JP3918612B2 - 磁気トンネル接合素子の製法と磁気トンネル接合装置 - Google Patents

磁気トンネル接合素子の製法と磁気トンネル接合装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、磁気センサ等に用いられる磁気トンネル接合素子の製法と、この製法により製作するに好適な磁気センサ、磁気メモリ等の磁気トンネル接合装置とに関するものである。この後の説明では、磁気トンネル接合素子をTMR素子と略記する。
【0002】
【従来の技術】
従来、複数のTMR素子を備えた磁気センサの製法としては、図38〜43に示すものが提案されている(例えば、本願と同一出願人の出願に係る特願平11−368776号参照)。
【0003】
図38の工程では、シリコン基板1の表面を覆う酸化シリコン膜2の上に下電極層としてのCr層3と、反強磁性層としてのRh−Mn合金層4と、下強磁性層としてのNi−Fe合金層5とを順次に重ねてスパッタ法で形成した後、Ni−Fe合金層5の上にAl層を形成して酸化することによりトンネルバリア層としてのアルミナ層6を形成し、アルミナ層6の上に上強磁性層としてのNi−Fe合金/Co積層(Coが下層)7と、上電極層としてのMo層8とを順次に重ねてスパッタ法で形成する。Mo層8の上には、それぞれ図13の26A,26Bに示すような四辺形状のパターンを有するレジスト層9a,9bを周知のホトリソグラフィ処理により形成する。
【0004】
次に、図39の工程では、レジスト層9a,9bをマスクとする選択的イオンミリング処理により層3〜8の積層に分離溝10を酸化シリコン膜2に達するように形成することにより該積層を層3〜8の部分3a〜8aからなる第1の積層部分と層3〜8の部分3b〜8bからなる第2の積層部分とに分離する。この後、レジスト層9a,9bを除去する。
【0005】
図39のイオンミリング工程では、図44に示したように分離溝10の側壁に側壁堆積膜DPが形成される。側壁堆積膜DPは、レジスト層9a,9bがイオンミリングにより削られて生ずるレジスト変性成分(有機物)を多量に含むもので、その他にも層3a〜5a,7a,8aの金属成分や酸化シリコン膜2の構成成分等を含んでいる。
【0006】
図39のレジスト除去工程では、レジスト層9a,9bに対してOプラズマによるアッシング処理を施した後、有機剥離液を用いて剥離処理を施す。しかし、このような処理を施しても、側壁堆積膜DPを完全に除去するのは困難であり、しかもレジスト残渣R,Rが残留する。レジスト残渣R,Rは、レジスト層9a,9bに由来するレジスト変性成分の他に、金属成分やSiO等の成分を含んでいるため、有機溶媒等を用いるレジスト除去処理によって完全に除去するのが困難である。
【0007】
図40の工程では、図39の工程で得られた第1及び第2の積層部分の上にそれぞれレジスト層9c,9d及びレジスト層9eをホトリソグラフィ処理により形成する。レジスト層9c,9d,9eのパターンは、図13のTa,Tb,Tcに示すような四辺形状のパターンとする。
【0008】
図41の工程では、レジスト層9c〜9eをマスクとする選択的イオンミリング処理(又は選択的ウエットエッチング処理)により第1及び第2の積層部分に分離溝12を層部分4a,4bに達するように形成することによりTMR素子Ta,Tb,Tcを得る。TMR素子Taは、分離溝10で囲まれた層3,4の部分3a,4aと分離溝12で囲まれた層5〜8の部分5a〜8aとの積層からなり、TMR素子Tbは、分離溝10で囲まれた層3,4の部分3a,4aと分離溝12で囲まれた層5〜8の部分5a〜8aとの積層からなる。層部分3a,4aの積層は、TMR素子Ta,Tbに共通の電極層であり、TMR素子Ta,Tbを相互接続している。TMR素子Tcは、分離溝10で層部分3a、4aから分離された層3,4の部分3b,4bと分離溝12で囲まれた層5〜8の部分5b〜8bとの積層からなる。イオンミリング処理の後、レジスト層9c〜9eを除去する。
【0009】
図41のイオンミリング工程では、図39の工程に関して前述したと同様にして図45に示すように分離溝10,12の側壁に側壁堆積膜DP,DPが形成される。そして、図41のレジスト除去工程では、図39の工程に関して前述したと同様にしてアッシング処理及び有機剥離液処理を行なうが、このようにしても、側壁堆積膜DP,DPを完全に除去するのが困難であり、しかもレジスト残渣R〜Rが残留する。側壁堆積膜DP,DPは、レジスト層9c〜9eがイオンミリングにより削られて生ずるレジスト変性成分(有機物)を多量に含むもので、その他にも層3a〜5a,7a、8aの金属成分及び酸化シリコン膜2の構成成分等を含んでいる。レジスト残渣R〜Rは、レジスト層9c〜9eに由来するレジスト変性成分を主体とするものである。なお、図41のレジスト除去工程では、分離溝12の側壁において側壁堆積膜DPがない個所にレジスト残渣が残留することもある。
【0010】
図42の工程では、TMR素子Ta〜Tc及び分離溝10,12を覆って基板上面にスパッタ法により層間絶縁膜としての酸化シリコン膜13を形成する。そして、選択的イオンミリング処理によりTMR素子Ta〜TcのMo層8a,8a,8bにそれぞれ対応する接続孔13a〜13cを酸化シリコン膜13に形成する。
【0011】
図43の工程では、酸化シリコン膜13の上に接続孔13a〜13cを覆ってAlをスパッタ法で被着した後、その被着層を選択的イオンミリング処理によりパターニングして配線層としてのAl層14a,14bを形成する。Al層14aは、接続孔13aを介してTMR素子TaのMo層8aに接続され、Al層14bは、接続孔13b,13cを介してTMR素子Tb,TcのMo層8a,8bを相互接続する。この結果、TMR素子Ta〜Tcは、直列接続されたことになる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
上記した従来技術によると、次の(a)〜(c)のような問題点がある。
【0013】
(a)選択マスクとしてのレジスト層は、イオンミリングにより削られやすいので、図39,41の工程では、レジスト層9a〜9eを0.6〜2.0μm程度に厚く形成する必要があり、微細加工に適していない。すなわち、厚いレジスト層では、微細パターンの形成が困難であると共にパターン倒れが起こりやすく、しかも角度ミリングでの加工時には影となる部分が生ずるため加工精度が低下する。
【0014】
(b)分離溝12の側壁に側壁堆積膜DPやレジスト残渣が残留すると、トンネルバリア層6aの上下の金属層間で電気的な短絡やリークが生ずる原因となり、歩留りの低下や素子特性の劣化を招く。また、図44,45に示したようにレジスト残渣R〜Rが残留すると、パーティクル発生の原因となり、歩留りの低下を招く。
【0015】
(c)図41のイオンミリング工程で分離溝12を形成する際に分離溝10の底部で酸化シリコン膜がエッチングされるため、分離溝10の深さDがエッチング分だけ増大し、分離溝10の段差が急峻となる。このため、図42の工程でスパッタ法により酸化シリコン膜13を形成すると、分離溝10の開口端近傍で膜欠陥が生じやすく、図43の工程でAl層14bを形成すると、Al層14bと層部分4aとが膜欠陥を介して短絡する不良を生ずることがある。なお、スパッタ法に比べて段差被覆性が良好なCVD(ケミカル・ベーパー・デポジション)法は、膜欠陥は生じないものの、400℃程度の処理となり、TMR素子が高温に弱いため、酸化シリコン膜13の形成に適していない。
【0016】
上記(b)の問題点に対処する方法としては、酸又はアルカリ等の溶液により側壁堆積膜やレジスト残渣を除去する処理が考えられる。しかし、このような処理は、極めて薄いトンネルバリア層にダメージを与えたり、トンネルバリア層の上下の金属層をエッチングして形状悪化を招いたりするので、得策でない。また、レジスト変性成分を含む側壁堆積膜を有機溶媒等を用いて除去する処理では、人体や環境に有害な物質を使用しなければならず、有機廃液の処理のためにコスト上昇を招く。
【0017】
上記(b)の問題点に関してTMR素子のリーク電流を低減する方法としては、磁気トンネル接合積層を選択的イオンミリング処理によりパターニングしてTMR素子を形成する際に酸化性又は窒化性雰囲気中でイオンミリングを行なうことによりTMR素子の側壁に酸化物又は窒化物からなる絶縁層を形成するものが知られている(例えば、特開2001−52316号公報参照)。このようなイオンミリング処理を図41の工程で採用した場合、エッチング終点の検出に困難を伴うという問題点がある。すなわち、図41のイオンミリング処理では、エッチング終点検出法としてプラズマ発光測定法を用いることが多い。この方法を用いた場合、反強磁性層としてのRh−Mn合金層4a,4bの構成原子に基づく発光を検出してイオンミリングを停止する。酸化性又は窒化性雰囲気中でイオンミリングを行なう場合、酸素又は窒素を含まない雰囲気中でイオンミリングを行なう場合に比べてエッチングレートが低下するため、単位時間当りの励起原子の発生量が減少し、発光検出に必要な信号強度が低下する。このため、エッチング終点の検出精度が低下し、アンダーエッチングによりTMR素子Tb,Tc間の短絡を招いたり、オーバーエッチングによりTMR素子Ta,Tb間で接続抵抗の増大(更には断線)を招いたりする。その上、図41の工程の前に分離溝10を形成しておくと、図41の工程においてRh−Mn合金層4a,4bの露出面積が分離溝10に相当する分だけ減少するため、発光検出に必要な信号強度は更に低下することになる。従って、エッチング終点の検出が一層困難となり、アンダーエッチング又はオーバーエッチングが一層発生しやすくなる。
【0018】
上記(c)の問題点に対処する方法としては、図41対応のイオンミリング工程の後、図39対応のイオンミリング工程を実施する方法が提案されている(例えば、本願と同一出願人の出願に係る特願2001−288809号参照)。この方法によれば、分離溝12を形成した後、分離溝10を形成することになるので、分離溝10の段差を低くすることができ、層間絶縁膜(酸化シリコン膜13に対応)の膜欠陥に基づく配線の短絡不良を防止することができる。また、図41対応のイオンミリング工程において分離溝10がない分だけ発光検出に必要な信号強度を増大させることができる。
【0019】
しかしながら、イオンミリングの選択マスクとしてレジスト層(レジスト層9a〜9eに対応)を用いるので、上記(a)及び(b)と同様の問題点を免れない。例えば、上記(b)の問題点に関しては、図41対応のイオンミリング工程では、図45に示すように分離溝12の側壁に側壁堆積膜DPが形成されたり、図41対応のレジスト除去工程では、側壁堆積膜DPやレジスト残渣R〜Rが残留したりする。また、図39対応のイオンミリング工程に先立って選択マスクとしてのレジスト層を形成する工程では、分離溝12の側壁にレジスト等が付着して汚染を招くことがある。さらに、図39対応のイオンミリング工程では、図45に示すように分離溝10の側壁に側壁堆積膜DPが形成されたり、図39対応のレジスト除去工程では、側壁堆積膜DPやレジスト残渣Rが残留したり、分離溝12の側壁において側壁堆積膜DPがない個所にレジスト残渣が残留したりする。従って、トンネルバリア層6aの上下の金属層間で電気的な短絡やリークが起こりやすい。
【0020】
この発明の目的は、上記のような問題点を解決し、高い製造歩留りを得ることができる新規なTMR素子の製法を提供することにある。
【0021】
この発明の他の目的は、TMR素子又は他の回路素子のための配線設計の自由度を向上させた新規な磁気トンネル接合装置を提供することにある。
【0022】
この発明の更に他の目的は、TMR素子を覆う絶縁膜の平坦性又は安定性を向上させた新規な磁気トンネル接合装置を提供することにある。
【0023】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る第1のTMR素子の製法は、
基板の絶縁性の一主面に第1の導電材層を介して磁気トンネル接合積層を形成する工程であって、前記第1の導電材層の上に下から順に反強磁性層、第1の磁性層、トンネルバリア層及び第2の磁性層を重ねて前記磁気トンネル接合積層を形成するものと、
前記磁気トンネル接合積層を覆って第2の導電材層を形成する工程と、
前記磁気トンネル接合積層を所望の電極パターンに従って覆うように前記第2の導電材層を残存させるべく前記第2の導電材層に第1の選択エッチング処理を施すことにより前記第2の導電材層の残存部部分からなる第1のハードマスクを形成する工程と、
前記磁気トンネル接合積層に前記第1のハードマスクを選択マスクとする第2の選択エッチング処理を施すことにより前記電極パターンに従って前記磁気トンネル接合積層を残存させる工程と、
前記磁気トンネル接合積層の残存部を所望の素子パターンに従って覆うように前記第1のハードマスクを残存させるべく前記第1のハードマスクに第3の選択エッチング処理を施すことにより前記第1のハードマスクの残存部分からなる第2のハードマスクを形成する工程と、
前記磁気トンネル接合積層の残存部に前記第2のハードマスクを選択マスクとする第4の選択エッチング処理を施して前記磁気トンネル接合積層の残存部を前記反強磁性層に達するまでエッチングすることにより前記第1の磁性層、前記トンネルバリア層及び前記第2の磁性層の各々の残存部分からなる磁気トンネル接合部を形成すると共にこの磁気トンネル接合部の下に前記第1の導電材層及び前記反強磁性層の各々の残存部分からなる第1の電極層を残存させ、しかも前記第2のハードマスクを第2の電極層として残存させる工程と、
前記磁気トンネル接合部において前記トンネルバリア層の端部に前記第4の選択エッチング処理の際に堆積した堆積物を除去する工程と
を含むものである。
【0024】
第1のTMR素子の製法によれば、第4の選択エッチング処理において選択マスクとして導電材からなる第2のハードマスクを用いるので、磁気トンネル接合部の側壁(特にトンネルバリア層の端部)に付着するエッチング生成物としての堆積物がレジスト変性成分等の有機物を含まない。このため、堆積物を除去する工程では、有機溶媒等を使用しなくても、堆積物を簡単に除去することができる。従って、磁気トンネル接合部の側壁においてトンネルバリア層の上下の金属層が堆積物等により接続されることがなくなり、電気的な短絡やリークを防止することができる。また、有機溶媒等を使用しなくてよいので、人体や環境に有害な物質の使用量が削減され、工程の簡素化及びコスト低減が可能となる。
【0025】
その上、第1のハードマスクを形成するための第1の選択エッチング処理又は第2のハードマスクを形成するための第3の選択エッチング処理では、ハードマスク用導電材層(第2の導電材層)の導電材料として、第1,第2の磁性層及び第1の導電材層よりイオンミリングレート(エッチングレート)が遅いW(タングステン)等の材料を選定することができ、マスク用導電材層を薄くすることができる。このため、マスク用導電材層をパターニングする際に選択マスクとして用いるレジスト層を薄くすることができる。従って、微細パターンの形成が容易であると共にパターン倒れが起こりにくく、しかも角度ミリングでの加工時に影となる部分が少ないため加工精度が向上する。
【0026】
第1のTMR素子の製法においては、第1の変形例として、次のような変更を加えてもよい。すなわち、磁気トンネル接合部を形成する工程では、磁気トンネル接合積層の残存部を第4の選択エッチング処理により第1の導電材層に達するまでエッチングすることにより反強磁性層、第1の磁性層、トンネルバリア層及び第2の磁性層の各々の残存部分からなる磁気トンネル接合部を形成すると共にこの磁気トンネル接合部の下に第1の導電材層の残存部分からなる第1の電極層を残存させる。このようにしても、第1のTMR素子の製法に関して前述したと同様の作用効果が得られる。
【0027】
第1のTMR素子の製法において第1の変形例を採用した場合には、第2の変形例として、次のような変更を加えてもよい。すなわち、磁気トンネル接合積層を形成する工程では、第1の導電材層の上に下から順に第1の磁性層、トンネルバリア層、第2の磁性層及び反強磁性層を重ねて磁気トンネル接合積層を形成してもよい。この場合、他の工程は、第1のTMR素子の製法及び第1の変形例に関して前述したと同様に実行する。このようにすると、第1のTMR素子の製法に関して前述したと同様の作用効果が得られる。
【0028】
この発明に係る第2のTMR素子の製法は、
基板の絶縁性の一主面に第1の導電材層を介して磁気トンネル接合積層を形成する工程であって、前記第1の導電材層の上に下から順に反強磁性層、第1の磁性層、トンネルバリア層及び第2の磁性層を重ねて前記磁気トンネル接合積層を形成するものと、
前記磁気トンネル接合積層を覆って第2の導電材層を形成する工程と、
前記磁気トンネル接合積層を所望の電極パターンに従って覆うように前記第2の導電材層を残存させるべく前記第2の導電材層に第1の選択エッチング処理を施すことにより前記第2の導電材層の残存部部分からなる第1のハードマスクを形成する工程と、
前記磁気トンネル接合積層に前記第1のハードマスクを選択マスクとする第2の選択エッチング処理を施すことにより前記電極パターンに従って前記磁気トンネル接合積層を残存させる工程と、
前記第1のハードマスクと前記磁気トンネル接合積層の残存部とを覆って第3の導電材層を形成する工程と、
前記磁気トンネル接合積層の残存部を所望の素子パターンに従って覆うように前記第1のハードマスク及び前記第3の導電材層を残存させるべく前記第1のハードマスク及び前記第3の導電材層に第3の選択エッチング処理を施すことにより前記第1のハードマスク及び前記第3の導電材層の各々の残存部分からなる第2のハードマスクを形成する工程と、
前記磁気トンネル接合積層の残存部に前記第2のハードマスクを選択マスクとする第4の選択エッチング処理を施して前記磁気トンネル接合積層の残存部を前記反強磁性層に達するまでエッチングすることにより前記第1の磁性層、前記トンネルバリア層及び前記第2の磁性層の各々の残存部分からなる磁気トンネル接合部を形成すると共にこの磁気トンネル接合部の下に前記第1の導電材層及び前記反強磁性層の各々の残存部分からなる第1の電極層を残存させ、しかも前記第2のハードマスクのうち少なくとも前記第1のハードマスクの残存部分を第2の電極層として残存させる工程と、
前記磁気トンネル接合部において前記トンネルバリア層の端部に前記第4の選択エッチング処理の際に堆積した堆積物を除去する工程と
を含むものである。
【0029】
第2のTMR素子の製法は、第2のハードマスクを第1のハードマスクのみに基づいて形成するのではなく、第2のハードマスクを第1のハードマスクに第3の導電材層を重ねた積層に基づいて形成する点で第1のTMR素子の製法と異なるものである。第2のTMR素子の製法によれば、第1のTMR素子の製法に関して前述した作用効果に加えて次のような作用効果が得られる。すなわち、第1のハードマスクを第2の導電材層に基づいて形成すると共に第2のハードマスクを第1のハードマスクに第3の導電材層を重ねた積層に基づいて形成するので、第2の導電材層としては、第1のハードマスクを用いる第2の選択エッチング処理に最適な材料及び厚さを設定できると共に、第3の導電材層としては、第2のハードマスクを用いる第4の選択エッチング処理に最適な材料及び厚さを設定できる。特に、第2の導電材層については、第3の導電材層と共に第2のハードマスクを構成するので、厚さを薄く設定することができ、微細加工が容易となる。
【0030】
第2のハードマスクを構成する第3の導電材層としては、第4の選択エッチング処理で消失するような厚さのものを用いてもよい。この場合、第2の電極層としては、第1のハードマスク(第2の導電材層)の残存部分が残される。また、第3の導電材層としては、第4の選択エッチング処理で消失しないような厚さのものを用いてもよい。この場合,第2の電極層としては、第1及び第2のハードマスクの各々の残存部分が残される。
【0031】
第2のTMR素子の製法においては、前述した第1の変形例と同様の変更を加えてもよく、第1の変形例を採用した場合には、前述した第2の変形例と同様の変更を加えてもよい。このようにしても、第2のTMR素子の製法に関して前述したと同様の作用効果が得られる。
【0032】
この発明に係る第3のTMR素子の製法は、
基板の絶縁性の一主面に第1の導電材層を介して磁気トンネル接合積層を形成する工程であって、前記第1の導電材層の上に下から順に反強磁性層、第1の磁性層、トンネルバリア層及び第2の磁性層を重ねて前記磁気トンネル接合積層を形成するものと、
前記磁気トンネル接合積層を覆って第2の導電材層を形成する工程と、
前記磁気トンネル接合積層を所望の素子パターンに従って覆うように前記第2の導電材層を残存させるべく前記第2の導電材層に第1の選択エッチング処理を施すことにより前記第2の導電材層の残存部部分からなる第1のハードマスクを形成する工程と、
前記磁気トンネル接合積層に前記第1のハードマスクを選択マスクとする第2の選択エッチング処理を施して前記磁気トンネル接合積層を前記反強磁性層に達するまでエッチングすることにより前記第1の磁性層、前記トンネルバリア層及び前記第2の磁性層の各々の残存部分からなる磁気トンネル接合部を形成する工程と、
前記第1のハードマスクと前記磁気トンネル接合部と前記反強磁性層の露呈部とを覆って第3の導電材層を形成する工程と、
前記第1のハードマスクと前記磁気トンネル接合部と前記反強磁性層の露呈部とを所望の電極パターンに従って覆うように前記第3の導電材層を残存させるべく前記第3の導電材層に第3の選択エッチング処理を施すことにより前記第3の導電材層の残存部分からなる第2のハードマスクを形成する工程と、
前記第1の導電材層と前記反強磁性層との積層に前記第2のハードマスクを選択マスクとする第4の選択エッチング処理を施すことにより該積層の残存部分からなる第1の電極層を前記磁気トンネル接合部の下に形成する工程と、
前記第1の電極層の形成中又は形成後に前記磁気トンネル接合部において前記トンネルバリア層の端部から前記第2のハードマスクを除去すると共に少なくとも前記第1のハードマスクを第2の電極層として残存させる工程と
を含むものである。
【0033】
第3のTMR素子の製法によれば、第3の選択エッチング処理により第3の導電材層に基づいて第2のハードマスクを形成する際には、磁気トンネル接合部が第3の導電材層で覆われるため、磁気トンネル接合部の側壁にレジスト等が付着するのを防ぐことができる。また、第2のハードマスクを選択マスクとする第4の選択エッチング処理により第1の電極層を形成する際には、磁気トンネル接合部が第2のハードマスクで覆われるため、磁気トンネル接合部の側壁(特にトンネルバリア層の端部)に堆積物等が直接付着するのを防ぐことができる。さらに、第2のハードマスクは、第1の電極層の形成中又は形成後に磁気トンネル接合部の側壁(特にトンネルバリア層の端部)から除去される。従って、磁気トンネル接合部の側壁においてトンネルバリア層の上下の金属層が堆積物等により接続されることがなくなり、電気的な短絡やリークを防止することができる。なお、第2の選択エッチング処理の際に磁気トンネル接合部の側壁に堆積した堆積物は、第2の選択エッチング処理の後で除去してもよいが、残しておいても、第2のハードマスクを除去するのに伴って除去される。
【0034】
第3のTMR素子の製法によれば、いずれも導電材からなる第1及び第2のハードマスクを用いるので、第1のTMR素子に関して前述したと同様に微細パターンの形成が容易であると共に加工精度が向上する。また、第2の導電材層に基づいて第1のハードマスクを形成すると共に第3の導電材層に基づいて第2のハードマスクを形成するので、第1及び第2のハードマスクについて材料や厚さを最適化することができ、微細加工が容易となる。
【0035】
その上、第2の選択エッチング処理により磁気トンネル接合部を形成した後、第4の選択エッチング処理により磁気トンネル接合部の下に第1の電極層を形成するようにしたので、第1の導電材層の下地膜は、第4の選択エッチング処理時にのみエッチングされることになり、第1又は第2のTMR素子の製法に比べて電極層の端部での段差を低くすることができる。
【0036】
第3のTMR素子の製法においては、第3の変形例として、次のような変更を加えてもよい。すなわち、磁気トンネル接合部を形成する工程では、磁気トンネル接合積層を第2の選択エッチング処理により第1の導電材層に達するまでエッチングすることにより磁気トンネル接合積層の残存部分からなる磁気トンネル接合部を形成する。この場合、第2のハードマスクは、第1のハードマスクと磁気トンネル接合部と第1の導電材層の露呈部とを覆うように形成し、第1の電極層を形成する工程では、第1の導電材層に第2のハードマスクを選択マスクとする第4の選択エッチング処理を施すことにより磁気トンネル接合部の下に第1の導電材層の残存部分からなる第1の電極層を残存させる。このようにしても、第3のTMR素子の製法に関して前述したと同様の作用効果が得られる。
【0037】
第3のTMR素子の製法において第3の変形例を採用した場合には、第4の変形例として、次のような変更を加えてもよい。すなわち、磁気トンネル接合積層を形成する工程では、第1の導電材層の上に下から順に第1の磁性層、トンネルバリア層、第2の磁性層及び反強磁性層を重ねて磁気トンネル接合積層を形成してもよい。この場合、他の工程は、第3のTMR素子の製法及び第3の変形例に関して前述したと同様に実行する。このようにすると、第3のTMR素子の製法に関して前述したと同様の作用効果が得られる。
【0038】
この発明に係る第1の磁気トンネル接合装置は、絶縁性の一主面を有する基板と、前記一主面に形成された磁気トンネル接合素子であって、前記一主面に下から順に第1の導電材層、反強磁性層、第1の磁性層、トンネルバリア層、第2の磁性層及び第2の導電材層を重ねるか又は前記一主面に下から順に第1の導電材層、第1の磁性層、トンネルバリア層、第2の磁性層、反強磁性層及び第2の導電材層を重ねて構成されたものと、前記一主面に形成され、前記磁気トンネル接合素子と同一の積層構成を有する積層構造体からなる配線層とを備え、前記配線層が、これを構成する第2の導電材層を前記磁気トンネル接合素子に電気接続して少なくとも前記第2の導電材層の面方向に電流を流す配線層として用いられるものである。
【0039】
第1の磁気トンネル接合装置は、TMR素子と配線層とが同一の積層構成であるため、この発明のTMR素子の製法により簡単に製作可能である。また、配線層は、TMR素子のための配線層として使用されるので、配線設計の自由度が向上する。
【0040】
第1の磁気トンネル接合装置にあっては、前記積層構造体においてトンネルバリア層を挟む2つの磁性層を短絡するように前記積層構造体の少なくとも側部を覆って導電層を形成してもよい。このようにすると、配線層においてトンネルバリア層の下側の磁性層及び導電材層を含む積層とトンネルバリア層の上側の磁性層及び導電材層を含む積層とが側部に形成した導電層により短絡されるため、低抵抗配線を実現することができる。
【0041】
この発明に係る第2の磁気トンネル接合装置は、絶縁性の一主面を有する基板と、前記一主面に形成された磁気トンネル接合素子であって、前記一主面に下から順に第1の導電材層、反強磁性層、第1の磁性層、トンネルバリア層、第2の磁性層及び第2の導電材層を重ねるか又は前記一主面に下から順に第1の導電材層、第1の磁性層、トンネルバリア層、第2の磁性層、反強磁性層及び第2の導電材層を重ねて構成されたものと、前記一主面に形成され、前記磁気トンネル接合素子と同一の積層構成を有する補助積層と、前記磁気トンネル接合素子及び前記補助積層を覆って前記一主面に形成された絶縁膜とを備え、前記補助積層を、前記絶縁膜を平坦化するための平坦化層又は前記絶縁膜の剥離を防止するための剥離防止層として用いたものである。
【0042】
第2の磁気トンネル接合装置は、TMR素子と平坦化層又は剥離防止層とが同一の積層構成であるため、この発明のTMR素子の製法により簡単に製作可能である。また、平坦化層を設けると、絶縁膜の平坦化が可能になり、絶縁膜上に形成する配線層の平坦化を達成できる。さらに、剥離防止層を設けると、絶縁膜の剥離を防止可能となり、絶縁膜の安定性が向上する。
【0043】
【発明の実施の形態】
図1〜9は、この発明の第1の実施形態に係るTMR素子を備えた磁気センサの製法を示すもので、各々の図に対応する工程(1)〜(9)を順次に説明する。
【0044】
(1)例えばシリコンからなる半導体基板20の表面に熱酸化法により酸化シリコンからなる絶縁膜22を形成する。表面に絶縁膜22を形成した半導体基板20の代りに、ガラス又は石英等からなる絶縁性基板を用いてもよい。次に、絶縁膜22の上には、スパッタ法によりCrからなる導電材層24を10〜30nmの厚さに形成する。導電材層24としては、Tiの単層又はTi層にCu層を重ねた積層等を用いてもよく、あるいはW,Ta,Au,Mo等の導電性非磁性金属材料を用いてもよい。
【0045】
次に、導電材層24の上には、スパッタ法によりPt−Mn合金からなる反強磁性層26を30〜50nmの厚さに形成する。反強磁性層26としては、Rh−Mn合金、Fe−Mn合金等を用いてもよい。この後、反強磁性層26の上には、スパッタ法によりNi−Fe合金からなる強磁性層28を10〜30nmの厚さに形成する。強磁性層28としては、Ni,Fe,Coのうちのいずれかの金属、Ni,Fe,Coのうちの2つ以上の金属の合金又は金属間化合物等を用いてもよく、あるいはNi−Fe合金層28の下にCo層を敷くなどして積層構造のものを用いてもよい。
【0046】
次に、強磁性層28の上には、スパッタ法によりAl層を1〜2nmの厚さに形成する。そして、Al層に酸化処理を施すことによりアルミナ(酸化アルミニウム)からなるトンネルバリア層30を形成する。トンネルバリア層30としては、金属又は半導体を改変した酸化物(例えばTiOx,SiO,MgO,Al+SiO[サイアロン])、窒化物(例えばAlN,Si)、酸化窒化物(例えばAlN+Al)等を用いてもよい。この後、トンネルバリア層30の上には、スパッタ法によりNi−Fe合金からなる強磁性層32を20〜100nmの厚さに形成する。強磁性層32としては、強磁性層28に関して前述したと同様の強磁性層を用いることができる。
【0047】
次に、強磁性層32の上には、スパッタ法又はCVD法により例えばW又はTiWからなるハードマスク用導電材層34を200〜600nm(好ましくは400nm)の厚さに形成する。スパッタ法により導電材層34を形成する場合、処理条件は、一例として、
Arガス流量:15〜100sccm(好ましくは30sccm)
圧力:1〜10mTorr(好ましくは3mTorr)
RFパワー:0.5〜2kW(好ましくは1.15kW)
基板温度:80〜250℃(好ましくは150℃)
とすることができる。また、CVD法により導電材層34を形成する場合、処理条件は、一例として、
ガス流量:WF/H/Ar=40/400/2250sccm
圧力:0.5〜10×10Torr(好ましくは1×10Torr)
基板温度:250〜450℃(好ましくは300℃)
とすることができる。
【0048】
次に、導電材層34の上には、それぞれ図13の26A,26Bに示すような四辺形状の電極パターンを有するレジスト層36a,36bをホトリソグラフィ処理により形成する。このときのレジスト厚さは、200〜800nm(好ましくは400nm)とすることができる。
【0049】
(2)レジスト層36a,36bをマスクとする選択的イオンミリング処理又は選択的ドライエッチング処理により導電材層34をパターニングしてハードマスク34A,34Bを形成する。イオンミリング処理によりパターニングを行なう場合、処理条件は、一例として、
Ar流量:4sccm
圧力:2.0×10−4Torr
角度:0〜30度
パワー:500V、190mA
ミリング時間:6.0〜6.5min程度
とすることができる。また、ドライエッチング処理によりパターニングを行なう場合、処理条件は、一例として、
ガス流量:SF/Ar=30〜140/40〜140sccm(好ましくは110/90sccm)
圧力:250mTorr
RFパワー:450W
とすることができる。
【0050】
(3)ハードマスク34A,34Bを形成した後は、レジスト層36a,36bを除去する。レジスト除去は、例えばOプラズマによるアッシング処理を施した後、有機剥離液を用いた薬液処理を施すことにより行なうことができる。アッシング処理における処理条件は、一例として、
流量:100sccm
圧力:50mTorr
RFパワー:150W
とすることができる。レジスト除去法の他の例としては、アセトン超音波洗浄法等を用いてもよい。なお、独立のレジスト除去工程を設ける代りに、イオンミリング処理中に同時にレジスト層36a,36bを除去するようにしてもよい。
【0051】
イオンミリング処理によりパターニングを行なった場合には、ハードマスク34A及びレジスト層36aの積層の側壁と、ハードマスク34B及びレジスト層36bの積層の側壁とにそれぞれ側壁堆積膜DP10とDP11とがエッチング生成物として形成される。これらの堆積膜DP10,DP11は、レジスト変性成分(有機物)、層32,34の金属成分等を含むもので、上記のようなレジスト除去処理の後もハードマスク34A,34Bの側壁に残り易い。しかし、ミリング時間が短いので、堆積物の量が少なく、堆積物除去のための追加処理を行なわなくても図3のイオンミリング工程で完全に除去することができる。なお、ドライエッチング処理によりパターニングを行なった場合には、側壁堆積膜の問題は殆どない。
【0052】
次に、ハードマスク34A,34Bをマスクとする選択的イオンミリング処理により層24〜32の積層に分離溝38を絶縁膜22に達するように形成することにより積層残存部Ra,Rbを得る。積層残存部Raは、分離溝38で囲まれた層24〜32の残存部分24A〜32Aの積層からなり、積層残存部Rbは、分離溝38で囲まれた層24〜32の残存部分24B〜32Bの積層からなる。
【0053】
イオンミリング処理における処理条件は、一例として、
Ar流量:4sccm
圧力:2.0×10−4Torr
角度:0〜60度
パワー:500V、190mA
とすることができる。なお、ハードマスク34A,34Bは、図5の工程でハードマスク34a〜34cを形成するために必要であるので、残存させる。
【0054】
図3のイオンミリング工程では、分離溝38の側壁にエッチング生成物として側壁堆積膜DP12,DP13が形成される。堆積膜DP12,DP13は、層24〜28,32,34の金属成分等を含むもので、レジスト変性成分(有機物)を含まないため、有機溶媒なしで簡単に除去可能である。
【0055】
(4)イオンミリング処理の後、側壁堆積膜DP12,DP13を除去するための薬液処理を行なう。この薬液処理としては、
(イ)希フッ酸(又はBHF)処理+純水洗浄処理、
(ロ)アンモニア及び過酸化水素水処理+純水洗浄処理、
(ハ)硫酸及び過酸化水素水処理+純水洗浄処理
の3種類の処理のうち1種類の処理又は複数種類の組合せに係る処理を行なうことができる。このような処理は、短時間の処理であるため、積層残存部Ra,Rbの側壁のエッチング量は極くわずかであり、トンネルバリア層に対する実質的なダメージはない。
【0056】
側壁堆積膜DP12,DP13を一層確実に除去したいときは、クリーニングミリング処理(角度をもたせた短時間のミリング処理)を追加してもよい。クリーニングミリング処理における処理条件は、一例として、
Ar流量:4sccm
圧力:2.0×10−4Torr
角度:45〜80度(好ましくは60度)
パワー:500V、190mA
とすることができる。このようなミリング処理を追加することにより分離溝38の側壁を一層清浄化することができ、側壁形状は、一層テーパー状となる。
【0057】
側壁堆積膜DP12,DP13は、パーティクル発生等の問題がなければ残しておいてもよく、残しておいても図5,6のイオンミリング処理により除去されるので、上記したような薬液処理又はクリーニングミリング処理を省略することもできる。
【0058】
次に、残存するハードマスク34Aの上にレジスト層40a,40bを形成すると共に、残存するハードマスク34Bの上にレジスト層40cを形成する。レジスト層40a〜40cは、それぞれ図13のTa〜Tcに示すように四辺形状の素子パターンを有するようにホトリソグラフィ処理により形成する。このときのレジスト厚さは、80〜500nm(好ましくは250nm)とすることができる。
【0059】
(5)レジスト層40a〜40cをマスクとする選択的イオンミリング処理又は選択的ドライエッチング処理によりハードマスク34A,34Bをパターニングしてハードマスク34a〜34cを形成する。ハードマスク34a〜34cは、それぞれレジスト層40a〜40cに対応したパターンを有するもので、ハードマスク34a,34bは、いずれもハードマスク34Aの残存部分からなり、ハードマスク34cは、ハードマスク34Bの残存部分からなる。
【0060】
イオンミリング処理によりパターニングを行なう場合、処理条件は、図2のイオンミリング処理に関して前述したのと同様にすることができる。また、ドライエッチング処理によりパターニングを行なう場合、処理条件は、一例として、
ガス流量:CHF/CF/Ar=30/5/100sccm
圧力:200mTorr
RFパワー:700W
とすることができる。
【0061】
(6)イオンミリング処理又はドライエッチング処理の後、レジスト層40a〜40cを除去する。このときのレジスト除去処理は図2に関して前述したと同様にして行なうことができる。
【0062】
図5のイオンミリング処理では、エッチング生成物として側壁堆積膜DP15〜DP19が形成される。堆積膜DP15は、ハードマスク34a及びレジスト層40aの積層の側壁を覆うもの、堆積膜DP16は、ハードマスク34b及びレジスト層40bの積層の側壁を覆うもの、堆積膜DP17は、ハードマスク34c及びレジスト層40cの積層の側壁を覆うもの、堆積膜DP18,DP19は、それぞれ積層残存部Ra,Rbの側壁を覆うものである。堆積膜DP15〜DP19は、前述した堆積膜DP10,DP11と同様のもので、上記したレジスト除去処理の後、ハードマスク34a〜34cの側壁や積層残存部Ra,Rbの側壁に残りやすい。
【0063】
このような残存堆積膜を除去するため、前述した(イ)〜(ハ)のような薬液処理を施してもよい。しかし、残存堆積膜は、残しておいても図6のイオンミリング処理により除去されるので、かような薬液処理を省略することもできる。
【0064】
次に、ハードマスク34a〜34cをマスクとする選択的イオンミリング処理により積層残存部Ra,Rbに分離溝42を反強磁性層26A、26Bに達するように形成することによりTMR素子Ta〜Tcを得る。このときのイオンミリング処理における処理条件は、図3のイオンミリング処理に関して前述したと同様にすることができる。
【0065】
TMR素子Taは、分離溝38で囲まれた層24A,26Aと、分離溝42で囲まれた層28A〜32Aの部分28a〜32aと、ハードマスク34aとの積層からなると共に、TMR素子Tbは、分離溝38で囲まれた層24A,26Aと、分離溝42で囲まれた層28A〜32Aの部分28b〜32bと、ハードマスク34bとの積層からなる。層24A,26Aの積層は、TMR素子Taの一方の電極層として用いられると共に、ハードマスク34aは、TMR素子Taの他方の電極層として用いられる。層24A,26Aの積層は、TMR素子Tbの一方の電極層として用いられると共に、ハードマスク34bは、TMR素子Tbの他方の電極層として用いられる。TMR素子Ta,Tbは、配線層(共通の電極層)としての層24A、26Aの積層により相互接続される。
【0066】
TMR素子Tcは、分離溝38で囲まれた層24B,26Bと、分離溝42で囲まれた層28B〜32Bの部分28c〜32cと、ハードマスク34cとの積層からなる。層24B,26Bは、TMR素子Tcの一方の電極層として用いられると共に、ハードマスク34cは、TMR素子Tcの他方の電極層として用いられる。
【0067】
図6のイオンミリング工程では、分離溝42の側壁にエッチング生成物として側壁堆積膜DP21〜DP23が形成されると共に、分離溝38の側壁にエッチング生成物として側壁堆積膜DP24,DP25が形成される。堆積膜DP21〜DP25は、前述の堆積膜DP12,DP13と同様のもので、有機溶媒なしで簡単に除去可能である。
【0068】
(7)イオンミリング処理の後、側壁堆積膜DP21〜DP25を除去するための薬液処理を行なう。この薬液処理としては、硫酸及び過酸化水素水処理+純水洗浄処理を行なうことができる。この場合、トンネルバリア層30a〜30cにダメージを残さないため、フッ素やアルカリ(アンモニア等)を含まない薬液処理を行なうのが望ましい。また、必要に応じて図3の工程に関して前述したクリーニングミリング処理を施してもよい。このようにすると、TMR素子Ta〜Tcの側壁は、一層清浄化されると共に、側壁形状は、一層デーパー状となる。上記のような側壁堆積膜除去処理の終了時において、34a等の各ハードマスクの残存厚さは、電極層としての使用を考慮すると、50〜300nm程度とするのが望ましい。図1の工程では、このような残存厚さとなるように導電材層34の厚さを設定することができる。
【0069】
(8)基板上面には、ハードマスク34a〜34c及び分離溝38,42を覆ってスパッタ法により酸化シリコンからなる層間絶縁膜46を形成する。この後、選択的イオンミリング処理によりTMR素子Ta〜Tcの電極層34a〜34cにそれぞれ対応する接続孔46a〜46cを絶縁膜46に形成する。
【0070】
(9)絶縁膜46の上には、接続孔46a〜46cを覆ってスパッタ法によりAl等の配線用金属を被着すると共にその被着層を選択的イオンミリング処理(又は選択的ウエットエッチング処理)によりパターニングして配線層48a,48bを形成する。配線層48aは、接続孔46aを介してTMR素子Taの電極層34aに接続され、配線層48bは、接続孔46b,46cを介してTMR素子Tb,Tcの電極層34b,34cを相互接続する。この結果、TMR素子Ta〜Tcは、直列接続されたことになる。図13は、TMR素子Ta〜Tcの接続状況を示すもので、図9は、図13のX−X’線断面に対応する。
【0071】
上記した第1の実施形態の製法によれば、図2,5の工程では薄いレジスト層を用いて寸法精度よくハードマスクを形成できること、図3,6の工程ではハードマスクを用いて寸法精度よく積層残存部及びTMR素子を形成できること、図7の工程では側壁堆積膜を簡単に除去できるためトンネルバリア層の端部で電気的な短絡やリークが発生するのを防止できると共にパーティクルの発生を防止できることなどの理由により磁気センサの製造歩留りが向上する。
【0072】
図9に示す磁気センサにおいて、TMR素子Ta〜Tcの動作は同様であり、代表として素子Taの動作を説明する。反強磁性層26Aは、強磁性層28aの磁化の向きを固定すべく作用するので、強磁性層28aは、磁化固定層となる。一方、強磁性層32aは、磁化の向きが自由であり、磁化自由層となる。
【0073】
電極層24A,34a間に一定の電流を流した状態において基板20の平面内に外部磁界を印加すると、磁界の向きと強さに応じて強磁性層28a,32a間で磁化の相対角度が変化し、このような相対角度の変化に応じて電極層24A,34a間の電気抵抗値が変化する。従って、このような電気抵抗値の変化に基づいて磁界検出を行なうことができる。
【0074】
図10〜12は、上記した第1の実施形態の製法においてTMR素子形成処理の一部を流用して配線部にて配線を形成する工程を示すもので、図1〜9と同様の部分には同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0075】
図10の工程では、基板20の表面を覆う絶縁膜22の上に図1の積層形成工程を流用して層24〜34の積層を形成した後、所望の配線パターンに対応するレジストマスクを用いると共に図2のイオンミリング処理又はドライエッチング処理を流用して導電材層34をパターニングしてハードマスク34sを形成する。そして、図3のレジスト除去処理を流用してレジストマスクを除去した後、ハードマスク34sを用いると共に図3のイオンミリング処理を流用して層24〜32の積層をパターニングして配線層Tsを形成する。配線層Tsは、層24〜32の部分24s〜32sとハードマスク34sとの積層からなるもので、層Tsの側壁には、前述の堆積膜DP12,DP13と同様の側壁堆積膜DP14が形成される。
【0076】
図11の工程では、必要に応じて図4の堆積膜除去処理を流用して堆積膜DP14を除去する。そして、図4のレジスト層形成処理を流用して配線層Tsを覆うようにレジスト層40sを絶縁膜22の上に形成する。この後、図5のイオンミリング処理が行なわれる。このとき、配線層Tsは、レジスト層40sで覆われているため、全く変化がないが、層40sの側壁には、前述の堆積膜DP15〜DP19と同様の側壁堆積膜DP20が形成される。
【0077】
図12の工程では、図6のレジスト除去処理を流用してレジスト層40sを除去した後、必要に応じて図6の薬液処理を流用して堆積膜DP20を除去する。この後、図6のイオンミリング処理が行なわれる。このとき、配線層Tsは、最上層がハードマスク34sからなっているため、ハードマスク34sが若干薄くなるものの、マスク34sより下の構成層には殆ど変化がない。また、絶縁膜22は、図6の場合と同程度に薄くされる。
【0078】
図6のイオンミリング処理が行なわれると、配線層Tsの側壁には、前述の堆積膜DP21〜DP25と同様の側壁堆積膜が形成される。このような堆積膜を図7の堆積膜除去処理を流用して除去すると共に、ハードマスク34sを配線層Tsの一部として残す。堆積膜除去処理の終了時において、ハードマスク34sの残存厚さは、配線層としての使用を考慮すると、前述の34a等の電極層と同様に50〜300nm程度とするのが望ましい。
【0079】
図12に示した配線層Tsは、図9に示したTMR素子Ta〜Tcと同レベルの配線層として利用可能であり、例えばTa等のTMR素子のための配線層又は基板20の表面に形成したトランジスタ等の回路素子のための配線層として使用することができる。
【0080】
図10〜12の工程では、TMR素子形成処理の一部を流用して層24s〜34sの積層からなる配線層Tsを形成したが、パターンを適宜変更するだけで図10〜12の工程と同様の処理により層24s〜34sの積層からなる絶縁膜平坦化層又は絶縁膜剥離防止層を形成することもできる。絶縁膜平坦化層は、例えば図8の絶縁膜46の平坦性を向上させるために絶縁膜46の下に配置されるものであり、絶縁膜剥離防止層は、例えば絶縁膜46の剥離を防止するために絶縁膜46の下に配置されるものである。
【0081】
図14,15は、上記した第1の実施形態の変形例を示すもので、図1〜9と同様の部分には同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0082】
図14には、図1〜5に関して前述したと同様にして積層残存部Ra,Rbの上に導電材層からなるハードマスク34a〜34cを形成した後、図6に関して前述したと同様にしてレジスト除去処理及び堆積膜除去処理を基板上面に施した状態を示す。
【0083】
図15の工程は、図14の工程の後、ハードマスク34a〜34cをマスクとする選択的イオンミリング処理を基板上面に施してTMR素子Ta〜Tcを得る工程である。この工程のイオンミリング処理は、分離溝42を導電材層24A,24Bに達するように深く形成する点で図6のイオンミリング処理とは異なる。イオンミリング処理の後は、図7に関して前述したと同様に分離溝38,42の側壁堆積膜(エッチング生成物)を除去するための堆積膜除去処理を行なう。
【0084】
TMR素子Taは、分離溝38で囲まれた導電材層24Aと、分離溝42で囲まれた層26A〜32Aの部分26a〜32aと、ハードマスク34aとの積層からなると共に、TMR素子Tbは、分離溝38で囲まれた導電材層24Aと、分離溝42で囲まれた層26A〜32Aの部分26b〜32bと、ハードマスク34bとの積層からなる。導電材層24Aは、TMR素子Taの一方の電極層として用いられると共に、ハードマスク34aは、TMR素子Taの他方の電極層として用いられる。導電材層24Aは、TMR素子Tbの一方の電極層として用いられると共に、ハードマスク34bは、TMR素子Tbの他方の電極層として用いられる。TMR素子Ta,Tbは、配線層(共通の電極層)としての導電材層24Aにより相互接続される。
【0085】
TMR素子Tcは、分離溝38で囲まれた導電材層24Bと、分離溝42で囲まれた層26B〜32Bの部分26c〜32cと、ハードマスク34cとの積層からなる。導電材層24Bは、TMR素子Tcの一方の電極層として用いられると共に、ハードマスク34cは、TMR素子Tcの他方の電極層として用いられる。
【0086】
図15の工程の後は、図8に関して前述したと同様に基板上面に層間絶縁膜46を形成する。そして、図8に関して前述したと同様にして絶縁膜46に接続孔46a〜46cを形成した後、図9に関して前述したと同様にして絶縁膜46の上に配線層48a,48bを形成する。
【0087】
図14,15の変形例に係る製法によれば、前述した第1の実施形態に係る製法と同様に磁気センサの製造歩留りが向上する。また、得られる磁気センサは、図9に示した磁気センサと同様に動作する。
【0088】
図16,17は、図1〜9に関して前述した第1の実施形態の他の変形例を示すもので、図1〜9と同様の部分には同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0089】
図16,17の変形例では、図1に対応する工程において、絶縁膜22の上に下から順に導電材層24、強磁性層28、トンネルバリア層30、強磁性層32、反強磁性層、導電材層34を形成する。ここで、強磁性層32と導電材層34との間の反強磁性層は、前述した反強磁性層26と同様のもので、強磁性層32を磁化固定層とするためのものである。
【0090】
図16には、図1対応の工程で作成した積層に図1〜5に関して前述したと同様の処理を施して積層残存部Ra,Rbの上に導電材からなるハードマスク34a〜34cを形成した後、図6に関して前述したと同様にレジスト除去処理及び堆積膜除去処理を基板上面に施した状態を示す。この状態では、積層残存部Raは、下から順に導電材層24A、強磁性層28A、トンネルバリア層30A、強磁性層32A及び反強磁性層33Aを重ねた積層からなり、反強磁性層33Aの上にハードマスク34a,34bが配置される。また、積層残存部Rbは、下から順に導電材層24B、強磁性層28B、トンネルバリア層30B、強磁性層32B及び反強磁性層33Bを重ねた積層からなり、反強磁性層33Bの上にハードマスク34cが配置される。
【0091】
図17の工程は、図16の工程の後、ハードマスク34a〜34cをマスクとする選択的イオンミリング処理を基板上面に施してTMR素子Ta〜Tcを得る工程である。この工程のイオンミリング処理は、分離溝42を導電材層24A,24Bに達するように深く形成する点で図6のイオンミリング処理とは異なる。イオンミリング処理の後は、図7に関して前述したと同様に分離溝38,42の側壁堆積膜(エッチング生成物)を除去するための堆積膜除去処理を行なう。
【0092】
TMR素子Taは、分離溝38で囲まれた導電材層24Aと、分離溝42で囲まれた層28A〜33Aの部分28a〜33aと、ハードマスク34aとの積層からなると共に、TMR素子Tbは、分離溝38で囲まれた導電材層24Aと、分離溝42で囲まれた層28A〜33Aの部分28b〜33bと、ハードマスク34bとの積層からなる。導電材層24Aは、TMR素子Taの一方の電極層として用いられると共に、ハードマスク34aは、TMR素子Taの他方の電極層として用いられる。導電材層24Aは、TMR素子Tbの一方の電極層として用いられると共に、ハードマスク34bは、TMR素子Tbの他方の電極層として用いられる。TMR素子Ta,Tbは、配線層(共通の電極層)としての導電材層24Aにより相互接続される。
【0093】
TMR素子Tcは、分離溝38で囲まれた導電材層24Bと、分離溝42で囲まれた層28B〜33Bの部分28c〜33cと、ハードマスク34cとの積層からなる。導電材層24Bは、TMR素子Tcの一方の電極層として用いられると共に、ハードマスク34cは、TMR素子Tcの他方の電極層として用いられる。
【0094】
図17の工程の後は、図8に関して前述したと同様に基板上面に層間絶縁膜46を形成する。そして、図8に関して前述したと同様にして絶縁膜46に接続孔46a〜46cを形成した後、図9に関して前述したと同様にして絶縁膜46の上に配線層48a,48bを形成する。
【0095】
図16,17の変形例に係る製法によれば、前述した第1の実施形態に係る製法と同様に磁気センサの製造歩留りが向上する。また、得られる磁気センサは、図9に示した磁気センサと同様に動作する。
【0096】
次に、図18〜24を参照してこの発明の第2の実施形態に係る磁気センサの製法を説明する。
【0097】
図18の工程では、図1に関して前述したと同様に絶縁膜22で表面が覆われた基板20を用意した後、絶縁膜22の上に下から順に下磁性層50、トンネルバリア層52、上磁性層54及び導電材層56を積層状に形成する。トンネルバリア層52は、図1に関して前述したトンネルバリア層30と同様にして形成することができる。
【0098】
下磁性層50は、図1に関して前述したように下から順に導電材層24、反強磁性層26及び強磁性層28を積層したものとすることができ、他の例としては、図16に関して前述したように導電材層24に強磁性層28を重ねたものとしてもよい。
【0099】
上磁性層54は、図1に関して前述したように強磁性層32により構成することができ、他の例としては、図16に関して前述したように強磁性層32に反強磁性層を重ねたものとしてもよい。
【0100】
上磁性層54の上には、例えばW又はTiWからなる導電材層56を形成する。導電材層56は、図1に関して前述した導電材層34と同様にしてスパッタ法又はCVD法等により形成することができ、膜厚は、100〜400nm(好ましくは200nm)とすることができる。
【0101】
導電材層56の上には、図13の26Aに示すような四辺形状の電極パターンを有するレジスト層58をホトリソグラフィ処理により形成する。このときのレジスト厚さは、100〜700nm(好ましくは350nm)とすることができる。
【0102】
図19の工程では、レジスト層58を選択マスクとするイオンミリング処理又はドライエッチング処理により導電材層56をパターニングしてハードマスク56Aを形成する。ハードマスク56Aは、レジスト層58に対応した導電材層56の残存部分からなる。導電材層56のパターニング処理をイオンミリング処理又はドライエッチング処理で行なう場合、処理条件は、図2に関して前述したと同様にすることができる。この後、図3に関して前述したと同様の方法によりレジスト層58を除去し、ハードマスク56Aを残存させる。
【0103】
図20の工程では、ハードマスク56Aを選択マスクとするイオンミリング処理により層50〜54の積層に分離溝59を絶縁膜22に達するように形成して積層残存部Raを得る。積層残存部Raは、分離溝59で囲まれた層50〜54の残存部分50A〜54Aからなる。イオンミリング処理では、分離溝59の側壁に側壁堆積膜DP31が形成される。堆積膜DP31は、ハードマスク56Aの金属成分、層50、54の金属成分等を含むが、レジスト変性成分(有機物)を含まない。
【0104】
堆積膜DP31は、図4に関して前述した薬液処理等により簡単に除去可能である。しかし、堆積膜DP31は、図23のマスクパターニング処理や図24のイオンミリング処理で除去されるので、残しておいてもよい。
【0105】
図21の工程では、ハードマスク56Aと積層残存部Raと分離溝59とを覆って例えばW又はTiWからなる導電材層60をスパッタ法又はCVD法等により形成する。導電材層60は、図1に関して前述した導電材層34と同様にして形成することができ、膜厚は、100〜400nm(好ましくは200nm)とすることができる。
【0106】
図22の工程では、導電材層60の上に図13のTa,Tbに示すような四辺形状の素子パターンを有するレジスト層62a,62bをホトリソグラフィ処理により形成する。このときのレジスト厚さは、80〜500nm(好ましくは300nm)とすることができる。
【0107】
図23の工程では、レジスト層62a,62bをマスクとするイオンミリング処理又はドライエッチング処理によりハードマスク56Aと導電材層60との積層をパターニングしてハードマスク56a,56b,60a,60bを形成する。ハードマスク56a,56bは、それぞれレジスト層62a,62bに対応したハードマスク56Aの第1、第2の残存部分からなると共に、ハードマスク60a,60bは、それぞれレジスト層62a,62bに対応した導電材層60の第1,第2の残存部分からなる。ハードマスク56A及び導電材層60の積層のパターニング処理をイオンミリング処理又はドライエッチング処理で行なう場合、処理条件は、図2に関して前述したと同様にすることができる。
【0108】
次に、図3に関して前述したと同様の方法によりレジスト層62a,62bを除去し、ハードマスク56a,60aの積層とハードマスク56b,60bの積層とを残存させる。このようなレジスト除去工程に加えて、希フッ酸処理+純水洗浄処理等の堆積膜除去処理(トンネルバリア層に対してダメージを与えない処理)を施してもよい。
【0109】
図24の工程では、ハードマスク56a,60aの積層とハードマスク56b,60bの積層とを選択マスクとするイオンミリング処理により積層残存部Raに分離溝64を層50A内の反強磁性層(又は導電材層)に達するように形成することによりTMR素子Ta,Tbを得る。TMR素子Taは、層52A,54Aの残存部分52a、54aを含むと共に、TMR素子Tbは、層52A,54Aの残存部分52b、54bを含み、層50Aは、TMR素子Ta,Tbに共通に配置された状態となる。残存する下磁性層50AによるTMR素子Ta,Tbの接続形態は、図18の工程での下磁性層50の構成と図24の工程での分離溝64の深さとに応じて3通りありうる。
【0110】
すなわち、図18に示した下磁性層50が図1に示したように下から順に導電材層24、反強磁性層26及び強磁性層28を積層した構成である場合、図24の工程で反強磁性層26に達するように分離溝64を形成したときは、下磁性層50Aは、図6に示したように層24,26の残存部分24A,26Aの積層からなり、この積層がTMR素子Ta,Tbを相互接続する形で残される。また、図24の工程で導電材層24に達するように分離溝64を形成したときは、下磁性層50Aは、図15に示したようにTMR素子Taに関しては層24,26の残存部分24A,26aの積層からなると共にTMR素子Tbに関しては層24,26の残存部分24A,26bの積層からなり、導電材層24AがTMR素子Ta,Tbを相互接続する形で残される。
【0111】
図18に示した下磁性層50が図16に関して前述したように導電材層24に強磁性層28を重ねた構成である場合、図24の工程で導電材層24に達するように分離溝64を形成したときは、下磁性層50Aは、図17に示したようにTMR素子Taに関しては層24、28の残存部分24A,28aの積層からなると共にTMR素子Tbに関しては層24、28の残存部分24A,28bの積層からなり、導電材層24AがTMR素子Ta,Tbを相互接続する形で残される。
【0112】
図24のイオンミリング工程では、分離溝59,64の側壁にエッチング生成物としての側壁堆積膜(図示せず)が形成される。これらの側壁堆積膜は、レジスト変性成分等の有機物を含んでいないので、簡単に除去可能である。側壁堆積膜は、52a等のトンネルバリア層の上下の金属層間で電気的な短絡やリークが発生する原因となるものであり、除去する必要がある。そこで、図7に関して前述したと同様の方法により分離溝59,64の側壁(特にトンネルバリア層52a,52bの端部)から側壁堆積膜を除去する。ハードマスク60a,60bは、ハードマスク56a,56bと共に残しておいて電極層又は配線層の一部として使用してもよいが、イオンミリング処理中又はその後の除去処理により除去してもよい。ハードマスク60a,60bを除去したときは、ハードマスク56a,56bが電極層として残される。
【0113】
この後は、図8,9に関して前述したと同様にして層間絶縁膜の形成、接続孔の形成、配線層の形成等の処理を行なう。
【0114】
上記した第2の実施形態の製法によれば、図19,23の工程では薄いレジスト層を用いて寸法精度よくハードマスクを形成できること、図20,24の工程ではハードマスクを用いて寸法精度よく積層残存部及びTMR素子を形成できること、図24の工程では側壁堆積膜を簡単に除去できるため52a等のトンネルバリア層の上下の金属層間で電気的な短絡やリークを防げることなどの理由により磁気センサの製造歩留りが向上する。その上、ハードマスク56Aは、図20のイオンミリング処理のために材料及び厚さを最適化できると共に、ハードマスク60a,60bは、図24のイオンミリング処理のために材料及び厚さを最適化できる利点もある。
【0115】
図25〜27は、上記した第2の実施形態の製法においてTMR素子形成処理の一部を流用して配線部にて配線を形成する工程を示すもので、図18〜24と同様の部分には同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0116】
図25の工程では、図18の成膜処理を流用して基板20を覆う絶縁膜22の上に下から順に下磁性層50、トンネルバリア層52、上磁性層54及び導電材層56を積層状に形成すると共に、図18のホトリソグラフィ処理を流用して導電材層56の上に所望の配線パターンに対応するレジスト層を形成する。そして、このレジスト層を選択マスクとして用いると共に図19のイオンミリング処理(又はドライエッチング処理)を流用して導電材層56をパターニングすることによりハードマスク56sを形成する。この後、図19のレジスト除去処理を流用してレジスト層を除去する。
【0117】
次に、ハードマスク56sを選択マスクとして用いると共に図20のイオンミリング処理を流用して層50〜54の積層をパターニングすることにより層50,52,54の残存部50s,52s,54sを含む積層残存部Rsを得る。イオンミリング処理では、積層残存部Rsの側壁に側壁堆積膜が形成される。必要に応じてこの側壁堆積膜を除去するための薬液処理を行なう。
【0118】
次に、図21の成膜処理を流用して絶縁膜22の上にハードマスク56s及び積層残存部Rsを覆って導電材層60を形成する。そして、図22のホトリソグラフィ処理を流用して導電材層60の上にハードマスク56sと積層残存部Rsの両側面とを覆うようにレジスト層62sを形成する。
【0119】
図26の工程では、レジスト層62sを選択マスクとして用いると共に図23のイオンミリング処理(又はドライエッチング処理)を流用して導電材層60をパターニングすることによりハードマスク60sを形成する。ハードマスク60sは、ハードマスク54sと積層残存部Rsの両側面とを覆うように形成される。この後、図23のレジスト除去処理を流用してレジスト層62sを除去する。
【0120】
図27の工程では、ハードマスク60sを選択マスクとして図24のイオンミリング処理を実行する。この処理は、ハードマスク60sがハードマスク56sと積層残存部Rsの両側面とを覆った状態で残存するように行なう。この結果、積層残存部Rs及びハードマスク56s,60sの積層からなる配線層Tsが得られる。この配線層Tsでは、トンネルバリア層52sを挟む下磁性層50s及び上磁性層54sが積層残存部Rsの両側部でハードマスク60sにより短絡されているため、短絡なしの場合に比べて配線抵抗が低減される。
【0121】
図27に示した配線層Tsは、図24に示したTMR素子Ta,Tbと同レベルの配線層として利用可能であり、例えばTa等のTMR素子のための配線層又は基板20の表面に形成したトランジスタ等の回路素子のための配線層として使用することができる。
【0122】
図25〜27の工程では、TMR素子形成処理の一部を流用して層50s〜54s及びハードマスク56s,60sの積層からなる配線層Tsを形成したが、パターンを適宜変更するだけで図25〜27の工程と同様の処理により層50s〜54s及びハードマスク56s,60sの積層からなる絶縁膜平坦化層又は絶縁膜剥離防止層を形成することもできる。
【0123】
図28〜33は、この発明の第3の実施形態に係る磁気センサの製法を示すもので、図18〜24と同様の部分には同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0124】
図28の工程では、図18に関して前述したと同様にして基板20の絶縁膜22の上に下から順に下磁性層50、トンネルバリア層52、上磁性層54及び導電材層56を積層状に形成する。
【0125】
導電材層56の上には、それぞれ図13のTa,Tbに示すような四辺形状の素子パターンを有するレジスト層70a,70bをホトリソグラフィ処理により形成する。このときのレジスト厚さは、100〜700nm(好ましくは350nm)とすることができる。
【0126】
図29の工程では、レジスト層70a,70bを選択マスクとするイオンミリング処理又はドライエッチング処理により導電材層56をパターニングしてハードマスク56a,56bを形成する。ハードマスク56a,56bは、それぞれレジスト層70a,70bに対応した導電材層56の第1,第2の残存部分からなる。導電材層56のパターニング処理をイオンミリング処理又はドライエッチング処理で行なう場合、処理条件は、図2に関して前述したと同様にすることができる。この後、図3に関して前述したと同様の方法によりレジスト層70a,70bを除去し、ハードマスク56a,56bを残存させる。
【0127】
図30の工程では、ハードマスク56a,56bを選択マスクとするイオンミリング処理により層50〜54の積層に分離溝72を層50内の反強磁性層(又は導電材層)に達するように形成することにより磁気トンネル接合部ATa,ATbを得る。磁気トンネル接合部ATaは、層52,54の残存部52a,54aを含むと共に、磁気トンネル接合部ATbは、層52,54の残存部52b,54bを含み、層50は、磁気トンネル接合部ATa,ATbに共通に配置された状態となる。イオンミリング処理における処理条件は、図3に関して前述したと同様にすることができる。また、イオンミリング処理において、エッチング終点の検出法としては、プラズマ発光測定法を用い、下磁性層50の構成原子に基づく発光を検出してイオンミリングを停止する。下磁性層50として発光検出の対象になるのは、反強磁性層又は導電材層である。
【0128】
すなわち、下磁性層50が図1に示したように下から順に導電材層24、反強磁性層26及び強磁性層28を積層した構成である場合、図30のイオンミリング処理により反強磁性層26に達するようにミリングを行なうのであれば反強磁性層26が発光検出の対象となり、図30のイオンミリング処理により導電材層24に達するようにミリングを行なうのであれば導電材層24が発光検出の対象となる。また、下磁性層50が図16に関して前述したように導電材層24に強磁性層28を重ねた構成である場合、図30のイオンミリング処理では導電材層24に達するようにミリングを行なうので、導電材層24が発光検出の対象となる。いずれの場合にも、反強磁性層26又は導電材層24の露出面積が大きいため、発光検出に十分な信号強度が得られ、エッチング終点を高精度で検出可能である。
【0129】
図30のイオンミリング工程では、分離溝72の側壁にエッチング生成物としての側壁堆積膜(図示せず)が形成される。側壁堆積膜は、ハードマスク56a,56bの金属成分、層50,54の金属成分等を含むが、レジスト変性成分(有機物)を含まないので、容易に除去可能である。
【0130】
次に、図4に関して前述したように薬液処理を基板上面に施すことにより側壁堆積膜を分離溝72の側壁(特にトンネルバリア層52a,52bの端部)から除去する。この後、必要に応じて図4に関して前述したようなクリーニングミリング処理を追加してもよい。この処理により一層の清浄化が可能になると共に側壁形状は一層テーパー状となる。図30の工程で側壁堆積膜等のエッチング生成物を除去したので、52a等のトンネルバリア層の上下の金属層間で電気的な短絡やリークが発生するのを防止することができる。
【0131】
図31の工程では、磁気トンネル接合部ATa,ATbと分離溝72とを覆って例えばW又はTiWからなる導電材層74をスパッタ法又はCVD法等により形成する。導電材層74は、図3に関して前述した導電材層34と同様にして形成することができ、膜厚は、100〜400nm(好ましくは200nm)とすることができる。
【0132】
次に、導電材層74の上に図13の26Aに示すように四辺形状の電極パターンを有するレジスト層76をホトリソグラフィ処理により形成する。レジスト層76は、磁気トンネル接合部ATa,ATbを覆うように形成する。このときのレジスト厚さは、80〜500nm(好ましくは300nm)とすることができる。
【0133】
図32の工程では、レジスト層76を選択マスクとするイオンミリング処理又はドライエッチング処理により導電材層74をパターニングしてハードマスク74Aを形成する。導電材層74のパターニング処理は、図2に関して前述した導電材層34のパターニング処理と同様にして行なうことができる。
【0134】
図32の工程では、図2に関して前述したと同様の方法によりレジスト層76を除去し、ハードマスク74Aを残存させる。このようなレジスト除去工程に加えて、希フッ酸処理+純水洗浄処理等の堆積膜除去処理(トンネルバリア層に対してダメージを与えない処理)を施してもよい。このようにすると、レジスト除去面を一層清浄化することができる。
【0135】
図33の工程では、ハードマスク74Aを選択マスクとするイオンミリング処理により下磁性層50に分離溝78を絶縁膜22に達するように形成すると共に、ハードマスク74Aを除去する。ハードマスク74Aは、図33のイオンミリング処理で除去されるように予め厚さを設定しておくことができる。イオンミリング処理の結果、下磁性層50の一部50Aが分離溝78で取囲まれた形で残存する。残存する下磁性層50AによるTMR素子Ta,Tbの接続形態は、図28の工程での下磁性層50の構成と図30の工程での分離溝72の深さとに応じて3通りありうるが、各々の接続形態の詳細については図24の工程に関連して図6、図15及び図17を参照して前述したと同様である。
【0136】
図33のイオンミリング工程では、分離溝72,78の側壁にエッチング生成物としての側壁堆積膜(図示せず)が形成される。これらの側壁堆積膜は、レジスト変性成分等の有機物の含んでいないので、簡単に除去可能である。側壁堆積膜は、52a等のトンネルバリア層の上下の金属層間で電気的な短絡やリークが発生する原因となるものであり、除去する必要がある。そこで、図7に関して前述したと同様の方法により分離溝72,78の側壁(特にトンネルバリア層52a,52bの端部)から側壁堆積膜を除去する。
【0137】
この後は、図8,9に関して前述したと同様にして層間絶縁膜の形成、接続孔の形成、配線層の形成等の処理を行なう。
【0138】
上記した第3の実施形態の製法によれば、図29,32の工程では薄いレジスト層を用いて寸法精度よくハードマスクを形成できること、図30,33の工程ではハードマスクを用いて寸法精度よく磁気トンネル接合部及びTMR素子を形成できること、図31の工程では磁気トンネル接合部ATa,ATbの側壁が導電材層74で覆われているためレジスト汚染を免れること、図33の工程では側壁堆積膜を簡単に除去できるため52a等のトンネルバリア層の上下の金属層間で電気的な短絡やリークを防げることなどの理由により磁気センサの製造歩留りが向上する。その上、図33を図7,24と対比すれば明らかなように、絶縁膜22が削られるのは図33のイオンミリング処理時のみであるため、電極層50Aの端部の段差Dが低く、図42に関して前述したような層間絶縁膜の欠陥に基づく配線の短絡不良を防止できる利点もある。
【0139】
図34〜36は、上記した第3の実施形態の製法においてTMR素子形成処理の一部を流用して配線部にて配線を形成する工程を示すもので、図28〜33と同様の部分には同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0140】
図34の工程では、図28の成膜処理を流用して基板20を覆う絶縁膜22の上に下から順に下磁性層50、トンネルバリア層52、上磁性層54及び導電材層56を積層状に形成すると共に、図28のホトリソグラフィ処理を流用して導電材層56の上に所望の配線パターンに対応するレジスト層を形成する。そして、このレジスト層を選択マスクとして用いると共に図29のイオンミリング処理(又はドライエッチング処理)を流用して導電材層56をパターニングすることによりハードマスク56sを形成する。この後、図29のレジスト除去処理を流用してレジスト層を除去する。
【0141】
次に、ハードマスク56sを選択マスクとして用いると共に図30のイオンミリング処理を流用して層50〜54の積層を層50内の反強磁性層(又は導電材層)に達するまでミリングすることにより層52,54の残存部52s,54sを含む磁気トンネル接合部ATsを得る。イオンミリング処理では、磁気トンネル接合部ATsの側壁に側壁堆積膜が形成される。必要に応じてこの側壁堆積膜を除去するための薬液処理を行なう。
【0142】
次に、図31の成膜処理を流用して下磁性層50の上にハードマスク56s及び磁気トンネル接合部ATsを覆って導電材層74を形成する。そして、図31のホトリソグラフィ処理を流用して導電材層74の上にハードマスク56sと磁気トンネル接合部ATsの両側面とを覆うようにレジスト層76sを形成する。
【0143】
図35の工程では、レジスト層76sを選択マスクとして用いると共に図32のイオンミリング処理(又はドライエッチング処理)を流用して導電材層74をパターニングすることによりハードマスク74sを形成する。ハードマスク74sは、ハードマスク54sと磁気トンネル接合部ATsの両側面とを覆うように形成される。この後、図32のレジスト除去処理を流用してレジスト層76sを除去する。
【0144】
図36の工程では、ハードマスク74sを選択マスクとして図33のイオンミリング処理を実行することにより下磁性層50の一部50sをハードマスク74sに対応するパターンで残存させる。この処理は、ハードマスク74sがハードマスク56sと磁気トンネル接合部ATsの両側面とを覆った状態で残存するように行なう。この結果、磁気トンネル接合部ATs及びハードマスク56s,74sの積層からなる配線層Tsが得られる。この配線層Tsでは、トンネルバリア層52sを挟む下磁性層50s及び上磁性層54sが磁気トンネル接合部ATsの両側部でハードマスク74sにより短絡されているため、短絡なしの場合に比べて配線抵抗が低減される。
【0145】
なお、図33,36に示すようにTMR素子部ではハードマスク74Aを除去し且つ配線部ではハードマスク74sを残存させるためには、(イ)図31、34に示すように導電材層74をTMR素子部に比べて配線部で予め厚くしておく方法、あるいは(ロ)図31,34の段階では導電材層74の厚さをTMR素子部及び配線部のいずれにおいても1回のイオンミリング処理では残存する程度に厚くしておき、図33,36の工程では配線部をマスクした状態において1回目のイオンミリング処理で残存したハードマスク74Aを2回目のイオンミリング処理で除去する方法などを採用することができる。
【0146】
図36に示した配線層Tsは、図33に示したTMR素子Ta,Tbと同レベルの配線層として利用可能であり、例えばTa等のTMR素子のための配線層又は基板20の表面に形成したトランジスタ等の回路素子のための配線層として使用することができる。
【0147】
図34〜36の工程では、TMR素子形成処理の一部を流用して層50s〜54s及びハードマスク56s,74sの積層からなる配線層Tsを形成したが、パターンを適宜変更するだけで図34〜36の工程と同様の処理により層50s〜54s及びハードマスク56s,74sの積層からなる絶縁膜平坦化層又は絶縁膜剥離防止層を形成することもできる。
【0148】
上記した説明では、ハードマスク用の導電材料として、W,TiWを例示したが、この他にも種々の導電材料を使用可能である。イオンミリング装置において、ミリングレートは、イオン源のガスの種類(一般にAr等の希ガスであるが、O,Cl,SF,CF等を用いることもある)、イオンエネルギー強度、イオンビームの密度、被加工物へのイオンビームの入射角度、被加工物の組成、結晶性、結晶方位、成膜方法等により大きく変化し、ミリング装置の運転状態(運転時間、メンテナンス状態、改修/改造状態)等によっても若干変化する。そこで、発明者は、ある一定条件の下で基準材料SiOのミリングレートを100としてこれに種々の導電材料のミリングレートを比較すると共に種々の導電材料の比抵抗を評価することにより使用可能な導電材料を求めて次のA〜Dグループに分類した。
【0149】
Aグループは、W,WSi(x=1〜3),Ti,TiW,TiSi(x=1〜3),Vを含む。
【0150】
このグループの材料は、ミリングレートが小さく、比抵抗も小さい。膜厚を薄くしてもミリングにより削られ難く、また配線としても低抵抗であるため微細化に有利である。酸化に強く、上層に層間絶縁膜を形成しても安定である。揮発性(蒸気圧の低い)化合物が形成されやすいので、ドライエッチングによるパターニングが可能であり、成膜法としてもスパッタ法に限らずCVD法が使える。なお、Aグループ中の材料の任意の組合せに係る合金も十分に利用可能と考えられる。
【0151】
Bグループは、Mo,MoSi(x=1〜3),Ta,TaSi(x=1〜3),Zr,ZrSi(x=1〜3),Si,Al(結晶性・配向性やドーパントによる)を含む。このグループの材料は、ミリングレートがSiOやNi−Fe合金とほぼ同じレベルであり、比抵抗が小さい(但し、Zrの比抵抗は、40μΩcmと大きい)。ある程度ミリングにより削られ難いので、膜厚をそこそこ薄くできる。また、配線としても低抵抗であるため微細化に有利である。酸化にも強く、上層に層間絶縁膜を形成しても安定である。揮発性(蒸気圧の低い)化合物が形成されやすく、ドライエッチングによるパターニングが可能である。
【0152】
B’グループは、Fe,Cr,CrSi(x=1〜3),Co,CoSi(x=1〜3),Ni,NiSi(x=1〜3),Nb,Os,Re,Irを含む。このグループの材料は、ミリングレートがSiOやNi−Fe合金とほぼ同じレベルであり、比抵抗が小さい。ある程度ミリングにより削られ難いので、膜厚をそこそこ薄くできる。また、配線としても低抵抗であるため微細化に有利である。白金族は酸化にも強く、上層に層間絶縁膜を形成しても安定である。単独元素又は他の磁性金属との合金で強磁性を示すものが多く、TMR素子の特性の妨げにならないよう配慮する必要がある。
【0153】
Cグループは、Cu,Ru,Hf,Pt,Rh,Mnを含む。このグループの材料は、ミリングレートが大きいので、ミリングマスク性が劣るが、比抵抗が小さい(但し、Mnの比抵抗は、258μΩcmと大きい)。ミリングにより削られやすいので、膜厚を厚くする必要がある。配線としては低抵抗である。第2の実施形態で用いたハードマスク60a,60b又は第3の実施形態で用いたハードマスク74Aとしては、使いやすい面もある。
【0154】
Dグループは、Y,Pd,Au,Sn,Ag,Pbを含む。このグループの材料は、ミリングレートがSiOの3倍と大きいが、比抵抗が小さい(但し、Yの比抵抗は、53μΩcmと大きい)。ミリングにより削られやすいので、膜厚を厚くする必要がある。配線としては低抵抗である。Cグループの材料と同様にハードマスク60a,60b又は74Aとしては使いやすい面もある。
【0155】
上記したA〜Dグループのうちからハードマスクの導電材料として好ましい材料を選択すると、A,B,B’グループの材料及びCグループのCu,Pt,Mnを挙げることができる。Cグループ中の他の材料及びDグループの材料は、ハードマスク60a,60b又は74Aの材料として使用可能である。
【0156】
図37は、この発明に係る磁気センサを備えたLSIチップを示すものである。LSIチップLCは、例えばシリコンからなるP型の半導体基板80を備えており、基板80の一方の主面には、酸化シリコンからなるフィールド絶縁膜82が選択酸化法により形成されている。
【0157】
基板80の一主面において、絶縁膜82の素子孔内には、MOS型トランジスタが形成されており、84は、該トランジスタのN型ドレイン領域である。絶縁膜82及びMOS型トランジスタを覆って層間絶縁膜86が形成されており、この絶縁膜86には、ドレイン領域84の一部に対応した第1の接続孔が形成されている。絶縁膜86の上には、第1の接続孔を介してドレイン領域84に接続されるように配線層88が形成されている。
【0158】
絶縁膜86の上には、配線層88を覆って層間絶縁膜90が形成されており、この絶縁膜90には、配線層88の一部に対応した第2の接続孔が形成されている。絶縁膜90の上には、第2の接続孔を介して配線層88に接続されるように下磁性層50cが形成されている。絶縁膜90の上には、下磁性層50k,50A,50sも形成されている。下磁性層50c,50k,50A,50sは、いずれも図1に関して前述したように下から順に導電材層24、反強磁性層26及び強磁性層28を積層したもの又は図16に関して前述したように導電材層24に強磁性層28を重ねたものである。
【0159】
TMR素子Ta,Tbは、図24に関して前述したように下磁性層50Aの上にトンネルバリア層52a,52bをそれぞれ介して上磁性層54a,54bを配置すると共に上磁性層54a,54bの上にそれぞれ電極層(ハードマスク)56a,56bを配置したものである。TMR素子Tcは、下磁性層50cの上にトンネルバリア層52cを介して上磁性層54cを配置すると共に上磁性層54cの上に電極層(ハードマスク)56cを配置したものである。TMR素子Tb及びTcの間に配置された絶縁膜平坦化層Tkは、下磁性層50kの上にトンネルバリア層52kを介して上磁性層54kを配置すると共に上磁性層54kの上に導電材層(ハードマスク)56kを配置したものである。配線層Tsは、上磁性層50sの上にトンネルバリア層52sを介して上磁性層54sを配置すると共に上磁性層54sの上に導電材層(ハードマスク)56sを配置したものである。上磁性層54a,54b,54c,54k,54sは、いずれも図1に関して前述したように強磁性層32により構成したもの又は図16に関して前述したように強磁性層32に反強磁性層を重ねたものである。
【0160】
絶縁膜90の上には、絶縁膜平坦化層Tkと実質的に同一の積層構成を有する絶縁膜剥離防止層(図示せず)を、例えばMOS型トランジスタ回路配置領域又はTMR素子配置領域を取囲むように配置してもよい。TMR素子Ta〜Tc、配線層Ts、絶縁膜平坦化層Tk及び絶縁膜剥離防止層は、前述した第1〜第3の実施形態(変形例も含む)のいずれかに係る製法により製作することができる。
【0161】
絶縁膜90の上には、TMR素子Ta〜Tc、配線層Ts、絶縁膜平坦化層Tk等を覆って層間絶縁膜92が形成されており、絶縁膜92には、電極層56c,56b,56aにそれぞれ対応した第3,第4,第5の接続孔が形成されると共に、導電材層56sの一端近傍の第1の部分及び他端近傍の第2の部分にそれぞれ対応した第6及び第7の接続孔が形成されている。
【0162】
絶縁膜92の上には、第3及び第4の接続孔を介して電極層56c及び56bを相互接続するように配線層94が形成されると共に、第4及び第5の接続孔を介して電極層56a及び導電材層56sの第1の部分を相互接続するように配線層96が形成されている。絶縁膜92の上には、第7の接続孔を介して導電材層56sの第2の部分に接続されるようにボンディング電極層98が形成されており、電極層98は、その下の配線層Tsの一部と共にボンディングパッドを構成する。電極層98には、ボンディングワイヤが接続される。なお、絶縁膜92の上には、配線層94,96を覆い且つ電極層98を露呈するように保護絶縁膜が形成されるが、図示を省略した。
【0163】
配線層Tsは、上磁性層54sの上に導電材層(ハードマスク)56sを配置した第1の配線路と、導電材層を含む下磁性層50sからなる第2の配線路とを有し、第1及び第2の配線路は、トンネルバリア層52sにより電気的に分離されている。第1及び第2の配線路は、いずれも導電材層を含んでいるので、低抵抗配線を実現可能である。第1の配線路は、例えばTMR素子Taの電極層56aと同一のレベルの配線であるため、絶縁膜92を平坦化することにより配線層96を平坦化すると共に接続孔を浅くして接続孔の加工や埋込みを容易にすることができる。第2の配線路は、例えば線88aで示すように配線層88に接続することにより基板80内の回路素子のための配線として使用可能である。また、図25〜27又は図34〜36に関して前述したように第1及び第2の配線路を配線層Tsの両側部に形成した導電層により短絡させることにより第1又は第2の配線路を単独で使用する場合に比べて配線抵抗を約半分に低減可能である。従って、配線層Tsを設けることで集積回路における配線設計の自由度が向上する。
【0164】
絶縁膜平坦化層TkをTMR素子Tb及びTcの間の空間に配置すると、絶縁膜92の平坦化が容易となり、配線層94を平坦状に延長させることができる。また、前述したように絶縁膜剥離防止層を設けると、絶縁膜92の剥離を防止することができると共にLSIチップの内部への水分浸入を抑制することができる。
【0165】
図37の構成において、TMR素子Ta〜Tc、配線層Ts、絶縁膜平坦化層Tk及び絶縁膜剥離防止層は、配線層88と同じ配線レベル(絶縁膜86の上)に設けてもよく、あるいは図示した配置位置より上の任意の配線レベルに設けてもよい。
【0166】
なお、この発明は、上記したような磁気センサに限らず、他の磁気センサ、磁気メモリ、磁気ヘッド等のTMR素子応用製品(磁気トンネル接合装置)の製造にも適用することができる。
【0167】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、磁気トンネル接合積層の残存部に導電材からなるハードマスクを選択マスクとする選択エッチング処理を施して磁気トンネル接合部及び電極層を形成した後、磁気トンネル接合部においてトンネルバリア層の端部に選択エッチング処理の際に堆積した堆積物を除去したり、導電材からなるハードマスクを選択マスクとする選択エッチング処理により磁気トンネル接合部の下に電極層を形成した後、磁気トンネル接合部においてトンネルバリア層の端部からハードマスクを除去したりするので、トンネルバリア層の上下の金属層間に電気的な短絡やリークが発生するのを防止でき、TMR素子の製造歩留りが向上すると共にTMR素子の特性劣化を防止できる効果が得られる。また、この発明の製法では、酸化性又は窒化性雰囲気中でイオンミリング処理を行なう必要がないので、エッチング終点の検出精度が低下しない利点もある。
【0168】
その上、導電材からなるハードマスクを選択マスクとする選択エッチング処理では、堆積物(エッチング生成物)がレジスト変性成分等の有機物を含まないので、磁気トンネル接合部の側壁に付着した堆積物を有機溶媒等を用いずに簡単に除去することができ、コスト低減が可能になる効果も得られる。また、微細なパターンの形成が容易であると共に加工精度が高い利点もある。
【0169】
さらに、TMR素子形成処理の一部を流用してTMR素子と積層構成が同一の配線層、絶縁膜平坦化層又は絶縁膜剥離防止層を形成するので、低コストで配線設計の自由度向上、絶縁膜の平坦性又は安定性の向上等を達成できる効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の第1の実施形態に係る磁気センサの製法における積層形成工程及びレジスト層形成工程を示す基板断面図である。
【図2】 図1の工程に続くマスク形成工程を示す基板断面図である。
【図3】 図2の工程に続くレジスト除去工程及びイオンミリング工程を示す基板断面図である。
【図4】 図3の工程に続く側壁堆積膜除去工程及びレジスト層形成工程を示す基板断面図である。
【図5】 図4の工程に続くマスク形成工程を示す基板断面図である。
【図6】 図5の工程に続くレジスト除去工程及びイオンミリング工程を示す基板断面図である。
【図7】 図6の工程に続く側壁堆積膜除去工程を示す基板断面図である。
【図8】 図7の工程に続く絶縁膜形成工程及び接続孔形成工程を示す基板断面図である。
【図9】 図8の工程に続く配線形成工程を示す基板断面図である。
【図10】 配線部における図1〜3対応の配線層形成工程を示す基板断面図である。
【図11】 配線部における図4,5対応の側壁堆積膜除去工程、レジスト層形成工程及びイオンミリング工程を示す基板断面図である。
【図12】 配線部における図6,7対応のレジスト除去工程、イオンミリング工程及び側壁堆積膜除去工程を示す基板断面図である。
【図13】 TMR素子の接続状況を示す上面図である。
【図14】 第1の実施形態に関する第1の変形例におけるマスク形成工程を示す基板断面図である。
【図15】 図14の工程に続くイオンミリング工程及び側壁堆積膜除去工程を示す基板断面図である。
【図16】 第1の実施形態に関する第2の変形例におけるマスク形成工程を示す基板断面図である。
【図17】 図16の工程に続くイオンミリング工程及び側壁堆積膜除去工程を示す基板断面図である。
【図18】 この発明の第2の実施形態に係る磁気センサの製法における積層形成工程及びレジスト層形成工程を示す基板断面図である。
【図19】 図18の工程に続くマスク形成工程を示す基板断面図である。
【図20】 図19の工程に続くイオンミリング工程を示す基板断面図である。
【図21】 図20の工程に続く側壁堆積膜除去工程及び導電材層形成工程を示す基板断面図である。
【図22】 図21の工程に続くレジスト層形成工程を示す基板断面図である。
【図23】 図22の工程に続くマスク形成工程を示す基板断面図である。
【図24】 図23の工程に続くイオンミリング工程及び側壁堆積膜除去工程を示す基板断面図である。
【図25】 配線部における図18〜22対応の工程を示す基板断面図である。
【図26】 配線部における図23対応の工程を示す基板断面図である。
【図27】 配線部における図24対応の工程を示す基板断面図である。
【図28】 この発明の第3の実施形態に係る磁気センサの製法における積層形成工程及びレジスト層形成工程を示す基板断面図である。
【図29】 図28の工程に続くマスク形成工程を示す基板断面図である。
【図30】 図29の工程に続くイオンミリング工程及び側壁堆積膜除去工程を示す基板断面図である。
【図31】 図30の工程に続くレジスト層形成工程を示す基板断面図である。
【図32】 図31の工程に続くマスク形成工程を示す基板断面図である。
【図33】 図32の工程に続くイオンミリング工程及び側壁堆積膜除去工程を示す基板断面図である。
【図34】 配線部における図28〜31対応の工程を示す基板断面図である。
【図35】 配線部における図32対応の工程を示す基板断面図である。
【図36】 配線部における図33対応の工程を示す基板断面図である。
【図37】 この発明に係る磁気センサを備えたLSIチップを示す断面図である。
【図38】 従来の磁気センサの製法における積層形成工程及びレジスト層形成工程を示す基板断面図である。
【図39】 図38の工程に続くイオンミリング工程及びレジスト除去工程を示す基板断面図である。
【図40】 図39の工程に続くレジスト層形成工程を示す基板断面図である。
【図41】 図40の工程に続くイオンミリング工程及びレジスト除去工程を示す基板断面図である。
【図42】 図41の工程に続く絶縁膜形成工程及び接続孔形成工程を示す基板断面図である。
【図43】 図42の工程に続く配線形成工程を示す基板断面図である。
【図44】 図39のイオンミリング工程における側壁堆積膜の形成状況を示す基板断面図である。
【図45】 図41のイオンミリング工程における側壁堆積膜の形成状況を示す基板断面図である。
【符号の説明】
20,80:半導体基板、22,46,82,86,90,92:絶縁膜、24,34,56,60,74:導電材層、26,33A,33B:反強磁性層、28,32:強磁性層、30,52:トンネルバリア層、36a,36b,40a〜40c,40s,58,62a,62b,62s,70a,70b,76,76s:レジスト層、38,42,59,64,72,78:分離溝、34A,34B,34a〜34c,34s,56A,56a,56b,56s,60a,60b,60s,74A,74s:ハードマスク、46a〜46c:接続孔、48a,48b,88,94,96,Ts:配線層、50:下磁性層、54:上磁性層、84:ドレイン領域、98:ボンディング電極層、DP10〜DP25,DP31:側壁堆積膜、Ra,Rb,Rs:積層残存部、Ta〜Tc:TMR素子、ATa,ATb,ATs:磁気トンネル接合部、LC:LSIチップ、Tk:絶縁膜平坦化層。

Claims (9)

  1. 基板の絶縁性の一主面に第1の導電材層を介して磁気トンネル接合積層を形成する工程であって、前記第1の導電材層の上に下から順に反強磁性層、第1の磁性層、トンネルバリア層及び第2の磁性層を重ねて前記磁気トンネル接合積層を形成するものと、
    前記磁気トンネル接合積層を覆って第2の導電材層を形成する工程と、
    前記磁気トンネル接合積層を所望の電極パターンに従って覆うように前記第2の導電材層を残存させるべく前記第2の導電材層に第1の選択エッチング処理を施すことにより前記第2の導電材層の残存部部分からなる第1のハードマスクを形成する工程と、
    前記磁気トンネル接合積層に前記第1のハードマスクを選択マスクとする第2の選択エッチング処理を施すことにより前記電極パターンに従って前記磁気トンネル接合積層を残存させる工程と、
    前記磁気トンネル接合積層の残存部を所望の素子パターンに従って覆うように前記第1のハードマスクを残存させるべく前記第1のハードマスクに第3の選択エッチング処理を施すことにより前記第1のハードマスクの残存部分からなる第2のハードマスクを形成する工程と、
    前記磁気トンネル接合積層の残存部に前記第2のハードマスクを選択マスクとする第4の選択エッチング処理を施して前記磁気トンネル接合積層の残存部を前記反強磁性層に達するまでエッチングすることにより前記第1の磁性層、前記トンネルバリア層及び前記第2の磁性層の各々の残存部分からなる磁気トンネル接合部を形成すると共にこの磁気トンネル接合部の下に前記第1の導電材層及び前記反強磁性層の各々の残存部分からなる第1の電極層を残存させ、しかも前記第2のハードマスクを第2の電極層として残存させる工程と、
    前記磁気トンネル接合部において前記トンネルバリア層の端部に前記第4の選択エッチング処理の際に堆積した堆積物を除去する工程と
    を含む磁気トンネル接合素子の製法。
  2. 基板の絶縁性の一主面に第1の導電材層を介して磁気トンネル接合積層を形成する工程であって、前記第1の導電材層の上に下から順に反強磁性層、第1の磁性層、トンネルバリア層及び第2の磁性層を重ねるか又は前記第1の導電材層の上に下から順に第1の磁性層、トンネルバリア層、第2の磁性層及び反強磁性層を重ねて前記磁気トンネル接合積層を形成するものと、
    前記磁気トンネル接合積層を覆って第2の導電材層を形成する工程と、
    前記磁気トンネル接合積層を所望の電極パターンに従って覆うように前記第2の導電材層を残存させるべく前記第2の導電材層に第1の選択エッチング処理を施すことにより前記第2の導電材層の残存部部分からなる第1のハードマスクを形成する工程と、
    前記磁気トンネル接合積層に前記第1のハードマスクを選択マスクとする第2の選択エッチング処理を施すことにより前記電極パターンに従って前記磁気トンネル接合積層を残存させる工程と、
    前記磁気トンネル接合積層の残存部を所望の素子パターンに従って覆うように前記第1のハードマスクを残存させるべく前記第1のハードマスクに第3の選択エッチング処理を施すことにより前記第1のハードマスクの残存部分からなる第2のハードマスクを形成する工程と、
    前記磁気トンネル接合積層の残存部に前記第2のハードマスクを選択マスクとする第4の選択エッチング処理を施して前記磁気トンネル接合積層の残存部を前記第1の導電材層に達するまでエッチングすることにより前記反強磁性層、前記第1の磁性層、前記トンネルバリア層及び前記第2の磁性層の各々の残存部分又は前記第1の磁性層、前記トンネルバリア層、前記第2の磁性層及び前記反強磁性層の各々の残存部分からなる磁気トンネル接合部を形成すると共にこの磁気トンネル接合部の下に前記第1の導電材層の残存部分からなる第1の電極層を残存させ、しかも前記第2のハードマスクを第2の電極層として残存させる工程と、前記磁気トンネル接合部において前記トンネルバリア層の端部に前記第4の選択エッチング処理の際に堆積した堆積物を除去する工程と
    を含む磁気トンネル接合素子の製法。
  3. 基板の絶縁性の一主面に第1の導電材層を介して磁気トンネル接合積層を形成する工程であって、前記第1の導電材層の上に下から順に反強磁性層、第1の磁性層、トンネルバリア層及び第2の磁性層を重ねて前記磁気トンネル接合積層を形成するものと、
    前記磁気トンネル接合積層を覆って第2の導電材層を形成する工程と、
    前記磁気トンネル接合積層を所望の電極パターンに従って覆うように前記第2の導電材層を残存させるべく前記第2の導電材層に第1の選択エッチング処理を施すことにより前記第2の導電材層の残存部部分からなる第1のハードマスクを形成する工程と、
    前記磁気トンネル接合積層に前記第1のハードマスクを選択マスクとする第2の選択エッチング処理を施すことにより前記電極パターンに従って前記磁気トンネル接合積層を残存させる工程と、
    前記第1のハードマスクと前記磁気トンネル接合積層の残存部とを覆って第3の導電材層を形成する工程と、
    前記磁気トンネル接合積層の残存部を所望の素子パターンに従って覆うように前記第1のハードマスク及び前記第3の導電材層を残存させるべく前記第1のハードマスク及び前記第3の導電材層に第3の選択エッチング処理を施すことにより前記第1のハードマスク及び前記第3の導電材層の各々の残存部分からなる第2のハードマスクを形成する工程と、
    前記磁気トンネル接合積層の残存部に前記第2のハードマスクを選択マスクとする第4の選択エッチング処理を施して前記磁気トンネル接合積層の残存部を前記反強磁性層に達するまでエッチングすることにより前記第1の磁性層、前記トンネルバリア層及び前記第2の磁性層の各々の残存部分からなる磁気トンネル接合部を形成すると共にこの磁気トンネル接合部の下に前記第1の導電材層及び前記反強磁性層の各々の残存部分からなる第1の電極層を残存させ、しかも前記第2のハードマスクのうち少なくとも前記第1のハードマスクの残存部分を第2の電極層として残存させる工程と、
    前記磁気トンネル接合部において前記トンネルバリア層の端部に前記第4の選択エッチング処理の際に堆積した堆積物を除去する工程と
    を含む磁気トンネル接合素子の製法。
  4. 基板の絶縁性の一主面に第1の導電材層を介して磁気トンネル接合積層を形成する工程であって、前記第1の導電材層の上に下から順に反強磁性層、第1の磁性層、トンネルバリア層及び第2の磁性層を重ねるか又は前記第1の導電材層の上に下から順に第1の磁性層、トンネルバリア層、第2の磁性層及び反強磁性層を重ねて前記磁気トンネル接合積層を形成するものと、
    前記磁気トンネル接合積層を覆って第2の導電材層を形成する工程と、
    前記磁気トンネル接合積層を所望の電極パターンに従って覆うように前記第2の導電材層を残存させるべく前記第2の導電材層に第1の選択エッチング処理を施すことにより前記第2の導電材層の残存部部分からなる第1のハードマスクを形成する工程と、
    前記磁気トンネル接合積層に前記第1のハードマスクを選択マスクとする第2の選択エッチング処理を施すことにより前記電極パターンに従って前記磁気トンネル接合積層を残存させる工程と、
    前記第1のハードマスクと前記磁気トンネル接合積層の残存部とを覆って第3の導電材層を形成する工程と、
    前記磁気トンネル接合積層の残存部を所望の素子パターンに従って覆うように前記第1のハードマスク及び前記第3の導電材層を残存させるべく前記第1のハードマスク及び前記第3の導電材層に第3の選択エッチング処理を施すことにより前記第1のハードマスク及び前記第3の導電材層の各々の残存部分からなる第2のハードマスクを形成する工程と、
    前記磁気トンネル接合積層の残存部に前記第2のハードマスクを選択マスクとする第4の選択エッチング処理を施して前記磁気トンネル接合積層の残存部を前記第1の導電材層に達するまでエッチングすることにより前記反強磁性層、前記第1の磁性層、前記トンネルバリア層及び前記第2の磁性層の各々の残存部分又は前記第1の磁性層、前記トンネルバリア層、前記第2の磁性層及び前記反強磁性層の各々の残存部分からなる磁気トンネル接合部を形成すると共にこの磁気トンネル接合部の下に前記第1の導電材層の残存部分からなる第1の電極層を残存させ、しかも前記第2のハードマスクのうち少なくとも前記第1のハードマスクの残存部分を第2の電極層として残存させる工程と、
    前記磁気トンネル接合部において前記トンネルバリア層の端部に前記第4の選択エッチング処理の際に堆積した堆積物を除去する工程と
    を含む磁気トンネル接合素子の製法。
  5. 基板の絶縁性の一主面に第1の導電材層を介して磁気トンネル接合積層を形成する工程であって、前記第1の導電材層の上に下から順に反強磁性層、第1の磁性層、トンネルバリア層及び第2の磁性層を重ねて前記磁気トンネル接合積層を形成するものと、
    前記磁気トンネル接合積層を覆って第2の導電材層を形成する工程と、
    前記磁気トンネル接合積層を所望の素子パターンに従って覆うように前記第2の導電材層を残存させるべく前記第2の導電材層に第1の選択エッチング処理を施すことにより前記第2の導電材層の残存部部分からなる第1のハードマスクを形成する工程と、
    前記磁気トンネル接合積層に前記第1のハードマスクを選択マスクとする第2の選択エッチング処理を施して前記磁気トンネル接合積層を前記反強磁性層に達するまでエッチングすることにより前記第1の磁性層、前記トンネルバリア層及び前記第2の磁性層の各々の残存部分からなる磁気トンネル接合部を形成する工程と、
    前記第1のハードマスクと前記磁気トンネル接合部と前記反強磁性層の露呈部とを覆って第3の導電材層を形成する工程と、
    前記第1のハードマスクと前記磁気トンネル接合部と前記反強磁性層の露呈部とを所望の電極パターンに従って覆うように前記第3の導電材層を残存させるべく前記第3の導電材層に第3の選択エッチング処理を施すことにより前記第3の導電材層の残存部分からなる第2のハードマスクを形成する工程と、
    前記第1の導電材層と前記反強磁性層との積層に前記第2のハードマスクを選択マスクとする第4の選択エッチング処理を施すことにより該積層の残存部分からなる第1の電極層を前記磁気トンネル接合部の下に形成する工程と、
    前記第1の電極層の形成中又は形成後に前記磁気トンネル接合部において前記トンネルバリア層の端部から前記第2のハードマスクを除去すると共に少なくとも前記第1のハードマスクを第2の電極層として残存させる工程と
    を含む磁気トンネル接合素子の製法。
  6. 基板の絶縁性の一主面に第1の導電材層を介して磁気トンネル接合積層を形成する工程であって、前記第1の導電材層の上に下から順に反強磁性層、第1の磁性層、トンネルバリア層及び第2の磁性層を重ねるか又は前記第1の導電材層の上に下から順に第1の磁性層、トンネルバリア層、第2の磁性層及び反強磁性層を重ねて前記磁気トンネル接合積層を形成するものと、
    前記磁気トンネル接合積層を覆って第2の導電材層を形成する工程と、
    前記磁気トンネル接合積層を所望の素子パターンに従って覆うように前記第2の導電材層を残存させるべく前記第2の導電材層に第1の選択エッチング処理を施すことにより前記第2の導電材層の残存部部分からなる第1のハードマスクを形成する工程と、
    前記磁気トンネル接合積層に前記第1のハードマスクを選択マスクとする第2の選択エッチング処理を施して前記磁気トンネル接合積層を前記第1の導電材層に達するまでエッチングすることにより前記磁気トンネル接合積層の残存部分からなる磁気トンネル接合部を形成する工程と、
    前記第1のハードマスクと前記磁気トンネル接合部と前記第1の導電材層の露呈部とを覆って第3の導電材層を形成する工程と、
    前記第1のハードマスクと前記磁気トンネル接合部と前記第1の導電材層の露呈部とを所望の電極パターンに従って覆うように前記第3の導電材層を残存させるべく前記第3の導電材層に第3の選択エッチング処理を施すことにより前記第3の導電材層の残存部分からなる第2のハードマスクを形成する工程と、
    前記第1の導電材層に前記第2のハードマスクを選択マスクとする第4の選択エッチング処理を施すことにより前記第1の導電材層の残存部分からなる第1の電極層を前記磁気トンネル接合部の下に形成する工程と、
    前記第1の電極層の形成中又は形成後に前記磁気トンネル接合部において前記トンネルバリア層の端部から前記第2のハードマスクを除去すると共に少なくとも前記第1のハードマスクを第2の電極層として残存させる工程と
    を含む磁気トンネル接合素子の製法。
  7. 絶縁性の一主面を有する基板と、
    前記一主面に形成された磁気トンネル接合素子であって、前記一主面に下から順に第1の導電材層、反強磁性層、第1の磁性層、トンネルバリア層、第2の磁性層及び第2の導電材層を重ねるか又は前記一主面に下から順に第1の導電材層、第1の磁性層、トンネルバリア層、第2の磁性層、反強磁性層及び第2の導電材層を重ねて構成されたものと、
    前記一主面に形成され、前記磁気トンネル接合素子と同一の積層構成を有する積層構造体からなる配線層とを備え、
    前記配線層が、これを構成する第2の導電材層を前記磁気トンネル接合素子に電気接続して少なくとも前記第2の導電材層の面方向に電流を流す配線層として用いられる磁気トンネル接合装置。
  8. 前記積層構造体においてトンネルバリア層を挟む2つの磁性層を短絡するように前記積層構造体の少なくとも側部を覆って形成された導電層を更に備えた請求項7記載の磁気トンネル接合装置。
  9. 絶縁性の一主面を有する基板と、
    前記一主面に形成された磁気トンネル接合素子であって、前記一主面に下から順に第1の導電材層、反強磁性層、第1の磁性層、トンネルバリア層、第2の磁性層及び第2の導電材層を重ねるか又は前記一主面に下から順に第1の導電材層、第1の磁性層、トンネルバリア層、第2の磁性層、反強磁性層及び第2の導電材層を重ねて構成されたものと、
    前記一主面に形成され、前記磁気トンネル接合素子と同一の積層構成を有する補助積層と、
    前記磁気トンネル接合素子及び前記補助積層を覆って前記一主面に形成された絶縁膜とを備え、
    前記補助積層を、前記絶縁膜を平坦化するための平坦化層又は前記絶縁膜の剥離を防止するための剥離防止層として用いた磁気トンネル接合装置。
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