JP3400815B2 - ジルカロイ−2製bwr原子炉燃料用材料の製造方法 - Google Patents

ジルカロイ−2製bwr原子炉燃料用材料の製造方法

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  • Monitoring And Testing Of Nuclear Reactors (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、ジルカロイ−2製B
WR原子炉燃料用材料の製造方法に関し、更に詳しく
は、ジルカロイ−2製BWR原子炉燃料用材料が有する
良好な機械的特性を維持しつつ、更に耐ノジュラー腐食
性、耐加速腐食性等の耐食性を向上させることができる
ジルカロイ−2製BWR原子炉用燃料用材料の製造方法
に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】従来か
ら、ジルカロイ−2やジルカロイ−4等のジルコニウム
合金は、優れた機械的特性及び耐食性を有する、中性子
吸収断面積が小さい、加工性が良好である等の様々な理
由から、例えば原子炉用炉心部材、原子炉燃料要素にお
ける被覆管、原子炉燃料要素集合体におけるウォータロ
ッド、制御棒案内管又はチャンネルボックス等に使用さ
れている。
【0003】ところで、近時、各種の産業分野において
省資源化、省エネルギー化を図る研究・開発が行なわれ
ている。原子炉燃料についても同様である。原子炉燃料
については、その優れた機械的特性を維持しつつ更にそ
の耐食性を向上させることにより、高燃焼度化、使用期
間の延長等を図る研究・開発が盛んに行なわれている。
例えば、特開平3−209191号公報には、ジルカロ
イ−2製BWR燃料被覆管を製造する方法において、最
終圧延を行なう前に燃料被覆管外側にβ焼き入れを行な
うことにより、ノジュラー腐食性が改善されたジルカロ
イ−2BWR燃料被覆管を製造する方法が記載されて
いる。この方法は、図3に示す通り、先ず燃料被覆管材
料のインゴッドを製造する。これをビレットにし、燃料
被覆管の素管を製造する。続いてこの素管に冷間圧延と
焼鈍とを数回繰り返して行なう。そして、燃料被覆管の
外側にβ焼き入れを行なった後、これに最終圧延を行な
い、最終焼鈍を行なうことにより燃料被覆管を製造する
方法である。この方法のようにβ焼き入れを行なうと、
それまでの熱履歴、即ちそれまでに行なわれた熱処理工
程における累積入熱パラメータΣAiの値が非常に小さ
くなることが知られている。
【0004】ところが、最近、累積入熱パラメータΣA
iの値が極めて小さいジルカロイ−2製BWR燃料被覆
管を原子炉内で長時間使用すると、その燃料被覆管に加
速腐食が発生することが報告された(F.Garzar
olli,”OPTIMIERUNG DER ZIR
CALOY−HULLROHRE FUR STEDE
WASSER−REAKTOREN AUF KORR
OSION”,JAHRESTAGUNG KERNT
ECHNIK,1992,P.321−324)。した
がって、前記公報に記載の方法をはじめとする、単にβ
焼き入れを行なうだけの従来の方法では、原子炉燃料を
長寿命化させその使用期間を延長させることはできず、
原子炉燃料を有効に利用することができない。
【0005】一方、前記報告には、累積入熱パラメータ
ΣAiの値が0.2×10−18〜3.0×10−18
にある燃料被覆管が最も耐食性に優れる旨が記載され
ている。したがって、ジルカロイ−2製BWR原子炉燃
料用材料の耐食性を向上させるには、β焼き入れにより
熱履歴が除去された後のジルカロイ−2製BWR原子炉
燃料用材料に、前記累積入熱パラメータΣAiの値が前
記範囲内になるように適当な熱処理工程を行なう方法が
考えられる。
【0006】しかしながら、この発明の発明者等が鋭意
検討した結果、単に、β焼き入れを行なった後のジルカ
ロイ−2製BWR原子炉燃料用材料に熱処理工程を行な
い、前記累積入熱パラメータΣAiの値を前記範囲内に
しても、ジルカロイ−2製BWR原子炉燃料用材料の耐
食性を向上させることはできない。即ち、前記累積入熱
パラメータΣAiの値を前記範囲内にすることができる
熱処理工程であっても、低温で長時間行なう熱処理工程
によると、ノジュラー腐食性が却って低下してしまうこ
とが判明した。また、前記累積入熱パラメータΣAiの
値が前記範囲外となっても、所定の熱処理工程による
と、ジルカロイ−2製BWR原子炉燃料用材料の耐食性
を向上させることができることが判明した。
【0007】この発明は、かかる知見に基づきこの発明
の発明者等が更なる検討を行った結果到達したものであ
り、ジルカロイ−2製BWR原子炉燃料用材料の有する
良好な機械的特性を維持しつつ、更に耐ノジュラー腐食
性、耐加速腐食性等の耐食性を向上させることができる
ジルカロイ−2製BWR原子炉用燃料用材料の製造方法
を提供することを目的とする。
【0008】
【前記課題を解決するための手段】前記課題を解決する
ための請求項1に記載の発明は、ジルコニウム合金製原
子炉燃料用材料の製造方法において、素管にβ焼き入れ
行ない、β焼き入れを行った前記素管に、温度が62
0〜800℃、時間が10時間以下である条件にて、累
積入熱パラメータΣAiの値が0.2×10−18 〜
5.0×10−17となるようにΣAi調整焼鈍を行な
い、焼鈍後に加熱することなく冷却することを特徴とす
ジルカロイ−2製BWR原子炉燃料用材料の製造方法
であり、前記請求項2に記載の発明は、温度が635〜
800℃、時間が3時間以下である条件にて、累積入熱
パラメータΣAiの値が0.2×10−18 〜5.0
×10−17 となるようにΣAi調整焼鈍を行なう前
記請求項1に記載のジルカロイ−2製BWR原子炉燃料
用材料の製造方法である。
【0009】以下、この発明に係るジルカロイ−2製B
WR原子炉燃料用材料の製造方法ついて図面を参照しな
がら詳述する。
【0010】図1は、この発明に係るジルカロイ−2製
BWR原子炉燃料用材料の製造方法における各工程の順
序を示す概略説明図である。ここで製造する前記ジルカ
ロイ−2製BWR原子炉燃料用材料は、原子炉燃料要素
における被覆管である。なお、この発明においては、前
記燃料被覆管の外に、例えば原子炉用炉心部材、原子炉
燃料要素集合体におけるウォータロッド、制御棒案内管
又はチャンネルボックス等を製造することができる。
【0011】図1に示す通り、この発明においては、先
ジルカロイ−2製合金のインゴットをビレットにした
後、これを素管に成形する。この素管に冷間圧延と焼鈍
とを繰り返して行なった後、β焼き入れを行なう。そし
て、β焼き入れを行なった後の素管に冷間圧延を行な
い、ΣAi調整焼鈍を行なう。その後、最終圧延と最終
焼鈍とを行なうことにより、ジルカロイ−2製BWR
子炉燃料用被覆管を製造する。
【0012】前記インゴッドとしては、特に制限はない
が、公知のジルカロイ−2を含む合金を一次溶解、二次
溶解及び三次溶解して得たジルカロイインゴットを用い
ることができる。
【0013】前記インゴットをビレットにするには、従
来から公知の技術を採用することができるが、例えば前
記ジルカロイインゴットを鍛造し、その鍛造体を中空筒
体に成形することにより行なうことができる。
【0014】前記ビレットを素管にするには、例えば前
記ビレット内に、ジルコニウムブリケットを溶融して得
たジルコニウムインゴットを鍛造し、その鍛造体を中空
筒体に成形することにより別途に得た内側ビレットを挿
入した後、これをエレクトロンビームで溶接し、500
〜700℃の温度でダイス中に通し、焼鈍することによ
り行なうことができる。
【0015】前記素管に冷間圧延と焼鈍とを繰り返すに
は、例えば第1冷間圧延、真空焼鈍、第2冷間圧延、真
空焼鈍、第3冷間圧延、内面酸洗、最終焼鈍、ロール矯
正、内面サンドブラスト、外面機械研磨等を適宜の条件
でこの順に繰り返すことにより行なうことができる。
【0016】前記β焼き入れは、前記冷間圧延と焼鈍と
を繰り返して行なった素管に、例えば以下の加熱処理と
急冷処理とを行なうことにより実施することができる。
前記加熱処理は、前記素管を低くとも900℃、好まし
くは1000〜1100℃にまで加熱することにより行
なう。加熱時間としては、前記素管がガス吸収を起さな
い程度の時間で充分である。前記温度で加熱することに
より、ジルカロイ−2製合金におけるα相の少なくとも
一部分をβ相に相変態させる。また、前記冷却処理は、
前記加熱処理の後、前記素管を例えば650℃以下、好
ましくは600℃以下にまで急速冷却することにより行
なう。急速冷却の速度としては、通常100℃/分であ
る。
【0017】前記β焼き入れを行なう理由は以下の通り
である。即ち、ジルカロイ−2製合金の耐ノジュラー腐
食性は、一般にその加工の際に行なわれた熱処理に基づ
く熱履歴に著しく依存する。熱履歴が累積して以下の式
(1)で表わされる累積入熱パラメータΣAiの値が大
きくなると、急速に耐ノジュラー腐食性が低下する。
【0018】 ΣAi=Σti・EXP{−40000・Ti}・・・(1) (ただし、式中、tiは加熱時間(hr)であり、Ti
は加熱温度(K)である。)そこで、前記β焼き入れを
行なうと、前記累積入熱パラメータΣAiの値を小さく
することができ、ジルカロイ−2製合金の前記耐ノジュ
ラー腐食性を改善することができる。
【0019】前記β焼き入れを行なった後の素管に冷間
圧延をするには、特に制限はなく、適宜の条件にて行な
うことができる。
【0020】前記ΣAi調整焼鈍は、前記β焼き入れを
し、冷間圧延を行なった素管に、温度が620〜800
℃、好ましくは635〜800℃であり、時間が10時
間以下、好ましくは3時間以下である条件にて、前記式
(1)で表わされる累積入熱パラメータΣAiが0.2
×10−18 〜5.0×10−17 となるように適宜
選択した温度及び時間の下で、例えばオートクレーブ等
の装置を用いて行なうことができる。前記温度が620
〜800℃の範囲内で焼鈍を行なうと、ジルカロイ−2
製合金をα相の高温領域で処理することができるので、
その内部に金属間化合物を均一に発達させることがで
き、耐食性を向上させることができる。ところが、前記
条件が620℃よりも低い温度で10時間よりも長い時
間加熱する条件であると、ジルカロイ−2製BWR原子
炉燃料用被覆管の耐食性が劣化することがある。また、
800℃よりも高い温度で加熱する条件であると、ジル
カロイ−2製合金のα領域で焼鈍処理を行なうことがで
きないことがある。即ち、800℃よりも高い温度であ
るとα+β領域に入るのでジルカロイ−2製合金の組織
の不均一化が起こり、耐食性を向上させることができな
いことがある。前記累積入熱パラメータΣAiの値が前
記範囲内にないと、ジルカロイ−2製BWR原子炉燃料
用被覆管の耐食性が劣化することがある。なお、前記条
件が635〜800℃の温度で3時間以下加熱する条件
である場合、エネルギーの消費量を少なくすることがで
き、操作時間も短いので、経済的で効率がよいので好ま
しい。
【0021】前記ΣAi調整焼鈍の後に行なう最終圧延
は、適宜選択した条件により行なうことができる。な
お、この発明においては、前記ΣAi調整焼鈍を行なっ
た後、この最終圧延を行なう前に、少なくとも600℃
以下、好ましくは室温以下までジルカロイ−2製BWR
原子炉燃料用材料を冷却する。前記冷却の際の冷却速度
としては、ジルカロイ−2製合金の組織における金属間
化合物の発達を促進させることができる1℃/秒以下が
好ましい。
【0022】前記最終圧延の後に行なう最終焼鈍は、前
記累積入熱パラメータΣAiの値が大きく変化しないよ
うな条件、例えば580℃、2〜3時間の条件で行なう
ことができる。
【0023】次に、この発明の作用について説明する。
【0024】この発明に係るジルカロイ−2製BWR
子炉燃料用材料の製造方法においては、β焼き入れをす
ることにより、それまでに行なった加熱処理に基づく熱
履歴を除去し、累積入熱パラメータΣAiの値を小さく
して、耐加速腐食性を改善したジルカロイ−2製BWR
原子炉燃料用材料を得る。これに、ジルカロイ−2製合
のα領域にある620〜800℃の温度で、時間が1
0時間以下である条件にて、累積入熱パラメータΣAi
の値が、ジルカロイ−2製合金の耐ノジュラー腐食性が
改善される範囲である0.2×10−18 〜5.0×
10−17 となるようにΣAi調整焼鈍を行なう。す
ると、良好な機械的特性を維持しつつ、更に耐ノジュラ
ー腐食性、耐加速腐食性等の耐食性が向上したジルカロ
イ−2製BWR原子炉用燃料用材料が得られる。
【0025】以上にように、この発明に係るジルカロイ
−2製BWR原子炉燃料用材料の製造方法によると、得
られるジルカロイ−2製BWR原子炉燃料用材料の有す
る良好な機械的特性を維持しつつ、更にその耐ノジュラ
ー腐食性、耐加速腐食性等の耐食性を向上させることが
できる。
【0026】
【実施例】以下に、この発明の実施例について説明す
る。なお、この発明は以下の実施例に何ら限定されるも
のではない。
【0027】(実施例1〜6及び比較例1〜3) 表1に示す条件にてΣAi調整焼鈍を行ない、ジルカロ
イ−2製合金試験片を得た。この試験片について腐食試
験を以下の条件で行なった。なお、耐食性の評価は試験
片の腐食増量を測定することにより行ない、その結果を
図2に示した。
【0028】 装置 :循環型オートクレーブ 温度 :525℃ 圧力 :105Kg/cm2 溶存酸素 :200ppb 溶存水素 :5ppb 電気伝導度:2.0×10−6S/cm pH :5.0〜8.0 浸漬時間 :24時間 結果としては、本願発明の条件でΣAi調整焼鈍を行な
った実施例1〜6の試験片は、いずれも腐食増量が10
0mg/cm2 以下の低い値になった。一方、比較例
1〜3の試験片は、腐食増量の値が200mg/cm2
を越える大きな値となった。なお、焼鈍温度が621
℃と一定である場合において、焼鈍時間が10時間以下
であると腐食増量の値を低くすることができるものの、
10時間を越えると腐食増量の値を低くすることができ
ないことが明らかになった。また、焼鈍時間が2.5時
間と一定である場合において、焼鈍温度が620〜80
0の範囲内にあると腐食増量の値を低くすることができ
ることが明らかになった。
【0029】
【表1】
【0030】
【発明の効果】この発明によると、ジルカロイ−2製B
WR原子炉燃料用材料の有する良好な機械的特性を維持
しつつ、更に耐ノジュラー腐食性、耐加速腐食性等の耐
食性を向上させることができるジルカロイ−2製BWR
原子炉用燃料用材料の製造方法を提供することができ
る。この発明により得られたジルカロイ−2製BWR
子炉燃料用材料は、その寿命が長く、長期の使用に耐え
得るので経済的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、この発明に係るジルカロイ−2製BW
原子炉燃料用材料の製造方法における各工程の順序を
示す概略説明図である。
【図2】図2は、この発明の実施例及び比較例におけ
る、焼鈍温度が一定である場合における焼鈍時間と耐食
性との関係、及び、焼鈍時間が一定である場合における
焼鈍温度と耐食性との関係を示す図である。
【図3】図3は、従来のジルカロイ−2製BWR原子炉
燃料用材料の製造方法における各工程の順序を示す概略
説明図である。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22F 1/18

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ジルコニウム合金製原子炉燃料用材料の
    製造方法において、素管にβ焼き入れを行ない、β焼き
    入れを行った前記素管に、温度が620〜800℃、時
    間が10時間以下である条件にて、累積入熱パラメータ
    ΣAiの値が0.2×10−18 〜5.0×10−1
    7 となるようにΣAi調整焼鈍を行ない、焼鈍後に加
    熱することなく冷却することを特徴とするジルカロイ−
    2製BWR原子炉燃料用材料の製造方法。
  2. 【請求項2】 温度が635〜800℃、時間が3時間
    以下である条件にて、累積入熱パラメータΣAiの値が
    0.2×10−18 〜5.0×10−17 となるよう
    にΣAi調整焼鈍を行なう前記請求項1に記載のジルカ
    ロイ−2製BWR原子炉燃料用材料の製造方法。
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