JP3927083B2 - ノック式ボールペン - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ノック式ボールペンに関する。詳細には、軸筒後端のノック部を前方へ押圧することにより、回転カム部材を前方に移動させ且つ回転させ、軸筒の先端孔からレフィルのペン先を突出可能に構成したノック式ボールペンに関する。尚、本発明で「前」とはペン先側を示し、「後」とはその反対側を示す。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のノック式ボールペンにおいて、例えば、特開平8−112992号公報には、外周面にリブを備えた内部材を、レフィルの貫通孔内(本発明のインキ収容管の後端開口部内)に挿入する構成の油性ボールペンのレフィル保持具(本発明の回転カム部材)が開示されている。
【0003】
前記従来の構成は、内部材のリブ間に空気通路を形成する構成であるため、リブの高さが低い場合、内部材がレフィルの内面に圧入されると、内部材のリブがレフィルの内面に食いついて、内部材の外面とレフィルの内面との間の空気通路が潰れて小さくなり、インキ消費に伴う十分な量の空気を確実にインキ収容管内に取り込むことができないおそれがある。
【0004】
また、前記従来の構成は、内部材の外面とレフィルの内面とが圧入される場合、レフィルとレフィル保持具が不用意に分離することはないとしても、レフィルを交換する際、レフィルを容易に取り出すことができないおそれがあり、レフィルの交換が不便となる。
【0005】
さらに、前記従来の構成は、リブとリブの間に空気通路を形成する構成のため、内部材の外周面とレフィルの内周面との間に複数の空気通路が周状に分散されて形成され、空気通路全体の開口量が必要以上に大きくなりがちであり、逆流インキが、内部材の外面とレフィルの内面との間の空気通路を容易に通過し外部に漏出するおそれがあり、内部材によるインキ漏出防止の効果は小さい。特に、前記従来の構成は、レフィル内に油性インキを充填したタイプであるが、レフィル内に前記油性インキに代えて水性インキ及び高粘度流体よりなる追従体を充填した場合に、ペン先を軸筒内に収納させるときにレフィルを後方に勢いよくリターンさせると、その衝撃により水性インキ及び追従体が逆流して、リブ間の空気通路を通してレフィルの後端からインキ及び追従体が漏出するおそれがある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記従来の問題点を解決するものであって、筆記時のレフィル後端開口部からの十分な空気の取り込みが可能となり、しかも、レフィル交換時のレフィルの容易な取り外しができ、さらに、レフィルのリターン衝撃時の十分なインキ漏出防止が可能となるノック式ボールペンを提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
〔1〕本発明は、ペン先31と該ペン先31を先端に備えたインキ収容管32とからなるレフィル3を、後方付勢状態で前後移動可能に軸筒2内に収容し、出没機構を構成する回転カム部材4を前記インキ収容管32の後端に当接させ、軸筒2後端のノック部8を前方へ押圧することにより、前記回転カム部材4を前方に移動させ且つ回転させ、軸筒2の先端孔21からレフィル3のペン先31を突出可能に構成したノック式ボールペン1であって、前記回転カム部材4の前面に、インキ収容管32の後端開口部内に挿入される突出部5と、インキ収容管32の後端に当接する当接部6とを設け、前記突出部5の外面に、インキ収容管32の後端開口部の内周縁部に圧接する傾斜面状の圧接部51を設け、前記圧接部51より前方の突出部5の外面とインキ収容管32の内面とを非接触にし、前記圧接部51に切欠部51aを前後方向に設け、前記切欠部51aと連通する凹部61を前記当接部6に設け、回転カム部材4をインキ収容管32の後端に当接させた際、前記切欠部51a及び前記凹部61により、回転カム部材4とインキ収容管32の後端部との間にインキ収容管32の内部と外部とを連通させる空気通路9を形成したこと(請求項1)を要件とする。
【0008】
切欠部51aによって、インキ収容管32の後端開口部の内周縁部と回転カム部材4の突出部5の外面の圧接部51との間に空気通路9が形成されることにより、突出部5の外面がインキ収容管32の後端開口部の内周縁部に圧接されても、空気通路9が潰れて小さくなることがなく、軸筒2の後端開口部の内周縁部と突出部5の外面との間に、切欠部51aの大きさに相当する空気通路9を確実に形成することができる。それにより、インキ消費に伴う十分な量の空気を確実にインキ収容管32内に取り込むことができる。
【0009】
また、インキ収容管32の後端開口部の内周縁部に、突出部5の外面の傾斜面状の圧接部51が圧接し、且つ、前記圧接部51よりも前方の突出部5の外面とインキ収容管32の内面とが非接触である構成により、インキ収容管32と突出部5との分離が容易となり、レフィル3の交換時、レフィル3を容易に取り外すことができる。
【0010】
さらに、切欠部51aにより空気通路9を形成するため、リブとリブの間に空気通路9を設ける場合に比べ、空気通路9全体の開口量を小さくでき、ペン先没入時の衝撃によりインキが逆流したとしても、インキの漏出を十分に防止することが可能となる。
【0011】
〔2〕前記請求項1のノック式ボールペン1において、インキ収容管32の内部に、水性インキ33と、該水性インキ33の消費に伴い前進する高粘度流体よりなる追従体34とを充填してなること(請求項2)が好ましい。
【0012】
一般に水性インキ33は油性インキに比べ粘度が低いため、水性インキ33及び追従体34をインキ収容管32内に充填した場合、油性インキを充填した場合に比べ、ペン先没入時の衝撃により、水性インキ33及び追従体34が、逆流して、インキ収容管32の後端開口部から外部に漏出し易いが、前記請求項1の構成により、前記漏出事故の発生を十分に抑えることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0014】
図1乃至図4に本発明の実施例を示す。
【0015】
本実施例のノック式ボールペン1は、軸筒2と、該軸筒2内に収容されるレフィル3と、該レフィル3のペン先31を軸筒2の先端孔21より出没自在にさせる出没機構とを備える。
【0016】
(レフィル)
前記レフィル3は、ペン先31と、該ペン先31が前端開口部に圧入固着されたインキ収容管32と、該インキ収容管32内に充填される水性インキ33と、該水性インキ33の後端に充填され且つ該水性インキ33の消費に伴い前進する高粘度流体よりなる追従体34とからなる。
【0017】
(インキ収容管)
前記インキ収容管32は、合成樹脂(例えは、ポリプロピレン)の押出成形より得られる両端に開口部を備えた円筒体である。前記インキ収容管32の外面には、コイルスプリング係止用の突部32aが形成される。
【0018】
(ペン先)
前記ペン先31は、例えば、先端に回転可能にボールを抱持した金属製のボールペンチップのみからなる構成、または前記ボールペンチップの後部外面を保持した合成樹脂製のペン先ホルダーからなる構成のいずれであってもよい。
【0019】
(出没機構)
前記出没機構は、回転カム機構を用いたノック式出没機構であり、軸筒2内に配置された円筒状のカム筒7と、該カム筒7のカム溝71と係合し且つインキ収容管32の後端と当接する回転カム部材4と、該回転カム部材4と係合し且つ軸筒2後端より突出するノック棒8と、軸筒2内に収容され且つレフィル3を後方へ付勢するコイルスプリング22とからなる。また、本実施例のノック式出没機構は、ペン先突出操作及びペン先没入操作のいずれもが、ノック棒8を前方へ押圧する操作である。
【0020】
(カム筒)
図1及び図4(c)に示すように、カム筒7は、その内面に、回転カム部材4が係合するカム溝71を備える。前記カム溝71は、前方へ突出する鋸歯状の複数のカム歯の間に形成される。また、前記カム筒7の後端には、クリップ72が一体または別部材の取り付けにより設けられる。
【0021】
(回転カム部材)
図2、図3及び図4(b)に示すように、回転カム部材4は、その外面に長手方向に延びる3本の突条41を備え、該突条41が、カム筒7のカム溝71と係合される。
【0022】
また、前記回転カム部材4は、インキ収容管32の後端と当接する当接部6と、該当接部6よりも前方に突出され且つインキ収容管32の後端開口部内に挿入される先細状の突出部5とを備える。前記突出部5は、傾斜面状の圧接部51(具体的には円錐面)を備え、該圧接部51がインキ収容管32の後端開口部の内周縁部に圧接する。前記圧接部51の前方の突出部5の外面は、インキ収容管32の内面と非接触である。即ち、インキ収容管32の後端と回転カム部材4とが非嵌合であるため、レフィル3を交換する際、インキ収容管32と回転カム部材4とを容易に分離することができる。
【0023】
前記傾斜面状の圧接部51には、一本の平面状の切欠部51aが前後方向に設けられる。さらに、前記当接部6には、前記切欠部51aと連通し且つ径方向外方に開口する凹部61が設けられる。それにより、インキ収容管32の後端開口部の内周縁部と回転カム部材4の突出部5外面との間、及びインキ収容管32の後端面と回転カム部材4の当接部6との間に、一本の空気通路9が形成される。前記切欠部51aとインキ収容管32の後端開口部の内周縁部との間に形成される空気通路9は、横断面形状が半月状であり、前記空気通路9の横断面の径方向の幅は、空気流通に必要最低限の0.1mm〜0.2mmに設定されている。それにより、インキ収容管32の後端開口部の内面と突出部5の外面との間の空気通路9の開口量を十分に小さくでき、ペン先没入時のリターン衝撃により水性インキ33及び追従体34が逆流したとしても、水性インキ33及び追従体34の漏出を十分に防止することが可能となる。
【0024】
また、前記切欠部51aにより、圧接部51とインキ収容管32の後端開口部の内周縁部との間に空気通路9が形成されることから、切欠部51aの大きさに相当する空気通路9が確実に得られ、インキ消費に伴う十分な量の空気を確実にインキ収容管32内に取り込むことができる。
【0025】
また、前記回転カム部材4の突条41の前端には、前記当接部6よりも前方に突出する突起41aが形成される。前記突起41aの内側には、傾斜面が形成され、該傾斜面がインキ収容管32の後端部の外周縁部と圧接される。即ち、本実施例では、インキ収容管32の後端開口部の内周縁部に、回転カム部材4の突出部5外面の傾斜面状の圧接部51が圧接されると同時に、インキ収容管32の後端部の外周縁部に、回転カム部材4の突条41の突起41a内側の傾斜面が圧接される。それにより、インキ収容管32の後端と回転カム部材4との安定した当接が可能となる。
【0026】
尚、前記回転カム部材4の傾斜面状の圧接部51は、外径が前方に向かうに従い小さくなるものであれば、円錐面の他に、凸曲面または凹曲面であってもよい。また、前記切欠部51aの形状は、平面状の他に、凹状であってもよい。前記切欠部51aにより形成される空気通路9の横断面形状は、半月状の他、三日月状、帯状、扇状、略四角形状のいずれであってもよい。
【0027】
(ノック棒)
図4(a)に示すように、ノック棒8は、その前端部に、カム筒7のカム溝71内を摺動するガイド突条81と、回転カム部材4の突条41の後端と係合するカム歯82とを備える。
【0028】
【発明の効果】
請求項1により、筆記時のレフィルの後端開口部からの十分な空気の取り込みが可能となり、しかも、レフィル交換時のレフィルの容易な取り外しができ、さらに、レフィルのリターン衝撃時の十分なインキ漏出防止が可能となる。
【0029】
請求項2により、水性インキ及び追従体が、逆流したとしても、インキ収容管の後端開口部から外部に漏出することを十分に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の縦断面図である。
【図2】図1の回転カム部材の斜視図である。
【図3】図1の要部拡大縦断面図である。
【図4】図1の出没機構を示す分解図である。
【符号の説明】
1 ノック式ボールペン
2 軸筒
21 先端孔
22 コイルスプリング
3 レフィル
31 ペン先
32 インキ収容管
32a 突部
33 水性インキ
34 追従体
4 回転カム部材
41 突条
41a 突起
5 突出部
51 圧接部
51a 切欠部
6 当接部
61 凹部
7 カム筒
71 カム溝
72 クリップ
8 ノック棒(ノック部)
81 ガイド突条
82 カム歯
9 空気通路

Claims (2)

  1. ペン先と該ペン先を先端に備えたインキ収容管とからなるレフィルを、後方付勢状態で前後移動可能に軸筒内に収容し、出没機構を構成する回転カム部材を前記インキ収容管の後端に当接させ、軸筒後端のノック部を前方へ押圧することにより、前記回転カム部材を前方に移動させ且つ回転させ、軸筒の先端孔からレフィルのペン先を突出可能に構成したノック式ボールペンであって、前記回転カム部材の前面に、インキ収容管の後端開口部内に挿入される突出部と、インキ収容管の後端に当接する当接部とを設け、前記突出部の外面に、インキ収容管の後端開口部の内周縁部に圧接する傾斜面状の圧接部を設け、前記圧接部より前方の突出部の外面とインキ収容管の内面とを非接触にし、前記圧接部に切欠部を前後方向に設け、前記切欠部と連通する凹部を前記当接部に設け、回転カム部材をインキ収容管の後端に当接させた際、前記切欠部及び前記凹部により、回転カム部材とインキ収容管の後端部との間にインキ収容管の内部と外部とを連通させる空気通路を形成したことを特徴するノック式ボールペン。
  2. インキ収容管の内部に、水性インキと、該水性インキの消費に伴い前進する高粘度流体よりなる追従体とを充填してなる請求項1記載のノック式ボールペン。
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