JP3928237B2 - 薄膜磁気ヘッド及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気記録再生装置に用いられる薄膜磁気ヘッド、特に、薄膜コイルの抵抗を低減させた薄膜磁気ヘッドに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
記録媒体への情報信号の記録、及び、記録媒体からの情報信号の再生を容易に行うことを可能とする磁気記録再生装置は、多くの技術分野における情報信号の記録再生手段として採用されている。
【0003】
この磁気記録再生装置においては、近年、高密度記録化に対する要請が増大しており、かかる要請に対応すべく、薄膜磁気ヘッドを採用するようになっている。薄膜磁気ヘッドは、フォトリソグラフィや各種の成膜技術を利用して、非磁性基板上に下部コア、絶縁層、コイル、絶縁層、上部コア等を順次積層して形成されるヘッドである。このような薄膜磁気ヘッドの実用例としては、例えば、固定ディスク駆動装置(HDD)における浮上型の磁気ヘッドがある。また、VTR用の回転磁気ヘッドでも、薄膜磁気ヘッドを利用しようとする試みがある。
【0004】
一般に誘導型の磁気ヘッドでは、高出力を得るために、コイルの巻回数を多くすることが必要とされる。薄膜磁気ヘッドにおけるコイルは、導電材料からなる薄膜を渦巻状のコイルパターンに形成したものとなっている。このコイルパターンは、下部コアと上部コアとの連絡部(中間コア)を中心にして形成される。したがって、コイルの一部は、下部コアと上部コアとの間の限られた空間内に形成され、このために、コイルの巻回数を無制限に増大させることはできない。
【0005】
また、薄膜コイルでは、巻回幅を大きくすると、コイル抵抗が小さくなるが、磁路長が大きくなるためにヘッド効率が低下する。逆に、コイル巻回幅を小さくすると、ヘッド効率は向上するが、コイル抵抗が大きくなる。なお、磁路長とは、薄膜磁気ヘッドの前部に配置されている前部中間コアが下部コアとの間に有する前部磁気ギャップと、磁気ヘッドの後部に配置されている後部中間コアが下部コアとの間に有する後部磁気ギャップとの間の距離をいう。
【0006】
ところで、薄膜磁気ヘッドで必要とされる諸特性は、そのヘッドの用途に応じて異なる。例えば、VTRでは、記録再生画像の高品位化、高密度記録再生の実現等の種々の要望を満たす磁気ヘッドが要求される。
【0007】
また、VTRでは、磁気ヘッドが回転ヘッドとして使用される。このために、磁気ヘッドは、回転トランスを介してVTRの電気回路と信号を授受するが、このような回転トランスを介した信号の授受では、伝送できる信号のカットオフ周波数と磁気ヘッドの直流抵抗の間に密接な関係がある。図7は、ヘッドロータリートランスの等価回路(a)及びその等価回路における低域カットオフ周波数と直流抵抗の関係(b)を示す図である。図7から分かるように、ヘッド直流抵抗が増大すると、それに比例して伝送信号の低域カットオフ周波数が増大する。カットオフ周波数の増大は、信号記録時の波形にサグ(矩形波の頭頂部が減衰的に傾く波形の歪み)を発生させ、記録された信号の質を低下させる。このために、VTR用の薄膜磁気ヘッドでは、HDD用のそれと異なり、薄膜コイルの直流抵抗を低く抑制し、回転トランスを介しての低周波帯域信号の伝送特性を良好とすることが要求される。例えば、図7に示した条件でカットオフ周波数を140kHz以下に設定しようとすれば、磁気ヘッドの直流抵抗は、3.8Ω以下という極めて低い値としなければならない。
【0008】
一般に、薄膜磁気ヘッドの薄膜コイルは、従来のバルクヘッドで用いられている線材を巻いて形成されたコイルに比べ、断面積が小さい。このために、薄膜コイルは、一般的に抵抗値が高く、インピーダンスノイズを発生させる原因ともなっている。前述したように、薄膜コイルは、薄膜磁気ヘッドの後部磁気ギャップを中心としてスパイラル状に巻くように平面上に形成されている。このような薄膜コイルでは、コイルを巻くスペースを大きくし、コイルの幅又は厚みを増大させれば、断面積が大きくなり、抵抗を低下させることが可能となる。
【0009】
しかしながら、コイルを巻くスペース幅は、ヘッド性能との兼ね合いで制限される。例えば、コイル巻回幅を大きくする、又は、コイル厚みを厚くすると、コイル抵抗は下がるが、磁気ヘッドにおける磁路長が長くなり、ヘッド効率の低下が生じる。逆に、コイル巻回幅を小さくする、又は、コイル厚みを薄くすると、ヘッド効率は向上するが、コイル抵抗は大きくなる。
【0010】
つまり、コイルの幅は、磁気ヘッドの前部中間コアと後部中間コアとの間の距離により制限され、コイルの厚みは、磁気ヘッドの下部コア上面と上部コア下面との間の距離で制限されるために、従来の薄膜コイルの抵抗は、ヘッド性能とヘッド形状の兼ね合いである程度より低く抑制することが困難であった。
【0011】
薄膜磁気ヘッドにおける上記問題を解決すべく、本願出願人は、特開平7−272217号において、新規な構造の薄膜磁気ヘッドを開示している。図8は、特開平7−272217号において開示された薄膜磁気ヘッドを示す図であり、図8(a)は、薄膜磁気ヘッドの概要を示し、図8(b)は、図8(a)のうち特にコア部及びコイルパターンを含む部分を示している。なお、図8では、矢印の示す方向が磁気ヘッドの前方となっている。
【0012】
図8に示されるように、薄膜磁気ヘッドは、基板1の上に3つの絶縁層2、5及び11を積層させている。絶縁層2の中には、軟磁性体からなる下部コア4が配置されており、絶縁層11の中には、これも軟磁性体からなる上部コア12が下部コア4と対向するように配置されている。下部コア4と上部コア12との間には、中間コア9a及び9bが配置されており、上部コア12及び下部コア4とともに一種のリング形状を構成している。なお、ヘッドの前部側に配置された中間コア9aと下部コア4の間には、絶縁層からなるギャップ層Gが形成されている。また、中間コア9bの周りには、コイル導体7が巻回されている。いま、上部コア12と下部コア4との間を内部領域、その他の領域を外部領域と呼ぶことにすると、コイル導体7のコイル厚さは、内部領域では上部コアと下部コアとの間隔より小さく、外部領域ではそれより大きくなっている。このような構成をした特開平7ー272217号に開示された薄膜磁気ヘッドでは、外部領域における薄膜コイルの断面が内部領域のそれより拡大されているので、コイルの直流抵抗が従来より小さくなるという効果が得られている。
【0013】
図9から図12までは、特開平7−272217号に開示された薄膜磁気ヘッドの製造工程を説明する図である。なお、図9から図12において、(A)を付したものは薄膜磁気ヘッドの断面図、(B)を付したものは部分平面図となっており、また、紙面左側が磁気ヘッドの前方となっている。以下、図9等に従い、特開平7−272217号に開示された薄膜ヘッドの製造方法を簡単に説明する。
【0014】
はじめに、基板1に軟磁性体からなる下部コア4を形成し、その周りに絶縁層2を膜付けする(図9(a))。次に、絶縁層2に渦巻状の溝7bを形成し、この溝7bに導体膜を形成する(図9(b))。形成された導体膜は、コイル導体7の下層側である。次に、下部コア4の上面の一部に非磁性層8を、また、さらにその上に中間コア9aを形成する。ここで、非磁性層8は、中間コア9aと下部コア4との間の磁気ギャップGとなる層である。また、中間コア9aが形成されたのと反対側の位置において、中間コア9bを下部コア4の上面に形成する。さらに、中間コア9a、9bを残した他の部分には、絶縁層5を形成する(図10(a))。
【0015】
次に、絶縁層5に渦巻き状の溝7aを溝7bとその位置が正確に一致するように形成する(図10(b))。このとき、溝7aはエッチングにより形成されるが、その際のエッチング時間は、溝7aが下部コア4の上面まで達しないように、厳密に管理される。溝7aが形成された後には、その中にCu等の導体膜を形成し、コイル導体7を完成させる(図11(a))。
【0016】
次に、2つの中間コア9a、9bを除いた部分に絶縁層10を形成する(図11(b))。また、下部コア4の上側となる領域に上部コア12を形成し、さらに、上部コア12を残して絶縁層11を形成する(図12(a))。
【0017】
次に、絶縁層10及び11にコイル導体7に通じるコンタクトホールを形成しそこへ導体13を埋める(図12(b))。また、導体13を介してコイル導体7と接続するリード部14を形成する。最後に、図中の切断線B−B’において切断し、この切断面を摺動面とする。また、図8(a)に示すように、パッド部25、合金層26及びリードワイヤ27を順次設けて薄膜磁気ヘッドを完成する。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特開平7−272217号に開示された薄膜磁気ヘッドによれば、コイル形成のための工程数が従来の薄膜磁気ヘッドにおけるそれより増大するという問題があった。つまり、コイル導体7が、先に説明した図9(b)において形成される下層と、図10(b)及び図11(a)において形成される上層との2つの層から構成されているので、コイル形成のための工程数が、従来の2倍となっているのである。
【0019】
しかも、図10(b)に示した工程では、溝7aを形成する際に、その位置がコイル導体7の下層側と正確に一致するように形成しなければならないので、マスクパターンの位置合わせ等を高精度に行わなければならないという問題があった。さらに、下部コア4の上側の領域では、溝7aをエッチングする際に、コイル導体7を下部コア4から絶縁すべく絶縁層5の一部を残すようにエッチングしなければならないので、エッチング時間を厳密に管理する必要があるという問題もあった。
【0020】
また、上記のようにエッチング時間を厳密に管理した場合でも、形成された溝7aの底部は、エッチング深さ分布が比較的大きい面となるために、残された絶縁層の厚みが場所によりばらつくこととなる。このために、溝7aが部分的に下部コア4まで達することを防止すべく、エッチング時間を短めに設定し、絶縁層が1μm以上の厚さで残されるようにする必要があった。このために、磁気ヘッドの内部領域におけるコイル導体の断面積が小さくなる、あるいは、薄膜磁気ヘッド全体の厚みを縮小できないという問題もあった。
【0021】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、コイルの直流抵抗が低い薄膜磁気ヘッドをヘッド性能及びヘッド形状を変えることなく、しかも、製造工程を増大させることなく提供することを目的としている。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、請求項1記載の発明は、下部コアと、前記下部コアと所定間隔を隔てて対向するように配置された上部コアと、前記下部コアと前記上部コアとの間の内部領域内及びこの内部領域の外側の外部領域内に渦巻状に配置された渦巻状のコイルとを備える薄膜磁気ヘッドの製造方法であって、
基板上に、前記下部コアと、この下部コアの段差を埋めるように該下部コアの側方に隣接配置されて所定のエッチャントに対して第1のエッチング速度でエッチングされる第1の絶縁材料からなる第1の絶縁層とを形成する第1段階と、
前記下部コアの上面の所定範囲に、前記所定のエッチャントに対して第1のエッチング速度よりも遅い第2のエッチング速度でエッチングされる第2の絶縁材料からなる第2の絶縁層を形成する第2段階と、
前記所定範囲を除いた前記下部コア,前記第1の絶縁層,及び前記第2の絶縁層上に、前記第1の絶縁材料からなる第3の絶縁層を形成する第3段階と、
前記所定のエッチャントを用いて、前記内部領域では前記第2の絶縁層をエッチングストップ層として機能させてこの第2の絶縁層が露出するように前記第3の絶縁層内に第1の溝を複数形成すると共に、前記外部領域では前記第3の絶縁層内及び前記第1の絶縁層内に通じて第2の溝を複数形成することで、前記内部領域内と前記外部領域内とで各溝のエッチング深さを違えて複数の前記第1の溝と複数の前記第2の溝とによる渦巻状の溝部を形成する第4段階と、
前記渦巻状の溝部に導電性材料を満たして前記渦巻状のコイルを形成する第5段階と、
前記内部領域内の前記第3の絶縁層の上方に前記上部コアを形成する第6段階と、
を少なくとも含むことを特徴とする薄膜磁気ヘッドの製造方法である。
【0023】
また、請求項2記載の発明は、下部コアと、前記下部コアと所定間隔を隔てて対向するように配置された上部コアと、前記下部コアと前記上部コアとの間の内部領域内及びこの内部領域の外側の外部領域内に渦巻状に配置された渦巻状のコイルとを備える薄膜磁気ヘッドであって、
請求項1記載の製造方法を用いて製造されたことを特徴とする薄膜磁気ヘッドである。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、図面等を参照して、本発明に係る実施形態について詳しく説明する。
【0025】
なお、以下の説明において、図8から図12までに示した特開平7−272217号に係る薄膜磁気ヘッドにおけるのと同一の部位、部材には同一の符号を付し、それらについての重複する説明を省略する。
【0026】
(第1実施形態)
はじめに、本発明に係る薄膜磁気ヘッドの第1実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る薄膜磁気ヘッドの斜視図である。本実施形態の薄膜磁気ヘッドは、積層された3つの絶縁層2、5、11を有し、絶縁層2及び絶縁層11には、それぞれ下部コア4及び上部コア12が絶縁層5を挟んで互いに対向するように形成されている。また、下部コア4と上部コア12との間には、2つの中間コア9a、9bが、一方は磁気ヘッドの前部に位置するように、他方は後部に位置するように配置されている。さらに、中間コア9bの周りには、渦巻き形状の溝が、その一部が下部コア4と上部コア12との間を通過するようにエッチングにより形成されている。この溝は、下部コア4と上部コア12とに挟まれていない領域では、その下面が、下部コア4の上面より下方まで達する深い溝となっている。溝には導電性材料が満たされ、この導電性材料がコイル導体7を形成している。一方、下部コア4の上面には、絶縁層5に対するエッチングストップ層16が形成されている。エッチングストップ層16は、コイル導体7の下面に対応する領域及び中間コア9aの下面に対応する領域に形成されており、コイル導体7を下部コア4から絶縁するという機能と、中間コア9aと下部コア4との間のギャップ層として働く機能との2つを同時に果たしている。
【0027】
図2から図5は、本実施形態の薄膜磁気ヘッドを製造する工程を模式的に示す図である。以下、図2等に従い、本実施形態における薄膜磁気ヘッドの製造方法について説明する。
【0028】
(イ)はじめに、工程1では、図2(a)に示すように、基板1の上に軟磁性体からなる層15が形成される。この層は、スパッタリング又は蒸着等の薄膜形成技術により形成される。
【0029】
(ロ)工程2では、図2(b)に示すように、軟磁性体の層15をフォトリソグラフィ及びエッチング法により成形し、下部コア4を形成する。
【0030】
(ハ)工程3では、図2(c)に示すように、基板1の上に、SiO2 からなる絶縁層2がスパッタリング又はCVD等の方法により形成される。絶縁層2は、いったん下部コア4が埋め込まれるのに十分な厚さまで形成された後、下部コア4の上面が露出するまで研磨して、平滑化される。
【0031】
(ニ)工程4では、図3(a)に示すように、下部コア4及び絶縁層2の上に、Al2O3からなる絶縁層16がスパッタリング又はCVD等の方法により膜付けされる。
【0032】
(ホ)工程5では、図3(b)に示すように、この絶縁層16がフォトリソグラフィ及びエッチング法により所定の形状に成形される。ここで、所定の形状とは、例えば下部コア12の上面から中間コア9bが設けられる後部領域を除いた部分の形状をいう。
【0033】
(ヘ)工程6では、図3(c)に示すように、第5工程までに得られた基板1の上にさらに軟磁性体による層17をスパッタリング又は蒸着等の薄膜形成技術により膜付けする。
【0034】
(ト)工程7では、図4(a)に示すように、フォトリソグラフィ及びエッチング法により、層17より2つの中間コア9a及び9bを形成する。中間コア9bは、下部コア4の上であって、絶縁層16が設けられていない領域に設けられる。一方、中間コア9aは、下部コア4の前部上面に、絶縁層16を介して位置するように形成される。このように中間コア9aを形成することにより、絶縁層16は、中間コア9aと下部コア4との間に所定幅の間隔を形成するギャップ層となる。
【0035】
(チ)工程8では、図4(b)に示すように、基板1上に、SiO2 からなる絶縁層5がスパッタリング又はCVD等の方法で設けられる。絶縁層5は、いったん中間コア9a、9bが埋め込まれるのに十分な厚さまで設けられ、その後、中間コア9a、9bの上面が露出するまで研磨して、平滑化される。
【0036】
(リ)工程9では、図4(c)に示すように、絶縁層5の上面にレジスト膜を塗布した後、そのレジスト膜にフォトリソグラフィ等によりコイル導体7のパターンを中間コア9bがそのほぼ中心に位置するように形成する。さらに、上記パターンを有するレジスト膜が形成された後に、絶縁層5及び絶縁層2をエッチングする。このエッチングには、CF4やCHF3ガス等のエッチングガスを用いたリアクティブイオンエッチング(RIE)を用いればよい。例えば、CHF3ガスを用いれば、絶縁層5(SiO2)と絶縁層16(Al2O3)とのエッチング速度比が20:1となる条件下で行うことができる。これにより、絶縁層16は、リアクティブイオンエッチングに対するエッチングストップ層として働き、下部コア4の上側の領域ではエッチングが絶縁層16まで達したところで見かけ上停止する。一方、下部コア4が存在しない領域では、エッチングが絶縁層2の内部まで進行する。これにより、この一つのエッチング工程により、下部コア4が存在する領域ではその深さが下部コア4まで達していないが、下部コア4が存在しない領域では下部コア4の上面のある位置より下の位置までその深さが達している溝18が得られる。
【0037】
(ヌ)工程10では、図5(a)に示すように、スパッタリング、蒸着等の薄膜形成技術により、溝18に導電性材料を充填し、さらに研磨によりその上面を平滑化する。この工程により、溝部18の中にコイル導体7が形成される。コイル導体7は、下部コア4の上では、絶縁層16により下部コア4より絶縁されており、下部コア4が存在していない領域では、下部コア4の上面より下方まで延び、大きな断面積を有している。なお、ここでは、導電性材料として、例えば銅(Cu)、金(Au)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)を用いることができる。
【0038】
(ル)工程11では、図5(b)に示すように、2つの中間コア9a及び9bを除いた部分に絶縁層10を形成する。
【0039】
(ヲ)工程12では、図5(c)に示すように、下部コア4と対向する位置に軟磁性体からなる上部コア12を形成する。
【0040】
(ワ)工程12以降は、図2等において不図示であるが、特開平7−272217号について説明した図12の(a)及び(b)と同一の工程にしたがい、絶縁層11、導体13及びリード線14が形成される。そして、最後に、中間コア9aを含む領域のいずれかにおいて製造されたヘッドを切断し、さらにリードワイヤ等を取り付けることで、薄膜磁気ヘッドが完成される。
【0041】
以上説明したように、本実施形態の薄膜磁気ヘッドでは、下部コア4と絶縁層5との間にエッチングストップ層を設けているので、工程9において説明したように、絶縁層2及び5に、2つの異なる溝深さを有する一の溝18を一のエッチング工程で形成することが可能となっている。したがって、コイルの直流抵抗が低い薄膜磁気ヘッドを製造するあたって、従来の薄膜磁気ヘッドのように、コイル導体7を形成する際に、その下層側と上層側とを別々に形成し、製造工程数が増大するという問題もなく、また、上層側を下層側に正確に位置決めして形成しなければならないという製造上の困難性も生じない。また、下部コア4の上側における絶縁層のエッチングは、エッチングストップ層で実質的に止まり、下部コア4まで達することがないので、従来のように絶縁層5のエッチング時間を厳密に管理する必要はない。
【0042】
なお、本実施形態では、エッチングストップ層は、同時に中間コア9aと下部コア4との間のギャップ層も兼ねている。したがって、エッチングストップ層は、従来の薄膜磁気ヘッドにおいてギャップ層を形成する工程と同一の工程によりギャップ層と同時に形成されるものである。よって、この点からも本実施形態は、その工程数を従来より増大させることなくコイルの直流抵抗が低い薄膜磁気ヘッドを製造することを可能とするものである。
【0043】
さらに、従来の薄膜磁気ヘッドでは、エッチングにより形成した溝部の底面の膜厚が不均一となるのに対し、本実施形態のように下部コア4の上面にエッチングストップ層を膜付けする場合には、比較的容易に平坦な層を形成することができるので、絶縁膜を得るにあたりエッチングストップ層の膜厚を大きくとる必要はない。また、エッチングストップ層をAl2 O3 、ZrO2 等の絶縁性の高い材料から形成することにより膜厚を薄く抑制することが可能である。例えば本実施形態のようにAl2 O3 を用いた場合には、エッチングストップ層の膜厚を約10nmまで縮小することが可能である。このことから、本実施形態の薄膜磁気ヘッドでは、ヘッドの内部領域におけるコイル導体の断面積を特開平7−272217号に開示された薄膜磁気ヘッドのそれより拡大し、コイルの直流抵抗をより一層低減すること、あるいは、コイル導体の断面積を同一に維持しつつも、薄膜磁気ヘッド全体の厚みを抑制して、薄膜磁気ヘッド全体の一層の小型化を図れるという効果がある。
【0044】
さらにまた、本実施形態では、ヘッドの外部領域におけるコイル導体のための溝を一度のエッチングで形成するので、一様な垂直側壁を有するコイル導体が得られる。特開平7−272217号に開示された薄膜磁気ヘッドのように溝を2段階のエッチングで形成する場合には、コイル導体の上層と下層との間で段差が生じ、この段差に起因してコイルの直流抵抗が増大することもあり得るが、本実施形態では、そのような問題も回避される。
【0045】
(第2の実施形態)
第1実施形態では、ギャップ層を兼ねるエッチングストップ層を形成して薄膜磁気ヘッドを製造する場合について説明したが、エッチングストップ層は必ずしもギャップ層を兼ねるように形成する必要はなく、これを別個独立に形成することであってもよい。ここでは、本発明の第2実施形態として、エッチングストップ層をギャップ層と別個独立に形成する薄膜磁気ヘッドについて説明する。
【0046】
図6は、本実施形態による薄膜磁気ヘッドの製造工程の一部を示す図である。本実施形態による薄膜磁気ヘッドの製造工程は、基本的には図2等に示す第1実施形態の製造工程と同様であって、主にその工程5を図6に示す工程15から工程17までと入れ替えたものである。
【0047】
ここで、工程15から工程17までを説明すると以下の通りとなる。
【0048】
(カ)まず、工程15では、図6(a)に示すように、まずAl2 O3 からなる絶縁層20を下部コア4及び絶縁膜2の上面に形成する。このとき絶縁層20は、10nm以上1μm以下の膜厚に形成する。膜厚を10nm以上とするのは、これが、コイル導体7を下部コア4から絶縁するために必要とされる最低限の厚みだからである。
【0049】
(ヨ)次に、工程16では、図6(b)に示すように、前工程で形成された絶縁層20を所定の形状に成形し、後に膜付けされる絶縁層5に対してのエッチングトップ層を得る。ここで、所定の形状とは、例えば下部コア4の上面から後の工程で中間コア9a及び9bが形成される前部及び後部の一部領域を除いた部分の形状をいう。
【0050】
(タ)次に、工程17では、図6(c)に示すように、後に中間コア9aと下部コア4との間のギャップ層となる非磁性層21を形成する。非磁性層21は、下部コアの上面であって絶縁層20が形成されていない領域のうち、薄膜磁気ヘッドの前方側に形成される。
【0051】
以上説明したように、本実施形態では、エッチングストップ層をギャップ層と別個独立に形成するので、エッチングストップ層の膜厚をギャップ層のそれによらず独立に決定できる。したがって、本実施形態の薄膜磁気ヘッドは、コイル導体と下部コアとの間が確実に絶縁される等の第1実施形態の薄膜磁気ヘッドと同一の効果の他に、要求される薄膜磁気ヘッドの性能に応じて、あるいは絶縁層を形成する材質やその絶縁層の膜質に応じて膜厚を自由に設定してエッチングストップ層を形成できるという効果を有する。
【0052】
(その他の実施形態)
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、単なる例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0053】
例えば、上記実施形態では、絶縁層2及び5をSiO2 より、また、絶縁層16をAl2 O3 より形成する場合について説明したが、これは、絶縁層2及び5をエッチングする場合、特にリアクティブイオンエッチングの方法によりエッチングする場合に、絶縁層2及び5に対し絶縁層16がエッチングストップ層として機能できること、すなわち、それらの層のエッチング速度比が例えば20:1と十分に大きくなるものであれば、他の材料から形成することであってもよく、例えば、絶縁層2及び5は、TiO2 又はTa2O5等から形成することであってもよく、絶縁層16は、ZrO2 等から形成することであってよい。
【0054】
また、エッチングストップ層は、溝18を形成する工程9において下部コアがエッチングされることを防止するのに、そして、コイル導体7を下部コア4の上面から絶縁するのに必要とされる下部コア上面の最低限の領域に形成すればよく、上記実施形態のように幅広い領域に形成する必要は必ずしもない。
【0055】
なお、本実施形態で特にリアクティブイオンエッチング(RIE)について言及しているのは、RIEは、エッチングストップ層と被エッチングストップ層との選択比を大きくすることができ、かつ、エッチングの方向性に優れ、コイル導体を形成するための溝を高いアスペクト比に加工するのに適しているからである。RIE以外のエッチング方法であっても、ECR、イオンミリングによって溝部を形成することとしてももちろんよい。
【0056】
【発明の効果】
以上詳しく説明したように、本発明に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法及び薄膜磁気ヘッドによれば、とくに、下部コアの上面の所定領域に、所定のエッチャントに対して第1の絶縁材料よりもエッチング速度が遅くエッチングされる第2の絶縁材料からなる絶縁材料を用いてエッチングストップ層として機能する第2の絶縁層を形成することにより、下部コアと上部コアとの間の内部領域内及びこの内部領域の外側の外部領域内に渦巻状に配置された渦巻状のコイルは、内部領域内と外部領域内とで各コイルの高さを違えて単層で同一工程により形成できると共に、内部領域の外側の外部領域における溝の断面積を内部領域における溝の断面積より増大させることができ、内部領域の外側でのコイルの断面積が大きく直流抵抗が小さい薄膜磁気ヘッドを容易に製造することが可能になった。
【0057】
また、本発明によれば、下部コアの上面に形成された第2の絶縁層(エッチングストップ層)によりコイルを下部コアより絶縁することとしたので、従来よりもコイルと下部コアとの間隙を小さくし、内部領域におけるコイルの断面積をも増大させることが可能となり、コイルの直流抵抗がより一層小さい薄膜磁気ヘッドを提供できるようになった。
【0059】
さらにまた、本発明によれば、アスペクト比の高い溝の加工に適したエッチング方法を用いてコイルの直流抵抗が小さい薄膜磁気ヘッドを製造することが容易となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態による薄膜磁気ヘッドを示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態による薄膜磁気ヘッドを製造する工程を模式的に示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態による薄膜磁気ヘッドを製造する工程であって、図2の続きを模式的に示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態による薄膜磁気ヘッドを製造する工程であって、図3の続きを模式的に示す図である。
【図5】本発明の第1実施形態による薄膜磁気ヘッドを製造する工程であって、図4の続きを模式的に示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態による薄膜磁気ヘッドの製造工程の一部を示す図である。
【図7】ヘッドロータリートランスの等価回路及びその等価回路における低域カットオフ周波数と直流抵抗の関係を示す図である。
【図8】特開平7−272217号に開示された薄膜磁気ヘッドを示す図である。
【図9】特開平7−272217号に開示された薄膜磁気ヘッドの製造工程を説明する図である。
【図10】特開平7−272217号に開示された薄膜磁気ヘッドの製造工程であって、図9の続きを説明する図である。
【図11】特開平7−272217号に開示された薄膜磁気ヘッドの製造工程であって、図10の続きを説明する図である。
【図12】特開平7−272217号に開示された薄膜磁気ヘッドの製造工程であって、図11の続きを説明する図である。
【符号の説明】
1 基板
2、5、10、11、17、20 絶縁層
4 下部コア
7 コイル導体
8 非磁性層
9 中間コア
12 上部コア
G ギャップ
15、17 軟磁性体からなる層
16 エッチングストップ層
18 溝
21 非磁性層
25 パット部
26 合金層
27 リードワイヤ
Claims (2)
- 下部コアと、前記下部コアと所定間隔を隔てて対向するように配置された上部コアと、前記下部コアと前記上部コアとの間の内部領域内及びこの内部領域の外側の外部領域内に渦巻状に配置された渦巻状のコイルとを備える薄膜磁気ヘッドの製造方法であって、
基板上に、前記下部コアと、この下部コアの段差を埋めるように該下部コアの側方に隣接配置されて所定のエッチャントに対して第1のエッチング速度でエッチングされる第1の絶縁材料からなる第1の絶縁層とを形成する第1段階と、
前記下部コアの上面の所定範囲に、前記所定のエッチャントに対して第1のエッチング速度よりも遅い第2のエッチング速度でエッチングされる第2の絶縁材料からなる第2の絶縁層を形成する第2段階と、
前記所定範囲を除いた前記下部コア,前記第1の絶縁層,及び前記第2の絶縁層上に、前記第1の絶縁材料からなる第3の絶縁層を形成する第3段階と、
前記所定のエッチャントを用いて、前記内部領域では前記第2の絶縁層をエッチングストップ層として機能させてこの第2の絶縁層が露出するように前記第3の絶縁層内に第1の溝を複数形成すると共に、前記外部領域では前記第3の絶縁層内及び前記第1の絶縁層内に通じて第2の溝を複数形成することで、前記内部領域内と前記外部領域内とで各溝のエッチング深さを違えて複数の前記第1の溝と複数の前記第2の溝とによる渦巻状の溝部を形成する第4段階と、
前記渦巻状の溝部に導電性材料を満たして前記渦巻状のコイルを形成する第5段階と、
前記内部領域内の前記第3の絶縁層の上方に前記上部コアを形成する第6段階と、
を少なくとも含むことを特徴とする薄膜磁気ヘッドの製造方法。 - 下部コアと、前記下部コアと所定間隔を隔てて対向するように配置された上部コアと、前記下部コアと前記上部コアとの間の内部領域内及びこの内部領域の外側の外部領域内に渦巻状に配置された渦巻状のコイルとを備える薄膜磁気ヘッドであって、
請求項1記載の製造方法を用いて製造されたことを特徴とする薄膜磁気ヘッド。
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JP02593598A JP3928237B2 (ja) | 1998-02-06 | 1998-02-06 | 薄膜磁気ヘッド及びその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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JPH11232611A JPH11232611A (ja) | 1999-08-27 |
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Family Applications (1)
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JP02593598A Expired - Fee Related JP3928237B2 (ja) | 1998-02-06 | 1998-02-06 | 薄膜磁気ヘッド及びその製造方法 |
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-
1998
- 1998-02-06 JP JP02593598A patent/JP3928237B2/ja not_active Expired - Fee Related
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JPH11232611A (ja) | 1999-08-27 |
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