JP3659332B2 - 紙製帯束バンド - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヒートシール強度、耐ブロッキング性、撥水性等に優れ、古紙として再利用可能な紙製帯束バンドに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、書籍、用紙結束、検札などの軽量品又は重量品を包装するには、PBバンド(合成樹脂製バンド)、ビニール包装、ストレッチ包装が主に利用されていたが、軽量物の包装については、省資源・省エネルギーの観点から、紙製の帯束バンドが市場で使用されつつある。
【0003】
かかる紙製帯束バンドにおいても、前記PBバンドと同様に、自動梱包機により熱接着できるように、ヒートシール性を持たせたものが幾つか提供されている。ヒートシール層の形成手段として、専らポリオレフィン樹脂をラミネート加工したラミネート紙、或いは塩化ビニルや塩化ビニリデン等を含有したコポリマー等の高分子化合物を紙支持体に塗工またはラミネートさせる方法が製造の容易さおよび安価さから利用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記紙製帯束バンドにおいては、包装に必要な帯束強度を得るために紙基材の重量を200g/m2以上に上げる必要があり、結束時の破れ・タイト性・型入り等のトラブルが発生するなどの問題とともに、帯束成形時に粘着バンド・粘着剤を使用しなければならないため機械加工時の高速化が困難であるなどの問題がある。
【0005】
また、これらラミネート加工を行ったものは再生紙化の工程において、ラミネート加工部分、紙基材分が離解しないまま残存し、残り滓の除去処理が必要になるばかりでなく、帯束バンドの接着強度調整はオレフィン樹脂の変更・厚みにより調整するしか方法が無く、強度調整により基材(紙)と樹脂の比率が代わり易く用途によっては樹脂比率が高くなり、バンド巻き取り径が変わるため帯束機の仕様に合わなくなる等の弊害が生じていた。
【0006】
一方、近年は、自然保護・省資源・省エネルギーの要請から、再生紙化を考慮した紙製帯束バンドとして、合成ゴムラテックスからなる水性エマルジョンを用いた帯束バンド(以下、合成ゴムラテックス系帯束バンドという。)が提案されている。
【0007】
前記合成ゴムラテックス系帯束バンドは、時代の要請から今後、需要の伸びが期待されているけれども、ヒートシール強度が比較的弱いとともに、保管時の環境・塗工時の乾燥熱の影響によりブロッキングや帯束バンドの端裂けを起こし、使用できなかったり、使用途中で断紙を発生させるなどの問題があった。この場合、ブロッキングを防止するため樹脂の耐熱性を上げると、今度はヒートシール温度を高くしなければならず帯束不良を発生させるなどの問題が新たに発生するようになる。
【0008】
そこで本発明の主たる課題は、古紙として再利用可能な合成ゴムラテックス系でありながら、ヒートシール強度、耐ブロッキング性、撥水性、リサイクル性等にバランス良く優れた紙製帯束バンドを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための本発明は、機械パルプを主成分とする紙支持体の少なくとも片面に、ガラス転移点が−10〜30℃の範囲である合成ゴムラテックスと、脂肪酸と、無機顔料とを含む塗料からなる水離解可能なヒートシール層を有し、前記無機顔料は、合成ゴムラテックスと脂肪酸とに対して非親和性を有する粒径1μm〜25μmのものを用い、かつ前記無機顔料がヒートシール層表層部で微小な凸凹を作ることによりヒートシール層表面の正反射型平滑度(20kgf/cm2加圧条件下)が5μm〜25μmであることを特徴とするものである。
【0010】
この場合、前記紙製帯束バンドを15mm幅に断裁し、前記ヒートシール層を150℃・2kgf/cm2で1秒間加熱しヒートシールを行い、3秒後の初期シール強度が130g以上、最終シール強度が250g以上であることが望ましい。さらに、前記ヒートシール層は、JIS P 8137による評価でR4以上の撥水性を備えていることが望ましい。
【0011】
本発明者らは、前述の合成ゴムラテックス系帯束バンドのヒートシール強度、撥水性、リサイクル性・耐ブロッキング性を解決する方法について鋭意検討を行った結果、機械パルプを主成分とする紙支持体の少なくとも片面に、ガラス転移点が−10〜30℃の範囲である合成ゴムラテックスと、脂肪酸と、無機顔料を含む塗料からなり、水離解可能であるとともに、前記無機顔料として、合成ゴムラテックスと脂肪酸とに対して非親和性を有する粒径1μm〜25μmのものを用い、かつ前記無機顔料が前記ヒートシール層表層部で微小な凸凹を作ることにより表面の正反射型平滑度(20kgf/cm2加圧条件下)が1μm〜25μmであるヒートシール層を形成することで、前記問題点を解決し得ることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明では合成ゴムラテックスと脂肪酸をブレンドし、その軟化点を調整することにより、樹脂膜の厚みを変化させること無くヒートシール強度・温度を調整することが可能となるため、帯束機の仕様に合わなくなる等の弊害を無くしながら、従来のポリオレフィン系樹脂ラミネート加工品と同レベルのヒートシール強度を与えることが可能になる。
【0013】
また、高温・多湿条件下でも、前記無機顔料と脂肪酸とがブロッキングを防止するようになるとともに、好ましくは多孔性の高い無機顔料を使用することにより、燃焼時に有害物質を無機顔料内に取り込み飛散させないなどリサイクル性にも優れたものとなる。さらに、合成ゴムラテックス層の上面に脂肪酸がブリードしヒートシール層表面に緻密な薄膜を構成することからヒートシール層は撥水性を示すようになる。
【0014】
以上により、今後更に用途が広がるであろう合成ゴムラテックス系紙製帯束バンドの機能を飛躍的に向上させることが可能となる。
【0015】
なお、本発明に使用する合成ゴムラテックス、無機顔料、脂肪酸の配合比はそれぞれの原材料との相性、ヒートシール性、耐ブロッキング性を考慮した上で決定することができるが、必要に応じ紫外線吸収剤、分散剤、耐水化剤、消法剤等の助剤を適宜添加することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明に係る紙製帯束バンドは、機械パルプを主成分とする紙支持体の片面若しくは両面に、ガラス転移点が−10〜30℃の範囲である合成ゴムラテックスと、脂肪酸と、無機顔料とを含む塗料からなる水離解可能なヒートシール層を形成したものである。
【0017】
以下、具体的に詳述すると、
前記紙支持体は、機械パルプを好ましくは50%以上含む繊維状物質及び填料からなるものである。前記繊維状物質としては、古紙由来の機械パルプ、TMP、GP、RGPおよびCTMPなどの機械パルプを合計で50%以上含むことが望ましいが、機械パルプ以外の繊維状物質として従来公知のLBKPやNBKPに代表される木材パルプを使用することができる。また、必要によりケナフやバガスなどの非木材繊維、合成繊維を便宜混合しても良い。機械パルプは、他の繊維状物質と比較して、環境に優しいパルプであり、同一坪量で不透明度を比較した際、優れた不透明性を発揮する点で優れる。また填料としては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、チョークなどの炭酸カルシウム、カオリン、焼成クレー、タルク、二酸化チタンなど従来公知のものが使用できる。
【0018】
前記紙支持体は、クラフト紙・中質紙・コート紙等、何れでも良いが、米坪が25〜200g/m2で、かつJISP−8113による引張試験にて2kgf/15mm以上、JISP−8122によるステキヒトサイズ度が2秒以上、JISP−8117による透気度が5秒以上の用紙が好ましい。このような紙支持体の性質により、塗工液が含浸すること無く紙基材表面に残るようになり、優れたヒートシール性を発現できるようになる。
【0019】
一方、塗料に含有される前記合成ゴムラテックスとしては、スチレン−ブタジエン系、アクリロニトリル−ブタジエン系、メチルメタクリレ−ト−ブタジエン系、アクリロニトリル−スチレン系、アクリル系のガラス転移点(Tg)が−10〜30℃の範囲のものを単独もしくは2種以上混合したものの他、PVA・酢酸ビニル等を混合して使用することができ、特に好ましくはガラス転移点を−10〜10℃となるように調整したものを使用するのが良好なヒートシール性を得る上で望ましい。
【0020】
前記合成ゴムラテックスのガラス転移点(Tg)が−10℃未満の場合は、加工時の乾燥熱及び夏場の高温条件下での長期保管時にブロッキングトラブルを発生させ好ましくない。また、ガラス転移点(Tg)が30℃を超える場合には3秒後の初期接着強度が100g以下の結果となる。
【0021】
また、前記脂肪酸は前記合成ゴムラテックスと相性が良く、ガラス転移点(Tg)の低い、12−ヒドロキシステアリン酸、ステアリン酸アミド、無水フタル酸アミド、マイクロクリスタリンワックス、天然パラフィン、合成パラフィン、塩素化炭化水素等を使用することができる。
【0022】
前記脂肪酸は、ヒートシール加工時、合成ゴムラテックスとの相性が良い低粘度の物を使用することが好ましい。低粘度の脂肪酸は、塗工乾燥後、紙支持体表面にブリードし、紙の表面の空隙部に入り込み、熱によるブロッキングを抑止する働きがある。
【0023】
他方、前記無機顔料は、ブロッキング、ヒートシール性を左右する表面粗さの調整と、加工性への影響のため、弾性が少なく圧力により変形しにくいもの、比較的に多孔性の高いものが使用でき、好ましくは前記合成ゴムラテックスと脂肪酸とに対して非親和性を有する粒径が1μm〜25μmの無機顔料を用いることが好適であり、2種以上を併用しながら使用すると更に好適となる。
【0024】
具体的に前記無機顔料としては、例えば合成シリカ、カオリン、クレー、タルク、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、サチンホワイト、亜鉛華、水酸化アルミナ、水酸化マグネシウム、含水ケイ酸マグネシウム、マイカ、ガラスフレーク、ガラスバルーン、等の無機顔料を挙げることができる。
【0025】
前記無機顔料の粒径が1μmに満たない場合は、無機顔料によるヒートシール層の凹凸が十分に出ないことから、塗工後巻き取り時に対面する原紙面と接触する接触面積を軽減することが困難でブロッキングを発生させる。また、無機顔料の粒径が25μmを超えると、ヒートシール時の熱・圧力が十分伝達されないことにより所要のヒートシール強度が得られないばかりか、極端に塗工量を増やさなければならないため製造効率が低下し高価となる。
【0026】
前記無機顔料は、ヒートシール層表層部で微小な凸凹を作ることにより、巻取り時のブロッキングを軽減する。ヒートシール時には、ヒートシール層を構成する、合成ゴムラテックスと脂肪酸のヒートシール溶融物が、無機顔料による微小な凸凹に入り込み、ヒートシール時の圧力によりブロッキング抑止の性質から転じ、逆に密着する性質を示すことから接触面積が増しヒートシール強度を増加させる。ヒートシール強度は、前記脂肪酸の配合量により調整が可能になる。
【0027】
この場合、所要のヒートシール強度を得るために、前記無機顔料の添加量は、正反射型平滑度計(加圧20kgf/cm2条件下)で5〜25μmの表面粗さとなるように塗料中に添加するようにする。正反射型平滑度が5μm未満ではブロッキングを助長するばかりか、用紙が滑りやすく小巻加工時の巻きズレを発生させ好ましくない。また、正反射型平滑度が25μmを超える場合には、接着強度が得られ難いばかりか、ヒートシール層を傷つけ、撥水性が悪化する。また、巻取り加工時の巻き固さが悪くなり光沢不良が発生し帯束不良を発生させる。
【0028】
前記合成ゴムラテックスと、脂肪酸と、無機顔料とを含む塗料を紙支持体に塗工し、ヒートシール層を形成するには、サイズプレスコート、ロッドコート、エアーナイフコート、カーテンコート、ロールコート等の従来公知の塗工方法により形成することができる。そして、塗工後に、合成ゴムラテックス層の上面に脂肪酸がブリードしヒートシール層表面に緻密な薄膜を構成することからヒートシール層は撥水性を示すようになる。この撥水性はJIS P 8137による評価でR4以上の撥水性を備えていることが望ましい。撥水度がR未満の場合は水気のものを帯束すると用紙中に水分が入り込み、紙力が低下し破断を発生させ好ましくない。
【0029】
なお、必要に応じて前記紙支持体の反対面にヒート補助層を設けることもできる。このヒート補助層は、前述したヒートシール層と同じ組成で構成させることが好ましい。ヒートシール補助層面を設けることにより片方の接触面が整面されたことにより、塗工後巻き取り時に対面する凹凸のあるヒートシール層と接触する接触面積を軽減できるようになるため、無機顔料の配合量を低減させることが可能である。
【0030】
前記紙製帯束バンドは、15mm幅に断裁し、前記ヒートシール層を70℃・2kgf/cm2の条件で1秒間加熱してヒートシールを行い、3秒後の初期シール強度が130g以上、最終シール強度が250g以上であることが望ましい。3秒後の初期シール強度が100g未満の場合には、帯束直後の搬送ライン上の震動および5℃以下の低温条件下で接着不良を発生させる。一方、最終シール強度が250g未満の場合は、帯束後40℃以上・75%以上の高温・高湿条件下で保管し内容物が膨張した際に帯束部分が破断してしまうトラブルが発生し望ましくない。
【0031】
【実施例】
<実施例1>
ヒートシール層/ 市販の合成ゴム:スチレン−ブタジエン系(固形分換算60部 日本ゼオンRIX7082) 粘度100CPS、固形分48%を100部、市販の脂肪酸類(パラフィンワックス)ポリエチレンワックス粘度220CPS、固形分40%のものを20部、顔料:炭酸カルシウム(顔料粒径5μm)20部を混合した塗料を作製し、機械パルプを60%含有する坪量90g/m2の基体紙上に塗工し乾燥させる。
【0032】
<実施例2〜3及び比較例1〜11>
実施例1の炭酸カルシウムの粒子径、配合部数、ガラス転移点(Tg)をそれぞれ変化させて、実施例2〜3及び比較例1〜11とした。
【0033】
<実施例4〜6及び比較例12〜22>
無機顔料を炭酸カルシウムから水酸化アルミニウムに変化させ、粒子径、配合部数、ガラス転移点(Tg)をそれぞれ変化させて実施例4〜6及び比較例12〜22とした。
【0034】
これらの試験結果を表1および表2に示す。
【0035】
【表1】
Figure 0003659332
【0036】
【表2】
Figure 0003659332
【0037】
《評価方法》
(1)表面粗さ評価:マイクロトポグラフ(東洋精機製)を使用し、測定圧20kgf/cm2条件下で測定する。
(2)ブロッキング性評価:各サンプルにおける脂肪酸エステル類の転移性を確認するため実際に30kgf/cm2・200m/分の条件で巻き直し、40℃、53%の条件で50日間静置し、ブロッキングレベルを確認する。
(3)ヒートシール強度評価:JISZ1707の方法でヒートシール強度を確認する。
(4)離解性評価:各サンプルをJIS-P8209のパルプ紙試験方法で使用されている、TAPPI標準離解機を用いて確認する。サンプルを25mm×25mmに断裁したサンプル30gを30℃に調整した水2Lに入れ、回転数3000rpmで15分間攪拌し離解する。攪拌したサンプルをJIS標準角形手抄マシンでシート状にし、目視で観察する。
(5)撥水性評価:JISP8137の方法(下表3)で撥水性を確認した。
【0038】
【表3】
Figure 0003659332
【0039】
(6)前記ブロッキング性、離解性、総合評価は、非常に良好◎・良好○・普通△・やや悪い▲・悪い×により行った。
【0040】
【発明の効果】
以上詳説のとおり本発明によれば、古紙として再利用可能な合成ゴムラテックス系でありながら、ヒートシール強度、耐ブロッキング性、撥水性、リサイクル性等にバランス良く優れた紙製帯束バンドを提供できるようになる。その結果、自然保護・省資源・省エネルギー化に資する紙製帯束バンドを提供できるようになる。

Claims (3)

  1. 機械パルプを主成分とする紙支持体の少なくとも片面に、ガラス転移点が−10〜30℃の範囲である合成ゴムラテックスと、脂肪酸と、無機顔料とを含む塗料からなる水離解可能なヒートシール層を有し、前記無機顔料は、合成ゴムラテックスと脂肪酸とに対して非親和性を有する粒径1μm〜25μmのものを用い、かつ前記無機顔料が前記ヒートシール層表層部で微小な凸凹を作ることによりヒートシール層表面の正反射型平滑度(20kgf/cm2加圧条件下)が5μm〜25μmであることを特徴とする紙製帯束バンド。
  2. 前記紙製帯束バンドを15mm幅に断裁し、前記ヒートシール層を150℃・2kgf/cm2で1秒間加熱しヒートシールを行い、3秒後の初期シール強度が130g以上、最終シール強度が250g以上である請求項記載の紙製帯束バンド。
  3. 前記ヒートシール層は、JIS P 8137による評価でR4以上の撥水性を備えている請求項1〜いずれかに記載の紙製帯束バンド。
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