坑支保工の建て込み部を開放するようにしたことを特徴とする。
【0007】
請求項4に記載のトンネルの構築方法は、隣接して並行する2本のトンネルを構築する際に、上記トンネル間に構築される中央導坑の支保工の、本坑支保工の建て込み部に2枚の仕切り板を互いに対向させて埋設したり、箱型の型枠を埋設したりしておき、本坑上半を掘削する際に、上記仕切り板あるいは型枠を撤去して上記本坑支保工の建て込み部を開放して本坑支保工を建て込むようにしたものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面に基づき説明する。
図1は本発明によるトンネルの構築手順を示すフローチャートで、本例では、図6に示すようなめがねトンネルを構築するときに構築される中央導坑を掘削する際に、まず、図2(a)に示すように、支保工(吹付けコンクリート)11の、左,右の本坑20,30の支保工21,31の建て込み部21m,31mに、予め複数の薄鉄板を箱型に組み立てて成る箱抜型枠12,12を埋設することにより、支保工11として、上記箱抜型枠12,12の間の上部の天井部11aと、箱抜型枠12,12の埋設された建て込み部と、箱抜型枠12,12の下部の側壁部11bとに分断された構造の支保工11を構築する(ステップS1)。
上記箱抜型枠12,12としては、上部(本坑20,30)側が開放されているが、上部側が閉じた形状のものを用いてもよい。
なお、箱抜型枠12,12を埋設する支保工11の建て込み部21m,31mの周方向の幅は、必ずしも、本坑20,30の支保工21,31の幅よりも大きくする必要はなく、後述する中壁コンクリート13と本坑支保工21,31とを一体化するためのコンクリートの吹付けや打設が行える幅があれば十分である。
また、上記箱抜型枠12,12は支保工11の吹付けコンクリート中に埋設されるので、上記支保工11は一体構造である。したがって、十分に地山を支持することが可能である。
中央導坑10の掘削完了後には、図2(b)に示すように、中央導坑10の中央部に中壁コンクリート13を打設する(ステップS2)。この中壁コンクリート13は、後述するように、中央導坑10の外側に構築される本坑支保工21,31と一体化されて、本坑支保工21,31の一部を構成するもので、本例では、上記中壁コンクリート13を打設する際に、上記箱抜型枠12,12が埋設された部分の直下に、上記箱抜型枠12,12を押出す、後述する油圧ジャッキを設置するための切り欠き部13n,13nが設けられている。
【0009】
次に、図3(a)に示すように、本坑20の上半20Aの掘削を行って、一次吹付けコンクリート21aを吹付けた後、図3(b)に示すように、上記切り欠き部13nに油圧ジャッキ14を設置して、油圧により、上記箱抜型枠12の下側を押して、箱抜型枠12を本坑20側に押出して撤去することにより、上記本坑支保工21の建て込み部を開放する(ステップS3)。
その後、図4(a)に示すように、上記切り欠き部13nに根巻きコンクリート21zを打設し(ステップS4)た後、上記一次吹付けコンクリート21aの内側に吹付けコンクリート21bを吹付け、本坑支保工21と上記中壁コンクリート13とを一体化した本坑支保工21の建て込みを行う(ステップS5)。
本坑支保工21の建て込み完了後には、図4(b)に示すように、本坑20の掘削を進めるとともに、支保工11の側壁部11bの撤去作業を行う(ステップS6)。上記支保工11の側壁部11bは、図6に示す本坑20のサイドライン部SLまで埋め戻し、その後、下半20Bを施工する。
上記支保工11の側壁部11bの撤去作業は、従来同様、主に昼間での作業となるが、本例では、本坑支保工21の建て込みが完了しているので、支保工11の撤去作業と本坑20の掘削作業とは別作業となる。したがって、一方で支保工11の撤去を行いながら、油圧ドリルジャンボ等の掘削機械50を配置して本坑20の掘削を行うことができる。更に、支保工11の撤去作業を本坑20の掘削作業に影響されず早期に完成させることができるため、上半20Aの施工ヤードの拡大により、掘削機械50や長尺先受け工のための削孔機械の増設(並設)が可能となるので、トンネル掘削の工期を短縮することができる。また、中央導坑10の支保工11を本坑上半にて撤去することができるので、下半20Bの斜路のスペース、及び、下半20Bの掘削ヤードが確保でき、上下半同時並進も可能となる。
なお、本坑30の掘削も、上記と同様にして行う。本坑20の掘削と本坑30の掘削とは同時に行ってもよいし、時期をずらして行ってもよい。
【0010】
このように、本実施の形態では、中央導坑10を掘削する際に、支保工11の、左,右の本坑20,30の支保工21,31の建て込み部21m,31mに、予め薄鉄板から成る箱抜型枠12,12を埋設しておき、中壁コンクリート13の打設後に本坑20の上半の掘削を行い、一次吹付けコンクリート21aの吹付けを行った後、油圧ジャッキ14により、上記箱抜型枠12を本坑20側に押出して撤去し、その後、根巻きコンクリート21zを打設した後、吹付けコンクリート21bを吹付けて本坑支保工21の建て込みを行うようにしたので、本坑支保工21を早期に建て込むことができ、トンネル掘削の工期を短縮することができる。
【0011】
なお、上記実施の形態では、めがねトンネルを構築する場合について説明したが、本発明はこれに限るものではなく、内部に本坑支保工の一部が建て込まれる位置に構築された先進導坑の支保工についても適用可能である。
また、上記例では、中央導坑10の支保工11の、本坑支保工21の建て込み部に箱抜型枠12,12を埋設して上記支保工11を、天井部11a−本坑支保工の建て込み部−側壁部11bに分離したが、図5(a)に示すように、上記箱抜型枠12に代えて、薄鉄板を積層した箱型部材12Aを埋設したり、図5(b)に示すように、本坑支保工の建て込み部21m,31mに、上記中央導坑10の周方向に所定の間隔を隔てて薄鉄板から成る2枚の仕切り板12a,12bを互いに対向させて埋設して上記支保工11を、天井部11a−本坑支保工の建て込み部−側壁部11bに分離しておき、本坑上半を掘削する際に上記箱型部材12Aあるいは仕切り板12a,12bを撤去して、上記本坑支保工の建て込み部21m,31mを開放して本坑支保工21を建て込むようにしてもよい。
なお、上記箱抜型枠12,箱型部材12A,仕切り板12a,12bの材料としては、薄鉄板に限らず、樹脂材料等の他の材料を用いてもよい。
【0012】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、内部に本坑支保工の一部が建て込まれる位置に構築された先進導坑の支保工の、本坑支保工の建て込み位置に対応する部位に、上記先進導坑の2枚の仕切り板を、上記先進導坑の周方向に所定の間隔を隔てて埋設しておき、本坑上半を掘削する際に上記仕切り板を撤去して、上記本坑支保工の建て込み部を開放して本坑支保工を建て込むようにしたので、早期に本坑の上半施工を行うことができ、トンネル掘削の工期を大幅に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態に係わるトンネルの構築手順を示すフローチャートである。
【図2】 本実施の形態に係わるトンネルの構築手順を示す図である。
【図3】 本実施の形態に係わるトンネルの構築手順を示す図である。
【図4】 本実施の形態に係わるトンネルの構築手順を示す図である。
【図5】 中央導坑支保工の他の構成を示す図である。
【図6】 ねがねトンネルの構築方法を示す図である。
【図7】 ねがねトンネルの構築手順を示す図である。
【符号の説明】
10 中央導坑、11 中央導坑の支保工、11K 中央導坑の肩部、
11a 中央導坑の支保工の天井部、11b 中央導坑の支保工の側壁部、
12 箱抜型枠、13 中壁コンクリート、13n 切り欠き部、
14 油圧ジャッキ、20,30 本坑、21,31 本坑支保工、
21a 一次吹付けコンクリート、21b 吹付けコンクリート、
21m,31m 本坑の建て込み部、21z 根巻きコンクリート。
Claims (4)
- トンネル本坑に先行し、その内部に本坑支保工の一部が建て込まれる位置に先進導坑を掘削して支保工を建て込む際に、上記支保工の本坑支保工の建て込み位置に対応する部位に、上記先進導坑の2枚の仕切り板を、上記先進導坑の周方向に所定の間隔を隔てて埋設しておき、本坑上半を掘削する際に上記仕切り板を撤去して、上記本坑支保工の建て込み部を開放して本坑支保工を建て込むようにしたことを特徴とするトンネルの構築方法。
- 上記2枚の仕切り板に代えて、箱型の型枠を作製し、この型枠を上記本坑支保工の建て込み位置に予め埋設したことを特徴とする請求項1に記載のトンネルの構築方法。
- 本坑上半を掘削する際に、上記2枚の仕切り板または上記型枠を、油圧ジャッキを用いて先進導坑の支保工から本坑側に押出して撤去して、上記本坑支保工の建て込み部を開放するようにしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のトンネルの構築方法。
- 上記先進導坑は、隣接して並行する2本のトンネルを構築する際に、上記トンネル間に構築される中央導坑であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のトンネルの構築方法。
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