JP3918484B2 - 磁気トンネル接合素子の製法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、磁気センサ等に用いられる磁気トンネル接合素子の製法に関するものである。この後の説明では、磁気トンネル接合素子をTMR素子と略記する。
【0002】
【従来の技術】
従来、複数のTMR素子を備えた磁気センサの製法としては、図12〜17に示すものが提案されている(例えば、本願と同一出願人の出願に係る特願平11−368776号参照)。
【0003】
図12の工程では、シリコン基板1の表面を覆う酸化シリコン膜2の上に下電極層としてのCr層3と、反強磁性層としてのRh−Mn合金層4と、下強磁性層としてのNi−Fe合金層5とを順次に重ねてスパッタ法で形成した後、Ni−Fe合金層5の上にAl層を形成して酸化することによりトンネルバリア層としてのアルミナ層6を形成し、アルミナ層6の上に上強磁性層としてのNi−Fe合金/Co積層(Coが下層)7と、上電極層としてのMo層8とを順次に重ねてスパッタ法で形成する。Mo層8の上には、それぞれ図7の26a,26bに示すような四辺形状のパターンを有するレジスト層9a,9bを周知のホトリソグラフィ処理により形成する。
【0004】
次に、図13の工程では、レジスト層9a,9bをマスクとする選択的イオンミリング処理により層3〜8の積層に分離溝10を酸化シリコン膜2に達するように形成することにより該積層を層3〜8の部分3a〜8aからなる第1の積層部分と層3〜8の部分3b〜8bからなる第2の積層部分とに分離する。この後、レジスト層9a,9bを除去する。
【0005】
図14の工程では、図13の工程で得られた第1及び第2の積層部分の上にそれぞれレジスト層9c,9d及びレジスト層9eをホトリソグラフィ処理により形成する。レジスト層9c,9d,9eのパターンは、図7のTa,Tb,Tcに示すような四辺形状のパターンとする。
【0006】
図15の工程では、レジスト層9c〜9eをマスクとする選択的イオンミリング処理(又は選択的ウエットエッチング処理)により第1及び第2の積層部分に分離溝12を層部分4a,4bに達するように形成することによりTMR素子Ta,Tb,Tcを得る。TMR素子Taは、分離溝10で囲まれた層3,4の部分3a,4aと分離溝12で囲まれた層5〜8の部分5a〜8aとの積層からなり、TMR素子Tbは、分離溝10で囲まれた層3,4の部分3a,4aと分離溝12で囲まれた層5〜8の部分5a〜8aとの積層からなる。層部分3a,4aの積層は、TMR素子Ta,Tbに共通の電極層であり、TMR素子Ta,Tbを相互接続している。TMR素子Tcは、分離溝10で層部分3a、4aから分離された層3,4の部分3b,4bと分離溝12で囲まれた層5〜8の部分5b〜8bとの積層からなる。イオンミリング処理の後、レジスト層9c〜9eを除去する。
【0007】
図16の工程では、TMR素子Ta〜Tc及び分離溝10,12を覆って基板上面にスパッタ法により層間絶縁膜としての酸化シリコン膜13を形成する。そして、選択的イオンミリング処理によりTMR素子Ta〜TcのMo層8a,8a,8bにそれぞれ対応する接続孔13a〜13cを酸化シリコン膜13に形成する。
【0008】
図17の工程では、酸化シリコン膜13の上に接続孔13a〜13cを覆ってAlをスパッタ法で被着した後、その被着層を選択的イオンミリング処理によりパターニングして配線層としてのAl層14a,14bを形成する。Al層14aは、接続孔13aを介してTMR素子TaのMo層8aに接続され、Al層14bは、接続孔13b,13cを介してTMR素子Tb,TcのMo層8a,8bを相互接続する。この結果、TMR素子Ta〜Tcは、直列接続されたことになる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記した従来技術によると、図15の工程で分離溝12を形成する際に分離溝10の底部で酸化シリコン膜2がエッチングされるため、分離溝10の深さDがエッチング分だけ増大し、分離溝10の段差が急峻となる。このため、図16の工程でスパッタ法により酸化シリコン膜13を形成すると、分離溝10の開口端の近傍部Qで膜欠陥が生じやすく、図17の工程でAl層14bを形成すると、Al層14bと層部分4aとが膜欠陥を介して短絡する不良を生ずることがある。なお、スパッタ法に比べて段差被覆性が良好なCVD(ケミカル・ベーパー・デポジション)法は、膜欠陥は生じないものの、400℃程度の処理となり、TMR素子が高温に弱いため、酸化シリコン膜13の形成に適していない。
【0010】
基板1の表面に酸化シリコン膜2のような透明性の絶縁膜が存在する場合、図14のホトリソグラフィ処理では、露光条件が安定せず、レジスト層9c〜9eの寸法精度が低下したり、分離溝10内等にレジスト残りが生じたりすることがある。露光条件が安定しない原因は、酸化シリコン膜2の形成時に生ずる膜厚のばらつきに対して分離溝10の形成時に生ずるオーバーエッチ量のばらつきが加算されることで基板1の面内において分離溝10直下の膜2の厚さdが一定とならない(相当にばらつく)ことにある。
【0011】
図15のイオンミリング処理では、エッチング終点検出法としてプラズマ発光測定法を用いることが多い。この方法を用いた場合、反強磁性層としてのRh−Mn合金層4a,4bの構成原子に基づく発光を検出してイオンミリングを停止する。図15の工程の前に分離溝10を形成しておくと、図15の工程においてRh−Mn合金層4a,4bのの露出面積が分離溝10に相当する分だけ減少するため、発光検出に十分な信号強度が得られず、エッチング終点の検出精度が低下する。従って、アンダーエッチングによりTMR素子Tb,Tc間の短絡を招いたり、オーバーエッチングによりTMR素子Ta,Tb間で接続抵抗の増大(更には断線)を招いたりすることがあった。
【0012】
従来、TMR素子の製法としては、磁気トンネル接合積層を選択的イオンミリング処理によりパターニングしてTMR素子を形成する際に酸化性又は窒化性雰囲気中でイオンミリングを行なうことによりTMR素子の側壁に酸化物又は窒化物からなる絶縁層を形成してトンネルバリア層の端部にてリーク電流の低減を図るものが知られている(例えば、特開2001−52316号公報参照)。このようなイオンミリング処理を図15の工程で採用した場合、酸素又は窒素を含まない雰囲気中でイオンミリングを行なう場合に比べてエッチレートが低下するため、単位時間当りの励起原子の発生量が減少し、発光検出に必要な信号強度が低下する。従って、エッチング終点の検出が一層困難となり、アンダーエッチング又はオーバーエッチングが一層発生しやすくなる。
【0013】
この発明の目的は、上記のような問題点を解決し、高い製造歩留りを得ることができる新規なTMR素子の製法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る第1のTMR素子の製法は、
基板の絶縁性の一主面に導電材層を介して磁気トンネル接合積層を形成する工程であって、前記導電材層の上に下から順に反強磁性層、第1の磁性層、トンネルバリア層及び第2の磁性層を重ねて前記磁気トンネル接合積層を形成するものと、
前記第1の磁性層、前記トンネルバリア層及び前記第2の磁性層を含む積層を所望の素子パターンに従って残存させるように該積層に第1の選択エッチング処理を施すことにより該積層の残存部分からなる磁気トンネル接合部を形成する工程と、
前記磁気トンネル接合部を形成した後、前記導電材層と前記反強磁性層との積層を前記磁気トンネル接合部より広い電極パターンに従って残存させるように該積層に第2の選択エッチング処理を施すことにより該積層の残存部分からなる電極層を前記磁気トンネル接合部の下に形成する工程と
を含むものである。
【0015】
第1のTMR素子の製法によれば、第1の磁性層、トンネルバリア層及び第2の磁性層を含む積層に第1の選択エッチング処理を施して磁気トンネル接合部を形成した後、導電材層と反強磁性層との積層に第2の選択エッチング処理を施して磁気トンネル接合部の下に電極層を形成するので、導電材層の下地膜(図15の酸化シリコン膜2に対応)は、第2の選択エッチング処理時にエッチングされるものの、第1の選択エッチング処理時にはエッチングされず、電極層の端部における段差を低くすることができる。従って、磁気トンネル接合部及び電極層を覆ってスパッタ法で絶縁膜を形成する際に絶縁膜に欠陥が生じにくく、絶縁膜の上に形成される配線層が絶縁膜の欠陥を介して電極層と短絡するような不良を低減することができる。
【0016】
また、第1の選択エッチング処理では、透明性の下地絶縁膜(図15の酸化シリコン膜2に対応)をエッチングしないので、基板面内における下地絶縁膜の膜厚ばらつきが低減される。このため、第2の選択エッチング処理において選択マスクとしてのレジスト層を形成するためのホトリソグラフィ処理では、露光条件が安定し、レジスト層の寸法精度が向上すると共にレジスト残りの発生が抑制される。
【0017】
その上、第1の選択エッチング処理は、導電材層と反強磁性層との積層に分離溝等が存在しない状態で行なわれるので、導電材層と反強磁性層との積層の露出面積が増大する。このため、エッチング終点検出法としてプラズマ発光測定法を用いても、発光検出に十分な信号強度が得られ、エッチング終点の検出精度が向上する。この場合において、エッチング処理として酸化性又は窒化性雰囲気中でイオンミリング処理を行なっても、上記した露出面積の増大により酸素又は窒素の添加に伴う信号強度の低下を補うことができるので、エッチング終点を十分な精度で検出可能となる。従って、アンダーエッチングによるTMR素子間の短絡やオーバーエッチングによるTMR素子間の接続抵抗の増大(又は断線)を防止することができる。
【0018】
この発明に係る第2のTMR素子の製法は、基板の絶縁性の一主面に導電材層を介して磁気トンネル接合積層を形成する工程であって、前記導電材層の上に下から順に反強磁性層、第1の磁性層、トンネルバリア層及び第2の磁性層を重ねて前記磁気トンネル接合積層を形成するものと、前記磁気トンネル接合積層を所望の素子パターンに従って残存させるように前記磁気トンネル接合積層に第1の選択エッチング処理を施すことにより前記磁気トンネル接合積層の残存部分からなる磁気トンネル接合部を形成する工程と、前記磁気トンネル接合部を形成した後、前記導電材層を前記磁気トンネル接合部より広い電極パターンに従って残存させるように前記導電材層に第2の選択エッチング処理を施すことにより前記導電材層の残存部分からなる電極層を前記磁気トンネル接合部の下に形成する工程とを含み、前記第1の選択エッチング処理ではエッチング処理として酸化性又は窒化性雰囲気中でイオンミリング処理を行なうと共に、このイオンミリング処理中に前記導電材層の構成原子に基づく発光を検出してイオンミリングを停止するものである。
【0019】
第2のTMR素子の製法において、磁気トンネル接合積層を形成する工程では、導電材層の上に下から順に第1の磁性層、トンネルバリア層、第2の磁性層及び反強磁性層を重ねて磁気トンネル接合積層を形成してもよい。この場合、磁気トンネル接合部を形成する工程及び電極層を形成する工程は、第2のTMR素子の製法に関して前述したと同様に実行する。
【0020】
第2のTMR素子の製法によれば、磁気トンネル接合積層に第1の選択エッチング処理を施して磁気トンネル接合部を形成した後、導電材層に第2の選択エッチング処理を施して磁気トンネル接合部の下に電極層を形成するので、導電材層の下地膜(図15の酸化シリコン膜2に対応)は、第2の選択エッチング処理時にエッチングされるものの、第1の選択エッチング処理時にはエッチングされず、電極層の端部における段差を低くすることができる。従って、磁気トンネル接合部及び電極層を覆ってスパッタ法で絶縁膜を形成する際に絶縁膜に欠陥が生じにくく、絶縁膜の上に形成される配線層が絶縁膜の欠陥を介して電極層と短絡するような不良を低減することができる。
【0021】
また、第1の選択エッチング処理では、透明性の下地絶縁膜(図15の酸化シリコン膜2に対応)をエッチングしないので、基板面内における下地絶縁膜の膜厚ばらつきが低減される。このため、第2の選択エッチング処理において選択マスクとしてのレジスト層を形成するためのホトリソグラフィ処理では、露光条件が安定し、レジスト層の寸法精度が向上すると共にレジスト残りの発生が抑制される。
【0022】
その上、第1の選択エッチング処理は、導電材層に分離溝等が存在しない状態で行なわれるので、導電材層の露出面積が増大する。このため、エッチング終点検出法としてプラズマ発光測定法を用いても、発光検出に十分な信号強度が得られ、エッチング終点の検出精度が向上する。この場合において、エッチング処理として酸化性又は窒化性雰囲気中でイオンミリング処理を行なっても、上記した露出面積の増大により酸素又は窒素の添加に伴う信号強度の低下を補うことができるので、エッチング終点を十分な精度で検出可能となる。従って、アンダーエッチングによるTMR素子間の短絡やオーバーエッチングによるTMR素子間の接続抵抗の増大(又は断線)を防止することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
図1〜6は、この発明の一実施形態に係るTMR素子を備えた磁気センサの製法を示すもので、各々の図に対応する工程(1)〜(6)を順次に説明する。
【0024】
(1)例えばシリコンからなる半導体基板10の表面に熱酸化法により酸化シリコンからなる絶縁膜22を形成する。表面に絶縁膜22を形成した半導体基板10の代りに、ガラス又は石英等からなる絶縁性基板を用いてもよい。次に、絶縁膜22の上には、スパッタ法によりCrからなる導電材層24を10〜30nmの厚さに形成する。導電材層24としては、Tiの単層又はTi層にCu層を重ねた積層等を用いてもよく、あるいはW,Ta,Au,Mo等の導電性非磁性金属材料を用いてもよい。
【0025】
次に、導電材層24の上には、スパッタ法によりPt−Mn合金からなる反強磁性層26を30〜50nmの厚さに形成する。反強磁性層26としては、Rh−Mn合金、Fe−Mn合金等を用いてもよい。この後、反強磁性層26の上には、スパッタ法によりNi−Fe合金からなる強磁性層28を10nmの厚さに形成する。強磁性層28としては、Ni,Fe,Coのうちのいずれかの金属、Ni,Fe,Coのうちの2つ以上の金属の合金又は金属間化合物等を用いてもよく、あるいはNi−Fe合金層28の下にCo層を敷くなどして積層構造のものを用いてもよい。
【0026】
次に、強磁性層28の上には、スパッタ法によりAl層を1〜2nmの厚さに形成する。そして、Al層に酸化処理を施すことによりアルミナ(酸化アルミニウム)からなるトンネルバリア層30を形成する。トンネルバリア層30としては、金属又は半導体を改変した酸化物(例えばTiOx,SiO,MgO,Al+SiO[サイアロン])、窒化物(例えばAlN,Si)、酸化窒化物(例えばAlN+Al)等を用いてもよい。
【0027】
次に、トンネルバリア層30の上には、スパッタ法によりNi−Fe合金からなる強磁性層32を20〜100nmの厚さに形成する。強磁性層32としては、強磁性層28に関して前述したと同様の強磁性層を用いることができる。この後、強磁性層32の上には、スパッタ法によりMoからなる導電材層34を30〜60nmの厚さに形成する。導電材層34としては、Moの代りに、導電材層24に関して前述したと同様の金属材料を用いてもよい。
【0028】
次に、導電材層34の上には、それぞれ図7のTa,Tb,Tcに示すような四辺形状のパターンを有するレジスト層36a,36b,36cをホトリソグラフィ処理により形成する。
【0029】
(2)レジスト層36a〜36cをマスクとする選択的イオンミリング処理により層28〜34の積層に分離溝38を反強磁性層26に達するように形成することにより磁気トンネル接合部ATa,ATb,ATcを得る。磁気トンネル接合部ATaは、分離溝38で囲まれた層28〜34の部分28a〜34aの積層からなり、磁気トンネル接合部ATbは、分離溝38で囲まれた層28〜34の部分28b〜34bの積層からなり、磁気トンネル接合部ATcは、分離溝38で囲まれた層28〜34の部分28c〜34cの積層からなる。層24,26の積層は、磁気トンネル接合部ATa〜ATcに共通に配置されている。
【0030】
イオンミリング処理は、一例として、
Ar流量:4sccm
圧力:2.0×10−4Torr
角度:0〜60度
パワー:500V、190mA
の条件で行なうことができる。エッチング終点の検出法としては、プラズマ発光測定法を用い、反強磁性層26の構成原子に基づく発光を検出してイオンミリングを停止する。反強磁性層26の露出面積が大きいため、発光検出に十分な信号強度が得られ、エッチング終点を高精度で検出可能である。この場合、イオンミリング処理は、酸化性又は窒化性雰囲気中で行ない、各磁気トンネル接合部の側壁に酸化物または窒化物からなる絶縁層を形成して各トンネルバリア層の端部にてリーク電流の低減を図るようにしてもよい。このようにしても、エッチング終点を高精度で検出可能である。
【0031】
イオンミリング処理の後、レジスト層36a〜36cを除去する。レジスト除去は、例えばOプラズマによるアッシング処理を施した後、有機剥離液を用いた薬液処理を施すことにより行なうことができる。なお、独立のレジスト除去工程を設ける代りに、イオンミリング処理中に同時にレジスト層36a〜36cを除去するようにしてもよい。
【0032】
(3)基板上面には、図7の26a,26bに示すような四辺形状のパターンを有するレジスト層40a,40bをホトリソグラフィ処理により形成する。レジスト層40aは、磁気トンネル接合部ATa,ATbを覆うように形成し、レジスト層40bは、磁気トンネル接合部ATcを覆うように形成する。
【0033】
ホトリソグラフィ処理では、透明性の絶縁膜22が導電材層24及び反強磁性層26の積層(不透明層)で覆われているので、露光条件が安定し、レジスト層40a,40bの寸法精度が向上すると共にレジスト残りの発生が抑制される。
【0034】
(4)レジスト層40a,40bをマスクとする選択的イオンミリング処理により層24,26の積層に分離溝42を絶縁膜22に達するように形成することにより該積層を分離溝42により第1及び第2の接続部分(電極層)に分離して磁気トンネル接合部ATa〜ATcにそれぞれ対応するTMR素子Ta〜Tcを得る。第1の接続部分は、層24、26の部分24a、26aの積層からなるもので、TMR素子Ta,Tbを相互接続した状態で残される。第2の接続部分は、層24、26の部分24b、26bの積層からなるもので、TMR素子Tcに接続された状態で残される。分離溝42の深さDは、イオンミリングによるエッチング深さに相当するもので、図15の場合のように増大しない。従って、分離溝42の段差を低く抑えることができる。なお、イオンミリング処理は、先に例示したのと同様の条件で行なうことができ、レジスト層40a,40bは、レジスト層36a〜36cの場合と同様の除去処理で除去する。
【0035】
(5)基板上面には、TMR素子Ta〜Tc及び分離溝38,42を覆ってスパッタ法により酸化シリコンからなる層間絶縁膜44を形成する。図4に示したように分離溝42の段差が低いので、絶縁膜44は、分離溝42の開口端の近傍部Qで膜欠陥が発生しにくい。この後、選択的イオンミリング処理によりTMR素子Ta〜Tcの導電材層34a〜34cにそれぞれ対応する接続孔44a〜44cを絶縁膜44に形成する。
【0036】
(6)絶縁膜44の上には、接続孔44a〜44cを覆ってスパッタ法によりAl等の配線用金属を被着すると共にその被着層を選択的イオンミリング処理(又は選択的ウエットエッチング処理)によりパターニングして配線層46a,46bを形成する。配線層46aは、接続孔44aを介してTMR素子Taの導電材層34aに接続され、配線層46bは、接続孔44b,44cを介してTMR素子Tb,Tcの導電材層34b,34cを相互接続する。この結果、TMR素子Ta〜Tcは、直列接続されたことになる。図7は、TMR素子Ta〜Tcの接続状況を示すもので、図6は、図7のX−X’線断面に対応する。
【0037】
図6の工程では、分離溝42の開口端の近傍部Qにおいて絶縁膜44の欠陥の発生が抑制されるため、配線層46bが反強磁性層26aと短絡するような不良を低減することができる。
【0038】
上記した実施形態の製法によれば、図2の工程でエッチング終点を高精度で検出できること、図3の工程でレジスト層を寸法精度よく形成できること、図4の工程で分離溝42の段差を低くして図5の工程で絶縁膜44の欠陥発生を抑制できること等の理由により磁気センサの製造歩留りが向上する。
【0039】
図6に示す磁気センサにおいて、TMR素子Ta〜Tcの動作は同様であり、代表として素子Taの動作を説明する。反強磁性層26aは、強磁性層28aの磁化の向きを固定すべく作用するので、強磁性層28aは、磁化固定層となる。一方、強磁性層32aは、磁化の向きが自由であり、磁化自由層となる。
【0040】
導電材層(電極層)24a,34a間に一定の電流を流した状態において基板20の平面内に外部磁界を印加すると、磁界の向きと強さに応じて強磁性層28a,32a間で磁化の相対角度が変化し、このような相対角度の変化に応じて電極層24a,34a間の電気抵抗値が変化する。従って、このような電気抵抗値の変化に基づいて磁界検出を行なうことができる。
【0041】
図8,9は、上記した実施形態の変形例を示すもので、図1〜6と同様の部分には同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0042】
図8の工程は、図1の工程の後、レジスト層36a〜36cをマスクとして選択的イオンミリング処理を行なう工程であり、分離溝38を導電材層24に達するように深く形成する点で図2の工程とは異なるものである。この場合、TMR素子Ta,Tb,Tcは、分離溝38で囲まれた層26の部分26a,26a,26bをそれぞれ含み、これらの層部分26a,26a,26bに共通に導電材層24が配置された状態となる。イオンミリング処理の後、前述したと同様にしてレジスト層36a〜36cを除去する。
【0043】
図8の工程では、図2に関して前述したと同様にエッチング終点検出法としてプラズマ発光測定法を用いたり、イオンミリング処理を酸化性又は窒化性雰囲気中で行なうことで各TMR素子の側壁にリーク電流低減用の絶縁層を形成したりすることができる。このようにしても、高い精度でエッチング終点を検出可能である。
【0044】
次に、図3に関して前述したと同様にして基板上面にレジスト層40a,40bを形成する。そして、図9の工程では、レジスト層40a,40bをマスクとする選択的イオンミリング処理により導電材層24に分離溝42を絶縁膜22に達するように形成することにより層24を分離溝42により第1及び第2の接続部分(電極層)に分離する。第1の接続部分は、層24の部分24aからなるもので、反強磁性層26a,26aを相互接続した状態で残される。第2の接続部分は、層24の部分24bからなるもので、反強磁性層26bに接続された状態で残される。分離溝42の深さDは、図8の工程で反強磁性層26をエッチングしたため、図4の場合に比べて小さくなる。この後、前述したと同様にしてレジスト層40a,40bを除去する。
【0045】
次に、図5に関して前述したと同様に基板上面に層間絶縁膜44を形成する。このとき、分離溝42の段差が低いので、絶縁膜44には欠陥が発生しにくい。図5に関して前述したと同様にして絶縁膜44に接続孔44a〜44cを形成した後、図6に関して前述したと同様にして絶縁膜44の上に配線層46a,46bを形成する。
【0046】
図8,9の変形例に係る製法によれば、図1〜6の実施形態に係る製法と同様に磁気センサの製造歩留りが向上する。また、得られる磁気センサは、図6に示した磁気センサと同様に動作する。
【0047】
図10,11は、図1〜6に関して前述した実施形態の他の変形例を示すもので、図1〜6と同様の部分には同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0048】
図10,11の変形例では、図1に対応する工程において、絶縁膜22の上に下から順に導電材層24、強磁性層28、トンネルバリア層30、強磁性層32、反強磁性層、導電材層34を形成する。ここで、強磁性層32と導電材層34との間の反強磁性層は、前述した反強磁性層26と同様のもので、強磁性層32を磁化固定層とするためのものである。
【0049】
図10の工程は、図1に対応する工程の後、図8に関して前述したと同様にレジスト層36a〜36cをマスクとする選択的イオンミリング処理により分離溝38を形成してTMR素子Ta〜Tcを得る工程であり、導電材層34a,34b,34cの下に(強磁性層32a,32b,32cの上に)反強磁性層33a,33b,33cがそれぞれ存在すると共に強磁性層28a〜28cに共通に導電材層24が配置された状態になる点で図8の工程とは異なるものである。イオンミリング処理の後、前述したと同様にしてレジスト層36a〜36cを除去する。
【0050】
図10の工程では、図2に関して前述したと同様にエッチング終点検出法としてプラズマ発光測定法を用いたり、イオンミリング処理を酸化性又は窒化性雰囲気中で行なうことで各TMR素子の側壁にリーク電流低減用の絶縁層を形成したりすることができる。このようにしても、高い精度でエッチング終点を検出可能である。
【0051】
次に、図3に関して前述したと同様にして基板上面にレジスト層40a,40bを形成する。そして、図11の工程では、図9に関して前述したと同様にしてレジスト層40a,40bをマスクとする選択的イオンミリング処理により導電材層24に分離溝42を絶縁膜22に達するように形成することにより層24を分離溝42により第1及び第2の接続部分(電極層)に分離する。第1の接続部分は、層24の部分24aからなるもので、強磁性層28a,28bを相互接続した状態で残される。第2の接続部分は、層24の部分24bからなるもので、強磁性層28cに接続された状態で残される。分離溝42の深さDは、導電材層24の上に(強磁性層28a〜28cの下に)反強磁性層が存在しないため、図4の場合に比べて小さくなる。この後、前述したと同様にしてレジスト層40a,40bを除去する。
【0052】
次に、図5に関して前述したと同様に基板上面に層間絶縁膜44を形成する。このとき、分離溝42の段差が低いので、絶縁膜44には欠陥が発生しにくい。図5に関して前述したと同様にして絶縁膜44に接続孔44a〜44cを形成した後、図6に関して前述したと同様にして絶縁膜44の上に配線層46a,46bを形成する。
【0053】
図10,11の変形例に係る製法によれば、図1〜6の実施形態に係る製法と同様に磁気センサの製造歩留りが向上する。また、得られる磁気センサは、図6に示した磁気センサと同様に動作する。
【0054】
なお、この発明は、上記したような磁気センサに限らず、他の磁気センサ、磁気メモリ、磁気ヘッド等のTMR素子応用製品の製造にも適用することができる。
【0055】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、基板の絶縁性主面に導電材層を介して磁気トンネル接合積層を形成した後、磁気トンネル接合積層に第1の選択エッチング処理を施して磁気トンネル接合部を形成し、導電材層とその上の反強磁性層との積層又は導電材層の単層に第2の選択エッチング処理を施して磁気トンネル接合部の下に電極層を形成するようにしたので、第1の選択エッチング処理ではエッチング終点の検出精度を向上させることができると共に、第2の選択エッチング処理ではレジスト層の寸法精度を向上させることができ、しかも第2の選択エッチング処理では電極層端部の段差を低くして層間絶縁膜の欠陥発生を抑制することができる。従って、TMR素子及びその応用製品の製造歩留りが向上する効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の一実施形態に係る磁気センサの製法における積層形成工程及びレジスト層形成工程を示す基板断面図である。
【図2】 図1の工程に続くイオンミリング工程及びレジスト除去工程を示す基板断面図である。
【図3】 図2の工程に続くレジスト層形成工程を示す基板断面図である。
【図4】 図3の工程に続くイオンミリング工程及びレジスト除去工程を示す基板断面図である。
【図5】 図4の工程に続く絶縁膜形成工程及び接続孔形成工程を示す基板断面図である。
【図6】 図5の工程に続く配線形成工程を示す基板断面図である。
【図7】 TMR素子の接続状況を示す上面図である。
【図8】 図2の工程の変形例を示す基板断面図である。
【図9】 図8の変形例における分離溝形成工程を示す基板断面図である。
【図10】 図2の工程の他の変形例を示す基板断面図である。
【図11】 図10の変形例における分離溝形成工程を示す基板断面図である。
【図12】 従来の磁気センサの製法における積層形成工程及びレジスト層形成工程を示す基板断面図である。
【図13】 図12の工程に続くイオンミリング工程及びレジスト除去工程を示す基板断面図である。
【図14】 図13の工程に続くレジスト層形成工程を示す基板断面図である。
【図15】 図14の工程に続くイオンミリング工程及びレジスト除去工程を示す基板断面図である。
【図16】 図15の工程に続く絶縁膜形成工程及び接続孔形成工程を示す基板断面図である。
【図17】 図16の工程に続く配線形成工程を示す基板断面図である。
【符号の説明】
20:半導体基板、22:絶縁膜、24,34:導電材層、26,33a〜33c:反強磁性層、28,32:強磁性層、30:トンネルバリア層、36a〜36c,40a,40b:レジスト層、38,42:分離溝、44:絶縁膜、44a〜44c:接続孔、46a,46b:配線層、ATa〜ATc:磁気トンネル接合部、Ta〜Tc:TMR素子。

Claims (4)

  1. 基板の絶縁性の一主面に導電材層を介して磁気トンネル接合積層を形成する工程であって、前記導電材層の上に下から順に反強磁性層、第1の磁性層、トンネルバリア層及び第2の磁性層を重ねて前記磁気トンネル接合積層を形成するものと、
    前記第1の磁性層、前記トンネルバリア層及び前記第2の磁性層を含む積層を所望の素子パターンに従って残存させるように該積層に第1の選択エッチング処理を施すことにより該積層の残存部分からなる磁気トンネル接合部を形成する工程と、
    前記磁気トンネル接合部を形成した後、前記導電材層と前記反強磁性層との積層を前記磁気トンネル接合部より広い電極パターンに従って残存させるように該積層に第2の選択エッチング処理を施すことにより該積層の残存部分からなる電極層を前記磁気トンネル接合部の下に形成する工程と
    を含む磁気トンネル接合素子の製法。
  2. 前記第1の選択エッチング処理ではエッチング処理として酸化性又は窒化性雰囲気中でイオンミリング処理を行なうと共に、このイオンミリング処理中に前記反強磁性層の構成原子に基づく発光を検出してイオンミリングを停止する請求項1記載の磁気トンネル接合素子の製法。
  3. 基板の絶縁性の一主面に導電材層を介して磁気トンネル接合積層を形成する工程であって、前記導電材層の上に下から順に反強磁性層、第1の磁性層、トンネルバリア層及び第2の磁性層を重ねて前記磁気トンネル接合積層を形成するものと、
    前記磁気トンネル接合積層を所望の素子パターンに従って残存させるように前記磁気トンネル接合積層に第1の選択エッチング処理を施すことにより前記磁気トンネル接合積層の残存部分からなる磁気トンネル接合部を形成する工程と、
    前記磁気トンネル接合部を形成した後、前記導電材層を前記磁気トンネル接合部より広い電極パターンに従って残存させるように前記導電材層に第2の選択エッチング処理を施すことにより前記導電材層の残存部分からなる電極層を前記磁気トンネル接合部の下に形成する工程とを含み、
    前記第1の選択エッチング処理ではエッチング処理として酸化性又は窒化性雰囲気中でイオンミリング処理を行なうと共に、このイオンミリング処理中に前記導電材層の構成原子に基づく発光を検出してイオンミリングを停止する磁気トンネル接合素子の製法。
  4. 基板の絶縁性の一主面に導電材層を介して磁気トンネル接合積層を形成する工程であって、前記導電材層の上に下から順に第1の磁性層、トンネルバリア層、第2の磁性層及び反強磁性層を重ねて前記磁気トンネル接合積層を形成するものと、
    前記磁気トンネル接合積層を所望の素子パターンに従って残存させるように前記磁気トンネル接合積層に第1の選択エッチング処理を施すことにより前記磁気トンネル接合積層の残存部分からなる磁気トンネル接合部を形成する工程と、
    前記磁気トンネル接合部を形成した後、前記導電材層を前記磁気トンネル接合部より広い電極パターンに従って残存させるように前記導電材層に第2の選択エッチング処理を施すことにより前記導電材層の残存部分からなる電極層を前記磁気トンネル接合部の下に形成する工程とを含み、
    前記第1の選択エッチング処理ではエッチング処理として酸化性又は窒化性雰囲気中でイオンミリング処理を行なうと共に、このイオンミリング処理中に前記導電材層の構成原子に基づく発光を検出してイオンミリングを停止する磁気トンネル接合素子の製法。
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