JP3912927B2 - 研磨液組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、絶縁層と金属層を有する被研磨表面を研磨する研磨液組成物に関する。さらに詳しくは、半導体基板上の埋め込み金属配線の形成に適用される研磨液組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体装置の製造工程における金属配線層形成において、半導体基板上の絶縁膜表面に配線形状の溝を形成し、該溝を有する絶縁膜上に銅等からなる金属膜を堆積し、前記金属膜をポリッシング装置及び研磨液による研磨処理により、前記溝内のみに金属層を残存させる配線形成における金属の研磨工程〔メタルケミカルメカニカルポリッシング(Metal Chemical Mechanical Polishing、以下メタルCMPという)〕が採用されている。
【0003】
しかしながら、このメタルCMPには絶縁膜の溝内に残存した金属配線層にディッシング(Dishing)と呼ばれるくぼみが発生し、金属配線層の断面積が減少して、電気抵抗の増大等を引き起こすという問題がある。このディッシングは、研磨液組成物により金属配線層の表面が絶縁体表面よりも過剰に研磨又はエッチングされて生じるとされている。特に、主要な配線金属の1つである銅は、研磨液組成物により過剰にエッチングされて、ディッシングが発生しやすいという欠点がある。
【0004】
従って、絶縁膜上の金属膜を研磨するためのエッチング作用は残しつつも、配線形成時には、金属層にディッシング等の欠陥が存在しない研磨液が望まれている。
【0005】
従来の研磨液としては、例えば、特開平10−44047号公報には、水、研磨剤、酸化剤及び有機酸、さらには界面活性剤を含むスラリーが記載されているが、ディッシング防止に有効に作用する界面活性剤の具体的な記載はない。特開昭63―272460号公報には、ポリマレイン酸、マレイン酸とビニル基を有する化合物の共重合物の研磨液組成物が記載されているが、この研磨組成物はpH9以上のアルカリ性のものである。また、特表平7−502778号公報には、イオン性の特性を持つポリマーのポリカルボキシル塩の界面活性剤を研磨液に添加することが記載されているが、この研磨組成物は、絶縁層を平坦化することを目的とするものであり、半導体基板の配線金属の研磨には言及しておらず、ディッシング防止を目的としたものではない。
【0006】
一方、特開平8−22970号公報には研磨液組成物にカルボキシル基またはその塩、スルホン基又はその塩からなる少なくとも1つの親水基を有する分子量100以上の高分子有機化合物を含有した研磨液が記載されているが、具体的な不飽和ジカルボン酸系共重合物に関する記載はない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、絶縁層と金属層を有する被研磨表面において、金属膜の研磨速度を向上させ、且つ金属配線層のディッシング等の防止効果に優れた研磨液組成物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、
〔1〕絶縁層と金属層を有する被研磨表面を研磨する、不飽和ジカルボン酸系共重合物及び水を含有し、pHが7以下の研磨液組成物であって、該不飽和ジカルボン酸系共重合物が、不飽和ジカルボン酸系化合物と該化合物と共重合し得る単量体とを共重合させて得られるものであり、前記共重合し得る単量体が(A)分子内にカルボキシル基を有するモノカルボン酸系単量体の場合、不飽和ジカルボン酸ユニットが5〜95モル%、又は(B)分子内にカルボキシル基を有さない非カルボン酸系単量体の場合、不飽和ジカルボン酸ユニットが40〜95モル%である、研磨液組成物(以下、第1研磨液組成物ともいう)、
〔2〕さらに、有機酸及び/又は酸化剤を含有する〔1〕記載の研磨液組成物(以下、第2研磨液組成物ともいう)、
〔3〕さらに、研磨材を含有する〔1〕又は〔2〕記載の研磨液組成物(以下、第3研磨液組成物ともいう)に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる不飽和ジカルボン酸系共重合物とは、分子内に式(1)又は(2):
【0010】
【化1】
【0011】
(式中、R1 及びR2 はそれぞれ独立して水素原子、メチル基又はエチル基、X1 及びX2 はそれぞれ独立して水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、アンモニウム基又は有機アンモニウム基を示す)で表される単量体ユニットを有する重合物をいう。
【0012】
本発明は、前記不飽和ジカルボン酸系共重合物を用いることに一つの大きな特徴があり、かかる不飽和ジカルボン酸系共重合物を含有する研磨液組成物を用いることで、研磨速度を向上させるだけでなく、金属膜の過剰なエッチングを防止することができ、ディッシング等の欠陥のない研磨表面を得ることができるという優れた効果が発現される。
【0013】
式(1)又は(2)中において、X1 及びX2 は、水素原子、アンモニウム基、モノエタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウム、トリエタノールアンモニウム、トリエチルアンモニウム等の有機アンモニウム基が好ましい。
【0014】
不飽和ジカルボン酸系共重合物は、例えば、不飽和ジカルボン酸系化合物とそれらと共重合し得る単量体とを共重合させることにより得ることができる。
【0015】
不飽和ジカルボン酸系化合物としては、マレイン酸系化合物、フマル酸系化合物、イタコン酸系化合物等が好ましく、式(3)〜(6):
【0016】
【化2】
【0017】
(式中、R3 〜R8 はそれぞれ独立して水素原子、メチル基又はエチル基を示し、X1 及びX2 は前記と同様である)で表される化合物が挙げられ、具体的には、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、それらの酸無水物、それらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等の塩基性塩等が挙げられる。これらの中では、重合性の観点からマレイン酸系化合物が好ましい。
【0018】
不飽和ジカルボン酸系化合物と共重合し得る単量体としては、(A)分子内にカルボキシル基を有するモノカルボン酸系単量体、(B)分子内にカルボキシル基を有さない非カルボン酸系単量体が挙げられる。(A)の単量体としては、不飽和モノカルボン酸系単量体又はその塩が挙げられ、具体的にはアクリル酸、メタクリル酸、それらのアンモニウム塩、有機アミン塩等が挙げられる。(B)の単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、ビニルエステル系単量体、芳香族ビニル系単量体、α−オレフィン、ビニルエーテル系単量体、アリル化合物、N−アルキル置換(メタ)アクリルアミド、ニトリル系単量体等が挙げられる。
【0019】
具体的には、(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n―ブチル(メタ)アクリレート、2―エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等;ビニルエステル系単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等;芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、メチルスチレン、ビニルナフタレン等;α−オレフィンとしては、イソブチレン、ジイソブチレン等;ビニルエーテル系単量体としては、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等;アリル化合物としては、アリルアルコール、アリルエチルエーテル、アリルブチルエーテル、アリルグリシジルエーテル又はアリルアルコールのアルキレンオキサイド(以下、AOという)付加物(なお、AO付加物には、エチレンオキサイド(以下、EOという)付加物、プロピレンオキサイド(以下、POという)付加物等が含まれる)等;N−アルキル置換(メタ)アクリルアミドとしては、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド等;ニトリル系単量体としては、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
【0020】
前記不飽和ジカルボン酸系化合物と前記の単量体とを共重合する方法としては、例えば、式(3)で表される不飽和ジカルボン酸系化合物又はイタコン酸無水物と、これらと共重合し得る単量体とを共重合した後、酸無水物部分を加水分解する方法、さらにアンモニア、有機アミンで中和する方法がある。なお、式(3)で表される不飽和ジカルボン酸系化合物と共重合し得る単量体としては、スチレン、イソブチレン、ジイソブチレン等が挙げられる。
【0021】
また、式(4)〜(6)で表される不飽和ジカルボン酸系化合物と、これらと共重合し得る単量体とを共重合する方法が挙げられる。なお、式(4)〜(6)で表される不飽和ジカルボン酸系化合物と共重合し得る単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、アリルアルコール、アリルアルコールのAO付加物、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0022】
また、不飽和ジカルボン酸系共重合物は、2,2’−アゾビスイソブチルニトリル、2,2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二硫酸塩二水和物、ベンゾイルパーオキサイド、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等の重合開始剤の存在下に塊状重合、溶液重合等の公知の重合方法により前記不飽和ジカルボン酸系化合物とそれと共重合し得る単量体とを共重合させることによっても得ることができる。
【0023】
不飽和ジカルボン酸系共重合物の組成は、研磨速度を向上させ、且つディッシングを抑制する観点から、以下のように設定される。即ち、不飽和ジカルボン酸と(A)の単量体との共重合物の組成は、不飽和ジカルボン酸ユニットが、3〜95モル%、より好ましくは5〜80モル%、さらに好ましくは5〜50モル%、特に好ましくは5〜30モル%である。また、不飽和ジカルボン酸と(B)の単量体との組成は、不飽和ジカルボン酸ユニットが、5〜95モル%、さらに好ましくは20〜80モル%、特に好ましくは40〜80モル%である。
【0024】
不飽和ジカルボン酸系共重合物の分子量は、研磨速度を向上させ、かつディッシングを抑制する観点から、500〜50000が好ましく、1000〜10000が特に好ましい(ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算)。
【0025】
不飽和ジカルボン酸系共重合物の研磨液組成物中における配合量は、研磨速度を上げ、且つエッチング速度を下げてディッシングを防ぐ観点から、0.01〜30重量%が好ましく、0.05〜5重量%がより好ましく、0.1〜3重量%がさらに好ましい。
【0026】
本発明に用いられる水は、媒体として用いられるものである。その配合量は、被研磨物を効率よく研磨できる観点から、好ましくは60〜99.99重量%、より好ましくは70〜99.4重量%、さらに好ましくは80〜99重量%である。
【0027】
かかる組成を有する本発明の第1研磨液組成物のpHは、7以下であり、研磨速度を実用レベルに保ち、且つディッシングを防止する観点及び表面の微細なスクラッチ傷を除去する観点から、1〜7が好ましく、2 〜6がより好ましく、3〜5がさらに好ましい。pHを前記範囲内に調整するために、必要に応じて、硝酸、硫酸等の無機酸、有機酸、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、アンモニア、有機アミン等の塩基性物質を適宜配合することができる。
【0028】
本発明の第2研磨液組成物は、第1研磨液組成物に有機酸及び/又は酸化剤をさらに含有させたものである。本発明において、かかる有機酸を用いることで、金属層を構成する各種金属、特に銅と錯体を形成又は結合し、金属層を脆弱な層にして、研磨の際に、金属層の除去を容易にするという効果が発現される。
【0029】
また、特に、有機酸と不飽和ジカルボン酸系共重合物を併用することで、より高い研磨速度が実現でき、且つディッシングを防止することができる。
【0030】
有機酸は、酸性を示す官能基を有する有機化合物である。これらの酸性を示す官能基は、カルボキシル基、ホスホン基、スルホン基、スルフィン基、フェノール基、エノール基、チオフェノール基、イミド基、オキシム基、芳香族スルホアミド基、第一級及び第二級ニトロ基等が挙げられる。
【0031】
カルボキシル基を有する有機酸としては、モノカルボン酸、ジカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸及びアミノカルボン酸が挙げられる。具体的には、モノカルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、バレリアン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピルビン酸等;ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フタル酸等;ヒドロキシカルボン酸としては、グルコン酸、酒石酸、グリコール酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸等;アミノカルボン酸としては、エチレンジアミンテトラ酢酸、ニトリロトリ酢酸等が挙げられる。ホスホン基を有する有機酸としては、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸等;スルホン基を有する有機酸としては、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタリンスルホン酸等;スルフィン基を有する有機酸としては、ベンゼンスルフィン酸、p−トルエンスルフィン酸等が挙げられる。これらの中でも、モノカルボン酸、ジカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸及びアミノカルボン酸が好ましく、酢酸、シュウ酸、コハク酸、グリコール酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、エチレンジアミンテトラ酢酸及びニトリロトリ酢酸がさらに好ましい。これらの有機酸は、単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。また、これらの有機酸の分子量は、500未満が好ましい。
【0032】
有機酸は、第2研磨液組成物中において水を媒体とした状態で使用される。有機酸の第2研磨液組成物中における配合量は、金属層の除去のために実用レベルでの研磨速度を確保し、且つ金属層の過剰なエッチングを防ぐために種々選択することができ、例えば、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.2〜8重量%、さらに好ましくは0.3〜5重量%である。
【0033】
本発明に用いられる酸化剤は、金属を酸化させるものである。本発明においては、かかる酸化剤を用いることにより、金属層を酸化させ、金属層の機械的研磨効果を促進させる効果が発現されると考えられる。
【0034】
酸化剤としては、過酸化物、過マンガン酸又はその塩、クロム酸又はその塩、硝酸又はその塩、ペルオクソ酸又はその塩、酸素酸又はその塩、金属塩類、硫酸等が挙げられる。
【0035】
その具体例として、過酸化物としては、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化バリウム等;過マンガン酸又はその塩としては、過マンガン酸カリウム等;クロム酸又はその塩としては、クロム酸金属塩、重クロム酸金属塩等;硝酸又はその塩としては、硝酸、硝酸鉄(III) 、硝酸アンモニウム等;ペルオクソ酸又はその塩としては、ペルオクソ二硫酸、ペルオクソ二硫酸アンモニウム、ペルオクソ二硫酸金属塩、ペルオクソリン酸、ペルオクソ硫酸、ペルオクソホウ酸ナトリウム、過ギ酸、過酢酸、過安息香酸、過フタル酸等;酸素酸又はその塩としては、次亜塩素酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、過塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム等;金属塩類としては、塩化鉄(III) 、硫酸鉄(III) 、クエン酸鉄(III) 、硫酸アンモニウム鉄(III) 等が挙げられる。好ましい酸化剤としては、過酸化水素、硝酸鉄(III) 、過酢酸、ペルオクソ二硫酸アンモニウム、硫酸鉄(III) 及び硫酸アンモニウム鉄(III) が挙げられ、特に過酸化水素が好ましい。これらの酸化物は、単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0036】
酸化剤は、第2研磨液組成物中において水を媒体とした状態で使用される。該酸化剤の第2研磨液組成物中における配合量は、金属層の迅速な酸化により、実用レベルの研磨速度を得る観点から、好ましくは0.1〜60重量%、より好ましくは0.2〜50重量%、さらに好ましくは0.3〜30重量%である。
【0037】
また、第2研磨液組成物における不飽和ジカルボン酸系共重合物の配合量は、好ましくは0.01〜30重量%、より好ましくは0.05〜5重量%、さらに好ましくは0.1〜3重量%である。水の配合量は、好ましくは60〜99.89重量%、より好ましくは70〜99.4重量%、さらに好ましくは80〜99重量%である。
【0038】
本発明の第1及び第2研磨液組成物は、固定砥石等を用いる研磨方式において有効である。例えば、固定砥石による研磨方式に第1研磨液組成物を使用することにより、研磨速度を向上させるだけでなく、金属層のディッシングを防止することができる。
【0039】
本発明の第3研磨液組成物は、第1又は第2研磨液組成物に研磨材をさらに含有させたものであり、遊離研磨材による研磨方式に用いられるものである。
【0040】
研磨材としては、研磨用に一般に使用される研磨材を使用することができ、例えば、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、窒化ケイ素、二酸化マンガン、炭化ケイ素、酸化亜鉛、ダイヤモンド及び酸化マグネシウムが挙げられる。
【0041】
この具体例として、二酸化ケイ素としては、コロイダルシリカ粒子、フュームドシリカ粒子、表面修飾したシリカ粒子等;酸化アルミニウムとしては、α―アルミナ粒子、γ―アルミナ粒子、δ―アルミナ粒子、θ―アルミナ粒子、η―アルミナ粒子、無定型アルミナ粒子、その他の製造法の異なるフュームドアルミナやコロイダルアルミナ等;酸化セリウムとしては、酸化数が3価又は4価のもの、結晶系が六方晶系、等軸晶系又は面心立方晶系のもの等;酸化チタンとしては、一酸化チタン、三酸化チタン二チタン、二酸化チタン、その他の製造法の異なるフュームドチタニア等;酸化ジルコニウムとしては、結晶系が単斜晶系、正方晶系又は非晶質のもの、その他の製造法の異なるフュームドジルコニウム等;窒化ケイ素としては、α―窒化ケイ素、β―窒化ケイ素、アモルファス窒化ケイ素、その他の形態の異なるもの等;二酸化マンガンとしては、α―二酸化マンガン、β―二酸化マンガン、γ―二酸化マンガン、δ―二酸化マンガン、ε―二酸化マンガン、η―二酸化マンガン等が挙げられる。これらの研磨材は、単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0042】
かかる研磨材の一次粒子の平均粒径は、一定の研磨速度を維持する観点から、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上、さらに好ましくは20nm以上、特に好ましくは50nm以上である。また、被研磨物の表面に引っ掻き傷(スクラッチ)を発生させない観点から、好ましくは1000nm以下、より好ましくは500nm以下、さらに好ましくは300nm以下、特に好ましくは200nm以下、最も好ましくは100nm以下である。
【0043】
特に、研磨材としてフュームドシリカ粒子を用いた場合には、研磨速度を向上させる観点から、一次粒子の平均粒径は、5nm以上、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上である。
【0044】
なお、研磨材の一次粒子の平均粒径は、0.1%ポリスチレンスルフォン酸ソーダ水溶液100gに、該研磨材0.1gを加え、次いで超音波を印加した該研磨材を分散させたものを透過型電子顕微鏡で観察して画像解析により求められる。
【0045】
第3研磨液組成物を半導体装置の配線形成の際に用いる場合、前記不飽和ジカルボン酸系共重合物との添加相乗効果が向上する観点から、特に好ましく用いられる研磨材は、純度が好ましくは98重量%以上、より好ましくは99重量%以上、特に好ましくは99.9重量%以上のシリカ粒子である。かかる研磨材としては、四塩化ケイ素等の揮発性ケイ素化合物を酸水素焔中での高温加水分解により製造されるフュームドシリカ、又はケイ酸アルカリやケイ酸エチルを出発原料とする製法で得られるコロイダルシリカが挙げられる。
【0046】
なお、前記研磨材の純度は次のようにして求められる。即ち、研磨材1〜3gを酸又はアルカリ水溶液に溶かし、ICP(プラズマ発光分析)法により、ケイ素イオンを定量することにより測定することができる。
【0047】
かかる研磨材は、第3研磨液組成物中において水を媒体とした、いわゆるスラリー状態で使用される。研磨材の第3研磨液組成物中における配合量は、本発明の研磨液組成物の粘度や被研磨物の要求品質等に応じて種々選択することができ、第1又は第2研磨液組成物100重量部に対して、0.01〜30重量部、より好ましくは0.02〜20重量部、さらに好ましくは0.05〜10重量部である。
【0048】
本発明の研磨液組成物は、絶縁層と金属層を有する表面を研磨の対象とし、メタルCMPに用いられる。金属層を形成する金属としては、銅又は銅合金、アルミニウム又はアルミニウム合金、タングステン等が挙げられる。これらの中では、特に半導体基板上の埋め込み金属配線形成工程に用いる場合、銅又は銅合金が好ましい。かかる銅又は銅合金の金属配線層の形成に、本発明の研磨液組成物を用いると、研磨速度を向上させる効果や埋め込み金属配線層のディッシングを抑制する効果が特に顕著に発現される。また、絶縁層を形成する材としては、二酸化ケイ素、窒化物(例えば、窒化タンタル、窒化チタン等)、フッ素添加二酸化ケイ素、テフロン、ポリイミド、有機SOG(スピンオングラス)、水素含有SOG等が挙げられる。
【0049】
これらの被研磨物の形状は、半導体基板上の絶縁膜表面に配線形状の溝を形成し、該溝を含む絶縁膜上に金属が堆積した形状であることが好ましい。また、絶縁膜と金属層の間にタンタル、チタン又はそれらの窒化物からなるバリア膜が設けられてもよい。特に金属層が銅又は銅合金である場合、前記バリア膜を設けることにより、絶縁層への銅の拡散を防止できるため好ましい。
【0050】
【実施例】
実施例1〜10及び比較例1〜5
表1に不飽和ジカルボン酸系化合物、それと共重合させた単量体、それらの共重合組成比(モル比)、並びに得られた不飽和ジカルボン酸系共重合物及びマレイン酸重合物の分子量を示した。表1に示した不飽和ジカルボン酸系共重合物又はマレイン酸重合物と表2に示した有機酸をそれぞれ表2に示す含有量で、31%過酸化水素水2重量%及び残部水と混合して、第2研磨液組成物を得た。得られた第2研磨液組成物100重量部に対して、表2に示した研磨材5重量部を混合し、攪拌した後、pH調整を行い、第3研磨液組成物を得た。なお、使用した各研磨材は、フュームドシリカ(1次粒径:50nm)、コロイダルシリカ(1次粒径:30nm)である。また、被研磨物を片面研磨機により下記の条件にて研磨した。
【0051】
<片面加工機の設定条件>
使用片面加工機:エンギス社製 片面加工機(定盤サイズ30cm)
加工圧力:300gf/cm2
研磨パッド:上層:IC1000(ロデールニッタ社製)、下層:SUBA400 (ロデールニッタ社製)
定盤回転数:60rpm
研磨液組成物供給流量:100mL/min
研磨時間:2分間
【0052】
また、相対研磨速度、被研磨表面のディッシング等の研磨液組成物の特性を以下の方法に従って評価した。
【0053】
〔相対研磨速度〕
相対研磨速度を求めるために用いた被研磨対象物は、シリコン基板上に電気メッキ等で銅膜を成膜したシリコン基板である。また、研磨速度は、研磨前後の銅膜表面を20箇所測定し、それを研磨時間で除すことにより求め、比較例1又は2を基準として相対値を求めた。その結果を表2に示す。
【0054】
〔ディッシング〕
ディッシング評価のために、銅ダマシン配線パターン付きウエハ(SKW社製、「SKW6-2」、サイズ: 200mm)から20mm角のチップを5枚切り出し、セラミック製の貼り付け板に固定後、上記条件で研磨し、ディッシング評価用サンプルとした。ディッシング評価は、配線幅のサイズが1500μm×1500μmのパターンの断面の走査型電子顕微鏡観察により行った。その結果を表2に示す。なお、表中、「無」はディッシングが無いこと、「有」はディッシングが1箇所以上あることを示す。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
実施例の結果から、非カルボン酸系の単量体を用いた不飽和ジカルボン酸系共重合物や、モノカルボン酸系単量体を用いた不飽和ジカルボン酸系共重合物を研磨液組成物に配合すると、マレイン酸重合物(マレイン酸100モル%)を配合する場合に比べて、著しく研磨速度は上がり、ディッシングは抑えられることがわかる。
また、不飽和ジカルボン酸系共重合物と有機酸と酸化剤を併用することにより、より高い研磨速度を実現でき、且つディッシングを防止できることがわかる。また、pH7以下で研磨することで、十分な研磨速度を実現することができる。
【0058】
【発明の効果】
本発明の研磨液組成物を絶縁層と金属層を有する被研磨表面の研磨に用いることにより、金属膜の研磨速度が向上しかつ配線金属層にディッシング等の欠陥を発生させないという効果が奏される。
Claims (5)
- 絶縁層と金属層を有する被研磨表面を研磨する、不飽和ジカルボン酸系共重合物及び水を含有し、pHが7以下の研磨液組成物であって、該不飽和ジカルボン酸系共重合物が、不飽和ジカルボン酸系化合物と該化合物と共重合し得る単量体とを共重合させて得られるものであり、前記共重合し得る単量体が(A)分子内にカルボキシル基を有するモノカルボン酸系単量体の場合、不飽和ジカルボン酸ユニットが5〜95モル%、又は(B)分子内にカルボキシル基を有さない非カルボン酸系単量体の場合、不飽和ジカルボン酸ユニットが40〜95モル%である、研磨液組成物。
- 不飽和ジカルボン酸系共重合物が、不飽和ジカルボン酸系化合物と(メタ)アクリル酸エステル系単量体、ビニルエステル系単量体、芳香族ビニル系単量体、α−オレフィン、ビニルエーテル系単量体、アリル化合物、不飽和カルボン酸系単量体又はその塩、N−アルキル置換(メタ)アクリルアミド並びにニトリル系単量体からなる群より選ばれた1種以上の単量体とを共重合してなる請求項1記載の研磨液組成物。
- さらに、有機酸及び/又は酸化剤を含有する請求項1又は2記載の研磨液組成物。
- さらに、研磨材を含有する請求項1〜3いずれか記載の研磨液組成物。
- 金属層が半導体基板上の銅又は銅合金の埋め込み金属配線層である請求項1〜4いずれか記載の研磨液組成物。
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