JP3922959B2 - 田植機用の薬剤散布装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、苗植付け作業と同時に除草剤などの薬剤を圃場に散布するよう構成した田植機用の薬剤散布装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
上記薬剤散布装置は、基本的に、ホッパから繰出した粉粒状の薬剤を高速回転駆動される拡散機構に落下供給して幅広く散布するよう構成されており、拡散機構しとしては、例えば、特開平6−86623号公報に開示されているように、左右の薬剤落下口から落下供給される薬剤を縦軸心周りに高速で回転駆動される羽根車に導いて左右に幅広く拡散するとともに、左右の薬剤落下口の一方からのみ薬剤を落下供給することで散布範囲を左右いずれかに片寄らせるように構成したものや、特開平7−255223号公報に開示されているように、前後軸心周りに高速で回転駆動される拡散ロータを左右一対備えて、拡散範囲を選択できるように構成したもの、などが利用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記拡散機構は、いずれの構成においても、遠距離への飛散機能を高めることは比較的容易であるが、近距離への飛散が難しく、反射板などを導入して近距離へ飛散する必要があり、飛散する薬剤を案内するためのケース構造が複雑になりがちであった。
【0004】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、比較的簡単な構造で、薬剤を左右に幅広く均一に拡散して散布できるようにすることを主たる目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
〔請求項1に係る発明の構成、作用、および効果〕
【0006】
請求項1に係る発明は、薬剤ホッパに貯留された粉粒状の薬剤を繰出し機構で所定量づつ繰出し、繰出された薬剤を拡散機構によって拡散散布するよう構成した田植機用の薬剤散布装置あって、前記拡散機構には、前記繰出された薬剤を近距離での拡散を行う近距離飛散用の羽根と遠距離での拡散を行う遠距離飛散用の羽根とを左右軸心周りに回転する回転軸に備え、作業用伝動系の伝動軸の回転を検出する回転検出機構を設けるとともに、前記回転検出機構による前記伝動軸の回転検出に基づいて植付け作動の開始及び停止を判断して薬剤を繰出す前記繰出し機構の駆動・停止を行う制御装置を備えてあることを特徴とする。
【0007】
上記構成によると、種々の薬剤反射板やガイドを要することなく、近距離および遠距離への飛散を好適に行うことができ、幅広く均一な薬剤散布が可能となる。
【0008】
〔請求項2に係る発明の構成、作用、および効果〕
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1の発明において、前記繰出し機構に左右一対の薬剤落下口を設けて前記拡散機構に臨設するとともに、拡散機構には、共通の左右軸心周りに回転駆動される拡散羽根を備え、かつ、拡散羽根を左散布用と右散布用に2組備えてある。
【0010】
上記構成によると、繰出し機構によって繰出されて左右の薬剤落下口から落下供給されてきた薬剤は、左右軸心周りに回転駆動される左散布用の拡散羽根と右散布用の拡散羽根にそれぞれ導かれ、左右に飛散される。
この場合、拡散羽根は左右軸心周りに回転駆動されるものであるので、左右水平に支架した回転軸に拡散羽根を取付けるような構成をとることで、左散布用の拡散羽根と右散布用の拡散羽根を左右の薬剤落下口に適正に臨設配備することが容易となる。
また、左右軸心周りに回転駆動される拡散羽根は、その形状や長さなどによって飛散能力を任意に設定しやすい。
【0011】
従って、請求項2の発明によると、構造簡単な一軸駆動でありながら、薬剤を左右に幅広く均一に拡散して散布することが可能となる。
【0012】
〔請求項3に係る発明の構成、作用、および効果〕
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項1または2の発明において、前記拡散羽根を、傾斜羽根、あるいは、ねじり羽根で構成してある。
【0014】
上記構成によると、傾斜羽根、あるいは、ねじり羽根の長さ、傾斜角度、ねじり角度、などを設定することで所望の拡散能力をもった拡散機構を構成することができ、幅広く均一な拡散散布を効率良く行うことができる。
【0015】
〔請求項4に係る発明の構成、作用、および効果〕
【0016】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか一項の発明において、苗植付け装置に対して高さ調節可能に装着してある。
【0017】
上記構成によると、拡散機構の能力が同じでありながら、植付け条数の異なる田植機に好適に利用でき、機種ごとに異なる仕様の薬剤散布装置を準備する必要がなく、安価に実施することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1に、本発明に係る薬剤散布装置を備えた田植機の全体側面が示されている。この薬剤散布装置付き田植機は、4輪駆動型の走行機体1の後方に、油圧シリンダ2で駆動される四連リンク機構3を介して苗植付け装置4が昇降自在に連結されるとともに、走行機体1の後部に施肥装置5が搭載装備され、かつ、苗植付け装置4の後部に薬剤散布装置6が連結された構造となっており、主変速レバー7を前後に揺動操作することで、無段の前後進変速が可能、かつ、副変速レバー8によって作業走行用の低速と移動走行用の高速とを選択するようになっている。
【0019】
前記苗植付け装置4は6条植え仕様に構成されており、乗用走行機体1から軸伝達された作業用動力を受けるフィードケース12、6条分の苗を載置して一定ストロークで往復横移動される苗のせ台13、左右に並列配備された3つの植付けケース14、各植付けケース14の後部左右に装着された回転式の植付け機構15、2条分づつ植付け箇所を整地する3個の整地フロート16、などが装備されている。また、図2に示すように、各植付けケース14には、左右の植付け機構15の駆動を断続する畦際クラッチ17が備えられており、これら畦際クラッチ17を選択して切り操作することで、通常の全条(6条)植えの他に、畦際近くでの4条植え、および、2条植えによる少数条植えを行うことができるよう構成されている。
【0020】
前記施肥装置5は、顆粒状の肥料を収容する肥料ホッパ21、収容した肥料を所定量づつ繰出す2条単位3組の繰出し機構22、繰出された肥料を整地フロート16に備えた作溝器23に導く供給ホース24、供給ホース24内に搬送風を供給して肥料を作溝器23まで風力搬送する電動ブロア25、などが備えられており、植付けと同時に植付け苗の横側近くに肥料を埋設してゆくよう構成されている。そして、3組の各繰出し機構22は、前記畦際クラッチ17を操作する3本の畦際クラッチレバー26にそれぞれ連動連結されており、畦際クラッチ17の切り操作によって一部の植付けが休止されると、その植付け休止条に対応する条の肥料繰出しも停止されるようになっている。
【0021】
図3〜図11に前記薬剤散布装置6の構成が示されている。この薬剤散布装置6には、粉粒状の薬剤(除草剤)を収容する薬剤ホッパ30、収容した薬剤を所定量づつ繰出す繰出し機構31、繰出された薬剤を6条の植付け幅に相当する横幅で植付け跡に拡散散布する拡散機構32、繰出し機構31および拡散機構32を内装する散布ケース33、等が備えられており、ベース部材としての散布ケース33が、前記植付けケース14から立設した伸縮調節可能な支柱34を介して高さ調節可能に取付けられている。
【0022】
薬剤ホッパ30は、蓋カバー35を備えたホッパ本体36と、その下端に嵌合されてピン連結されたロートケース37とから構成されており、ロートケース37の中央後方箇所に下向きに開口した単一の流下筒37aが形成されている。そして、この薬剤ホッパ30全体が、散布ケース33の上部中央部位に連設された筒部33aの上端に脱着可能に外嵌されて、この筒部33aに備えた左右のバックル38で止着されている。なお、ホッパ本体36および蓋カバー35は、収容した薬剤の消費具合を監視できるように透視可能な樹脂材で形成されている。
【0023】
散布ケース33における筒部33aの内部には、上向きに開口した内ケース部33bが設けられており、この内ケース部33bの内部に前記繰出し機構31が装備されている。繰出し機構31は、ロートケース37における流下筒37aの下端に形成された薬剤流下口aから薬剤を目皿40によって定量づつ繰出して拡散機構32に供給するものであり、以下のように構成されている。
【0024】
すなわち、前記目皿40は平面形状が扇形の厚肉樹脂材で形成されており、扇形のかなめ部位に圧入連結した支軸41が、ロートケース37に設けた軸受けボス部37bに回転可能に下方から挿入されるとともに、軸受けボス部37bの左右に突設された一対のボス部37cにネジ止めされた目皿支持板42が、前記支軸41に形成した段部41aに座金43を介して係合されることで、目皿40がロートケース37に落下不能に支持されている。
【0025】
目皿40の外周両端部近くには、上下に貫通する一対の繰出し孔bが形成されている。両繰出し孔bは、目皿回転軸心Pからロートケース37の薬剤流下口aまでの距離を半径とする円弧線上に設けられており、目皿40が軸心P周りに水平に往復揺動することで、各繰出し孔bが薬剤流下口aに臨む薬剤受け入れ位置と、薬剤流下口aから外れた位置との間で移動する。なお、内ケース部33bの底面には、目皿40の揺動範囲を囲むように平面形状が扇形の周壁33dが立設されて、洩れた薬剤が拡散するのを防止している。
【0026】
内ケース部33bにおける底面の後方箇所には左右一対のロート状の流下案内部33cが形成されるとともに、その入口部位には、バネ板材からなる遮蔽板44が水平片持ち状にネジ止め固定されている。この遮蔽板44は目皿40の下面に弾性押圧されており、これによって目皿40の上面が流下筒37aの下端に密着されるとともに、目皿40の下面に遮蔽板44が密着されて摺動するようになっている。そして、図9に示すように、目皿40が、両繰出し孔bの間の中央部位が薬剤流下口aの直下となる基準位置にある時、薬剤流下口aが目皿40で閉塞されるとともに、両繰出し孔bが共に遮蔽板44から外れた位置で下方に開放されるように、この遮蔽板44の周方向幅と取付け位相が設定されている。
【0027】
また、流下筒37aにおける下端部の左右には、目皿40の上面に作用するブラシ46が配備され、繰出し孔bに供給充填された薬剤をブラシ46で摺りきって定量づつの繰出しを行うよう構成されている。なお、このブラシ46は、流下筒37aの左右に突設されたボス部37dにネジ止めされた支持板47に取付けられている。
【0028】
従って、繰出し孔bが薬剤流下口aに臨む位置にある時、繰出し孔bは下方から遮蔽板44で閉塞されるので、薬剤ホッパ30内の薬剤が薬剤流下口aから繰出し孔bに流入し、繰出し孔bが薬剤流下口aから外れることによって繰出し孔b内に充填された所定量の薬剤が遮蔽板44の上面に沿って搬送され、繰出し孔bが遮蔽板44から外れて下方に開放されることで、繰出し孔b内の薬剤が流下案内部33cに落下排出されるのである。
【0029】
そして、目皿40は、その回転中心部位に装着したねじりバネ45で図9に示す基準位置に弾性的に付勢されており、清掃やメンテナンスのために薬剤ホッパ30を散布ケース33から取外した場合、目皿40も前記基準位置に弾性保持された状態で薬剤ホッパ30と一緒に取外されることになり、ホッパ内に薬剤が残っていても基準位置の目皿40が薬剤流下口aを閉塞して、薬剤の流出を阻止する。
【0030】
内ケース部33bに設けられた左右の流下案内部33cの下端にはそれぞれ薬剤落下口cが形成されており、目皿40が左方に揺動して左方の繰出し孔bが遮蔽板44から左方にはずれると、この繰出し孔bで繰出し搬送された薬剤は落下して左方の薬剤落下口cから拡散機構32に落下供給され、また、目皿40が右方に揺動して右方の繰出し孔bが遮蔽板44から右方にはずれると、この繰出し孔bで繰出された薬剤が落下して右方の薬剤落下口cから拡散機構32に落下供給されるようになっている。
【0031】
そして、前記目皿40は、以下のように構成された目皿駆動機構50によって往復揺動駆動されるようになっている。
【0032】
前記散布ケース33の内部上方には、金属板からなる支持枠51が水平にネジ止め固定され、この支持枠51と前記内ケース部33bの底壁とに亘って、前記目皿回動用の軸心Pと同心に回転軸52が鉛直に支承され、この回転軸52に扇形ギヤ53が外嵌装着されて手動脱着可能なベータピン54で連結されている。また、支持枠51の下面には駆動用アクチェータとしてのステッピングモータ55が装着され、支持枠51の上に突出されたモータ出力軸55aにピニオンギヤ56が連結されて前記扇形ギヤ53に咬合されている。そして、扇形ギヤ53と一体回転する前記回転軸52の上端部が内ケース部33bの底壁を貫通して上方に突出されて、前記目皿40の中心孔57に挿入されるとともに、この回転軸52の上端部に貫通装着した駆動用ピン58が、前記目皿40の中心孔57に連設された係合凹部59に係入することで、扇形ギヤ53の回転が回転軸52を介して目皿40に伝達されるようになっている。
【0033】
前記薬剤落下口cから落下供給された薬剤を拡散する拡散機構32は以下のように構成されている。
【0034】
前記散布ケース33の内部には、左右一対の側板61と周壁板62とによって下方および後方に向けて開口された拡散室Sが形成されるとともに、前記流下案内部33cの下端部が周壁板62の天井部位に貫通されており、目皿40で繰出されて流下案内部33cに排出された薬剤が左右の薬剤落下口cを介して拡散室Sに落下供給されるようになっている。
【0035】
拡散室Sの左右側板61に亘って回転軸63が水平に支架されるとともに、この回転軸63の左端部と、左側板61に取付けたモータ64の出力軸64aとがベルト伝導装置65を介して増速連動されて、回転軸63が一定方向に高速回転駆動されるようになっている。そして、この回転軸63の中央部に外嵌止着されたボス部材66に、金属板を打ち抜き形成してなる左方拡散用の拡散羽根67と右方拡散用の拡散羽根68とが背中合わせ状態でネジ止めされて、前記拡散機構32が構成されている。
【0036】
ここで、図11に示すように、前記拡散羽根67,68は、それぞれが大きく屈折傾斜された短い羽根67a,68aとゆるく屈折傾斜された長い羽根67b,68bとが1組となっており、大きく屈折傾斜された短い羽根67a,68aは主として左右拡散範囲における中央付近(近距離)での拡散を行い、ゆるく屈折傾斜された長い羽根67b,68bが主として左右拡散範囲の外側(遠距離)での拡散を行うようになっている。
【0037】
なお、前記散布ケース33の内部の上方には、目皿駆動用のステッピングモータ55および拡散機構駆動用のモータ64を作動制御する制御装置70を搭載した基板71が設けられており、この基板71に搭載したトッグル型の電源スイチ72の操作レバー72aと、繰出し量調節用の可変抵抗器73の操作ダイヤル73aが散布ケース33の後面に露出するよう配備されている。そして、図12のブロック図に示すように、この制御装置70には、左右両端の畦際クラッチレバー26の切り状態を検出する2個のスイッチ74と、走行機体1から苗植付け装置4への動力伝達用に機体下腹部に配備した伝動軸9に作用する回転検出機構75と、前記目皿40の位置を検出する目皿位置検出機構76が接続されている。
【0038】
図12中に示すように、前記回転検出機構75は、伝動軸9に取付けられた磁性金属板からなる回転検出体77と、この回転検出体77に回転方向一定ピッチで突設されたドグ77aに対向する近接スイッチ78とから構成されており、伝動軸9の回転に伴って近接スイッチ78から出力されるパルス信号の周期から伝動軸9の回転速度が演算されるようになっている。
【0039】
また、目皿位置検出機構76は、前記扇形ギヤ53の下面に突設した円弧状のリブ53aと、このリブ53aに直交する光路を備えた光透過型のフォトインタラプタ79とから構成されており、図9に示すように、目皿40が、往復揺動作動範囲の中央に位置する前記基準位置にある時、リブ53aの一端がフォトインタラプタ79の光路中心上にあり、この基準位置から目皿40が時計方向に揺動されるとリブ53aがフォトインタラプタ79の光路から外れ、また、基準位置から目皿40が反時計方向に揺動されるとリブ53aがフォトインタラプタ79の光路を遮るように設定されている。つまり、この目皿位置検出機構76からの情報によって、目皿40が基準位置、および、正逆いずれの方向に作動しているかを判断することが可能となっているのである。
【0040】
本発明に係る薬剤散布装置6は以上にように構成されており、次にその散布作動について説明する。
【0041】
作業に先立って、電源スイッチ72を入れ、可変抵抗器73を調節操作して所望の散布量(単位面積当たり)を設定する。この場合、拡散機構駆動用のモータ64は電源スイッチ72の入り切りに応じて起動および停止されるが、目皿駆動用のステッピングモータ55は電源スイッチ72が入れられただけでは起動されることがなく、植付け作業が開始されないと散布作動も行われない。
【0042】
すべての準備が整って植付け作業を開始すると、走行機体1から苗植付け装置4へ動力伝達を行う伝動軸9の回転に伴って回転検出機構75の近接スイッチ78からパルス信号が出力され、このパルス信号の間隔が予め設定した時間以内であると、伝動軸9が回転されて植付け作動が開始されたと判断して目皿駆動用のステッピングモータ55が作動制御され、目皿40が基準位置から左右に設定角度θづつ往復揺動される。
【0043】
例えば、図9に示す基準位置から目皿40が設定角度θだけ左方に作動すると、右側の繰出し孔bが薬剤流下口aの直下に位置して、薬剤がこの繰出し孔bに充填され、次に目皿40が設定角度θだけ右方に作動して基準位置に復帰することで、右側の繰出し孔bに充填された薬剤が右側の流下案内部33cに落下供給され、また、基準位置から目皿40が設定角度θだけ右方に作動すると、左側の繰出し孔bが薬剤流下口aの直下に位置して、薬剤がこの繰出し孔bに充填され、次に目皿40が設定角度θだけ左方に作動して基準位置に復帰することで、左側の繰出し孔bに充填された薬剤が左側の流下案内部33cに落下供給されることになり、目皿40の左右往復揺動によって薬剤ホッパ30から定量づつ繰出された薬剤が左右の薬剤落下口cから交互に拡散機構32に落下供給されて、圃場に幅広く散布されてゆく。
【0044】
この場合、目皿40は、常に一定速度で揺動駆動されるとともに、左右揺動作動のストロークエンド位置で所定の休止時間をもって間欠的に駆動されるようになっており、この休止時間が短いほど単位時間当たりの目皿作動回数が多くなって、単位時間当たりの繰出し量は多くなる。また、休止時間が長くなるほど単位時間当たりの目皿作動回数が少なくなって、単位時間当たりの繰出し量が少なくなる。そして、休止時間中は目皿40をストロークエンド位置に保持するに足るトルクを発揮するだけの極少量の電流がステッピングモータ55に流される。なお、目皿40の移動速度は、薬剤流下口aから繰出し口bへの薬剤充填が円滑かつ十分に行うことのできる範囲で、できるだけ速い速度に設定されている。
【0045】
ここで、除草剤などの薬剤の散布量は、圃場単位面積当たりに散布する量、換言すると、単位走行距離当たりの散布量として設定されるものであり、薬剤の種類等に応じて単位面積当たりの散布量を設定すると、走行速度に対応して単位時間当たりの散布量が割り出され、前記休止時間が自動的に変更設定される。
【0046】
つまり、苗植付け装置4への伝動軸9は、主変速レバー7で変速操作される走行用伝動系から分岐された作業用伝動系に属しており、伝動軸9の回転速度は走行速度に比例して変化する。従って、走行速度が速くなるとこれに比例して伝動軸9の回転速度も増加し、これが回転検出機構75で検出されて目皿40の休止時間が短くなるように自動変更される。逆に、走行速度が遅くなるとこれに比例して伝動軸9の回転速度も減少し、これが回転検出機構75で検出されて目皿40の休止時間が長くなるよう自動変更されるのである。ただし、作業用伝動系に備えた株間変速装置を切換えて株間を変更調節すると、走行速度に対する伝動軸9の回転速度が変化するので、薬剤繰出し量は、選択された株間に対応して設定されることになる。
【0047】
そして、作業用伝動系に装備されている植付けクラッチを切って植付け作業を停止すると、伝動軸9が停止して回転検出機構75の近接スイッチ78からパルス信号がなくなる。そして、制御装置70においては、近接スイッチ78からのパルス信号の間隔が予め設定した時間以上であることを認識すると、伝動軸9が停止されて植付け作動が停止されたと判断して目皿駆動用のステッピングモータ55が停止される。
【0048】
また、畦際近くにおいては、一部の畦際クラッチ17を切って少数条植えを行うことがあるが、この場合は、薬剤散布幅が以下のようにして変更される。
【0049】
例えば、左端の畦際クラッチ17を切って右側4条の少数条植えを行う場合には、左端の畦際クラッチレバー26の切り操作がスイッチ74で検知され、これに基づいて目皿40の右側繰出し孔bのみを利用しての繰出し状態になるよう、目皿40の作動範囲が制限される。つまり、この場合、目皿40は、基準位置と右側の繰出し孔bが薬剤流下口aの直下に位置する受入れ位置との間において左側半分の設定角度θでのみ間欠的に往復揺動され、図13(ロ)に示すように、右側4条に対応した薬剤散布が行われ、その後、図13(ハ)に示すように、再び全条(6条)植付けに対応した全幅での薬剤散布が行われる。また、左端と中央の畦際クラッチ17が切られて右側2条の少数条植えを行う場合にも、左端の畦際クラッチレバー26の切り操作がスイッチ74で検知され、これに基づいて目皿40の往復作動範囲が基準位置から左側半分の設定角度θに制限され、図14(ロ)に示すように、右側2条を含む範囲に薬剤散布が行われ、その後、、図14(ハ)に示すように、再び全条(6条)植付けに対応した全幅での薬剤散布が行われる。また、右端の畦際クラッチ17が切られて左側4条の植付けを行う場合、および、右端と中央の畦際クラッチ17が切られて左側2条の植付けを行う場合には、上記とは逆に、左側繰出し孔bのみを利用しての繰出し状態になるよう、目皿40の往復作動範囲が基準位置から右側半分の設定角度θに制限されることになる。
【0050】
ここで、目皿40を往復駆動するステッピングモータ55は、駆動パルス数を制御することで目皿40の作動角度を設定するものであり、目皿40が基準位置にあるときのモータ回転位置を原点として、この原点から正逆に設定角度θで目皿40を駆動するように設定されている。そして、目皿40の基準位置への到達を目皿位置検出機構76が検出するたびに前記原点が修正され、もって、目皿40の正逆への作動量が常に基準位置に対して設定角度θに保たれるようになっている。
【0051】
〔別実施形態〕
本発明は、以下のような形態で実施することもできる。
【0052】
(1)図15に示すように、左方拡散用の拡散羽根67と右方拡散用の拡散羽根68とを、大きく屈折傾斜された短い羽根67a,68aとゆるく屈折傾斜された長い羽根67b,68bとが互いに背中合わせとなるように配備すると、回転バランスをとることができ、高速回転による振動発生を抑制する上で有効となる。
【0053】
(2)拡散機構32を構成する拡散羽根67,68は、上記したような直線的に屈折させた傾斜羽根を用いる他に、三次元に屈曲変形させたひねり羽根を利用することもでき、その形状、大きさ、長さ、羽根枚数、傾斜角度、ひねり角度、などは任意に選択することができる。
【0054】
(3)この薬剤散布装置6の取付け高さを変えると田面に対する散布幅が変化するので、薬剤散布装置6を低く設置して散布幅を狭くすることで4条植え仕様の田植機に対応することができ、また、薬剤散布装置6を高く設置して散布幅を広くすることで8条植え仕様の田植機に対応することができる。
【0055】
(4)左右の薬剤落下口cから薬剤を散布機構32に供給する繰出し機構31の構成は上記構成に限られるものではなく、縦軸心周りで一定方向に回転駆動される目皿を利用するものであってもよく、また、目皿駆動機構も、苗植付け装置4における植付け機構15の作動を利用するものであってもよい。
【0056】
(5)この薬剤散布装置6を2台左右に配備して8条植え仕様あるいは10条植え仕様の田植機に対応することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 乗用田植機の全体側面図
【図2】 薬剤散布装置の背面図
【図3】 薬剤散布装置の縦断側面図
【図4】 薬剤散布装置の縦断背面図
【図5】 薬剤散布装置の要部を示す縦断側面図
【図6】 薬剤ホッパを取外した状態の要部を示す縦断側面図
【図7】 目皿支持構造を示す縦断背面図
【図8】 薬剤繰出し部位の縦断背面図
【図9】 基準位置にある目皿とその駆動機構を示す展開平面図
【図10】 目皿位置検出機構の側面図
【図11】 拡散機構の分解斜視図
【図12】 制御ブロック図
【図13】 散布例の説明図
【図14】 他の散布例の説明図
【図15】 他の実施形態の拡散機構を示す分解斜視図
【符号の説明】
4 苗植付け装置
30 薬剤ホッパ
31 繰出し機構
32 拡散機構
67 拡散羽根
67a 羽根
67b 羽根
68 拡散羽根
68a 羽根
68b 羽根
c 薬剤落下口
Claims (4)
- 薬剤ホッパに貯留された粉粒状の薬剤を繰出し機構で所定量づつ繰出し、繰出された薬剤を拡散機構によって拡散散布するよう構成した田植機用の薬剤散布装置であって、
前記拡散機構には、前記繰出された薬剤を近距離での拡散を行う近距離飛散用の羽根と遠距離での拡散を行う遠距離飛散用の羽根とを左右軸心周りに回転する回転軸に備え、作業用伝動系の伝動軸の回転を検出する回転検出機構を設けるとともに、前記回転検出機構による伝動軸の回転検出に基づいて植付け作動の開始及び停止を判断して薬剤を繰出す前記繰出し機構の駆動・停止を行う制御装置を備えてあることを特徴とする田植機用の薬剤散布装置。 - 前記繰出し機構に左右一対の薬剤落下口を設けて前記拡散機構に臨設するとともに、拡散機構には、共通の左右軸心周りに回転駆動される拡散羽根を備え、かつ、拡散羽根を左散布用と右散布用に2組備えてある請求項1記載の田植機用の薬剤散布装置。
- 前記拡散羽根を、傾斜羽根、あるいは、ねじり羽根で構成してある請求項1または2記載の田植機用の薬剤散布装置。
- 苗植付け装置に対して高さ調節可能に装着してある請求項1〜3のいずれか一項に記載の田植機用の薬剤散布装置。
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-
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