JP3928828B2 - エンジン始動兼アシスト装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンの始動およびエンジンへのトルクアシストを共通のモータで行うエンジン始動兼アシスト装置に係り、特に、前記モータが、実質的にブラシモータおよびブラシレスモータとして選択的に機能するエンジン始動兼アシスト装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
環境への配慮や省エネルギの観点から、駆動源としてエンジンおよびモータを搭載し、エンジンのトルク不足をモータで補うエンジンアシスト装置を備えた車両が、例えば特開平4−303030号公報に記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
トルクアシスト用のモータには大きな駆動トルクが要求されず、供給電流も比較的小さい一方、比較的長時間にわたって駆動されることから、無接点で耐久性に優れたブラシレスモータが利用される。これに対して、エンジンを始動するスタータには、駆動時間は短いものの大きな駆動トルクが要求されることから、大電流の制御に適したブラシモータが利用される。
【0004】
したがって、エンジンの始動およびエンジンへのトルクアシストを共通のモータで行おうとする際に、前記モータとしてブラシレスモータを採用すると、エンジン始動時に十分な駆動トルクが得られるようにモータ自身を大型化しなければならない。これに対して、前記モータとしてブラシモータを採用すると、モータを大型化することなく十分なトルクを得られる反面、車両走行中も常にブラシが摺動されるためにブラシ部分の劣化が急速に進んでしまう。
【0005】
本発明の目的は、上記した従来技術の問題点を解決し、エンジン始動時にはブラシモータとして機能し、それ以外のトルクアシスト時や発電時等にはブラシレスモータとして機能する発電電動装置を備えたエンジン始動兼アシスト装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、本発明では、ロータがエンジンのクランク軸に連結され、ステータが多相巻線を有するモータを具備し、前記モータでエンジン始動およびエンジンに対するトルクアシストを行うエンジン始動兼アシスト装置において、クランク軸の回転角度を検知して角度信号を発生する回転角度検知手段と、前記角度信号に基づいて、前記モータの各ステータコイルと電源ラインとの接続を電気的に切り換えるブラシレス式通電制御手段と、クランク軸の回転運動を伝達され、クランク軸の回転角度に応じて、各ステータコイルと電源ラインとの接触をブラシで機械的に切り換えるブラシ式通電手段と、前記ブラシレス式通電手段を付勢して前記モータを駆動するアシスト制御手段とを具備し、前記ブラシ式通電手段は、各ステータコイルと電源ラインとの接触を、エンジン始動時には保持し、エンジン始動時以外では解除するようにした。
【0007】
上記した構成によれば、エンジン始動時のように比較的大きな励磁電流を制御するタイミングでは、励磁すべきステータコイルの選択・切換がブラシ機構により行われるので、ブラシレス通電手段を構成する各スイッチング手段を大容量化する必要がない。また、エンジンアシスト時のようにエンジンが所定速度以上で回転しているタイミングでは、励磁すべきステータコイルの選択・切換がブラシレス通電手段により行われ、ブラシ機構を非接触状態に保つことができるので、ブラシの摩耗や劣化を防止できる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態であるエンジン停止始動制御装置が搭載されるスクータ型自動二輪車1の全体側面図である。
【0009】
車体前部2と車体後部3とは低いフロア部4を介して連結されており、車体の骨格をなす車体フレームは、概ねダウンチューブ6とメインパイプ7とから構成される。燃料タンクおよび収納ボックス(共に図示せず)はメインパイプ7により支持され、その上方にシート8が配置されている。
【0010】
一方、車体前部2では、ステアリングヘッド5に軸支されて上方にハンドル11が設けられ、下方にフロントフォーク12が延び、その下端に前輪13が軸支されている。ハンドル11の上部は計器板を兼ねたハンドルカバー33で覆われている。メインパイプ7の立ち上がり部下端にはブラケット15が突設され、このブラケット15には、リンク部材16を介してスイングユニット17が揺動自在に連結支持されている。
【0011】
スイングユニット17には、その前部に単気筒の2ストロークエンジン200が搭載されている。このエンジン200から後方にかけてベルト式無段変速機35が構成され、その後部に遠心クラッチを介して設けられた減速機構38に後輪21が軸支されている。この減速機構38の上端と前記メインパイプ7の上部屈曲部との間にはリヤクッション22が介装されている。スイングユニット17の上部には、エンジン200のシリンダヘッド32の上部から延出した吸気管23に接続された気化器24および同気化器24に連結されるエアクリーナ25が配設されている。
【0012】
ユニットスイングケース31の下部に突設されたハンガーブラケット18には、メインスタンド26が枢着されており、ベルト式無段変速機35の伝動ケースカバー36から突出したキック軸27にキックアーム28の基端が固着され、キックアーム28の先端にキックペダル29が設けられている。
【0013】
図2は、前記自動二輪車1の計器盤回りの平面図であり、ハンドルカバー33の計器盤90内には、スピードメータ91と共にスタンバイインジケータ56およびバッテリインジケータ76が設けられている。このスタンバイインジケータ56は、後に詳述するように、エンジンの停止始動制御中におけるエンジン停止時に点滅し、スロットルを開ければ直ちにエンジンが始動されて発進し得る状態にあることを運転者に警告する。バッテリインジケータ76は、バッテリ電圧が低下すると点灯してバッテリの充電不足を運転者に警告する。
【0014】
ハンドルカバー33には、アイドリングを許可または制限するためのアイドルスイッチ53およびスタータモータを起動するためのスタータスイッチ58が設けられている。ハンドル11の右端部には、スロットルグリップ92およびブレーキレバー93が設けられている。なお、左右のスロットルグリップの付根部分等には、従来の二輪車と同様にホーンスイッチやウインカスイッチを備えているが、ここでは図示を省略する。
【0015】
図3は、図1に破線丸印で示した、シート8前部のヒンジ部分の構造を模式的に示した図である。本実施形態では、シート8の裏面前方にはヒンジ部材81が固定されている。このヒンジ部材81には、垂直方向に沿って長手状の開口82が形成され、車両本体側に固定されたヒンジ軸85が当該長手状開口82を貫通し、シート8は当該ヒンジ軸85を中心に揺動自在かつ上下動自在に軸支される。前記ヒンジ部材81の裏面と対向する車両本体側には、押子83aを弾発するコイルスプリング83および着座スイッチ54が設けられている。
【0016】
このような構成において、運転者がシート8に着席していない非着座状態では、同図(a) に示したように、ヒンジ軸85が長手状開口82の下側端部に当接するまで、シート8がコイルスプリング83によって押し上げられるので、着座スイッチ54はオフ状態となる。
【0017】
これに対して、運転者がシート8に着席する着座状態では、同図(b) に示したように、シート8がコイルスプリング83の弾性力に抗して押し下げられるので、着座スイッチ54はオン状態となる。したがって、着座スイッチ54の状態を監視すれば、運転者が着座しているか否かを認識することができる。また、本実施形態ではシート8の前側に着座スイッチ54を設けたので、運転者が小柄であっても着座しているか否か確実に検知することができる。
【0018】
図4は、前記スロットルグリップ92の主要部の断面図であり、同図(b) は同図(a) のI−I線での断面図である。ハンドルパイプ181には、同図(a) に示したように、スロットルグリップ本体182が回動自在に挿貫され、スロットルグリップ本体182の周囲はグリップカバー183で覆われている。スロットルグリップ本体182は、その円周に沿ってフランジ部182aを具備し、同図(b) に示したように、このフランジ部182aにスロットルワイヤ185の一端185aが係止されている。スロットルグリップ本体182は、スプリング184の弾性力によって常にスロットル閉側へ弾発されており、運転者がスプリング184の弾性力に抗してスロットルグリップ本体182を開方向へ捻ると、スロットルワイヤ185が巻き込まれてスロットルが開く。
【0019】
また、本実施形態では、スロットルグリップが全閉状態で接点を閉じ(または開き)、スロットルグリップが予定角度だけ開いたときに接点を開く(または閉じる)スロットルスイッチ52が設けられている。前記スロットルスイッチ52は、スロットルが実際に開き始める前の遊び範囲の角度θ内で接点が開く(または閉じる)ように構成されている。このような構成によれば、スロットルを開くことなくスロットルスイッチ52をオンにすることができる。したがって、停車状態でもエンジンを運転者の意思で運転させておくことが可能になる。
【0020】
また、遊び角度範囲が終了して実際にスロットルが開き始める角度(>θ)へ突入する際は、スロットルスプリング(図示せず)の弾性力が新たに付加されるので、遊び角度範囲内のみでのスロットルスイッチ52の開閉が容易になる。
【0021】
図5は、図1におけるエンジン200をII−II線に沿って切断した断面図である。エンジン200は、左右水平方向に指向したクランク軸201を回転自在に支持する左右のクランクケース202L、202Rを合体したクランクケース202に、シリンダブロック203およびシリンダヘッド204が順次組合わされ、シリンダブロック203には、図示しない排気通路のほかシリンダボアに開口する掃気ポートから掃気通路205が形成されてクランクケース202のクランク室と連通している。
【0022】
シリンダヘッド204には、点火プラグ206が燃焼室に向け嵌着され、この点火プラグ206の露出部を除き、シリンダヘッド204およびシリンダブロック203はファンシェラウド207で覆われる。左クランクケース202Lは、ベルト式無段変速室ケースを兼ねており、左クランクケース202Lを貫通して延びたクランク軸201にはベルト駆動プーリ210が共に回転可能に設けられている。
【0023】
ベルト駆動プーリ210は、固定側プーリ半体210Lと可動側プーリ半体210Rとからなり、固定側プーリ半体210Lはクランク軸201の左端部にボス211を介して固着され、その右側に可動側プーリ半体210Rがクランク軸201にスプライン嵌合され、固定側プーリ半体210Lに接近・離反することができる。両プーリ半体210L、210R間にはVベルト212が挟まれて巻き掛けられる。
【0024】
可動側プーリ半体210Rの右側ではカムプレート215がクランク軸201に固着されており、その外周端に設けたスライドピース215aが、可動側プーリ半体210Rの外周端で軸方向に形成したカムプレート摺動ボス部210Raに摺動自在に係合している。可動側プーリ半体210Rのカムプレート215側側面は、カムプレート215側に向けてテーパしており、同テーパ面内側にカムプレート215に挟まれてドライウェイトローラ216が収容されている。
【0025】
したがって、クランク軸201の回転速度が増加すると、可動側プーリ半体210Rとカムプレート215間にあって共に回転するドライウェイトローラ216が、遠心力により遠心方向に移動し、可動側プーリ半体210Rは同ドライウェイトローラ216に押圧されて左方に移動して固定側プーリ半体210Lに接近し、両プーリ半体210L、210R間に挟まれたVベルト212を遠心方向に移動させ巻き掛け径を大きくするように構成されている。かかるベルト駆動プーリ210に対応して、後方の図示しないベルト被動プーリにVベルト212が巻き掛けられて、動力が自動調整されて後方の減速機構等に遠心クラッチを介して伝達され、後輪を駆動する。
【0026】
かかるベルト式無段変速機室を左側から覆う伝動ケースカバー220は、前方のベルト駆動プーリ210から後方に延出して覆っており、前寄りに前記キック軸27が回動自在に貫通支持されており、同キック軸27の内側端部には駆動ヘリカルギヤ222が嵌着され、リターンスプリング223により付勢されている。そして伝動ケースカバー220の前部内面には、クランク軸201と同軸に摺動軸224が回転かつ軸方向の摺動可能に支持されており、同摺動軸224には被動ヘリカルギヤ225が形成されて前記駆動ヘリカルギヤ222と噛合すると共に、右端にはラチェットホイール226が固着され、全体がフリクションスプリング227により左方に付勢されている。
【0027】
一方、クランク軸201側のボス211には、ラチェットホイール226に対向してラチェットが形成されており、両者は摺動軸224の摺動で接離可能である。したがって、前記キックペダル29が踏み込まれ、キック軸27がリターンスプリング223に抗して回転すると、キック軸27と一体に駆動ヘリカルギヤ222が回転して、これと噛合する被動ヘリカルギヤ225が摺動軸224と一体に回転しながらフリクションスプリング227に抗して右方に摺動して、ラチェットホイール226がボス211のラチェットと噛み合ってクランク軸201を強制的に回転させエンジン200を始動することができる。
【0028】
一方、右クランクケース202Rは、クランク軸201を回転自在に支持する主軸受209の右側に略円筒状をなして延出しており、その中心軸にクランク軸201が突出している。この右クランクケース202Rの円筒内には、アシストモータとしての機能と、スタータモータとしての機能と、ACジェネレータ(ACG)としての機能とを組み合わせたアスシト兼始動兼発電装置(以下、単に発電電動装置と表現する場合もある)250が配設されている。
【0029】
クランク軸201の先端テーパ部にはインナーロータ(回転内磁型ロータ)251が欺台され、ナット253で固着されて一体に回転する。インナーロータ251の外周面には6か所の断面円弧状溝が形成され、各溝にネオジューム鉄ボロン製のマグネット271が嵌着されている。
【0030】
インナーロータ251の外周囲に配設されるアウターステータ270は、その外周縁部をクランクケース202の円筒壁202aにボルト279により螺着されて支持される。アウターステータ270のステータコアは、薄鋼板を積層してなり、外周縁の円環状部分から中心方向に延出した複数のティースには、ステータコイルとして発電コイル272および始動コイル273が巻回されている。この発電コイル272と始動コイル273とは、クランク軸方向の内側に偏らせてティースに巻き付けており、軸方向外側への突出量を小さくしている。
【0031】
一方、クランクケース202の円筒壁202a内を軸方向内側へ外側に比べ大きく突出した発電コイル272と始動コイル273とは、環状をなしてその内側に内空間を形成しており、同内空間に整流ブラシ機構263が構成されている。同内空間においてクランク軸201に貫通されたブラシホルダ262は、クランク軸201に対して周方向の相対的な回転を禁止し軸方向の摺動のみを許して嵌合されており、インナーロータ251との間にスプリング274が介装されてブラシホルダ262は軸方向内側へ付勢されている。
【0032】
ブラシホルダ262の内側面には、複数の所定箇所にブラシ261がスプリングに付勢されて突出している。このブラシホルダ262の内側面に対向して整流子ホルダ265が、中央をクランク軸201に貫通されて外周縁を前記軸方向内側へ大きく突出した発電コイル272と始動コイル273の部分に固定支持されている。
【0033】
整流子ホルダ265のブラシホルダ262に対向する面の所定箇所には整流子片267が同心円状に配設されている。固定された整流子ホルダ265に対してクランク軸201と共に回転するブラシホルダ262が離接し、接近したときはブラシ261が所要の整流子片267に接触する。
【0034】
ー方、インナーロータ251のクランク軸方向外側は、クランク軸201の先端に螺合されたナット253の周囲を覆う内円筒部231と、その外側を覆う同心の外円筒部232とが軸方向外方に延出しており、ここにガバナ機構230が構成される。すなわち、外円筒部232は、内周面にテーパが形成されてガバナアウタを構成しており、内円筒部231の外周に軸方向に摺動自在にガバナインナ233が嵌合され、ガバナインナ233と外円筒部232との間にガバナウエイトであるボール234が介装されている。
【0035】
このガバナ機構230の軸方向に摺動するガバナインナ233に一端を固着された連結軸235がインナーロータ251をクランク軸201と平行に貫通し、先端をブラシホルダ262に嵌着している。連結軸235は、ガバナインナ233とブラシホルダ262とを連結して互いに一体としてクランク軸方向に移動できるようにしている。
【0036】
クランク軸201が停止しているときは、ブラシホルダ262がスプリング223の付勢力により軸方向内方に移動していてブラシ261が整流子片267に接触する。したがって、バッテリから電流が供給されるとブラシ261と整流子片267との接触を経て始動コイル273に流れインナーロータ251に回転トルクを生じ、クランク軸201を回転させてエンジン200を始動させることができる。すなわち、電動装置250は始動コイル273をステータコイルとするブラシモータとして機能する。
【0037】
そして、機関回転数が上がると遠心力によりボール234が外円筒部232のテーパ内面を外周方向に移動することでガバナインナ233を軸方向外方へ摺動させ、連結軸235を介して一体にブラシホルダ262も軸方向外方に移動し、所定回転数を越えるとブラシ261が整流子片267から自動的に離れ、以後は発電コイル272によりバッテリへの充電がなされる。すなわち、電電動装置250は始動コイル273をステータコイルとするブラシレスモータとして機能する。
【0038】
上記ガバナ機構230を構成する外円筒部232の端縁部にクランク角検出用の円環板状のロータ240が、その内周縁を嵌着して一体に設けられており、ロータ240の外周縁に近接して角度センサ49が所定位置に配設されている。クランク軸201とインナーロータ251を介して一体に回転するロータ240の外周縁に形成された刻みを角度センサ49が検出してクランク角を判断する。円環板状のロータ240は、アウターステータ270の発電コイル272および始動コイル273を外側から覆っている。そして、ロータ40の軸方向外側にエンジン強制空冷用のファン部材280が一体に設けられている。
【0039】
ファン部材280は、その中央円錐部280aの裾部分をボルト246によりインナーロータ251の外円筒部232に固着されており、その外周に設けられたファン280bはロータ240より外側方に立設するような構造となっている。ファン部材280はファンカバー281で覆われている。
【0040】
本実施形態に係る車両用発電電動装置は以上のように構成され、インナーロータ251の軸方向内側に整流ブラシ機構263を配設し、軸方向外側には整流ブラシ機構263と切り離してガバナ機構230を配設したので、クランク軸外方向への膨出量が小さく抑えられる。
【0041】
また、アウターステータ270のステータコアのヨークに巻回される発電コイル272および始動コイル273の巻回状態が軸方向内側に偏って外側への突出量を小さくしているので、その外側のロータ240やファン部材280を軸方向外側に位置させずにすみ、クランク軸外方向への膨出量をより一層小さく抑えることができる。
【0042】
ファン280bの回転によりファンカバー281の外気吸入口281aから導入された外気は、中央円錐部280aに沿って外周に広がるが、ロータ240が導入空気を遮断して発電電動装置250側への侵入を防止しているので、発電電動装置250よりさらに奥側(軸方向内側)にある整流ブラシ機構263には外気が侵入しにくく、したがって外気に含まれる塵埃の影響を整流ブラシ機構263が受けることを防止している。
【0043】
図6は、上記のクランク軸201を直接回転させる発電電動装置250を備えたエンジン200における始動停止制御システムの全体構成を示したブロック図であり、前記と同一の符号は同一または同等部分を表している。
【0044】
本実施形態のエンジン停止始動システムは、アイドリングが制限される動作モードと許可される動作モードとを備えている。さらに具体的にいえば、車両を停止させるとエンジンが自動停止し、停止状態でスロットルグリップが操作されるとエンジンを自動的に再始動して車両を発進させる“停止発進モード(アイドリング制限モード)”と、エンジン始動時の暖気運転等を目的としてアイドリングを許可する“始動モード(アイドリング許可モード)”とを備えている。
【0045】
エンジン200のクランク軸201には、これと同軸状に前記発電電動装置250が連結されている。発電電動装置250は、アシストモータ部70と、スタータモータ部71と、ACジェネレータ(ACG)部72とによって構成される。ACジェネレータ部72による発電電力は、レギュレータ・レクティファイア67を介してバッテリ68に充電される。前記バッテリ68は、スタータリレー62が導通されるとスタータモータ部71へ駆動電流を供給すると共に、メインスイッチ73を介して各種の一般電装品74および主制御部60等に負荷電流を供給する。
【0046】
前記主制御装置60には、エンジンの回転角度を検知する角度センサ49と、スロットル開度を検知するスロットルセンサ50と、エンジン回転数Neを検知するNeセンサ51と、スロットル開度が予定開度を越えると接点を閉じるスロットルスイッチ52と、エンジン200のアイドリングを許可または制限するアイドルスイッチ53と、運転者が運転席に着座すると接点を閉じる着座スイッチ54と、車速を検知する車速センサ55と、後述する停止発進モードでの停車中に点滅するスタンバイインジケータ56と、前照灯69を点灯/消灯させるための前照灯スイッチ57と、発電電動装置250のスタータモータ部71を駆動してエンジン200を始動するためのスタータスイッチ58と、ブレーキ操作に応答して接点を閉じるストップスイッチ59と、バッテリ68の電圧が予定値(例えば、10V)以下になると点灯して充電不足を運転者に警告するバッテリインジケータ76とが接続されている。
【0047】
さらに、前記主制御装置60には、点火プラグ206を点火させる点火制御装置(イグニッションコイルを含む)61と、前記スタータモータ部71に電力を供給するスタータリレー62の制御端子と、前記前照灯69に電力を供給する前照灯リレー63の制御端子と、キャブレタ66に装着されたバイスタータ65に電力を供給するバイスタータリレー64の制御端子と、運転者がメインスイッチ73を遮断せずに車両から離れたり、前記前照灯69が自動消灯される前に警報音を発生して注意を促すブザー75とが接続されている。
【0048】
図7は、前記主制御装置60の構成を具体的に示したブロック図であり、前記と同一の符号は同一または同等部分を表している。なお、図8には主制御装置60の主要動作を一覧表として示している。
【0049】
動作モード切換部300は、当該エンジン停止始動制御装置の動作モードを、アイドルスイッチ53の状態および車両の状態に応じて、アイドリングを許可する前記“始動モード”およびアイドリングを制限する前記“停止発進モード”のいずれかに切り換える。
【0050】
この動作モード切換部300では、前記アイドルスイッチ53の状態信号が動作モード信号出力部301およびインバータ302に入力される。アイドルスイッチ53の状態信号は、オフ状態(アイドリング制限)では“L”レベル、オン状態(アイドリング許可)では“H”レベルを示す。インバータ302は、アイドルスイッチ53の状態信号を反転して出力する。
【0051】
車速継続判定部303はタイマ303aを備え、予定速度以上の車速が予定時間以上にわたって検知されると“H”レベルの信号を出力する。AND回路304は、前記判定部303の出力信号とインバータ302の出力信号との論理積を動作モード信号出力部301へ出力する。
【0052】
前記動作モード信号出力部301は、前記メインスイッチ73がオンにされると、アイドリングが許可される“始動モード”を起動する。さらに、この“始動モード”時にAND回路304の出力が“H”レベルになる、すなわちアイドルスイッチ53がオフにされて予定速度以上の車速が予定時間以上にわたって検知されると、動作モードを前記“始動モード”から、アイドリングが制限される“停止発進モード”へ移行する。さらに、この“停止発進モード”においてアイドルスイッチ53が再びオンにされると、動作モードを“停止発進モード”から“始動モード”へ移行する。この動作モード信号出力部301から出力される動作モード信号S301 は、“始動モード”中は“L”レベル、“停止発進モード”中は“H”レベルとなる。
【0053】
スタータリレー制御部400は、動作モードに応じて、所定の条件下で前記スタータリレー62を手動または自動的に起動する。このスタータリレー制御部400では、前記Neセンサ51の検知信号がアイドリング以下判定部401へ供給される。判定部401は、エンジン回転数が所定のアイドリング回転数(例えば、800rpm)以下であると“H”レベルの信号を出力する。AND回路402は、前記判定部401の出力信号と、前記ストップスイッチ59の状態信号と、前記スタータスイッチ58の状態信号との論理積を出力する。AND回路403は、前記AND回路402の出力信号と前記動作モード信号S301 の反転信号との論理積を出力する。
【0054】
AND回路404は、前記アイドリング以下判定部401の出力信号と、前記スロットルスイッチ52の状態信号と、前記着座スイッチ54の状態信号との論理積を出力する。AND回路405は、前記AND回路404の出力信号と前記動作モード信号S301 との論理積を出力する。OR回路406は、前記各AND回路403、405の論理和をスタータリレー62へ出力する。
【0055】
このような構成において、“始動モード”中は動作モード信号S301 が“L”レベルなのでAND回路403がイネーブル状態となる。したがって、エンジン回転数がアイドリング以下であり、かつストップスイッチ59がオン状態(ブレーキ操作中)のときにスタータスイッチ58が運転者によりオンされると、スタータリレー62が導通してスタータモータ部71が起動される。
【0056】
これとは逆に、“停止発進モード”中はAND回路405がイネーブル状態となる。したがって、エンジン回転数がアイドリング以下であり、着座スイッチがオン状態(運転者が運転席に着座中)でスロットルが開かれると、スタータリレー62が導通してスタータモータ部71が起動される。
【0057】
バイスタータ制御部500では、Neセンサ51からの出力信号がNe判定部501に入力される。このNe判定部501は、エンジン回転数が予定の設定回転数以上であると“H”レベルの信号を出力してバイスタータリレー64を閉じる。このような構成によれば、いずれの動作モードにおいても、エンジン回転数が予定の設定回転数以上であれば燃料を濃くすることができる。
【0058】
インジケータ制御部600では、Neセンサ51からの出力信号がNe判定部601に入力される。このNe判定部601は、エンジン回転数が設定回転数以下であると“H”レベルの信号を出力する。AND回路602は、前記着座スイッチ54の状態信号と前記Ne判定部601の出力信号との論理積を出力する。AND回路603は、前記AND回路602の出力信号と前記動作モード信号S301 との論理積をスタンバイインジケータ56に出力する。スタンバイインジケータ56は、入力信号が“L”レベルであると消灯し、“H”レベルであると点滅する。
【0059】
すなわち、スタンバイインジケータ56は“停止発進モード”中の停車時に点滅するので、運転者はスタンバイインジケータ56が点滅していれば、エンジンが停止していてもスロットルグリップを開きさえすれば直ちに発進できることを認識することができる。
【0060】
点火制御部700は、各動作モードごとに、所定の条件下で前記点火制御装置61による点火動作を許可または禁止する。この点火制御部700では、車速センサ55の検知信号が走行判定部701に入力される。前記走行判定部701は、検知信号に基づいて車両が走行状態にあると判断されると“H”レベルの信号を出力する。OR回路702は、前記走行判定部701の出力信号と前記スロットルスイッチ52の状態信号との論理和を出力する。OR回路703は、前記OR回路702の出力信号と前記動作モード信号S301 の反転信号との論理和を点火制御装置61へ出力する。点火制御装置61は、入力信号が“H”レベルであれば所定のタイミングごとに点火動作を実行し、“L”レベルであれば点火動作を中止する。
【0061】
このような構成によれば、始動モードでは動作モード信号S301 の反転信号が“H”レベルなので、OR回路703からは常に“H”レベルの信号が出力される。したがって、“始動モード”では点火制御装置61が常に点火動作を実行する。これに対して、停止発進モードでは、車両走行中であるか、あるいはスロットルが開かれていることを条件に点火動作が実行される。これとは逆に、停止状態であり、かつスロットルが閉じていれば点火動作が禁止される。
【0062】
前照灯/ブザー制御部800では、動作モードごとに、車両の走行状態や運転者の着座状態に応じて前照灯を自動的に点灯または消灯すると共に、運転者に種々の注意を促すための警告を、ブザー音として発する。
【0063】
非着座継続判定部801には着座スイッチ54の状態信号が入力される。非着座継続判定部801は運転者の非着座時間を計時する2つのタイマ8011、8012を備え、各タイマ8011、8012がタイムアウトすると、それぞれ“H”レベルの信号S8011、S8012を出力する。なお、本実施形態では各タイマ8011、8012が、それぞれ3秒および1秒でタイムアウトする。
【0064】
非点火継続判定部802は、エンジンの非点火時間を計時する2つのタイマ8021、8022を備え、非点火状態では直ちに“H”レベルの信号S8023を出力すると共に、各タイマ8021、8022がタイムアウトすると、それぞれ“H”レベルの信号S8021、S8022を出力する。なお、本実施形態では各タイマ8021、8022が、それぞれ3.5分および3分でタイムアウトする。
【0065】
AND回路812は、前記非着座継続判定部801の出力信号S8011と非点火継続判定部802の出力信号S8023との論理積を出力する。OR回路804は、前記非点火継続判定部802の出力信号S8021と前記AND回路812の出力信号との論理和を出力する。AND回路805は、前記OR回路804の出力信号と動作モード信号S301 との論理積をフリップフロップ810のリセット端子Rに出力する。
【0066】
AND回路807は、スロットルスイッチ52の状態信号と動作モード信号S301 との論理積を出力する。Ne判定部806にはNeセンサ51の出力信号が入力され、エンジン回転数が設定回転数以下であると“H”レベルの信号を出力する。AND回路808は、前記Ne判定部806の出力信号と動作モード信号S301 の反転信号との論理積を出力する。OR回路809は、各AND回路807、808の論理和をフリップフロップ810のセット端子Sに出力する。AND回路811は、フリップフロップ810のQ出力と前照灯スイッチ57の状態信号との論理積811を前照灯リレー63の制御端子へ出力する。前照灯リレー63は、“H”レベルの信号が入力されると前記前照灯69を点灯し、“L”レベルの信号が入力されると消灯する。
【0067】
このような構成によれば、始動モードでは動作モード信号S301 の反転信号が“H”レベルなのでAND回路808がイネーブル状態となる。したがって、エンジン回転数が設定回転数以上であれば、フリップフロップ810がセットされるので、前照灯スイッチ57がオンであれば前照灯が点灯する。
【0068】
一方、停止発進モードでは動作モード信号S301 が“H”レベルなのでAND回路805、807がイネーブル状態となる。したがって、OR回路804の出力が“H”レベルであればフリップフロップ810がリセットされて前照灯が自動的に消灯する。
【0069】
すなわち、停止発進モードにおける前照灯は、非点火状態がタイマ8021のタイムアウト時間(本実施形態では、3.5分)以上継続して出力信号S8021が“H”レベルになるか、あるいは非点火状態での非着座がタイマ8011のタイムアウト時間(本実施形態では、3秒)以上継続してAND回路812の出力信号が“H”レベルになると消灯される。
【0070】
発明者等の調査によれば、信号待ちや交差点内での右折待ちは30秒ないし2分程度であり、この時間を超える停車は信号待ちや右折待ち以外の停車、すなわち前照灯を点灯させておく必要のない停車状態である可能性が高い。したがって、本実施形態のように、非点火状態が予定時間(例えば3.5分)を超えるまでは前照灯を点灯させておくようにすれば、信号待ちや右折待ちのための停車状態では前照灯を点灯させ続ける事ができる。また、停車時間が3.5分を超えると自動消灯するので、バッテリの無駄な電力消費を抑える事ができる。
【0071】
さらに、停車後に運転者の非着座が検知された場合も信号待ちや右折待ち以外の停車である可能性が高い。但し、交差点での停車直後に運転者が車両を跨いだままの状態で一時的に立ち上がるような場合も経験的に多いため、非着座の検知と同時に自動消灯することは望ましくない。そこで、本実施形態では非点火状態での非着座時間を計時し、運転者が車両から離れたと推定される予定時間(本実施形態では3秒)の経過を条件に自動消灯するようにした。
【0072】
なお、この停止発進モード中の停車状態からスロットルが開かれれば、AND回路807の出力が“H”レベルとなってフリップフロップ810がセットされるので、前照灯が自動的に点灯する。
【0073】
前照灯/ブザー制御部800のAND回路813は、非着座継続判定部801の出力信号S8012、非点火継続判定部802の出力信号S8023、および動作モード信号S301 の論理積をブザー駆動部814へ出力する。AND回路815は、非点火継続判定部802の出力信号S8022、動作モード信号S301 、および前照灯スイッチ57の状態信号の論理積をブザー駆動部814へ出力する。
【0074】
ブザー駆動部814は、AND回路813の出力信号が“H”レベルになる、すなわち、停止発進モードにおいて非点火状態での非着座がタイマ8012のタイムアウト時間(本実施形態では1秒)以上継続すると、0.2秒間のオンと1.5秒間のオフとを繰り返すブザー駆動信号を出力する。なお、この際のブザー駆動信号は、メインスイッチ73が遮断されるか、あるいは運転者が再び着座するまで継続して出力される。
【0075】
一方、AND回路815の出力信号が“H”レベルになる、すなわち、停止発進モードにおいて前照灯スイッチ57がオン状態であり、かつ非点火状態がタイマ8022のタイムアウト時間(本実施形態では3分)以上継続すると、前記と同じブザー駆動信号を、今度はタイマ8141がタイムアウトするまでの予定時間だけ出力する。このようにすれば、ブザーを停止させるための操作が不要になる。
【0076】
本実施形態によれば、エンジンが自動停止された際に、メインスイッチが遮断されないまま1秒以上の非着座が検知されると、運転者がメインスイッチを切り忘れたまま車両から離れようとしているものと判断してブザー75が鳴動されるので、運転者はメインスイッチの切り忘れを認知できる。
【0077】
さらに、本実施形態によれば、前記停車時の自動消灯条件(非点火状態が3.5分以上)が成立する前(非点火状態が3分以上)にブザー75が鳴動されるので、運転者は前照灯が自動消灯される旨を事前に認識することができ、運転者の知らない間に自動消灯されてしまうことが防止できる。
【0078】
なお、上記の実施形態では、エンジンが自動停止された際に主電源が遮断されないまま1秒以上の非着座が検知されると、メインスイッチ73が遮断されるか、あるいは運転者が再び乗車するまでブザーを鳴動させ続けるものとして説明したが、例えば配達業務や集金業務等に用いられる場合のように、メインスイッチ73を遮断することなく運転者が車両から離れることを前提にしている場合には、予定時間の経過後にブザーが自動的に停止されるようにしても良い。
【0079】
さらに、上記の実施形態では、点火オフ状態や運転者の非着座が予定時間以上継続した際に前照灯を自動的に消灯するものとして説明したが、消灯する代わりに供給電流を減じて減光したり、あるいは前照灯を消灯し、その代わりにポジションランプを点灯するようにしても良い。
【0080】
図9は、本発明の他の実施形態における始動停止制御システムの全体構成を示したブロック図であり、前記と同一の符号は同一または同等部分を表している。本実施形態では、ACジェネレータ部72による発電電力が、レギュレータ・レクティファイア67を介して2つのバッテリ68A、68Bに充電されるようにしている。前記バッテリ68Aはエンジン始動専用であり、スタータリレー62が導通されると、スタータモータ部71へ駆動電流を供給する。前記バッテリ68Bは、メインスイッチ73を介して各種の電装品74および主制御部60等に負荷電流を供給する。
【0081】
このように、本実施形態ではバッテリ68Aがエンジン始動専用であり、その電力消費量は十分に小さく、常に満充電状態に維持されるので、バッテリ68Bの充電量とは無関係に常に良好なエンジン始動が可能になる。
【0082】
図10は、本発明の一実施形態であるエンジン始動兼アシスト装置として機能する前記発電電動装置250の主要部の構成を示したブロック図であり、前記と同一の符号は同一または同等部分を表している。
【0083】
発電電動装置250のモータMは、そのロータ(図示せず)がエンジン200のクランク軸201に連結されている。クランク軸201の回転角度は角度センサ49により検知されて主制御装置60へ通知される。モータMは、上記したようにステータコイルとして発電コイル272および始動コイル273を備えるが、ここでは、始動コイル273をステータコイルとして利用する際の動作に着目して説明する。
【0084】
ブラシ式通電制御手段902は、クランク軸201の回転運動を伝達され、クランク軸201の回転角度に応じて、モータMの各ステータコイル(始動コイル273)と電源ラインL1 との接触をブラシで機械的に切り換える。モータMの各ステータコイルと電源ラインとの接触は、図5に関して詳述したように、ガバナ機構230によりエンジン始動時には保持され、エンジン始動時以外では解除される。ブラシレス式通電制御手段901は、モータMの各ステータコイルと電源ラインL1 との接続を、主制御装置60からの制御信号に応答して電気的に切り換える。
【0085】
主制御装置60は、前記モータMが発電装置として機能するように前記ブラシレス式通電制御手段901を制御する発電制御部601と、前記モータMがエンジンアシスト装置として機能するように前記ブラシレス式通電制御手段901を制御するアシスト制御部602とを有する。
【0086】
前記アシスト制御部602は、エンジン200にトルクアシストが必要になると、クランク軸201の回転角度に応じて前記ブラシレス式通電手段901を制御してトルクアシストを実行する。この際、アシスト制御部602は、角度センサ49により検知されたクランク軸201の回転角度に基づいてモータMの励磁すべきステータコイルを選択すると共に、スロットルセンサ50によって検知されたスロットル開度に基づいて、その通電時間を決定する。ブラシレス式通電手段901は、前記アシスト制御部602によって選択されたステータコイルに対して、前記決定された通電時間だけバッテリ68から励磁電流を供給する。
【0087】
図11は、前記モータMとして単相6極モータを採用した一実施形態の回路構成を示した図であり、前記と同一の符号は同一または同等部分を表している。
【0088】
ブラシレス式通電手段901Aでは、2つのパワーFETを直列接続してなるFET対の6つが並列接続され、各FET対の共通接続部は、モータMの各ステータコイルL1〜L6の一端および整流子ホルダ265の各整流子片267に接続されている。整流子ホルダ265の環状の正極整流子片298は、スタータリレー62を介してバッテリ68の正極と接続され、環状の負極整流子片299は、バッテリ68の負極と直接接続されている。
【0089】
このような構成において、エンジン回転数すなわちクランク軸201の回転数が低ければ、上記したように、ガバナ機構230によってブラシホルダ262が整流子ホルダ265側へ押しつけられるので、クランク軸201の回転角度に応じたステータコイルの一端側の整流子片267と正極整流子片298、および当該ステータコイルの他端側の整流子片267と負極整流子片299とが、それぞれブラシホルダ262の各ブラシ261によって順次接続される。したがって、モータMは実質的にブラシモータとして機能することになる。
【0090】
一方、スタータによるエンジン始動が完了してクランク軸201の回転数が高くなると、ブラシホルダ262が整流子ホルダ265から離間される。ここで、主制御装置60のアシスト制御部602によるアシスト制御が開始されると、前記角度センサ49により検知されたクランク軸201の回転角度に応じたステータコイルにバッテリ68から励磁電流が選択的に供給されるように、ブラシレス通電手段901Aの各FETが、前記スロットルセンサ50により検知されたスロットル開度に応じたデューティー比でチョッピング制御される。なお、上記した単相6極モータ用のブラシレス式通電手段901Aによるインバータ動作は周知なので、その説明は省略する。
【0091】
本実施形態によれば、エンジン始動時のように比較的大きな励磁電流を制御するタイミングでは、ステータコイルへの給電がブラシ機構により行われるので、ブラシレス通電手段901Aの各FETを大容量化する必要がない。また、エンジンアシスト時のように比較的小さな励磁電流を制御するタイミングでは、ステータコイルへの給電がブラシレス通電手段901AのパワーFETにより行われ、ブラシ機構を非接触状態に保つことができるので、ブラシ261の摩耗や劣化を防止できる。
【0092】
さらに、一般的なブラシレスモータでは、その起動時に絶対角度を検知する必要があるために高精度の角度センサが必要となるが、本実施形態では、ブラシレスモータとして起動させる際にはロータが既に回転しているので厳密な角度検知が不要となり、角度センサに高精度が要求されない。このため、構成が簡単で安価な角度センサを用いることができる。
【0093】
図12は、前記モータMとして3相モータを採用した他の一実施形態の回路構成を示した図であり、前記と同一の符号は同一または同等部分を表している。
【0094】
ブラシレス通電手段901Bでは、2つのパワーFETを直列接続してなるFET対の3つが並列接続され、各FET対の共通接続部は、モータMの各ステータコイルL1〜L3の一端および整流子ホルダ265の各整流子片267と接続されている。環状の正極整流子片298はスタータリレー62を介してバッテリ68の正極と接続され、環状の負極整流子片299はバッテリ68の負極と直接接続されている。
【0095】
このような構成において、エンジン回転数すなわちクランク軸201の回転数が低ければ、上記したように、ガバナ機構230によってブラシホルダ262が整流子ホルダ265側へ押しつけられるので、クランク軸201の回転角度に応じた一のステータコイルの整流子片267と正極整流子片298、および他の一のステータコイルの整流子片267と負極整流子片299とが、それぞれブラシホルダ262の各ブラシ261によって順次接続される。
【0096】
一方、クランク軸201の回転数が高くなり、ブラシホルダ262が整流子ホルダ265から離間されると、前記検知されたクランク軸201の回転角度に応じて、所定のコイルにバッテリ68から励磁電流が供給されるように、ブラシレス通電手段901Bの各FETが、スロットル開度に応じたデューティー比でチョッピング制御される。なお、上記した3相モータ用のブラシレス式通電手段901Bによるインバータ動作も周知なので、その説明は省略する。
【0097】
本実施形態でも前記と同様に、エンジン始動時のように比較的大きな励磁電流を制御するタイミングでは、ステータコイルへの給電がブラシ機構により行われるので、ブラシレス通電手段901Bの各FETを大容量化する必要がない。また、エンジンアシスト時のように比較的小さな励磁電流を制御するタイミングでは、ステータコイルへの給電がブラシレス通電手段901BのパワーFETにより行われ、ブラシ機構を非接触状態に保つことができるので、ブラシ261の摩耗や劣化を防止できる。
【0098】
なお、上記した実施形態では、発電電動装置250がステータコイルとして発電コイル272および始動コイル273を備え、スタータモータ71としての機能は始動コイル273をステータコイルとするブラシモータにより達成し、アシストモータ70としての機能は始動コイル273をステータコイルとするブラシレスモータにより達成し、ACG72としての機能は発電コイル272をステータコイルとするブラシレスモータにより達成するものとして説明した。
【0099】
しかしながらが、発電電動装置250がアシストモータ70として機能していない車両走行中に、主制御部60がブラシレス通電手段901Bの各FETのスイッチングタイミングを制御して始動コイル273を発電コイルとして機能させれば、前記発電コイル272を省略することができる。このとき、主制御部60はバッテリ68の端子電圧を適宜の手法により検知し、発電電動装置250の出力電圧がバッテリ68の端子電圧を所定電圧だけ上回るように、前記各FETをチョッピング制御するパルス信号のデューティー比を制御する。
【0100】
次いで、図13を参照して前記アシスト制御部602によるアシスト制御方法を説明する。
【0101】
上記したように、エンジン停止始動制御装置を搭載した車両では、時刻t1 において運転者がスロットルグリップを開くと、前記発電電動装置250がスタータモータとして機能し、エンジンが始動される。その後、時刻t2 においてエンジン回転数Neがクラッチの接続回転数Ninまで上昇すると、車両が発進すると同時にアシスト制御部602がブラシレス式通電手段901の制御を開始して発電電動装置250によるエンジンアシストが開始される。この結果、駆動輪にはエンジンが発生するトルクTE と発電電動装置250が発生するトルクTM との和(TE +TM )が発生することになる。
【0102】
また、エンジン回転数がさらに上昇すると、エンジン自身が十分なトルクを発生することができるので、本実施形態では発電電動装置250によるアシスト量をエンジン回転数の上昇と共に漸次減少させ、エンジン回転数が予定の基準回転数Nref に達するとアシスト制御を終了させる。
【0103】
上記したように、本実施形態ではクラッチが接続されてからエンジンが十分なトルクを発生する基準回転Nref までトルクアシストが実行されるので、発進フィーリングの向上と省エネルギとを両立することができる。
【0104】
なお、上記した実施形態ではエンジン始動停止制御機能を備えた車両を例にして説明したが、従来のエンジン始動停止制御機能を備えない車両に適用する場合も、図14に示したように、エンジン回転数がクラッチの接続回転数Ninに達した時点からアシスト制御が行われるようにすることが望ましい。
【0105】
図15は、発電電動装置250に発生させるアシスト用の目標トルクTtag を、スロットル開度θthおよびエンジン回転数Neをパラメータとして示した図であり、目標トルクTtag はスロットル開度θthの増加と共に増加するように設定されている。
【0106】
発電電動装置250が発生するトルクTM は前記ブラシレス通電手段901の各FETをスイッチング制御するパルス信号のデューティー比に依存する。したがって、上記した目標トルクの代わりに、各FETをスイッチング制御するパルス信号のデューティー比を前記スロットル開度θthおよびエンジン回転数Neの関数として制御すれば、所望のエンジンアシストが可能になる。
【0107】
【発明の効果】
本発明によれば、エンジン始動時のように比較的大きな励磁電流を制御するタイミングでは、ステータコイルへの給電がブラシ機構により行われるので、スイッチング用のパワーFETを大容量化する必要がない。また、エンジンアシスト時のように比較的小さな励磁電流を制御するタイミングでは、ステータコイルへの給電がスイッチング用のパワーFETにより行われ、ブラシ機構を非接触状態に保つことができるので、ブラシの摩耗や劣化を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用したエンジン停止始動制御システムが搭載されるスクータ型自動二輪車の全体側面図である。
【図2】スクータ型自動二輪車の計器盤回りの平面図である。
【図3】シート前部のヒンジ部分の構造を模式的に示した図である。
【図4】スロットルグリップの主要部の断面図である。
【図5】図1のエンジンをII−II線に沿って裁断した断面図である。
【図6】始動停止制御システムの一例の全体構成を示したブロック図である。
【図7】主制御装置の機能を示したブロック図である。
【図8】主制御装置の主要動作を一覧表として示した図である。
【図9】始動停止制御システムの他の一例の全体構成を示したブロック図である。
【図10】本発明を一実施形態であるエンジン始動兼アシスト装置として機能する発電電動装置の主要部の構成を示したブロック図である。
【図11】単相6極モータへの適用例を示したブロック図である。
【図12】3相モータへの適用例を示したブロック図である。
【図13】アシスト制御方法の一例を示した図である。
【図14】アシスト制御方法の他の一例を示した図である。
【図15】発電電動装置によるアシスト量をスロットル開度およびエンジン回転数の関数として示した図である。
【符号の説明】
2…車体前部、3…車体後部、4…フロア部、6…ダウンチューブ、7…メインパイプ、8…シート、11…ハンドル、12…フロントフォーク、13…前輪、15…ブラケット、16…リンク部材、17…スイングユニット、18…ハンガーブラケット、21…後輪、22…リヤクッション、23…吸気管、24…気化器、25…エアクリーナ、26…メインスタンド、27…キック軸、28…キックアーム、29…キックペダル、200…エンジン、201…クランク軸、202…クランクケース、203…シリンダブロック、204…シリンダヘッド、206…点火プラグ、210…ベルト駆動プーリ、211…ボス、212…Vベルト、250…発電電動装置、251…インナーロータ、300…動作モード切換部、400…スタータリレー制御部、500…バイスタータ制御部、600…インジケータ制御部、700…点火制御部、800…前照灯/ブザー制御部
Claims (5)
- ロータがエンジンのクランク軸に連結され、ステータが多相巻線を有するモータを具備し、前記モータでエンジン始動およびエンジンに対するトルクアシストを行うエンジン始動兼アシスト装置において、
クランク軸の回転角度を検知して角度信号を発生する回転角度検知手段と、
前記検知された角度信号に基づいて、前記モータの各ステータコイルと電源ラインとの接続を電気的に切り換えるブラシレス式通電制御手段と、
前記クランク軸の回転運動を伝達され、クランク軸の回転角度に応じて各ステータコイルと電源ラインとの接触をブラシで機械的に切り換えるブラシ式通電手段と、
前記ブラシレス式通電手段を付勢して前記モータを駆動するアシスト制御手段とを具備し、
前記ブラシ式通電手段は、各ステータコイルと電源ラインとの接触を、エンジン始動時には保持し、エンジン始動時以外では解除することを特徴とするエンジン始動兼アシスト装置。 - 前記ブラシ式通電制御手段は、
ステータの各コイルおよび電源ラインと接続された各整流子片がクランク軸を中心に配置され、クランク軸に同期して回転する整流子ホルダと、
クランク軸の回転角度に応じたステータコイルの整流子片を電源ラインの整流子片と接続するブラシが、クランク軸を中心に配置されたブラシホルダと、
前記整流子ホルダの整流子片とブラシホルダのブラシとを、クランク軸が所定速度未満で回転している間は弾性力で接触させ、クランク軸が所定速度以上で回転すると遠心力で前記弾性力に抗して離間するガバナ機構を具備したことを特徴とする請求項1に記載のエンジン始動兼アシスト装置。 - 前記ブラシレス式通電手段を付勢して前記モータを発電機として機能させる発電制御手段をさらに具備したことを特徴とする請求項1または2に記載のエンジン始動兼アシスト装置。
- エンジン回転数を検知する手段と、
スロットル開度を検知する手段とをさらに具備し、
前記アシスト制御手段は、モータがアシスト用に発生するトルクを、前記検知されたエンジン回転数およびスロットル開度の関数として制御することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のエンジン始動兼アシスト装置。 - スロットルを開閉するスロットルグリップが全閉かつ停車状態ではエンジンを停止させ、スロットルグリップが全閉以外でエンジンを始動する、ベルト式無段階変速機および遠心クラッチを搭載した車両に適用されることを特徴とする請求項4に記載のエンジン始動兼アシスト装置。
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