JP3915207B2 - 回折格子パターンを有する情報担持体とその検証方法および物品表面に情報担持体を形成する転写箔またはシール - Google Patents

回折格子パターンを有する情報担持体とその検証方法および物品表面に情報担持体を形成する転写箔またはシール Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板の表面に微細な回折格子(グレーティング)をセル(ドット)毎に配置することにより形成される回折格子パターンを用いたセキュリティ製品に関し、
通常の観察条件(白色光の下で)において、肉眼で観察した場合には視覚的に判別できないような情報パターン(以下、このようなパターンを「隠し情報」と称する)が、肉眼で観察できる回折格子パターン内に混在された構成の回折格子パターンを有する情報担持体に関する。
【0002】
【従来の技術】
セキュリティ性の高い回折格子(もしくは、ホログラム)を得るために、その作製方法を複雑にして、偽造(もしくは、模造)するのを困難ならしめる方法が考えられている。
【0003】
一例として、コヒーレント光(レーザービーム)の2光束干渉によって、基板の表面に回折格子からなる複数の微小なドットを所望に配置し、回折格子パターンからなるディスプレイを得る方法があり、本出願人による特開昭60−156004号公報・特開平2−72319号公報・特開平5−72406号公報などに代表される方法が公知である。
【0004】
これらの方法は、2本のレーザービームを感光材料上で交叉させ、ドット単位で露光することにより双方のレーザービームを干渉させて、各ドットに形成される微小な干渉縞からなる回折格子を、そのピッチ・方向・光強度を適宜変化させながら次々と露光記録し、回折格子ドット(セル)の集まりからなるパターンを作製する方法(2光束干渉法)である。
【0005】
回折格子は、感光材料に入射する2光束の角度によって、そのピッチ(空間周波数の逆数)が変わり、回折格子の方向は2光束の入射する方向によって変わる。
作製されたパターンの観察時には、前記ピッチは見える色に、前記方向は見える方向に、それぞれ関係する。また、露光の際の光強度は、干渉縞の深さを変更することになり、観察時には見える明るさとして関係することになる。
回折格子パターンの作製方法は、上記の2光束干渉法に限定されるものではなく、電子線(エレクトロン・ビーム=EB)により、基板の表面に格子縞を直接描画し、回折格子ドット(セル)を配置する方法を採用しても良い。前記方法は、本出願人による特開平2−72320号公報により公知である。
【0006】
一方では、作製されたホログラムの正当性を確認する(すなわち、真偽判定を行なう)方法も要求されている。
上記方法の一例として、読み取り用コードが記録された回折格子(もしくは、ホログラム)に光を照射して、回折再生された光をフォトダイオードなどにより受光してコードを読み取り、所定のコードと一致した場合に正規の回折格子(もしくは、ホログラム)であると認識するという提案が、特開平3−71384号公報などにおいて開示されている。
【0007】
上記方法の他例として、白色光の下で肉眼では観察できない読み取り用コード(隠し情報)が記録されたホログラムに特殊な光(例えば、レーザー光)や検証器を使用することにより、回折再生された光を肉眼で視覚できるようにして、隠し情報の正当性を判断し、ホログラムの真贋を判定する方法が、本出願人による特開平6−236136号公報・特開平6−274084号公報などで開示されている。
【0008】
これらの方法では、読み取りのための特殊な光源や検証器を用いる必要があり、簡便にホログラムの正当性を確認することが難しいという問題がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、偽造や模造の困難なセキュリティ性の高い「回折格子パターンからなる情報担持体」を提供すると共に、前記情報担持体の正当性を簡便に確認できるような手段を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の情報担持体は、
レリーフ型回折格子からなる微細なドットまたはセルが、基板の表面に所望に複数配置され、その表面に反射層が形成されてなる回折格子パターンと、
有機低分子物質が分散混合された樹脂を主成分とし、温度に依存して透明状態または拡散透光性を持つ非透明状態が可逆的に変化する可逆性感熱層からなり、前記パターンのドットまたはセルが存在しない領域を、視覚的に判別できない程度にある情報パターンを構成するように意図的に設け、回折格子パターン内に混在させたことを特徴とする。
【0011】
前記情報担持体に設けられた隠し情報の真贋を検証するにあたっては、
情報担持体の最外面にある、透明状態である前記可逆性感熱層を加熱して拡散透光性を持つ非透明状態とし、常温においても前記非透明状態が維持されている前記感熱層を通して観察することにより、前記ドットまたはセルが存在しない領域から構成される情報パターンを視覚的に判別することを特徴とする。
【0012】
前記情報担持体を表面に形成するなどして、偽造および不正使用が困難な物品を提供することができる。
物品として代表的なものは、クレジットカードや有価証券などであり、前記情報担持体を、請求項3,4に記載するような「転写箔やステッカーなどの形態」とすることにより、これら物品の表面に形成することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明を説明する。
図1は本発明の情報担持体の一例を示す説明図であり、図1(a) は白色光の下で肉眼で観察した場合のパターンを示す説明図であり、図1(b) は本発明の検証方法により前記パターンを視覚的に判別した場合のパターンを示す説明図である。
【0014】
図1(a) では、情報担持体の最外面の可逆性感熱層が透明状態であり、下層のレリーフ型回折格子からなる微細なドットまたはセルの配置に応じたパターンのみが視覚され、前記ドットまたはセルが存在しない領域からなる隠し情報を認識することはできない。
【0015】
回折格子ドット(セル)の集まりからなるパターンは、上述した2光束干渉法やEB描画などにより作製され、周知の手法により大量複製される。
レリーフ型回折格子からなるパターンを視覚し易くするために、レリーフ表面に金属反射層を全面に形成することは周知であり、一般に、Al,Cr,Au,Agなどの高い反射性を有する金属層や、TiO2 ,ZnSなどの透過性も有する金属化合物層などが、蒸着やスパッタリングなどにより形成される。
【0016】
本発明の情報担持体では、回折格子パターンの表面に、有機低分子物質が分散混合された樹脂を主成分とし、温度に依存して透明状態または拡散透光性を持つ非透明状態が可逆的に変化する可逆性感熱層が形成されている。
【0017】
情報担持体の最外面にあり、透明状態を示す前記感熱層を、加熱して拡散透光性を持つ非透明状態とし、常温においても前記非透明状態が維持されている前記感熱層を通して観察することにより、図1(b) に示すように、前記ドットまたはセルが存在しない領域から構成される情報パターン(同図では「E」)を視覚的に判別することができる。
【0018】
上記のような特性を示す可逆性感熱層は、特開昭55−154198号公報に開示されている。
【0019】
上記感熱層は、有機低分子物質とそれを分散混合する樹脂とを主成分とする。
上記樹脂としては、有機低分子物質に屈折率が近似し、相溶性がなく、機械的強度に優れ、フィルム形成能を有し、透明性の高い熱可塑性樹脂が好適である。
【0020】
上記感熱層は、温度T1 までの加熱により透明状態となり、冷却しても透明状態が維持される。
また、温度T2 (T2 >T1 )までの加熱により白濁状態(拡散透光性を持つ非透明状態)となり、冷却しても透明状態が維持され、その状態変化は可逆的である。
【0021】
上記の特性が、可視光領域のみならず近赤外領域でも同様であるならば、検証は近赤外領域(例えば、近赤外波長のレーザー光照射による回折パターンの判別)でも可能である。
【0022】
上記の熱可塑性樹脂として、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体,塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体,塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体,塩化ビニル−アクリレート共重合体,などの塩化ビニル共重合体;ポリ塩化ビニリデン樹脂;塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体,塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体,などの塩化ビニリデン共重合体;ポリアミド樹脂;シリコン樹脂;ポリアクリレートもしくはポリメタクレート樹脂またはこれらの共重合体などが挙げられ、これらを単独あるいは2種以上混合して適用することができる。
【0023】
上記の熱可塑性樹脂に分散混合される有機低分子物質として、酸素,硫黄,窒素,ハロゲン,のうち少なくとも一つの原子を含み、炭素数が10〜40でその分子量が100〜700であり、かつ融点が50〜150℃の範囲にある有機化合物が挙げられ、具体的には、アルカノール,アルカンジオール,ハロゲンアルカノール,ハロゲンアルカンジオール,などの高級アルコール;高級脂肪族アミン;アルカン,アルケン,アルキン,およびこれらのハロゲン置換体;シクロアルカン,シクロアルケン,シクロアルキン,などの環状化合物,飽和カルボン酸,不飽和モノカルボン酸,ジカルボン酸,またはこれらのエステル,アミド,アンモニウム塩;飽和もしくは不飽和ハロゲン脂肪族,またはこれらのエステル,アミド,アンモニウム塩;アクリルカルボン酸またはこれらのエステル,アミド,アンモニウム塩;チオアルコールまたはこれらのカルボン酸エステル;チオカルボン酸またはこれらのエステル,アミド,アンモニウム塩,などがあり、これらを単独あるいは2種以上混合して適用することができる。
【0024】
そして、上記の熱可塑性樹脂と有機低分子物質とが溶解されたメチルエチルケトン,メチルイソブチルケトン,クロロホルム,エタノール,ベンゼン,トルエン,テトラヒドロフラン,四塩化炭素,などの有機溶液、あるいは上記の熱可塑性樹脂を溶解した溶液に上記の有機低分子物質を微粒子状に分散させた分散液をベースフィルムに塗布・乾燥させて、上記感熱層とする。
【0025】
また、上記感熱層に対して、その光学特性を変化させる目的で、層中に染料や紫外線吸収剤、あるいは赤外線ないし可視光線吸収剤などを加えても良い。
さらに、透明状態−白濁状態の可逆反応の耐性を向上させる目的で、層上に耐熱性樹脂(フィルム)からなる保護層を形成しても良い。
【0026】
情報担持体中の回折格子パターンは、ディスプレイ(装飾)効果およびセキュリティ性に優れており、なおかつ、さらなる情報パターンが隠し情報の形で混在されており、一層セキュリティ性に優れることになる。
【0027】
情報パターンは、回折格子パターンと同様に、装飾画像(絵柄)やバーコード・カルラコードなどの2次元コードであっても良いが、視認性の上からは、文字情報であることが好ましい。
【0028】
レリーフ型回折格子は、所謂エンボス方式で形成される。
回折格子パターンの形成層として、エンボス成型性が良好で、上記感熱層および後述する反射性薄膜層との接着性が良好な樹脂が好適であり、アクリル樹脂,ウレタン系樹脂,セルロースアセテート系樹脂,ニトロセルロース系樹脂などが例示される。
【0029】
上記樹脂を塗液化し、公知の塗布方法により、乾燥厚が0.5〜2μmとなるように形成し、情報をレリーフ(凹凸)の形で記録されたホログラム原版をスタンパとして、上記樹脂に対してエンボス成型(加熱押圧)することで、レリーフ型回折格子が形成される。
【0030】
前述のように、反射性薄膜層は、高い反射性を有する金属層であっても、反射のみならず透過性も有する金属化合物層であっても良い。
さらに詳述すると、反射性薄膜層に適用できる材料としては、Al,Cr,Sn,Niなどの不透明であるが反射率が大きい材料、Sb2 3 ,Fe2 3 ,TiO2 ,CdS,CeO2 ,PbCl2 ,CdO,Sb2 3 ,Bi2 3 ,ZnS,WO3 ,SiO,In2 3 ,PbO,Ta2 3 ,ZnO,CaO・SiO2 ,ZrO,Cd2 3 ,Al2 3 などの回折格子形成層を構成する材料よりその屈折率が大きい透明材料が挙げられる。
後者の場合、回折格子パターンの再生可能な角度範囲内では、上記反射性薄膜層による光の反射率が最大となり、反射型として機能する一方、回折格子パターンの再生可能な角度範囲外では、単なる透明膜として機能する。
何れの材料も、真空蒸着法,スパッタリング法,イオンプレーティング法などにより、厚さ0.03〜0.08μmの反射性薄膜層を形成することが可能である。
【0031】
図2は、上記の情報担持体をシール(ステッカー)の形態にして、金券やカードなどの物品1の表面に貼着して、情報担持体内の回折格子パターンまたは隠し情報を読み取っている状態を示す説明図である。
【0032】
なお、シール(ステッカー)の形態でなく転写箔の形態に加工して、情報担持体を物品表面に貼着形成することも考えられる。
シール(ステッカー)の形態に係る断面説明図を図3に、転写箔の形態に係る断面説明図を図4に示す。図3,4では、同一機能の部材に対しては同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0033】
転写箔の場合には、感熱転写時に要求される特性から、ベースフィルム20(一時的な情報担持体の支持体)には、耐熱性,可撓性が必要であり、ポリエステル,ポリカーボネート,ポリオレフィン,ポリ塩化ビニル,アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンなどのフィルム材料から選択される。
また、可逆性感熱層21は、転写時にベースフィルム20から良好に剥離する必要があり、サーマルヘッドでの加熱(もしくは、熱板による加熱)により感熱層21自体に剥離性が発生することが好ましいが、両者が良好に剥離するように、図示しない剥離層(例えば、融点が60〜120℃のワックス類や、軟化点が60〜150℃の樹脂類)を間に介在させても良い。
【0034】
回折格子パターン形成層22のレリーフ面には反射性薄膜層23が形成され、情報担持体を物品表面に貼着するために、反射性薄膜層23の上(図4では、下になる)に粘着層24が形成される。
粘着層24としては、アクリル系樹脂,ビニル系樹脂などが主成分とされ、その厚さは0.5〜2.0μm程度が適当である。
【0035】
シール(ステッカー)の場合、ベースフィルム20は、情報担持体を支持する透明なフィルムであり、物品表面に情報担持体を転移した後、担持体上に残っても除去されてもどちらでも良い。
担持体上に残る場合、ベースフィルム20は、主に情報担持体の保護層として機能することになる。
ベースフィルム20に要求される特性としては、透明性,可撓性であり、ポリエチレン,ポリエステル,ポリ塩化ビニルなどのフィルム材料が挙げられる。
【0036】
粘着層24は、主剤としての弾性体、粘着付与剤、可塑剤、充填剤などの助剤から構成される。
弾性体としては、天然ゴム,合成イソプロピレン,再生ゴム,SBRゴム,ポリイソプレンゴム,ポリアクリル酸エステルまたはその誘導体,スチレン−イソプレン−スチレンゴム,シリコーンコム,シリコーンレジンなどが挙げられる。
粘着付与剤としては、ロジン系およびロジン誘導体,ポリテルペン樹脂,クロマン−インデン樹脂,石油系樹脂,テルペンフェノール樹脂などが挙げられる。
可塑剤としては、液状ポリブテン,鉱油,ラノリン,液状ポリイソプレン,液状ポリアクリレートなどが挙げられる。
また、必要に応じて、体質顔料や無機顔料などの充填剤、および酸化防止剤などの老化防止剤を付加しても良い。
【0037】
剥離シート25は、情報担持体を物品表面に貼着形成するまで、他の物体との密着を防ぐためのシートであり、ポリエチレン皮膜を介したシリコーンが表面に塗工された紙,クレー塗装後にスーパーキャレンダーがけを施したクラフト紙,グラシン紙,各種プラスチックフィルムなどの既知のものが挙げられる。
【0038】
情報担持体を上記のような形態(シールまたは転写箔)に加工して、物品表面に貼着形成するにあたって、剥離されて偽造や改竄などの不正使用を防止するために、さらに脆性破壊層を設けるなどの応用が適宜に考えられる。
【0039】
拡散透光性を持つ非透明状態の可逆性感熱層21を通して、下層の回折格子パターンを観察することにより隠し情報が確認できるのは、回折格子の存在しない部分の方が拡散性が劣り、目に入る光量が多くなるためであるが、以下に原理を詳細に説明する。
【0040】
図5は、拡散性を有する表面(拡散面)に光が垂直に入射する場合の拡散反射特性を模式的に示す説明図である。同図で、I0 は入射光の強度、Iは拡散光の強度を表わし、点線は拡散の強度分布を表わす。
近似的に、I=I0 cos n θと表すことができる。ここで、nは拡散面の特定指数であり、nが大きいほど拡散性に劣り、小さいほど拡散性が高いことを示すことになる。本発明では、nが5〜100の値をとる際に、視覚的な判別が可能であるとする。
【0041】
図6は、図1における隠し情報の読み取りの現象(原理)を模式的に表すための説明図である。
入射光は、拡散透光性を持つ非透明状態の可逆性感熱層の拡散面で拡散した後、回折格子に入射し、回折される成分,正反射する成分,拡散する成分,とに分かれる。
【0042】
レリーフ型回折格子の存在しない領域では、反射層で単純に正反射するものと考える。また、実際には、反射層に到るまでには、基材やレリーフ形成層などが存在するが、それらによる入射光への影響は少ないものと考える。
【0043】
反射層を有するレリーフ型回折格子の場合には、反射光や回折光は、入射光の方向(同図で、左側に)へ進むことになるが、同図においては、反射光や回折光も、反射層を境にして対称的に右側に進むような形で説明する。
【0044】
同図において、Aは回折格子の存在しない領域での単純な透過光(実際は反射光)、Bは回折格子での回折を受ける1次回折光、Cは0次光を示す。尚、2次以降の回折光は微量であるため無視する。Dは格子面による拡散光を示す。
【0045】
A〜Dの関係は、以下の「(1) かつ(2) 」のようになる。
(1) A=B+C+D
(2) A>B>C>D または、 A>C>B>D
なお、同図においては、矢印の太さが光線の強度(光量)を示す指標であるように模式的に表す。
【0046】
回折格子の存在しない領域から観察者に到る光はAであり、回折格子の存在する領域から観察者に到る光はB,C,Dの何れかもしくはその組み合わせであり、上記の関係より、Aの光量が最も大きいものとなり、従って、拡散性を有する透光シートを通して観察することにより隠し情報が確認できるのである。
【0047】
上記のことは、次のような考え方によっても説明できる。
まず、回折格子を拡散板の一種として考え、回折されることは拡散されることと同等とみなす。
回折格子の存在しない領域では、光線の入射時に拡散性を有する非透明状態の可逆性感熱層で拡散され、前記領域(反射層)で単純に正反射した後、光線の出射時に前記感熱層で再度拡散される。すなわち、光線は、入射時・出射時の2回拡散される。
回折格子の存在する領域では、同様に、拡散性を有する非透明状態の可逆性感熱層で、入射時・出射時の2回拡散されるが、回折格子でも拡散(回折)されるため、合わせて3回拡散されることになり、拡散される回数が1回多いため、観察者に対しては拡がりを持つ分だけ少ない光量で達することになる。
従って、観察者に視覚される光量は、回折格子の存在しない領域からの方が、拡散出射する範囲が狭く明るいものとなる。
【0048】
前記感熱層が透明な場合には、回折格子の存在しない領域によって構成されるパターン(隠し情報)の存在が視認されにくいことが要求され、前記感熱層が拡散性を有する非透明な場合には、隠し情報を視認しやすいことが要求される。
上記の要求を満たす回折格子ドット(セル)のサイズは、径(矩形の場合は、一辺)が100〜200μm程度が好適である。
【0049】
【実施例】
<実施例1>
情報担持体を転写箔の形態に加工して物品表面に適用する実施例について説明する。
表面に剥離性を有する厚さ25μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムからなるベースフィルム上に、下記組成の可逆性感熱組成物をグラビアコートして、厚さ1μmの可逆性感熱層を形成した。
【0050】
〔可逆性感熱組成物〕
ベヘン酸(7重量部)
エイコサン二酸(1重量部)
1,4−シスシクロヘキサンジカルボン酸(0.7重量部)
1,4−トランスシクロヘキサンジカルボン酸(0.3重量部)
▲1▼これらを、カッコ内の割合で配合したもの…100重量部
▲2▼塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体(積水化学工業社製 商品名「エスレックA」)…300重量部
▲3▼硬化剤;イソシアナート(旭化成社製 商品名「デュラネート24A−100)…30重量部
▲4▼硬化促進剤;トリエチレンジアミン…3重量部
▲5▼トルエン…300重量部
▲6▼テトラヒドロフラン…1200重量部
【0051】
下記組成物をグラビアコートして、厚さ1μmの回折格子形成層を形成した。
〔回折格子形成層用組成物〕
▲1▼アクリルポリオール(Tg;75℃,OH値;100)…30重量部
▲2▼ニトロセルロース…5重量部
▲3▼キシレンジイソシアネート…5重量部
▲4▼トルエン…35重量部
▲5▼メチルエチルケトン…30重量部
【0052】
2光束干渉法によって、フォトレジスト上に回折格子からなる複数の微少なドットを所望に配置し、回折格子のない領域による「隠し情報」を混在させた回折格子パターンを作製した。
次いで、前記パターンからスタンパを起こし、上記の回折格子形成層に回折格子パターンをエンボス成型し、レリーフ表面にAlを50μm厚で真空蒸着し、反射性薄膜層を形成した。
〔スタンパ〕
大きさ;3mm×3mm
ドットの大きさ;0.1mm径
回折格子の空間周波数;700本/mm
パターン内のドット;回折格子の方向が45°ずつ異なる4種類
【0053】
反射性薄膜層上に下記組成物をグラビアコートして、厚さ1.5μmの接着層を形成し、転写箔を得た。
〔接着層用組成物〕
▲1▼ポリエステル樹脂…30重量部
▲2▼メチルエチルケトン…50重量部
▲3▼トルエン…50重量部
【0054】
上記のようにして得られた転写箔で、物品表面に情報担持体を形成した。
情報担持体の可逆性感熱層は、透明な状態では、赤外線ないし可視光線を透過し、下層の回折格子パターンを肉眼で認識することができるが、一旦120℃に加熱して白濁化(拡散性を有する非透明状態)させることにより、隠し情報を肉眼で認識することが可能となる。
また、白濁化した状態にある可逆性感熱層を、一旦80℃に加熱することにより、前記感熱層を透明状態に戻すことができ、回折格子パターンを肉眼で認識できるようになるが、隠し情報を肉眼で認識することはできなくなる。
【0055】
可逆性感熱層は、熱板により全面を一度に加熱することもできるが、サーマルヘッドにより順次全面を加熱する場合には、サーマルヘッドが表面を滑りやすくなるように、可逆性感熱層にスティッキング防止処理を施すことも有効である。
スティッキングは、サーマルヘッドの表面移動が円滑でないことによる不都合であり、前記防止処理としては、サーマルヘッドと移動表面とを、微視的に「面−点」で接触させるため、表面に微細凹凸を形成することが行なわれている。
【0056】
<実施例2>
情報担持体をシール(ラベル)の形態に加工して物品表面に適用する実施例について説明する。
厚さ50μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる透明フィルム上に、実施例1と同様な組成の可逆性感熱層をグラビアコートにより、厚さ1μmで形成した。
【0057】
また、実施例1と同様の組成物をグラビアコートして、厚さ1μmの回折格子形成層を形成した。
【0058】
EB描画により電子線レジスト上に、回折格子セルのない領域から構成される隠し情報を混在させた回折格子パターンを形成した。
上記パターンから起こしたスタンパにより、上記回折格子形成層に対して回折格子パターンをエンボス成型した後、レリーフ面にZnSを厚さ80nmで真空蒸着により形成し、反射性薄膜層とした。
【0059】
上記反射性薄膜層上に、ポリアクリル酸エステルをグラビアコートして粘着層を形成した後、クラフト紙からなる剥離シートを積層して、シール(ラベル)の形態とした。
【0060】
上記のようにして得られたシール(ラベル)で、ポリ塩化ビニルからなるカード表面に情報担持体を形成した。
【0061】
本実施例に係る情報担持体も、可逆性感熱層が透明な状態では、赤外線ないし可視光線を透過し、下層の回折格子パターンを肉眼で認識することができるが、一旦120℃に加熱して白濁化させることにより、隠し情報を肉眼で認識することが可能であり、白濁状態にある可逆性感熱層を、一旦80℃に加熱することにより、透明状態に戻すことができ、回折格子パターンを肉眼で認識できるようになるが、隠し情報を肉眼で認識することはできなくなる。
【0062】
【発明の効果】
本発明により、偽造や模造の困難なセキュリティ性の高い回折格子パターンを有する情報担持体が提供される。
上記情報担持体では、透明状態と拡散透光性を持つ非透明状態が可逆的に変化する特性を持つ可逆性感熱層の状態を適宜に変化させることにより、前記感熱層を通して観察するだけで、下層のホログラムの正当性を確認することが実現される。前記の状態変化は、加熱処理だけによる簡便なものであり、既存の真偽判別のように、読み取りのための特殊な光源や検証器は不要である。
【0063】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の回折格子パターンの一例を示す説明図。
【図2】本発明の回折格子パターンを有する情報担持体をシール(ステッカー)の形態にして、金券やカードなどの表面に貼着した物品に対して、前記パターン内の隠し情報を読み取っている状態を示す説明図。
【図3】本発明の情報担持体をシールの形態に加工した場合の断面説明図。
【図4】本発明の情報担持体を転写箔の形態に加工した場合の断面説明図。
【図5】拡散性を有する表面(拡散面)に光が垂直に入射する場合の拡散反射特性を模式的に示す説明図。
【図6】図1における隠し情報の読み取りの現象(原理)を模式的に表すための説明図。
【符号の説明】
1…物品
2…情報担持体
20…ベースフィルム
21…可逆性感熱層
22…回折格子パターン形成層
23…反射性薄膜層
24…粘着層(接着層)
25…剥離シート

Claims (2)

  1. 少なくとも、ベースフィルム上に、
    有機低分子物質が分散混合された樹脂を主成分とし、温度に依存して透明状態または拡散透光性を持つ非透明状態が可逆的に変化する可逆性感熱層と、
    レリーフ型回折格子からなる微細なドットまたはセルが、基板の表面に所望に複数配置され、その表面に反射層が形成されてなる回折格子パターンと、
    感熱接着層とを、この順に形成し、
    感熱転写により、前記回折格子パターン,前記可逆性感熱層からなる情報担持体が被転写体表面に形成される構成とした転写箔。
  2. 少なくとも、
    有機低分子物質が分散混合された樹脂を主成分とし、温度に依存して透明状態または拡散透光性を持つ非透明状態が可逆的に変化する可逆性感熱層と、
    レリーフ型回折格子からなる微細なドットまたはセルが、基板の表面に所望に複数配置され、その表面に反射層が形成されてなる回折格子パターンと、
    粘着層と、
    剥離シートとを、この順に形成し、
    剥離シートを剥離後、貼着することにより、前記回折格子パターン,前記可逆性感熱層からなる情報担持体が物品表面に形成される構成としたシール。
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