JP3832694B2 - 車両用発電装置 - Google Patents

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  • Control Of Temperature (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、排気熱を利用して熱起電力を発生する熱電変換素子を利用した車両用発電装置に係り、特に、熱電変換素子の温接点の温度を適宜に制御できるようにした車両用発電装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
環境への配慮や省エネルギの観点から、特にアイドリング時の排気ガスや燃料消費を抑えるために、車両を停止させるとエンジンが自動停止し、停止状態からスロットルグリップが捻られて発進が指示されると、エンジンを自動的に再始動して車両を発進させるエンジン停止始動制御装置が、特開昭63−75323号公報に記載されている。このようなエンジン停止始動制御装置を搭載した車両では、エンジン始動が頻繁に行われて電力消費量が増えるため、バッテリの充電量を常に十分に保っておくことが望ましい。
【0003】
一方、従来から用いられている、エンジン回転を電気エネルギに変換するオルタネータとは別に、エンジンが発生する排気熱を電気エネルギに変換する車両用熱電変換装置が、例えば実開平3−120695号公報に開示されている。
【0004】
このような車両用熱電変換装置を用いれば、オルタネータと合わせて十分な発電量が得られるので、バッテリの充電量を常に十分に保つことができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記した熱電変換素子は、良く知られるように、熱電変換素子を利用して温接点と冷接点との温度差に応じた熱起電力を発生するため、温接点を接触させる発熱部位の温度は高いほど望ましい。しかしながら、実際には熱電変換素子の耐熱温度との関係で、最高温度が熱電変換素子の耐熱温度以下である発熱部位に設置せざるを得ない。
【0006】
しかも、エンジンの排気熱はエンジンの運転状態に大きく依存し、最大負荷時と低負荷時とでは各発熱部位の到達温度に大きな差が生じる。ここで、熱電変換素子は最大負荷時の到達温度が耐熱温度以下である発熱部位に設置する必要がある。しかしながら、このような発熱部位は通常運転での温度が熱電変換素子の耐熱温度を大幅に下回ってしまうため、十分な熱起電力を得られないという課題があった。
【0007】
本発明の目的は、上記した従来技術の課題を解決し、十分な熱起電力を得られる車両用発電装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、本発明は、熱電変換素子に温接点と冷接点との温度差に応じた熱起電力を発生させる熱起電力発生ユニットを備えた車両用発電装置において、車両上の発熱部と熱電変換素子の温接点とを熱導電的に結合する熱接続手段と、前記温接点の温度を制御する温接点温度制御手段を具備したことを特徴とする。
【0009】
上記した構成によれば、熱電変換素子の温度を、発熱部の温度にかかわらず所望の温度に制限することができるので、熱電変換素子を、最高温度が熱電変換素子の耐熱温度を超えるような発熱部へも装着することができる。したがって、温接点が高温状態に維持される時間が長くなって発電効率が向上し、十分な熱起電力を得られるようになる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態であるエンジン停止始動制御装置が搭載されるスクータ型自動二輪車1の全体側面図である。
【0011】
車体前部2と車体後部3とは低いフロア部4を介して連結されており、車体の骨格をなす車体フレームは、概ねダウンチューブ6とメインパイプ7とから構成される。燃料タンクおよび収納ボックス(共に図示せず)はメインパイプ7により支持され、その上方にシート8が配置されている。
【0012】
一方、車体前部2では、ステアリングヘッド5に軸支されて上方にハンドル11が設けられ、下方にフロントフォーク12が延び、その下端に前輪13が軸支されている。ハンドル11の上部は計器板を兼ねたハンドルカバー33で覆われている。メインパイプ7の立ち上がり部下端にはブラケット15が突設され、このブラケット15には、リンク部材16を介してスイングユニット17が揺動自在に連結支持されている。
【0013】
スイングユニット17には、その前部に単気筒の2ストロークエンジン200が搭載されている。このエンジン200から後方にかけてベルト式無段変速機35が構成され、その後部に遠心クラッチを介して設けられた減速機構38に後輪21が軸支されている。この減速機構38の上端と前記メインパイプ7の上部屈曲部との間にはリヤクッション22が介装されている。スイングユニット17の上部には、エンジン200のシリンダヘッド32の上部から延出した吸気管23に接続された気化器24および同気化器24に連結されるエアクリーナ25が配設されている。
【0014】
ユニットスイングケース31の下部に突設されたハンガーブラケット18には、メインスタンド26が枢着されており、ベルト式無段変速機35の伝動ケースカバー36から突出したキック軸27にキックアーム28の基端が固着され、キックアーム28の先端にキックペダル29が設けられている。
【0015】
図2は、前記自動二輪車1の計器盤回りの平面図であり、ハンドルカバー33の計器盤90内には、スピードメータ91と共にスタンバイインジケータ56およびバッテリインジケータ76が設けられている。このスタンバイインジケータ56は、後に詳述するように、エンジンの停止始動制御中におけるエンジン停止時に点滅し、スロットルを開ければ直ちにエンジンが始動されて発進し得る状態にあることを運転者に警告する。バッテリインジケータ76は、バッテリ電圧が低下すると点灯してバッテリの充電不足を運転者に警告する。
【0016】
ハンドルカバー33には、アイドリングを許可または制限するためのアイドルスイッチ53およびスタータモータを起動するためのスタータスイッチ58が設けられている。ハンドル11の右端部には、スロットルグリップ92およびブレーキレバー93が設けられている。なお、左右のスロットルグリップの付根部分等には、従来の二輪車と同様にホーンスイッチやウインカスイッチを備えているが、ここでは図示を省略する。
【0017】
図3は、図1に破線丸印で示した、シート8前部のヒンジ部分の構造を模式的に示した図である。本実施形態では、シート8の裏面前方にはヒンジ部材81が固定されている。このヒンジ部材81には、垂直方向に沿って長手状の開口82が形成され、車両本体側に固定されたヒンジ軸85が当該長手状開口82を貫通し、シート8は当該ヒンジ軸85を中心に揺動自在かつ上下動自在に軸支される。前記ヒンジ部材81の裏面と対向する車両本体側には、押子83aを弾発するコイルスプリング83および着座スイッチ54が設けられている。
【0018】
このような構成において、運転者がシート8に着席していない非着座状態では、同図(a) に示したように、ヒンジ軸85が長手状開口82の下側端部に当接するまで、シート8がコイルスプリング83によって押し上げられるので、着座スイッチ54はオフ状態となる。
【0019】
これに対して、運転者がシート8に着席する着座状態では、同図(b) に示したように、シート8がコイルスプリング83の弾性力に抗して押し下げられるので、着座スイッチ54はオン状態となる。したがって、着座スイッチ54の状態を監視すれば、運転者が着座しているか否かを認識することができる。また、本実施形態ではシート8の前側に着座スイッチ54を設けたので、運転者が小柄であっても着座しているか否か確実に検知することができる。
【0020】
図4は、前記スロットルグリップ92の主要部の断面図であり、同図(b) は同図(a) のI−I線での断面図である。ハンドルパイプ181には、同図(a) に示したように、スロットルグリップ本体182が回動自在に挿貫され、スロットルグリップ本体182の周囲はグリップカバー183で覆われている。スロットルグリップ本体182は、その円周に沿ってフランジ部182aを具備し、同図(b) に示したように、このフランジ部182aにスロットルワイヤ185の一端185aが係止されている。スロットルグリップ本体182は、スプリング184の弾性力によって常にスロットル閉側へ弾発されており、運転者がスプリング184の弾性力に抗してスロットルグリップ本体182を開方向へ捻ると、スロットルワイヤ185が巻き込まれてスロットルが開く。
【0021】
また、本実施形態では、スロットルグリップが全閉状態で接点を閉じ(または開き)、スロットルグリップが予定角度だけ開いたときに接点を開く(または閉じる)スロットルスイッチ52が設けられている。前記スロットルスイッチ52は、スロットルが実際に開き始める前の遊び範囲の角度θ内で接点が開く(または閉じる)ように構成されている。このような構成によれば、スロットルを開くことなくスロットルスイッチ52をオンにすることができる。したがって、停車状態でもエンジンを運転者の意思で運転させておくことが可能になる。
【0022】
また、遊び角度範囲が終了して実際にスロットルが開き始める角度(>θ)へ突入する際は、スロットルスプリング(図示せず)の弾性力が新たに付加されるので、遊び角度範囲内のみでのスロットルスイッチ52の開閉が容易になる。
【0023】
図5は、図1におけるエンジン200をII−II線に沿って切断した断面図である。エンジン200は、左右水平方向に指向したクランク軸201を回転自在に支持する左右のクランクケース202L、202Rを合体したクランクケース202に、シリンダブロック203およびシリンダヘッド204が順次組合わされ、シリンダブロック203には、図示しない排気通路のほかシリンダボアに開口する掃気ポートから掃気通路205が形成されてクランクケース202のクランク室と連通している。
【0024】
シリンダヘッド204には、点火プラグ206が燃焼室に向け嵌着され、この点火プラグ206の露出部を除き、シリンダヘッド204およびシリンダブロック203はファンシェラウド207で覆われる。
【0025】
シリンダブロック203の排気ポートに連結された排気管255には、排気熱を利用して熱起電力を発生する車両用発電装置78が、シリンダブロック近傍の外周部を覆うように取り付けられている。この発電装置78には、後に詳述するように、シリンダブロック203内の水ジャケット213から配管78aを介して冷却水が供給される。発電装置78内を循環した冷却水は、配管78bを介してシリンダヘッド204に戻される。
【0026】
左クランクケース202Lは、ベルト式無段変速室ケースを兼ねており、左クランクケース202Lを貫通して延びたクランク軸201にはベルト駆動プーリ210が共に回転可能に設けられている。ベルト駆動プーリ210は、固定側プーリ半体210Lと可動側プーリ半体210Rとからなり、固定側プーリ半体210Lはクランク軸201の左端部にボス211を介して固着され、その右側に可動側プーリ半体210Rがクランク軸201にスプライン嵌合され、固定側プーリ半体210Lに接近・離反することができる。両プーリ半体210L、210R間にはVベルト212が挟まれて巻き掛けられる。
【0027】
可動側プーリ半体210Rの右側ではカムプレート215がクランク軸201に固着されており、その外周端に設けたスライドピース215aが、可動側プーリ半体210Rの外周端で軸方向に形成したカムプレート摺動ボス部210Raに摺動自在に係合している。可動側プーリ半体210Rのカムプレート215側側面は、カムプレート215側に向けてテーパしており、同テーパ面内側にカムプレート215に挟まれてドライウェイトローラ216が収容されている。
【0028】
したがって、クランク軸201の回転速度が増加すると、可動側プーリ半体210Rとカムプレート215間にあって共に回転するドライウェイトローラ216が、遠心力により遠心方向に移動し、可動側プーリ半体210Rは同ドライウェイトローラ216に押圧されて左方に移動して固定側プーリ半体210Lに接近し、両プーリ半体210L、210R間に挟まれたVベルト212を遠心方向に移動させ巻き掛け径を大きくするように構成されている。かかるベルト駆動プーリ210に対応して、後方の図示しないベルト被動プーリにVベルト212が巻き掛けられて、動力が自動調整されて後方の減速機構等に遠心クラッチを介して伝達され、後輪を駆動する。
【0029】
かかるベルト式無段変速機室を左側から覆う伝動ケースカバー220は、前方のベルト駆動プーリ210から後方に延出して覆っており、前寄りに前記キック軸27が回動自在に貫通支持されており、同キック軸27の内側端部には駆動ヘリカルギヤ222が嵌着され、リターンスプリング223により付勢されている。そして伝動ケースカバー220の前部内面には、クランク軸201と同軸に摺動軸224が回転かつ軸方向の摺動可能に支持されており、同摺動軸224には被動ヘリカルギヤ225が形成されて前記駆動ヘリカルギヤ222と噛合すると共に、右端にはラチェットホイール226が固着され、全体がフリクションスプリング227により左方に付勢されている。
【0030】
一方、クランク軸201側のボス211には、ラチェットホイール226に対向してラチェットが形成されており、両者は摺動軸224の摺動で接離可能である。したがって、前記キックペダル29が踏み込まれ、キック軸27がリターンスプリング223に抗して回転すると、キック軸27と一体に駆動ヘリカルギヤ222が回転して、これと噛合する被動ヘリカルギヤ225が摺動軸224と一体に回転しながらフリクションスプリング227に抗して右方に摺動して、ラチェットホイール226がボス211のラチェットと噛み合ってクランク軸201を強制的に回転させエンジン200を始動することができる。
【0031】
一方、右クランクケース202Rは、クランク軸201を回転自在に支持する主軸受209の右側に略円筒状をなして延出しており、その中心軸にクランク軸201が突出している。この右クランクケース202Rの円筒内には、スタータモータとしての機能と、ACジェネレータ(ACG)としての機能とを組み合わせた始動兼発電装置250が配設されている。
【0032】
クランク軸201の先端テーパ部にはインナーロータ(回転内磁型ロータ)251が欺台され、ナット253で固着されて一体に回転する。インナーロータ251の外周面には6か所の断面円弧状溝が形成され、各溝にネオジューム鉄ボロン製のマグネット271が嵌着されている。
【0033】
インナーロータ251の外周囲に配設されるアウターステータ270は、その外周縁部をクランクケース202の円筒壁202aにボルト279により螺着されて支持される。アウターステータ270のステータコアは、薄鋼板を積層してなり、外周縁の円環状部分から中心方向に延出した複数のティースに発電コイル272と始動コイル273とが巻回されている。この発電コイル272と始動コイル273とは、クランク軸方向の内側に偏らせてティースに巻き付けており、軸方向外側への突出量を小さくしている。
【0034】
一方、クランクケース202の円筒壁202a内を軸方向内側へ外側に比べ大きく突出した発電コイル272と始動コイル273とは、環状をなしてその内側に内空間を形成しており、同内空間に整流ブラシ機構263が構成されている。同内空間においてクランク軸201に貫通されたブラシホルダ262は、クランク軸201に対して周方向の相対的な回転を禁止し軸方向の摺動のみを許して嵌合されており、インナーロータ251との間にスプリング274が介装されてブラシホルダ262は軸方向内側へ付勢されている。
【0035】
ブラシホルダ262の内側面には、複数の所定箇所にブラシ261がスプリングに付勢されて突出している。このブラシホルダ262の内側面に対向して整流子ホルダ265が、中央をクランク軸201に貫通されて外周縁を前記軸方向内側へ大きく突出した発電コイル272と始動コイル273の部分に固定支持されている。
【0036】
整流子ホルダ265のブラシホルダ262に対向する面の所定箇所に整流子片267が同心円状に配設されている。固定された整流子ホルダ265に対してクランク軸201と共に回転するブラシホルダ262が離接し、接近したときはブラシ261が所要の整流子片267に接触する。
【0037】
ー方、インナーロータ251のクランク軸方向外側は、クランク軸201の先端に螺合されたナット253の周囲を覆う内円筒部231と、その外側を覆う同心の外円筒部232とが軸方向外方に延出しており、ここにガバナ機構230が構成される。すなわち、外円筒部232は、内周面にテーパが形成されてガバナアウタを構成しており、内円筒部231の外周に軸方向に摺動自在にガバナインナ233が嵌合され、ガバナインナ233と外円筒部232との間にガバナウエイトであるボール234が介装されている。
【0038】
このガバナ機構230の軸方向に摺動するガバナインナ233に一端を固着された連結軸235がインナーロータ251をクランク軸201と平行に貫通し、先端をブラシホルダ262に嵌着している。連結軸235は、ガバナインナ233とブラシホルダ262とを連結して互いに一体としてクランク軸方向に移動できるようにしている。
【0039】
クランク軸201が停止しているときは、ブラシホルダ262がスプリング223の付勢力により軸方向内方に移動していてブラシ261が整流子片267に接触する。したがって、バッテリから電流が供給されるとブラシ261と整流子片267との接触を経て始動コイル273に流れインナーロータ251に回転トルクを生じ、クランク軸201を回転させてエンジン200を始動させることができる。
【0040】
そして、機関回転数が上がると遠心力によりボール234が外円筒部232のテーパ内面を外周方向に移動することでガバナインナ233を軸方向外方へ摺動させ、連結軸235を介して一体にブラシホルダ262も軸方向外方に移動し、所定回転数を越えるとブラシ261が整流子片267から自動的に離れ、以後は発電コイル272によりバッテリへの充電がなされる。
【0041】
上記ガバナ機構230を構成する外円筒部232の端縁部にクランク角検出用の円環板状のロータ240が、その内周縁を嵌着して一体に設けられており、ロータ240の外周縁に近接して角度センサ49が所定位置に配設されている。クランク軸201とインナーロータ251を介して一体に回転するロータ240の外周縁に形成された刻みを角度センサ49が検出してクランク角を判断する。円環板状のロータ240は、アウターステータ270の発電コイル272および始動コイル273を外側から覆っている。そして、ロータ40の軸方向外側にエンジン強制空冷用のファン部材280が一体に設けられている。
【0042】
ファン部材280は、その中央円錐部280aの裾部分をボルト246によりインナーロータ251の外円筒部232に固着されており、その外周に設けられたファン280bはロータ240より外側方に立設するような構造となっている。ファン部材280はファンカバー281で覆われている。
【0043】
本実施形態に係るエンジン始動兼発電装置は以上のように構成され、インナーロータ251の軸方向内側に整流ブラシ機構263を配設し、軸方向外側には整流ブラシ機構263と切り離してガバナ機構230を配設したので、クランク軸外方向への膨出量が小さく抑えられる。
【0044】
また、アウターステータ270のステータコアのヨークに巻回される発電コイル272および始動コイル273の巻回状態が軸方向内側に偏って外側への突出量を小さくしているので、その外側のロータ240やファン部材280を軸方向外側に位置させずにすみ、クランク軸外方向への膨出量をより一層小さく抑えることができる。
【0045】
ファン280bの回転によりファンカバー281の外気吸入口281aから導入された外気は、中央円錐部280aに沿って外周に広がるが、ロータ240が導入空気を遮断して始動兼発電装置250側への侵入を防止しているので、始動兼発電装置250よりさらに奥側(軸方向内側)にある整流ブラシ機構263には外気が侵入しにくく、したがって外気に含まれる塵埃の影響を整流ブラシ機構263が受けることを防止している。
【0046】
図6は、上記のクランク軸201を直接回転させる始動兼発電装置250を備えたエンジン200における始動停止制御システムの全体構成を示したブロック図であり、前記と同一の符号は同一または同等部分を表している。
【0047】
本実施形態のエンジン停止始動システムは、アイドリングが制限される動作モードと許可される動作モードとを備えている。さらに具体的にいえば、車両を停止させるとエンジンが自動停止し、停止状態でスロットルグリップが操作されるとエンジンを自動的に再始動して車両を発進させる“停止発進モード(アイドリング制限モード)”と、エンジン始動時の暖気運転等を目的としてアイドリングを許可する“始動モード(アイドリング許可モード)”とを備えている。
【0048】
エンジン200のクランク軸201には、これと同軸状に始動兼発電装置250が連結されている。始動兼発電装置250は、スタータモータ部71およびACジェネレータ(ACG)部72によって構成され、ACジェネレータ部72による発電電力は、レギュレータ・レクティファイア67を介してバッテリ68に充電される。前記バッテリ68は、スタータリレー62が導通されるとスタータモータ部71へ駆動電流を供給すると共に、メインスイッチ73を介して各種の一般電装品74および主制御部60等に負荷電流を供給する。
【0049】
排気管255のマフラ256よりエンジン200側の周囲には、排気熱を利用して熱起電力を発生する車両用発電装置78が取り付けられている。車両用発電装置78が発生する熱起電力は、トランス79により昇圧されて、またはそのままバッテリ68に供給される。なお、車両用発電装置78には、内蔵する熱電変換素子の冷接点を冷却するための冷却水が供給されるが、ここでは図示を省略する。
【0050】
前記主制御装置60には、エンジンの回転角度を検知する角度センサ49と、スロットル開度を検知するスロットルセンサ50と、エンジン回転数Neを検知するNeセンサ51と、スロットル開度が予定開度を越えると接点を閉じるスロットルスイッチ52と、エンジン200のアイドリングを許可または制限するアイドルスイッチ53と、運転者が運転席に着座すると接点を閉じる着座スイッチ54と、車速を検知する車速センサ55と、後述する停止発進モードでの停車中に点滅するスタンバイインジケータ56と、前照灯69を点灯/消灯させるための前照灯スイッチ57と、始動兼発電装置250のスタータモータ部71を駆動してエンジン200を始動するためのスタータスイッチ58と、ブレーキ操作に応答して接点を閉じるストップスイッチ59と、バッテリ68の電圧が予定値(例えば、10V)以下になると点灯して充電不足を運転者に警告するバッテリインジケータ76とが接続されている。
【0051】
さらに、前記主制御装置60には、点火プラグ206を点火させる点火制御装置(イグニッションコイルを含む)61と、前記スタータモータ部71に電力を供給するスタータリレー62の制御端子と、前記前照灯69に電力を供給する前照灯リレー63の制御端子と、キャブレタ66に装着されたバイスタータ65に電力を供給するバイスタータリレー64の制御端子と、運転者がメインスイッチ73を遮断せずに車両から離れたり、前記前照灯69が自動消灯される前に警報音を発生して注意を促すブザー75とが接続されている。
【0052】
図7は、前記主制御装置60の構成を具体的に示したブロック図であり、前記と同一の符号は同一または同等部分を表している。なお、図8には主制御装置60の主要動作を一覧表として示している。
【0053】
動作モード切換部300は、当該エンジン停止始動制御装置の動作モードを、アイドルスイッチ53の状態および車両の状態に応じて、アイドリングを許可する前記“始動モード”およびアイドリングを制限する前記“停止発進モード”のいずれかに切り換える。
【0054】
この動作モード切換部300では、前記アイドルスイッチ53の状態信号が動作モード信号出力部301およびインバータ302に入力される。アイドルスイッチ53の状態信号は、オフ状態(アイドリング制限)では“L”レベル、オン状態(アイドリング許可)では“H”レベルを示す。インバータ302は、アイドルスイッチ53の状態信号を反転して出力する。
【0055】
車速継続判定部303はタイマ303aを備え、予定速度以上の車速が予定時間以上にわたって検知されると“H”レベルの信号を出力する。AND回路304は、前記判定部303の出力信号とインバータ302の出力信号との論理積を動作モード信号出力部301へ出力する。
【0056】
前記動作モード信号出力部301は、前記メインスイッチ73がオンにされると、アイドリングが許可される“始動モード”を起動する。さらに、この“始動モード”時にAND回路304の出力が“H”レベルになる、すなわちアイドルスイッチ53がオフにされて予定速度以上の車速が予定時間以上にわたって検知されると、動作モードを前記“始動モード”から、アイドリングが制限される“停止発進モード”へ移行する。さらに、この“停止発進モード”においてアイドルスイッチ53が再びオンにされると、動作モードを“停止発進モード”から“始動モード”へ移行する。この動作モード信号出力部301から出力される動作モード信号S301 は、“始動モード”中は“L”レベル、“停止発進モード”中は“H”レベルとなる。
【0057】
スタータリレー制御部400は、動作モードに応じて、所定の条件下で前記スタータリレー62を手動または自動的に起動する。このスタータリレー制御部400では、前記Neセンサ51の検知信号がアイドリング以下判定部401へ供給される。判定部401は、エンジン回転数が所定のアイドリング回転数(例えば、800rpm)以下であると“H”レベルの信号を出力する。AND回路402は、前記判定部401の出力信号と、前記ストップスイッチ59の状態信号と、前記スタータスイッチ58の状態信号との論理積を出力する。AND回路403は、前記AND回路402の出力信号と前記動作モード信号S301 の反転信号との論理積を出力する。
【0058】
AND回路404は、前記アイドリング以下判定部401の出力信号と、前記スロットルスイッチ52の状態信号と、前記着座スイッチ54の状態信号との論理積を出力する。AND回路405は、前記AND回路404の出力信号と前記動作モード信号S301 との論理積を出力する。OR回路406は、前記各AND回路403、405の論理和をスタータリレー62へ出力する。
【0059】
このような構成において、“始動モード”中は動作モード信号S301 が“L”レベルなのでAND回路403がイネーブル状態となる。したがって、エンジン回転数がアイドリング以下であり、かつストップスイッチ59がオン状態(ブレーキ操作中)のときにスタータスイッチ58が運転者によりオンされると、スタータリレー62が導通してスタータモータ部71が起動される。
【0060】
これとは逆に、“停止発進モード”中はAND回路405がイネーブル状態となる。したがって、エンジン回転数がアイドリング以下であり、着座スイッチがオン状態(運転者が運転席に着座中)でスロットルが開かれると、スタータリレー62が導通してスタータモータ部71が起動される。
【0061】
バイスタータ制御部500では、Neセンサ51からの出力信号がNe判定部501に入力される。このNe判定部501は、エンジン回転数が予定の設定回転数以上であると“H”レベルの信号を出力してバイスタータリレー64を閉じる。このような構成によれば、いずれの動作モードにおいても、エンジン回転数が予定の設定回転数以上であれば燃料を濃くすることができる。
【0062】
インジケータ制御部600では、Neセンサ51からの出力信号がNe判定部601に入力される。このNe判定部601は、エンジン回転数が設定回転数以下であると“H”レベルの信号を出力する。AND回路602は、前記着座スイッチ54の状態信号と前記Ne判定部601の出力信号との論理積を出力する。AND回路603は、前記AND回路602の出力信号と前記動作モード信号S301 との論理積をスタンバイインジケータ56に出力する。スタンバイインジケータ56は、入力信号が“L”レベルであると消灯し、“H”レベルであると点滅する。
【0063】
すなわち、スタンバイインジケータ56は“停止発進モード”中の停車時に点滅するので、運転者はスタンバイインジケータ56が点滅していれば、エンジンが停止していてもスロットルグリップを開きさえすれば直ちに発進できることを認識することができる。
【0064】
点火制御部700は、各動作モードごとに、所定の条件下で前記点火制御装置61による点火動作を許可または禁止する。この点火制御部700では、車速センサ55の検知信号が走行判定部701に入力される。前記走行判定部701は、検知信号に基づいて車両が走行状態にあると判断されると“H”レベルの信号を出力する。OR回路702は、前記走行判定部701の出力信号と前記スロットルスイッチ52の状態信号との論理和を出力する。OR回路703は、前記OR回路702の出力信号と前記動作モード信号S301 の反転信号との論理和を点火制御装置61へ出力する。点火制御装置61は、入力信号が“H”レベルであれば所定のタイミングごとに点火動作を実行し、“L”レベルであれば点火動作を中止する。
【0065】
このような構成によれば、始動モードでは動作モード信号S301 の反転信号が“H”レベルなので、OR回路703からは常に“H”レベルの信号が出力される。したがって、“始動モード”では点火制御装置61が常に点火動作を実行する。これに対して、停止発進モードでは、車両走行中であるか、あるいはスロットルが開かれていることを条件に点火動作が実行される。これとは逆に、停止状態であり、かつスロットルが閉じていれば点火動作が禁止される。
【0066】
前照灯/ブザー制御部800では、動作モードごとに、車両の走行状態や運転者の着座状態に応じて前照灯を自動的に点灯または消灯すると共に、運転者に種々の注意を促すための警告を、ブザー音として発する。
【0067】
非着座継続判定部801には着座スイッチ54の状態信号が入力される。非着座継続判定部801は運転者の非着座時間を計時する2つのタイマ8011、8012を備え、各タイマ8011、8012がタイムアウトすると、それぞれ“H”レベルの信号S8011、S8012を出力する。なお、本実施形態では各タイマ8011、8012が、それぞれ3秒および1秒でタイムアウトする。
【0068】
非点火継続判定部802は、エンジンの非点火時間を計時する2つのタイマ8021、8022を備え、非点火状態では直ちに“H”レベルの信号S8023を出力すると共に、各タイマ8021、8022がタイムアウトすると、それぞれ“H”レベルの信号S8021、S8022を出力する。なお、本実施形態では各タイマ8021、8022が、それぞれ3.5分および3分でタイムアウトする。
【0069】
AND回路812は、前記非着座継続判定部801の出力信号S8011と非点火継続判定部802の出力信号S8023との論理積を出力する。OR回路804は、前記非点火継続判定部802の出力信号S8021と前記AND回路812の出力信号との論理和を出力する。AND回路805は、前記OR回路804の出力信号と動作モード信号S301 との論理積をフリップフロップ810のリセット端子Rに出力する。
【0070】
AND回路807は、スロットルスイッチ52の状態信号と動作モード信号S301 との論理積を出力する。Ne判定部806にはNeセンサ51の出力信号が入力され、エンジン回転数が設定回転数以下であると“H”レベルの信号を出力する。AND回路808は、前記Ne判定部806の出力信号と動作モード信号S301 の反転信号との論理積を出力する。OR回路809は、各AND回路807、808の論理和をフリップフロップ810のセット端子Sに出力する。AND回路811は、フリップフロップ810のQ出力と前照灯スイッチ57の状態信号との論理積811を前照灯リレー63の制御端子へ出力する。前照灯リレー63は、“H”レベルの信号が入力されると前記前照灯69を点灯し、“L”レベルの信号が入力されると消灯する。
【0071】
このような構成によれば、始動モードでは動作モード信号S301 の反転信号が“H”レベルなのでAND回路808がイネーブル状態となる。したがって、エンジン回転数が設定回転数以上であれば、フリップフロップ810がセットされるので、前照灯スイッチ57がオンであれば前照灯が点灯する。
【0072】
一方、停止発進モードでは動作モード信号S301 が“H”レベルなのでAND回路805、807がイネーブル状態となる。したがって、OR回路804の出力が“H”レベルであればフリップフロップ810がリセットされて前照灯が自動的に消灯する。
【0073】
すなわち、停止発進モードにおける前照灯は、非点火状態がタイマ8021のタイムアウト時間(本実施形態では、3.5分)以上継続して出力信号S8021が“H”レベルになるか、あるいは非点火状態での非着座がタイマ8011のタイムアウト時間(本実施形態では、3秒)以上継続してAND回路812の出力信号が“H”レベルになると消灯される。
【0074】
発明者等の調査によれば、信号待ちや交差点内での右折待ちは30秒ないし2分程度であり、この時間を超える停車は信号待ちや右折待ち以外の停車、すなわち前照灯を点灯させておく必要のない停車状態である可能性が高い。したがって、本実施形態のように、非点火状態が予定時間(例えば3.5分)を超えるまでは前照灯を点灯させておくようにすれば、信号待ちや右折待ちのための停車状態では前照灯を点灯させ続ける事ができる。また、停車時間が3.5分を超えると自動消灯するので、バッテリの無駄な電力消費を抑える事ができる。
【0075】
さらに、停車後に運転者の非着座が検知された場合も信号待ちや右折待ち以外の停車である可能性が高い。但し、交差点での停車直後に運転者が車両を跨いだままの状態で一時的に立ち上がるような場合も経験的に多いため、非着座の検知と同時に自動消灯することは望ましくない。そこで、本実施形態では非点火状態での非着座時間を計時し、運転者が車両から離れたと推定される予定時間(本実施形態では3秒)の経過を条件に自動消灯するようにした。
【0076】
なお、この停止発進モード中の停車状態からスロットルが開かれれば、AND回路807の出力が“H”レベルとなってフリップフロップ810がセットされるので、前照灯が自動的に点灯する。
【0077】
前照灯/ブザー制御部800のAND回路813は、非着座継続判定部801の出力信号S8012、非点火継続判定部802の出力信号S8023、および動作モード信号S301 の論理積をブザー駆動部814へ出力する。AND回路815は、非点火継続判定部802の出力信号S8022、動作モード信号S301 、および前照灯スイッチ57の状態信号の論理積をブザー駆動部814へ出力する。
【0078】
ブザー駆動部814は、AND回路813の出力信号が“H”レベルになる、すなわち、停止発進モードにおいて非点火状態での非着座がタイマ8012のタイムアウト時間(本実施形態では1秒)以上継続すると、0.2秒間のオンと1.5秒間のオフとを繰り返すブザー駆動信号を出力する。なお、この際のブザー駆動信号は、メインスイッチ73が遮断されるか、あるいは運転者が再び着座するまで継続して出力される。
【0079】
一方、AND回路815の出力信号が“H”レベルになる、すなわち、停止発進モードにおいて前照灯スイッチ57がオン状態であり、かつ非点火状態がタイマ8022のタイムアウト時間(本実施形態では3分)以上継続すると、前記と同じブザー駆動信号を、今度はタイマ8141がタイムアウトするまでの予定時間だけ出力する。このようにすれば、ブザーを停止させるための操作が不要になる。
【0080】
本実施形態によれば、エンジンが自動停止された際に、メインスイッチが遮断されないまま1秒以上の非着座が検知されると、運転者がメインスイッチを切り忘れたまま車両から離れようとしているものと判断してブザー75が鳴動されるので、運転者はメインスイッチの切り忘れを認知できる。
【0081】
さらに、本実施形態によれば、前記停車時の自動消灯条件(非点火状態が3.5分以上)が成立する前(非点火状態が3分以上)にブザー75が鳴動されるので、運転者は前照灯が自動消灯される旨を事前に認識することができ、運転者の知らない間に自動消灯されてしまうことが防止できる。
【0082】
なお、上記の実施形態では、エンジンが自動停止された際に主電源が遮断されないまま1秒以上の非着座が検知されると、メインスイッチ73が遮断されるか、あるいは運転者が再び乗車するまでブザーを鳴動させ続けるものとして説明したが、例えば、配達業務や集金業務等に用いられる場合のように、メインスイッチ73を遮断することなく運転者が車両から離れることを前提にしている場合には、予定時間の経過後にブザーが自動的に停止されるようにしても良い。
【0083】
さらに、上記の実施形態では、点火オフ状態や運転者の非着座が予定時間以上継続した際に前照灯を自動的に消灯するものとして説明したが、消灯する代わりに供給電流を減じて減光したり、あるいは前照灯を消灯し、その代わりにポジションランプを点灯するようにしても良い。
【0084】
図9は、本発明の他の実施形態における始動停止制御システムの全体構成を示したブロック図であり、前記と同一の符号は同一または同等部分を表している。本実施形態では、ACジェネレータ部72による発電電力が、レギュレータ・レクティファイア67を介して2つのバッテリ68A、68Bに充電されるようにしている。前記バッテリ68Aはエンジン始動専用であり、スタータリレー62が導通されると、スタータモータ部71へ駆動電流を供給する。前記バッテリ68Bは、メインスイッチ73を介して各種の電装品74および主制御部60等に負荷電流を供給する。
【0085】
このように、本実施形態ではバッテリ68Aがエンジン始動専用であり、その電力消費量は十分に小さく、常に満充電状態に維持されるので、バッテリ68Bの充電量とは無関係に常に良好なエンジン始動が可能になる。
【0086】
次いで、上記した熱起電力発生ユニット140について、その基本構成および動作原理を説明する。本発明の熱起電力発生ユニット140は、これが設置される発熱部位の温度にかかわらず、熱電変換素子の温接点の温度を適宜に制御できるようにした点に特徴がある。
【0087】
図10、11は、前記排気熱を利用して熱起電力を発生する発電装置78の主要部である、熱起電力発生ユニット140の第1の基本構成(140A)を示した断面図である。
【0088】
熱起電力発生ユニット140Aは、冷却部材131および温接点側熱接続部材143と、各部材131、143により挟持された熱電変換素子142と、温度により変形するバイメタル変形部材144と、前記バイメタル変形部材144の中央部を、例えば排気管のような、車両上の発熱部材133の主面に固定するアンカ−ピン145と、前記バイメタル変形部材144の両端部を前記温接点側熱接続部材143に保持する端部押え部材146とによって構成される。
【0089】
前記熱電変換素子142は、冷接点基板142aおよび温接点基板142bと、各基板142a、142b間で交互に立設されたp脚部およびn脚部からなる半導体脚部142cとによって構成される。なお、このような熱電変換素子142による熱起電力の発生原理は周知なので、その説明は省略する。前記冷却部材131には、冷却水を流すための複数の水ジャケット131aが貫通している。前記バイメタル変形部材144は、その形状が前記熱電変換素子142の耐熱温度の上限近傍で変形するように、各メタル素材が選択されている。
【0090】
このような構成において、発熱部材133の温度が低く、温接点側熱接続部材143の温度が熱電変換素子142の耐熱温度を十分に下回っていると、図10に示したように、前記バイメタル変形部材144は変形せず、その曲率半径は十分に大きいままである。したがって、温接点側熱接続部材143と発熱部材133との機械的な接触が維持され、発熱部材133の熱が温接点側熱接続部材143を介して熱電変換素子142の温接点基板142bに伝導される。
【0091】
このとき、冷却部材131は水ジャケット131aを流れる冷却水によって十分に冷却され、熱電変換素子142の冷接点基板142aが十分に冷却されるので、熱起電力発生ユニット140Aでは、冷接点基板142aと温接点基板142bとの温度差が大きくなる。熱起電力発生ユニット140Aは、温接点側熱接続部材143と冷却部材131との温度差に応答した熱起電力を発生する。
【0092】
一方、発熱部材133の温度が上昇し、熱電変換素子142の耐熱温度の上限値に近付くと、図11に示したように、前記バイメタル変形部材144が変形して曲率半径が小さくなる。この結果、温接点側熱接続部材143が発熱部材133から離間されて両者の機械的な接触が断たれる。このため、発熱部材133の熱は温接点側熱接続部材143に伝導されず、熱電変換素子142の温度上昇が制限される。
【0093】
このように、第1の基本構成では、熱電変換素子142の温接点の温度を制御する手段として、温度に応答して機械的に変形することにより車両上の発熱部位と温接点との熱伝導的な接続を解除する熱変形部材(バイメタル変形部材144)を採用した点に特徴がある。
【0094】
図12は、前記排気熱を利用して熱起電力を発生する発電装置78の主要部である熱起電力発生ユニットの第2の基本構成(140B)を示した断面図であり、前記と同一の符号は同一または同等部分を表している。
【0095】
熱起電力発生ユニット140Bでは、熱電変換素子142の温接点基板142b側に、冷接点基板142a側と同様の冷却部材132を熱伝導的に接続した点に特徴がある。
【0096】
各冷却部材131、132の各水ジャケット131a、132aは、図13に示したように、冷却水供給路149に連結される。水ジャケット132aの入口側および出口側には、冷却水が沸騰した際の逆流を防止するための一方向弁149aが設けられている。
【0097】
制御部151は熱電変換素子142の温度を監視する。熱電変換素子142の温度は、熱電変換素子142の出力電圧や、その近傍に予め配置した温度センサ等に基づいて直接的に求めても良いし、あるいはエンジン回転数やスロットル開度に基づいて熱電変換素子142の温度を間接的に求めるようにしても良い。
【0098】
このような構成において、制御部151は熱電変換素子142の温度が耐熱温度よりも十分に低い間は、冷却水が冷却部材131の水ジャケット131aのみに供給されるように電磁弁150を制御する。
【0099】
一方、熱電変換素子142の温度が、その耐熱温度付近まで上昇すると、制御部151は、冷却水が冷却部材131の水ジャケット131aおよび冷却部材132の水ジャケット132aの双方へ供給されるように電磁弁を150を制御する。
【0100】
このように、第2の基本構成では、熱電変換素子142の温接点の温度を制御する手段として、温接点を積極的に冷却する手段(冷却部材132)を採用した点に特徴がある。
【0101】
図14は、熱電変換素子を利用した前記発電装置78の第1実施形態の構成を示した図であり、前記と同一の符号は同一または同等部分を表している。本実施形態は、上記した各基本構成を組合せた構造になっている。
【0102】
排気管255の周囲には、温接点側アタッチメント171が高い熱導電性を保って密着固定され、温接点側アタッチメント171の外周に、冷接点側アタッチメント172により予定の間隙を保って覆われいる。各アタッチメント171、172は、排気管255に対してボルト168およびナット169により共締めされている。
【0103】
前記温接点側アタッチメント171の外表面と冷接点側アタッチメント172の内表面の数箇所にはそれぞれ、熱起電力発生ユニット140Cを収納するための凹部171a、172aが相互に対向するように形成されている。温接点側アタッチメント171の内部には、冷却水を流すための多数の水ジャケット171bが排気管255に沿って形成されている。同様に、冷接点側アタッチメント172の内部にも多数の水ジャケット172bが排気管255に沿って形成されている。
【0104】
図20は、前記各アタッチメント171、172内での水ジャケット171b、172bの経路を模式的に示した図であり、排気管255にそって延設された各水ジャケット171b、172bの両端は、それぞれ水ジャケット171c(172c)によって共通結合されて給排水ノズル171d、171e(172d、172e)に結合されている。
【0105】
図14に示したように、前記冷却水は、ラジエタ451で冷却された後にポンプ452で加圧されてエンジンへ供給される。エンジンを冷却した冷却水は、冷接点側アタッチメント172の各水ジャケット172bへは直接、温接点側アタッチメント171の各水ジャケット171bへは、電磁弁454を介して供給される。電磁弁454、455の開閉は主制御装置60により制御される。
【0106】
各水ジャケット171b、172bを通過した冷却水は、再びエンジンを経由してサーモ弁453へ供給される。サーモ弁453は冷却水の温度に応答して水路を切り換え、冷却水の温度が高ければ、これを前記ラジエタ451へ供給して冷却し、冷却水の温度が低ければ、前記ラジエタ451をバイパスしてポンプ452へ供給する。
【0107】
図15、16は、前記温接点側アタッチメント171および冷接点側アタッチメント172の各凹部171a、172b内に設置される熱起電力発生ユニット140Cの構成および動作を示した断面図であり、前記と同一の符号は同一または同等部分を表している。
【0108】
前記熱起電力発生ユニット140Cは、冷接点側熱接続部材141および温接点側熱接続部材143と、各熱接続部材141、143により挟持された熱電変換素子142と、温度により変形するバイメタル変形部材144と、前記バイメタル変形部材144の中央部を凹部171aの底部である加熱面に固定するアンカ−ピン145と、前記バイメタル変形部材144の両端部を前記温接点側熱接続部材143に保持する端部押え部材146とによって構成される。
【0109】
前記バイメタル変形部材144は、前記熱電変換素子142の耐熱温度付近で変形するように、各バイメタル素材が選択される。前記熱電変換素子142では、図17に示したように、そのp脚部142pおよびn脚部142nが排気管255に沿って交互に立設配置されている。
【0110】
このような構成において、主制御装置60は熱電変換素子142の温度Tを常時監視する。熱電変換素子142の温度は、熱電変換素子142の出力電圧や、その近傍に予め配置した温度センサ等に基づいて直接的に求めても良いし、あるいはエンジン回転数やスロットル開度に基づいて熱電変換素子142の温度を間接的に求めるようにしても良い。
【0111】
主制御装置60は、熱電変換素子142の温度が耐熱温度を十分に下回っていると、各電磁弁454、455を閉じて冷却水を冷接点側アタッチメント172の水ジャケット172bのみへ供給する。この結果、熱電変換素子142では温接点と冷接点との温度差が大きくなって発電効率が向上する。
【0112】
一方、熱電変換素子142の温度が上昇して耐熱温度に近付くと、主制御装置60は各電磁弁454、455を開いて冷却水を温接点側アタッチメント171の水ジャケット171bへも供給する。この結果、熱電変換素子142の温接点の温度が耐熱温度以下に保持される。
【0113】
さらに、熱起電力発生ユニット140Cでは、温接点側アタッチメント171の温度が耐熱温度を十分に下回っていると、図15に示したように、前記バイメタル変形部材144が変形しない。したがって、熱起電力発生ユニット140Cの温接点側熱接続部材143と温接点側アタッチメント171との機械的な接触が維持され、温接点側アタッチメント171の熱が温接点側熱接続部材143を介して熱電変換素子142の温接点側へ伝導される。したがって、熱起電力発生ユニット140は、温接点側アタッチメント171と冷接点側アタッチメント172との温度差に応答した熱起電力を発生する。
【0114】
一方、温接点側アタッチメント171の温度が上昇し、熱電変換素子142の耐熱温度に近付くと、図16に示したように、前記バイメタル変形部材144が変形して曲率半径が小さくなり、温接点側熱接続部材143が温接点側アタッチメント171から離間されて両者の機械的な接触が断たれる。このため、温接点側アタッチメント171の熱は温接点側熱接続部材143に伝導されず、熱電変換素子142の温度上昇が制限される。
【0115】
このように、本実施形態によれば、熱電変換素子142の温度を、熱起電力発生ユニット140が設置される発熱部の温度にかかわらず所望の温度に制限することができるので、熱起電力発生ユニット140Cを、最高到達温度が耐熱温度を超えるような発熱部へも装着することができる。
【0116】
ここで、図18に示したように、最高温度が高い発熱部の温度上昇カーブAと、最高温度が低い発熱部の温度上昇カーブBとを比較すると、一般的に、最高温度の高い発熱部の方が、最高温度の低い発熱部よりも素早く温度が上昇する。そして、本実施形態を採用すれば、熱起電力発生ユニット140Cを、その耐熱温度を越えるような高温度の発熱部位へも設置することが可能になるので、高温状態に保たれる時間が長くなって発電効率が向上する。
【0117】
さらに、最高温度の高い部位は低い部位に比べて、エンジン停止後も高温状態を長く維持でき、その間も有用な熱起電力を発生し続けることができる。したがって、エンジンの再始動時やエンジン停止中の電気負荷への給電が可能になってバッテリの負担を軽減することができる。
【0118】
図19は、前記熱電変換素子を利用した発電装置の他の一例の構成を示した図であり、前記と同一の符号は同一または同等部分を表している。
【0119】
上記した実施形態では、熱電変換素子142の温接点が熱伝導的に接続される凹部171aの底面が、前記排気管255から放射状に延長した仮想線と直交していたが、本実施形態では、温接点側アタッチメント191の表面に、より多くの熱起電力発生ユニット140を設けられるようにするため、温接点側アタッチメント191の外周断面および冷接点側アタッチメント192の内周断面を、相互に噛み合う鋸刃状にし、熱電変換素子142の温接点が熱伝導的に接続される発熱面が、前記仮想線と直交しないようにした。
【0120】
冷接点側アタッチメント192の内部には、多数の水ジャケット192aが排気管255に沿って形成されている。各水ジャケット192aは共に、給排水ノズル172d、172eに結合されている。各熱起電力発生ユニット140は、図示したようにリード線167により直列接続され、引き出し配線166に接続されている。
【0121】
図14と比較すれば明らかなように、本実施形態によれば、熱源である排気管255の表面から実質的に等距離である空間に多数の発熱面を形成することができる。したがって、排気管255の表面から各熱電変換素子142までの距離を長くすることなく、多数の熱電変換素子142を配置することができ、発電効率をさらに向上させることができる。
【0122】
【発明の効果】
上記したように、本発明によれば以下のような効果が達成される。
(1) 熱電変換素子の温度を、発熱部の温度にかかわらず所望の温度に制限することができるので、熱起電力発生ユニットを、最高温度が熱電変換素子の耐熱温度を超えるような発熱部へも装着することができる。したがって、温接点が高温状態に維持される時間が長くなって発電効率が向上する。
(2) 最高温度の高い部位は低い部位に比べて、エンジン停止後も高温状態を長く維持でき、その間も有用な熱起電力を発生し続けることができる。したがって、本発明を適用して、熱起電力発生ユニットを最高温度が耐熱温度を超えるような発熱部へ装着すれば、エンジンの再始動時やエンジン停止中の電気負荷への給電が可能になってバッテリの負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用したエンジン停止始動制御システムが搭載されるスクータ型自動二輪車の全体側面図である。
【図2】スクータ型自動二輪車の計器盤回りの平面図である。
【図3】シート前部のヒンジ部分の構造を模式的に示した図である。
【図4】スロットルグリップの主要部の断面図である。
【図5】図1のエンジンをII−II線に沿って裁断した断面図である。
【図6】始動停止制御システムの一例の全体構成を示したブロック図である。
【図7】主制御装置の機能を示したブロック図である。
【図8】主制御装置の主要動作を一覧表として示した図である。
【図9】始動停止制御システムの他の一例の全体構成を示したブロック図である。
【図10】本発明の発電装置に適用される熱起電力発生ユニット140の第1の基本構成(140A)の断面図である。
【図11】熱起電力発生ユニット140の第1の基本構成(140A)の高温時における断面図である。
【図12】本発明の発電装置に適用される熱起電力発生ユニット140の第2の基本構成(140B)の断面図である。
【図13】熱起電力発生ユニット140Bの利用方法を示した図である。
【図14】本発明の一実施形態である発電装置の構成を示した図である。
【図15】本発明の発電装置に適用される熱起電力発生ユニット140Cの構成および動作を示した断面図である。
【図16】熱起電力発生ユニット140Cの構成および動作を示した断面図である。
【図17】熱電変換素子142の構成を示した図である。
【図18】本発明の効果を説明するための図である。
【図19】本発明の他の実施形態である発電装置の構成を示した図である。
【図20】水ジャケットの構成を示した図である。
【符号の説明】
2…車体前部、3…車体後部、4…フロア部、6…ダウンチューブ、7…メインパイプ、8…シート、11…ハンドル、12…フロントフォーク、13…前輪、15…ブラケット、16…リンク部材、17…スイングユニット、18…ハンガーブラケット、21…後輪、22…リヤクッション、23…吸気管、24…気化器、25…エアクリーナ、26…メインスタンド、27…キック軸、28…キックアーム、29…キックペダル、78…発電装置、142…熱電変換素子、140…熱起電力発生ユニット、200…エンジン、201…クランク軸、202…クランクケース、203…シリンダブロック、204…シリンダヘッド、206…点火プラグ、210…ベルト駆動プーリ、211…ボス、212…Vベルト、250…発電電動装置、251…インナーロータ、300…動作モード切換部、400…スタータリレー制御部、500…バイスタータ制御部、600…インジケータ制御部、700…点火制御部、800…前照灯/ブザー制御部

Claims (6)

  1. 熱電変換素子と、この熱電変換素子の温接点と熱伝導的に接続される温接点側熱接続手段とを備え、前記熱電変換素子に温接点と冷接点との温度差に応じた熱起電力を発生させる熱起電力発生ユニットを備えた車両用発電装置において、
    車両の発熱部上に前記温接点側熱接続手段および熱電変換素子が当該順序で積層され、
    前記車両の発熱部と温接点側熱接続手段との間に、両者の機械的接触を制御するバイメタル変形部材が配置されたことを特徴とする車両用発電装置。
  2. 前記バイメタル変形部材は、温度に応答して機械的に変形することで前記発熱部と温接点側熱接続手段とを離間させることを特徴とする請求項1に記載の車両用発電装置。
  3. 前記熱電変換素子の温度を検知する温度検知手段と、
    前記温接点を冷却する冷却手段と、
    前記検知された温度が予定温度より高いと前記冷却手段により温接点を冷却させる制御手段とをさらに含むことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用発電装置。
  4. 前記温度検知手段は、車両に搭載されたエンジンの回転数およびスロットル開度の少なくとも一方に基づいて前記熱電変換素子の温度を求めることを特徴とする請求項3に記載の車両用発電装置。
  5. スロットルを開閉するスロットルグリップが全閉かつ停車状態ではエンジンを停止させ、スロットルグリップが全閉以外でエンジンを始動する、ベルト式無段階変速機および遠心クラッチを搭載した車両に適用されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の車両用発電装置。
  6. 前記バイメタル変形部材の中央部を前記発熱部の主面に固定するアンカ−ピンと、
    前記バイメタル変形部材の両端部を前記温接点側熱接続手段に保持する端部押え部材とをさらに含むことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用発電装置。
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