JP3921847B2 - エチレングリコールの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、第4級ホスホニウムハライドを触媒としてエチレンオキシドと二酸化炭素とを反応させてエチレンカーボネートを生成させ、次いでこれを加水分解してエチレングリコールを製造する方法の改良に関するものである。詳しくは本発明は、触媒を循環使用するに際し、触媒の活性低下を低減させる方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
エチレングリコールの製造法の一つとして、エチレンオキシドと二酸化炭素とをカーボネート化触媒の存在下に反応させてエチレンカーボネートを生成させ、次いでこれを加水分解してエチレングリコールとする方法が知られている。エチレンオキシドと二酸化炭素との反応を水の共存下に行うと、反応速度が著しく向上し、かつエチレンカーボネートと共にエチレングリコールが生成するので、後続する加水分解工程の負荷が軽減される。カーボネート化触媒としては種々のものが提案されているが、現在までのところでは第4級ホスホニウムハライドが最も好ましいと考えられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
第4級ホスホニウムハライドは高価なので、循環使用する必要がある。特開昭59−13741号公報には、第4級ホスホニウムハライドは加水分解触媒としても作用するので、エチレンオキシドと二酸化炭素を第4級ホスホニウムハライドの存在下に反応させて得たエチレンカーボネートを含む反応液をそのまま加水分解して、第4級ホスホニウムハライドを含むエチレングリコール水溶液を取得し、これを蒸留して脱水されたエチレングリコールを取得すると共に、第4級ホスホニウムハライドを含む溶液を回収し、触媒液としてエチレンカーボネートの製造工程に循環することが記載されている。しかしながら、この方法により第4級ホスホニウムハライドを反復使用していると、触媒活性が漸次低下することが見出された。従って本発明は、この触媒の反復使用に伴う触媒活性の低下を低減させる方法を提供しようとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、第4級ホスホニウムハライドの存在下にエチレンオキシドと二酸化炭素とを反応させてエチレンカーボネートを含む反応液を生成させるカーボネート化工程、この反応液を二酸化炭素を放出させつつ加水分解してエチレングリコール水溶液を生成させる加水分解工程、このエチレングリコール水溶液を蒸留して、これから少くとも脱水されたエチレングリコールと第4級ホスホニウムハライドを含む溶液とを取得する蒸留工程、及びこの第4級ホスホニウムハライドを含む溶液を触媒液としてカーボネート化工程に供給する循環工程の各工程を含むエチレングリコールの製造方法において、加水分解工程で放出される二酸化炭素を含むガスを、ガス中のエチレングリコールが20ppm以下となるように冷却凝縮させるか又は洗浄液で洗浄してエチレングリコールを含む溶液を取得し、これを上記の各工程のいずれかに供給することにより、触媒の活性低下を軽減させることができる。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明では先ず第4級ホスホニウムハライドの存在下にエチレンオキシドと二酸化炭素を反応させてエチレンカーボネートを含む反応液を生成させる。好ましくはエチレンオキシドと二酸化炭素と水とを反応させて、エチレンカーボネートとエチレングリコールを含む反応液を生成させる。この反応は公知の方法に従って行うことができる。第4級ホスホニウムハライドとしては通常は下記式で表されるものが用いられる。
【0006】
【化1】
【0007】
式中、R1 〜R4 は、それぞれ独立して、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基などの炭化水素基を示し、これらには反応に不活性な置換基が結合していてもよい。Xは塩素、臭素又はヨウ素である。このような第4級ホスホニウムハライドの具体例としては、例えば特開昭58−22448号公報の第2〜3頁に記載のものが挙げられる。なかでもR1 〜R4 が、それぞれ独立して、C1 〜C6 のアルキル基であるテトラアルキルホスホニウムハライドが好ましい。第4級ホスホニウムハライドは通常は系外で合成して添加するが、所望ならば反応系に対応する3級ホスフィンとアルキルハライドとを添加して、反応系内で生成させることもできる。なお、触媒としては通常は第4級ホスホニウムハライドを単独で用いるが、所望ならば他の助触媒や共触媒成分を併用することもできる。例えば第4級ホスホニウムハライドに0.01〜1モル倍のアルカリ金属炭酸塩を共存させると、カーボネート化工程におけるジエチレングリコール等の副生物の生成を減少させ、かつ加水分解工程における反応も促進することができる。
【0008】
カーボネート化工程の反応は通常70〜200℃で行われるが、100〜170℃、特に100〜150℃で行うのが好ましい。反応温度が低いと反応速度が小さくなる。また反応温度が高過ぎると副反応が増加し、かつ触媒の分解による損失が増加するようになる。
反応圧力は通常5〜50kg/cm2 Gであるが、10〜30kg/cm2 Gが好ましい。反応圧力が高いほど一般にエチレンオキシドの反応速度は増大し、かつジエチレングリコール等の副生物の生成量は減少する。しかし反応を高圧で行うことは、反応器その他の機器類に高価なものを必要とし、かつ二酸化炭素を圧縮するための動力費を上昇させる。
【0009】
反応系に供給するエチレンオキシドに対する二酸化炭素のモル比は通常5以下、好ましくは3以下である。このモル比が大きいと反応は良好に進行するが、二酸化炭素を圧縮するための動力費が増大する。また、このモル比が1未満でも反応は進行するが、二酸化炭素は反応原料であると同時に反応系を撹拌して局部的な温度上昇を阻止する作用も奏するので、二酸化炭素はエチレンオキシドに対してモル比で0.5以上、特に1.0以上となるように供給するのが好ましい。
【0010】
前述のように反応系には水を供給するのが好ましい。エチレンオキシドに対する水の比率は任意であるが、通常はモル比で10以下、好ましくは5以下である。このモル比が大きいと、後続する加水分解工程を経て得られるエチレングリコール水溶液の濃度が低下し、脱水に多大の費用を要するようになる。また、モル比が1未満、すなわちエチレンオキシドに対して等モル未満の水しか供給しない場合でも反応は進行するが、水の供給量がある程度多い方が、反応温度の制御上も有利である。
【0011】
反応器としては気液接触が良好なものであれば任意の形式のものを用いることができる。好ましくは気泡塔を用い、エチレンオキシド、二酸化炭素、触媒及び水を塔底部に供給し、頂部から生成した反応液及び過剰の二酸化炭素を流出させる。反応液は後続する加水分解工程に送り、二酸化炭素は反応により消費された分を補給して気泡塔に循環する。反応は著しい発熱反応なので、塔上部から反応液を抜出し、熱交換器で冷却したのち塔底部に戻す外部冷却方式で反応温度を制御するのが好ましい。
【0012】
生成した反応液の加水分解は、通常50〜200℃で行われる。50℃より低温では反応速度が遅く、実用的でない。また200℃を超える高温では、製出されるエチレングリコールの品質が劣化するおそれがある。反応速度及び製品品質の点からして好ましい加水分解温度は80〜180℃、特に100〜180℃である。加水分解に際しては、発生する二酸化炭素をすみやかに系外に除去するのが好ましいので、圧力は溶液が沸騰しない限度でできるだけ低くするのが好ましい。通常は直列に接続された複数の加水分解帯域を有する加水分解装置を用い、最初の帯域に供給されたカーボネート化工程の反応液が、各帯域を順次通過しつつ加水分解を受け、最後の帯域から完全に加水分解されたエチレングリコール水溶液となって流出するようにするのが好ましい。この際、加水分解反応を促進するため、各帯域の圧力が順次低下するようにするのが好ましい。圧力一定で各帯域の温度を順次上昇させる方法もあるが、温度が低い帯域での反応速度が小さくなるので、圧力を順次低下させる方法に比べて加水分解装置が大型化する。
【0013】
加水分解反応装置から流出したエチレングリコール水溶液は、常法により蒸留して、これから脱水されたエチレングリコールと触媒を含む溶液とを取得し、触媒を含む溶液は触媒液として、二酸化炭素とエチレンオキシドとからエチレンカーボネートを生成させる工程に供給する。
加水分解反応装置からは、加水分解反応により生成した二酸化炭素が流出するが、これには水及びエチレングリコールが同伴している。本発明では、このガスを冷却して凝縮液を生成させるか又は洗浄して、エチレングリコールを含む溶液を取得する。冷却凝縮又は洗浄は、ガス中のエチレングリコールが20ppm以下となるように行う。エチレングリコールの回収のためならば、この冷却凝縮又は洗浄はより緩和された条件で行うのが経済的であるが、そのようにすると得られた凝縮液又は洗浄液を系内に戻しても、触媒の活性低下を抑制する効果は小さくなる。
【0014】
ガスの冷却又は洗浄により得られたエチレングリコールを含む溶液は、二酸化炭素とエチレンオキシドからエチレンカーボネートを生成させる工程から、加水分解反応帯域から流出したエチレングリコール水溶液を蒸留して触媒の第4級ホスホニウムハライドを含む溶液を取得するまでの任意のところに供給する。好ましくは加水分解反応装置又はエチレングリコール水溶液から触媒を含む溶液を取得する蒸留系に供給する。このようにすることにより、循環使用される第4級ホスホニウムハライドの触媒活性の低下を抑制することができる。すなわち加水分解反応装置から流出するガス中には、第4級ホスホニウムハライドの触媒活性の低下を抑制する成分が含まれており、ガスを冷却又は洗浄して得られる溶液中にこの成分が溶解して回収され、最終的に二酸化炭素とエチレンオキシドとからエチレンカーボネートを生成させる帯域に循環されて、触媒活性の低下を抑制するものと考えられる。この成分が何であるかは不明であるが、加水分解帯域から流出するガス中には触媒に由来すると考えられるハロゲンが含まれており、かつ前記の冷却又は洗浄条件下ではこのハロゲンは液中に移行するので、触媒活性の低下抑制の少くとも一部はこのハロゲンの作用ではないかと考えられる。
【0015】
【実施例】
以下に実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
図1のフローシートに従ってエチレンオキシド、二酸化炭素及び水からエチレングリコールを製造した。
気泡塔型反応器1(内径20cm、有効高さ200cm)に、二酸化炭素を導管2を経て、エチレンオキシド、水及び循環触媒液を導管3を経て、それぞれ連続的に供給した。それぞれの供給量は、二酸化炭素140kg/Hr、エチレンオキシド62kg/Hr、水50kg/Hr、及び循環触媒液約9.0kg/Hr(トリブチルメチルホスホニウムアイオダイドとして約4.5kg/Hr)である。反応は110℃、20kg/cm2 Gで行い、反応液の一部を熱交換器4を含む外部循環導管5を循環させることにより反応温度の制御を行った。
【0016】
反応により生成した反応液は、過剰の二酸化炭素と一緒に導管6を経て流出させ、気液分離器7で気液分離したのち加水分解装置8に供給した。加水分解装置は2基の槽型反応器を直列に接続したものであり、各段の加水分解条件は第1段が150℃、3.3kg/cm2 G、第2段が150℃、2.2kg/cm2 Gである。
加水分解装置から流出したエチレングリコール水溶液は先ず蒸留塔9で、塔頂圧力80mmHg、塔底温度140℃で蒸留して水を留出させ、塔底流出液を62mmHgに保持されているフラッシング槽10に供給してエチレングリコールやジエチレングリコール等の殆どを気化させ、気化せずに残留した触媒のトリブチルメチルホスホニウムアイオダイドを含む溶液を回収して反応器1に循環した。また、加水分解装置から流出したガスは、導管11を経て冷却器12に供給し、冷却して含まれている水及びエチレングリコールを凝縮させ、エチレングリコールの13%水溶液を47kg/Hrで回収して、導管13を経て加水分解装置の第1段に供給した。冷却器から流出するガスの温度は37℃であり、エチレングリコール濃度は4ppmであった。
【0017】
このようにして90日間反応を行ったところ、反応器1におけるエチレンオキシドの転化率は当初は99.5%であり、90日後でも99.4%であった。これに対し加水分解装置から流出するガスを冷却して生成した凝縮液を加水分解装置に戻すことを行わない以外は、上記と全く同様にして反応を行った場合には、エチレンオキシドの転化率が当初99.5%であったものが90日後には98.1%に低下していた。
【図面の簡単な説明】
【図1】図は本発明を実施する場合のフローシートの1例である。
【符号の説明】
1 反応器
2 二酸化炭素供給管
3 エチレンオキシド等の供給管
4 熱交換器
5 反応液の循環管
6 抜出し管
7 気液分離器
8 加水分解装置
9 蒸留塔
10 フラッシング槽
11 冷却器へのガス供給管
12 冷却器
13 凝縮液の供給管
Claims (4)
- 第4級ホスホニウムハライドの存在下にエチレンオキシドと二酸化炭素とを反応させてエチレンカーボネートを含む反応液を生成させるカーボネート化工程、
この反応液を二酸化炭素を放出させつつ加水分解してエチレングリコール水溶液を生成させる加水分解工程、このエチレングリコール水溶液を蒸留して、これから少くとも脱水されたエチレングリコールと第4級ホスホニウムハライドを含む溶液とを取得する蒸留工程、及びこの第4級ホスホニウムハライドを含む溶液を触媒液としてカーボネート化工程に供給する循環工程の各工程を含むエチレングリコールの製造方法において、加水分解工程で放出される二酸化炭素を含むガスを、ガス中のエチレングリコールが20ppm以下となるように冷却凝縮させるか又は洗浄液で洗浄してエチレングリコールを含む溶液を取得し、これを上記の各工程のいずれかに供給することを特徴とするエチレングリコールの製造方法。 - カーボネート化工程に水を供給して、エチレンカーボネートとエチレングリコールを生成させることを特徴とする請求項1記載のエチレングリコールの製造方法。
- 加水分解工程を100〜180℃で行なうことを特徴とする請求項1又は2記載のエチレングリコールの製造方法。
- ガスを冷却凝縮するか又は吸収液で洗浄して得たエチレングリコールを含む溶液を、加水分解工程又は蒸留工程に供給することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のエチレングリコールの製造方法。
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