JP3684721B2 - 希ガス放電灯 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は希ガス放電灯に関し、特にガラスバルブの内面にアパーチャ部を有する発光層を形成すると共に、外周面に一対の帯状の外部電極を有する希ガス放電灯に関する。
【0002】
【従来の技術】
本出願人は、先に、図8〜図10に示す希ガス放電灯を提案した。同図において、1は例えばガラスバルブにて密閉状に構成された直管状の外囲器であって、その内面には希土類蛍光体,ハロリン酸塩蛍光体などの蛍光体よりなる発光層2が形成されている。特に、この発光層2には所定の開口角を有するアパ−チャ部2aがほぼ全長に亘って形成されている。そして、外囲器1の封着構造はガラスバルブの端部にディスク状の封着ガラス板を封着して構成されているが、例えば単にガラスバルブを加熱しながら縮径加工し溶断して構成することもできる。尚、この外囲器1の密閉空間には水銀などの金属蒸気を含まないキセノン(Xe),クリプトン(Kr),ネオン(Ne),ヘリウム(He)などの希ガスが単一又は混合して所定量封入されているが、キセノンを主成分とする希ガスを例えば20〜110Torrの圧力で封入することが望ましい。
【0003】
この外囲器1の外周面にはシ−ト構体3が密着するように巻回されている。このシ−ト構体3は、例えば外囲器1の全長とほぼ同程度の長さを有し、かつ厚さが20〜100μmの範囲に設定された絶縁性の透光性シ−ト4と、この透光性シ−ト4の一方の面に互いに所定の間隔だけ離隔配置して接着された不透光性の金属部材よりなる帯状の一対の外部電極5,6と、この外部電極5,6の端部から、それと電気的な接続関係を有し、かつ導出端が透光性シ−ト4の端縁部分より突出するように導出された端子51,61と、透光性シ−ト4の一方の面に付与された粘着ないし接着機能を有する接着層9とから構成されている。尚、シ−ト構体3において、透光性シ−ト4としては、例えばポリエチレンテレフタレ−ト(PET)樹脂が好適するが、ポリエステル樹脂など他の樹脂も利用できる。又、接着層9としてはシリコ−ン系接着剤が好適するが、アクリル系接着剤など他の接着剤も使用できる。
【0004】
又、外部電極5,6及び端子51,61は、腐食電位列が離れた位置にある金属部材にて構成されており、例えば外部電極5,6としては帯状のアルミニウム箔が、端子51,61としては短冊状の銅が好適する。しかしながら、外部電極5,6としては導電性に優れ、かつ不透光性の金属部材であればアルミニウムの他に、ニッケルなどの金属部材も利用できるし、端子51,61としては銅の他に、銀,ステンレス,Cu−Ni合金などの金属部材も利用できる。特に、外部電極5,6の幅Wと端子51,61の幅dとは、0.1W≦d≦0.5W なる関係に設定されている。特に、端子51,61の肉厚は0.1〜0.5mmの範囲が望ましい。
【0005】
さらに、端子51,61の表面には、外部電極5,6及び端子51,61を構成する金属部材とは異なった金属部材で、かつ外部電極5,6及び端子51,61を構成する金属部材の位置する腐食電位列の間に位置する金属部材で図示しないメッキ層が形成されている。例えば外部電極5,6にアルミニウム箔が、端子51,61に銅が用いられる場合には、メッキ層を構成する金属部材としてはニッケル,鉛−錫系半田が望ましい。このメッキ層の形成は電気メッキ,無電解メッキが好適するが、浸漬,溶射などによって被着・形成することもできる。このメッキ層の厚みは、例えば5〜30μm、特に10〜20μm程度が望ましいが、その範囲外での使用も可能である。
【0006】
上述のシ−ト構体3は外囲器1の外周面に、外部電極5,6が外囲器1と透光性シ−ト4との間に位置するように装着されており、後述の第2の開口部(8)において、透光性シ−ト4の一方の端部4aに他方の端部4bを重ね合わせた上で接着されている。特に、シ−ト構体3の外囲器1への装着状態において、外部電極5,6の一端間には第1の開口部7が、外部電極5,6の他端の間には第2の開口部8がそれぞれ形成されており、発光層2からの光は主としてアパ−チャ部2aを介して第1の開口部7から放出される。
【0007】
この希ガス放電灯は、例えば次のように製造される。まず、例えば青色領域に発光スペクトルを有するユ−ロピウム付活アルミン酸バリウム・マグネシウム蛍光体,緑色領域に発光スペクトルを有するセリウム・テルビウム付活リン酸ランタン蛍光体,赤色領域に発光スペクトルを有するユ−ロピウム付活硼酸イットリウム・ガドリウム蛍光体を含む水溶性の蛍光体塗布液をガラスバルブよりなる外囲器1の内面に塗布し、乾燥する。これによって、外囲器1の内面には塗布膜が形成される。次に、この外囲器1を450°C程度に加熱して塗布膜を本焼成することにより、発光層2が形成される。次に、図11〜図12に示すように、外囲器1の内部にスクレ−パ12を挿入し、図示矢印方向に移動させることによって発光層2の一部が強制的に剥がされて除去される。これによってアパ−チャ部2aが形成される。尚、スクレ−パ12は、例えば硬質ゴムなどにて所定の開口角となるような幅に形成されている。次に、この外囲器1を密閉状に構成し、かつ内部空間に希ガスを所定量封入する。
【0008】
次に、図9〜図10に示すように、透光性シ−ト4の所定部分に一対の外部電極5,6を離隔して配置すると共に、外部電極5,6の端部から端子51,61を導出し、かつ透光性シ−ト4及び外部電極5,6に接着層9を形成してシ−ト構体3を構成する。次に、図13に示すように、シ−ト構体3を展開した状態で例えば組み立てステ−ジ10に載置する。引き続き、外囲器1をシ−ト構体3の透光性シ−ト4の一端4aに、外囲器1の長手方向が外部電極5,6の長手方向に沿うように(平行となるように)位置させる。この状態で、外囲器1に従動ロ−ラ11,11を、外囲器1が透光性シ−ト4に若干押しつけるように配置する。この状態で、ステ−ジ10を若干M方向に移動させた後、N方向に移動させる。これによって、シ−ト構体3は、図8に示すように、外囲器1の外周面に巻回される上、透光性シ−ト4の一端4aに他端4bが重ね合わされ、接着層9によって接着されて希ガス放電灯が完成する。
【0009】
この希ガス放電灯によれば、発光層2から放射された光は外囲器内において高密度化されてアパ−チャ部2aから第1の開口部7を経て外部に放出されるために、例えば原稿照射装置に適用した場合、原稿面の輝度を高めることができ、原稿の読み取り精度を向上させることができる。
【0010】
又、外部電極5,6と端子51,61との重なり部分にはメッキ層52,62が介在されているために、腐食電位列の離れた位置にある金属部材にて構成された外部電極5,6と端子51,61とを直接的に接続しても異種金属接触腐食の発生を抑制することができる。
【0011】
特に、外部電極5,6の幅Wと端子51,61の幅dとの関係を 0.1W≦d≦0.5W に設定すれば、外部電極5,6と端子51,61との接続部分における異種金属接触腐食の発生をメッキ層の存在と相俟ってより効果的に抑制できる。従って、長期間に亘って安定した動作状態を維持できる。しかしながら、端子51,61の幅dが0.1W未満になると、外部電極に対する接続強度が低下する。逆に、それの幅dが0.5Wを超えると、シ−ト構体3を外囲器1に巻回する際に、端子51,61を外囲器1の外周面に倣い易くするための加工をしなければならず、その加工が極めて面倒になる。従って、両者は上述の関係に設定することが望ましい。
【0012】
一方、上述の方法によれば、透光性シ−ト4の一方の面には、接着層9が形成されているために、外囲器1をシ−ト構体3の上で転動させるだけの単純動作によって、シ−ト構体3を外囲器1の外周面に巻回し密着させることができ、その上、外部電極5,6は透光性シ−ト4に予め所定の間隔で配列されているために、貼り付けの際に外部電極5,6の間隔を所定の間隔となるように調整する必要が全くない。従って、作業能率を飛躍的に改善できるのみならず、機械化が可能となり、一層の量産効果が期待できるなどの優れた効果が期待できる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述の希ガス放電灯は、例えば図14に示すように、高周波高電圧が出力されるインバ−タ回路13によって点灯動作される。希ガス放電灯の外部電極5,6にはインバ−タ回路13から端子51,61を介して、例えば周波数が30KHz,電圧が2500VO-P 程度の高周波高電圧が印加されることによって点灯するものである。例えば外囲器1の外径が8mm,全長が360mm程度の希ガス放電灯では、外部電極5,6に印加する電圧はほぼ2500VO-P を定格電圧としている。
【0014】
この希ガス放電灯は、熱陰極や冷陰極を用いた放電灯のように外囲器の長手方向に沿った1つの放電路によって点灯するものとは異なり、外部電極5,6の間(外囲器1の長手方向に対してほぼ直角方向)に無数の放電路が形成されることによって縞状の状態で点灯するものであり、正常な点灯状態では縞状の放電状態は目視することはできない。
【0015】
しかしながら、電源ラインの電圧変動などによってインバ−タ回路13の出力電圧が例えば10%程度も低下したりすると、縞状の放電状態が目視できるようになるのみならず、放電位置(放電点)が一定化せず、絶えず外囲器の長手方向に移動したりしてアパ−チャ部2aから放出される光にチラツキが生ずるようになる。
【0016】
特に、この希ガス放電灯がファクシミリ,イメ−ジスキャナなどのOA機器における原稿照射装置に適用されている場合には、アパ−チャ部2aの長手方向におけるそれぞれの位置の輝度が絶えず変動することによって、原稿の読み取り精度が著しく損なわれ、再生品位が低下するという問題が生ずることがある。
【0017】
又、この形式の希ガス放電灯では、その原因は明らかではないが、縞状の放電状態が目視できない状態で点灯できる電圧(始動電圧)が不安定になることがある。例えば始動電圧が2800VO-P 程度にまで高くなることがあり、定格電圧が2500VO-P のインバ−タ回路13ではもはや点灯させることができなくなる。従って、OA機器の稼働に重大な影響を及ぼすことになる。
【0018】
それ故に、本発明の目的は、比較的に簡単な構成によって定格電圧よりも大幅に低い電圧でも確実に始動できる上、放電の安定性も改善できる希ガス放電灯を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
従って、本発明は、上述の目的を達成するために、内面に発光層を有する外囲器と、外囲器の外周面に、それのほぼ全長に亘って互いに離隔して配置した金属部材よりなる帯状の一対の外部電極とを具備し、前記発光層は単一又は複数の蛍光体及びランタン,マグネシウム,カルシウム,バリウムよりなる群から選択された1種以上の硝酸塩又は酢酸塩が化学反応して生成される酸化物を含み、かつ全蛍光体に占める硝酸塩又は酢酸塩の状態での割合を0.1〜2.0重量%に設定して構成したことを特徴とする。
【0020】
又、本発明の第2の発明は、内面に発光層を有する外囲器と、外囲器の外周面に、それのほぼ全長に亘って互いに離隔して配置した金属部材よりなる帯状の一対の外部電極と、外囲器の外周面に、外部電極が被覆されるように装着した絶縁部材とを具備し、前記発光層は単一又は複数の蛍光体及びランタン,マグネシウム,カルシウム,バリウムよりなる群から選択された1種以上の硝酸塩又は酢酸塩が化学反応して生成される酸化物を含み、かつ全蛍光体に占める硝酸塩又は酢酸塩の状態での割合を0.1〜2.0重量%に設定して構成したことを特徴とし、第3の発明は、前記外部電極の開口部に対応する外囲器の発光層部分にアパ−チャ部を形成したことを特徴とし、第4の発明は、前記絶縁部材を、透光性シ−ト又は熱収縮性樹脂よりなる保護チュ−ブにて構成したことを特徴とする。
【0022】
【発明の実施の形態】
次に、本発明にかかる希ガス放電灯の第1の実施例について図1を参照して説明する。尚、図8〜図14に示す先行技術と同一部分には同一参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。同図において、この実施例の特徴部分は、ガラスバルブよりなる外囲器1の内面にアパ−チャ部2aを有する発光層2Aが、単一又は複数の蛍光体及びランタン,マグネシウム,カルシウム,バリウムよりなる群から選択された1種以上の硝酸塩又は酢酸塩が化学反応して生成される酸化物を含み、かつ全蛍光体に占める硝酸塩又は酢酸塩の状態での割合を0.1〜2.0重量%に設定して構成したことと、発光層を形成するための蛍光体塗布液に、ランタン,マグネシウム,カルシウム,バリウムよりなる群から選択された1種以上の硝酸塩又は酢酸塩を水溶液の状態で存在させることである。
【0023】
この希ガス放電灯は、例えば次のように製造される。まず、例えば青色領域に発光スペクトルを有するユ−ロピウム付活アルミン酸バリウム・マグネシウム蛍光体,緑色領域に発光スペクトルを有するセリウム・テルビウム付活リン酸ランタン蛍光体,赤色領域に発光スペクトルを有するユ−ロピウム付活硼酸イットリウム・ガドリウム蛍光体を含む水溶性の蛍光体塗布液に、全蛍光体に対し0.1〜2.0重量%に設定された、ランタン,マグネシウム,カルシウム,バリウムよりなる群から選択された1種以上の硝酸塩又は酢酸塩を水溶液の状態で存在させて蛍光体塗布液を調製する。次に、この蛍光体塗布液をガラスバルブよりなる外囲器1の内面に塗布し、乾燥する。これによって、外囲器1の内面には塗布膜が形成される。次に、この外囲器1を例えば450°C程度に加熱して本焼成することにより、発光層2Aが形成される。次に、図11〜図12に示すように、外囲器1の内部にスクレ−パ12を挿入し、外囲器内面に押し付けた状態で図示矢印方向に移動させることにより発光層2Aの一部が強制的に剥がされて除去される。これによってアパ−チャ部2aが形成される。以下、図8〜図13に示す先行技術と同様の方法により希ガス放電灯が製造される。
【0024】
この実施例によれば、単一又は複数の蛍光体を含む水溶性の蛍光体塗布液に、全蛍光体に対し0.1〜2.0重量%に設定された、ランタン,マグネシウム,カルシウム,バリウムよりなる群から選択された1種以上の硝酸塩又は酢酸塩が水溶液の状態で混入されているために、定格電圧より大幅に低い電圧にて縞状の放電状態を発生させることなく、確実に点灯させることができる。しかしながら、その割合が0.1重量%未満になると、始動特性の改善効果が得られなくなるし、逆に、2.0重量%を超えると、アパ−チャ部2aを形成するための発光層2Aの剥がし性が損なわれるようになる。従って、その範囲を逸脱することは望ましくない。
【0025】
このような結果の得られる原因は明らかではないが、ランタン,マグネシウム,カルシウム,バリウムよりなる群から選択された1種以上の硝酸塩又は酢酸塩が水溶液の状態で塗布液に混入される関係で、粒子状の酸化物を分散させるものに比較して、硝酸塩又は酢酸塩が蛍光体粒子間に侵入し易くなり、発光層2Aが緻密化され誘電率が大きくなるためではないかと推測される。
【0026】
又、蛍光体塗布液に、全蛍光体に対し0.1〜2.0重量%に設定された、ランタン,マグネシウム,カルシウム,バリウムよりなる群から選択された1種以上の硝酸塩又は酢酸塩が水溶液の状態で混入されているために、焼成後に発光層の一部をスクレ−パによって容易に剥がし除去することができ、剥がし作業を能率的に遂行することができる。しかしながら、その割合が0.1重量%未満になると、上述のように始動特性の改善効果が得られなくなるし、逆に、2.0重量%を超えると、アパ−チャ部2aの形成のための発光層2Aの剥がし性が損なわれるのみならず、アパ−チャ部2aの形成部分に発光層2Aの剥がし残渣が残るようになり、輝度低下を招くようになる。従って、その範囲を逸脱することは望ましくない。
【0027】
図2は本発明の第2の実施例を示すものであって、基本的な構成は図1に示す希ガス放電灯と同じである。異なる点は、第1の開口部7に対応する外囲器1の内面部分に形成されているアパ−チャ部2aの開口角θ3 を第1の開口部7の開口角θ1 より大きく設定したことである。このアパ−チャ部2aの開口角θ3 は例えば70〜110度の範囲に設定されているが、用途,目的などに応じて適宜に変更できる。尚、第1の開口部7の開口角θ1 と第2の開口部8の開口角θ2 はθ1 >θ2 に設定することが望ましいが、θ1 ≦θ2 の関係に設定することも可能である。
【0028】
この実施例によれば、外囲器1の外周面にシ−ト構体3を巻回する際に、第1の開口部7とアパ−チャ部2aとのセンタ−が若干ずれても、第1の開口部7から放出される光の光軸のずれを緩和できる。このために、例えば原稿照射装置に適用しても、十分に高い読み取り精度を得ることができる。
【0029】
図3は本発明の第3の実施例を示すものであって、基本的な構成は図1に示す希ガス放電灯と同じである。異なる点は、外囲器1の内面全体に発光層2Aを形成し、第1の開口部7に対応する部分にアパ−チャ部2aを形成しないことである。
【0030】
この実施例によれば、アパ−チャ部2aと外部電極5,6の第1の開口部7との位置合わせが不要になり、シ−ト構体3の外囲器1への巻回作業を能率的に行うことができる。
【0031】
図4は本発明の第4の実施例を示すものであって、基本的な構成は図1に示す希ガス放電灯と同じである。異なる点は、外囲器1の外周面に一対の外部電極5,6を接着層を利用して貼着することと、外部電極5,6の貼着された外囲器1の外周面にPET樹脂などの熱収縮性樹脂よりなる保護チュ−ブ14を被せたことである。尚、この保護チュ−ブ14は外囲器1に装着した後、例えば150〜200°C程度に加熱し、収縮させることにより外囲器1の外周面に密着される。
【0032】
この実施例によれば、上述の各実施例に比較すると、機械化,作業能率の点で劣るものの、保護チュ−ブ14に接着層を使用しないために、端子の構成部材と接着剤成分との反応による腐食がなく、長期間に亘って安定した動作状態を維持できる上、保護チュ−ブ14に継目がないために、上述の実施例のように透光性シ−ト4の端部の重ね合わせ部分の剥がれを完全に防止できる。
【0033】
尚、本発明は、何ら上記実施例にのみ制約されることなく、例えば蛍光体塗布液は水溶性バインダ,水を含む水溶性の他、有機バインダ,有機溶剤を含む塗布液を適用することもできる。蛍光体はセリウム・テルビウム付活リン酸ランタン蛍光体(LaPO4 :Ce,Tb),ユ−ロピウム付活硼酸イットリウム・ガドリウム蛍光体などの他に、錫付活リン酸ストロンチウム・マグネシウム蛍光体((SrMg)3 (PO4 )2 :Sn),ユ−ロピウム付活リンバナジン酸イットリウム蛍光体(Y(PV)O4 :Eu),ユ−ロピウム付活硼リン酸ストロンチウム蛍光体(2SrO・(P2 O7 ・B2 O3 ):Eu)なども適用できる。又、単一又は複数の蛍光体を使用する場合には、リン酸塩蛍光体,硼酸塩蛍光体を使用しない組み合わせを採用することも可能であり、例えばセリウム・テルビウム付活アルミン酸マグネシウム蛍光体(MgAl11O19:Ce,Tb),セリウム・テルビウム付活イットリウム・シリケ−ト蛍光体(Y2 SiO5 :Ce,Tb),ユ−ロピウム付活アルミン酸バリウム・マグネシウム蛍光体(BaMg2 Al16O27:Eu),ユ−ロピウム付活酸化イットリウム蛍光体(Y2 O3 :Eu)などが使用できる。さらに、透光性シ−トの端部の重ね合わせ部分は単に接着の他に、熱溶着したり,超音波溶着したり,接着と溶着を併用したりすることもできる。その上、透光性シ−トの端部は外部電極の上で重ね合わせることもできる。
【0034】
【実施例】
次に、第1の実験例について説明する。まず、青色領域に発光スペクトルを有するユ−ロピウム付活アルミン酸バリウム・マグネシウム蛍光体,緑色領域に発光スペクトルを有するセリウム・テルビウム付活リン酸ランタン蛍光体,赤色領域に発光スペクトルを有するユ−ロピウム付活硼酸イットリウム・ガドリウム蛍光体をそれぞれ65,15,20重量%の割合で混合してなる水溶性の蛍光体塗布液に、10%水溶液の状態で混入して蛍光体塗布液を調製する。尚、全蛍光体に占めるランタンの酢酸塩の割合は図5に示すように0.05〜2.5重量%の範囲で可変した。この蛍光体塗布液を外径が8mm,長さが360mmの鉛ガラスよりなる外囲器の内面に塗布し、乾燥する。次に、この外囲器1を450〜500°Cにコントロ−ルされた焼成炉に挿入して本焼成する。次に、図11〜図12に示すスクレ−パを用いて発光層の一部を強制的に剥がし除去することによってアパ−チャ部を形成する。以下、図8〜図13に示す先行技術と同様の方法にて希ガス放電灯を製造した。
【0035】
この希ガス放電灯を図14に示す点灯回路に組み込み、インバ−タ回路13の出力電圧(周波数は30KHz一定)を定格電圧の90%電圧に設定して移動縞(チラツキ)の発生の有無及びアパ−チャ部を形成するための発光層の剥がし易さを観察・測定したところ、図5に示す結果が得られた。尚、同図において、移動縞の評価項目では○は移動縞が発生していないことを、×は移動縞が発生していることを示しており、剥がし易さの評価項目では○は剥がし易くアパ−チャ部に蛍光体の残渣が残っていないことを、△は若干剥がし難いが実用上は支障ないことを、×は剥がし難くアパ−チャ部に蛍光体の残渣が残っていることを示している。
【0036】
同図から明らかなように、ランタンの酢酸塩の混入割合が0.05重量%では移動縞が発生し、放電が安定しないが、その割合が0.1重量%以上では移動縞の発生もなく、しかも安定した放電状態が得られている。又、始動電圧は0.1重量%では2200Vであったものが、2.0重量%では1800Vにまで低下した。一方、ランタンの酢酸塩の混入割合が0.05〜0.8重量%の範囲では発光層は剥がし易いが、1.0〜2.0重量%の範囲では若干剥がし性が低下するものの、実用上は問題なかった。しかしながら、2.5重量%以上になると、発光層の剥がし性が著しく低下し、アパ−チャ部に蛍光体の残渣が多く残るようになり、光透過性が損なわれる。この結果から、ランタンの酢酸塩の混入割合は0.1〜2.0重量%の範囲に設定することが望ましい。
【0037】
次に、第2の実験例について説明する。第1の実験例におけるランタンの酢酸塩をバリウムの硝酸塩に変更した以外は第1の実験例の仕様と同じである。この希ガス放電灯を図14に示す点灯回路に組み込み、インバ−タ回路13の出力電圧(周波数は30KHz一定)を定格電圧の90%電圧に設定して移動縞(チラツキ)の発生の有無及びアパ−チャ部を形成するための発光層の剥がし易さを観察・測定したところ、図6に示す結果が得られた。
【0038】
同図から明らかなように、バリウムの硝酸塩の混入割合が0.05重量%では移動縞が発生し、放電が安定しないが、その割合が0.1重量%以上では移動縞の発生もなく、しかも安定した放電状態が得られている。又、始動電圧は0.1重量%では2220Vであったものが、2.0重量%では1820Vにまで低下した。一方、バリウムの硝酸塩の混入割合が0.05〜0.8重量%の範囲では発光層は剥がし易いが、1.0〜2.0重量%の範囲では若干剥がし性が低下するものの、実用上は問題なかった。しかしながら、2.5重量%以上になると、発光層の剥がし性が著しく低下し、アパ−チャ部に蛍光体の残渣が多く残るようになり、光透過性が損なわれる。この結果から、バリウムの硝酸塩の混入割合は0.1〜2.0重量%の範囲に設定することが望ましい。
【0039】
次に、第3の実験例について説明する。第1の実験例におけるランタンの酢酸塩をマグネシウムの硝酸塩に変更した以外は第1の実験例の仕様と同じである。この希ガス放電灯を図14に示す点灯回路に組み込み、インバ−タ回路13の出力電圧(周波数は30KHz一定)を定格電圧の90%電圧に設定して移動縞(チラツキ)の発生の有無及びアパ−チャ部を形成するための発光層の剥がし易さを観察・測定したところ、図7に示す結果が得られた。
【0040】
同図から明らかなように、マグネシウムの硝酸塩の混入割合が0.05重量%では移動縞が発生し、放電が安定しないが、その割合が0.1重量%以上では移動縞の発生もなく、しかも安定した放電状態が得られている。又、始動電圧は0.1重量%では2210Vであったものが、2.0重量%では1800Vにまで低下した。一方、マグネシウムの硝酸塩の混入割合が0.05〜0.8重量%の範囲では発光層は剥がし易いが、1.0〜2.0重量%の範囲では若干剥がし性が低下するものの、実用上は問題なかった。しかしながら、2.5重量%以上になると、発光層の剥がし性が著しく低下し、アパ−チャ部に蛍光体の残渣が多く残るようになり、光透過性が損なわれる。この結果から、マグネシウムの硝酸塩の混入割合は0.1〜2.0重量%の範囲に設定することが望ましい。
【0041】
尚、ランタン,カルシウムの硝酸塩、バリウム,マグネシウム,カルシウムの酢酸塩についても同様の効果が得られることを確認した。
【0042】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、発光層は単一又は複数の蛍光体及びランタン,マグネシウム,カルシウム,バリウムよりなる群から選択された1種以上の硝酸塩又は酢酸塩が化学反応して生成される酸化物を含み、かつ全蛍光体に占める硝酸塩又は酢酸塩の状態での割合を0.1〜2.0重量%に設定して構成されているために、定格電圧より低い電圧でも安定した始動が可能となり、移動縞の発生を効果的に抑制できる。
【0043】
特に、単一又は複数の蛍光体を含む蛍光体塗布液に、全蛍光体に対し0.1〜2.0重量%に設定された、ランタン,マグネシウム,カルシウム,バリウムよりなる群から選択された1種以上の硝酸塩又は酢酸塩が水溶液の状態で混入されるために、良好な始動特性が得られるのみならず、本焼成後においては発光層の一部をスクレ−パによって容易に剥がし除去することができる。従って、アパ−チャ部の形成部分に発光層の剥がし残渣が残るようなことはなく、輝度低下を招くこともなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例を示す縦断面図。
【図2】本発明の第2の実施例を示す縦断面図。
【図3】本発明の第3の実施例を示す縦断面図。
【図4】本発明の第4の実施例を示す縦断面図。
【図5】全蛍光体に占めるランタンの酢酸塩の混入割合に対する移動縞の発生の有無及び発光層の剥がし易さの関係を示す図。
【図6】全蛍光体に占めるバリウムの硝酸塩の混入割合に対する移動縞の発生の有無及び発光層の剥がし易さの関係を示す図。
【図7】全蛍光体に占めるマグネシウムの硝酸塩の混入割合に対する移動縞の発生の有無及び発光層の剥がし易さの関係を示す図。
【図8】先行技術にかかる希ガス放電灯の縦断面図。
【図9】先行技術にかかるシ−ト構体の展開図。
【図10】図9のX−X断面図。
【図11】先行技術にかかる発光層の剥がし方法を説明するための側断面図。
【図12】図11のY−Y断面図。
【図13】先行技術にかかる希ガス放電灯の製造方法を説明するための縦断面図。
【図14】先行技術にかかる希ガス放電灯の点灯回路図。
【符号の説明】
1 外囲器
2A 発光層
2a アパ−チャ部
3 シ−ト構体
4 透光性シ−ト(絶縁部材)
5,6 外部電極
51,61 端子
7 第1の開口部
8 第2の開口部
9 接着層
12 スクレ−パ
13 インバ−タ回路
14 保護チュ−ブ(絶縁部材)
Claims (4)
- 内面に発光層を有する外囲器と、外囲器の外周面に、それのほぼ全長に亘って互いに離隔して配置した金属部材よりなる帯状の一対の外部電極とを具備し、前記発光層は単一又は複数の蛍光体及びランタン,マグネシウム,カルシウム,バリウムよりなる群から選択された1種以上の硝酸塩又は酢酸塩が化学反応して生成される酸化物を含み、かつ全蛍光体に占める硝酸塩又は酢酸塩の状態での割合を0.1〜2.0重量%に設定して構成したことを特徴とする希ガス放電灯。
- 内面に発光層を有する外囲器と、外囲器の外周面に、それのほぼ全長に亘って互いに離隔して配置した金属部材よりなる帯状の一対の外部電極と、外囲器の外周面に、外部電極が被覆されるように装着した絶縁部材とを具備し、前記発光層は単一又は複数の蛍光体及びランタン,マグネシウム,カルシウム,バリウムよりなる群から選択された1種以上の硝酸塩又は酢酸塩が化学反応して生成される酸化物を含み、かつ全蛍光体に占める硝酸塩又は酢酸塩の状態での割合を0.1〜2.0重量%に設定して構成したことを特徴とする希ガス放電灯。
- 前記外部電極の開口部に対応する外囲器の発光層部分にアパ−チャ部を形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の希ガス放電灯。
- 前記絶縁部材を、透光性シ−ト又は熱収縮性樹脂よりなる保護チュ−ブにて構成したことを特徴とする請求項2記載の希ガス放電灯。
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-
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- 1996-12-02 JP JP32185396A patent/JP3684721B2/ja not_active Expired - Lifetime
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