JP3923352B2 - 易離解性耐水耐油紙およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、易離解性耐水耐油紙およびその製造方法に関するものであり、さらに好ましくは、耐水耐油性ホットメルト組成物と紙基材との接着用ホットメルト組成物をTダイ共押出溶融ラミネート法により高速製造して得られる易離解性耐水耐油紙およびその製造方法に関する。本発明は、耐水耐油性を必要とする包装材料または、溶剤系コーティング剤が塗工される場合の目止め層などとして使用することができ、また、他の紙原料と同様にリサイクル工程で再利用できる易離解性耐水耐油紙に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般的に、耐水耐油紙には、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンをTダイ押出溶融ラミネート法により高速加工された塗工紙が使用されている。このポリオレフィンを塗工した紙は、耐水性、耐油性に優れるばかりでなく安価であるため、包装材料として、また溶剤系剥離剤が塗工されるクラフトテープおよび工程紙の目止め層として多用されている。しかしながら、これをリサイクルしようとすると、防湿層の被膜強度が強すぎるために、パルプ化する工程において離解機で十分に離解せず、紙から脱離したオレフィン系樹脂層がフィルムとして残り、リサイクルを不可能にしている。
【0003】
本発明において、離解とは、古紙を再生する工程で、紙を繊維状のパルプに解きほぐす工程のことであり、易離解性とはその工程においてコーティング層が粉々に分散されやすいことを指している。
【0004】
近年、紙粘着テープ用基材としてワックスに熱可塑性重合体を配合してなるホットメルト含浸剤組成物が提案されている(特開2000−144093号公報)。
上記ホットメルト含浸剤組成物は、溶融粘度が低く、ホットメルトコーターを用いて塗工することが記載されている。ホットメルトコーターで塗工紙を得る場合、ピンホールが発生しやすく薄膜化することが難しい。ピンホールが発生すると、高価な溶剤系剥離剤を塗布した場合に紙側へ浸透してしまうため、目止め層としての効果が十分に果たせない。また、ピンホールを防止するためにホットメルト組成物を厚く塗工すると、コーティング層が割れやすくなるばかりでなく、高価な塗工紙となるため実用性がない。一方で、本ホットメルト含浸剤組成物をTダイ押出溶融ラミネートにて加工した場合、溶融粘度が低いために製膜できないばかりでなく、紙基材との接着性が悪いために包装材料ならびに目止め層としての実用に耐えることが出来ない。
【0005】
また、アクリル系エマルジョンとワックスエマルジョン(特開平9−3795号公報)、またはスチレン−アクリル共重合物と無機多孔質剤からなるエマルジョン(特開平6−191553号公報)を塗工した耐水耐油紙も提案されている。これらの耐水耐油紙は、耐水性、耐油性、リサイクル性を有しているが、残存した界面活性剤によりリサイクル時に発泡してしまうばかりでなく、塗工液がエマルジョンであるために、長大な乾燥設備が必要となり生産性が悪い欠点がある。
【0006】
さらに、オレフィン系ポリマーに粘着付与樹脂、ワックスなどを配合した易離解性防湿紙が提案されている。(特開平9−316252号公報、特開平11−158330号公報、特開2000−212499号公報、特開2001−164217号公報、特開2001−192510号公報、特開2001−192512号公報、および特開2002−003660号公報)。
これらの防湿紙は、防湿性と耐水性および離解性に優れ、しかも安価なポリオレフィンを主成分とするため、低コストで生産できる利点がある。しかし、ベースポリマーとして耐油性のないAPAO(アモルファスポリアルファオレフィン)を使用する場合や、粘着付与樹脂を多量に配合するため、トルエンなどの有機溶剤に侵されやすく、一般的に溶剤系剥離剤が塗工されるクラフトテープや工程紙の目止め層として使用することができない。
また、油性食品に直接接触する包装材料としては、油による抽出量が多いため使用できない。
【0007】
水溶性のポリビニルアルコールをコーティングしたリサイクル可能な耐油紙が提案されている(特開2001−288695号公報)。
しかしながら、このポリビニルアルコールは、水溶性であるため、耐水性あるいは防湿性がない。また、ポリビニルアルコール水溶液を紙基材上に塗工するために長大な乾燥設備が必要となり生産効率が悪い。
一方で、ポリビニルアルコールは、離解時に水に溶解し、排水のBOD、CODを上昇させてしまうため、環境上好ましいとはいえない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した従来の欠点を解決することを目的に、耐水性、耐油性に優れ、また、ピンホールの少なく、あるいは良好なガスバリア性をも付与したリサイクル可能な易離解性耐水耐油紙、さらには、この易離解性耐水耐油紙を安価に製造する製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、紙基材の片面または両面に、(a)ポリオレフィン20〜80重量%と(b)粘着付与樹脂80〜20重量%〔ただし、(a)+(b)=100重量%〕の2成分を必須成分としてなる接着性ホットメルト組成物層(A)を設け、さらにその上に(a)ポリオレフィン20〜80重量%と(c)ワックス80〜20重量%〔ただし、(a)+(c)=100重量%〕の2成分を必須成分としてなる耐水耐油性ホットメルト組成物層(B)を設けてなる易離解性耐水耐油紙を発明するに至った。
本発明では、接着性ホットメルト組成物層(A)と耐水耐油性ホットメルト組成物層(B)の間に、さらに、ピンホールの発生を押さえる目的の、接着性ホットメルト組成物層(A)および/または耐水耐油性ホットメルト組成物層(B)を設けた多層構造にしてもよい。
また、本発明では、さらにガスバリア層、好ましくは接着性ホットメルト組成物層(A)と耐水耐油性ホットメルト組成物層(B)の間にガスバリア層を設けることにより、ガスバリヤー性を向上させることができる。
さらには、接着性ホットメルト組成物層(A)および耐水耐油性ホットメルト組成物層(B)に使用されるホットメルト組成物のメルトフローレート(MFR)は20〜500g/10分(190℃、2,160g荷重)であり、Tダイ共押出溶融ラミネート法により製造することで、他の製造方法には得られない、安価な大量生産が可能である。
【0010】
【発明の実施の形態】
ここで、本発明の内容をさらに詳述に記載する。
本発明の接着性ホットメルト組成物層(A)とは、(a)ポリオレフィンに(b)粘着付与樹脂を配合してなるものであり、紙基材および耐水耐油層との接着性が良好であり、またその組成物のフィルム強度が低いため、塗工紙がパルパーで容易に離解されるものである。
接着性ホットメルト組成物層(A)は、(a)ポリオレフィン20〜80重量%と(b)粘着付与樹脂80〜20重量%〔ただし、(a)+(b)=100重量%〕の2成分を必須成分としてなるホットメルト組成物である。
好ましくは、(a)ポリオレフィン30〜60重量%と(b)粘着付与樹脂70〜40重量%である。
接着性ホットメルト組成物層(A)の(a)ポリオレフィンの配合量が20重量%未満では、折り曲げた際コーティング部分に割れが発生してしまい耐水耐油性を大きく損ない、または溶融粘度が低くなりすぎるためにTダイ共押出溶融ラミネート法での加工が困難である。一方、(a)成分の配合量が80重量%を超えると、フィルムの強度が高すぎるために、離解性を得ることが出来ない。
接着性ホットメルト組成物層(A)の(b)粘着付与樹脂の配合量が20重量%未満の場合には、フィルムの強度が高いために十分な離解性がない。一方、(b)成分の配合量が80重量%を超える場合には、コーティング剤の凝集力がないために、剥がれが発生したり、また、折り曲げた場合に亀裂が発生し、耐水性、耐油性を大きく損なう。また、溶融粘度が低くなりすぎるためTダイ共押出溶融ラミネート法による加工が出来ない。
【0011】
本発明の接着用ホットメルト組成物層(A)に用いられる(a)ポリオレフィンには、ポリエチレン、ポリプロピレン、ならびにエチレンまたはプロピレンと他のモノマーとの共重合体を使用することが出来る。
エチレンと共重合される他モノマーはプロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ラウリル、無水マレイン酸、1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン類(DMON)などが挙げられ、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物も使用することができる。
本発明の接着性ホットメルト組成物層(A)に用いられる(a)ポリオレフィンには、紙基材との接着性良好なエチレン−酢酸ビニル共重合体が好適に用いられる。
市販品としては、東ソー(株)製、商品名ウルトラセン537などがある。
【0012】
本発明の接着性ホットメルト組成物層(A)で使用される(b)粘着付与樹脂には、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂、脂肪族系樹脂、脂環族系樹脂、芳香族系樹脂、クマロン・インデン樹脂、ロジンおよびその誘導体などがあり、紙基材との接着性を高めると共に、離解性、防湿性を向上させる効果を有している。
ポリオレフィンに対する相溶性が良好で、Tダイ共押出溶融ラミネートの加工性が良好なテルペン樹脂または変性テルペン樹脂の使用が好ましく、市販品としては、ヤスハラケミカル(株)製クリアロンP−125などがある。
【0013】
本発明の接着性ホットメルト組成物層(A)には必要に応じて、(c)ワックスを配合することが出来る。接着性ホットメルト組成物層(A)に(c)ワックスを配合すると、紙基材との接着強度が低下する傾向にあるが、再抄紙後の乾燥工程においてピッチの付着を防止し、乾燥時のにじみを防止する目的で配合する。
【0014】
また、本発明の接着性ホットメルト組成物層(A)には本発明の作用効果を阻害しない範囲内で、炭酸カルシウム、酸化チタン、硫酸バリウム、タルク、クレー、カーボンブラックなどの充填剤、滑剤、防曇剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色剤、可塑剤またはオイルなどの添加剤を配合することができる。これら添加剤は特に限定されるものではなく、通常ホットメルト組成物に用いられる公知のものを使用してもよい。
【0015】
耐水耐油性ホットメルト組成物層(B)は、(a)ポリオレフィン20〜80重量%と(c)ワックス80〜20重量%〔ただし、(a)+(c)=100重量%〕の2成分を必須成分としてなる。
好ましくは、(a)ポリオレフィン30〜60重量%と(c)ワックス70〜40重量%である。
耐水耐油性ホットメルト組成物層(B)の(a)ポリオレフィンの配合量が20重量%未満では、凝集力が無いため折り曲げ時に割れが発生し、耐水耐油性を大きく損い、また、Tダイ共押出溶融ラミネート法での加工が困難である。一方、(a)成分の配合量が80重量%を超えると、離解性を得ることが出来ない。
一方で、耐水耐油性ホットメルト組成物層(B)の(c)ワックスの配合量が20重量%未満の場合、離解性が得られない。一方、(c)成分の配合量が80重量%を超えると、折り曲げ時に割れが発生し、またTダイ共押出溶融ラミネート加工が困難である。
【0016】
本発明の耐水耐油性ホットメルト組成物(B)に用いられる(a)ポリオレフィンには、接着用ホットメルト組成物層(A)に用いられる(a)成分と同様の(共)重合体が使用できる。なかでも、安価で耐水耐油性に優れ、臭いのないポリエチレンもしくはポリプロピレンが好適に用いられる。
市販品としては、東ソー(株)製、商品名ペトロセン207などがある。
【0017】
本発明の耐水耐油性ホットメルト組成物層(B)に用いられる(c)ワックスは、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、カルナバワックス、ポリエチレンワックスおよびポリプロピレンワックス、また、これらの酸化ワックスや無水マレイン酸で変性したワックスがある。(c)成分は、離解性を得るためにポリオレフィンの機械強度を低下させると共に、リサイクル時のにじみ出しを防止し、乾燥用ドライヤーへの付着を防止する効果がある。
(c)成分の融点は、にじみ出しおよび付着物を防止する目的で、好ましくは100℃以上、さらに好ましくは110°C以上、特に好ましくは120℃以上である。市販品としては、ヤスハラケミカル(株)製、商品名ネオワックスLなどがある。
【0018】
耐水耐油性ホットメルト組成物層(B)には、必要に応じて(b)粘着付与樹脂を配合してもよいが、耐油性を低下させてしまうため0〜20重量%の配合が好ましい。
【0019】
また、本発明の耐水耐油性ホットメルト組成物層(B)には、本発明の作用効果を阻害しない範囲内で、炭酸カルシウム、酸化チタン、硫酸バリウム、タルク、クレー、カーボンブラックなどの充填剤、滑剤、防曇剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色剤、可塑剤またはオイルなどの添加剤を配合することができる。これら添加剤は特に限定されるものではなく、通常ホットメルト組成物に用いられる公知のものが使用される。
【0020】
ここで、ホットメルト組成物のMFRについて詳述する。
MFRは、一般に樹脂の流動性を表す時によく用いられるものである。
MFRを求める方法は、径2.1mm、長さ8mmのオリフィスのあるシリンダー中に材料を入れ、190℃で2,160gの荷重をかけて溶融材料を押し出し、3分間に流出した材料の重量を測り、これを10分間当たりのグラム数に換算して、MFRの値とするものである。すなわち、MFRの大きいものほど流動性がよいことを意味する(JIS−K7210参照)。
【0021】
接着用ホットメルト組成物層(A)および耐水耐油性ホットメルト組成物層(B)のMFRは、20〜500g/10分の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは50〜400g/10分、さらに好ましくは100〜350g/10分である。MFRが20未満の場合、Tダイ共押出溶融ラミネート加工時のドローダウン性が悪く高速加工時に膜が切れてしまい良好な塗工紙が得られない。一方、MFRが500g/10分以上では偏肉、耳揺れ、耳高が発生してしまうため、良好な塗工紙が得られない。
【0022】
本発明の紙基材は、特に限定されないが、未晒しクラフト紙、晒しクラフト紙、印刷用紙、アート紙、薄葉紙、グラシン紙、紙板などが使用することができ、50〜200g/m2の紙が好適に用いられる。
【0023】
本発明の易離解性耐水耐油紙の塗工方法は、特に限定されないが、高速で安価に製造するためにはTダイ共押出溶融ラミネート機による塗工が好ましい。
接着用ホットメルト組成物層(A)を単独で紙基材に塗工した場合、紙基材との接着性が良好で耐水性を有するが、粘着付与樹脂を多量に含有するために耐油性がない。
一方、耐水耐油性ホットメルト組成物層(B)は、離解性を得るためにポリオレフィンにワックスを高配合することが必要となるが、単独でTダイ共押出溶融ラミネート法により加工すると紙基材との接着性が悪い。
また、タンデムラミネート機により加工も可能であるが、紙基材に接着用ホットメルト組成物を塗工後、さらに耐水耐油性ホットメルト組成物を塗工した場合、接着層と耐水耐油層間の接着性が劣るため、AC剤(アンカーコーティング剤)などを使用する必要がありコストが高くなる。従って、耐水耐油層と接着層を同時に押出溶融ラミネート法で塗工出来るTダイ共押出溶融ラミネート法が、最も生産性が高く好適に用いられる。
【0024】
本発明に使用されるTダイ共押出溶融ラミネート機には、大別してマルチマニホールド法およびフィードブロック法の2種類の方式がある。マルチマニホールド法は、膜厚の制御の精度が高い反面、Tダイの構造が複雑化し、多層化することが難しく、装置のコストが高い。フィードブロック法は、各層の膜厚精度が悪い反面、構造が簡単であり、10層程度の多層化を容易に行うことが出来る。
本発明の易離解性耐水耐油紙に使用される共押出方法としては、いずれも使用することができる。
【0025】
本発明のホットメルト組成物の塗工厚みは、接着性ホットメルト組成物層(A)とホットメルト組成物層(B)の合計で6〜50μmが好ましい。さらに好ましくは10〜25μmである。
総塗工厚みが6μmよりも薄い場合、紙基材との接着性が悪く使用に耐えない。また、ピンホールが発生してしまうため、十分な耐水耐油性が得られない。一方、塗工厚みが50μmよりも厚い場合には、コーティング層が割れやすくなり折り曲げ時の耐水耐油性を大きく損なわれるばかりでなく、コストアップとなり実用的でない。
接着性ホットメルト組成物層(A)ならびにホットメルト組成物層(B)の各厚みは、それぞれ3〜25μmが好ましい。
接着性ホットメルト組成物層(A)が3μm未満の場合には、紙基材との接着性が低下する。一方、25μmを超えるとコーティング層が割れ易くなり、折り曲げ時の耐水耐油性が低下する。
また、ホットメルト組成物層(B)が3μm未満の場合には、ピンホールが発生し、所望の耐油性が得られない。一方、25μmを超えるとコーティング層が割れ易くなり、折り曲げ時の耐水耐油性が低下する。
【0026】
また、本発明の易離解性耐水耐油紙の接着用ホットメルト組成物層(A)と耐水耐油性ホットメルト組成物層(B)の間に設けた、ピンホールの発生を押さえる目的の接着性ホットメルト組成物層(A)および/または耐水耐油性ホットメルト組成物層(B)は、層数の構成および層数は特に制限されないが、間に入る接着用ホットメルト組成物層(A)および/または耐水耐油性ホットメルト組成物層(B)が、1〜3層が好ましい。
上記、本発明の易離解性耐水耐油紙の接着用ホットメルト組成物層(A)と耐水耐油性ホットメルト組成物層(B)の間に、さらに組成物層(A)および/または組成物層(b)を設け、多層化することにより、ピンホールの発生を防止することが可能である。しかし、10層以上の多層化では、ピンホールの発生の抑制効果が層数に比較して向上せず、加工コストが非常に高くなるため実用的でない。
具体的な層構造としては、例えば、図1に示す(B)/(A)/基材構造、図2に示す(B)/(B)/(B)/(A)/基材構造などが挙げられる。
【0027】
また、本発明の易離解性耐水耐油紙に、さらにガスバリア層を設けることにより、ガスバリア性を有した離解可能な耐水耐油紙を得ることが出来る。
ガスバリア層の材質としては、特に限定されないが、EVOH(エチレンビニルアルコール共重合体)、PVDC(ポリ塩化ビニリデン)、PVA(ポリビニルアルコール)、アルミ蒸着物、シリカ蒸着物を使用することができ、水溶性であるPVAを使用すれば離解性を維持することができるため好ましい。ガスバリア層としてPVA、EVOHを使用する場合、吸湿によりガスバリア性が大きく低下するため、耐水耐油層中、耐水耐油層と接着層間または接着層中に設ける必要がある。
また、ガスバリア層は通常1〜3層が好ましいが層数は特に限定されない。
また、ガスバリア層との接着性を高める目的で、AC剤(三井武田ケミカル(株)製、商品名タケラックA−310、タケネートA−3)を使用したり、接着層および耐水耐油層の配合にカルボキシル基を含有したポリオレフィンを配合することが好ましい。
バリア層の膜厚は、特に限定されないが必要とされるバリア性によって変更することができる。好ましくは5〜30μm、さらに好ましくは10〜20μmである。5μm未満であるとピンホールが発生し易いため充分なガスバリア性が得られない。一方、30μmを超えると製品コストが高く実用的でない。
具体的な層構造としては、例えば、図3に示す(B)/(A)/ガスバリア層/(A)/基材構造、図4に示す(B)/ガスバリア層/(A)/基材構造、図5に示すガスバリア層/(B)/(A)/基材構造などが挙げられる。
【0028】
【実施例】
以下に製造例および実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。以下、%は特記しない限り重量基準である。
以下実施例に示すホットメルト組成物は、フリージアマクロス社製NR−II2軸押出機を用いて溶融混練し、ペレットを作成した。
作成したペレットを、モダンマシナリー社製Tダイ共押出溶融ラミネート機(フィードブロック法)を用いて、エアーギャップ:110mm、リップ幅:0.8mm、冷却ロール:セミマットロール、プレッシャーロール:シリコンロール、加工速度:150m/minの加工条件で、75g/cm2の未晒しクラフト紙に塗工し、耐水耐油紙を得た。
【0029】
実施例1
(接着性ホットメルト組成物の調製)
エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)(a−1)〔東ソー(株)製、商品名ウルトラセン537、MFR8.5g/10分、酢酸ビニル単位含有量6%〕50部、粘着付与樹脂(b−1)〔ヤスハラケミカル(株)製、商品名YSレジンD115、軟化点115℃〕50部を上記押出機を使用して混練りし、接着用ホットメルト組成物とした。得られた組成物のMFRは200g/10分であった。
(耐水耐油性ホットメルト組成物の調製)
ポリエチレン(a−2)〔三井化学(株)製、商品名ミラソン11P、MFR7.2g/10分(190℃、2,160g荷重)〕50部と、(c−1)50部を上記押出機を使用して混練りし、耐水耐油性ホットメルト組成物を得た。得られた組成物のMFRは250g/10分であった。
上記、接着用ホットメルト組成物と耐水耐油性ホットメルト組成物とを使用して、上記押出ラミネート機によりダイ温度160℃で、耐水耐油性ホットメルト組成物層(B)7μm/接着性ホットメルト組成物層(A)8μm/紙基材の構成を有する紙基材を含めた合計3層のサンプルを得た。
【0030】
実施例2
(接着性ホットメルト組成物の調製)
実施例1で調製した接着用ホットメルト組成物を使用した。
(耐水耐油性ホットメルト組成物の調製)
EVA(a−1)40部とポリエチレンワックス(c−1)〔ネオワックスL:ヤスハラケミカル(株)製、融点110℃〕60部を上記押出機を使用して混練りし、耐水耐油性ホットメルト組成物を得た。得られた組成物のMFRは400g/10分であった。
上記、耐水耐油性ホットメルト組成物と接着用ホットメルト組成物を使用して、上記押出ラミネート機によりダイ温度150℃で、組成物層(B)4μm/組成物層(B)3μm/組成物層(A)8μm/紙基材の構成を有する紙基材を含めた合計4層のサンプルを得た。
【0031】
実施例3
(接着性ホットメルト組成物の調製)
実施例1で調製した接着用ホットメルト組成物を使用した。
(耐水耐油性ホットメルト組成物の調製)
ポリプロピレン(PP)(a−3)〔チグランドポリマー(株)製、商品名J104、MFR(230℃、2,160g荷重)5/10分〕35部と、ポリプロピレンワックス(c−2)〔ハイワックスNP805:三井化学(株)製〕65部を上記押出機を使用して混練りし、耐水耐油性ホットメルト組成物とした。得られた組成物のMFRは200g/10分であった。
上記、耐水耐油性ホットメルト組成物と接着用ホットメルト組成物を使用して、上記ラミネート機によりダイ温度170℃で、組成物層(B)7μm/組成物層(A)4μm/組成物層(A)4μm/紙基材の構成を有する紙基材を含めた合計4層のサンプルを得た。
【0032】
実施例4
(接着性ホットメルト組成物の調製)
EVA(a−1)50部と(b−1)40部および(c−1)10部を上記押出機を使用して混練りし、接着用ホットメルト組成物とした。得られた組成物のMFRは200g/10分であった。
(耐水耐油性ホットメルト組成物の調製)
実施例1で調製した耐水耐油性ホットメルト組成物を使用した。
実施例1と同様にしてダイ温度170°Cで、組成物層(B)7μm/組成物層(A)8μm/紙基材の構成を有する3層のサンプルを得た。
【0033】
実施例5
(接着性ホットメルト組成物の調製)
PP(a−3)50部と(b−1)40部および(c−2)10部を上記押出機を使用して混練りし、接着用ホットメルト組成物とした。得られた組成物のMFRは100g/10分であった。
(耐水耐油性ホットメルト組成物の調製)
実施例1で調製した耐水耐油性ホットメルト組成物を使用した。
実施例1と同様にしてダイ温度170°Cで、組成物層(B)7μm/組成物層(A)8μm/紙基材の構成を有する3層のサンプルを得た。
実施例6
(接着用ホットメルト組成物の調製)
実施例1で調製した接着用ホットメルト組成物を使用した。
(耐水耐油性ホットメルト組成物の調製)
実施例1で調製した耐水耐油性ホットメルト組成物を使用した。
(ガスバリア層用樹脂の調製)
クラレ社製CP―7000(PVA)を、ガスバリア層用に使用した。
上記、耐水耐油性ホットメルト組成物と接着用ホットメルト組成物、PVAを使用してダイ温度170°Cで、組成物層(B)7μm/組成物層(A)4μm/ガスバリア層10μm/組成物層(A)4μm/紙基材の構成を有する紙基材を含めた合計5層のサンプルを得た。
【0034】
比較例1
実施例1の耐水耐油性ホットメルト組成物を、単独で15μmの厚みでダイ温度150℃で加工し、組成物層(B)15μm/紙基材の構成を有する紙基材を含めた合計2層のサンプルを得た。
【0035】
比較例2
実施例1の接着用ホットメルト組成物を、単独で15μmの厚みでダイ温度160℃で加工し、組成物層(A)15μm/紙基材の構成を有する紙基材を含めた合計2層のサンプルを得た。
【0036】
比較例3
(接着用ホットメルト組成物の調製)
実施例1で調製した接着用ホットメルト組成物を使用した。
(耐水耐油性ホットメルト組成物の調製)
ポリエチレン(a−2)15部と、(c−1)85部を上記押出機を使用して混練りし、耐水耐油性ホットメルト組成物とした。得られた組成物のMFRは800g/10分であった。
実施例1と同様にしてダイ温度150°Cで、組成物層(B)7μm/組成物層(A)8μm/紙基材の構成を有する3層のサンプルを得た。
【0037】
比較例4
(接着用ホットメルト組成物の調製)
実施例1で調製した接着用ホットメルト組成物を使用した。
(耐水耐油性ホットメルト組成物の調製)
ポリエチレン(a−2)85部と、(c−1)15部を上記押出機を使用して混練りし、耐水耐油性ホットメルト組成物とした。得られた組成物のMFRは25g/10分であった。
実施例1と同様にしてダイ温度190°Cで、組成物層(B)7μm/組成物層(A)8μm/紙基材の構成を有する3層のサンプルを得た。
【0038】
比較例5
(接着性ホットメルト組成物の調製)
ポリエチレン(a−2)85部、(b−1)15部を上記押出機を使用して混練りし、接着用ホットメルト組成物を得た。得られた組成物のMFRは15g/10分であった。
(耐水耐油性ホットメルト組成物の調製)
実施例1で調製した耐水耐油性ホットメルト組成物を使用した。
実施例1と同様にしてダイ温度190°Cで、組成物層(B)7μm/組成物層(A)8μm/紙基材の構成を有する3層のサンプルを得た。
【0039】
比較例6
(接着性ホットメルト組成物層(A)の調製)
ポリエチレン(a−2)15部、(b−1)85部を上記押出機を使用して混練りし、接着用ホットメルト組成物とした。得られた組成物のMFRは900g/10分であった。
(耐水耐油性ホットメルト組成物の調製)
実施例1で調製した耐水耐油性ホットメルト組成物を使用した。
実施例1と同様にしてダイ温度150°Cで、組成物層(B)7μm/組成物層(A)8μm/紙基材の構成を有する3層のサンプルを得た。
【0040】
上記防湿性ホットメルト組成物を下記の方法で評価した。結果を表1に示した。
(イ)基材との接着
クラフトテープ〔日東電工(株)製、商品名クラフト粘着テープNo.712〕を、サンプルの塗工面に張り合わせ、ゆっくりと角度180°で引き剥がした際の塗工面の変化、および塗工(組成物)層と紙基材との剥離状況を目視にて評価した。
○;紙基材の材料が破壊
×;紙基材と塗工層の界面剥離
(ロ)離解性
サンプル24gを1.5cm×1.5cmに切断し、TAPPI標準離解機に22℃の温水2リットルとともに入れて、3,000rpmで25分間撹拌した後に再抄紙し、目視にて紙表面のホットメルト組成物部分の大きさを測定し離解性を判定した。判定規準は下記の通りである。
○:良好(0.5mm未満)
△:可(0.5mm〜2.0mm)
×:不可(2.0mmを超えるもの)
(ハ)透湿度
自動透湿度測定装置(JIS K 7126 A法)で透湿度を測定した。透湿度は平板状と十字折りについて測定した。なお、十字折りは、サンプルを中央から十文字に折り、2kgのロールを2往復させて折り目を付けた後に透湿度を測定した。透湿度は、フラットおよび十字折り時において、50g/cm2以下が好ましい。
(ニ)耐油性試験
TAPPI UM557に記載されている、3Mキット試験により測定した。試験片の試験面を上にして置き、25mmの高さからキット試験液を1滴落として15秒後に過剰液を拭い取り、キット試験液が浸透してシミとなるか観察した。組成の異なる12種類の試験液について試験を行い、シミにならないキット試験液の最大の液番号を耐油度として表示した。耐油度の数字が大きいほど、耐油性が高く、9以上の耐油度が好ましい。
(ホ)酸素ガス透過度
JIS K7126 B法の等圧法にて、23℃、50%RHの条件で測定を行った。
【0041】
【表1】
【0042】
【発明の効果】
本発明の易離解性耐水耐油紙は、ポリエチレンやポリプロピレンなどの従来のオレフィン系樹脂を塗工した材料と同等の耐水耐油性を有し、かつ従来のオレフィン系樹脂には無い、優れた離解性を有するものである。
さらに本発明は、原料に安価なポリオレフィンを使用し、Tダイ共押出溶融ラミネート法により、高速で極めて安価に製造出来る利点を備えている。
さらには、多層構造にすることにより、ピンホールの発生が押さえられ、耐水耐油性が向上し、ガスバリア層を設けることにより、良好なガスバリヤ性を有することが可能となる。
また、本発明の易離解性耐水耐油紙は、紙の再利用に大きく貢献するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の易離解性耐水耐油紙の縦断面構成図の一例である。
【図2】本発明の易離解性耐水耐油紙の縦断面構成図の一例である。
【図3】本発明の易離解性耐水耐油紙の縦断面構成図の一例である。
【図4】本発明の易離解性耐水耐油紙の縦断面構成図の一例である。
【図5】本発明の易離解性耐水耐油紙の縦断面構成図の一例である。
Claims (4)
- 紙基材の片面または両面に、(a)ポリオレフィン20〜80重量%と(b)粘着付与樹脂80〜20重量%〔ただし、(a)+(b)=100重量%〕の2成分を必須成分としてなる接着性ホットメルト組成物層(A)を設け、さらにその上に(a)ポリオレフィン20〜80重量%と(c)ワックス80〜20重量%〔ただし、(a)+(c)=100重量%〕の2成分を必須成分としてなる耐水耐油性ホットメルト組成物層(B)を設けてなる易離解性耐水耐油紙。
- 接着性ホットメルト組成物層(A)と耐水耐油性ホットメルト組成物層(B)の間に、さらに接着性ホットメルト組成物層(A)および/または耐水耐油性ホットメルト組成物層(B)を積層した請求項1記載の易離解性耐水耐油紙。
- 請求項1〜2記載の易離解性耐水耐油紙にさらにガスバリア層を設けてなる易離解性耐水耐油紙。
- 接着性ホットメルト組成物層(A)および耐水耐油性ホットメルト組成物層(B)に使用されるホットメルト組成物のメルトフローレート(MFR)が20〜500g/10分(190℃、2,160g荷重)であり、Tダイ共押出溶融ラミネート法により製造される請求項1〜3いずれか1項に記載の易離解性耐水耐油紙の製造方法。
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