JP3929917B2 - 真珠光沢液 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、低pHにおいても長期にわたり美しい真珠光沢を維持する真珠光沢液に関する。
【0002】
【従来の技術】
シャンプーやコンディショナーなどに代表される毛髪化粧料は、髪や頭皮を清潔に保つことや髪に滑らかさやまとまりを付与するという基本的な性能のほか、製品の外観も、消費者に様々なイメージを与えるため、商品としての観点からは重要な要素である。その一つとして、真珠光沢があり、高級感や効果感を演出する。パール化剤としては、一般に、様々な化合物の板状や針状のミクロ結晶粒子が使用されている。最も代表的なものとして、エチレングリコール脂肪酸エステルが挙げられ、製品中で直接冷却晶析させる方法や、前もって濃厚分散液を調製し、製品に配合する方法が用いられている。
【0003】
市販されているエチレングリコール脂肪酸エステルは、脂肪酸混合物とエチレングリコールから合成される。その中で、ステアリン酸を主成分とする脂肪酸のジエステルタイプが最も一般的であり、エチレングリコールジステアレート(略称:EGDS)として、広く用いられている。化粧品原料として用いられるEGDSとしては、その原料脂肪酸組成が、50重量%程度を占めるステアリン酸と、炭素数16以下の脂肪酸で構成され、約60℃の融点を有するものが一般的である。この脂肪酸組成は、融点が比較的低いため扱いやすいことや、結晶性の制御が比較的容易なことが利点であるが、高温でのパール外観の維持が難しく、特にpHが低い場合、パール外観の劣化が顕著となることが問題である。これは、パール化剤粒子(EGDS)の溶解や界面活性剤水溶液中への可溶化が促進され、エステル部分が加水分解を受けるためと思われる。
【0004】
また、長鎖脂肪酸グリコールエステルとグリセリルエーテルを併用した、パール化剤の分散安定性に優れた水性液状洗浄剤組成物が知られているが(特許文献1参照)、このもので使用しているEGDSも、一般化粧品原料として用いられるステアリン酸が50重量%程度のものであるため、低pH領域でのパール外観の劣化という問題は解消されていない。毛髪や頭皮のようなタンパク質を処理する剤の場合、目的とする効果がpHに依存する場合が多く、幅広いpH領域にわたり美しいパール外観を維持することは商品として重要である。
【0005】
【特許文献1】
特開2001-114652号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明は、低pHで美しいパール外観を長期にわたり維持できる真珠光沢液を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはEGDSの原料脂肪酸中に含まれるステアリン酸の比率を高めることで、低pHにおいてもパール外観を長期にわたり維持できることを見出した。しかしその一方で、ステアリン酸純度を上げすぎると結晶性の制御が難しくなり、十分なパール外観が得られなくなるという問題も生じた。そこで、本発明者らは、美しいパール外観と、低pHにおけるその維持を両立できるEGDS及びその濃縮分散液について検討した結果、一定範囲のステアリン酸純度を有するEGDSを用いるとともに、界面活性剤成分の一つとして特定のグリセリルエーテルを使用することで上記目的が達成されることを見出した。
【0008】
すなわち本発明は、次の成分(A)、(B)及び(C)
(A) 一般式(1)で表されるエチレングリコールジ脂肪酸エステル:5〜30重量%
【0009】
【化3】
【0010】
〔式中、R1は直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示す。ただし、その分布は、炭素数17の直鎖アルキル基が65重量%以上90重量%未満である。〕
【0011】
(B) 一般式(2)で表されるグリセリルエーテル:1〜15重量%
【0012】
【化4】
【0013】
〔式中、R2は炭素数4〜12の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示す。〕
【0014】
(C) 脂肪酸アミドプロピルベタイン:1〜30重量%
を水性媒体中に含有する真珠光沢液を提供するものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明で用いる成分(A)のエチレングリコールジ脂肪酸エステルは、エチレングリコールと、炭素数17の直鎖アルキル基が65重量%以上90重量%未満の脂肪酸より合成され、一般式(1)中のR1が上記分布を有するものであるが、当該アルキル基が65〜80重量%、特に65〜75重量%のものが好ましい。
【0017】
成分(A)は、美しい真珠様光沢、良好な安定性の点から、本発明の真珠光沢液中に5〜30重量%含有させるが、5〜25重量%、特に10〜25重量%含有させるのが好ましい。
【0018】
成分(B)のグリセリルエーテルは、一般式(2)においてR2がn-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基、イソデシル基、n-ラウリル基等の炭素数4〜12のアルキル基であるものが好ましく、更には炭素数4〜11、特に炭素数6〜10、とりわけ炭素数8のアルキル基であるものが好ましい。
【0019】
成分(B)のグリセリルエーテルは、2種以上を併用してもよく、美しい真珠様光沢、良好な安定性の点から、本発明の真珠光沢液中に1〜15重量%含有させるが、1〜10重量%、特に5〜10重量%含有させるのが好ましい。
【0020】
成分(C)の界面活性剤は、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤及び成分(B)以外の非イオン界面活性剤から選ばれる。アニオン界面活性剤としては、硫酸系、スルホン酸系、カルボン酸系のものが好ましく、例えばアルキル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩、スルホコハク酸アルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、高級脂肪酸塩等が挙げられ、なかでもポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、特に次の一般式(3)又は(4)で表されるものが好ましい。
【0021】
R3O(CH2CH2O)nSO3M (3)
R4OSO3M (4)
【0022】
〔式中、R3は炭素数10〜18のアルキル基又はアルケニル基を示し、R4は炭素数10〜18のアルキル基を示し、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アルカノールアミン又は塩基性アミノ酸を示し、nは重量平均で1〜5の数を示す。〕
【0023】
両性界面活性剤としては、酢酸ベタイン系、アミド酢酸ベタイン系、スルホベタイン系、アミドスルホベタイン系、ホスホベタイン系、アルキルアミンオキサイド、アミドアミンオキサイド等が挙げられる。このうち、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン等の脂肪酸アミドプロピルベタインが好ましい。
【0024】
成分(B)以外の非イオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル系、ポリオキシアルキレンソルビタンエステル系、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル系、ポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸エステル系、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル類、モノグリセライド系、ソルビタン脂肪酸エステル系、脂肪酸モノエタノールアミド系、脂肪酸ジエタノールアミド系、アルキルポリグリコシド等が挙げられる。
【0025】
これら成分(C)の界面活性剤は2種以上を併用してもよく、またその合計含有量は、美しい真珠様光沢、良好な安定性の点から、本発明の真珠光沢液中の1〜30重量%とされるが、1〜20重量%、特に1〜10重量%が好ましい。また、「アニオン界面活性剤」、「両性界面活性剤」及び「成分(B)以外の非イオン界面活性剤」のそれぞれの含有量は、上記合計含有量範囲内において、本発明の真珠光沢液中の0〜30重量%が好ましく、更には1〜30重量%、特に1〜20重量%、とりわけ1〜10重量%が好ましい。
【0026】
本発明の真珠光沢液は、例えば、成分(A)、(B)及び(C)を水性媒体に加え、成分(A)の融点以上の温度で撹拌して均一に溶融分散させた後、攪拌しながら一定速度で冷却し、成分(A)を析出させることにより調製することができる。水性媒体としては、水;エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール;水と低級アルコールの混合液が挙げられる。
【0027】
本発明の真珠光沢液は、低pH条件下でも、長期にわたって美しいパール外観を維持することができ、化粧料、特に酸性の毛髪化粧料の配合成分として有用である。
【0028】
本発明の毛髪化粧料は、通常の化粧料組成中に上記真珠光沢液を加えることにより調製することができ、その形態としては、シャンプー、ヘアリンス、ヘアコンディショナー等が挙げられる。
【0029】
本発明の毛髪化粧料を精製水で20重量倍に希釈した際の25℃におけるpHは、3〜5であるが、3.5〜4.5が好ましい。pHの調整には、有機酸又は無機酸が使用され、有機酸としてはヒドロキシ酸、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、ポリカルボン酸、アルキル硫酸、アルキルリン酸等が挙げられる。ヒドロキシ酸としては、グリコール酸、乳酸、オキシ酪酸、グリセリン酸、リンゴ酸、酒石酸等が、モノカルボン酸としては、酢酸等が、ジカルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタミン酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸等が、トリカルボン酸としては、クエン酸等が挙げられる。無機酸としては、塩酸、硫酸、リン酸等が挙げられる。これらのうち、有機酸が好ましく、なかでもα-ヒドロキシカルボン酸、特に乳酸、リンゴ酸が、つや、毛髪の柔軟性、まとまり性のうえで優れている。有機酸又は無機酸の含有量は、本発明の毛髪化粧料中の0.05〜10重量%が好ましく、特に0.1〜5重量%が好ましい。
【0030】
本発明の毛髪化粧料には、前述したのと同様の界面活性剤を、適宜選択して含有させることができる。界面活性剤の含有量は真珠光沢液中に含まれる分を合わせ、本発明の毛髪化粧料中の1〜40重量%が好ましく、更には5〜30重量%、特に10〜25重量%が好ましい。
【0031】
本発明の毛髪化粧料には、コンディショニング効果の向上のため、シリコーン類を含有させることができる。シリコーン類としては、ジメチルポリシロキサン(粘度5〜2000万mm2/s)、アミノ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、メチルフェニルポリシロキサン、脂肪酸変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、環状シリコーン、アルキル変性シリコーン等が挙げられ、特にジメチルポリシロキサンが好ましい。シリコーン類の含有量は、本発明の毛髪化粧料中の0.01〜10重量%が好ましい。
【0032】
本発明の毛髪化粧料には、カチオンポリマー(カチオン化セルロース、カチオン化グアーガム等)等の他のコンディショニング成分を含有させることができる。これらの含有量は、本発明の毛髪化粧料中の0.1〜5重量%が好ましい。
【0033】
本発明の毛髪化粧料には、その他、通常の毛髪化粧料に用いられる成分を目的に応じて含有させることができる。このような成分としては、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ソルビトール、パンテノール等の保湿剤;染料、顔料等の着色剤;メチルセルロース、ポリエチレングリコール、エタノール等の粘度調整剤;その他、植物エキス、防腐剤、殺菌剤、キレート剤、ビタミン剤、抗炎症剤、香料、紫外線吸収剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0034】
【実施例】
実施例1〜5及び比較例1〜6 真珠光沢液
30重量%ラウリン酸アミドプロピルベタイン水溶液16.7重量%、グリセリンイソデシルエーテル7.0重量%及び表1に示すステアリン酸純度(脂肪酸組成中のステアリン酸の比率)を有するエチレングリコールジステアレート(EGDS)を精製水に添加し、80℃で撹拌した。EGDSが完全に溶融し、均一に分散するのを確認した後、これを0.5℃/minの速度で撹拌冷却した。発熱及び粘度上昇を確認した温度に保持しつつ、更に30分間撹拌した。その後、撹拌しながら30℃まで冷却し、表2及び3に示す各種の真珠光沢液を得た。
【0035】
得られた真珠光沢液の外観を目視観察し、そのパール外観を以下の基準で評価した結果を表2〜3に併せて示す。
【0036】
・パール外観の評価基準
◎:非常に美しいパール外観。
○:美しいパール外観。
△:弱いパール外観。
×:白濁している。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】
試験例1 パール光沢に対するpHの影響
真珠光沢液として実施例2又は比較例4で得られた組成物を用い、下に示す組成においてリンゴ酸の量を調整することにより、種々のpHのシャンプー組成物を調製した。
【0041】
【0042】
このシャンプー組成物の製造直後のパール外観を前記と同様にして評価した。また、このシャンプー組成物を50℃1ヵ月保存したときの外観を観察し、製造直後からのパール外観の変化を、下記基準に従って評価した。
【0043】
・パール外観の変化(50℃1ヵ月後)
◎:変化は感じられない。
○:ほとんど変化はない。
△:やや劣化した。
×:明らかに劣化した。
【0044】
【表4】
【0045】
参考例1〜7 シャンプー
表5に示す組成のシャンプーを調製し、製造直後のパール外観と50℃1ヵ月保存後のパール外観の変化を前記と同様にして評価した。
【0046】
【表5】
【0047】
【発明の効果】
本発明の真珠光沢液は、低pHで美しいパール外観を長期にわたり維持でき、特に酸性の毛髪化粧料の配合成分として有用である。
Claims (1)
- 次の成分(A)、(B)及び(C)
(A) 一般式(1)で表されるエチレングリコールジ脂肪酸エステル:5〜30重量%
(B) 一般式(2)で表されるグリセリルエーテル:1〜15重量%
(C) 脂肪酸アミドプロピルベタイン:1〜30重量%
を水性媒体中に含有する真珠光沢液。
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