JP3659038B2 - エチレングリコールの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はエチレンオキシドからエチレンカーボネートを経てエチレングリコールを製造する方法に関するものである。詳しくは本発明は、この方法において、エチレングリコール水溶液から精製されたエチレングリコールを回収する方法の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
エチレングリコールは極めて重要な化合物であり、エチレンオキシドを水と反応させることにより大規模に生産されている。しかしこの方法には、ジエチレングリコールやトリエチレングリコールなどの、商品価値の低い副生物が相当量生成するという問題がある。これらの副生物の生成は、エチレンオキシドに対して大過剰の水を反応させることにより抑制し得るが、この抑制法は生成するエチレングリコール水溶液の濃度を低下させ、脱水のためのエネルギー消費量を増加させる。
【0003】
副生物の生成の少ないエチレングリコールの製造法として、エチレンカーボネートを経由する方法が知られている。この方法では、カーボネート化触媒の存在下にエチレンオキシドと二酸化炭素を反応させてエチレンカーボネートを生成させ、次いでこれを水と反応させてエチレングリコールとする。この方法の変法として、エチレンオキシドと二酸化炭素との反応を水の共存下に行い、エチレンカーボネートと共にエチレングリコールを生成させる方法も知られている。カーボネート化触媒としては、トリブチルメチルアンモニウムアイオダイドなどの第4級アンモニウム塩や、トリブチルメチルホスホニウムアイオダイド、テトラブチルホスホニウムアイオダイドなどのホスホニウム塩など、種々のものが知られている。
この方法でもエチレングリコールは水溶液として生成するので、これからエチレングリコールを回収するには脱水蒸留を行うことが必要である。また、この方法でもジエチレングリコールその他の高沸点成分が少量副生するので、これらの高沸点成分の除去も必要である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
エチレンカーボネートを経由する方法においても、エチレングリコール水溶液から蒸留により精製されたエチレングリコールを取得するに際しては多量のエネルギーを消費するので、エネルギー消費量をできるだけ節減することが重要である。また、この方法においては触媒の循環使用をするのが好ましいので、循環使用を円滑に行い得るプロセスとすることも重要である。本発明は、このような要求に応え得る方法を提供せんとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、触媒の存在下にエチレンオキシドと二酸化炭素とを反応させてエチレンカーボネートを含む反応液を生成させるカーボネート化工程、この反応液を水と反応させてエチレングリコール水溶液を生成させる加水分解工程、このエチレングリコール水溶液から触媒、エチレングリコール、高沸点成分などからなる触媒液、及び精製されたエチレングリコールを回収する精製工程、並びにこの触媒液をカーボネート化工程に循環する循環工程の各工程を含むエチレングリコールの製造方法において、精製工程をエチレングリコール水溶液を蒸留して脱水された粗エチレングリコールを取得する脱水蒸留、ここに得られた粗エチレングリコールからエチレングリコールの大部分及び一部の高沸点成分を蒸発させ、触媒及び残部のエチレングリコール、高沸点成分などからなる残留液を触媒液として回収する触媒分離、並びに発生したエチレングリコール及び高沸点成分からなる蒸発物を蒸留して精製されたエチレングリコールを取得する精製蒸留の各ステップを経て行うことにより、少ないエネルギー消費量で、かつ触媒の循環使用に何ら支障をきたすことなく、エチレンオキシドからエチレングリコールを製造することができる。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明では、エチレンオキシドと二酸化炭素とを反応させてエチレンカーボネートを含む反応液を生成させるカーボネート化工程、及びこの反応液を水と反応させてエチレングリコール水溶液を生成させる加水分解工程は、常法に従って行うことができる。カーボネート化触媒としては公知の任意のものを用いることができるが、ホスホニウム塩を用いるのが好ましい。本発明者らの検討によれば、ホスホニウム塩は活性が高く、かつ循環使用しても分解などにより活性低下をきたすことが少い。またホスホニウム塩にアルカリ金属炭酸塩を併用するのも好ましい。
【0007】
アルカリ金属炭酸塩は、カーボネート化工程においてエチレングリコール及びエチレンカーボネート以外の副生物が生成するのを抑制し、かつ後続する加水分解工程において、エチレンカーボネートの加水分解触媒としても作用する。なお、アルカリ金属炭酸塩以外のアルカリ金属塩を用いても、カーボネート化工程には多量の二酸化炭素が存在するので、反応系内ではアルカリ金属炭酸塩として存在するものと考えられる。
【0008】
カーボネート化反応は水の共存下に行い、エチレンカーボネートとエチレングリコールの両者を含む反応液を生成させるのが好ましい。カーボネート化工程は種々の型式の反応器を用いて行い得るが、気泡塔を用いて行うのが好ましい。すなわち気泡塔の底部からエチレンオキシド、二酸化炭素、水、触媒液などを供給し、頂部から反応により生成したエチレンカーボネートを含む反応液と未反応の二酸化炭素を流出させる。反応液は後続する加水分解工程に移送し、二酸化炭素は圧縮機を経て塔底に循環する。反応は温度70〜200℃、好ましくは100〜170℃、圧力5〜50kg/cm2 G、好ましくは10〜30kg/cm2 Gで行うのが一般的である。エチレンオキシドに対する二酸化炭素及び水の供給比(モル比)は通常0.1〜5及び0.1〜10であるが、それぞれ0.5〜3及び0.5〜5であるのが好ましい。この反応は発熱反応なので、気泡塔の上部から反応液を抜出し、熱交換器で冷却したのち気泡塔の底部に導入する、外部循環除熱方式で反応温度を制御するのが好ましい。
【0009】
反応液の加水分解は高温で行う方が反応速度の点からは有利であるが、高温に過ぎるとカーボネート化触媒が分解するおそれがあり、またエチレングリコールの品質も低下するおそれがあるので、通常100〜180℃で行われる。圧力は加水分解を促進する点からは低い方が有利であるが、低過ぎると反応液が沸騰し、また発生する二酸化炭素に同伴して失われるエチレングリコールも増加する。通常は常圧ないし20kg/cm2 Gの範囲で、沸騰しない圧力下で加水分解を行う。加水分解が進行するにつれて加水分解の温度を高くしたり、圧力を低くしたりして、加水分解の促進を図るのも好ましい。
【0010】
加水分解により生成したエチレングリコール水溶液は、先ず蒸留、好ましくは減圧蒸留して水を除去し、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどの高沸点成分及びカーボネート化触媒などよりなる脱水された粗エチレングリコールを取得する。この脱水蒸留は常用の蒸留塔を用いて常法により行うことができる。粗エチレングリコールは次いで触媒とエチレングリコールとを分離するために蒸発装置に供給し、エチレングリコールの大部分と高沸点成分の一部を蒸発させて回収し、触媒及び残部のエチレングリコール、高沸点成分などからなる残留液を取得し、これを触媒液としてカーボネート化工程に循環する。この触媒分離も、エチレングリコール及び高沸点成分の蒸発を促進するため、減圧下で行われる。蒸発装置としてはリボイラーを備えたものを用いて、蒸発に要するエネルギーを補給し、かつ蒸発量を制御する。この触媒分離に際しては、高沸点成分の大部分を蒸発させて、触媒液を循環させても高沸点成分が系内に蓄積しないようにする。こうすることにより、系内の高沸点成分量を制御するため、触媒液の一部を系外に排出する必要が無くなり、触媒の損失を回避できる。
【0011】
触媒分離で発生したエチレングリコール及び高沸点成分からなる蒸発物は、蒸留して精製されたエチレングリコールを取得する。この精製蒸留も常用の蒸留塔を用いて減圧下で行われる。好ましくは、触媒分離ステップからの蒸発物は、熱交換器で適宜の冷媒と熱交換させて、その保有する熱エネルギーを回収したのち蒸留塔に供給する。これにより蒸発物の保有するエネルギーを有利に回収することができる。蒸発物から熱エネルギーを回収せずにそのまま蒸留塔に供給することも勿論可能であるが、これでは蒸留塔の精留部で必要とする以上の熱エネルギーが蒸留塔内に持込まれることになり、いたずらに塔頂の凝縮器の負荷を増加させることになる。
【0012】
本発明によれば、加水分解により得られたエチレングリコール水溶液から、先ず水を蒸発させて除き、次いでエチレングリコール及び高沸点成分を蒸発させるので、この蒸発物からの熱エネルギーの回収を有利に行うことができる。さらに、触媒分離に際しては、蒸発のために供給するエネルギー量を調節することにより、取得される触媒液の濃度を任意に調節することができる。例えば主触媒として融点が高く溶解度の低いものを用いた場合や、助触媒として溶解度の低いアルカリ金属塩を用いた場合などには、触媒液中に残存させるエチレングリコール量が増加するように蒸発を行わせることにより、触媒液の循環に際し触媒液からの析出物による装置の閉塞が起るのを防止することができる。
【0013】
これに対し、若し特公平4−46252号公報に開示されているプロセスのように、エチレングリコール水溶液をそのままフラッシングさせてエチレングリコール等を蒸発させ、触媒を含む残存液を触媒液として回収する場合には、蒸発物中にはエチレングリコールに比して著しく低沸点の水が大量に含まれるため、蒸発物の温度が低くなり、これからの熱エネルギー回収は著しく困難となる。また、エチレングリコール水溶液からのエチレングリコールや高沸点成分の蒸発を制御するのも困難となり、所定の濃度の触媒液を安定して回収するのが困難となる。
【0014】
【実施例】
以下に実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
直径20cm、有効長200cmの気泡塔に、エチレンオキシド、二酸化炭素、水及び濃度約50重量%の触媒液を、それぞれ62kg/Hr、140kg/Hr、50kg/Hr及び9kg/Hrで連続的に供給して、110℃、20kg/cm2 Gで反応させ、エチレンカーボネート及びエチレングリコールを含む反応液を生成させた。触媒としてはトリブチルメチルホスホニウムアイオダイドを用いた。
【0015】
反応液は直列に接続した2個の攪拌槽からなる加水分解装置に連続的に供給して加水分解させた。加水分解装置には水蒸気を吹込んで、第1段を150℃、3.3kg/cm2 G、第2段を150℃、2.2kg/cm2 Gに維持した。
加水分解装置から流出したエチレングリコール水溶液は、脱水蒸留塔、蒸発器及び精留塔からなる図−1の精製装置に連続的に供給して精製した。すなわち加水分解装置から流出したエチレングリコール水溶液は脱水蒸留塔(1)に導入し、塔頂圧力80mmHg、塔底温度140℃で減圧蒸留して、塔頂から水を留出させ、塔底からエチレングリコール、高沸点成分及び触媒等からなる脱水された粗エチレングリコールを流出させた。
【0016】
この粗エチレングリコールは蒸発器(2)に導入し、リボイラーで加熱しつつ140℃、62mmHgで蒸発させて、大部分のエチレングリコール及び高沸点成分の約90%を蒸発させた。残留液として得られた約50重量%の触媒を含み残部が主としてエチレングリコールからなる触媒液は気泡塔に循環した。蒸発器で生成したエレングリコール及び高沸点成分からなる蒸発物は、熱交換器(3)で冷媒との熱交換により凝縮させて精留塔(4)の中段に供給した。精留塔(4)は塔頂圧力52mmHg、塔底温度160℃で操作し、塔頂から精製されたエチレングリコールを取得した。塔底流出物は回収塔で蒸留して留出したエチレングリコールは精留塔(4)に供給した。
このようにして約6ケ月間連続運転したが、触媒の追加補給や触媒液を系外に排出することなく運転できた。反応系内のジエチレングリコール以上の高沸点成分の濃度は、運転開始初期に上昇したがやがて一定値に維持された。
【図面の簡単な説明】
【図1】図−1は、本発明の精製工程を実施する装置の1例である。
【符号の説明】
1.脱水蒸留塔
2.蒸発器
3.熱交換器
4.精留塔
5.デミスター
Claims (6)
- 触媒の存在下にエチレンオキシドと二酸化炭素とを反応させてエチレンカーボネートを含む反応液を生成させるカーボネート化工程、この反応液を水と反応させてエチレングリコール水溶液を生成させる加水分解工程、このエチレングルコール水溶液から触媒、エチレングリコール、高沸点成分などからなる触媒液、及び精製されたエチレングリコールを回収する精製工程、並びにこの触媒液をカーボネート化工程に循環する循環工程の各工程を含むエチレングリコールの製造方法において、精製工程が、エチレングリコール水溶液を蒸留して脱水された粗エチレングリコールを取得する脱水蒸留、ここに得られた粗エチレングリコールからエチレングリコールの大部分及び一部の高沸点成分を蒸発させ、触媒及び残部のエチレングリコール、高沸点成分などからなる残留液を触媒液として回収する触媒分離、並びにエチレングリコール及び高沸点成分からなる蒸発物を蒸留して精製されたエチレングリコールを取得する精製蒸留の各ステップを含むことを特徴とする方法。
- カーボネート化工程を水の存在下に行い、エチレングリコールとエチレンカーボネートを含む反応液を生成させることを特徴とする請求項1記載の方法。
- カーボネート化工程に触媒として少くともホスホニウム塩を存在させることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
- カーボネート化工程に触媒として少くともホスホニウム塩とアルカリ金属塩とを存在させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
- 精製工程において、触媒分離ステップで発生したエチレングリコール及び高沸点成分からなる蒸発物から、熱交換器でその保有する熱エネルギーを回収したのち精製蒸留ステップに供給することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。
- 精製工程の触媒分離ステップにおいて、粗エチレングリコール中の高沸点成分の大部分を蒸発させることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
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