JP3925705B2 - 誘導電器巻線 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、変圧器などの静止誘導電器を構成する誘導電器巻線に関し、特に、円板巻線の内径側でシールド電線の端部処理をする必要のない、製作工数の少ない誘導電器巻線に関する。
【0002】
【従来の技術】
図9は、従来の誘導電器巻線の構成を示す片側断面図である。この図の左側が内径側であり、絶縁被覆された導体20が半径方向へ円板状に巻回された複数の円板巻線1,2,3,4,・・が上下に積層されている。奇数層目の円板巻線1,3,・・は導体20が外径側から内径側へ巻回され、偶数層目の円板巻線2,4,・・は導体20が内径側から外径側へ巻回されている。円板巻線1と2,円板巻線3と4,・・はそれぞれ巻線対wを形成し、各巻線対wでは奇数層目の円板巻線1,3,・・の導体20の巻き終わりが内径側を渡り部13を介して連続的に下部へ渡り、それぞれ偶数層目の円板巻線2,4,・・の導体20の巻き始めとなっている。偶数層目の円板巻線2,4,・・の導体20は巻き終わりが外径側を渡り部11を介して連続的にさらに下部へ渡り、それぞれ奇数層目の円板巻線3,5,・・の導体20の巻き始めとなっている。第1層目の円板巻線1における導体20の巻き始めが線路端子15に接続されているとともに、円板巻線1,2,3,4,・・の外径側から導体20に添うようにしてシ−ルド電線18が巻き込まれている。このシ−ルド電線18の外径側は、線路端子15側から数えて2層毎に接続部14を介して接続されている。導体20は、奇数本の素線が束ねられるとともにその外周が絶縁被覆で覆われた転位導体である。転位導体は、素線が長さ方向に行くに従って互いの位置が転位するように構成され、それによって、導体20中に発生する渦電流が小さくなり、導体20の発熱を防ぐようになっている。
【0003】
本明細書において、誘導電器巻線の構成を説明するに当たって図の書き方を簡略化する。図10は、簡略化の際の約束事を示す説明図であり、図9の構成が簡略化されて書かれた場合の片側断面図である。図10において、巻回された導体20とその接続11,13が実線で示され、巻回されたシールド電線18とその接続線14は点線で示されている。また、シールド電線18の終端部は○印で示され、下部の・・でもって以下に積層された巻線対wの作図が省略されたことを示されている。
【0004】
図11は、図10の構成の円板巻線1,2,・・が第8層目まで記載された片側断面図である。図11において、第8層目以下の円板巻線は同様な構成が繰り返されているが、シ−ルド電線18の円板巻線への巻き込みは途中の層から省略される。
【0005】
図11におけるシ−ルド電線18は、雷インパルスなどの急瞬波電圧が誘導電器巻線に印加されたときに円板巻線間に発生する過電圧を小さくするためのものである。すなわち、線路端子15に商用周波数電圧が印加された場合の各円板巻線の電位分布は、その円板巻線のインダクタンス分によって決まる。一方、線路端子15に急瞬波電圧が印加された場合の各円板巻線の初期電位分布は、その円板巻線のキャパシタンス分でほぼ決まり、線路端子15側の円板巻線間にかかる電圧が最も高く、線路端子15側から離れるにしたがって円板巻線間にかかる電圧が小さくなる。円板巻線の対地キャパシタンスをC、直列キャパシタンスをKとし、C/Kの平方根をαとすると、急瞬波電圧印加時における円板巻線の初期電位分布は、αの値の大小によって決まる。αが大きいほど円板巻線間にかかる電圧が高くなるので、導体自体の絶縁被覆厚さや円板巻線間の寸法を増やす必要が生じ、誘導電器巻線全体の体格が大きくなる。したがって、円板巻線の直列キャパシタンスKをできるだけ大きくし、αを極力小さくする努力が行われている。
【0006】
図11において、各巻線対wにおける奇数層目の円板巻線に巻き込まれたシールド電線18と、偶数層目の円板巻線に巻き込まれたシ−ルド電線18との接続によって、各巻線対wにおける奇数層目と偶数層目の円板巻線同士に発生する電圧がシ−ルド電線18を介して近接するようになる。すなわち、各円板巻線の直列キャパシタンスKが大きくなる。それによって、誘導電器巻線の初期電位分布が改善される。
【0007】
図12は、各誘導電器巻線における初期電位分布を示す特性線図である。誘導電器巻線の一方の線路端に雷インパルス電圧が印加されるとともに他方の線路端が接地され、横軸の巻線数は電圧印加側の線路端を0%、接地側の線路端を100%で示す。縦軸は各円板巻線に発生する対地電圧であり印加電圧値を100%、接地を0%で示す。横軸の巻線数を円板巻線の一層あたりの巻線数で割ると、円板巻線の層数となる。一点鎖線の特性曲線Eは、円板巻線にシールド電線が巻き込まれていない場合の例であり、αがほぼ20になる。線路端0%に近くなるにしたがって特性曲線Eの勾配が大きくなり、電圧印加側の円板巻線間に発生する電圧が大きくなることを示している。一方、実線の特性線Fはαを0とした場合の特性であり、円板巻線間に発生する電圧が均一になる。特性線Fのような誘導電器巻線を実際に実現させるのは不可能であるが、出来るだけ特性線Fに近づけるようにすれば、円板巻線間に発生する電圧を低減することができ、誘導電器巻線の体格を縮小することができる。
【0008】
図12における実線の特性曲線Dが、図11の構成の場合の特性である。線路端の0%からP点までの円板巻線にシ−ルド電線が巻き込まれているのでαがぼぼ10と小さくなる。一方、P点から接地端の100%までの円板巻線にはシ−ルド電線が巻き込まれていない。そのために、特性曲線DはP点において折れ曲がり、線路端0%からP点までの勾配が特性曲線Eの場合より緩やかになっている。シ−ルド電線によって、電圧印加側の円板巻線間に発生する電圧が小さくなり、円板巻線を構成する導体の絶縁被覆厚さや円板巻線間の絶縁寸法を縮小することができる。すなわち、シ−ルド電線の巻き込みによって、誘導電器巻線の体格を小さくすることができる。なお、図12におけるその他の特性曲線については後述される。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述したような従来の誘導電器巻線は、製作工数が多いという問題があった。
【0010】
すなわち、図9より分かるように、シ−ルド電線18の終端部16は、その端部を絶縁被覆する必要があるが、終端部16が各円板巻線1,2,・・の内部に位置するために、その端部の絶縁処理が厄介で時間がかかりコストアップの要因になっていた。
【0011】
この発明の目的は、シールド電線の終端部が円板巻線の内部に来ないようにすることによって、製作工数の少ない誘導電器巻線を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、この発明によれば、絶縁被覆された導体が半径方向へ円板状に巻回されてなる円板巻線が複数積層されて線路端子に接続され、前記線路端子側から数えて奇数層目の円板巻線は導体が外径側から内径側へ巻回されるとともに偶数層目の円板巻線は導体が内径側から外径側へ巻回され、前記奇数層目の円板巻線における導体は巻き終わり部が内径側を連続的に渡って反線路端子側に隣接する偶数層目の円板巻線の導体の巻き始め部となり、前記偶数層目の円板巻線における導体の巻き終わり部は外径側を連続的に渡って反線路端子側に隣接する奇数層目の円板巻線の導体の巻き始め部となり、第1層目の円板巻線における導体の巻き始め部は線路端子に接続され、線路端子側の複数層の円板巻線の導体に添うようにしてシールド電線が巻き込まれてなる誘導電器巻線において、前記シールド電線が巻き込まれる円板巻線は第1層目から数えて4層毎の4層巻線群を形成し、前記4層巻線群は線路端子側から2層毎の巻線対からなり、前記巻線対におけるシールド電線を各奇数層目の円板巻線の外径側から内径側まで全体に巻き込み、その巻き終わり部は内径側を前記導体とともに連続的に渡って反線路端子側に隣接する偶数層目の円板巻線のシールド電線の巻き始め部となって、当該円板巻線の内径側から外径側まで全体に巻き込んでこのシールド巻線の終端部を円板巻線の外径側に形成し、前記4層巻線群のそれぞれの巻線対に巻き込まれたシールド電線同士が外径側の終端部で互いに接続されてなるようにすることがよい。それによって、シ−ルド電線の終端部が円板巻線の内部に来ることがなくなり、シールド電線終端部の絶縁処理が不要になる。また、シ−ルド電線が円板巻線の内径側まで巻き込まれるので、シ−ルド電線が導体と対向する面積が従来の場合より増え、円板巻線の直列キャパシタンスKが大きくなる。
【0013】
また、かかる構成において、前記円板巻線の導体の半径方向側に前記導体と並列なもう一つの導体が重ねて巻き込まれ、前記もう一つの導体に添うようにしてもう一つのシールド電線が巻き込まれ、奇数層目の円板巻線における前記もう一つのシールド電線の巻き終わり部は内径側を前記もう一つの導体とともに連続的に渡って反線路端子側に隣接する偶数層目の円板巻線における前記もう一つのシールド電線の巻き始め部となり、前記4層巻線群のそれぞれの巻線対に巻き込まれたもう一つのシールド電線同士が外径側で接続されてなるようにするとよい。それによって、シ−ルド電線同士が並列に接続され、導体の半径方向側に並列な導体が2本重ねて巻き込まれた円板巻線についてもシ−ルド電線の終端部が円板巻線の内部に来ることがなくなり、シールド電線終端部の絶縁処理が不要になる。
【0014】
また、かかる構成において、前記円板巻線の導体の半径方向側に前記導体と並列なもう一つの導体が重ねて巻き込まれ、前記もう一つの導体に添うようにしてもう一つのシールド電線が巻き込まれ、奇数層目の円板巻線における前記もう一つのシールド電線の巻き終わり部は内径側を前記もう一つの導体とともに連続的に渡って反線路端子側に隣接する偶数層目の円板巻線における前記もう一つのシールド電線の巻き始め部となり、偶数層目の円板巻線における前記シールド電線の巻き終わり部は外径側を渡って線路端子側の奇数層目の円板巻線における前記もう一つのシールド電線の巻き始め部に接続されてなるようにするとよい。それによって、シ−ルド電線同士が直列に接続され、シ−ルド電線と導体との間に発生する電圧が増えるので、シ−ルド電線同士が並列に接続された場合より直列キャパシタンスKが大きくなる。
【0015】
また、かかる構成において、線路端子側から数えて2つの4層巻線群からなる8層巻線群が形成され、前記8層巻線群の各4層巻線群に巻き込まれたシールド電線同士が外径側でそれぞれ接続されてなるようにするとよい。それによって、シ−ルド電線の導体と対向する面積がさらに増え、直列キャパシタンスKがより大きくなる。
【0016】
また、かかる構成において、前記4層巻線群の反線路端子側に2層毎の円板巻線からなる2層巻線群が設けられ、前記2層巻線群の各円板巻線にそれぞれシールド電線が外径側から巻き込まれ、前記2層巻線群の各円板巻線に巻き込まれたシールド電線同士がそれぞれ外径側で接続されてなるようにするとよい。それによって、シ−ルド電線の終端部が円板巻線の内部に来る個所が従来より減るとともに、直列キャパシタンスKも従来より大きくなる。
【0017】
また、かかる構成において、シールド電線が円板巻線の最内径側の面に添わされてなるようにしてもよい。それによって、円板巻線の内径側の電界をシ−ルド電線でもって緩和することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を実施例に基づいて説明する。図1は、この発明の実施例にかかる誘導電器巻線の構成を示す片側断面図である。図1の左側が内径側であり、円板巻線1,2,・・が軸方向の上下に複数積層されている。この円板巻線1,2,・・の導体20の構成は、図9に示される従来の構成と同じであり、従来と同じ部分は同一参照符号を付けることによって詳細な説明は省略する。一方、絶縁被覆されたシ−ルド電線12の構成は従来と異なり、シ−ルド電線12が、奇数層の円板巻線1,3,・・と偶数層の円板巻線2,4,・・とのそれぞれの巻線対wに巻き込まれている。各巻線対wにおいては、シ−ルド電線12が、奇数層の円板巻線1,3,・・の導体20に沿って外径側から内径側まで巻き込まれ、連続的に内径側で渡り17を介して偶数層の円板巻線2,4,・・側へ渡っている。そのシ−ルド電線12は、さらに偶数層の円板巻線2,4,・・の導体20に沿って内径側から外径側まで巻き込まれ、その外径側で終端している。
【0019】
また、図1において、4層巻線群Wは、積層順の2つの巻線対wからなり、第1層目の円板巻線に巻き込まれたシ−ルド電線12と第3層目の円板巻線に巻き込まれたシ−ルド電線12とが、外径側で互いに接続線14を介して接続されている。図1では、2つの4層巻線群Wしか示されていないが、図1の下部にも同様な構成の4層巻線群Wが積層され、積層順の2つの巻線対w同士が外径側で互いに接続線14を介して接続されている。
【0020】
図1におけるシ−ルド電線12の終端部は円板巻線1,2,・・の内部に来ることがなく、シ−ルド電線12の終端部の絶縁処理が不要である。したがって、誘導電器巻線の製作コストが従来より低減されるようになる。また、シ−ルド電線12が各円板巻線1,2,・・の内径側まで巻き込まれるので、シ−ルド電線12と導体20とが対向する面積が従来の場合より増え、直列キャパシタンスKも大きくなる。それによって、αが従来より小さくなり、雷インパルス印加時における誘導電器巻線内の初期電位分布が改善される。
【0021】
図2の(A),(B)は、この発明の互いに異なる実施例にかかる誘導電器巻線の構成を示す片側断面図であり、図10で説明された約束の通りに簡略化して書かれた図である。図2の(A)は、図1の実施例における誘導電器巻線の片側断面図である。図2の(B)は、上部の4層巻線群Wにおける巻線対wの円板巻線2に巻き込まれたシ−ルド電線12が、接続線14を介して円板巻線4に巻き込まれたシ−ルド電線12の外径側で接続されている。また、下部の4層巻線群Wにおける巻線対wの円板巻線6に巻き込まれたシ−ルド電線12が、接続線14を介して円板巻線8に巻き込まれたシ−ルド電線12の外径側で接続されている。その他の構成は、図2の(A)と同じである。図2の(B)の場合も、シ−ルド電線12の終端部が円板巻線1,2,・・の内部に来ることがなくなり、シ−ルド電線12の終端部の絶縁処理が不要であるとともに直列キャパシタンスKも従来より大きくなる。
【0022】
図3は、この発明のさらに異なる実施例にかかる誘導電器巻線の構成を示す片側断面図である。図3は、上部の4層巻線群Wにおける巻線対wの円板巻線1に巻き込まれたシ−ルド電線12が、接続線14を介して円板巻線4に巻き込まれたシ−ルド電線12の外径側で接続されている。また、下部の4層巻線群Wにおける巻線対wの円板巻線5に巻き込まれたシ−ルド電線12が、接続線14を介して円板巻線8に巻き込まれたシ−ルド電線12の外径側で接続されている。その他の構成は、図2の(A)や(B)と同じである。このような構成とすることによって、シ−ルド電線12の終端部が円板巻線1,2,・・の内部に来ることがなくなり、シ−ルド電線12の終端部の絶縁処理が不要であるとともに直列キャパシタンスKも従来より大きくなる。なお、図2および図3のいずれの実施例も、4層巻線群Wにおける各巻線対wの奇数層目あるいは偶数層目のいずれかの円板巻線に巻き込まれたシ−ルド電線12同士が外径側で接続された構成であり、どの場合もシ−ルド電線12の終端部の絶縁処理が不要であるとともに直列キャパシタンスKも従来より大きくなる。
【0023】
図12における実線の特性曲線Aは、図1の構成の場合の特性である。線路端の0%からS点までの円板巻線にシールド電線が巻き込まれているので、αが2ないし3と小さくなる。一方、S点から接地端の100%までの円板巻線にはシールド電線が巻き込まれていない。そのために、特性曲線AはS点において折れ曲がるが、線路端0%からS点までの勾配が従来の特性曲線Dの場合より緩やかになっている。シールド電線によって、電圧印加側の円板巻線間に発生する電圧が小さくなり、円板巻線を構成する導体の絶縁被覆厚さや円板巻線間の絶縁寸法を縮小することができる。すなわち、シールド電線の巻き込みによって、誘導電器巻線の体格を小さくすることができる。例えば、雷インパルス耐電圧試験電圧値が1050kVである誘導電器巻線の場合、導体の絶縁厚さを2mmから1mmに減らすことができる。それによって、誘導電器巻線の冷却特性も向上するようになる。なお、図2の(B)の場合および図3の場合の特性も図12における特性曲線Aとほぼ同様になる。
【0024】
図4の(A),(B)は、この発明のさらに異なる実施例にかかる誘導電器巻線の構成を示す片側断面図である。図4の(A)は、巻線対wの円板巻線2に巻き込まれたシールド電線12が接続線14を解して円板巻線3に巻き込まれたシールド電線12の外径側で接続されてなる上部の4層巻線群Wと、巻線対wの円板巻線6に巻き込まれたシールド電線12が接続線14を介して円板巻線7に巻き込まれたシールド電線12の外径側で接続されてなる下部の4層巻線群Wとからなり、円板巻線1のシールド電線12と、円板巻線5のシールド電線12とが接続線24を介して外径側で接続され、円板巻線1〜8よりなる8層巻線群が形成されている。また、図4の(B)は、図2の(A)の構成と同じ4層巻線群Wにおいて円板巻線2のシールド電線12と、円板巻線6のシールド電線12とが接続線24を介して外径側で接続され、円板巻線1〜8よりなる8層巻線群が形成おり、図2の(A)における2つの4層巻線群Wを互いに接続した構成である。それによって、シールド電線12と導体20との対向面積が図1の場合より増えるので、直列キャパシタンスKがより大きくなり、αが小さくなる。図12における一点鎖線の特性曲線Bは、図4の(A)の構成の場合の特性である。線路端の0%からT点までの円板巻線にシールド電線が巻き込まれているので、αが1.5ないし2と小さくなり、特性曲線Aの場合よりさらに特性線Fに近くなる。なお、図2の(B)あるいは図3における2つの4層巻線群Wを互いに接続して8層巻線群を形成してもよい。
【0025】
図5は、この発明のさらに異なる実施例にかかる誘導電器巻線の構成を示す片側断面図である。図5は、シールド電線12が円板巻線1,2,・・の最内径側の面に添って配され、図1の構成と比べて、シールド電線12を内径側に1ターン増してある点以外は同じである。それによって、円板巻線1,2,・・の内径側の電界がシールド電線12でもって緩和され、円板巻線1,2,・・の内径側の絶縁寸法を縮小することができ、誘導電器巻線の体格を低減することができる。
【0026】
図6は、この発明のさらに異なる実施例にかかる誘導電器巻線の構成を示す片側断面図である。円板巻線1,2,・・の導体20の半径方向側に導体と並列な導体200(導体20と区別しやすいようハッチングして示す)が重ねて巻き込まれ、導体200に添うようにしてシールド電線120(シールド電線12と区別しやすいようにハッチングしてしめす)が巻き込まれている。円板巻線1におけるシールド電線120の巻き終わり部は内径側を導体200とともに連続的に渡って円板巻線2におけるシールド電線120の巻き始め部となり、円板巻線2におけるシールド電線120は外径側まで巻回され、シールド電線12の巻き終わり部は外径側を渡って接続線140により円板巻線1におけるシールド電線120の巻き始め部に接続されている。図6は、半径方向側に重ねられた並列導体からなる円板巻線にシールド電線が巻き込まれた構成以外は、図1の構成と同じである。
【0027】
図7の(A),(B)は、この発明の互いに異なる実施例にかかる誘導電器巻線の構成を示す片側断面図であり、図7の(A)は、図6の実施例における誘導電器巻線の片側断面図である。図7の(B)は、円板巻線1,2,・・の導体20の半径方向側に導体20と並列な導体200が重ねて巻き込まれ、導体200に添うようにしてシールド電線120が巻き込まれている。円板巻線1におけるシールド電線120の巻き終わり部は内径側を導体200とともに連続的に渡って円板巻線2におけるシールド電線120の巻き始め部となり、円板巻線2におけるシールド電線120は外径側まで巻回されている。この構成も、半径方向側に重ねられた並列導体からなる円板巻線にシールド電線が巻き込まれた例である。図7の(A)は各巻線対wにおいてシールド電線12,120が直列接続され、図7の(B)は各巻線対wにおいてシールド電線12,120が並列接続されている。いずれの場合も円板巻線1,2,・・の内部でのシールド電線12,120の終端部がなく、その絶縁処理も不要となる。また、直列キャパシタンスKも従来より大きくなり、図7の(B)におけるαの値は図1の構成の場合とほぼ同様である。図7の(A)は、シールド電線12,120が直列接続されているので、シールド電線12,120と導体20との間の電位差が2倍になり、直列キャパシタンスKが図7の(B)の場合より大きくなり、誘導電器巻線の初期電位分布がよりよくなる。
【0028】
図8は、この発明のさらに異なる実施例にかかる誘導電器巻線の構成を示す片側断面図である。4層巻線群Wの下部に、円板巻線5,6と円板巻線7,8とからなる2層巻線群w1が設けられ、2層巻線群w1の各円板巻線5,6,・・にそれぞれシールド電線18が外径側から巻き込まれ、2層巻線群w1におけるシールド電線18同士が外径側で接続されている。この2層巻線群w1は、図9に示される従来の構成における巻線対wと同じ構成のものであり、図1における発明の実施例と図9における従来例とが組み合わされている。2層巻線群w1の内部にはシールド電線18の終端部が存在するが、4層巻線群Wの内部にはシールド電線12の終端部がないので全体としてその分だけ終端部の絶縁処理をする必要がなくなり、製作時間の短縮が図れる。また、直列キャパシタンスKの大きい4層巻線群Wが設けられているので、図9における従来例と比べてαの値も小さくなる。図12における一点鎖線の特性曲線Cは、図8の構成の場合の特性である。特性曲線Cは、Q点およびR点の2点で折れ曲がる。すなわち、線路端の0%からQ点までの円板巻線が4層巻線群Wを形成し、Q点からR点までの円板巻線が巻線対w1を形成している。この場合、特性曲線Cの0%からQ点までのαは5程度にしてあり、従来の特性曲線Eよりはその勾配を平坦にすることができる。そのために、図8の構成も、従来の場合より誘導電器巻線の初期電位分布がよくなる。
【0029】
なお、図1ないし図8の実施例において、導体20あるいは導体200は、必ずしも転位導体でなくてもよく、導体20あるいは導体200は、平角導線であってもよく、また、複数の平角導線が重ねられた多重平角導線であってもよい。
【0030】
さらに、図5のように最内径側に配されるシールド電線12の構成は、その他の図2や図3、図7、図8の場合にも適用することもできる。
【0031】
【発明の効果】
この発明は前述のように、シールド電線が巻き込まれる円板巻線は第1層目から数えて4層毎の4層巻線群を形成し、前記4層巻線群は線路端子側から2層毎の巻線対からなり、前記巻線対の各奇数層目の円板巻線におけるシールド電線の巻き終わり部は内径側を前記導体とともに連続的に渡って反線路端子側に隣接する偶数層目の円板巻線のシールド電線の巻き始め部となり、前記4層巻線群のそれぞれの巻線対に巻き込まれたシールド電線同士が外径側で互いに接続されてなるようにすることによって、シールド電線の終端部が円板巻線の内部に来ることがなくなり、シールド電線の終端部の絶縁処理が不要になり、製造コストが低減される。また、直列キャパシタンスKが従来より大きくなり、誘導電器巻線の体格を縮小することができる。
また、上述のように、図12の特性曲線A,B,Cはそれぞれ図1、図4の(A)、図8の実施例の場合の特性を示すものであり、特性曲線AにおけるS点、特性曲線BにおけるT点、特性曲線CにおけるQ、R点は、図12の巻線数軸における巻線構成の切り替わり点に対応するものであるが、この切り替わり点の位置の決め方として、線路端および各切り替わり点でのそれぞれの電圧の傾きがほぼ同じになるように決めてもよい。例えば、図1の実施例では、円板巻線にシールド巻線が巻き込まれていて直列キャパシタンスのより大きな第1の巻線グループが線路端・S点間に設けられるとともに、円板巻線にシールド巻線が巻き込まれておらず直列キャパシタンスのより小さな第2の巻線グループがS点・接地端間に設けられており、第1の巻線グループでは線路端近傍において電圧の傾きが最も大きく、また、第2の巻線グループではS点近傍において電圧の傾きが最も大きいが、巻線数軸におけるS点の位置が調整することにより、第1の巻線グループにおける線路端近傍での電圧の傾きと第2の巻線グループにおけるS点近傍での電圧の傾きとがほぼ同じになるようにすることができる。誘導電器巻線全体における巻線構成の切り替わり点であるS点の位置を上記のように設定すれば、第1の巻線グループにおける線路端近傍の円板巻線間の発生電圧と第2の巻線グループにおけるS点近傍の円板巻線間の発生電圧とをほぼ同じにすることができる。上述の点は、他の実施例の場合も同様であり、線路端および各切り替わり点でのそれぞれの電圧の傾きがほぼ同じになるように切り替わり点の位置を決めることにより、線路端および各切り替わり点のうちの特定の点で円板巻線間の発生電圧が異常に大きくなるのを防ぐことができる。
また、上述の各実施例の誘導電器巻線では、いずれも、シールド電線の外径側での接続個所のうち少なくとも1箇所では、複数層離れた円板巻線に巻き込まれたシールド電線同士を接続線を介して接続する構成とすることにより、複数層離れた円板巻線間をシールド電線により静電結合させて直列キャパシタンスKを増大させている。
【0032】
また、かかる構成において、円板巻線の導体の半径方向側に前記導体と並列なもう一つの導体が重ねて巻き込まれ、前記もう一つの導体に添うようにしてもう一つのシールド電線が巻き込まれ、奇数層目の円板巻線における前記もう一つのシールド電線の巻き終わり部は内径側を前記もう一つの導体とともに連続的に渡って反線路端子側に隣接する偶数層目の円板巻線における前記もう一つのシールド電線の巻き始め部となり、前記4層巻線群のそれぞれの巻線対に巻き込まれたもう一つのシールド電線同士が外径側で接続されてなるようにすることによって、導体の半径方向側に導体と並列なもう一つの導体が重ねて巻き込まれた円板巻線についてもう一つのシールド電線の終端部の絶縁処理が不要になり、製造コストが低減される。
【0033】
また、かかる構成において、円板巻線の導体の半径方向側に前記導体と並列なもう一つの導体が重ねて巻き込まれ、前記もう一つの導体に添うようにしてもう一つのシールド電線が巻き込まれ、奇数層目の円板巻線における前記もう一つのシールド電線の巻き終わり部は内径側を前記もう一つの導体とともに連続的に渡って反線路端子側に隣接する偶数層目の円板巻線における前記もう一つのシールド電線の巻き始め部となり、偶数層目の円板巻線における前記シールド電線の巻き終わり部は外径側を渡って線路端子側の奇数層目の円板巻線における前記もう一つのシールド電線の巻き始め部に接続されてなるようにすることによって、導体の半径方向側に導体と並列なもう一つの導体が重ねて巻き込まれた円板巻線について直列キャパシタンスKがさらに大きくなり、誘導電器巻線の体格をより小さくすることができる。
【0034】
また、かかる構成において、線路端子側から数えて2つの4層巻線群からなる8層巻線群が形成され、前記8層巻線群の各4層巻線群に巻き込まれたシールド電線同士が外径側でそれぞれ接続されてなるようにすることによって、直列キャパシタンスKがさらに大きくなり、誘導電器巻線の体格をさらに小さくすることができる。
【0035】
また、かかる構成において、4層巻線群の反線路端子側に2層毎の円板巻線からなる2層巻線群が設けられ、前記2層巻線群の各円板巻線にそれぞれシールド電線が外径側から巻き込まれ、前記2層巻線群の各円板巻線に巻き込まれたシールド電線同士がそれぞれ外径側で接続されてなるようにすることによって、シールド電線の終端部が円板巻線の内部に来る個所が従来より減り、製造コストが低減されるとともに、直列キャパシタンスKも従来より大きくなり、誘導電器巻線の体格も従来より小さくすることができる。
【0036】
また、かかる構成において、シールド電線が円板巻線の最内径側の面に添わされてなるようにすることによって、円板巻線の内径側の電界をシールド電線でもって緩和することができ、誘導電器巻線の体格をより小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施例にかかる誘導電器巻線の構成を示す片側断面図
【図2】(A),(B)は、この発明の互いに異なる実施例にかかる誘導電器巻線の構成を示す片側断面図
【図3】この発明のさらに異なる実施例にかかる誘導電器巻線の構成を示す片側断面図
【図4】(A),(B)は、この発明のさらに異なる実施例にかかる誘導電器巻線の構成を示す片側断面図
【図5】この発明のさらに異なる実施例にかかる誘導電器巻線の構成を示す片側断面図
【図6】この発明のさらに異なる実施例にかかる誘導電器巻線の構成を示す片側断面図
【図7】(A),(B)は、この発明の互いに異なる実施例にかかる誘導電器巻線の構成を示す片側断面図
【図8】この発明のさらに異なる実施例にかかる誘導電器巻線の構成を示す片側断面図
【図9】従来の誘導電器巻線の構成を示す片側断面図
【図10】誘導電器巻線の書き方を簡略化する際の約束事を示す説明図
【図11】図10の構成の円板巻線が第8層目まで記載された片側断面図
【図12】各誘導電器巻線における初期電位分布を示す特性線図
【符号の説明】
1,2,3,4,5,6,7,8:円板巻線、11,13:渡り部、12,18,120:シールド電線、14,24,140:接続線、15:線路端子、16:終端部、17:渡り、20,200:導体、W:4層巻線群、w:巻線対、w1:2層巻線群

Claims (6)

  1. 絶縁被覆された導体が半径方向へ円板状に巻回されてなる円板巻線が複数積層されて線路端子に接続され、前記線路端子側から数えて奇数層目の円板巻線は導体が外径側から内径側へ巻回されるとともに偶数層目の円板巻線は導体が内径側から外径側へ巻回され、前記奇数層目の円板巻線における導体は巻き終わり部が内径側を連続的に渡って反線路端子側に隣接する偶数層目の円板巻線の導体の巻き始め部となり、前記偶数層目の円板巻線における導体の巻き終わり部は外径側を連続的に渡って反線路端子側に隣接する奇数層目の円板巻線の導体の巻き始め部となり、第1層目の円板巻線における導体の巻き始め部は線路端子に接続され、線路端子側の複数層の円板巻線の導体に添うようにしてシールド電線が巻き込まれてなる誘導電器巻線において、前記シールド電線が巻き込まれる円板巻線は第1層目から数えて4層毎の4層巻線群を形成し、前記4層巻線群は線路端子側から2層毎の巻線対からなり、前記巻線対におけるシールド電線を各奇数層目の円板巻線の外径側から内径側まで全体に巻き込み、その巻き終わり部は内径側を前記導体とともに連続的に渡って反線路端子側に隣接する偶数層目の円板巻線のシールド電線の巻き始め部となって、当該円板巻線の内径側から外径側まで全体に巻き込んでこのシールド巻線の終端部を円板巻線の外径側に形成し、前記4層巻線群のそれぞれの巻線対に巻き込まれたシールド電線同士が外径側の終端部で互いに接続されてなることを特徴とする誘導電器巻線。
  2. 請求項1に記載の誘導電器巻線において、前記円板巻線の導体の半径方向側に前記導体と並列なもう一つの導体が重ねて巻き込まれ、前記もう一つの導体に添うようにしてもう一つのシールド電線が巻き込まれ、奇数層目の円板巻線における前記もう一つのシールド電線の巻き終わり部は内径側を前記もう一つの導体とともに連続的に渡って反線路端子側に隣接する偶数層目の円板巻線における前記もう一つのシールド電線の巻き始め部となり、前記4層巻線群のそれぞれの巻線対に巻き込まれたもう一つのシールド電線同士が外径側で接続されてなることを特徴とする誘導電器巻線。
  3. 請求項1に記載の誘導電器巻線において、前記円板巻線の導体の半径方向側に前記導体と並列なもう一つの導体が重ねて巻き込まれ、前記もう一つの導体に添うようにしてもう一つのシールド電線が巻き込まれ、奇数層目の円板巻線における前記もう一つのシールド電線の巻き終わり部は内径側を前記もう一つの導体とともに連続的に渡って反線路端子側に隣接する偶数層目の円板巻線における前記もう一つのシールド電線の巻き始め部となり、偶数層目の円板巻線における前記シールド電線の巻き終わり部は外径側を渡って線路端子側の奇数層目の円板巻線における前記もう一つのシールド電線の巻き始め部に接続されてなることを特徴とする誘導電器巻線。
  4. 請求項1ないし3のいずれかに記載の誘導電器巻線において、線路端子側から数えて2つの4層巻線群からなる8層巻線群が形成され、前記8層巻線群の各4層巻線群に巻き込まれたシールド電線同士が外径側でそれぞれ接続されてなることを特徴とする誘導電器巻線。
  5. 請求項1ないし4のいずれかに記載の誘導電器巻線において、前記4層巻線群の反線路端子側に2層毎の円板巻線からなる2層巻線群が設けられ、前記2層巻線群の各円板巻線にそれぞれシールド電線が外径側から巻き込まれ、前記2層巻線群の各円板巻線に巻き込まれたシールド電線同士がそれぞれ外径側で接続されてなることを特徴とする誘導電器巻線。
  6. 請求項1ないし5のいずれかに記載の誘導電器巻線において、シールド電線が円板巻線の最内径側の面に添わされてなることを特徴とする誘導電器巻線。
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