JP3920394B2 - シリンダ位置検出装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、誘導型の位置検出装置を内蔵したシリンダ位置検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
流体圧シリンダ等のストローク位置を検出する位置検出装置は、従来より種々の方式のものが知られている。そのうち、電磁コイルを使用した誘導型のシリンダ位置検出装置としては、例えば、実公平2−26003号公報等に示されたものが知られている。従来公知のこの種の誘導型のシリンダ位置検出装置は、いずれも、ピストンロッドの表面を凹凸加工したり、ピストンロッドの表面に磁性体又は導電体のパターンを形成し、その上から所要のコーティング処理を施してピストンロッド表面の保護を図ったものである。また、位置検出方式は、複数の1次コイルを互いに電気的位相のずれた複数相の交流信号(例えばsin ωtとcos ωt)でそれぞれ励磁し、各1次コイルによる2次側誘導信号を合成して1つの2次出力信号を生成し、励磁用の交流信号に対するこの2次出力信号における電気的位相ずれが検出対象ピストン位置を示すようにした位相シフトタイプからなっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来装置のようにピストンロッドの表面に所要の加工・形成を行うものにおいては、ピストンロッドの製造・加工が面倒であり、また、各シリンダロッド毎に特注で製造・加工を行わなければならないため、様々なタイプ・サイズのシリンダにおいて位置検出装置の共用化を図ることができなかった。また、加工済みのピストンロッドの表面に所要のコーティング処理を施したとしても、ピストンロッドの伸縮動作の繰り返しによる摺動摩耗によって、数年の使用によって、表面コーティングが剥がれてしまい、耐久性に乏しいという問題点もあった。
更に、従来の位相シフトタイプの誘導型直線位置検出装置では、差動トランスに比べて多くの点で利点を持っているが、少なくとも2相の交流信号(例えばsin ωtとcos ωt)を用意しなければならないため、励磁回路の構成が複雑になるという問題点があった。また、温度変化等によって1次及び2次コイルのインピーダンスが変化すると、2次出力信号における電気的位相ずれに誤差が生じるという欠点もあった。
【0004】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、ピストンロッドの外周に格別の加工をする必要が無く、サイズの異なるシリンダにおいても検出装置各要素の共用化を容易に図ることができ、かつ、摺動摩耗の心配のない耐久性に富んだシリンダ位置検出装置を提供しようとするものである。
また、小型かつシンプルな構造を持つと共に、広い範囲にわたってシリンダロッド位置検出の可能な誘導型のシリンダ位置検出装置を提供しようとするものである。
また、製造が極めて容易になるようなシンプルな構造を持つシリンダ位置検出装置を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1の本発明に係るシリンダ位置検出装置は、シリンダ本体と、このシリンダ本体に対して相対的に直線変位可能に挿入されたピストン部とを含むシリンダ装置において、前記シリンダ本体の内部において、該シリンダ本体の閉鎖端側にて一端が片持ち支持され、他端が該シリンダ本体の開口端の方に延びた、第1の支持体と、前記ピストン部の内部において、前記第1の支持体の侵入を許すように設けられた空間と、前記ピストン部の内部に設けられた前記空間内において、一端が片持ち支持され、他端が前記シリンダ本体の閉鎖端の方に延びた、第2の支持体と、コイル部及びこのコイル部に対して相対的に変位可能に非接触的に配置される磁気応答部材を含み、該磁気応答部材の該コイル部に対する相対的位置に応じた検出信号を前記コイル部から出力するものであって、前記第1及び第2の支持体の一方に該コイル部が配設され、他方に該磁気応答部材が配設されてなる検出部とを具備し、前記ピストン部の前記シリンダ本体に対する相対的直線変位に伴って前記第1及び第2の支持体に夫々配設された前記磁気応答部材とコイル部との相対的位置が変位し、これにより該ピストン部の直線位置に対応する前記検出信号が出力されるようにしてなるものであり、前記コイル部は、基準交流信号によって励磁され、前記ピストン部の直線位置に対応する第1の関数値を振幅係数として振幅変調された第1の交流出力信号及び前記ピストン部の直線位置に対応する第2の関数値を振幅係数として振幅変調された第2の交流出力信号を出力し、更に、前記第1及び第2の交流出力信号に基づき、前記ピストン部の直線位置に対応して正及び負の一方向にシフトされた電気的位相角を持つ第1の電気的交流信号と、同じ前記ピストン部の直線位置に対応して正及び負の他方向にシフトされた電気的位相角を持つ第2の電気的交流信号とを生成する回路と、前記基準交流信号と前記第1の電気的交流信号との電気的位相差を測定して第1の位相データを求める手段と、前記基準交流信号と前記第2の電気的交流信号との電気的位相差を測定して第2の位相データを求める手段と、前記第1及び第2の位相データに基づき前記ピストン部の直線位置に対応する位置検出データを算出する手段とを備えることを特徴とする。
【0006】
上記構成によれば、ピストン部の内部に形成された空間内に第1及び第2の支持体が収納されて、シリンダ本体に対するピストン部の相対的直線変位に応じて該第1及び第2の支持体の相対的位置が変化するようになっており、かつ、検出部の磁気応答部材とコイル部を両支持体に夫々配設することにより、シリンダ本体に対するピストン部の相対的直線変位に応じて磁気応答部材とコイル部の相対位置が変化し、かくして、シリンダ本体に対するピストン部の直線位置に対応する検出信号がコイル部から得られるようになっている。
これにより、本発明によれば、ピストンロッドの外周に格別の加工をする必要が無いものとなっており、かつ、検出部の磁気応答部材とコイル部は支持体に夫々配設する構成であってピストン又はシリンダ本体に取り付ける構成ではないので、サイズの異なるシリンダにおいても検出装置各要素(つまり磁気応答部材とコイル部)の共用化を容易に図ることができ、かつ、摺動摩耗の心配のない耐久性に富んだシリンダ位置検出装置を提供することができる。また、小型かつシンプルな構造を持つと共に、広い範囲にわたってシリンダロッド位置検出の可能な誘導型のシリンダ位置検出装置を提供することができる。更には、製造が極めて容易になるようなシンプルな構造を持つシリンダ位置検出装置を提供することができる。
【0007】
一例として、前記第1の支持体は、筒状体からなっており、前記第2の支持体は、棒状体からなっていて、該棒状体が前記筒状体の筒内に侵入している構成を採用してよい。このような構成は、限られたスペースでの第1及び第2の支持体の相互変位関係を円滑にし、かつコイル部の配設を容易にする。
更に、前記第1の支持体を構成する前記筒状体は、2重筒からなっていて、該2重筒の筒間スペース内に前記コイル部を気密又は液密に収納してなるようにしてもよい。この構成は、電気回路の一部であるコイル部を、シリンダ本体内の圧力流体から気密又は液密に保護する上で有利である。
【0008】
検出部の好ましい実施形態例としては、前記コイル部は、1相の交流信号によって励磁される1次コイル及び直線変位方向に関して異なる位置に配置された複数の2次コイルを含み、前記磁気応答部材は、所定の磁気応答特性を持つ磁気応答部材を直線変位方向に沿って所定のピッチで複数繰り返して設けて成り、前記相対的変位に応じて前記部材の前記コイル部に対する対応位置が変化することにより前記1次コイルと各2次コイル間の磁気結合が前記ピストン部の直線位置に応じて変化され、これにより、該直線位置に応じて振幅変調された誘導出力交流信号を、各2次コイルの配置のずれに応じて異なる振幅関数特性で、各2次コイルに誘起させるようにしたものとするとよい。
この構成によれば、1相の交流信号によって励磁する構成であるため、励磁回路の構成が簡単である、という利点を有する。また、磁気応答部材において、所定の磁気応答特性を持つ磁気応答部材を直線変位方向に沿って所定のピッチで複数繰り返して設けて成るので、2次コイルに誘起される誘導出力交流信号として、該磁気応答部材の繰り返しピッチを1サイクルとして周期的に変化する信号を得ることができ、検出可能範囲を拡大することができるものである。
【0009】
また、前記検出部から出力される前記直線位置に応じて振幅変調された前記誘導出力交流信号として、サイン関数の振幅関数を持つ第1の出力交流信号とコサイン関数の振幅関数を持つ第2の出力交流信号とを出力するようにし、前記第1の出力交流信号と第2の出力交流信号を入力し、前記直線位置を示す前記サイン関数とコサイン関数の位相値を検出する位相検出回路を更に具備するようにするとよい。
上記構成によれば、回転型位置検出装置である従来知られたレゾルバにおいて得られるのと同様の、2つの出力交流信号(サイン出力とコサイン出力)をシリンダ位置検出装置において得ることができる。従って、そのような本発明に係るシリンダ位置検出装置においては、前記第1の出力交流信号と第2の出力交流信号を入力し、両信号の振幅値に相当する前記サイン関数とコサイン関数の位相値を検出する位相検出回路を更に具備することにより、電気的位相の測定に基づいて精度のよいアブソリュート位置検出が可能である。このような位相検出回路としては、レゾルバ用の位相検出回路として従来知られたR−D(レゾルバ−ディジタル)コンバータを使用することができるし、その他の方式の位相検出回路を用いることもできる。このようなレゾルバタイプの位相検出回路を使用することができることは、従来の位相シフトタイプの誘導型直線位置検出装置が持っていたような、温度変化等によって1次及び2次コイルのインピーダンスが変化することにより2次出力信号における電気的位相ずれに誤差が生じるという欠点を除去することができるので、好都合である。
【0010】
また、一実施の形態として、前記コイル部が、前記磁気応答部材の1ピッチ内のアブソリュート位置に応答する第1の検出信号を出力する第1のコイル部と、前記磁気応答部材の終端部の通過に応答する第2の検出信号を出力する少なくとも1つの第2のコイル部とを含むようにしてもよい。これにより、第2のコイル部によって、ピストン部の直線位置が所定の定位置に達したことを検出することができる。このような第2のコイル部を複数設けることにより、磁気応答部材の1ピッチを越えるアブソリュート位置の検出に利用することもできる。
また、別の実施の形態として、前記コイル部が、前記磁気応答部材の1ピッチ内のアブソリュート位置に応答する第1の検出信号を出力する第1のコイル部と、前記磁気応答部材の1ピッチよりも長い範囲にわたって設けられてなり、該磁気応答部材の侵入量に応答する第2の検出信号を出力する第2のコイル部とを含むようにしてもよい。これによっても、磁気応答部材の1ピッチを越えるアブソリュート位置の検出を行うことがてせきる。
【0011】
本発明に係るシリンダ位置検出装置の一実施形態においては、前記磁気応答部材の芯部を成す棒状体をピアノ線のような金属線で構成し、この芯線の周囲に磁性体金属片を所定のピッチで複数繰り返して配置してそれぞれをかしめ止めするようにしてもよい。このような構成は、ピアノ線と金属片を用意し、金属片を所望のピッチでピアノ線にかしめ止めすることにより、提供できるので、構成が極めて簡単であり、かつ製造が極めて容易であり、製造コストも極めて安価にすることができるので、かなり有意義である。しかも、磁気応答部材つまりコアの径は、ピアノ線の径に金属片の厚みを足した程度の小さなものとなり、これに伴い、コイル部の各コイルの径も小さくすることができるので、全体としてかなり小型化された検出部を提供することができることとなり、ピストン部に設ける空間のサイズを小さくしてその強度を損なうことがないようにすることができる。また、芯線をピアノ線等の金属線で構成するため、強靭でありながら軽量かつフレキシビリティに富むものであり、強度、重量、柔軟性の全ての点で有利であり、かつ、安価でもある。
その場合、前記金属片としてスプリングピンを用いると、かしめ止め加工作業も楽になり、しかも安価であるから、極めて有利である。また、前記金属片として略円形乃至楕円形の金属片を使用してもよく、略円形乃至楕円形の形状により、直線位置に応じた磁気結合係数の変化を三角関数に近似した理想的なものにし易くなるので、有利である。
また、所定のサイズの前記金属片を1乃至複数個連続して前記芯部の周囲にかしめ止めするようにすれば、磁気応答部材の繰り返し配列の所定の1ピッチの長さが任意に変化できるので、製造及び加工に際して、材料の共用化を図ることができるので、有利である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照してこの発明の実施の形態を詳細に説明しよう。
図1は本発明の一実施例に係るシリンダ位置検出装置をシリンダ軸方向に沿う断面図で示すものである。このシリンダ位置検出装置が適用されるシリンダ装置1は、油圧又は空気圧シリンダなど、どのようなタイプのシリンダであってもよい。このシリンダ装置1は、通常知られるように、シリンダ本体2と、このシリンダ本体2に対して相対的に直線変位可能に挿入されたピストン部3とを含んでいる。なお、図1において、シリンダ本体2に関連する油圧又は空気圧回路の図示は省略してある。
シリンダ本体2の内部においては、該シリンダ本体2の閉鎖端2a側にて一端が片持ち支持され、他端が該シリンダ本体2の開口端2bの方に延びた、第1の支持体4が設けられている。図示の例では、この第1の支持体4は、2重筒状の筒状体からなっている。
【0013】
シリンダ本体2の内部には第1の支持体4が延びて設けられているが故に、シリンダ本体2の内部でX方向に前後に直線移動するピストン部3は、この第1の支持体4を適切に避ける必要がある。そこで、ピストン部3の内部において、この第1の支持体4の侵入を許すように、所要の空間6が設けられる。
ピストン部3においては、その内部に設けられた空間6内において、一端がピストン部3の適宜箇所にて片持ち支持され、他端がシリンダ本体2の閉鎖端2aの方に延びた、第2の支持体5が設けられている。図示の例では、この第2の支持体5は、棒状体からなっており、筒状体からなる第1の支持体4の筒内に侵入している。
上記第1及び第2の支持体4,5は、検出部を構成するコイル部10と磁気応答部材20とを夫々適切に搭載して支持するためのものである。
電磁誘導式の検出部は、コイル部10と、このコイル部10に対して相対的に変位可能に非接触的に配置される磁気応答部材20を含んで構成されており、該磁気応答部材20の該コイル部10に対する相対的位置に応じた検出信号を前記コイル部10から出力するようになっている。
図示の例では、シリンダ本体2の側に設けられた第1の支持体(2重筒)4の側にコイル部10が配設され、ピストン部3の側に設けられた第2の支持体5(棒状体)の側に磁気応答部材20が配設される。この場合、第1の支持体(2重筒)4は、非磁性体からなる。
【0014】
コイル部10と磁気応答部材20の配置には様々な変形が可能であるが、以下、好ましい一例について具体的に説明する。
図1において、第1の支持体4を構成する筒状体は2重筒からなっていて、該2重筒の筒間スペース4c内にコイル部10が気密又は液密に収納されている。すなわち、内側筒4aと外側筒4bの間のスペース4cにコイル部10が嵌入して所定位置で固定され、該スペース4cがシーリング4dで封印されて気密又は液密となっている。コイル部10の配線(図示せず)は、2重筒スペース4c及びシリンダ閉鎖端部2a内に適宜穿たれた通り道7を通って、コネクタ8に接続され、外部とコンタクトする。
第2の支持体5は、棒状の磁性体例えば適宜の太さのピアノ線からなっていて、その周囲に直線変位方向に沿って所定のピッチpで複数の磁気応答部材20が繰り返して配置されている。このように磁気応答部材20を設けた第2の支持体5の一端がピストン部3に固定され、他端が直線変位方向Xに延びて、第1の支持体4の内側筒4a内に侵入している。第1の支持体4に設けられたコイル部10の磁界が内側筒4a内を移動する磁気応答部材20によって影響され、該コイル部10の誘導結合が変化し、該コイル部10に対する磁気応答部材20の相対的位置関係に応じた検出信号がコイル部10から出力される。
【0015】
既に知られているように、磁気応答部材20の材質を鉄またはニッケルなどのような磁性体、あるいは銅またはアルミニウムなどのような非磁性の導電体とすることにより、透磁率あるいは磁気抵抗あるいは渦電流損失などの所定の磁気応答特性を持たせることができるので、そのように適宜の材質を用いて磁気応答部材20を構成してよい。なお、芯部である支持体5の材質も、ピアノ線に限らず、磁性体又は非磁性体又は導電体など適宜の材質を用いてよく、どのような材質を用いるかは、磁気応答部材20の材質及び/又は形状等との兼ね合いによって定まる。要するに、磁気応答部材20が存在する箇所とそうでない箇所との間では、コイル部10に及ぼす磁気的応答特性が異なるようになっていればよいものである。また、芯部である支持体5に対する磁気応答部材20の形成法も、貼り付け、接着、かしめ止め、切削、めっき、蒸着、焼き付け、など適宜の手法を用いてよい。
【0016】
検出部におけるコイル部10の詳細構成例及び磁気応答部材20との相関関係を明瞭に示すために、図2を示す。図2では、便宜上、第1の支持体4の筒4a,4bの図示を省略してある。
コイル部10は、1相の交流信号によって励磁される1次コイルPW1〜PW5と、ピストン部3の直線変位方向Xに関して異なる位置に配置された複数の2次コイルSW1〜SW4とを含む。これらの1次及び2次コイルの構成を明示するために、図2ではコイル部10は断面を含んで示されているが、実際は、点線で補って示されているように、磁気応答部材20を配置してなる棒状の第2の支持体5の周囲にて適宜のギャップを空けて、コイル巻線が巻回された状態を成している。1相の交流信号によって共通に励磁されるが故に、1次コイルPW1〜PW5の数は、1又は適宜の複数であってよく、その配置も適宜であってよい。しかし、複数の1次コイルPW1〜PW5を適宜に分離して、例えば図2に示されるように各2次コイルSW1〜SW4をそれぞれの間に挟むように、配置することは、1次コイルによって発生する磁界を個別の2次コイルSW1〜SW4に対して有効に及ぼし、かつ磁気応答部材20による磁場への影響を有効に及ぼすことができるので、好ましい。
【0017】
検出対象たるピストン部3の直線位置(ストローク位置)の変化に応じて、磁気応答部材20のコイル部10に対する対応位置が変化することにより、1次コイルPW1〜PW5と各2次コイルSW1〜SW4間の磁気結合が該ピストンストローク位置に応じて変化され、これにより、該ピストンストローク位置に応じて振幅変調された誘導出力交流信号が、各2次コイルSW1〜SW4の配置のずれに応じて異なる振幅関数特性で、各2次コイルSW1〜SW4に誘起される。各2次コイルSW1〜SW4に誘起される各誘導出力交流信号は、1次コイルPW1〜PW5が1相の交流信号によって共通に励磁されるが故に、その電気的位相が同相であり、その振幅関数が磁気応答部材20の繰り返しピッチの1ピッチpに相当する変位量を1サイクルとして周期的にそれぞれ変化する。
【0018】
4つの2次コイルSW1〜SW4は、磁気応答部材20の繰り返しピッチの1ピッチpの範囲内において所定の間隔で配置され、各2次コイルSW1〜SW4に生じる誘導出力交流信号の振幅関数が、所望の特性を示すように設定される。例えば、レゾルバタイプの位置検出装置として構成する場合は、各2次コイルSW1〜SW4に生じる誘導出力交流信号の振幅関数が、サイン関数、コサイン関数、マイナス・サイン関数、マイナス・コサイン関数、にそれぞれ相当するように設定する。例えば図2に示されるように、1ピッチpの範囲を4分割し、p/4づつずれた各分割位置に配列する。これにより、各2次コイルSW1〜SW4に生じる誘導出力交流信号の振幅関数が、サイン関数、コサイン関数、マイナス・サイン関数、マイナス・コサイン関数、にそれぞれ相当するように設定することができる。勿論、種々の条件によって、各コイルの配置は微妙に変わり得るので、希望の関数特性が得られるように各コイル配置を適宜調整したり、あるいは2次出力レベルを電気的増幅によって調整して、希望の振幅関数特性が最終的に得られるようにする。
【0019】
例えば、2次コイルSW1の出力がサイン関数(図でsを付記する)に対応するとすると、これに対してp/2だけずれて配置された2次コイルSW3の出力はマイナス・サイン関数(図で/s(sバー)を付記する)に対応し、この両者の出力を差動的に合成することによりサイン関数の振幅関数を持つ第1の出力交流信号が得られる。また、サイン関数出力に対応する2次コイルSW1からp/4ずれて配置された2次コイルSW2の出力はコサイン関数(図でcを付記する)に対応し、これに対してp/2だけずれて配置された2次コイルSW4の出力はマイナス・コサイン関数(図で/c(cバー)を付記する)に対応し、この両者の出力を差動的に合成することによりコサイン関数の振幅関数を持つ第2の出力交流信号が得られる。。なお、明細書中では、表記の都合上、反転を示すバー記号は「/(スラッシュ)」で記載するが、これは、図中のバー記号に対応している。
【0020】
図3はコイル部10の回路図であり、1次コイルPW1〜PW5には共通の励磁交流信号(説明の便宜上、sinωtで示す)が印加される。この1次コイルPW1〜PW5の励磁に応じて、磁気応答部材20のコイル部10に対する対応位置に応じた振幅値を持つ交流信号が各2次コイルSW1〜SW4に誘導される。夫々の誘導電圧レベルは検出対象直線位置xに対応して2相の関数特性sinθ,cosθ及びその逆相の関数特性−sinθ,−cosθを示す。すなわち、各2次コイルSW1〜SW4の誘導出力信号は、検出対象直線位置xに対応して2相の関数特性sinθ,cosθ及びその逆相の関数特性−sinθ,−cosθで振幅変調された状態で夫々出力される。なお、θはxに比例しており、例えば、θ=2π(x/p)のような関係である。説明の便宜上、コイルの巻数等、その他の条件に従う係数は省略し、2次コイルSW1をサイン相として、その出力信号を「sinθ・sinωt」で示し、2次コイルSW2をコサイン相として、その出力信号を「cosθ・sinωt」で示す。また、2次コイルSW3をマイナス・サイン相として、その出力信号を「−sinθ・sinωt」で示し、2次コイルSW4をマイナス・コサイン相として、その出力信号を「−cosθ・sinωt」で示す。サイン相とマイナス・サイン相の誘導出力を差動的に合成することによりサイン関数の振幅関数を持つ第1の出力交流信号(2sinθ・sinωt)が得られる。また、コサイン相とマイナス・コサイン相の誘導出力を差動的に合成することによりコサイン関数の振幅関数を持つ第2の出力交流信号(2cosθ・sinωt)が得られる。なお、表現の簡略化のために、係数「2」を省略して、以下では、第1の出力交流信号を「sinθ・sinωt」で表わし、第2の出力交流信号を「cosθ・sinωt」で表わす。
【0021】
こうして、検出対象直線位置xに対応する第1の関数値sinθを振幅値として持つ第1の出力交流信号A=sinθ・sinωtと、同じ検出対象直線位置xに対応する第2の関数値cosθを振幅値として持つ第2の出力交流信号B=cosθ・sinωtとが出力される。このようなコイル構成によれば、回転型位置検出装置である従来知られたレゾルバにおいて得られるのと同様の、同相交流であって2相の振幅関数を持つ2つの出力交流信号(サイン出力とコサイン出力)をシリンダピストンストローク位置検出装置において得ることができることが理解できる。従って、本発明の位置検出装置において得られる2相の出力交流信号(A=sinθ・sinωtとB=cosθ・sinωt)は、従来知られたレゾルバの出力と同様の使い方をすることができる。
また、上記のように、4つの2次コイルSW1〜SW4を磁気応答部材20の繰り返しピッチの1ピッチpの範囲内において所定の間隔で配置した構成は、コイル部10全体のサイズを磁気応答部材20の1ピッチの範囲に略対応する比較的小さなサイズに収めることができるので、位置検出装置全体の構成を小型化することに役立つ。
【0022】
直線変位に応じて磁気抵抗を変化させるための磁気応答部材20の設け方の一実施形態として、芯部である第2の支持体5としてピアノ線を使用し、磁気応答部材20として所定の金属片を使用し、ピアノ線からなる支持体5の周囲に、磁気応答部材20としての該金属片を所定のピッチで複数繰り返して配置してそれぞれの金属片をかしめ止めすることによって、該所定のピッチで繰り返し配置した磁気応答部材20を構成するようにするとよい。このような構成は、単に、所望の長さのピアノ線と所望の数の金属片とを用意し、該金属片を所望のピッチで該ピアノ線にかしめ止めすることだけで、製造することができるので、構成が極めて簡単であり、かつ製造が極めて容易であり、製造コストも極めて安価にすることができるので、かなり有意義である。しかも、検出部の可動コア部の径は、ピアノ線(支持体5)の径に金属片(磁気応答部材20)の厚みを足した程度の小さなものとなり、これに伴い、コイル部10の各コイルの径もかなり小さくすることができるので、全体としてかなり小型化された位置検出装置を提供することができる。
【0023】
更にその場合、磁気応答部材20としての前記金属片として、既存のスプリングピンを用いてもよく、そのようスプリングピンを用いると、かしめ止め加工作業も極めて容易になり、かつ、かしめ止めも確実になり、しかも安価であるから、極めて有利である。また、磁気応答部材20を形成するための前記金属片として展開状態では長方形のものを使用すると、これを支持体5(ピアノ線)の周りにかしめ止めしたとき、図2に示すように、磁気応答部材20は略円筒形状となる。しかし、これに限らず、磁気応答部材20を形成するための前記金属片として展開状態では略円形乃至楕円形の金属片20’を使用してもよく、これを支持体5(ピアノ線)の周りにかしめ止めすると、図4に示すように、支持体5の周囲をカバーする磁気応答部材20の面積が連続的に変化するものとなり、直線位置の変化に応じた磁気結合係数の変化を三角関数に近似した理想的なものにし易くなるので、有利である。
【0024】
図5は磁気応答部材20の設け方の別の実施形態を示すもので、磁気応答部材20として磁性体からなる所定径の球22を1乃至複数個連続して配置し、次いで非磁性体からなる所定径の球23を1乃至複数個連続して配置して、所望の1ピッチpの長さを確定し、このような磁性体球22と非磁性体23の所定ピッチの繰り返しを、棒状の支持体5(ピアノ線)に沿って多数形成してなるものである。この場合、各球22,23の中心軸には支持体5(ピアノ線)の挿入を許す孔が穿ってあり、該孔に支持体5(ピアノ線)を挿入して多数の上記所定配置の球22,23を密接して設けるようにする。この構成も、磁気応答部材20の繰り返し配列の所定の1ピッチpの長さが任意に変化できるので、本発明に従って異なる仕様(ストローク長)の位置検出装置を製造するに際して、どの場合でも同じ球22,23を利用できることにより、材料の共用化を図ることができる。また、単に球22,23の孔に支持体5(ピアノ線)を差し込むだけでよいので、製造が極めて簡単である。
【0025】
図6は磁気応答部材20の設け方の更に別の実施形態を示すもので、第2の支持体5として非磁性及び非導電性すなわち非磁気応答性物体からなる筒を用いる。この筒(第2の支持体5)の中に、磁気応答部材20として磁性体からなる所定径の球22を1乃至複数個連続して配置し、次いで非磁性体からなる所定径の球23を1乃至複数個連続して配置して、所望の1ピッチpの長さを確定し、このような磁性体球22と非磁性体23の所定ピッチの繰り返しを多数形成してなるものである。この場合も、磁気応答部材20の繰り返し配列の所定の1ピッチpの長さが任意に変化できるので、本発明に従って異なる仕様(ストローク長)の位置検出装置を製造するに際して、どの場合でも同じ球22,23を利用できることにより、材料の共用化を図ることができる。また、単に筒(第2の支持体5)の中に球22,23を入れるだけでよいので、製造が極めて簡単である。
【0026】
なお、図5及び図6のどちらの場合も、磁気応答部材20としての球22は、磁性体に限らず、導電体からなるものであってもよい。また、一方の球22(又は23)を磁性体とし、他方の球23(又は22)を導電体としてもよい。また、図5及び図6のどちらの場合も、球22,23に代えて、楕円球あるいは円柱などの任意の形状の物体を使用することができることは容易に理解できるであろう。
例えば、図7は、そろばん玉のような断面略菱形のテーパ部材25(又は2つの台形を逆向きにくっつけたもの)の長さを1ピッチpとして、これを複数個連続して非磁気応答性物体からなる筒(第2の支持体)5の中に配置するようにした例を示している。この場合も、筒状の支持体5を使用せずに、テーパ部材25の中心軸に孔を穿ち、線状の支持体5(ピアノ線)を差し込むようにしてもよい。テーパ部材25は、磁性体又は導電体からなり、これが磁気応答部材20に相当する。勿論、テーパ部材25の傾斜は直線的なものに限らず曲線的でもあってもよい。
【0027】
図8は、コイル部10におけるコイル配置の別の実施形態を示す。図8の例では、4つの2次コイルSW1〜SW4の配置は、1ピッチPの範囲を4分割した位置に配置されている点で図1と同じであるが、各2次コイル間に1次コイルが介在していないことにより、各2次コイルSW1〜SW4のコイル長が図1の例よりも長い。この場合、1次コイルPW1,PW2は、2次コイルSW1〜SW4に比べて大径であり、2次コイルSW1〜SW4の外側に巻かれる格好になっている。ここで、隣接する2つの2次コイルSW1,SW2の丁度中間位置に対応してその外側に1つの1次コイルPW1が巻回された配置となっており、また、別の隣接する2つの2次コイルSW3,SW4の丁度中間位置に対応してその外側にもう1つの1次コイルPW2が巻回された配置となっている。各1次コイルPW1,PW2のコイル長は適宜であってよいが、2つの1次コイルPW1,PW2はくっつくことなく、分離されていることが望ましい。このように1次コイルを分離して個別の2次コイルに対して必要な範囲でのみ磁界を及ぼすことができるようにしたコイル配置は、図1の場合と同様に、1次コイルによって発生する磁界を個別の2次コイルSW1〜SW4に対して有効に及ぼし、かつ磁気応答部材20による磁場への影響を有効に及ぼすことができるので、好ましい。
【0028】
なお、図2及び図8のどちらのコイル配置においても、隣接する各コイルの境界に磁気シールド用の磁性体金属を介在させると、クロストークを改善することができ、個別の各2次コイルSW1〜SW4毎の誘導出力信号における所望の振幅関数特性が改善される。
勿論、コイル部10の構成は図2及び図8に図示の例に限らず、その他の設計変更が可能である。また、図9に示すように、コイル部10の端部寄りに位置する2次コイルSW1,SW4の誘導出力特性を良好にするために、該コイル部10の両端において適宜の間隔を空けて更に1次コイルPW6,PW7をそれぞれ付加するとよい。
【0029】
上述の通り、本発明に係る誘導型のシリンダ位置検出装置によれば、リニアタイプの位置検出装置でありながら、回転型レゾルバと同様の2相の出力交流信号(A=sinθ・sinωtとB=cosθ・sinωt)をコイル部10の2次コイルSW1〜SW4から出力することができるようになる。従って、適切なディジタル位相検出回路を適用して、前記サイン関数sinθとコサイン関数cosθの位相値θをディジタル位相検出によって検出し、これに基づき直線位置xの位置検出データを得るようにすることができる。
【0030】
例えば、図10は、公知のR−D(レゾルバ−ディジタル)コンバータを適用した例を示す。コイル部10の2次コイルSW1〜SW4から出力されるレゾルバタイプの2相の出力交流信号A=sinθ・sinωtとB=cosθ・sinωtが、それぞれアナログ乗算器30,31に入力される。順次位相発生回路32では位相角φのディジタルデータを発生し、サイン・コサイン発生回路33から該位相角φに対応するサイン値sinφとコサイン値cosφのアナログ信号を発生する。乗算器30では、サイン相の出力交流信号A=sinθ・sinωtに対してサイン・コサイン発生回路33からのコサイン値cosφを乗算し、「cosφ・sinθ・sinωt」を得る。もう一方の乗算器31では、コサイン相の出力交流信号B=cosθ・sinωtに対してサイン・コサイン発生回路33からのサイン値sinφを乗算し、「sinφ・cosθ・sinωt」を得る。引算器34で、両乗算器30,31の出力信号の差を求め、この引算器34の出力によって順次位相発生回路32の位相発生動作を次のように制御する。すなわち、順次位相発生回路32の発生位相角φを最初は0にリセットし、以後順次増加していき、引算器34の出力が0になったとき増加を停止する。引算器34の出力が0になるのは、「cosφ・sinθ・sinωt」=「sinφ・cosθ・sinωt」が成立したときであり、すなわち、φ=θが成立し、順次位相発生回路32から位相角φのディジタルデータが出力交流信号A,Bの振幅関数の位相角θのディジタル値に一致している。従って、任意のタイミングで周期的にリセットトリガを与えて順次位相発生回路32の発生位相角φを0にリセットして、該位相角φのインクリメントを開始し、引算器34の出力が0になったとき、該インクリメントを停止し、位相角θのディジタルデータを得る。
なお、順次位相発生回路32をアップダウンカウンタ及びVCOを含んで構成し、引算器34の出力によってVCOを駆動してアップダウンカウンタのアップ/ダウンカウント動作を制御するようにすることが知られており、その場合は、周期的なリセットトリガは不要である。
【0031】
温度変化等によってコイル部10の1次及び2次コイルのインピーダンスが変化することにより2次出力交流信号における電気的交流位相ωtに誤差が生じるが、上記のような位相検出回路においては、sinωtの位相誤差は自動的に相殺されるので、好都合である。これに対して、従来知られた2相交流信号(例えばsinωtとcosωt)で励磁することにより1相の出力交流信号に電気的位相シフトが生じるようにした方式では、そのような温度変化等に基づく出力位相誤差を除去することができない。
ところで、上記のような従来のR−Dコンバータからなる位相検出回路は、追従比較方式であるため、φを追従カウントするときのクロック遅れが生じ、応答性が悪い、という問題がある。
そこで、本発明者等は、以下に述べるような新規な位相検出回路を開発したので、これを使用すると好都合である。
【0032】
図11は、本発明に係る誘導形直線位置検出装置に適用される新規な位相検出回路の一実施形態を示している。
図11において、検出回路部41では、カウンタ42で所定の高速クロックパルスCKをカウントし、そのカウント値に基づき励磁信号発生回路43から励磁用の交流信号(例えば−cosωt)を発生し、コイル部10の1次コイルPW1〜PW5に与える。カウンタ42のモジュロ数は、励磁用の交流信号の1周期に対応しており、説明の便宜上、そのカウント値の0は、基準のサイン信号sinωtの0位相に対応しているものとする。例えば、カウンタ42のカウント値が0から最大値まで1巡する間で、基準のサイン信号sinωtの0位相から最大位相までの1周期が発生されると想定すると、その基準のサイン信号sinωtより90度遅れた位相で励磁用の交流信号−cosωtが、励磁信号発生回路43から発生される。コイル部10の2次コイルSW1〜SW4から出力される2相の出力交流信号A=sinθ・sinωtとB=cosθ・sinωtは、検出回路部41に入力される。
【0033】
検出回路部41において、第1の交流出力信号A=sinθ・sinωtが位相シフト回路44に入力され、その電気的位相が所定量位相シフトされ、例えば90度進められて、位相シフトされた交流信号A’=sinθ・cosωtが得られる。また、検出回路部41においては加算回路45と減算回路46とが設けられており、加算回路45では、位相シフト回路44から出力される上記位相シフトされた交流信号A’=sinθ・cosωtと巻線部10の2次巻線SW1〜SW4から出力され第2の交流出力信号B=cosθ・sinωtとが加算され、その加算出力として、B+A’=cosθ・sinωt+sinθ・cosωt=sin(ωt+θ)なる略式で表わせる第1の電気的交流信号Y1が得られる。減算回路46では、上記位相シフトされた交流信号A’=sinθ・cosωtと上記第2の交流出力信号B=cosθ・sinωtとが減算され、その減算出力として、B−A’=cosθ・sinωt−sinθ・cosωt=sin(ωt−θ)なる略式で表わせる第2の電気的交流信号Y2が得られる。このようにして、検出対象位置(x)に対応して正方向にシフトされた電気的位相角(+θ)を持つ第1の電気的交流信号Y1=sin(ωt+θ)と、同じ前記検出対象位置(x)に対応して負方向にシフトされた電気的位相角(−θ)を持つ第2の電気的交流信号Y2=sin(ωt−θ)とが、電気的処理によって夫々得られる。
【0034】
加算回路45及び減算回路46の出力信号Y1,Y2は、夫々ゼロクロス検出回路47,48に入力され、それぞれのゼロクロスが検出される。ゼロクロスの検出の仕方としては、例えば、各信号Y1,Y2の振幅値が負から正に変化するゼロクロスつまり0位相を検出する。各回路47,48で検出したゼロクロス検出パルスつまり0位相検出パルスは、ラッチパルスLP1,LP2として、ラッチ回路49,50に入力される。ラッチ回路49,50では、カウンタ42のカウント値を夫々のラッチパルスLP1,LP2のタイミングでラッチする。前述のように、カウンタ42のモジュロ数は励磁用の交流信号の1周期に対応しており、そのカウント値の0は基準のサイン信号sinωtの0位相に対応しているものとしたので、各ラッチ回路49,50にラッチしたデータD1,D2は、それぞれ、基準のサイン信号sinωtに対する各出力信号Y1,Y2の位相ずれに対応している。各ラッチ回路49,50の出力は誤差計算回路51に入力されて、「(D1+D2)/2」の計算が行なわれる。なお、この計算は、実際は、「D1+D2」のバイナリデータの加算結果を1ビット下位にシフトすることで行われるようになっていてよい。
【0035】
ここで、コイル部10と検出回路部41間の配線ケーブル長の長短による影響や、コイル部10の各1次及び2次コイルにおいて温度変化等によるインピーダンス変化が生じていることを考慮して、その出力信号の位相変動誤差を「±d」で示すと、検出回路部41における上記各信号は次のように表わされる。
A=sinθ・sin(ωt±d)
A’=sinθ・cos(ωt±d)
B=cosθ・sin(ωt±d)
Y1=sin(ωt±d+θ)
Y2=sin(ωt±d−θ)
D1=±d+θ
D2=±d−θ
【0036】
すなわち、各位相ずれ測定データD1,D2は、基準のサイン信号sinωtを基準位相に使用して位相ずれカウントを行なうので、上記のように位相変動誤差「±d」を含む値が得られてしまう。そこで、誤差計算回路51において、「(D1+D2)/2」の計算を行なうことにより、
により、位相変動誤差「±d」を算出することができる。
【0037】
誤差計算回路51で求められた位相変動誤差「±d」のデータは、減算回路52に与えられ、一方の位相ずれ測定データD1から減算される。すなわち、減算回路52では、「D1−(±d)」の減算が行なわれるので、
D1−(±d)=±d+θ−(±d)=θ
となり、位相変動誤差「±d」を除去した正しい検出位相差θを示すディジタルデータが得られる。このように、本発明によれば、位相変動誤差「±d」が相殺されて、検出対象位置xに対応する正しい位相差θのみが抽出されることが理解できる。
【0038】
この点を図12を用いて更に説明する。図12においては、位相測定の基準となるサイン信号sinωtと前記第1及び第2の交流信号Y1,Y2の0位相付近の波形を示しており、同図(a)は位相変動誤差がプラス(+d)の場合、(b)はマイナスの場合(−d)を示す。同図(a)の場合、基準のサイン信号sinωtの0位相に対して第1の信号Y1の0位相は「θ+d」だけ進んでおり、これに対応する位相差検出データD1は「θ+d」に相当する位相差を示す。また、基準のサイン信号sinωtの0位相に対して第2の信号Y2の0位相は「−θ+d」だけ遅れており、これに対応する位相差検出データD2は「−θ+d」に相当する位相差を示す。この場合、誤差計算回路51では、
により、位相変動誤差「+d」を算出する。そして、減算回路52により、
D1−(+d)=+d+θ−(+d)=θ
が計算され、正しい位相差θが抽出される。
【0039】
図12(b)の場合、基準のサイン信号sinωtの0位相に対して第1の信号Y1の0位相は「θ−d」だけ進んでおり、これに対応する位相差検出データD1は「θ−d」に相当する位相差を示す。また、基準のサイン信号sinωtの0位相に対して第2の信号Y2の0位相は「−θ−d」だけ遅れており、これに対応する位相差検出データD2は「−θ−d」に相当する位相差を示す。この場合、誤差計算回路51では、
により、位相変動誤差「−d」を算出する。そして、減算回路52により、
D1−(−d)=−d+θ−(−d)=θ
が計算され、正しい位相差θが抽出される。
なお、減算回路52では。「D2−(±d)」の減算を行なうようにしてもよく、原理的には上記と同様に正しい位相差θを反映するデータ(−θ)が得られることが理解できるであろう。
【0040】
また、図12からも理解できるように、第1の信号Y1と第2の信号Y2との間の電気的位相差は2θであり、常に、両者における位相変動誤差「±d」を相殺した正確な位相差θの2倍値を示していることになる。従って、図11におけるラッチ回路49,50及び誤差計算回路51及び減算回路52等を含む回路部分の構成を、信号Y1,Y2の電気的位相差2θをダイレクトに求めるための構成に適宜変更するようにしてもよい。例えば、ゼロクロス検出回路47から出力される第1の信号Y1の0位相に対応するパルスLP1の発生時点から、ゼロクロス検出回路48から出力される第2の信号Y2の0位相に対応するパルスLP2の発生時点までの間を適宜の手段でゲートし、このゲート期間をカウントすることにより、位相変動誤差「±d」を相殺した、電気的位相差(2θ)に対応するディジタルデータを得ることができ、これを1ビット下位にシフトすれば、θに対応するデータが得られる。
【0041】
ところで、上記実施例では、+θをラッチするためのラッチ回路49と、−θをラッチするためのラッチ回路50とでは、同じカウンタ42の出力をラッチするようにしており、ラッチしたデータの正負符号については特に言及していない。しかし、データの正負符号については、本発明の趣旨に沿うように、適宜の設計的処理を施せばよい。例えば、カウンタ42のモジュロ数が4096(10進数表示)であるとすると、そのディジタルカウント0〜4095を0度〜360度の位相角度に対応させて適宜に演算処理を行なうようにすればよい。最も単純な設計例は、カウンタ42のカウント出力の最上位ビットを符号ビットとし、ディジタルカウント0〜2047を+0度〜+180度に対応させ、ディジタルカウント2048〜4095を−180度〜−0度に対応させて、演算処理を行なうようにしてもよい。あるいは、別の例として、ラッチ回路50の入力データ又は出力データを2の補数に変換することにより、ディジタルカウント4095〜0を−360度〜−0度の負の角度データ表現に対応させるようにしてもよい。
【0042】
ところで、検出対象位置xが静止状態のときは特に問題ないのであるが、検出対象位置xが時間的に変化するときは、それに対応する位相角θも時間的に変動することになる。その場合、加算回路45及び減算回路46の各出力信号Y1,Y2の位相ずれ量θが一定値ではなく、移動速度に対応して時間的に変化する動特性を示すものとなり、これをθ(t)で示すと、各出力信号Y1,Y2は、
Y1=sin{ωt±d+θ(t)}
Y2=sin{ωt±d−θ(t)}
となる。すなわち、基準信号sinωtの周波数に対して、進相の出力信号Y1は+θ(t)に応じて周波数が高くなる方向に周波数遷移し、遅相の出力信号Y2は−θ(t)に応じて周波数が低くなる方向に周波数遷移する。このような動特性の下においては、基準信号sinωtの1周期毎に各信号Y1,Y2の周期が互いに逆方向に次々に遷移していくので、各ラッチ回路49,50における各ラッチデータD1,D2の計測時間基準が異なってくることになり、両データD1,D2を単純に回路51,52で演算するだけでは、正確な位相変動誤差「±d」を得ることができない。
【0043】
このような問題を回避するための最も簡単な方法は、図11の構成において、検出対象位置xが時間的に動いているときの出力を無視し、静止状態のときの出力のみを用いて、静止時における検出対象位置xを測定するように装置の機能を限定することである。すなわち、そのような限定された目的のために本発明を実施するようにしてもよいものである。
しかし、検出対象位置xが時間的に変化している最中であっても時々刻々の該検出対象直線位置xに対応する位相差θを正確に検出できるようにすることが望ましい。そこで、上記のような問題点を解決するために、検出対象直線位置xが時間的に変化している最中であっても時々刻々の該検出対象位置xに対応する位相差θを検出できるようにした改善策について図13を参照して説明する。
【0044】
図13は、図11の検出回路部41における誤差計算回路51と減算回路52の部分の変更例を抽出して示しており、他の図示していない部分の構成は図11と同様であってよい。検出対象直線位置xが時間的に変化している場合における該位置xに対応する位相差θを、+θ(t)および−θ(t)で表わすと、各出力信号Y1,Y2は前記のように表わせる。そして、夫々に対応してラッチ回路49,50で得られる位相ずれ測定値データD1,D2は、
D1=±d+θ(t)
D2=±d−θ(t)
となる。
この場合、±d+θ(t) は、θの時間的変化に応じて、プラス方向に0度から360度の範囲で繰り返し時間的に変化してゆく。また、±d−θ(t) は、θの時間的変化に応じて、マイナス方向に360度から0度の範囲で繰り返し時間的に変化してゆく。従って、±d+θ(t) ≠ ±d−θ(t) のときもあるが、両者の変化が交差するときもあり、そのときは±d+θ(t) = ±d−θ(t) が成立する。このように、±d+θ(t) = ±d−θ(t) が成立するときは、各出力信号Y1,Y2の電気的位相が一致しており、かつ、夫々のゼロクロス検出タイミングに対応するラッチパルスLP1,LP2の発生タイミングが一致していることになる。
【0045】
図13において、一致検出回路53は、各出力信号Y1,Y2ののゼロクロス検出タイミングに対応するラッチパルスLP1,LP2の発生タイミングが、一致したことを検出し、この検出に応答して一致検出パルスEQPを発生する。一方、時変動判定回路54では、適宜の手段により(例えば一方の位相差測定データD1の値の時間的変化の有無を検出する等の手段により)、検出対象位置xが時間的に変化するモードであることを判定し、この判定に応じて時変動モード信号TMを出力する。
誤差計算回路51と減算回路52との間にセレクタ55が設けられており、上記時変動モード信号TMが発生されていないとき、つまりTM=“0”すなわち検出対象直線位置xが時間的に変化していないとき、セレクタ入力Bに加わる誤差計算回路51の出力を選択して減算回路52に入力する。このようにセレクタ55の入力Bが選択されているときの図13の回路は、図11の回路と等価的に動作する。すなわち、検出対象直線位置xが静止しているときは、誤差計算回路51の出力データがセレクタ55の入力Bを介して減算回路52に直接的に与えられ、図11の回路と同様に動作する。
【0046】
一方、上記時変動モード信号TMが発生されているとき、つまりTM=“1”すなわち検出対象位置xが時間的に変化しているときは、セレクタ55の入力Aに加わるラッチ回路56の出力を選択して減算回路52に入力する。上記時変動モード信号TMが“1”で、かつ前記一致検出パルスEQPが発生されたとき、アンドゲート57の条件が成立して、該一致検出パルスEQPに応答するパルスがアンドゲート57から出力され、ラッチ回路56に対してラッチ命令を与える。ラッチ回路56は、このラッチ命令に応じてカウンタ42の出力カウントデータをラッチする。ここで、一致検出パルスEQPが生じるときは、カウンタ42の出力をラッチ回路49,50に同時にラッチすることになるので、D1=D2であり、ラッチ回路56にラッチするデータは、D1又はD2(ただしD1=D2)に相当している。
【0047】
また、一致検出パルスEQPは、各出力信号Y1,Y2のゼロクロス検出タイミングが一致したとき、すなわち「±d+θ(t) = ±d−θ(t)」が成立したとき、発生されるので、これに応答してラッチ回路56にラッチされるデータは、D1又はD2(ただしD1=D2)に相当しているが故に、
(D1+D2)/2
と等価である。このことは、
であることを意味し、ラッチ回路56にラッチされたデータは、位相変動誤差「±d」を正確に示しているものであることを意味する。
【0048】
こうして、検出対象直線位置xが時間的に変動しているときは、位相変動誤差「±d」を正確に示すデータが一致検出パルスEQPに応じてラッチ回路56にラッチされ、このラッチ回路56の出力データがセレクタ55の入力Aを介して減算回路52に与えられる。従って、減算回路52では、位相変動誤差「±d」を除去した検出対象位置xのみに正確に応答するデータθ(時間的に変動する場合はθ(t) )を得ることができる。
なお、図13において、アンドゲート57を省略して、一致検出パルスEQPを直接的にラッチ回路56のラッチ制御入力に与えるようにしてもよい。
また、ラッチ回路56には、カウンタ42の出力カウントデータに限らず、図13で破線で示すように誤差計算回路51の出力データ「±d」をラッチするようにしてもよい。その場合は、一致検出パルスEQPの発生タイミングに対して、それに対応する誤差計算回路51の出力データの出力タイミングが、ラッチ回路49,50及び誤差計算回路51の回路動作遅れの故に、幾分遅れるので、適宜の時間遅れ調整を行なった上で、誤差計算回路51の出力をラッチ回路56にラッチするようにするとよい。
また、動特性のみを考慮して検出回路部41を構成する場合は、図13の回路51及びセレクタ55と図1の一方のラッチ回路49又は50を省略してもよいことが、理解できるであろう。
【0049】
図14は、位相変動誤差「±d」を相殺することができる位相差検出演算法についての別の実施例を示す。
コイル部10の2次コイルSW1〜SW4から出力されるレゾルバタイプの前記第1及び第2の交流出力信号A,Bは、検出回路部60に入力され、図11の例と同様に、第1の交流出力信号A=sinθ・sinωtが位相シフト回路44に入力され、その電気的位相が所定量位相シフトされて、位相シフトされた交流信号A’=sinθ・cosωtが得られる。また、減算回路46では、上記位相シフトされた交流信号A’=sinθ・cosωtと上記第2の交流出力信号B=cosθ・sinωtとが減算され、その減算出力として、B−A’=cosθ・sinωt−sinθ・cosωt=sin(ωt−θ)なる略式で表わせる電気的交流信号Y2が得られる。減算回路46の出力信号Y2はゼロクロス検出回路48に入力され、ゼロクロス検出に応じてラッチパルスLP2が出力され、ラッチ回路50に入力される。
【0050】
図14の実施例が図11の実施例と異なる点は、検出対象位置に対応する電気的位相ずれを含む交流信号Y2=sin(ωt−θ)から、その位相ずれ量θを測定する際の基準位相が相違している点である。図11の例では、位相ずれ量θを測定する際の基準位相は、基準のサイン信号sinωtの0位相であり、これは、位置センサ10に入力されるものではないので、温度変化等によるコイルインピーダンス変化やその他の各種要因に基づく位相変動誤差「±d」を含んでいないものである。そのために、図11の例では、2つの交流信号Y1=sin(ωt+θ)及びY2=sin(ωt−θ)を形成し、その電気的位相差を求めることにより、位相変動誤差「±d」を相殺するようにしている。これに対して、図14の実施例では、コイル部10から出力される第1及び第2の交流出力信号A,Bを基にして、位相ずれ量θを測定する際の基準位相を形成し、該基準位相そのものが上記位相変動誤差「±d」を含むようにすることにより、上記位相変動誤差「±d」を排除するようにしている。
【0051】
すなわち、検出回路部60において、コイル部10から出力された前記第1及び第2の交流出力信号A,Bがゼロクロス検出回路61,62に夫々入力され、それぞれのゼロクロスが検出される。なお、ゼロクロス検出回路61,62は、入力信号A,Bの振幅値が負から正に変化するゼロクロス(いわば0位相)と正から負に変化するゼロクロス(いわば180度位相)のどちらにでも応答してゼロクロス検出パルスを出力するものとする。これは信号A,Bの振幅の正負極性を決定するsinθとcosθがθの値に応じて任意に正又は負となるため、両者の合成に基づき360度毎のゼロクロスを検出するためには、まず180度毎のゼロクロスを検出する必要があるためである。両ゼロクロス検出回路61,62から出力されるゼロクロス検出パルスがオア回路63でオア合成され、該オア回路63の出力が適宜の1/2分周パルス回路64(例えばT−フリップフロップのような1/2分周回路とパルス出力用アンドゲートを含む)に入力されて、1つおきに該ゼロクロス検出パルスが取り出され、360度毎のゼロクロスすなわち0位相のみに対応するゼロクロス検出パルスが基準位相信号パルスRPとして出力される。この基準位相信号パルスRPは、カウンタ65のリセット入力に与えられる。カウンタ65は所定のクロックパルスCKを絶えずカウントするものであるが、そのカウント値が、前記基準位相信号パルスRPに応じて繰返し0にリセットされる。このカウンタ65の出力がラッチ回路50に入力され、前記ラッチパルスLP2の発生タイミングで、該カウント値が該ラッチ回路50にラッチされる。ラッチ回路50にラッチしたデータDが、検出対象位置xに対応した位相差θの測定データとして出力される。
【0052】
コイル部10から出力される第1及び第2の交流出力信号A,Bは、それぞれ、A=sinθ・sinωt、B=cosθ・sinωt、であり、電気的位相は同相である。従って、同じタイミングでゼロクロスが検出されるはずであるが、振幅係数がサインsinθ及びコサインcosθで変動するので、どちらかの振幅レベルが0か又は0に近くなる場合があり、そのような場合は、一方については、事実上、ゼロクロスを検出することができない。そこで、この実施例では、2つの交流出力信号A=sinθ・sinωt、B=cosθ・sinωtのそれぞれについてゼロクロス検出処理を行ない、両者のゼロクロス検出出力をオア合成することにより、どちらか一方が振幅レベル小によってゼロクロス検出不能であっても、他方の振幅レベル大の方のゼロクロス検出出力信号を利用できるようにしたことを特徴としている。
【0053】
図14の例の場合、コイル部10のコイルインピーダンス変化等による位相変動誤差が、例えば「−d」であるとすると、減算回路46から出力される交流信号Y2は、図5の(a)に示すように、Y2=sin(ωt−d−θ)となる。この場合、コイル部10の出力信号A,Bは、角度θに応じた振幅値sinθ及びcosθを夫々持ち、図15の(b)に例示するように、A=sinθ・sin(ωt−d)、B=cosθ・sin(ωt−d)、というように位相変動誤差分を含んでいる。従って、このゼロクロス検出に基づいて図15の(c)のようなタイミングで得られる基準位相信号パルスRPは、本来の基準のサイン信号sinωtの0位相から位相変動誤差−dだけずれたものである。従って、この基準位相信号パルスRPを基準として、減算回路46の出力交流信号Y2=sin(ωt−d−θ)の位相ずれ量を測定すれば、位相変動誤差−dを除去した正確な値θが得られることになる。
【0054】
なお、コイル部10の配線長等の装置条件が定まると、そのインピーダンス変化は主に温度に依存することになる。そうすると、上記位相変動誤差±dは、この直線位置検出装置が配備された周辺環境の温度を示すデータに相当する。従って、図11の実施例のような位相変動誤差±dを演算する回路51を有するものにおいては、そこで求めた位相変動誤差±dのデータを温度検出データとして適宜出力することができる。従って、そのような本発明の構成によれば、1つのシリンダ位置検出装置によって検出対象の位置を検出することができるのみならず、該シリンダ本体内又は周辺環境の温度を示すデータをも得ることができる、という優れた効果を有するものであり、今までにない多用途タイプのシリンダストローク位置検出装置を提供することができるものである。勿論、温度変化等によるセンサ側のインピーダンス変化や配線ケーブル長の長短の影響を受けることなく、検出対象ピストンストローク位置に応答した高精度の検出が可能となる、という優れた効果をも奏するものである。また、図11や図14の例は、交流信号における位相差を測定する方式であるため、図10のような検出法に比べて、高速応答性にも優れた検出を行なうことができる、という優れた効果を奏する。
【0055】
図1の例では、磁気応答部材20の1ピッチの範囲におけるピストン部3の微妙なアブソリュート位置を検出することができるものである。この1ピッチを越えるピストン部3のストローク位置は、ストローク位置が該1ピッチを越える毎に、適宜のカウンタにおいて増減カウントすることによって求めることができる。この増減カウントは、コイル部10の出力信号が1ピッチ範囲で1巡する毎に、ピストン部3の前後移動方向に応じてプラス1またはマイナス1カウントすることにより行える。従って、例えば図16のような回路を設けて、コイル部10の出力信号に基づくディジタル計測値(θ)が最大値(M)から最小値(0)をクロスして変化したとき(M→0)、あるいはその逆に最小値(0)から最大値(M)をクロスして変化したとき(0→M)、を判定回路70,71で判定してプラス1またはマイナス1のカウントトリガ信号を生成し、これをカウンタ72でカウントするようにすればよい。この場合、カウンタ72のカウント値Npは、位置検出値の上位データとして利用できる。
【0056】
別の例として、図17に示すように、第2のコイル部として、1つのピックアップコイル80(1個のコイルまたは1組の1次・2次コイルからなる)を第1の支持体4の適宜位置に固定し、このピックアップコイル80が1個の磁気応答部材20を検知する毎にカウントトリガ信号を生成し、上記カウンタ72のカウントを行うようにしてもよい。その場合、プラス/マイナスはピストン部1の移動方向によって区別すればよい。図18の(a)は、磁気応答部材20を検知する毎に変化するピックアップコイル80の出力信号の一例を示し(交流成分を除去して示す)、(b)はこれに基づくカウント値の変化を例示する。
【0057】
本発明の実施にあたっては、ピストン部3のストロークエンドのような所定の定位置の検出のために、上記のような第2のコイル部、つまりピックアップコイル(1個のコイルまたは1組の1次・2次コイルからなる)を設けてもよい。上記ピックアップコイル80は、上記のようなカウントトリガ信号作成用に限らず、そのような定位置検出用に使用することができる。また、図17に示された別のピックアップコイル81(1個のコイルまたは1組の1次・2次コイルからなる)は、別の定位置検出コイルの例を示す。これらのピックアップコイル80,81は、磁気応答部材20の通過を検知する毎に対応する出力信号を発生するが、磁気応答部材20を検出しなくなると出力信号を発生しなくなる。すなわち、これらのピックアップコイル80,81のそばを、磁気応答部材20が通過している間は、図19(a)(c)のような磁気応答部材20の存在に応答する検出信号を繰り返し発生する。しかし、支持体5の端部にある最後の磁気応答部材20が通過した後は、検出信号を発生しなくなるので、この検出信号が途絶えたことを判定することにより、ピストン部3が所定の定位置に到達したことを検知することができる。この場合、支持体5そのものがピアノ線のような磁性体からなっていれば、該支持体5の端部の通過判定を、単純な電圧レベル比較によって行うことがやり易い。
【0058】
図20は、上記のような定位置検出のための判定回路例を示す。定位置検出用の各ピックアップコイル80,81の出力を整流回路82,83で整流してそのエンベロープレベルに応答する信号を出力する。図19(a)は或るピックアップコイル(例えば80)の検出信号のエンベロープレベル信号例すなわち整流回路82の出力例を示し、(c)は別のピックアップコイル(例えば81)の検出信号のエンベロープレベル信号例すなわち整流回路83の出力例を示す。比較器84,85は、これらの信号レベルと所定の基準レベルとを比較し、検出信号が途絶えたことを判定する。例えば、これらの入力信号レベルが0になったとき、ハイレベルの比較出力信号を生じる。このハイレベルの比較出力信号が、ピックアップコイル検出信号が途切れたことを検知する定位置検出信号に相当する。図19(b)は、(a)に示す信号の入力に応じて比較器84から出力される定位置検出信号を示す。図19(d)は、(c)に示す信号の入力に応じて比較器85から出力される定位置検出信号を示す。
【0059】
このような定位置検出用のピックアップコイル80,81は、必要に応じて1個のみ設けてもよいが、適宜複数設けてもよい。また、このような定位置検出用のピックアップコイルを所定間隔で(例えば磁気応答部材20の1ピッチに相当する間隔毎に)複数設けてもよい。そうすると、ピストンストロークの全長にわたってアブソリュート位置検出を行うことができる。図1,図17を見ればすぐわかるように、第1の支持体4の2重筒内のスペース4cは、十分に空いているので、第2のコイル部として複数のピックアップコイルを設けることには何の問題もない。なお、これらのピックアップコイルからの検出信号の発生状態によって、ピストン部3の移動方向も容易に判別できる。
【0060】
別の実施例として、図21に示すように、第2のコイル部として、軸方向に長いコイル90,91,92をスペース4c内の所定の長さ範囲Lにわたって設け、これらのコイルによって該範囲Lにわたるピストン部3のアブソリュート位置を検出を行うようにしてもよい。このコイル構成は、1つの1次コイル90と、2つの2次コイル91,92とからなっている。図の例では、1次コイル90が内側筒4aに巻かれ、1次コイル90の外側に2次コイル91が巻かれ、2次コイル91の外側に2次コイル92が巻かれているが、この順序はこれに限らない。2つの2次コイル91,92は、同じコイル長Lからなっていて、同じ範囲Lをカバーしている。以下説明するように、この範囲Lが、これらのコイル90,91,92によるアブソリュート位置検出可能範囲である。磁気応答部材20を搭載した支持体5は、この範囲Lに侵入し、ピストン部3の動きに連動して移動する。明らかなように、この範囲Lにおける磁気応答部材20を搭載した支持体5の侵入量に応じて、コイル90,91,92の磁気結合度が変化し、該支持体5の侵入量すなわちピストン部3のストローク位置に対応する出力信号を2次コイル91,92から得ることができる。
【0061】
明らかなように、1つの2次コイル91(又は92)からは、磁気応答部材20を搭載した支持体5の侵入量、すなわち範囲L内のピストン部3のストローク位置に対応するピーク電圧レベルを持つ交流信号が出力される。最も単純には、この1つの2次コイル91(又は92)の出力信号のピーク電圧レベルを測定して、これを該範囲Lにわたるピストン部3のアブソリュート位置検出情報としてよい。そのような簡易なロング・アブソリュート位置検出情報を得るためには、2次コイル91,92は2個設ける必要は無く、1つのみでよい。そのような簡易な実施の形態も、勿論、本発明の範囲に含まれる。
しかし電圧レベル値を位置検出情報とする方式では、温度変化等によって電圧レベル値が変動するので、誤差が出易いという欠点がある。
【0062】
そのような欠点を改善するために、1次コイル90に対応して2つの2次コイル91,92を設け、これらの各2次コイル91,92に対応してバランス用コイル部93,94を夫々設け、各2次コイル91,92の出力信号に違いが出るようにして、電気的位相の測定に基づくロング・アブソリュート位置検出ができるようにしている。
図22は、図21の各コイルの接続例を示す回路図である。各バランス用コイル部93,94は、夫々1次コイル93p,94pと2次コイル93s,94sの対からなる。各1次コイル93p,94pは1次コイル90と同相接続され、所定の交流信号(例えばsinωtとする)によって励磁される。検出対象範囲Lにわたって設けられた一方の2次コイル91に対応するバランス用コイル部93の2次コイル93sは、該2次コイル91とは逆相に接続される。他方の2次コイル92に対応するバランス用コイル部94の2次コイル94sも、該2次コイル92とは逆相に接続される。検出対象範囲Lにわたって設けられた各2次コイル91,92の巻き数は同じであり、一方、バランス用の2次コイル93s,94sは、夫々適切に巻き数が異なるように設定される。なお、バランス用コイル部93,94の位置までは、支持体5(すなわち磁気応答部材20)の先端は侵入しない。
【0063】
以上の構成により、検出範囲Lにおけるコイル91,92への磁性体(すなわち第2の支持体5に搭載された磁気応答部材20)の侵入量に応じて、各2次コイル91,92の出力信号O1,O2のレベルが互いに90度位相のずれた三角関数特性の一部範囲の特性(概ね90度範囲の特性)を示すように、バランス用の2次コイル93s,94sの設定によって、調整することができる。例えば、コイル91と93sの差動出力信号O1はサイン関数特性を示し(これを便宜上、sinα・sinωtで示す)、コイル92と94sの差動出力信号O2はコサイン関数特性を示す(これを便宜上、cosα・sinωtで示す)ように設定することができる。ただし、検出対象範囲Lに対応する角度αの範囲は、ほぼ90度程度の範囲である。これは、構造上、360度全部の変化は得られないためである。なお、設定の仕方によっては、検出対象範囲Lに対応する角度αの範囲を、90度以上の範囲に拡大することもできなくはないが、90度程度の範囲に設定するのが確実である。更に、検出可能な90度の範囲のうち、安定した検出が可能な90度未満のより狭い角度範囲に検出対象範囲Lを対応づけて検出処理をするようにしてもよい。なお、αは検出対象範囲Lにおけるピストン部3の現在位置に対応することは言うまでもない。
このような構成によって、各2次コイル91,92から出力される信号O1,O2は、ちょうど、公知のレゾルバの出力のような2相の信号となる。
O1=sinα・sinωt
O2=cosα・sinωt
【0064】
明らかなように、この出力信号O1,O2は、前述の第1のコイル部10の2つの出力交流信号A=sinθ・sinωt,B=cosθ・sinωtと同じフォームとなり、図10乃至図14に示した位相検出タイプの検出回路部を使用して、上記αを電気的位相角としてデイジタル測定することができる。そのための検出回路部の図示と説明は、同じものの繰り返しになるので省略する。なお、この場合、θのための検出回路部と、αのための検出回路部が別々に必要であるが、各検出回路部のハードウェア回路において共用できるものは共用して、時分割処理によって夫々のディジタル測定を行うようにすることも可能であるのは勿論である。
【0065】
こうして、検出対象範囲Lにおけるピストン部3の現在位置を示すアブソリュートデータを位相角αのディジタル測定によって求めることができる。勿論、長い範囲Lがほぼ90度の角度範囲に対応しているので、第1のコイル部10の出力信号A,Bに基づく、短い範囲pが360度角度範囲に対応しているθの位相測定に基づく検出データよりは、検出分解能は粗いものとなる。しかし、短い範囲p内での精密なアブソリュート位置検出分解能は第1のコイル部10の出力信号A,Bに基づき前述の通り得られるので、各2次コイル91,92から出力される信号O1,O2に基づき得られる長い範囲L内でのアブソリュート位置検出分解能は粗いものであってさしつかえない。すなわち、複数個の磁気応答部材20の配設ピッチの1ピッチ分の長さpを単位とするアブソリュート位置検出データを得ることができればよい。
【0066】
これによって、コイル部10から得られるθに対応するディジタルアブソリュート位置検出データと、追加のコイル90,91,92から得られるαに対応するディジタルアブソリュート位置検出データとの組み合わせによって、ピストン部3のストロークのほぼ全長にわたるアブソリュート位置検出データを得ることができる。
なお、磁気応答部材20は支持体5に沿って断続的に設けられているので、検出範囲Lにおけるコイル91,92への支持体5の侵入に伴うコイル90,91,92のインダクタンス変化(結合係数変化)は、きれいなサインカーブ又はコサインカーブとはならず、多少凹凸を伴うが、これは出力波形を適宜なまらせる処理をすれば問題ないし、また、そのような処理をしなくても、αの測定精度は上述の通り粗いものであってさしつかえないので、一向に問題のない測定を行うことができる。
【0067】
なお、上記実施例では、第1の支持体4が2重筒4a,4bからなっているが、この構造はこれに限らない。例えば1つの筒4aのみとした場合は、コイル部10の防水処理や配線引き出し処理等を適切に行えばよい。しかし、図示のような2重筒4a,4bの構造は、コイル部10の防水処理や配線引き出し処理等を容易に行うことができるので、有利である。また、第1及び第2の支持体4,5の構造は、上記実施例のような筒体とその中に侵入した棒状体という関係からなるものに限らず、コイル部10と磁気応答部材20とを夫々適切に配置しうる構造であれば任意のものでよい。
また、上記実施例では、シリンダ本体2側の支持体4にコイル部10を設け、ピストン部3側の支持体5に磁気応答部材20を設けているが、この関係は、逆であってもよい。その場合は、ピストン部3の側にコイル部10の配線引き出し用のコネクタ8を設けなければならないので、それが可能であればさしつかえない。しかし、図示実施例のようにシリンダ本体2側の支持体4にコイル部10を設けるようにした方が、シリンダ本体2が固定されていることにより、コネクタから出た配線が動かないので有利である。
【0068】
また、上記実施例では、磁気応答部材20は複数個設けられているが、これは1個でもよい。また、コイル部として、レゾルバ出力を得るためのコイル部10を設けずに、定位置検出用のピックアップコイル80又は81のみを設けるようにしてもよい。
また、精密な検出分解能を要求しない場合は、図21の例において、コイル部10を省略し、長いコイル90,91,92とそれに対応するバランス用コイル部93,94のみを設けるようにしてもよい。図23は、その場合の一例を示す。その場合、所定ピッチpの磁気応答部材20を複数個繰り返し設ける必要はなく、支持体5そのものが1つの磁気応答部材(20)であってよい。すなわち、支持体5として磁性体金属を使用すれば、それがそのまま1つの磁気応答部材(20)となる。図23では、コイル部10が省略された分だけ、各コイル90,91,92の長さL’が図21の例よりも長くなっている。その動作は、図21,図22を参照して説明したものと同じである。
【0069】
図23のようなコイル配置では、得られるインダクタンス変化がサイン関数にたとえると0度〜90度の範囲に限定されるので、位置検出分解能は、上述の通り、粗いものとなる。図24は、この点を改善し、長い範囲でのアブソリュート位置を1個の検出部を用いて精密な分解能で検出することができる例を示す。図24では、シリンダ本体2とピストン部3の図示を省略し、第1の支持体4と第2の支持体5を含む検出器の構成のみを抽出して示している。
図24において、シリンダ本体2の側に設けられる第1の支持体4は、後述するような所定の配置からなる複数の1次及び2次コイルを所定の検出範囲Lにわたって含んでいる。ピストン部3の側に設けられる第2の支持体5すなわち線状の磁気応答部材20は、検出範囲Lと同程度の所定長を持ち、その端部から検出範囲L内に進入したり、退出したりするもので、磁性体からなっている(又は導電体でもよい)。支持体4においては、所定の検出範囲Lに対応して、所望の三角関数の1周期(0度〜360度)にわたるインダクタンス変化が支持体5の先端の進入位置に応じて得られるように、複数のコイルが、その巻数と巻方向が適宜制御されて、設けられている。図25(a)〜(d)はサイン関数特性のインダクタンス変化を得る例を示し、図26(a)〜(d)はコサイン関数特性のインダクタンス変化を得る例を示す。換言すれば、このようなインダクタンス変化は、支持体5(磁気応答部材20)の一方的な進入度合いに従う累積的なインダクタンスを示す(正方向巻きのインダクタンス分は加算され、逆方向巻きのインダクタンス分は減算される)。
【0070】
図25(a)は、所望のサイン出力信号A=sinθ・sinωtの出力電圧レベルを示し、横軸は、支持体5(磁気応答部材20)の先端の進入位置Xを示し、前述と同様に、θはXに対応する(比例する)。
図25(b)は、横軸正方向への磁性体の進入に伴い、図25(a)のようなサイン特性の合成インダクタンス特性を累積的に得ることができるような、Lの範囲における各点でのコイル巻数を縦軸にプロットした一例を示す。xマークのプロット位置は巻数N、oマークのプロット位置は巻数N/2である。勿論、プロット位置は、(b)に図示した関数線に沿う位置のどこでもよく、また、巻数もそのプロット位置に対応した巻数であってよい。なお、このプロット例は、理論値ではなく、経験値である、従って、所望するインダクタンス変化(sinθやcosθ)が、累積的に得られるように、試行錯誤的に、任意の位置で任意の巻数としてよい。
図25(c)は、巻数Nの4つの2次コイル101,102,103,104を図25(b)のxマークの各プロットに対応してLの範囲内で分散して配置してコイル部10を構成する例を示している。各コイル101〜104の出力は加算的に合成されて、所望のサイン出力信号A=sinθ・sinωtが得られる。−Nの“マイナス”は巻方向が逆であることを示す。磁性体からなる支持体5(磁気応答部材20)の先端が、一番左側の2次コイル101から順に右方向に移動していくと、2次コイル101から順に、102,103,104と磁性体が進入していくので、累積的に出力信号が得られ、図25(a)のようなLの範囲で1回転するサイン特性の出力信号A=sinθ・sinωtが得られる。
図25(d)は、2次コイルの配置をより密にして、出力信号A=sinθ・sinωtのサインカーブがより滑らかになるように、コイル部10を構成する例を示している。すなわち、xマークのプロット点に対応して巻数Nの2次コイルを配置し、oマークのプロット点に対応して巻数N/2の2次コイルを配置する。勿論、これらの巻数NやN/2は、厳密なものではなく、所望する理想的なインダクタンス変化(sinθやcosθ)が、累積的に得られるように、試行錯誤的に、これらの巻数を適宜増減してよい。
【0071】
図26(a)〜(d)は、所望のコサイン出力信号B=cosθ・sinωtを得るための、2次コイル配置を説明するものであり、図25(a)〜(d)の例に比べて90度(すなわちL/4の距離だけ)ずれて配置されている。図26(c)は、図25(c)と同様に巻数Nの4つの2次コイル201,202,203,204を配置する例を示し、図26(d)は、図25(d)と同様に2次コイルの配置をより密にして、出力信号B=cosθ・sinωtのコサインカーブがより滑らかになるようにした例を示す。なお、実際は、図26(c)の最左側に示すように補助の2次コイル205を付加するものとする。この補助の2次コイル205は、0度の位置(原点)でのコサイン特性のインダクタクンスの立上りを補償するものである。勿論、この補助コイル205は1個に限らず、xマークとoマークのプロット位置にほぼ対応して複数設けてよい。
ところで、図25(c)と図26(c)のコイル配置を採用した場合は、サイン出力用2次コイル101〜104とコサイン出力用2次コイル201〜204が同じ位置に来ることになるが、これは2重巻きにすればよい。あるいは、所定の位置にサイン出力用2次コイル101〜104を配置し、その両側に密接してそれぞれ2分割したコサイン出力用2次コイル201〜204を配置すればよい。
【0072】
第1の支持体4において、コイル部10には、サイン出力用の2次コイル101〜104とコサイン出力用の2次コイル201〜204が夫々配置され、更に、適当な配置で(例えば各2次コイルに対応して)励磁用の1次コイルを配置して1相の交流信号sinωtで励磁する。これによって、図1,図2等の例と同様に、サイン、コサインのレゾルバタイプの2相出力信号A=sinθ・sinωt、B=cosθ・sinωtがコイル部10から得られる。この2相出力信号A,Bから検出対象位置xに対応する位相角θのデータを求めるやり方は、上述と同様であってよい。なお、前述と同様に、同相励磁される複数の1次コイルを各2次コイルの中間に介在させて配置すると、非常に精度の良い検出が行えることが実験的に確かめられている。例えば、図25,図26の(d)の例の場合、N/2,N,N/2の3つの2次コイルを例にとると、それぞれの中間に2個と両側に2個の、合計4個の1次コイルを配置すると、励磁による磁界の分布が均一になり、検出精度が良くなる。
こうして、図24〜図26の例によれば、ピストンストロークの全長にわたる長い範囲Lでのアブソリュート位置を1個の検出部(第1及び第2の支持体4,5に設けたコイル部10と磁気応答部材20からなる検出部)を用いて精密な分解能で(Lの範囲を1回転分の位相変化に相当する分解能で)検出することができる。
【0073】
ピストンストロークの全長にわたる長い範囲Lでのアブソリュート位置を検出可能にする別の例として、図27(a),(b)に示すように、1ピッチpの長さの異なる2つの検出部を1つのロッド210の両側に設け、バーニア原理に基づいて1ピッチを越える直線位置xのアブソリュート値を検出するようにしてもよい。図27(a)はロッド状の支持体5の軸方向断面略図、(b)は径方向断面略図である。主尺に相当する第1の検出部は、例えば、磁性体の支持体5の長さ方向に凹部21を繰り返し設けることにより、残された凸部が所定ピッチP1で繰り返す磁気応答部材20として形成されるようにしたものであり、対応するコイル部10−1は、4つの極11〜14を含むものである。
各極11,12,13,14は、コイル部10−1における各相のコイルをそれぞれ分離して配置したものである。各極11,12,13,14は、それぞれの鉄心(図示せず)に1次コイル及び2次コイルを同軸状に巻回してなるもので、直線変位方向に所定の間隔で(1ピッチP1を4等分した間隔で)、配置される。図2との対応関係を示すと、例えば、極11をサイン相(s)とすると、この極11には1次コイルPW1と2次コイルSW1を同軸状に巻回し、極12をコサイン相(c)とすると、この極12には1次コイルPW2と2次コイルSW2を同軸状に巻回し、極13をマイナス・サイン相(/s)とすると、この極13には1次コイルPW3と2次コイルSW3を同軸状に巻回し、極14をマイナス・コサイン相(/c)とすると、この極14には1次コイルPW4と2次コイルSW4を同軸状に巻回するようにすればよい。図示を省略しているが、各極11〜14の鉄心は共通の基部に固定され、所定の相互配置関係が固定される。
【0074】
副尺に相当する第2の検出部は、第1の検出部と同様に、磁性体からなるロッド状の支持体5長さ方向に凹部21’を繰り返し設けることにより、残された凸部が所定ピッチP2で繰り返す磁気応答部材20’として形成されるようにしたものであり、対応するコイル部10−2は、上記と同様に4つの極11〜14を含むものである。ただし、両検出部のピッチP1,P2が適量だけ相違している。各検出部の位置検出データθ1,θ2をバーニア演算処理することにより、両ピッチP1,P2の最小公倍数の範囲でアブソリュート位置検出値を得ることができる。従って、ピストンストロークの全長にわたる長い範囲Lでのアブソリュート位置を検出することができる。勿論、この場合は、第2の支持体5が回転せずに直線変位のみし得るようにピストン部3を適切にガイドするものとする。
【0075】
なお、上記各実施例において、コイル部10と磁気応答部材20による検出部の構成を、公知の位相シフトタイプ位置検出器のように構成してもよい。例えば、図2に示されたコイル部10において、1次コイルと2次コイルの関係を逆にして、サイン相のコイルSW1とマイナス・サイン相のコイルSW3を互いに逆相のサイン信号sinωt,−sinωtによって励磁し、コサイン相のコイルSW2とマイナス・コサイン相のコイルSW4を互いに逆相のコサイン信号cosωt,−cosωtによって励磁し、コイルPW1〜PW5から検出対象位置xに応じた電気的位相シフトθを含む出力信号sin(ωt−θ)を得るようにしてもよい。
あるいは、コイル部10と磁気応答部材20による検出部の構成を、公知の差動トランス型の直線位置検出器のように構成してもよい。
【0076】
あるいは、上記各実施例において、各コイル部の構成として、1次コイルと2次コイルの対を含むように構成せずに、1つのコイルのみによって構成し、該1つのコイルを所定の交流信号によって定電圧駆動し、該コイルへの磁性体(磁気応答部材20)の侵入量に応じて生じるインダクタンス変化に基づく電流変化を計測することにより、ピストン部3の位置検出データを得るようにしてもよい。その場合、該電流変化に応答する出力信号の振幅変化を測定する方法、あるいは該電流変化に応答するコイル各端部での出力信号間の位相変化を測定する方法などによって所要の測定を行うことができる。
その他、コイル部10と磁気応答部材20による検出部の構成は任意の変形が可能である。
そのほか、上記実施例で示した新規かつ有意義な構成の一部を選択的に採用してシリンダ位置検出装置を構成してもよい。
【0077】
【発明の効果】
以上の通り、本発明によれば、ピストン部の内部に形成された空間内に第1及び第2の支持体が収納されて、シリンダ本体に対するピストン部の相対的直線変位に応じて該第1及び第2の支持体の相対的位置が変化するようになっており、かつ、検出部の磁気応答部材とコイル部を両支持体に夫々配設することにより、シリンダ本体に対するピストン部の相対的直線変位に応じて磁気応答部材とコイル部の相対位置が変化し、かくして、シリンダ本体に対するピストン部の直線位置に対応する検出信号がコイル部から得られるようになっているので、ピストンロッドの外周に格別の加工をする必要が無いものとなっており、かつ、検出部の磁気応答部材とコイル部は支持体に夫々配設する構成であり、該支持体を介在させてピストン及びシリンダ本体に取り付けるようにしているので、サイズの異なるシリンダ装置においても検出装置各要素(つまり磁気応答部材20とコイル部10)の共用化を容易に図ることができ、かつ、摺動摩耗の心配のない耐久性に富んだシリンダ位置検出装置を提供することができる。また、小型かつシンプルな構造を持つと共に、広い範囲にわたってシリンダロッド位置検出の可能な誘導型のシリンダ位置検出装置を提供することができる。更には、製造が極めて容易になるようなシンプルな構造を持つシリンダ位置検出装置を提供することができる。
【0078】
また、第1及び第2の支持体の一方を筒状体とし、他方を棒状体として、該棒状体が筒状体の筒内に侵入している構成とした場合は、限られたスペースでの第1及び第2の支持体の相互変位関係を円滑にし、かつコイル部の配設を容易にすることができる。更に、支持体を構成する筒状体を2重筒として、該2重筒の筒間スペース内にコイル部を気密又は液密に収納してなるようにした場合は、電気回路の一部であるコイル部を、シリンダ本体内の圧力流体から気密又は液密に保護する上で有利である。
【0079】
更に、検出部の好ましい実施形態例として、コイル部が、1相の交流信号によって励磁される1次巻線及び直線変位方向に関して異なる位置に配置された複数の2次巻線を含み、磁気応答部材が、所定の磁気応答特性を持つ磁気応答部材を直線変位方向に沿って所定のピッチで複数繰り返して設けて成り、前記相対的変位に応じて前記部材の前記巻線部に対する対応位置が変化することにより前記1次巻線と各2次巻線間の磁気結合が前記ピストン部の直線位置に応じて変化され、これにより、該直線位置に応じて振幅変調された誘導出力交流信号を、各2次巻線の配置のずれに応じて異なる振幅関数特性で、各2次巻線に誘起させるようにした場合は、1相の交流信号によって励磁する構成であるため、励磁回路の構成が簡単である、という利点を有し、また、磁気応答部材において、所定の磁気応答特性を持つ磁気応答部材を直線変位方向に沿って所定のピッチで複数繰り返して設けて成るので、2次巻線に誘起される誘導出力交流信号として、該磁気応答部材の繰り返しピッチを1サイクルとして周期的に変化する信号を得ることができ、検出可能範囲を拡大することができるものである。
【0080】
また、前記検出部から出力される前記直線位置に応じて振幅変調された前記誘導出力交流信号として、サイン関数の振幅関数を持つ第1の出力交流信号とコサイン関数の振幅関数を持つ第2の出力交流信号とを出力するようにし、前記第1の出力交流信号と第2の出力交流信号を入力し、前記直線位置を示す前記サイン関数とコサイン関数の位相値を検出する位相検出回路を更に具備するようにした場合は、電気的位相の測定に基づいて精度のよいアブソリュート位置検出が可能であり、このような位相検出回路として、レゾルバ用の位相検出回路として従来知られたR−D(レゾルバ−ディジタル)コンバータを使用することができるし、その他の方式の位相検出回路を用いることもでき、そのようなレゾルバタイプの位相検出回路を使用することができることは、従来の位相シフトタイプの誘導型直線位置検出装置が持っていたような、温度変化等によって1次及び2次巻線のインピーダンスが変化することにより2次出力信号における電気的位相ずれに誤差が生じるという欠点を除去することができるので、好都合である。
更に、コイル部において、定位置検出用のピックアップコイルを適宜設けることにより、定位置の検出若しくは粗い精度でのピストンロッド位置検出を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るシリンダ位置検出装置の一実施例を示す軸方向断面図。
【図2】 図1において検出部を構成しているコイル部と磁気応答部材の構成例を拡大して示す一部切欠き斜視図。
【図3】 図2におけるコイル部の構成例を示す回路図。
【図4】 図2における磁気応答部材の変更例を示す斜視図。
【図5】 図2における磁気応答部材の別の変更例を示す側面略図。
【図6】 図2における磁気応答部材の更に別の変更例を示す側面略図。
【図7】 図2における磁気応答部材の更に別の変更例を示す一部断面側面略図。
【図8】 図2におけるコイル部のコイル配置の別の例を示す略図。
【図9】 図2におけるコイル部のコイル配置の更に別の例を示す略図。
【図10】 本発明に係るシリンダ位置検出装置に適用可能な位相検出タイプの測定回路の一例を示すブロック図。
【図11】 本発明に係るシリンダ位置検出装置に適用可能な位相検出タイプの測定回路の別の例を示すブロック図。
【図12】 図11の動作説明図。
【図13】 図11の回路に付加される変更例を示すブロック図。
【図14】 本発明に係るシリンダ位置検出装置に適用可能な位相検出タイプの測定回路の更に別の例を示すブロック図。
【図15】 図14の動作説明図。
【図16】 本発明に係るシリンダ位置検出装置において磁気応答部材の1ピッチ単位の変位を判定しカウントする回路構成例を示すブロック図。
【図17】 図1の実施例に対する変形例を示す軸方向断面図。
【図18】 磁気応答部材の1ピッチ単位の変位をカウントように構成する場合の図17の動作説明図。
【図19】 任意の定位置を検出するように構成する場合の図17の別の動作説明図。
【図20】 図19に示されたような動作を実現するために図17の装置に組み合わせられる判定用の回路の一例を示すブロック図。
【図21】 本発明に係るシリンダ位置検出装置の別の実施例を示す軸方向断面図。
【図22】 図21における各コイルの接続例を示す回路図。
【図23】 本発明に係るシリンダ位置検出装置の更に別の実施例を示す軸方向断面図。
【図24】 本発明に係るシリンダ位置検出装置の更に別の実施例を示す概略斜視図。
【図25】 図24における第1の支持体内のコイル部に設けるサイン関数特性の出力信号を生じるための2次コイルの配置例と巻数例を示す図。
【図26】 図24における第1の支持体内のコイル部に設けるコサイン関数特性の出力信号を生じるための2次コイルの配置例と巻数例を示す図。
【図27】 本発明に係るシリンダ位置検出装置の更に別の実施例をもので、磁気応答部材の1ピッチを超える長い範囲の位置をバーニア原理に基づいてアブソリュートで検出する構成例を示す軸方向断面略図及び径方向断面略図。
【符号の説明】
1 シリンダ装置
2 シリンダ本体
3 ピストン部
4 第1の支持体
4a,4b 筒
5 第2の支持体
6 ピストン部内の空間
10 コイル部
PW1〜PW5 1次コイル
SW1〜SW4 2次コイル
20 磁気応答部材
41,60 検出回路部
80,81 ピックアップコイル
90 1次コイル
91,92 2次コイル
93,94 バランス用コイル部
Claims (5)
- シリンダ本体と、このシリンダ本体に対して相対的に直線変位可能に挿入されたピストン部とを含むシリンダ装置において、
前記シリンダ本体の内部において、該シリンダ本体の閉鎖端側にて一端が片持ち支持され、他端が該シリンダ本体の開口端の方に延びた、第1の支持体と、
前記ピストン部の内部において、前記第1の支持体の侵入を許すように設けられた空間と、
前記ピストン部の内部に設けられた前記空間内において、一端が片持ち支持され、他端が前記シリンダ本体の閉鎖端の方に延びた、第2の支持体と、
コイル部及びこのコイル部に対して相対的に変位可能に非接触的に配置される磁気応答部材を含み、該磁気応答部材の該コイル部に対する相対的位置に応じた検出信号を前記コイル部から出力するものであって、前記第1及び第2の支持体の一方に該コイル部が配設され、他方に該磁気応答部材が配設されてなる検出部と
を具備し、前記ピストン部の前記シリンダ本体に対する相対的直線変位に伴って前記第1及び第2の支持体に夫々配設された前記磁気応答部材とコイル部との相対的位置が変位し、これにより該ピストン部の直線位置に対応する前記検出信号が出力されるようにしてなるものであり、
前記コイル部は、基準交流信号によって励磁され、前記ピストン部の直線位置に対応する第1の関数値を振幅係数として振幅変調された第1の交流出力信号及び前記ピストン部の直線位置に対応する第2の関数値を振幅係数として振幅変調された第2の交流出力信号を出力し、
更に、
前記第1及び第2の交流出力信号に基づき、前記ピストン部の直線位置に対応して正及び負の一方向にシフトされた電気的位相角を持つ第1の電気的交流信号と、同じ前記ピストン部の直線位置に対応して正及び負の他方向にシフトされた電気的位相角を持つ第2の電気的交流信号とを生成する回路と、
前記基準交流信号と前記第1の電気的交流信号との電気的位相差を測定して第1の位相データを求める手段と、
前記基準交流信号と前記第2の電気的交流信号との電気的位相差を測定して第2の位相データを求める手段と、
前記第1及び第2の位相データに基づき前記ピストン部の直線位置に対応する位置検出データを算出する手段と
を備えることを特徴とするシリンダ位置検出装置。 - 前記第1及び第2の支持体の一方が筒状体からなっており、他方が棒状体からなっていて、該棒状体が前記筒状体の筒内に侵入している請求項1に記載のシリンダ位置検出装置。
- 前記筒状体は、2重筒からなっていて、該2重筒の筒間スペース内に前記コイル部を気密又は液密に収納してなる請求項2に記載のシリンダ位置検出装置。
- 前記棒状体はピアノ線からなっていて、このピアノ線の周囲に前記所定のピッチで複数繰り返して配置してそれぞれをかしめ止めすることによって該芯部に固定した金属片からなる磁気応答部材とを含んで構成されるものである請求項2または3に記載のシリンダ位置検出装置。
- 前記検出部のコイル部は、1相の交流信号によって励磁され、所定の範囲における検出対象の変位に対してそれぞれ異なる所定の振幅関数に従う出力信号を生ずるように配置された少なくとも2グループのコイルを含み、前記コイルの第1のグループは、サイン関数値を振幅係数として振幅変調された前記第1の交流出力信号を出力し、前記コイルの第2のグループは、コサイン関数値を振幅係数として振幅変調された前記第2の交流出力信号を出力することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のシリンダ位置検出装置。
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