JP3924319B2 - 時効析出型希土類金属−ニッケル系合金、その製造法及びニッケル水素2次電池用負極 - Google Patents
時効析出型希土類金属−ニッケル系合金、その製造法及びニッケル水素2次電池用負極 Download PDFInfo
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Description
本発明は、水素貯蔵容器、ヒートポンプ並びにニッケル水素2次電池の負極材料等に利用することにより、高容量で、且つ長寿命を発揮する時効析出型希土類金属−ニッケル系合金の製造法に関する。
背景技術
現在多量に生産されているニッケル水素2次電池の負極用合金としては、Mm(ミッシュメタル)・Ni・Co・Mn・Al系のAB5型合金が主に使用されている。この合金は水素吸蔵量が他の合金に比べて大きく、常温における水素吸収放出圧が1〜5気圧と使用に供し易いという特徴を有している。
しかし、従来のAB5型構造の希土類金属−ニッケル系合金は、水素の吸収放出によって合金が膨張収縮し、クラックが入り、微粉化して電気特性を劣化させるという欠点がある。
また最近、更に高電気容量の電極が望まれており、該電気容量を増加させるために合金組成を原子比で、希土類金属1に対して、ニッケルを主成分とする遷移金属4.5〜5とし、希土類金属を多く含有させた合金が開発されている。
しかしこの合金は電気容量が増加するが、長寿命化が犠牲にされている。しかも、このような組成の合金を、一般的な溶解法及び鋳型鋳造法により量産する場合、希土類金属の濃化偏析部が生じ易く、この偏析部を起点としてクラックや腐食が進行するという問題もある。
このような希土類金属の濃化偏析を防止する方法として、例えば特開平2−220356号公報には、合金溶湯を、高速回転する銅製ローラ上に噴出させて急冷凝固させ、均質な合金を得る方法が提案されている。また特開平6−73466号公報には、前記急冷凝固により生じた合金の冷却歪を除去する方法として、真空中又は不活性ガス雰囲気中での550〜950℃で急冷凝固された合金を、2〜5時間焼鈍することが提案されている。これらの方法では、合金の均質性が向上し、耐蝕性及び電気寿命に改善が認められる。
しかし、電気容量の充分な改善については認められず、高電気容量及び長寿命化の両方を同時に充足するような合金については知られていないのが実状である。
ところで、従来、前記AB5型構造の希土類金属−ニッケル系合金においては、固溶域が存在しないとされている(T.B.Massalski et al.:Binary Alloy Phase Diagrams,Vol.2.1468 ASM(1986))。また、結晶粒中に微細析出相を有するAB5型の希土類金属−ニッケル系合金については知られていない。しかも前記微細析出相が、この合金をニッケル水素二次電池の負極とした場合に、電気容量と電池寿命との両方を改善する要因となりうる点についても知られていない。
発明の開示
本発明の目的は、従来のニッケル水素2次電池の負極材料用として使用しうる希土類金属−ニッケル系合金に比して、高電気容量と長寿命化との両方を同時に改善することができる時効析出型希土類金属−ニッケル系合金の製造法を提供することにある。
式(1)
R(Ni1-xMx)5+y・・・(1)
(式中、RはYを含む希土類元素又はこれらの混合元素を示し、MはCo、Al、Mn、Fe、Cu、Zr、Ti又はこれらの混合元素を示す。xは0.05≦x≦0.5、yは−0.45≦y≦0.45である。)で表される組成を示し、平均長径0.1〜20μmの析出相を有するAB5型の時効析出型希土類金属−ニッケル系合金の製造方法であって、式(1)で表される組成の原料合金を、1000℃以上の温度で溶体化処理した後、700℃以上、1000℃未満の温度T(℃)で式(2)
(830−T)/200≦logt≦(1200−T)/200・・(2)
関係を満たす時間t(時間)によって時効し、平均長径0.1〜20μmの析出相を析出させるAB5型の時効析出型希土類金属−ニッケル系合金の製造法が提供される。
【図面の簡単な説明】
Fig.1(a)及び(b)は、本発明の合金を製造するにあたり、原料合金を溶体化処理させるための条件を決定するために行なった実験結果を示すグラフである。
Fig.2(a)及び(b)は、本発明の合金を製造するにあたり、原料合金を溶体化処理させた後に行なう時効のための条件を決定するために行なった実験結果を示すグラフである。
Fig.3は、実施例1で調製した鋳型鋳造後の原料合金の走査型電子顕微鏡写真である。
Fig.4は、実施例1で調製した溶体化処理させた後の合金の走査型電子顕微鏡写真である。
Fig.5は、実施例1で調製した時効析出型合金の走査型電子顕微鏡写真である。
Fig.6は、実施例3で調製した鋳型鋳造後の原料合金の走査型電子顕微鏡写真である。
Fig.7は、実施例3で調製した溶体化処理させた後の合金の走査型電子顕微鏡写真である。
Fig.8は、実施例3で調製した時効析出型合金の走査型電子顕微鏡写真である。
Fig.9は、参考例1で調製した単ロール法による急冷凝固後の合金の走査型電子顕微鏡写真である。
Fig.10は、参考例1で調製した時効析出型合金の走査型電子顕微鏡写真である。
発明を実施するための最良の形態
以下本発明を更に詳細に説明する。
本発明により得られる時効析出型合金は、式(1)
R(Ni1-xMx)5+y・・・(1)
(式中、RはYを含む希土類元素又はこれらの混合物を示し、MはCo、Al、Mn、Fe、Cu、Zr、Ti、又はこれらの混合物を示す。xは0.05≦x≦0.5、好ましくは0.1≦x≦0.4、yは−0.45≦y≦0.45、好ましくは−0.40≦y≦0.35である。)で表される組成(以下「組成A」と称す)を示し、平均長径0.1〜20μm、好ましくは1〜10μmの析出相を有するAB5型の希土類金属−ニッケル系合金である。析出相の平均長径が0.1μm未満では、該合金をニッケル水素二次電池用負極等とした場合の寿命が向上しない。一方20μmを超えると該合金をニッケル水素二次電池用負極とした場合の電気容量が低下する。この析出相は、例えば走査型電子顕微鏡等により測定することができる。時効析出型合金中の析出相の含有割合は、特に限定されるものではないが、0.01容量%以上が好ましい。上限については、前記効果等を発揮しうれば特に限定されないが、30容量%以下が好ましい。より好ましくは1〜15容量%である。
組成Aを示す式(1)において、xが0.05未満では、合金をニッケル水素二次電池用負極等とした場合の寿命が短くなり、0.5を超える場合には表面活性が低下して水素吸蔵量が低下する。更にyが−0.45未満では、合金をニッケル水素二次電池用負極等とした場合の寿命が低下し、0.45を超えると電気容量が減少する。
組成Aにおいて、式中Rは、Yを含む希土類元素の1種又は2種以上から選択することができる。希土類元素としては、特に限定されるものではないが、例えばLa20〜100原子%、Ce0〜60原子%、Pr0〜15原子%、Nd0〜50原子%の組成のものや、ミッシュメタル等が好ましく、特にLa25〜60原子%、Ce20〜50原子%、Pr3〜10原子%、Nd15〜40原子%の混合物が望ましい。
組成Aにおいて、式中Mに係る金属は、1種類でも、また2種類以上を組み合わせても良い。2種類以上の金属の組合せは、各金属の性質に基づいて適宜行うことができる。具体的には、Coは結晶格子を広げて平衡水素圧を下げる作用と、微粉化を防止し寿命を向上させる作用を有する。その配合割合は、式中Rを1として(以下の他の金属の配合割合も同一基準で示す。)0.1〜1.5原子比、特に0.3〜1.0原子比が好ましい。
Alは結晶格子を広げて平衡水素圧を下げる作用と、水素吸蔵量を増加させる作用とを有する。その配合割合は、0.1〜1.0原子比、特に0.2〜0.5原子比が好ましい。
Mnは結晶格子を広げて平衡水素圧を下げる作用と、水素吸蔵量を増加させる作用とを有する。その配合割合は、0.01〜1.0原子比、特に0.2〜0.6原子比が好ましい。
Feは合金表面を活性化させて水素吸蔵放出速度を高める作用を有する。その配合割合は、0.1原子比以下、特に0.01〜0.03原子比が好ましい。
Cuは結晶格子を広げて平衡水素圧を下げる作用を有する。その配合割合は、0.01〜1.0原子比、特に0.05〜0.5原子比が好ましい。
ZrはPCT曲線(水素解離圧−組成等温線)のヒステリシス特性を改善する作用と、粒界に析出し、割れを防止してニッケル水素二次電池とした場合の寿命を向上させる作用とを有する。その配合割合は、0.1原子比以下、特に0.01〜0.03原子比が好ましい。
TiはPCT曲線のヒステリシス特性を改善する作用を有する。その配合割合は、0.1原子比以下、特に0.01〜0.03原子比が好ましい。
前記組成Aの具体例としては、以下の組成等を好ましく挙げることができる。
La0.25Ce0.5Pr0.05Nd0.2Ni3.2Al0.2Co0.8Mn0.5Fe0.02、
La0.25Ce0.5Pr0.05Nd0.2Ni3.3Al0.3Co0.7Mn0.4Fe0.02、
La0.25Ce0.5Pr0.05Nd0.2Ni3.65Al0.2Co0.85Mn0.5Fe0.02、
La0.25Ce0.5Pr0.05Nd0.2Ni3.9Al0.3Co0.6Mn0.4Fe0.02、
La0.5Ce0.1Pr0.05Nd0.35Ni3.3Al0.3Co0.7Mn0.4Fe0.02、
La0.5Ce0.1Pr0.05Nd0.35Ni4.2Al0.1Co0.4Mn0.1Fe0.02
La1.0Ni3.2Al0.3Co0.8Mn0.4Fe0.02、
La0.25Ce0.5Pr0.05Nd0.2Ni3.4Al0.3Co0.75Mn0.4Ti0.02、
La0.25Ce0.5Pr0.05Nd0.2Ni3.9Al0.3Co0.7Mn0.4Cu0.02、
La0.25Ce0.5Pr0.05Nd0.2Ni3.65Al0.2Co0.85Mn0.5Zr0.02、
La0.25Ce0.5Pr0.05Nd0.2Ni3.1Al0.3Co0.8Mn0.4Fe0.02、
La0.25Ce0.5Pr0.05Nd0.2Ni3.65Al0.2Co0.75Mn0.5Fe0.02、
La0.25Ce0.5Pr0.05Nd0.2Ni3.9Al0.3Co0.7Mn0.4Fe0.02、
La0.25Ce0.5Pr0.05Nd0.2Ni3.3Al0.3Co0.85Mn0.4Fe0.02
La0.25Ce0.5Pr0.05Nd0.2Ni2.8Al0.3Co1.1Mn0.6Fe0.02
前記時効析出型合金を製造するには、例えば、特定の溶体化処理と時効とを組合わせることにより得ることができる。
本発明の時効析出型合金の製造法では、まず前記式(1)で表される組成Aの原料合金を、1000℃以上の温度で溶体化処理する。原料合金としては、組成Aを示すものであれば、合金鋳塊、合金鋳片、合金薄帯、合金粉末等の何れであっても良い。また原料合金の調製方法は特に限定されず、公知の方法例えば鋳型鋳造法、溶融ロール法、溶融遠心法、熱還元拡散法、ガスアトマイズ法等で調製されたもので良い。好ましくは1000℃/秒以上、特に好ましくは5000〜100000℃/秒の冷却速度で急冷凝固させて得た原料合金を使用できる。
溶体化処理とは、合金を第2相の溶解度線以上の温度に加熱することによって第2相を第1相に溶け込ませた後、冷却する処理であって、例えばアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気中で前記条件下加熱して一様な固溶体(ある金属の結晶格子の中に他の元素の原子が入り込み、依然としてもとの金属の結晶形を保っている合金)として冷却することをいう。この溶体化処理により得られる固溶域は、前述の(T.B.Massalski et al.:Binary Alloy Phase Diagrams, Vol.2.1468 ASM(1986))に示されるとおり、従来のAB5型希土類金属−ニッケル系合金には存在しないと考えられていた。
本発明の製造法において、溶体化処理する温度の決定は、式(1)における種々の組成の実験データに基づいて決定した。その一例をFig.1(a)及び(b)に示す。Fig.1(a)は、式(1)において、R成分としてミッシュメタル(Mm)を用い、M成分としてAl、Co、Mnを用いた例である。即ち、式
Mm(Ni0.7Al0.06Co0.15Mn0.09)5+yで表される組成において、式中yの値を−0.45≦y≦0の範囲で変化させて調製した試験合金を、アルゴンガス中で種々の温度において、各10時間の焼鈍を行ない、ガスジェット冷却後、電子顕微鏡による組織観察によって残存する第2相の存在割合を面積率で表したものである。また、Fig.1(b)は、前記組成においてyの値を0≦y≦0.45の範囲で変化させ、同様の実験を行なった結果である。観察された第2相は分析の結果、Fig.1(a)の実験における合金は希土類リッチの析出物が認められ、Fig.1(b)の実験における合金はNi、Co、Mnリッチの析出物が認められた。これらの図から明らかなように、第2相の存在割合は1000℃以上において急激に減少し、溶体化していることがわかる。溶体化処理するための温度の上限は特に限定されるものではないが、1250℃、特に1200℃が好ましい。また時間は1〜100時間、特に5〜50時間が好ましい。溶体化処理における冷却は、1000℃以上で溶体化させた後、例えば水又は油への投入、ガス冷却、ミスト冷却等の通常の焼き入れ法等により行なうことができる。この際の冷却速度は10〜1000℃/秒程度で行なうことができる。
本発明の製造法では、前記溶体化処理した後、700℃以上、1000℃未満の温度T(℃)で式(2)
(830−T)/200≦logt≦(1200−T)/200・・(2)
関係を満たす時間t(時間)によって時効する。
時効とは、金属材料の性質を時間の経過により変化させ、非平衡相の状態、例えば過飽和の固溶体から微細な2次相を析出させることをいう。
時効の条件の決定は、式(1)における種々の組成の実験データに基づいて決定した。その一例をFig.2(a)及び(b)に示す。Fig.2(a)及び(b)は、前述のFig.1(a)及び(b)で述べた実験で用いた試験合金(y=−0.30;Fig.2(a)、y=0.30;Fig.2(b))を、1100℃、10時間の溶体化処理の後、アルゴンガス中で温度(T)、時間(t)を変化させて加熱による時効を行ない、冷却後合金断面の組織観察によって析出物の平均長径値(μm)を算出し、図中に記録したものである。同図より、各温度T(℃)について処理時間t(時間)が前記式(2)を満足する範囲の時に、平均長径0.1〜20μmの析出相が析出することがわかる。温度が700℃未満の場合には、満足な析出相が生成しないか極めて長大な処理時間を要し、実用不可能である。一方1000℃以上では実質的に均一微細な析出相が生成しない。好ましくは800〜950℃の温度範囲で前記式(2)を満足する時間によって時効を行なう。時効の雰囲気としては、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下が好適である。
本発明の製造法では、時効により前記平均長径0.1〜20μmの析出相を有する合金を得ることができる。この析出相は、式(1)中のyが負の組成条件(例えば前記実験に用いたy=−0.30の組成)においてはA2B7型等の希土類金属リッチ組成の析出相であり、そのサイズと量を制御することにより電池特性として高電気容量、長寿命に加えて初期活性も改善される。この改善は、析出相が起点となって使用初期に合金に導入されるマイクロクラックが寄与しているものと考えられる。また、yが正の組成条件(例えば前記実験に用いたy=0.30の組成)における析出相は、Ni、Co等の式(1)中の遷移金属リッチ組成の析出相であり、そのサイズと量を制御することにより高電気容量、長寿命、初期活性が改善される。これはNi、Coを主成分とする析出物の微細分散が表面触媒活性を高めるように寄与する結果と考えられる。
前記時効析出型希土類金属−ニッケル合金を調製するには、前記溶体化処理を含む製造法の他に、溶体化処理を行なわず、原料合金の組成及び調製法と、時効条件とを制御することによっても得ることができる。
例えば、前記式(1)で表される組成Aの原料合金溶湯を、1000℃/秒以上の冷却速度で急冷凝固させた後、該急冷凝固物を、700℃以上、1000℃未満の温度で時効するにあたり、急冷凝固物の組成が前記式(1)中において、yが−0.45≦y<−0.3、又は0.2<y≦0.45の場合は1時間を超え25時間以下、yが−0.3≦y≦0.2の場合には5時間を超え50時間以下の条件で時効すること(以下「他の製造法」称す)によっても得ることができる。
この溶体化処理を行なわない方法では、溶体化処理を行なった場合に比べると合金元素の強制固溶の完全度が劣るために、組成に応じて前述のとおり時効時間を制御する必要があるものと考えられる。組成に関しては、前記式(1)中のyは、AB5型の母相組成からのA成分(希土類元素)又はB成分(Ni及びM元素)のずれを示すパラメータであり、yの絶対値が大きいほど母相に強制固溶されたA又はB成分の割合が多くなる。従って、それらを加熱によって時効するとyの絶対値の大きい組成(過飽和度大)であるほどA又はB成分の析出速度が大きく、析出サイズも大きくなる。yの絶対値が小さい組成(過飽和度小)では逆に所望の析出相を得るためにはより長い時間の時効が必要となるので、前述の組成に応じた時効時間で処理する必要があると考えられる。
他の製造法において、原料合金溶湯は、公知の真空溶解炉等を用いて調製することができる。急冷凝固は、単ロール又は双ロールによる急冷鋳造法、遠心噴霧法、ガスアトマイズ法等、溶湯から1000℃/秒以上、好ましくは5000〜100000℃/秒の冷却速度で、合金鋳片、合金薄帯、合金粉末等を調製できる方法であれば適用可能である。冷却速度が1000℃/秒未満の場合には、合金元素の固溶強制力が不足であり、前記溶体化処理を行なわずに所望の析出相を得ることができない。
他の製造法において、得られた急冷凝固物を700℃以上、1000℃未満の温度、好ましくは800〜950℃で、所定時間時効するには、時効時間を前述の組成に合わせて制御する以外は、前記溶体化処理を行なう本発明の製造法と同様な操作で行なうことができる。
本発明においてニッケル水素2次電池用負極は、前記時効析出型合金と、導電剤とを負極材料として含有する。
前記時効析出型合金は、粉砕物として使用するのが好ましく、粉砕粒度は20〜100μmが好ましく、特に40〜50μmの均一粒度であるのが望ましい。この粉砕は、例えばスタンプミル等で得られた時効析出型合金を粗粉砕した後、ボールミル、ディスクミル等の装置を用い、乾式又は湿式において機械粉砕する方法、水素吸蔵放出粉砕法、又はこれらを組み合わせた方法等により行うことができる。時効析出型合金の含有割合は、負極材料全量に対して、70〜95重量%、特に80〜90重量%が好ましい。70重量%未満の場合には、得られる負極の水素吸蔵量が低下し、高容量化の達成が困難であるので好ましくない。一方95重量%を超える場合には、導電性が低下し、また耐久性も悪くなるので好ましくない。
前記導電剤としては、銅、ニッケル、コバルト、炭素等を挙げることができる。使用に際しては、負極の調製法により異なるが、通常、1〜10μm程度の粒度の粉末として用いることができる。また、銅、ニッケル、コバルト等の導電性金属の場合には、前記時効析出型合金に金属メッキ等する形態として使用することもできる。導電剤の含有割合は、負極材料全量に対して5〜30重量%、特に10〜20重量%が好ましい。
本発明においてニッケル水素2次電池用負極には、前記必須成分の他に結着剤を含有させることもできる。該結着剤としては、4−フッ化エチレン−6−フッ化プロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、カルボキシメチルセルローズ等を好ましく挙げることができる。結着剤の含有割合は、負極材料全量に対して10重量%未満が望ましい。
本発明においてニッケル水素2次電池用負極を調製するには、例えば前記時効析出型合金の破砕物を、ニッケルメッシュ、ニッケル又は銅のエキスパンドメタル、ニッケル又は銅のパンチングメタル、発泡ニッケル、ウール状ニッケル等の導電剤集電基体に、結着成形することにより得ることができる。該結着成形は、ロールプレス法、成形プレス法等により行うことができ、形状はシート状又はペレット状に結着成形するのが好ましい。得られた負極は、通常のニッケル水素2次電池用負極と同様に用いることで2次電池を構成させることができる。
本発明により得られる時効析出型合金では、平均長径0.1〜20μmの析出相を有するので、ニッケル水素2次電池負極材料として使用した場合等において、長寿命と高電気容量とを同時に発揮させることができる。
また本発明の製造法では、溶体化処理と時効とを特定組成の原料合金に施すという簡易な方法により容易に前記時効析出型合金を得ることができる。
更に本発明においてニッケル水素2次電池用負極は、長寿命と高電気容量とを同時に発揮するので、従来の負極に代わっての需要が期待できる。
実施例
以下実施例及び比較例により更に詳細に説明するが本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1〜7
出発原料として、三徳金属工業株式会社製のミッシュメタル(以下Mmと称す)(希土類組成:La25重量%、Ce50重量%、Pr5重量%、Nd20重量%)と、純度99.9%のNi、純度99.9%のAl、Co、Mn、Fe、Ti、Cu及び微量のHfを含むZrを表1に示す組成となるように配合し、アルミナルツボを用いてアルゴンガス雰囲気中高周波溶解し、水冷銅鋳型において鋳造して、表1に示す組成の合金鋳塊を得た。続いて得られた合金鋳塊を、アルゴンガス雰囲気の電気抵抗加熱による熱処理炉に装填し、1100℃で10時間加熱後、水中に投入して急冷した。この鋳塊を取り出して乾燥後、再びアルゴン雰囲気の熱処理炉に装填し、900℃で8時間加熱による時効処理を行った。
得られた時効後の合金の析出相を走査型電子顕微鏡で観察し、析出相の確認を行い、析出相の平均粒径を測定した。結果を表2に示す。また実施例1における鋳造後、溶体化処理後、並びに時効後の合金の走査型電子顕微鏡写真をFig.3〜5に示す。同様に実施例3におけるこれらの写真をFig.6〜8に示す。Fig.3〜8より、鋳造後の組織に見られる第2相は溶体化処理後に固溶体となっており、時効後、析出相が析出していることがわかる。
得られた時効処理後の合金を、スタンプミルで粗粉砕後、ヘキサン溶媒中において、遊星ボールミルで平均粒径80μmに粉砕した。この粉末10gと、導電剤として銅粉1gと、4−フッ化工チレン−6−フッ化プロピレン共重合体粉末0.3gとを混合し、直径20mmのペレット電極を作製した。この電極を6NのKOH溶液に浸漬し、酸化水銀参照電極を用いて電池を構成し、北斗電工製のポテンショガルバノスタットを用いて電極特性を測定した。結果を表2に示す。
実施例8〜10
Mmの代わりに、三徳金属工業(株)製:純度99%のLa、Ce、Pr、Ndメタルを使用した以外は、表1に示す組成で実施例1〜7と同様に処理して合金を作製した。得られた合金及び該合金粉砕物を用いた電池について、実施例1〜7と同様な測定を行った。結果を表2に示す。
実施例11
実施例1と同一組成の原材料を高周波溶解した後、溶湯を単ロール鋳造法により急冷凝固させ、0.3〜0.4mmの厚さの合金薄帯を得た。この際冷却速度は約10000℃/秒であった。続いて得られた合金薄帯をアルゴン雰囲気の電気抵抗加熱による熱処理炉に装填し、1100℃で5時間加熱後、水中に投入して急冷した。次いで急冷物を乾燥した後、再びアルゴン雰囲気の熱処理炉に装填し、850℃で10時間加熱時効処理を行なった。得られた合金及び該合金粉砕物を用いた電池について、実施例1〜7と同様な測定を行なった。結果を表2に示す。
参考例1〜4
表1に示すそれぞれの組成の原材料を高周波溶解した後、実施例11と同様な単ロール鋳造法でそれぞれ合金化し、次いで溶体化処理を行なうことなく直ちにアルゴン雰囲気中で表2に示すそれぞれの条件で時効を行なって合金を得た。得られた合金及び該合金粉砕物を用いた電池について、実施例1〜7と同様な測定を行なった。結果を表2に示す。尚、表2中の左端に記載された12、13、14、15、16及び17は、順に参考例1〜6を意味する。また、実施例1における急冷凝固後及び時効後の合金の走査型電子顕微鏡写真をFig.9及びFig.10に示す。これにより、急冷凝固後は結晶粒界に僅かな第2相の析出がある以外、粒内には粗大な第2相の析出は認められず、強制固溶された非平衡状態を示しており、時効処理後は微細析出相が析出していることがわかる。
参考例5及び6
表1に示すそれぞれの組成の原材料を高周波溶解した後、溶湯をアルゴンガスを用いたガスアトマイズ法により急冷凝固させ、平均粒径約90μmの合金粒子を得た。この際の冷却速度は約5000℃/秒であり、組織観察の結果、いずれも粗大な第2相の析出は認められず強制固溶された非平衡相の状態を示していた。それぞれの合金粒子を表2に示す条件により時効し、得られた合金及び該合金粉砕物を用いた電池について、実施例1〜7と同様な測定を行なった。結果を表2に示す。
本発明による析出相を生成させたこれらの実施例では、高い初期放電容量を示すと共に、200サイクル後でもその95%以上が維持されており、電池寿命が優れていることがわかる。また、合金化を溶体化処理を行なわないで急冷凝固法によって行なった実施例11及び参考例1〜6では、組成の式(1)におけるyの値に応じて時効時間を選択することにより、溶体化処理を省略した場合でも高い初期放電容量と優れた電池寿命が得られることがわかる。
比較例1
実施例1で作製した高周波溶解鋳塊を、溶体化処理及び時効を行わずに実施例1〜7と同様に得た鋳塊及び鋳塊粉砕物を用いた電池の各測定を実施例1〜7と同様に行った。結果を表2に示す。
比較例2
実施例1で作製した高周波溶解鋳塊を、溶体化処理のみ行って、時効を行わずに実施例1〜7と同様に合金を得た。得られた合金及び該合金粉砕物を用いた電池の各測定を実施例1〜7と同様に行った。結果を表2に示す。
比較例3
実施例1で作製した高周波溶解鋳塊を、溶体化処理を行なわず、時効のみを行なって実施例1〜7と同様に合金を得た。得られた合金及び該合金粉砕物を用いた電池の各測定を実施例1〜7と同様に行った。結果を表2に示す。
比較例4
参考例1と同一組成の原材料を高周波溶解した後、溶湯を単ロール鋳造法で凝固させる際、ロールの冷却水を減じ溶湯の注湯量を増加した条件下で約500℃/秒の冷却速度とした以外は参考例1と同様に合金を得た。得られた合金及び該合金粉砕物を用いた電池について、実施例1〜7と同様な測定を行なった。結果を表2に示す。
比較例5
参考例1で作製した単ロール鋳造法合金薄帯をアルゴン雰囲気中850℃で3時間熱処理して合金を得た。得られた合金及び該合金粉砕物を用いた電池について、実施例1〜7と同様な測定を行なった。結果を表2に示す。
比較例6
参考例6と同一組成の原材料を高周波溶解した後、溶湯を実施例11と同様に単ロール鋳造法で急冷凝固させ合金薄帯を得た。この薄帯をアルゴン雰囲気中800℃で5時間熱処理して合金を得た。得られた合金及び該合金粉砕物を用いた電池について、実施例1〜7と同様な測定を行なった。結果を表2に示す。
比較例7
表2に示す条件で溶体化処理し、時効を行なわなかった以外は実施例11と同様に行なって合金を得た。得られた合金及び該合金粉砕物を用いた電池について、実施例1〜7と同様な測定を行なった。結果を表2に示す。
比較例8
実施例11と同一組成の原材料溶湯を実施例11と同様に単ロール鋳造法で急冷凝固させ合金薄帯を得た。その後溶体化処理及び時効を行なわず、その合金薄帯及び該合金粉砕物を用いた電池について、実施例1〜7と同様な測定を行なった。結果を表2に示す。
本発明における析出相の存在が認められないこれら比較例では、同一組成の実施例と比較して初期放電容量、及び200サイクル後の容量維持率ともに低い水準であることがわかる。
Claims (4)
- 式(1)
R(Ni1-xMx)5+y・・・(1)
(式中、RはYを含む希土類元素又はこれらの混合元素を示し、MはCo、Al、Mn、Fe、Cu、Zr、Ti又はこれらの混合元素を示す。xは0.05≦x≦0.5、yは−0.45≦y≦0.45である。)で表される組成を示し、平均長径0.1〜20μmの析出相を有するAB5型の時効析出型希土類金属−ニッケル系合金の製造方法であって、式(1)で表される組成の原料合金を、1000℃以上の温度で溶体化処理した後、700℃以上、1000℃未満の温度T(℃)で式(2)
(830−T)/200≦logt≦(1200−T)/200・・(2)
の関係を満たす時間t(時間)によって時効し、平均長径0.1〜20μmの析出相を析出させるAB 5 型の時効析出型希土類金属−ニッケル系合金の製造法。 - 前記式(1)中のRを、La、Ce、Pr、Nd及びこれらの混合物からなる群より選択する請求項1記載の製造法。
- 前記式(1)中のRの組成が、La25〜60原子%、Ce20〜50原子%、Pr3〜10原子%、Nd15〜40原子%である請求項1又は2記載の製造法。
- 前記原料合金が、原料合金溶湯を1000℃/秒以上の冷却速度で急冷凝固させた合金である請求項1〜3のいずれか1項記載の製造法。
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