JP3749955B2 - 誘導型2次元位置検出装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、誘導型2次元位置検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来知られた誘導型位置検出装置には、直線位置検出装置としては差動トランスがあり、回転位置検出装置としてはレゾルバがある。差動トランスは、1つの1次巻線を1相で励磁し、差動接続された2つの2次巻線の各配置位置において検出対象位置に連動する鉄心コアの直線位置に応じて差動的に変化するリラクタンスを生ぜしめ、その結果として得られる1相の誘導出力交流信号の電圧振幅レベルが鉄心コアの直線位置を示すようにしたものである。レゾルバは、複数の1次巻線を1相で励磁し、サイン相取り出し用の2次巻線からサイン相の振幅関数特性を示す出力交流信号を取り出し、コサイン相取り出し用の2次巻線からコサイン相の振幅関数特性を示す出力交流信号を取り出すようにしたものである。この2相のレゾルバ出力は公知のR/Dコンバータといわれる変換回路を用いて処理し、検出した回転位置に対応する位相値をディジタル的に測定することができる。
また、サイン相とコサイン相のような複数相の交流信号によって複数の1次巻線を夫々励磁し、検出対象直線位置又は回転位置に応じて該交流信号を電気的に位相シフトした出力交流信号を出力し、この出力交流信号の電気的位相シフト量を測定することにより、検出対象直線位置又は回転位置をディジタル的に測定する技術も知られている(例えば、特開昭49−107758号、特開昭53−106065号、特開昭55−13891号、実公平1−25286号など)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来知られた誘導型位置検出装置は、すべて直線位置や回転位置のような1次元位置を測定するものであり、2次元位置を測定するものは存在していなかった。
一般に、誘導型位置検出装置は、構造的に非接触であり、また、コイルと鉄片等の簡単な構成により、簡便かつ安価に製造することができるので、これを2次元位置検出装置に適用できれば、広い応用・用途が見込まれる。例えば、1つの操作子のX−Y方向の2次元的動きを検出する装置に応用すれば、マウスのような既存の2次元操作子としても構成できるし、その他従来はなかった2次元操作子としての応用・用途が考えられる。
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、誘導型2次元位置検出装置を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る誘導型2次元位置検出装置は、X軸方向に沿って配置された複数の極を含み、各極は交流励磁に応じて出力を生じる巻線部を有しているX軸検出部と、Y軸方向に沿って配置された複数の極を含み、各極は交流励磁に応じて出力を生じる巻線部を有しているY軸検出部とを、2次元面上で交差して配置してなる基部と、前記基部に対してX及びY軸方向に相対的に変位するものであり、所定の磁気応答材質を含んで構成されてなる磁気応答部材とを一体的に具備してなり、検出対象たる2次元運動を前記磁気応答部材又は前記基部に伝達し、前記基部の2次元面に対する前記磁気応答部材の相対的位置に応じたX軸成分位置検出信号とY軸成分位置検出信号とを前記X軸検出部及びY軸検出部から夫々出力することにより前記2次元運動に応じた検出を行なうことを特徴とするものであって、前記X軸検出部は、X軸方向に沿って配置された複数の極を構成する第1の巻線グループで構成され、前記第1の巻線グループは、前記X軸方向に沿う前記磁気応答部材の相対的位置に関してサイン相、コサイン相、マイナスサイン相及びマイナスコサイン相の特性を示す4極の巻線で構成され、サイン相とマイナスサイン相の出力を差動合成してサイン相の振幅関数特性を示す出力交流信号を生ずるよう配置され、また、コサイン相とマイナスコサイン相の出力を差動合成してコサイン相の振幅関数特性を示す出力交流信号を生ずるよう配置されてなり、更に、これらのサイン相及びコサイン相の出力交流信号に基づき前記磁気応答部材の相対的位置に応じたX軸成分位置検出信号を生成する第 1 の検出手段を該第1の巻線グループに対応して具備し、前記Y軸検出部は、Y軸方向に沿って配置された複数の極を構成する第2の巻線グループで構成され、前記第2の巻線グループは、前記Y軸方向に沿う前記磁気応答部材の相対的位置に関してサイン相、コサイン相、マイナスサイン相及びマイナスコサイン相の特性を示す4極の巻線で構成され、サイン相とマイナスサイン相の出力を差動合成してサイン相の振幅関数特性を示す出力交流信号を生ずるよう配置され、また、コサイン相とマイナスコサイン相の出力を差動合成してコサイン相の振幅関数特性を示す出力交流信号を生ずるよう配置されてなり、更に、これらのサイン相及びコサイン相の出力交流信号に基づき前記磁気応答部材の相対的位置に応じたY軸成分位置検出信号を生成する第2の検出手段を該第2の巻線グループに対応して具備することを特徴とする。
【0005】
本発明によれば、前記基部と磁気応答部材とを一体的に具備してなる単体構成の2次元位置検出装置が提供され、検出対象たる2次元運動が前記磁気応答部材又は前記基部に伝達されることで両者の相対的位置関係が2次元的に変化し、基部の2次元面に対する磁気応答部材の相対的位置に応じてX軸検出部及びY軸検出部の各極の巻線部の出力が生じ、これに応じたX軸成分位置検出信号とY軸成分位置検出信号とが前記X軸検出部及びY軸検出部から夫々得られ、両X,Y軸成分位置の組合せによって2次元位置の検出がなされる。ここで、X軸検出部は、X軸方向に沿って配置された複数の極を構成する第1の巻線グループで構成され、該第1の巻線グループは、X軸方向に沿う前記磁気応答部材の相対的位置に関してサイン相、コサイン相、マイナスサイン相及びマイナスコサイン相の特性を示す4極の巻線で構成され、サイン相とマイナスサイン相の出力を差動合成してサイン相の振幅関数特性を示す出力交流信号を生ずるよう配置され、また、コサイン相とマイナスコサイン相の出力を差動合成してコサイン相の振幅関数特性を示す出力交流信号を生ずるよう配置されてなり、更に、これらのサイン相及びコサイン相の出力交流信号に基づき前記磁気応答部材の相対的位置に応じたX軸成分位置検出信号を生成する第 1 の検出手段を該第 1 の巻線グループに対応して具備し、また、前記Y軸検出部は、Y軸方向に沿って配置された複数の極を構成する第2の巻線グループで構成され、該第2の巻線グループは、Y軸方向に沿う前記磁気応答部材の相対的位置に関してサイン相、コサイン相、マイナスサイン相及びマイナスコサイン相の特性を示す4極の巻線で構成され、サイン相とマイナスサイン相の出力を差動合成してサイン相の振幅関数特性を示す出力交流信号を生ずるよう配置され、また、コサイン相とマイナスコサイン相の出力を差動合成してコサイン相の振幅関数特性を示す出力交流信号を生ずるよう配置されてなり、更に、これらのサイン相及びコサイン相の出力交流信号に基づき前記磁気応答部材の相対的位置に応じたY軸成分位置検出信号を生成する第2の検出手段を該第2の巻線グループに対応して具備することにより、サイン相とコサイン相の2相の出力交流信号を出力するレゾルバ型位置検出原理にしたがう2次元位置検出装置を提供することができる。
【0006】
一実施形態によれば、前記X軸検出部における個々の極が、Y軸方向に列を成して構成されており、前記Y軸検出部における個々の極が、X軸方向に列を成して構成されているようになっていてよい。これにより、基部の2次元面を、より広い範囲でカバーして、2次元位置を検出することができる。
一実施形態によれば、前記サイン相の振幅関数特性を示す出力交流信号とコサイン相の振幅関数特性を示す出力交流信号とに基づき、該サイン相の振幅関数及びコサイン相の振幅関数の位相値を検出し、前記磁気応答部材の相対的位置に応じた位相値検出データを得るようにするとよい。
本発明によれば、更に様々な実施の形態をとることができ、その詳細は、例示的に以下において示される。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態をいくつかの代表例について説明する。図示された各例は、相互に組み合わせることも可能であり、それらの組合せも本発明の実施に含まれる。
図1は、レゾルバタイプの位置検出原理に従って構成した、本発明に係る2次元位置検出装置の基本的構成例を示す図であり、(a)は平面略図、(b)は側面略図である。
図1(a)において、横方向をX軸方向とし、たて方向をY軸方向とする。非磁性体からなるステータ基部1において、X軸検出部1Xと、Y軸検出部1Yとが配置されている。X軸検出部1Xは、X軸方向に等間隔で配置された4つの極を含み、各極は少なくとも2次巻線21,22,23,24を有している。換言すれば、ステータ基部1においてX軸方向に等間隔で配置された4つの少なくとも2次巻線21,22,23,24と図示していない1次巻線とによってX軸検出部1Xが構成される。同様に、Y軸検出部1Yは、Y軸方向に等間隔で配置された4つの極を含み、各極は少なくとも2次巻線25,26,27,28を有しており、かつ、図示していない1次巻線を含んでいる。X軸検出部1Xの極配列(2次巻線21〜24の配列)とY軸検出部1Yの極配列(2次巻線25〜28の配列)とは、ステータ基部1の2次元面上において図示のように交差している。
【0008】
なお、1次巻線の配置については特に図示しないが、該1次巻線によって励起した磁界を対応する各2次巻線に及ぼすことができるような配置であれば適宜の配置であってよい。例えば、個々の2次巻線に対応して同じ位置に重複して個別の1次巻線をそれぞれ設けるようにしてもよいし、あるいは、ステータ基部1の最外周に沿ってすべての2次巻線を包囲するように1個の1次巻線を設けてもよいし、あるいは、いくつかのグループに分けて複数の2次巻線を包囲するように複数の1次巻線を設けてもよい。いずれの場合においても、レゾルバタイプの位置検出原理に従う場合、あるいは後述の差動変圧器原理に従う場合、すべての1次巻線が同相(1相)の交流信号で励磁される。
【0009】
ステータ基部1の上に、その表面上を任意に移動しうるように、所定のサイズの磁気応答部材3が設けられている。この磁気応答部材3は、各検出部1X,1Yにおける個別の2次巻線に対する近接位置関係に応じて、該2次巻線と対応する1次巻線との間の磁気結合(すなわち電磁誘導結合)を変化させるものであり、その近接位置関係に応じた出力信号が各検出部1X,1Yから出力されるようにするものである。磁気応答部材3は、図1(b)に示すように、例えば鉄等の磁性体からなる球(すなわち鋼球)からなっていて、その直径は、各2次巻線の配置間隔と同様に、レゾルバタイプの位置検出原理に従って適切に設計される。例えば図示の例では、磁気応答部材すなわち鋼球3は、隣合う2つの2次巻線21,22の配置範囲にほぼ対応する直径を有するように描かれているが、これに限らず、直径寸法の適量の減少又は増加が設計上可能である。
特に図示していないが、ステータ基部1の側面は適宜のガイドフレーム等によって仕切られていてよい。また、ステータ基部1の上面も、柔軟な又は硬質の適宜のカバーで蔽い、該カバーを通して磁気応答部材すなわち鋼球3につながった適宜の操作子(例えばユニバーサルジョイント式の操作子)等の操作によって外部から2次元運動を磁気応答部材(例えば鋼球)3に与えられえるようになっていてよい。勿論、検出対象たる2次元運動を磁気応答部材(鋼球)3又はステータ基部1に対して伝達するメカニズムはこれに限らず、用途に応じて適宜に設計してよい。
【0010】
上記の構成において、検出対象の2次元的運動に応じて、鋼球3がステータ基部1に対して相対的に変位し、この変位位置のX軸成分がX軸検出部1Xにて検出され、Y軸成分がY軸検出部1Yにて検出される。各検出部1X,1Yでは、レゾルバタイプの位置検出原理に従って、位置検出出力を生じる。
レゾルバタイプの位置検出原理について、X軸検出部1Xを例にして説明すると、鋼球3の各2次巻線21〜24に対する対応位置が変化することにより、1次巻線と各2次巻線21〜24間の磁気結合が該検出対象位置に応じて変化され、これにより、該検出対象位置に応じて振幅変調された誘導出力交流信号が、各2次巻線21〜24の配置のずれに応じて異なる振幅関数特性で、各2次巻線21〜24に誘起される。各2次巻線21〜24に誘起される各誘導出力交流信号は、1次巻線が1相の交流信号によって共通に励磁されるが故に、その電気的位相が同相であり、その振幅関数が鋼球3の各2次巻線に対する接近または遠ざかりに従ってそれぞれ変化する。なお、図1(a)において各巻線の巻軸方向(磁束の方向)は紙面に垂直な方向である。
【0011】
レゾルバ原理を採用する場合は、検出部1Xにおける4つの2次巻線21〜24に生じる誘導出力交流信号の振幅関数が、サイン関数(図でsを付記する)、コサイン関数(図でcを付記する)、マイナス・サイン関数(図で/s(sバー)を付記する)、マイナス・コサイン関数(図で/c(cバー)を付記する)、にそれぞれ相当するものとなるように、各2次巻線21〜24の配置間隔と磁気応答部材3(すなわち鋼球)のサイズを、設定する。種々の条件によって、各巻線の配置は微妙に変わり得るし、磁気応答部材(鋼球)3のサイズも変わりうるので、希望の関数特性が得られるように各巻線配置を適宜調整したり、あるいは2次出力レベルを電気的増幅によって調整することにより、希望の振幅関数特性が最終的に得られるようにすることができる。従って、各2次巻線21〜24の配置と磁気応答部材(鋼球)3のサイズは重要ではあるが、絶対的精度を要求されるわけではなく、設計上適宜に設定若しくは変更できる。
Y軸検出部1Yについても同様であり、4つの2次巻線25〜28に生じる誘導出力交流信号の振幅関数が、サイン関数(s)、コサイン関数(c)、マイナス・サイン関数(/s)、マイナス・コサイン関数(/c)、にそれぞれ相当するものとなるように、配置されている。
なお、明細書中では、表記の都合上、反転を示すバー記号は「/(スラッシュ)」で記載するが、これは、図中のバー記号に対応している。
【0012】
図2は、検出部1Xにおける1次及び2次巻線の回路図であり、1次巻線には共通の励磁交流信号(説明の便宜上、sinωtで示す)が印加される。この1次巻線の励磁に応じて、鋼球3の2次元面におけるX軸成分位置に応じた振幅値を持つ交流信号が各2次巻線21〜24に誘導される。夫々の誘導電圧レベルは該X軸成分位置に対応して2相の関数特性sinθ,cosθ及びその逆相の関数特性−sinθ,−cosθを示す。すなわち、各2次巻線21〜24の誘導出力信号は、該X軸成分位置に対応して2相の関数特性sinθ,cosθ及びその逆相の関数特性−sinθ,−cosθで振幅変調された状態で夫々出力される。なお、θは該X軸成分位置に比例しており、例えば、θ=2π(x/p)のような関係である。ここで、xはX軸成分位置、pは上記関数の1周期に相当する長さである。説明の便宜上、巻線の巻数等、その他の条件に従う係数は省略し、2次巻線21をサイン相として、その出力信号を「sinθ・sinωt」で示し、2次巻線22をコサイン相として、その出力信号を「cosθ・sinωt」で示す。また、2次巻線23をマイナス・サイン相として、その出力信号を「−sinθ・sinωt」で示し、2次巻線24をマイナス・コサイン相として、その出力信号を「−cosθ・sinωt」で示す。サイン相とマイナス・サイン相の誘導出力を差動的に合成することによりサイン関数の振幅関数を持つ第1の出力交流信号A(=2sinθ・sinωt)が得られる。また、コサイン相とマイナス・コサイン相の誘導出力を差動的に合成することによりコサイン関数の振幅関数を持つ第2の出力交流信号B(=2cosθ・sinωt)が得られる。なお、表現の簡略化のために、係数「2」を省略して、以下では、第1の出力交流信号Aを「sinθ・sinωt」で表わし、第2の出力交流信号Bを「cosθ・sinωt」で表わす。
【0013】
こうして、X軸成分位置xに対応する第1の関数値sinθを振幅値として持つ第1の出力交流信号A=sinθ・sinωtと、同じX軸成分位置xに対応する第2の関数値cosθを振幅値として持つ第2の出力交流信号B=cosθ・sinωtとが出力される。このような巻線構成によれば、回転型位置検出装置として従来知られたレゾルバにおいて得られるのと同様の、同相交流であって2相の振幅関数を持つ2つの出力交流信号A,B(サイン出力とコサイン出力)をX軸検出部1Xにおいて得ることができることが理解できる。
このX軸検出部1Xから出力される2相の出力交流信号(A=sinθ・sinωtとB=cosθ・sinωt)は、従来知られたレゾルバの出力と同様の使い方をすることができる。例えば、図2に示すように、検出部1Xの出力交流信号A,Bを適切なディジタル位相検出回路40に入力し、前記サイン関数sinθとコサイン関数cosθの位相値θをディジタル位相検出方式によって検出し、X軸成分位置xのディジタルデータDxを得るようにすることができる。ディジタル位相検出回路40で採用するディジタル位相検出方式としては、公知のR−D(レゾルバ−ディジタル)コンバータを適用してもよいし、本発明者らによって開発済の新方式を採用してもよい。この新方式については本書では特に述べない。
【0014】
Y軸検出部1Yについても、図2と同様に1次及び2次巻線回路を構成し、Y軸成分位置を示すレゾルバタイプの2相出力交流信号を出力するようにすることができる。そして、上記と同様に、ディジタル位相検出方式を採用することにより、Y軸成分位置を示すディジタルデータDyを得るようにすることができる。こうして、X軸検出部1XとY軸検出部1Yからそれぞれ得られるX軸成分位置とY軸成分位置のデータDx,Dyの組合せにより、検出した2次元位置を同定することができる。
【0015】
ところで、図1の配置では、X軸検出部1XとY軸検出部1Yの極配列(巻線配列)が線状に交差した配列であるため、検出可能な2次元位置の範囲が制限されてくる可能性がある。すなわち、線状に交差して配列されたX軸検出部1XまたはY軸検出部1Yから比較的離れた位置では、検出感度が相対的に低下するおそれがある。制限された範囲での2次元位置が可能でありさえすればよい場合は、これでも問題ないが、検出装置の用途によっては、検出可能な2次元位置の範囲をもっと拡張したほうがよい場合がある。
検出可能な2次元位置の範囲をより一層拡張するためには、X軸検出部とY軸検出部の極配列(巻線配列)が面状に交差するように配置すればよい。以下、そのような実施例のいくつかについて説明する。
【0016】
図3及び図4は、同一極を列状に伸ばして配置した例を示す。すなわち、X軸検出部における個々の極が、Y軸方向に列を成して構成されており、Y軸検出部における個々の極が、X軸方向に列を成して構成されている。詳しくは、X軸検出部におけるサイン極SX、コサイン極CX、マイナス・サイン極/SX、マイナス・コサイン極/CXのそれぞれがY軸方向に列を成して構成されており、Y軸検出部におけるサイン極SY、コサイン極CY、マイナス・サイン極/SY、マイナス・コサイン極/CYのそれぞれがX軸方向に列を成して構成されている。図3は、それぞれの極列が、複数(図では3個)の同相の2次巻線(s,c,/s,/cで示す)を該列に沿って配置してなる例を示す。勿論、1つの列を成す複数(図では3個)の同相の2次巻線は電気的に直列接続されて、1つの極の出力信号を生じる。図4は、それぞれの極列が、1個の2次巻線(s,c,/s,/cで示す)を該列に沿う細長リング状に巻回して配置してなる例を示す。図3及び図4共に、ステータ基部1のほぼ全域にわたる範囲で、磁気応答部材すなわち鋼球3のX軸成分位置とY軸成分位置とを感度良く検出できることが容易に理解できるであろう。
【0017】
図5は、基本的には図3,図4と同様に、同一極を列状に伸ばして配置した例を示すものであるが、X軸検出部及びY軸検出部の各2次巻線をそれぞれ同一座標位置において重複して(二重に)配置してなるものである。図5では、図示の都合上、1つの座標位置において1つの丸を描き、この1つの丸を半円に分けて、上の半円にX軸検出部の極の属性(つまり、サイン、コサイン、マイナス・サイン、マイナス・コサインをそれぞれ示すs,c,/s,/cの符号)を示し、下の半円にY軸検出部の極の属性(s,c,/s,/c)を示しているが、これは、当該座標位置においてX軸検出部の2次巻線とY軸検出部の2次巻線とが重複して(二重に)配置されていることを示す。また、図5は、図3,4と同様に、X軸検出部におけるサイン極SX、コサイン極CX、マイナス・サイン極/SX、マイナス・コサイン極/CXのそれぞれがY軸方向に列を成して構成され、Y軸検出部におけるサイン極SY、コサイン極CY、マイナス・サイン極/SY、マイナス・コサイン極/CYのそれぞれがX軸方向に列を成して構成されているのと等価である。この場合も、各検出部における1つの極に対応する1列を成す複数(図では4個)の同相の2次巻線は電気的に直列接続されて、当該1つの極の出力信号を生じる。
【0018】
図6(a)は、X軸検出部1X及びY軸検出部1Yの各極毎の2次巻線21’〜24’及び25’〜28’を扇状に配置した例を示す。ダッシュ符号を付した各2次巻線21’〜24’及び25’〜28’は、図1(a)におけるダッシュ符号を付していない同一符号の2次巻線21〜24及び25〜28に対応しており、同様の技術的意義を持っている。図1(a)の配置と異なる点は、各2次巻線21’〜24’及び25’〜28’が図示のような扇状の配置からなっている点である。このような各極の扇状の配置は、例えば2次巻線21’の極(X軸検出部のサイン極)について示すと、図6(b)に示すように1つの2次巻線を所定の扇状に巻回して構成してもよいし、図6(c)に示すように複数の2次巻線を所定の扇状に並べて構成してもよい。図6(c)のように複数の2次巻線によって1つの極を構成する場合は、前述と同様に、これらの同相の2次巻線を直列接続して当該極についての1つの出力信号を生じるようにする。図6の例においても、ステータ基部1のほぼ全域にわたる範囲で、磁気応答部材すなわち鋼球3のX軸成分位置とY軸成分位置とを感度良く検出できる。
【0019】
上記各実施例は、X軸検出部とY軸検出部とがそれぞれレゾルバタイプの2相出力交流信号を生じるものであり、位相検出方式に適しているものである。これに限らず、差動変圧器原理に基づく構成を用いてX軸成分及びY軸成分の位置検出を行うようにしてもよい。その場合は、次に示すように、巻線構成を簡略化できる。
図7は、差動トランス原理に基づく電圧検出方式に係る構成の基本形を示す。X軸検出部10Xは、X軸方向に等間隔で配置された2つの極を含み、各極は少なくとも2次巻線51,52を有しており、各2次巻線51,52は逆相直列接続されている。すなわち、一方の2次巻線51の極をサイン極(s)とすると、他方の2次巻線52の極はマイナス・サイン極(/s)である。Y軸検出部10Yは、Y軸方向に等間隔で配置された2つの極を含み、各極は少なくとも2次巻線61,62を有しており、各2次巻線61,62は逆相直列接続されている。すなわち、一方の2次巻線61の極をコサイン極(c)とすると、他方の2次巻線62の極はマイナス・コサイン極(/c)である。なお、差動トランス原理に基づく構成におけるサイン極、コサイン極等の呼び名は、前記レゾルバ方式の場合のような重要な意味をもたず、X軸検出部とY軸検出部を便宜的に区別するために使用している。1次巻線の配置は、その励起した磁界を対応する各2次巻線に及ぼすことができるような配置であれば適宜の配置であってよい。また、前記と同様に、ステータ基部1の上に、その表面上を任意に移動しうるように、所定のサイズの磁気応答部材(例えば鋼球)3が設けられている。
【0020】
この構成によって、X軸検出部10Xでは、ステータ基部1に対する磁気応答部材(鋼球)3の2次元位置のX軸成分の位置に対応するピーク電圧レベルを持つ出力交流信号が、2次巻線51,52の差動出力信号として、得られる。また、Y軸検出部10Yでは、ステータ基部1に対する磁気応答部材(鋼球)3の2次元位置のY軸成分の位置に対応するピーク電圧レベルを持つ出力交流信号が、2次巻線61,62の差動出力信号として、得られる。各検出部10X,10Yの出力交流信号を整流することにより、X軸成分位置及びY軸成分位置を示すアナログ電圧信号をそれぞれ得ることができ、両者の組合せにより2次元位置を同定することができる。
【0021】
図1の基本形に対する図3〜図6に示したような変形と同様の変形を、図7の基本形に対しても施すことができる。その例を示すと次のようである。
図8は、図7のような基本形からなる差動トランス原理に基づくX軸検出部及びY軸検出部を変形して、同一極につき複数の(図では2個)の2次巻線を列状に配置し、かつ、図5と同様に、X軸検出部及びY軸検出部の各2次巻線をそれぞれ同一座標位置において重複して(二重に)配置してなるものである。図8においても、図5と同様に、1つの座標位置に対応して示された1つの丸において、上の半円にX軸検出部の極の属性(s,/s)を示し、下の半円にY軸検出部の極の属性(c,/c)を示している。ここから明らかなように、X軸検出部におけるサイン極SXとマイナス・サイン極/SXのそれぞれがY軸方向に列を成した2個の2次巻線によって構成され、Y軸検出部におけるコサイン極CYとマイナス・コサイン極/CYのそれぞれがX軸方向に列を成した2個の2次巻線によって構成されている。この場合も、各検出部における1つの極に対応する1列を成す複数(図では2個)の同相の2次巻線は電気的に直列接続されて、当該1つの極(例えばSX)の出力信号を生じ、更に対応するもう一方の極(例えば/SX)の出力信号と差動合成される。
図9は、図8の変形例であり、図8に示された4つの座標位置を、それぞれ4つの細座標位置に分割し、各4つの細座標位置においてそれぞれ同相の2次巻線を設けたものである。
【0022】
図10は、図7のような基本形からなる差動トランス原理に基づくX軸検出部及びY軸検出部を変形して、図6と同様に、X軸検出部10X及びY軸検出部10Yの各極毎の2次巻線51’,52’及び61’,62’を扇状に配置した例を示す。この場合も、図6と同様に、1つの極において1つの2次巻線を所定の扇状に巻回して構成してもよいし、あるいは、1つの極において複数の2次巻線を所定の扇状に並べて構成し同一極の各2次巻線を同相直列接続するようにしてもよい。
【0023】
なお、磁気応答部材3の形状は、上記実施例のような球体に限らず、円板あるいはその他任意の形状であってよい。また、材質も、鉄等の磁性体に限らず、銅のような良導電体であってもよい。良導電体を磁気応答部材として使用した場合は渦電流損によって磁気抵抗変化が得られ、1次及び2次巻線間の結合係数が変化されることは既に知られている。また、磁性体と良導電体の組合せによって、相補的に磁気結合係数の変化率を高めて検出感度を向上させることも知られているので、これを採用してもよい。また、磁気応答部材3の形状を球体とする場合も、完全な球として手等による操作に応じてステータ基部1上で転がり移動するようにしてもよいし、あるいは球の所定箇所に操作レバー等を固定して該レバーを操作することによって2次元面上でスライド移動させるようにしてもよい。
【0024】
更に、上記実施例では、すべての1次巻線を同相(1相)励磁する例について説明したが、サイン相とコサイン相のように電気的位相の異なる複数相の励磁信号によって各1次巻線を別々に励磁する位相シフト方式の位置検出装置が既に公知であるから、そのような位相シフト方式に従う位置検出原理を本発明において利用してもよい。その場合、レゾルバで知られているように、1次巻線と2次巻線の関係は逆になる。
上記の各実施例においては、ステータ基部1が、完全に平面であるとしているが、図11に側面図で示すように、凹面状(または凸面状)に適度にわん曲していてもよい。そのようなわん曲面に沿う2次元位置を検出し得るようにするためには、磁気応答部材3として鋼球を使用することは、曲面に沿う移動を容易にするので極めて有利である。
【0025】
また、上記のように凹面状にわん曲した2次元位置を検出する場合、磁気応答部材3としては、固定形状の物体に限らず、非固定形状の物体(流体又は粉体)であってもよい。図12(a)は、凹面状にわん曲した容器状のステータ基部1に、磁気応答部材として、比較的少量の磁性流体3aを収納した例を示す。図12(b)は、凹面状にわん曲した容器状のステータ基部1に、磁気応答部材として、比較的少量の磁性粉体3bを収納した例を示す。これらの場合は、検出対象の2次元的変位運動はステータ基部1に対して及ぼされるようにし、磁性流体3a又は磁性粉体3bからなる磁気応答部材は、ステータ基部1に対して及ぼされる加速度的な2次元運動に対して、過渡的現象として、自重によって残留することになる。これによって磁気応答部材3a,3bとステータ基部1との相対位置関係が変化し、加速度的な若しくは過渡的な2次元運動についての2次元位置を検出することができる。このような検出形態は、一般にアブソリュート位置検出として知られている静的な絶対位置を検出する考え方とは幾分異なることになるが、用途によっては大いに実用性を期待することができるものである。すなわち、加速度的な、若しくは過渡的に時間変化する、2次元運動が加えられたときに、その変位の軌跡や最大変位量や変位方向を検出する場合において、有利に応用可能である。
【0026】
なお、上記各実施例において、X軸検出部とY軸検出部から得られるX軸成分位置検出信号及びY軸成分位置検出信号は、アブソリュート位置を示すものとしているが、これに限らず、応用目的に応じて、インクリメンタルパルス信号に変換して出力するようにしてもよい。例えば、アブソリュート位置を示すディジタル又はアナログデータの時間的変化に応答してインクリメンタルパルス信号を生成する回路を付加すればよい。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、夫々が誘導型検出要素であるX軸検出部とY軸検出部とを2次元面上で交差して配置してなり、X及びY軸方向に関して所定のサイズを有すると共に1次及び2次巻線による電磁誘導結合を変化させる材質を含んで構成されてなる1つの磁気応答部材を、該基部に対してX及びY軸方向に相対的に変位可能に配置したので、基部の2次元面に対する磁気応答部材の相対的位置に応じてX軸検出部及びY軸検出部の各極における電磁誘導結合が可変的に定まり、これに応じたX軸成分位置とY軸成分位置とをX軸検出部及びY軸検出部により検出することができるので、これらの組合せによって2次元位置検出を行うことができる、という優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る2次元位置検出装置の一実施形態をレゾルバ原理に従って構成した基本例を示すもので、(a)は平面図、(b)は側面図。
【図2】 図1における1軸分の検出部の1次及び2次巻線の回路例及び2次巻線出力に基づく位置検出回路の構成例を示す回路図。
【図3】 図1に示された基本例の変形例を示す平面図。
【図4】 図1に示された基本例の別の変形例を示す平面図。
【図5】 図1に示された基本例の更に別の変形例を示す平面図。
【図6】 図1に示された基本例の更に別の変形例を示すものであって、(a)は平面図、(b)はそのうち1つの極の2次巻線構成例を示す平面図、(c)は同1つの極の別の2次巻線構成例を示す平面図。
【図7】 本発明に係る2次元位置検出装置の別の実施形態を差動トランス原理に従って構成した基本形を示す平面図。
【図8】 図7に示された基本形の変形例を示す平面図。
【図9】 図8の変形例を示す平面図。
【図10】 図7に示された基本形の別の変形例を示す平面図。
【図11】 本発明に係る2次元位置検出装置におけるステータ基部が幾分わん曲している例を示す側面断面図。
【図12】 図11のようにステータ基部が幾分わん曲している場合において、磁気応答部材として、磁性流体または磁性粉体を使用できることを示す側面断面図。
【符号の説明】
1 ステータ基部
1X,10X X軸検出部
1Y,10Y Y軸検出部
21〜28,21’〜28’,51,52,61,62,51’,52’,61’,62’ 2次巻線
3 磁気応答部材(鋼球)
Claims (8)
- X軸方向に沿って配置された複数の極を含み、各極は交流励磁に応じて出力を生じる巻線部を有しているX軸検出部と、Y軸方向に沿って配置された複数の極を含み、各極は交流励磁に応じて出力を生じる巻線部を有しているY軸検出部とを、2次元面上で交差して配置してなる基部と、
前記基部に対してX及びY軸方向に相対的に変位するものであり、所定の磁気応答材質を含んで構成されてなる磁気応答部材と
を一体的に具備してなり、検出対象たる2次元運動を前記磁気応答部材又は前記基部に伝達し、前記基部の2次元面に対する前記磁気応答部材の相対的位置に応じたX軸成分位置検出信号とY軸成分位置検出信号とを前記X軸検出部及びY軸検出部から夫々出力することにより前記2次元運動に応じた検出を行なうことを特徴とする誘導型2次元位置検出装置であって、
前記X軸検出部は、X軸方向に沿って配置された複数の極を構成する第1の巻線グループで構成され、前記第1の巻線グループは、前記X軸方向に沿う前記磁気応答部材の相対的位置に関してサイン相、コサイン相、マイナスサイン相及びマイナスコサイン相の特性を示す4極の巻線で構成され、サイン相とマイナスサイン相の出力を差動合成してサイン相の振幅関数特性を示す出力交流信号を生ずるよう配置され、また、コサイン相とマイナスコサイン相の出力を差動合成してコサイン相の振幅関数特性を示す出力交流信号を生ずるよう配置されてなり、更に、これらのサイン相及びコサイン相の出力交流信号に基づき前記磁気応答部材の相対的位置に応じたX軸成分位置検出信号を生成する第 1 の検出手段を該第1の巻線グループに対応して具備し、
前記Y軸検出部は、Y軸方向に沿って配置された複数の極を構成する第2の巻線グループで構成され、前記第2の巻線グループは、前記Y軸方向に沿う前記磁気応答部材の相対的位置に関してサイン相、コサイン相、マイナスサイン相及びマイナスコサイン相の特性を示す4極の巻線で構成され、サイン相とマイナスサイン相の出力を差動合成してサイン相の振幅関数特性を示す出力交流信号を生ずるよう配置され、また、コサイン相とマイナスコサイン相の出力を差動合成してコサイン相の振幅関数特性を示す出力交流信号を生ずるよう配置されてなり、更に、これらのサイン相及びコサイン相の出力交流信号に基づき前記磁気応答部材の相対的位置に応じたY軸成分位置検出信号を生成する第2の検出手段を該第2の巻線グループに対応して具備することを特徴とする誘導型2次元位置検出装置。 - 前記X軸検出部における個々の極が、Y軸方向に列を成して構成されて、前記Y軸検出部における個々の極が、X軸方向に列を成して構成されていることを特徴とする請求項1に記載の誘導型2次元位置検出装置。
- 前記X軸検出部とY軸検出部とが前記2次元面上の1点で交差し、各極が略扇形状の広がりを持つことを特徴とする請求項1に記載の誘導型2次元位置検出装置。
- 前記第1および第2の検出手段は、前記サイン相の振幅関数特性を示す出力交流信号とコサイン相の振幅関数特性を示す出力交流信号とに基づき、該サイン相の振幅関数及びコサイン相の振幅関数の位相値を検出し、前記磁気応答部材の相対的位置に応じた位相値検出データを得るものである請求項1に記載の誘導型2次元位置検出装置。
- 前記X軸検出部及びY軸検出部の夫々は、1相の交流信号によって励磁される請求項1乃至4のいずれかに記載の誘導型2次元位置検出装置。
- 前記磁気応答部材は、球形状を成したものである請求項1乃至5のいずれかに記載の誘導型2次元位置検出装置。
- 前記磁気応答部材は人手によって操作される操作子に連結されており、該操作子の2次元的操作を検出するものである請求項1乃至6のいずれかに記載の誘導型2次元位置検出装置。
- 前記基部はわん曲面を有しており、前記磁気応答部材は、非固定形状の物体からなるものである請求項1乃至6のいずれかに記載の誘導型2次元位置検出装置。
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