JP3923557B2 - 核燃料集合体用のジルコニウム基合金管およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、核燃料集合体で用いられるジルコニウム基合金管に関する。この種の管は、特に燃料棒クラッディングを構成するべく、このようなクラッディングの外部を形成したり、あるいは制御クラスタロッドを収容する案内管を形成することに使用できる。
【0002】
【従来の技術】
このタイプのスリーブは、多くの場合、ジルコニウムに加えて、特に1.2〜1.7重量%のすず、0.16〜0.24重量%の鉄、0.07〜0.13重量%のクロムおよび0.10〜0.16重量%の酸素を含有する“ジルカロイ4”として知られる合金からなる管によって構成される。特に、クロムが完全にまたは部分的にバナジウムで置換された合金および/または酸素含有量が上記の値を超え、それに応じて他の添加元素の含有量が減少した合金のような上記合金から誘導されたいくつかの合金も提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
クラッディングとして使用される管に要求される特性は、高圧かつ高温の水による腐食に対する良好な耐性、長期クリープの抑制、機械的特性の長期保持、照射におけるスエリングを抑制することである。さらに、これらの特性は再現性のあるものでなければならず、この合金は排除率を許容できる値まで低く維持できるような治金特性を種々の製造段階(特に圧延性)において備えている必要がある。
【0004】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
上記効果を達成するために、0.4〜0.6重量%のすず、0.5〜0.8重量%の鉄、0.35〜0.50重量%のバナジウム、0.10〜0.18重量%の酸素、100ppm〜180ppmの範囲に調節された炭素、50ppm〜120ppmの範囲に調節されたケイ素およびその残分にジルコニウムと不可避不純物を含有するジルコニウム基合金管であって、完全に再結晶化されたジルコニウム基合金管を提供する。バナジウムは、Zr(Fe,V)2の形態で微細な沈殿物として必須に存在する。
【0005】
上記の範囲から選択される正確な組成物は、優先される特性に依存する。一般的に、有利とされる含有量は、0.4〜0.6重量%のすず、0.6〜0.7重量%の鉄、0.37〜0.43重量%のバナジウム、0.10〜0.14重量%の酸素、120ppm〜160ppmの炭素並びに85ppm〜115ppmのケイ素である。通常は、0.5重量%のSn、0.65重量%のFe、0.4重量%のV、0.12重量%のO2、140ppmのCおよび100ppmのSiを含有する合金が良好である。
【0006】
どの場合にも、一般的に用いられているクロムに代わってバナジウムが存在するために、微量の吸収水素を減少させ、高温高圧での水性媒体中における耐食性が局在煮沸(localized boiling)の場合でさえも改良される。
【0007】
当業者が、管を構成するのに0.25重量%以上のバナジウムを含有する合金を使用することに対して偏見を有していることに注目すべきである(欧州特許公開第0301295号公報)。
【0008】
原子炉における使用の最初の段階において可能な限りクリープを減少することが主たる要求である場合、すず、炭素および/または酸素の含有量を増加させると有利である。炭素の含有量は、クリープに関して好都合となるように100ppmを超えるように調節され、かつ、照射におけるスエリングが過剰とならないように180ppm未満に調節される。ケイ素の含有量は、構造への通常の効果および耐食性への好ましい影響の利点が得られるように“調節”される。50ppmより少ないと、腐食の動力学が実質的に増加する。120ppmを超えても増加する。さらに、120ppmを超える含有量では、熱間成形の障害とされるケイ化物タイプの化合物が現れる。合金の再結晶化された特性は、その良好なクリープ現象に寄与する。
【0009】
2/1より高いFe/V比は、リチウムを含有する媒体における耐食性を増加する。
【0010】
Fe+Vの合計の高い値は、治金的な粒子構造の精製に寄与し、応力下での腐食に対する良好な耐性のファクターとされる。
【0011】
また、本発明は、上述のタイプの合金管の製造方法を提供し、以下の工程、すなわちインゴットを固形棒に鍛造する工程;固形棒をβ相まで加熱し、その加熱した棒を水で急冷する工程;α相を形成するための640〜760℃の範囲における任意の焼きなまし工程;貫通されたビレットを引き抜いて管状のブランクを形成する工程;α相への640〜760℃における任意の焼きなまし工程;不活性雰囲気または真空中で640〜760℃の温度、有利なものとしては最初の2段階を約730℃、後の段階を700℃の温度とした中間焼きなまし段階を備えた管の厚みを減少する連続した冷却圧延工程;および不活性雰囲気または真空中で560〜650℃(有利なものとしては565〜595℃、特に約580℃)の温度とした最終的な再結晶化焼きなまし工程を連続して含み、一連の熱処理は、熱処理のパラメーターΣAが10−18〜10−16の間とされたものであり、ΣAは1時間単位で表された時間tにexp(−40000/T)をかけた値に等しい。ここで、Tはケルビンで表された温度を示す。
【0012】
第一の焼きなまし工程は、急冷後に730℃で有利に行われ、第二の工程は、絞り工程後に約700℃で有利に行われる。
【0013】
製造された管は、クラッディング管または案内管として用いられるまで、その治金構造を変える熱処理を受けない。しかしながら、表面処理をしてもよく、次いで試験を行う。表面処理は、特にブラストクリーニング(blast cleaning)および酸化物膜除去とその後のすすぎを含む。表面処理は、ホイールを用いた研磨によって完了する。視覚的に、および/または超音波を用いることにより、および/または渦電流を用いることにより、従来の方法で表面を確認することができる。
【0014】
他の特徴を、以下の記載と添付した図面からより明確にする。
【0015】
【実施例】
試験に用い、その結果を以下に示した以下の組成物を、対象として示す。
・すず:0.5重量%
・鉄:0.65重量%
・バナジウム:0.4重量%
・酸素:0.12重量%(クリープに対する耐性が必須であれば0.14重量%まで増やすことができる)
・炭素:140ppm(クリープに対する耐性を改良する)
・ケイ素:100ppm
他の組成物はジルコニウムと不純物である。
【0016】
上記の含有量は、設定値である。
【0017】
この設定組成物について、インゴットの組成物における製造トレランスおよび変動が、上記の有利な範囲内あるように製造する。
【0018】
出発合金はインゴットの形態とした。鍛造または圧延によって棒に形成し、β相まで加熱した後にα領域にするために、例えば約800℃未満となるまで5℃/秒〜30℃/秒の速さで冷却する等の調節された速度で水による急冷をした。急冷後、その棒をα相にしかつそれを維持するように、800℃未満の温度で結果的な焼きなましを行った。管状のビレットを機械加工して600〜700℃の間に熱した後に、絞りを行った。800℃未満の温度で焼きなましをした後、絞り工程後のブランクは、所望の厚さとするために、所望の回数の連続した冷却圧延工程を実施した。この工程は、安定したΣAを得るために、アルゴン中で行われる焼きなまし工程を間に有する。最後に、不活性雰囲気中、約580℃の条件下で、最終的な再結晶化熱処理工程を行った。
【0019】
製造された管と、ジルカロイ4の範疇の合金、すなわち一般的に応力除去状態で用いられる合金からなる管とを比較するために、製造された管10について試験を行った。
【0020】
一様の腐食
腐食試験は、40GW-日/(メトリック)トンの比燃焼度が、以前に用いられたジルカロイ4に比べて少なくとも30%の利得を示すまで、加圧水型軽水炉で3回以上の放射サイクルを行った。ホットセルにおける次の試験は、不均一もしくは局在化した腐食を示さなかった。
【0021】
リチウムの存在下における腐食
図1および2は、1.5ppm〜70ppmのリチウム含量に対して、360℃のオートクレーブ中で行った試験の結果を示している。破線は、ジルカロイ4型合金の重量の増加を示す。実線は、本発明の合金の重量の増加を示す。腐食の動力学がずっと低いことがわかる。
【0022】
水素化に対する耐性
加圧水型軽水炉で2回以上の照射後、ホットセル内でクラッディング管に試験を行った。26GW-日/(メトリック)トンの照射後、水素含有量は、本発明に係る合金に対して91ppm〜99ppm、また、対照として用いられたジルカロイ4合金に対して148ppmであった。
【0023】
機械的特性−延性
試験は、燃焼が一つの照射サイクルの相当量に達するまでは、合金の機械的強度がジルカロイ4合金と比べてわずかに低いことを示した。二回の照射サイクル後では、本発明の合金の機械的強度は、同等もしくはわずかに高いものであった。
引っ張り力を受けた本発明の合金の全体的な伸張、すなわち延性は、ジルカロイ4と比べて常に同等もしくはそれ以上のものであった。
【0024】
ヨウ素の存在下における挙動
ヨウ素存在下において本発明の合金が応力腐食を受ける可能性はゼロであることが示され、一方、ジルカロイ4は再結晶化状態と応力除去状態の両方においてダメージを受けた。
【0025】
従って、本発明の合金は、一様の腐食の耐性において実質的な改良をもたらし、特にリチウムに対する反応性を低減するものであり、応力腐食に対して顕著な耐性を備えることが示された。また、数回の照射サイクル後の延性を高く保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】照射時間に対する酸化の変化を示すグラフである。
【図2】照射時間に対する酸化の変化を示すグラフである。
Claims (5)
- 0.4〜0.6重量%のすず、0.5〜0.8重量%の鉄、0.35〜0.75重量%のバナジウム、0.10〜0.18重量%の酸素、100ppm〜180ppmの範囲に調節された炭素、50ppm〜120ppmの範囲に調節されたケイ素およびその残分にジルコニウムと不可避不純物を含有し、完全に再結晶化されたことを特徴とする、燃料集合体のクラッディングまたは案内管の全体または一部をなすジルコニウム基合金管。
- 0.4〜0.6重量%のすず、0.6〜0.7重量%の鉄、0.37〜0.43重量%のバナジウム、0.10〜0.14重量%の酸素、120ppm〜160ppmの炭素並びに85ppm〜115ppmのケイ素を含有することを特徴とする請求項1記載の管。
- 0.4〜0.6重量%のすず、0.5〜0.8重量%の鉄、0.35〜0.75重量%のバナジウム、0.10〜0.18重量%の酸素、100ppm〜180ppmの炭素、50ppm〜120ppmのケイ素およびその残分にジルコニウムと不可避不純物を含有する合金からなる、核燃料集合体のクラッディングまたは案内管の全体または一部をなすジルコニウム基合金管の製造方法において、(a)上記合金のインゴットを鋳造する工程、(b)上記インゴットを固形棒に鍛造する工程、(c)上記固形棒をβ相まで加熱し、その加熱した棒を水で急冷する工程、(d)上記の棒を中空のビレットに貫通させ、該ビレットを引き抜いて管状のブランクを形成する工程、(e)640〜760℃の温度で不活性雰囲気または真空中で中間熱処理を行いながら、冷却圧延を連続して行って管厚を低減させる工程、並びに、(f)550〜650℃の温度で不活性雰囲気または真空中で再結晶化させる工程を具備し、全体として熱処理のパラメーターΣAが10−18〜10−16の間とされたジルコニウム基合金管の製造方法。
- (b)工程の後に640〜730℃での焼きなまし工程を含む請求項3記載の方法。
- (c)工程と(d)工程との間に640〜760℃の温度でのα相への焼きなまし工程を含む請求項3記載の方法。
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