JP3921804B2 - 希ガス放電灯 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は希ガス放電灯に関し、特にガラスバルブの内面にアパ−チャ部を有する発光層を形成すると共に、外周面に一対の帯状の外部電極を配置した希ガス放電灯の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
本出願人は、先に、図10〜図12に示す希ガス放電灯を提案した。同図において、1は例えばガラスバルブにて密閉状に構成された直管状の外囲器であって、その内面には希土類蛍光体,ハロリン酸塩蛍光体などの1種又は2種以上の蛍光体を含む発光層2が形成されている。特に、この発光層2には所定の開口角を有するアパ−チャ部2aがほぼ全長に亘って形成されている。そして、外囲器1の封着構造はガラスバルブの端部にディスク状の封着ガラス板を封着して構成されているが、例えば単にガラスバルブを加熱しながら縮径加工し溶断するいわゆるトップシ−ルによって構成することもできる。尚、この外囲器1の密閉空間には水銀などの金属蒸気を含まないキセノンガスを主成分とする希ガスが所定量封入されている。
【0003】
この外囲器1の外周面にはシ−ト構体3が密着するように巻回されている。このシ−ト構体3は、例えば外囲器1の全長とほぼ同程度の長さを有し、かつ厚さが20〜100μmの範囲に設定された絶縁性の透光性シ−ト4と、この透光性シ−ト4の一方の面に互いに所定の間隔だけ離隔配置して接着された不透光性の金属部材よりなる帯状の一対の外部電極5,6と、この外部電極5,6の端部から、それと電気的な接続関係を有し、かつ導出端が透光性シ−ト4の端縁部分より突出するように導出された端子51,61と、透光性シ−ト4の一方の面に付与された粘着ないし接着機能を有する接着層9とから構成されている。尚、シ−ト構体3の外囲器1への装着状態において、外部電極5,6の一端5a,6aの間には第1の開口部7が、外部電極5,6の他端5b,6bの間には第2の開口部8がそれぞれ形成されており、発光層2からの光は主としてアパ−チャ部2aから第1の開口部7を介して外部に放出される。又、シ−ト構体3において、透光性シ−ト4としては、例えばポリエチレンテレフタレ−ト(PET)樹脂が好適するが、ポリエステル樹脂など他の樹脂も利用できる。
【0004】
この希ガス放電灯は、例えば次のように製造される。まず、例えば青色領域,緑色領域,赤色領域にそれぞれ発光スペクトルを有する蛍光体を含む水溶性の蛍光体塗布液をガラスバルブよりなる外囲器1の内面に塗布・乾燥し、焼成することにより発光層2が形成される。次に、図示しないスクレ−パを利用して発光層2の一部を強制的に所定の開口角を以て剥離・除去することにより、アパ−チャ部2aが形成される。次に、この外囲器1を密閉状に構成し、かつ内部空間にキセノンなどの希ガスを所定量封入する。
【0005】
次に、図11〜図12に示すように、透光性シ−ト4の所定部分に一対の外部電極5,6を離隔して配置すると共に、外部電極5,6の端部から端子51,61を導出し、かつ透光性シ−ト4及び外部電極5,6に接着層9を形成してシ−ト構体3を構成する。次に、図13に示すように、シ−ト構体3を展開した状態で例えば組み立てステ−ジ10に載置する。引き続き、外囲器1をシ−ト構体3の透光性シ−ト4の一端4aに、外囲器1の長手方向が外部電極5,6の長手方向に沿うように(平行となるように)位置させる。この状態で、外囲器1に従動ロ−ラ11,11を、外囲器1が透光性シ−ト4に若干押しつけるように配置する。この状態で、ステ−ジ10を若干M方向に移動させた後、N方向に移動させる。これによって、シ−ト構体3は、図10に示すように、外囲器1の外周面に巻回される上、透光性シ−ト4の一端4aに他端4bが重ね合わされ、接着層9によって接着されて希ガス放電灯が完成する。
【0006】
この希ガス放電灯は、外部電極5,6にインバ−タ回路から端子51,61を介して、例えば周波数が30KHz,電圧が2500VO-P 程度の高周波高電圧が印加されることによって点灯するものであり、光はアパ−チャ部2aから第1の開口部7を介して外部に放出される。特に、この希ガス放電灯には水銀が用いられていないために、点灯後における光量の立ち上がりが急峻であり、点灯と同時に光量がほぼ100%近くまで達する上に、光量や放電電圧が周囲温度の影響を殆んど受けないという特徴を有している。このために、ファクシミリ,イメ−ジスキャナ,複写機などのOA機器の原稿読取用光源として好適するものである。
【0007】
又、製造過程において、透光性シ−ト4の一方の面には、接着層9が形成されているために、外囲器1をシ−ト構体3の上で転動させるだけの単純動作によって、シ−ト構体3を外囲器1の外周面に巻回し密着させることができ、その上、外部電極5,6は透光性シ−ト4に予め所定の間隔で配列されているために、貼り付けの際に外部電極5,6の間隔を所定の間隔となるように調整する必要が全くない。従って、作業能率を飛躍的に改善できるのみならず、機械化が可能となり、一層の量産効果が期待できるなどの優れた効果が期待できる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、この希ガス放電灯は、上述のように外部電極5,6に高周波高電圧を印加することによってガラスバルブを介して外部電極間に放電が生起されて点灯されるのであるが、この際に、ガラスバルブにも電流が流れ、この電流によってガラスバルブが自己発熱して温度上昇し、ガラスバルブの抵抗値が低下する。抵抗値の低下によってさらに過大な電流が流れるようになり、発熱が異常に進行して発光効率が低下したり、点灯装置が焼損したりする。
【0009】
例えば外囲器を構成するガラス部材にソ−ダガラスを適用すると、ソ−ダガラスの150°Cにおける体積抵抗率が、図14において実線Cで示すように、1×108 Ωcmのように小さいために、希ガス放電灯の点灯時に、ガラスバルブに流れる電流によってガラスバルブが異常発熱し、発光効率が低下するのみならず、過大な電流によって点灯装置が焼損したりするようになる。
【0010】
しかしながら、外囲器を構成するガラス部材に鉛ガラスを適用すると、上述の問題を効果的に解決できる。これは、鉛ガラスの150°Cにおける体積抵抗率が、図14において実線Bで示すように、1×1011Ωcmであり、ソ−ダガラスに比較すると格段に大きくなっていることから、点灯時に、鉛ガラスの自己発熱に基づく異常発熱への発展を抑えることができるものである。
【0011】
尚、本発明者は、ガラスバルブの異常発熱,発光効率の低下,点灯装置の焼損などの防止にはガラス部材の150°Cにおける体積抵抗率が1×109 Ωcm以上あればよいことを別の実験によって確認している。
【0012】
このような事実に基づいて、上述の希ガス放電灯の外囲器には鉛ガラスが適用されている関係で、ガラスバルブの異常発熱,発光効率の低下,点灯装置の焼損などのトラブルは最小限に止めることが可能になるものの、次のような問題を有している。
【0013】
即ち、鉛ガラスはソ−ダガラスに比較して軟化点が70〜80°C程度低いために、焼成工程において、外囲器内面に形成された蛍光体塗布膜に含まれるバインダを十分に焼散させるべく焼成温度を高くすると、発光層2を構成する蛍光体が鉛ガラスに融着され易くなって発光効率が例えば10%程度も低下するようになるのみならず、外囲器1が変形し易くなり、排気ヘッドへの装着性(密着性)が損なわれたり、装着時に破損し易くなる。かといって、蛍光体の融着や外囲器1の変形が生じない程度にまで焼成温度を下げると、バインダの焼散が不十分になり、希ガス放電灯の始動特性,発光特性が損なわれるようになる。
【0014】
又、この鉛ガラスは、その製造の際に、有害物質などの排出により環境の汚染が懸念されていることから、近時、その使用を自粛する傾向にある。従って、希ガス放電灯においても、鉛ガラスに代わるガラス部材が求められている。
【0015】
それ故に、本発明の目的は、焼成に起因する始動特性,発光特性の低下を抑制できる上、環境への影響をも緩和できる希ガス放電灯を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
従って、本発明は、上述の目的を達成するために、内面に1種又は2種以上の蛍光体を含む発光層を有する外囲器と、外囲器の外周面に、それのほぼ全長に亘って互いに離隔して配置し、かつ離隔部分に第1,第2の開口部が形成されるように配置した金属部材よりなる帯状の一対の外部電極とを具備し、前記外囲器をバリウムガラスにて直管状に構成すると共に、発光層の付着量を1cm2 当たり5〜30mgの範囲に設定したことを特徴とする。
【0020】
【発明の実施の形態】
次に、本発明にかかる希ガス放電灯の第1の実施例について図1及び図14を参照して説明する。尚、図10〜図13に示す先行技術と同一部分には同一参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。同図において、この実施例の特徴部分は、外囲器1Aを、例えば図14において直線Aで示すように、150°Cにおける体積抵抗率が1×109 Ωcm以上で、かつ鉛を含まないガラス部材にて構成したことと、この外囲器1Aの内面に1種又は2種以上の蛍光体を含む発光層2Aを形成すると共に、発光層2Aの付着量を1cm2 当たり5〜30mgに設定したことと、外部電極5,6における第1の開口部7の開口角θ1 を第2の開口部8の開口角θ2 より大きく設定すると共に、開口角θ1 を60〜120°の範囲に設定したことである。尚、外部電極5,6における第1の開口部7にほぼ対応する外囲器1Aの内面部分には発光層2Aを形成しないアパ−チャ部2aが形成されている。
【0021】
この外囲器1Aの構成部材としては、上述のように150°Cにおける体積抵抗率が1×109 Ωcm以上であり、鉛を含まず軟化点が鉛ガラスより十分に高く、誘電率が大きい透光性のガラス部材であれば一応適用が可能であるが、例えばバリウムガラスなどが好適するものである。尚、このバリウムガラスは例えば珪酸、アルミナ、硼酸、カリウム,バリウム,カルシウムの酸化物などから構成されており、それの軟化点はほぼ665°C、1MHz時の誘電率はほぼ8.6、150°Cにおける体積抵抗率はほぼ1×1011Ωcmである。又、外囲器1Aの肉厚は例えば0.2〜0.7mmの範囲に設定されており、この範囲では一応の生産性,光特性などが得られる。しかしながら、肉厚が0.4mm未満、特に0.2mm未満になると、外囲器1Aの機械的な強度が極端に低下するために、量産設備による生産工程でのガラス破損に伴う不良率が増加するようになるし、逆に、肉厚が0.7mmを超えると、縞状の放電状態が目視され、アパ−チャ部2aから放出される光にチラツキが生ずるようになるのみならず、希ガス放電灯にパワ−が十分に入らなくなって光出力が低下するようになる。従って、外囲器1Aの肉厚は上記範囲内に設定することが望ましい。
【0022】
又、発光層2Aは、希ガス放電灯の用途によって、使用する蛍光体が1種のみにて構成されたり、2種以上を混合して構成されたりする。例えば三波長域発光形の場合には、例えば青色領域に発光スペクトルを有するユ−ロピウム付活アルミン酸バリウム・マグネシウム蛍光体,緑色領域に発光スペクトルを有するセリウム・テルビウム付活リン酸ランタン蛍光体,赤色領域に発光スペクトルを有するユ−ロピウム付活硼酸イットリウム・ガドリウム蛍光体を混合してなる混合蛍光体にて形成され、その付着量は1cm2 当たり5〜30mgの範囲に設定されている。この範囲では所望の光出力が得られるものの、その付着量が5mg未満になると、光出力が低下してしまい原稿面照度が不足するようになるし、逆に、30mgを超えると、均質な発光層の形成が困難になる。従って、発光層2Aの付着量は上記範囲内に設定することが望ましい。
【0023】
さらに、外部電極5,6のそれぞれの離隔部分には第1,第2の開口部7,8が形成されており、それぞれの開口角θ1 ,θ2 はθ1 >θ2 の関係に設定されている。第1の開口部7の開口角θ1 は60〜120°の範囲が、第2の開口部8の開口角θ2 は55°程度がそれぞれ望ましい。しかしながら、第2の開口部8は絶縁破壊しない程度に狭いことが望ましく、例えば最低2mm程度の離隔距離を確保することが推奨される。尚、上述のアパ−チャ部2aの開口角は第1の開口部7の開口角θ1 とほぼ同程度に設定されている。
【0024】
この実施例によれば、外囲器1Aには鉛が含まれていないために、それの製造の際に、有害物質などの排出に起因する環境の汚染を防止できる。
【0025】
又、外囲器1Aの軟化点は鉛ガラスの軟化点より40〜50°C程度高いために、焼成工程において、外囲器内面に形成された蛍光体塗布膜に含まれるバインダを十分に焼散させるべく焼成温度を高く設定しても、発光層2Aを構成する蛍光体が外囲器1Aを構成するガラス部材に融着されることがなく、発光効率を例えば10%程度も改善できるのみならず、焼成工程で外囲器1Aが殆んど変形しないために、排気ヘッドへの装着性(密着性)が向上し、それへの装着時の破損をも低減できる。
【0026】
しかも、外囲器1Aの150°Cにおける体積抵抗率が1×109 Ωcm以上に設定されているために、鉛ガラスを用いた先行技術と同様に自己発熱に基づく異常発熱への発展を抑えることができ、異常発熱に起因する発光効率の低下も抑えることができる。
【0027】
又、発光層2Aの付着量が1cm2 当たり5〜30mgに設定されており、しかも、第1,第2の開口部7,8の開口角θ1 ,θ2 がθ1 >θ2 の関係に設定され、かつ開口角θ1 が60〜120°の範囲に設定されていることと相俟ってアパ−チャ部2aを介して第1の開口部7から放出される光出力を効果的に改善できる。従って、例えばOA機器の原稿照射装置に適用した場合には、原稿面照度を高めることができることから、仮に原稿の送り速度が高速化されても、十分の読み取り品位を確保できる。
【0028】
特に、発光層2Aの付着量は通常の照明用蛍光ランプに比較すると2〜10倍程度に設定されており、通常の照明用蛍光ランプでは特性的に好ましいものではないと考えられている量であるにも拘らず、希ガス放電灯では光出力が有効に増加している。この原因については明らかではないが、外部電極5,6の間(外囲器1Aの長手方向に対してほぼ直角方向)に無数の放電路が形成されることによって縞状の状態で点灯する希ガス放電灯に特有の現象と考えられる。
【0029】
さらに、発光層の付着量を5〜30mg/cm2 の範囲に、第1の開口部7の開口角θ1 を60〜120°の範囲に設定すると共に、外部電極5,6の外囲器側に光反射性を付与すれば、第1の開口部7から放出される光出力を一層に増加させることができる。この際、第2の開口部8の離隔長さを2mm程度の狭い開口角(ほぼ29°に相当)に設定すれば、第2の開口部8からの光の漏洩が抑制され、第1の開口部7から放出される光出力の改善効果が期待できる。
【0030】
図2は本発明の第2の実施例を示すものであって、基本的な構成は図1に示す希ガス放電灯と同じである。異なる点は、第1の開口部7に対応する外囲器1Aの内面部分に形成されているアパ−チャ部2aの開口角θ3 を第1の開口部7の開口角θ1 より大きく設定したことである。このアパ−チャ部2aの開口角θ3 は、例えば70〜130度の範囲に設定されているが、用途,目的などに応じて適宜に変更できる。尚、第1の開口部7の開口角θ1 と第2の開口部8の開口角θ2 はθ1 >θ2 の関係に設定されている。
【0031】
この実施例によれば、外囲器1Aの外周面にシ−ト構体3を巻回する際に、第1の開口部7とアパ−チャ部2aとのセンタ−が若干ずれても、第1の開口部7から放出される光の光軸のずれを緩和できる。このために、例えば原稿照射装置に適用しても、十分に高い読み取り精度を得ることができる。
【0032】
図3は本発明の第3の実施例を示すものであって、基本的な構成は図1に示す希ガス放電灯と同じである。異なる点は、透光性シ−ト4のそれぞれの端部4a,4bを外部電極5の上において重ね合わせ、この重ね合わせ部分を超音波溶着したことである。
【0033】
この実施例によれば、重ね合わせ部分4a,4bの超音波溶着が外部電極5の外側面において行われるために、外囲器内面の発光層2Aに作用する超音波振動が緩和される。従って、第1,第2の実施例に比較すると、発光層2Aの外囲器内面からの剥離を大幅に抑制でき、光出力の改善が可能となる。
【0034】
図4は本発明の第4の実施例を示すものであって、基本的な構成は図1に示す希ガス放電灯と同じである。異なる点は、外囲器1Aの外周面に一対の外部電極5,6を接着層を利用して貼着した後に、外囲器1の外周面にPET樹脂などの透光性シ−ト4Aを、外部電極5,6が被覆されるように巻回して接着したことである。
【0035】
この実施例によれば、外囲器1Aの外周面に透光性シ−ト4Aを巻回するに先立って、外囲器1Aの外周面にシリコ−ンワニスなどの透光性の絶縁被膜を形成しておけば、外部電極間の絶縁耐力を改善できる。
【0036】
図5は本発明の第5の実施例を示すものであって、基本的な構成は図1に示す希ガス放電灯と同じである。異なる点は、外囲器1Aの外周面に一対の外部電極5,6を接着層を利用して貼着した後に、外囲器1の外周面にPET樹脂などの熱収縮性樹脂よりなる保護チュ−ブ12を、外部電極5,6が被覆されるように装着し、熱収縮させたことである。尚、この保護チュ−ブ12は外囲器1Aに装着した後、例えば150〜200°C程度に加熱し、収縮させることにより外囲器1Aの外周面に密着される。
【0037】
この実施例によれば、上述の各実施例に比較すると、機械化,作業能率の点で劣るものの、保護チュ−ブ12に接着層を使用しないために、端子の構成部材と接着剤成分との反応による腐食がなく、長期間に亘って安定した動作状態を維持できる上、保護チュ−ブ12に継目がないために、上述の実施例のように透光性シ−ト4の端部の重ね合わせ部分の剥がれを完全に防止できる。
【0038】
特に、外囲器1Aの外周面に保護チュ−ブ12を装着するに先立って、外囲器1Aの外周面にシリコ−ンワニスなどの透光性の絶縁被膜を形成しておけば、外部電極間の絶縁耐力を一層高めることができる。
【0039】
図6は本発明の第6の実施例を示すものであって、基本的な構成は図1に示す希ガス放電灯と同じである。異なる点は、シ−ト構体3の外周面にPET樹脂などの熱収縮性樹脂よりなる保護チュ−ブ12を装着した後に、熱収縮させたことである。尚、この保護チュ−ブ12は外囲器1A(シ−ト構体3)に装着した後、例えば150〜200°C程度に加熱し、収縮させることにより透光性シ−ト4の外周面に密着される。
【0040】
この実施例によれば、希ガス放電灯の適用部所における環境条件が厳しい,安全基準が高いなどの場合には、例えば耐熱性などに優れ、かつ透光性を有する保護チュ−ブ12にてシ−ト構体3を被覆することによって、より高品位の製品を提供できる。
【0041】
特に、この実施例の構造は、図2,図3,図5に示す実施例にも適用することができる。
【0042】
尚、本発明は、何ら上記実施例にのみ制約されることなく、例えば外囲器の構成部材としては体積抵抗率が1×109 Ωcm以上であり、軟化点が鉛ガラスより高く、誘電率が鉛ガラスと同程度であり、鉛が含まれていなれば、バリウムガラス以外のガラス部材も適用可能である。又、発光層を構成するに蛍光体としては、セリウム・テルビウム付活リン酸ランタン蛍光体(LaPO4 :Ce,Tb),ユ−ロピウム付活硼酸イットリウム・ガドリウム蛍光体などの他に、錫付活リン酸ストロンチウム・マグネシウム蛍光体((SrMg)3 (PO4 )2 :Sn),ユ−ロピウム付活リンバナジン酸イットリウム蛍光体(Y(PV)O4 :Eu),ユ−ロピウム付活硼リン酸ストロンチウム蛍光体(2SrO・(P2 O7 ・B2 O3 ):Eu)などのリン酸塩蛍光体,硼酸塩蛍光体の他、例えばセリウム・テルビウム付活アルミン酸マグネシウム蛍光体(MgAl11O19:Ce,Tb),セリウム・テルビウム付活イットリウム・シリケ−ト蛍光体(Y2 SiO5 :Ce,Tb),ユ−ロピウム付活アルミン酸バリウム・マグネシウム蛍光体(BaMg2 Al16O27:Eu),ユ−ロピウム付活酸化イットリウム蛍光体(Y2 O3 :Eu)なども使用できる。又、発光層におけるアパ−チャ部を省略し、シ−ト構体の外囲器への巻回作業性を改善することも可能である。さらに、外部電極の形態において、帯状とは全体としての形態が帯状であることを意味し、側縁部や側縁部でない部分に異形部,孔などが存在したりするものも含まれるものとする。
【0043】
【実施例】
次に、第1の実験例について説明する。まず、青色領域に発光スペクトルを有するユ−ロピウム付活アルミン酸バリウム・マグネシウム蛍光体,緑色領域に発光スペクトルを有するセリウム・テルビウム付活リン酸ランタン蛍光体,赤色領域に発光スペクトルを有するユ−ロピウム付活硼酸イットリウム・ガドリウム蛍光体をそれぞれ65,15,20重量%の割合で混合してなる水溶性の蛍光体塗布液を外径が8mm,肉厚が0.5mm,長さが360mmのバリウムガラスよりなる外囲器の内面に塗布し発光層を形成する。次に、スクレ−パを用いて発光層の一部を強制的に剥がすことによって開口角75°のアパ−チャ部を形成する。尚、発光層の1cm2 当たりの付着量は、図7に示すように、3〜35mgの範囲で変化させた。以下、図10〜図13に示す先行技術と同様の方法にて希ガス放電灯を製造した。尚、第1の開口部の開口角θ1 は75°に、第2の開口部の開口角θ2 は55°にそれぞれ設定した。
【0044】
この希ガス放電灯を点灯回路に組み込み、インバ−タ回路の出力電圧(周波数は30KHz)を定格電圧(2500V0-P )の90%電圧に設定し、外囲器から8mm離隔した原稿照射面の照度及び発光層の形成性(塗布の容易性)を評価したところ、図7に示す結果が得られた。尚、同図において、原稿面照度の評価項目では、○は照度が9000(Lx)以上であることを、△は照度が8500(Lx)以上で9000(Lx)未満であることを、×は8500(Lx)未満であることを示している。又、塗布の容易性の評価項目では、○は容易であることを、△は若干困難であるも実用上は支障ないことを、×は困難であることを示している。
【0045】
同図から明らかなように、発光層の付着量が10〜30mgの範囲では十分の原稿面照度が得られているが、5mgと35mgでは実用性はあるものの、若干照度が低下しており、3mgでは実用上問題になることがわかる。一方、発光層の付着量が25mg以下では良好な発光層が形成できるが、付着量が30mgでは実用上は支障ないものの、塗布が若干困難になり、付着量が35mgでは塗布が難しくなり、均質な発光層が形成できなくなる。従って、発光層の付着量は、両評価項目の評価結果に基づいて、5〜30mgの範囲に設定することが望ましい。
【0046】
又、焼成温度(作業温度)を700°Cに設定し、焼成工程における蛍光体のガラス部材への融着による発光効率及び外囲器の形態への影響について観察したところ、発光効率の低下は殆んど認められなかったし、外囲器の変形もなく、排気ヘッドへの装着に伴う破損不良の発生率も0.5%以下に抑えることができた。その上、発光層を十分に焼成でき、バインダの残渣は認められず、始動特性への影響も認められなかった。尚、同一仕様で外囲器のガラス部材を鉛ガラスとした従来例では蛍光体の鉛ガラスへの融着によって発光効率がほぼ10%程度低下し、変形に伴う不良発生率も3〜5%であった。
【0047】
次に、第2の実験例について説明する。第1の実験例(図7)において、発光層の付着量を15mgに、外部電極の幅(周方向の長さ)を8mmにそれぞれ固定し、外部電極における第1の開口部の開口角θ1 を、図8に示すように、50〜105°の範囲で変化させた希ガス放電灯を製造した。
【0048】
この希ガス放電灯を点灯回路に組み込み、インバ−タ回路の出力電圧(周波数は30KHz)を定格電圧(2500V0-P )の90%電圧に設定し、外囲器から8mm離隔した原稿照射面の照度、外部電極間(第2の開口部間)での絶縁破壊の有無を測定・観察したところ、図8に示す結果が得られた。尚、同図において、原稿面照度の評価項目では、○は照度が9000(Lx)以上であることを、△は照度が8500(Lx)以上で9000(Lx)未満であることを、×は8500(Lx)未満であることを示している。又、絶縁破壊の有無の評価項目では、○は絶縁破壊が発生していないことを、△は絶縁破壊が少ない頻度で発生しているものの、一応実用域にあることを、×は絶縁破壊が頻繁に発生していることを示している。
【0049】
同図から明らかなように、第1の開口部の開口角θ1 が65〜105°の範囲では十分の原稿面照度が得られているが、開口角θ1 が60°では若干照度が低下しており、開口角θ1 が55°以下では大幅に低下している。これは、外部電極の幅が固定されているために、開口角θ1 が小さくなると第2の開口部の開口角θ2 が相対的に大きくなって、第2の開口部から光が漏れるようになり、従って、第1の開口部からの光量が減少するためと考えられる。又、第1の開口部の開口角θ1 が90°以下の範囲では外部電極の第2の開口部間での絶縁破壊は認められなかったが、開口角θ1 が95°及び100°では僅かであるものの、絶縁破壊が認められ、開口角θ1 が105°では絶縁破壊の頻度が頻繁であり、高品位レベルの維持が困難になる。尚、開口角θ1 が100°及び105°の時の第2の開口部の離隔長さはそれぞれ2.1mm及び1.7mmであった。従って、外部電極の幅が一定化されている場合には、第1の開口部の開口角θ1 はそれぞれの評価項目の評価結果に基づいて、60〜100°の範囲に設定することが望ましく、第2の開口部の離隔長さはほぼ2mm以上に設定することが望ましいものである。
【0050】
次に、第3の実験例について説明する。第2の実験例(図8)において、発光層の付着量を15mgに、外部電極における第2の開口部の離隔長さを2mmに固定し、第1の開口部の開口角θ1 を、図9に示すように、50〜140°の範囲で変化させた希ガス放電灯を製造した。尚、外部電極の幅は、開口角θ1 が大きくなるほど狭くなり、開口角θ1 が小さくなるほど広くなっている。
【0051】
この希ガス放電灯を点灯回路に組み込み、インバ−タ回路の出力電圧(周波数は30KHz)を定格電圧(2500V0-P )の90%電圧に設定し、外囲器から8mm離隔した原稿照射面の照度を測定したところ、図9に示す結果が得られた。尚、同図において、○は照度が9000(Lx)以上であることを、△は照度が8500(Lx)以上で9000(Lx)未満であることを、×は8500(Lx)未満であることを示している。
【0052】
同図から明らかなように、第1の開口部の開口角θ1 が70〜100°の範囲では十分の原稿面照度が得られているが、開口角θ1 が60°及び110〜120°では若干照度が低下しており、開口角θ1 が50°及び130〜140°では大幅に低下している。特に、開口角θ1 が130〜140°において原稿面照度が大幅に低下しているのは、外部電極の幅が狭くなったために、十分のパワ−が入らなくなったものと考えられ、開口角θ1 が110〜120°で原稿面照度が若干低下しているのも同様の原因によるものと考えられる。従って、外部電極における第2の開口部の離隔長さが一定化されている場合には、第1の開口部の開口角θ1 は60〜120°の範囲に設定することが望ましい。
【0053】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、外囲器を構成するガラス部材には鉛が含まれていないために、それの製造の際に、有害物質などの排出に起因する環境の汚染を防止できる。
【0054】
又、外囲器の軟化点は鉛ガラスの軟化点より高く設定されているために、焼成工程において、外囲器内面に形成された蛍光体塗布膜に含まれるバインダを十分に焼散させるべく焼成温度を高く設定しても、発光層を構成する蛍光体が外囲器を構成するガラス部材に融着されることがなく、発光効率を効果的に改善できるのみならず、焼成工程で外囲器が殆んど変形しないために、製造作業が容易になり、製造過程での破損を軽減でき、不良率も減少できる。
【0055】
しかも、外囲器の150°Cにおける体積抵抗率は1×109 Ωcm以上に設定されているために、鉛ガラスを用いた先行技術と同様に自己発熱に基づく異常発熱への発展を抑えることができ、異常発熱に起因する発光効率の低下も抑えることができる。
【0056】
さらに、発光層の付着量は1cm2 当たり5〜30mgに設定されている上に、上述の体積抵抗率が1×109 Ωcm以上に設定されていることと相俟って点灯時における自己発熱を抑えることができ、例えばOA機器に要求される光出力を満たすことができる。特に、第1,第2の開口部の開口角θ1 ,θ2 がθ1 >θ2 の関係に設定され、かつ開口角θ1 が60〜120°の範囲に設定されれば、第1の開口部から放出される光出力を効果的に改善できる。従って、OA機器に適用した場合には、原稿面照度を高くできることから、仮に原稿の送り速度が高速化されても、十分の読み取り品位を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例を示す縦断面図。
【図2】本発明の第2の実施例を示す縦断面図。
【図3】本発明の第3の実施例を示す縦断面図。
【図4】本発明の第4の実施例を示す縦断面図。
【図5】本発明の第5の実施例を示す縦断面図。
【図6】本発明の第6の実施例を示す縦断面図。
【図7】発光層の付着量に対する原稿面照度及び塗布の容易性の関係を示す図。
【図8】外部電極の幅を一定にした場合における第1の開口部の開口角θ1 に対する原稿面照度及び絶縁破壊の有無の関係を示す図。
【図9】第2の開口部の離隔長さを一定にした場合における第1の開口部の開口角θ1 に対する原稿面照度の関係を示す図。
【図10】先行技術にかかる希ガス放電灯の縦断面図。
【図11】先行技術にかかるシ−ト構体の展開図。
【図12】図11のX−X断面図。
【図13】先行技術にかかる希ガス放電灯の製造方法を説明するための縦断面図。
【図14】各種ガラス部材の温度に対する体積抵抗率を示す図。
【符号の説明】
1A 外囲器
2A 発光層
2a アパ−チャ部
3 シ−ト構体
4,4A 透光性シ−ト(絶縁部材)
4a,4b 端部
5,6 外部電極
7 第1の開口部
8 第2の開口部
9 接着層
12 保護チュ−ブ(絶縁部材)
Claims (1)
- 内面に1種又は2種以上の蛍光体を含む発光層を有する外囲器と、外囲器の外周面に、それのほぼ全長に亘って互いに離隔して配置し、かつ離隔部分に第1,第2の開口部が形成されるように配置した金属部材よりなる帯状の一対の外部電極とを具備し、前記外囲器をバリウムガラスにて直管状に構成すると共に、発光層の付着量を1cm2当たり5〜30mgの範囲に設定したことを特徴とする希ガス放電灯。
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-
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- 1998-04-21 JP JP11104298A patent/JP3921804B2/ja not_active Expired - Fee Related
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