JP3916308B2 - 樹脂フレーム組立品およびその組立方法 - Google Patents

樹脂フレーム組立品およびその組立方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、デザイン性に優れ、なおかつ落下等の衝撃や冷熱サイクル等の環境変化によって破損・変形することの無い樹脂フレーム組立品およびその組立方法。
【0002】
【従来の技術】
フレームは組立品における骨格であり、製品形状の保持を主目的とした部品である。組立品においてはフレームを中心にその他各種の機能部品が接合されており、組立後の使用環境下において様々な性能を維持できるように設計されている。したがってフレームには十分な強度、剛性、耐熱性等が要求されるため、安全性の高さから金属材料が使用されることが多い。
【0003】
ところが電気、電子、OA機器用途においては製品の軽量化要請が強いため、金属よりも比重の小さい樹脂フレームの開発が盛んに行われている。特に熱可塑性樹脂は射出成形、押出成形等の溶融成形加工法が適用できるため、比較的複雑な形状を有するフレームでも容易に量産できるメリットがある。そこでフレーム単独はもちろんフレームと筐体の一体成形等、組立工数および組立部品数低減のための様々な検討がなされている。
【0004】
一般に金属に比べると熱可塑性樹脂の使用温度領域は狭く、耐久性も乏しいために、発熱性機能部品を組付けたり、寒冷地で使用されたり、輸送用車両に搭載したりする場合には、樹脂フレームの耐熱性、低温強度、耐衝撃性、耐疲労性等で性能不足となる場合がある。そこでエンジニアリング樹脂、ポリマーアロイ、フィラー強化樹脂等の高性能樹脂を使用することで樹脂フレームの性能を向上させることが可能である。また、最近のフレーム形状については軽量化のための小型化・薄肉化のみならず、組立性や分解性の容易化のための複雑化が進行している。したがって樹脂フレームとして用いる熱可塑性樹脂は、耐熱性、耐衝撃性、成形性に優れるものが望ましく、耐熱ABS樹脂は特に好適である。
【0005】
一方、組立工程においては各部品をフレームに接合する必要があり、ネジ締め、カシメ、接着剤、溶接等の接合方法がとられている。しかしフレームが樹脂の場合、ネジ締め、カシメの様に点で接合する方法で接合すると、局所的に応力が集中してフレームが割れやすくなる。これを避けるために接合点数を増やす方法も考えられるが、組立工数や接合用部品点数の増大につながるため得策とはいえない。さらに製品の小型化やデザイン形状の多様化により接合部に空間的制約が生じ、ネジ締めやカシメができない場合も多い。
【0006】
これに対して接着剤および溶接の場合は面で接合できるために接合部の応力集中は緩和できるが、別の問題を含有する。溶接の場合は各部品が必ずしも樹脂フレームと同じ材質ではないので、部品側に何らかの細工をしない限り樹脂フレームと直接接合するのは困難である。また、接着剤は異種の材料同士であっても接合できるが、接着剤による樹脂のクラック誘発、接着工程での取扱いの煩雑さ、乾燥工程を必要とすること、廃棄時の解体性が困難で部品を回収しにくさ等の問題点がある。以上のように、フレームが樹脂である場合には機能部品との接合において何らかの問題を抱えることになる。
【0007】
そこで熱可塑性樹脂の特性を生かし、フレーム成形時にインサート成形法を適用し、樹脂が各機能部品を包みこむ形でフレームごと一気に組立品を完成する方法が考えられる。これにより組立工程における接合が不要になるため、樹脂フレーム組立法としては理想的といえる。
【0008】
しかしインサートする各機能部品の材質が金属やセラミクスである場合、インサート後に新たな問題が生じる。金属やセラミクスに比較すると樹脂の線膨張率は著しく大きく、成形後樹脂の収縮により機能部品周囲の樹脂に引張応力が発生し、割れが発生しやすくなる。そこで熱可塑性樹脂に金属または無機の繊維状強化材を練り込み、樹脂の線膨張率を低下させ、金属やセラミクスのそれに近づけることによって収縮差から生じる引張応力を低下させる方法がある。
【0009】
このように繊維状強化材を練り込むことでインサート成形品における割れ問題が解決できるため、製品設計いかんによっては樹脂フレーム組立にインサート成形法を適用し、一度の成形工程ですべての機能部品を樹脂フレームに組み付けて一気に組立品を完成することも可能と思われる。しかし現実には完成品形状や機能部品レイアウト等、立体的な制約があるため、汎用性のある組立方法とはいい難い。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
そこで組立品をインサート成形可能な単位まで分割し、各々のインサート成形品と樹脂フレームを接合して組立てることが考えられる。すなわち各機能部品を1つまたは複数ずつにグループ分けをし、各々の機能部品または機能部品グループに対してインサート成形を行う。そして次の段階でインサートした成形品の樹脂部分と樹脂フレームを接合し、組立品を完成するという方法である。この場合は機能部品と樹脂フレームのような異種材料を接合する場合と異なり、樹脂同士の接合を考えればよいので熱溶接法が適用できる。熱溶接法により接合することで、点での接合による応力集中や接着剤使用による取扱い上の煩雑さ等の問題を回避することができると考えられる。
【0011】
また熱溶接法による接合は樹脂が溶融状態で混合することによってなされるため、理想的に行われた場合は接合部の強度が材料そのものの強度になるはずである。しかし、実際には接合部に残留歪が生じるため接合強度は著しく低下してしまう。また繊維強化熱可塑性樹脂組成物の場合は、接合面に対して繊維状強化材が平行に揃ってしまい、繊維による補強効果が発現しがたいため、溶接部の強度が極端に低下してしまう欠点がある。そこで、接合部の強度を改良する目的で材料自身を発熱させて接合面を均一に溶融したり、接合部の形状を幾何学的に工夫したりしているが、未だ十分な接合強度を得るには至っていない。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の問題点をふまえ、特定の耐熱性ABS樹脂に繊維強化した熱可塑性樹脂組成物を用いて、樹脂フレームと機能部品をインサート成形した成形体を得、さらに樹脂フレームと機能部品をインサート成形した成形体の樹脂部分を熱溶接法で接合したところ、破壊しやすい接合部の強度が著しく改良されていることがわかり、本発明に至った。すなわち本発明は、(A)成分:芳香族ビニル単量体残基25〜90重量%、マレイミド系単量体残基10〜70重量%、およびこれら単量体と共重合可能なビニル単量体残基0〜40重量%からなるマレイミド系共重合体5〜40重量部(B)成分:芳香族ビニル単量体残基60〜90重量%、シアン化ビニル単量体残基 10〜40重量%、およびこれら単量体と共重合可能なビニル単量体残基0〜20重量%からなるビニル系共重合体10〜70重量部(C)成分:ゴム状重合体10〜70重量%、芳香族ビニル単量体残基30〜90重量%、シアン化ビニル単量体残基0〜40重量%、およびこれら単量体と共重合可能なビニル単量体残 基0〜20重量%からなるグラフト共重合体11〜50重量部、並びに(D)成分:アミノシラン系カップリング剤で表面処理し、かつエポキシ樹脂により集束処理した無アルカリガラス繊維状強化材5〜40重量部からなる繊維強化熱可塑性樹脂組成物(但し、(A)〜(D)成分の合計量は100重量部)による成形体の樹脂フレーム、および該繊維強化熱可塑性樹脂組成物を用いて組立品を構成する機能部品をインサート成形をした成形体を得、さらに樹脂フレームとインサート成形した成形体の樹脂部分を熱溶接法で接合した樹脂フレーム組立品である。
【0013】
以下、本発明の繊維強化熱可塑性樹脂組成物について詳しく説明する。本発明の(A)成分であるマレイミド系共重合体は、芳香族ビニル単量体、マレイミド系単量体、およびこれら単量体と共重合可能なビニル単量体を共重合したものである。
【0014】
上記(A)成分に用いる芳香族ビニル単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ビニルトルエンおよびクロロスチレン等が挙げられる。
【0015】
また上記(A)成分に用いるマレイミド系単量体の具体例としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−ヘキシルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等が挙げられ、N−フェニルマレイミドが好適である。
【0016】
さらに、(A)成分に用いる芳香族ビニル単量体またはマレイミド系単量体と共重合可能なビニル単量体の具体例としては、無水マレイン酸、無水メチルマレイン酸、無水エチルマレイン酸、無水フェニルマレイン酸等の不飽和ジカルボン酸無水物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル、メチルアクリレートおよびプロピルアクリレート等のアクリル酸エステル、メチルメタクリレート、エチルメタクリレートおよびブチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル、並びにアクリル酸およびメタクリル酸等が挙げられる。そして、それぞれの単量体は、単独、あるいは併用して用いることができる。
【0017】
(A)成分であるマレイミド系共重合体は、芳香族ビニル単量体残基25〜90重量%、マレイミド系単量体残基10〜70重量%、およびこれら単量体と共重合可能なビニル単量体残基0〜40重量%からなるものが好適である。
【0018】
マレイミド系単量体残基が10重量%未満では、該繊維強化熱可塑性樹脂組成物の耐熱性が低下し、70重量%を越えると成形加工性、組成物を構成する他の樹脂との相溶性が低下する。
【0019】
また、芳香族ビニル単量体またはマレイミド系単量体と共重合可能なビニル単量体としては、マレイミド系共重合体中に不飽和ジカルボン酸無水物単量体残基が1重量%以上10重量%未満含まれていることが好ましい。
【0020】
なお、(A)成分のマレイミド系共重合体は、予めスチレンと無水マレイン酸からなる共重合体、または必要に応じてその他の単量体を共重合させた共重合体を調製し、所定量の無水マレイン酸残基を含有する共重合体を、第一級アミン、またはアンモニアによりイミド化して製造してもよい。あるいはマレイミド単量体、芳香族ビニル単量体および必要に応じてその他の単量体との共重合より製造してもよい。重合方法は、乳化重合、塊状重合、懸濁重合等によって製造するのが一般的である。
【0021】
次に、本発明の(B)成分であるビニル系共重合体は、芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体およびこれら単量体と共重合可能なビニル単量体を共重合したものである。
【0022】
上記(B)成分に用いる芳香族ビニル単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ビニルトルエンおよびクロロスチレン等が挙げられる。
【0023】
また、上記(B)成分に用いるシアン化ビニル単量体の具体例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられ、アクリロニトリルが好適である。
【0024】
さらに(B)成分に用いる芳香族ビニル単量体またはシアン化ビニル単量体と共重合可能なビニル単量体の具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレートおよびプロピルアクリレート等のアクリル酸エステル、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、およびブチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル、並びにアクリル酸およびメタクリル酸等が挙げられる。
【0025】
(B)成分であるビニル系共重合体は、芳香族ビニル単量体残基60〜90重量%、シアン化ビニル単量体残基10〜40重量%およびこれら単量体と共重合可能なビニル単量体残基0〜20重量%からなるものが好適である。
【0026】
芳香族ビニル単量体残基が60重量%未満では、他の樹脂との相溶性が低下し、シアン化ビニル単量体残基が10重量%未満では、耐熱性、耐薬品性、機械的強度等が低下する。
【0027】
次に本発明の(C)成分であるグラフト共重合体は、ゴム状重合体、芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体およびこれら単量体と共重合可能なビニル単量体を共重合したものである。
【0028】
上記(C)成分の共重合体に用いるゴム状重合体の具体例としては、ブタジエン重合体、ブタジエンとこれと共重合可能なビニル単量体との共重合体、エチレンとプロピレンとの共重合体、エチレンとプロピレンとジエンとの共重合体、ブタジエンと芳香族ビニルとのブロック共重合体、アクリル酸エステル重合体およびアクリル酸エステルとこれと共重合可能なビニル単量体との共重合体等が挙げられる。
【0029】
また、上記(C)成分の芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体およびこれら単量体と共重合可能なビニル単量体の具体例としては、前記(B)成分で挙げたものと同様のものが用いられる。
【0030】
(C)成分であるグラフト共重合体は、ゴム状重合体10〜70重量%、芳香族ビニル単量体残基30〜90重量%、シアン化ビニル単量体残基0〜40重量%、およびこれら単量体と共重合可能なビニル単量体残基0〜20重量%の範囲からなるものが好適である。
【0031】
(C)成分中のゴム状重合体10重量%未満では、繊維強化熱可塑性樹脂組成物とした場合、その組成物の成形部品の熱溶接性が十分に発揮することができず、70重量%を超えると機械的強度が低下する。
【0032】
(C)成分中のグラフト共重合体の具体的な例は、ABSグラフト共重合体、MBSグラフト共重合体、AESグラフト共重合体,アクリル系グラフト共重合体等の単独または上記共重合体のうち2種類以上の混合物でもよく、特にABSグラフト共重合体またはMBSグラフト共重合体が好ましい。
【0033】
本発明の(D)成分である繊維状強化材は、(A)成分〜(D)成分で構成される繊維強化熱可塑性樹脂組成物の溶融加工温度において可塑化せず、繊維形状を保持しているものであれば特に限定するものではない。
【0034】
具体的には、ガラス繊維、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、アルミナ−シリカ系繊維等の無機繊維、アラミド繊維等の有機繊維、ステンレススチール繊維等の金属繊維、カーボン単結晶、チタン酸カリウム単結晶等のウイスカなどを挙げることができる。上記繊維状強化材に関しては熱可塑性樹脂との接着性向上を目的として繊維表面をシランカップリング剤で表面処理したり、製造時の取扱い性向上を目的としてエポキシ、ウレタン等の樹脂溶液を繊維束に塗布して乾燥させるような集束処理されたものが好ましい。
【0035】
本発明の繊維強化熱可塑性樹脂組成物は、(A)成分のマレイミド系共重合体が5〜40重量部、(B)成分のビニル系共重合体が10〜70重量部、(C)成分のグラフト共重合体が11〜50重量部、および(D)成分の繊維強化材が5〜40重量部からなる。
(A)成分のマレイミド系共重合体の含有量が5重量部未満では樹脂フレームの耐熱性が不足し、40重量部を超えると樹脂フレーム組立品が脆くなる。
【0036】
(B)成分の共重合体の含有量が10重量部未満では射出成形時に繊維強化熱可塑性樹脂組成物の流動性が低下し、70重量部を超えるとフレーム組立品の耐熱性が低下する。
【0037】
(C)成分のグラフト共重合体の含有量が11重量部未満では樹脂フレーム組立品が脆くなり、グラフト共重合体の含有量50重量部を超えると樹脂フレームの剛性および耐熱性の低下が大きくなる。
【0038】
(D)成分の繊維強化材の含有量が5重量部未満では樹脂フレームの剛性が不足するとともに、インサート部品と繊維強化熱可塑性樹脂組成物の線膨張率の差が大きいために、ヒートショックによりインサート部品の周辺樹脂が割れてしまう。一方、40重量部を超えると射出成形時において繊維強化熱可塑性樹脂組成物の流動性が低下する。
【0039】
本発明で用いる繊維強化熱可塑性樹脂組成物は、一般的な熱可塑性樹脂組成物の製造方法が適用できる。例えば、各成分をタンブラー、スリーハンズミキサー、ヘンシェルミキサー等のブレンダーで予め混合した後、バンバリーミキサー、ブラベンダー、混練ロール、単軸および2軸押出機等によってペレット化することができる。とりわけ定量フィーダー等の供給装置を複数利用し、2軸押出機のメインフィード口から熱可塑性樹脂原料を、サイドフィード口から繊維強化材をそれぞれ供給してペレット化する方法が好適である。ペレット化した繊維強化熱可塑性樹脂組成物は、一般的な射出成形機等によってインサート成形に用いることができる。また、押出機によるペレット化を省き、各成分を予備混合した後、直接射出成形機の可塑化工程で混練し、そのままインサート成形することもできる。
【0040】
また、本発明の繊維強化熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて着色剤、安定剤、滑剤およびその他の助剤を添加することもできる。
【0041】
次に、本発明の樹脂フレーム組立品について説明する。
本発明の樹脂フレーム組立品は当該繊維強化熱可塑性樹脂組成物を用いて、該繊維強化熱可塑性樹脂組成物による成形体の樹脂フレーム、および組立品を構成する機能部品をインサート成形をした成形体を得、さらに樹脂フレームとインサート成形した成形体の樹脂部分を熱溶接法で接合する方法によって組立てることができる。
【0042】
本発明におけるインサート成形は、溶融状態にある樹脂を冷却することによって形状付与する際に、インサートする機能部品と樹脂を一体化するものであれば、成形方法を特に限定するものではない。例えば、射出成形において金型のキャビティー内に予めインサートする機能部品をセットしておいた状態で溶融樹脂を金型に射出して作製する方法、押出成形においてはインサートする機能部品を連続的に被覆する形で作製する方法等が挙げられる。
【0043】
また本発明における組立品を構成する機能部品は、インサート成形時の溶融樹脂との接触時の温度上昇によって機能部品の形状および機能が損なわれない限りにおいて特に限定するものではないが、金属またはセラミクス材料で構成されているかまたは金属またはセラミクス材料でパッケージングされている部品であることが好ましい。
【0044】
本発明における樹脂フレームとインサート成形した成形体の樹脂部分を熱溶接する方法、加熱により樹脂フレームおよびインサート成形体の樹脂部分を溶接する方法であれば特に限定するものではないが、材料自身の発熱による溶接方法が好ましい。具体的には摩擦溶接法、超音波溶接法、高周波溶接法等が挙げられる。
【0045】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例にのみ限定されるものではない。なお特別なことわり書きのない場合、添加量について使用した単位は重量%または重量部を意味する。
【0046】
実施例1〜4および比較例1〜4
本発明で使用した繊維強化熱可塑性樹脂組成物を示す。
【0047】
(1)繊維強化熱可塑性樹脂組成物の原料
(A)成分マレイミド系共重合体:撹拌機を備えたオートクレーブ中にスチレン60部、メチルエチルケトン100部を仕込み、系内を窒素ガスで置換した後、温度を85℃に昇温し、別に無水マレイン酸40部とベンゾイルパーオキサイド0.15部をメチルエチルケトン200部に溶解した溶液を作製し、これを8時間かけて連続的に添加した。添加後、さらに3時間温度を85℃に保った。ここで得られた共重合体溶液にアニリン38部、トリエチルアミン0.6部を加え温度140℃で7時間反応させた。冷却後、反応液を真空ベント付き2軸押出機に供給し、脱揮してマレイミド系共重合体を得た。C−13NMR分析より酸無水物のイミド基への転化率は92モル%であった。得られた共重合体はN−フェニルマレイミド単位を52%含むN−フェニルマレイミドとスチレンと無水マレイン酸との共重合体であった。これを(A)成分として用いた。
【0048】
(B)成分共重合体:撹拌機を備えた反応缶中にスチレン70部、アクリロニトリル30部、第三リン酸カルシウム2.5部、t−ドデシルメルカプタン0.5部、ベンゾイルパーオキサイド0.2部および純水250部を仕込み、温度を70℃に昇温し重合を開始させた。重合開始から7時間後に温度を75℃に昇温して3時間保ち重合を完結させた。重合率は97%に達した。得られた反応液に5%塩酸水溶液200部を添加し析出させ、脱水、乾燥後得られた白色ビーズ状の共重合体を(B)成分として用いた。
【0049】
(C)成分共重合体:ポリブタジエンラテックス100部(固形分50%、平均粒径0.35μm、ゲル含有率90%)、ステアリン酸ナトリウム1部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.1部、EDTAテトラナトリウム塩0.08部、硫酸第一鉄0.003部および純水200部を窒素ガスで置換された撹拌機付き反応缶に仕込んだ。温度65℃に加熱した後、アクリロニトリル25%およびスチレン75%よりなる単量体混合物50部、t−ドデシルメルカプタン0.3部、キュメンハイドロパーオキシド0.2部を4時間で連続添加し、さらに添加終了後65℃で2時間重合させた。グラフト率は78%、重合率は97%であった。得られたラテックスに酸化防止剤を添加した後、塩化カルシウムで塩析し、水洗、乾燥後得られた白色粉末状の共重合体を(C)成分として用いた。
【0050】
(D)成分繊維状強化材:カット長(繊維長)3mm、平均直径13μmであり、アミノシラン系カップリング剤により表面処理し、かつエポキシ樹脂により集束処理した無アルカリガラス繊維を用い(D)成分として用いた。
【0051】
(2)繊維強化熱可塑性樹脂組成物の製造方法
実施例および比較例における繊維強化熱可塑性樹脂組成物は、表1および表2に示した原料樹脂の重量部配合比でタンブラーを用いて均一に混合した後、単軸押出機「MS40−32V」(アイ・ケー・ジー(株)製)を使用し、シリンダー温度270℃でペレットを作製した。
作製したペレットを用いて射出成形機「IS−55EPN」(東芝機械(株)製)により、シリンダー温度270℃、金型温度60℃でテストピースを作製し、物性測定に用いた。
【0052】
(3)インサート成形および熱溶接法による組立
上記(2)で作製した繊維強化熱可塑性樹脂組成物のペレットを用い、直径36mm×厚み4mmの金属円盤を機能部品として、射出成形機「ネスタール75」(住友重機械工業(株)製)によりシリンダー温度270℃、金型温度60℃でインサート成形を行った。インサート成形品の平面図を図1に、図1のAA’における断面図を図2に示す。インサート成形品は2個の金属円盤の中心が80mmの距離で、金属円盤の周囲を厚み2mmで、かつ金属円盤間を厚み2mmで繋ぐようにインサート成形したものである。
また、同成形条件にて上記インサート成形品2個を組み付けるためのフレーム用成形品を作製した。フレーム用成形品は、長さ120mm×幅40mmで両端から40mmまでは厚さ2mmでかつインサート成形品と溶接する面であり、その部分に底面が直径1mmの円で高さが1mmの円錐状の溶接用リブを複数設けた。また中心部40mm幅は厚み4mmとした。このフレーム用成形品の平面図を図3に、図3のBB’における断面図を図4に示す。図3のフレーム用成形品1個に対して図1のインサート成形品2個を超音波溶接し、樹脂フレーム組立品を完成した。使用した超音波ウエルダーは、精電舎電子工業(株)製1201B/P46Aで、圧力3kg/cm2、発振時間1.5秒、保持時間2秒にて溶接を行った。完成した樹脂フレーム組立品の平面図を図5に、図5のCC’における断面図を図6に示した。
【0053】
(4)測定および評価
表1および表2における物性の測定方法は次の通りである。
(a)高荷重下の耐熱性:ASTM D−648に従い、試験応力18.6kgf/cm2 で、長さ127mm、幅12.7mm、厚さ6.35mmのテストピースの加熱変形温度を測定した。
【0054】
(b)曲げ弾性率:ASTM D−790に従い、長さ127mm、幅12.7mm、厚さ6.35mmのテストピースの曲げ弾性率を測定した。
【0055】
(c)ノッチ部の耐衝撃強度:ASTM D−256に従い、厚さ6.35mmのテストピースに対し、雰囲気温度23℃、湿度50%のJIS標準状態でノッチ付きアイゾット衝撃強度を測定した。
【0056】
(d)流動性:JIS K−6874に従い、温度265℃、荷重10kgf の条件でペレットのメルトフローレートを測定した。
【0057】
(e)組立品落下テスト:実施例における繊維強化熱可塑性樹脂組成物を用いて作製した樹脂フレーム組立品をコンクリートの床に対して0.5mの高さから自由落下させ、樹脂フレームの破損状態を観察した。組立品落下テストにおいて熱溶接による接合部付近が破損した場合は「接合割れ」とした。
【0058】
(f)組立品冷熱テスト:実施例における繊維強化熱可塑性樹脂組成物を用いて作製した樹脂フレーム組立品を、環境温度−40℃と120℃において3時間ずつ冷熱サイクルを5回繰り返した後、組立品を観察した。組立品冷熱テストにおいて、インサートした機能部品の周囲の樹脂に割れが発生した場合、フレーム部が変形してしまった場合を、それぞれ「インサート割れ」、「変形」とした。
【0059】
【表1】
Figure 0003916308
【0060】
【表2】
Figure 0003916308
【0061】
【発明の効果】
本発明の繊維強化熱可塑性樹脂組成物による成形体の樹脂フレーム、および該繊維強化熱可塑性樹脂組成物を用いて組立品を構成する機能部品をインサート成形をした成形体を得、さらに樹脂フレームとインサート成形した成形体の樹脂部分を熱溶接法で組み立てた樹脂フレーム組立品は、落下等の衝撃や厳しい環境下でも破損・変形することなく使用することができる
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の繊維強化熱可塑性樹脂組成物によるインサート成形品の平面図である。
【図2】図1のAA’におけるインサート成形品の断面図である。
【図3】本発明の繊維強化熱可塑性樹脂組成物により、射出成形法で作製した樹脂フレーム用成形品の平面図である。
【図4】図3のBB’における成形品の断面図である。
【図5】図3の樹脂フレーム用成形品に対して、図1のインサート成形品を2個超音波溶接して組み立てた樹脂フレーム組立品の平面図である。
【図6】図5のCC’における樹脂フレーム組立品の断面図である。
【符号の説明】
1 インサート金属円盤
2 繊維強化熱可塑性樹脂組成物
3 繊維強化熱可塑性樹脂組成物の樹脂フレーム用成形品
4 溶接用リブ
5 溶接部

Claims (3)

  1. (A)成分:芳香族ビニル単量体残基25〜90重量%、マレイミド系単量体残基10〜70重量%、およびこれら単量体と共重合可能なビニル単量体残基0〜40重量%からなるマレイミド系共重合体5〜40重量部
    (B)成分:芳香族ビニル単量体残基60〜90重量%、シアン化ビニル単量体残基10〜40重 量%、およびこれら単量体と共重合可能なビニル単量体残基0〜20重量%からなるビニル系共重合体10〜70重量部
    (C)成分:ゴム状重合体10〜70重 量%、芳香族ビニル単量体残基30〜90重量%、シアン化ビニル単量体残基0〜40重量%、およびこれら単量体と共重合可能なビニル単量体残基0〜20重量%からなるグラフト共重合体11〜50重量部、並びに
    (D)成分:アミノシラン系カップリング剤で表面処理し、かつエポキシ樹脂により集束処理した無アルカリガラス繊維状強化材5〜40重量部からなる繊維強化熱可塑性樹脂組成物(但し、(A)〜(D)成分の合計量は100重量部)による成形体の樹脂フレーム、および該繊維強化熱可塑性樹脂組成物を用いて組立品を構成する機能部品をインサート成形をした成形体を得、さらに樹脂フレームとインサート成形した成形体の樹脂部分を熱溶接法で接合する方法によって得ることを特徴とする樹脂フレーム組立品。
  2. 請求項1記載の繊維強化熱可塑性樹脂組成物による成形体の樹脂フレーム、および該繊維強化熱可塑性樹脂組成物を用いて組立品を構成する機能部品をインサート成形をした成形体を得、さらに樹脂フレームとインサート成形した成形体の樹脂部分を熱溶接法で接合する方法によっ組立てることを特徴とする樹脂フレーム組立品の組立方法。
  3. (A)成分がマレイミド系共重合体、(B)成分がスチレンとアクリロニトリルからなる共重合体、(C)成分がABSグラフト共重合体、および(D)成分がアミノシラン系カップリング剤で表面処理し、かつエポキシ樹脂により集束処理した無アルカリガラス繊維強化材からなる繊維強化熱可塑性樹脂組成物を用いることを特徴とする請求項1記載の樹脂フレーム組立品。
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