JP3911148B2 - 補強土擁壁 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、道路擁壁、駐車場や工場等の敷地造成地の擁壁、土捨て場の擁壁、治山ダム、砂防ダムをはじめ多くの場所に適用される補強土擁壁に関する。
【0002】
【従来の技術】
道路擁壁、駐車場や工場等の敷地造成地の擁壁、土捨て場の擁壁、治山ダム、砂防ダム等に適用される補強土擁壁は、従来、コンクリートや鋼製緑化擁壁等の工業資材を主体とした構造体が殆どであった。
【0003】
しかし、擁壁構造物を構築する場所は、山間部等資材の調達や運搬に不便な場所が多く、従来の工業資材を利用した構造物では、その資材調達だけでなく、その運搬にも費用、手間がかかる。又、擁壁構造物を構築する際に、山腹の傾斜地盤等を掘削した際に発生する土砂の処理、運搬等の問題も生じる。又、工場製品を主体とした擁壁構造物は、自然景観との同化という点では好ましくない。
【0004】
一方、治山治水事業においては、山林の健全な維持の為に、間伐することが重要であり、これにより生じる間伐材をいろいろな分野で有効利用することが探られている。しかしながら、木は腐りやすいために本格的な建設資材としては敬遠されており、抜本的回生策はいまだ確立されていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、本発明者は、上記問題点を解決することを目的としてすでに間伐材とジオグリッド(「敷網材」ともいう。商品としては商品名「テンサー」がある。)を相互補完的に組み合わせて構成した補強土擁壁を先行発明として提案している(特願2000−130739号参照。)。
【0006】
この先行発明に係る補強土擁壁の概要は図8に示すように、補強土擁壁は、前面及び背面の敷網材と、多段に配置した水平敷網材によって構成する偏平な篭内に土砂を詰め込んで外部拘束する補強土擁壁と、この補強土擁壁を構築するための、腰の支えの役目をするとともに、補強土擁壁の構築後も紫外線から上記前面敷網材を守る役目をする間伐材壁面とによって相互補完的に構成されている。
【0007】
このような先行発明では、間伐材壁面の背後には柔らかい敷網材を介して土砂が詰め込まれ盛土が形成されている構造であるために、間伐材が腐食した際の間伐材を交換するために古い間伐材を取り除くと、背後の盛土の土砂の支えが無くなり壁面が変形してしまうために、間伐材の交換はほとんど不可能であるという問題がある。
【0008】
本発明は、先行発明における、上記問題点を解決することを目的とする発明であり、間伐材壁面の背後の盛土の土圧に対する腰の支えの役目をする壁面材を配置し、間伐材が腐食しても間伐材の交換を可能とし、構築作業が簡単で、必要な部品点数の少ない、しかの自然の景観を損ねない構造の補強土擁壁を実現することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するために、底面地盤上に盛土構造体を複数段積み重ねて形成される補強土擁壁であって、上記盛土構造体の夫々は、上記底面地盤に設置され底面部と前面折返部とから成るL型の壁面材と、該前面折返部の前面に沿って設けた複数本の間伐材と、上記複数本の間伐材を互いに連結する連結材と、底面地盤に敷設された底面敷網材と、盛土とを備えており、上記壁面材の底面部と前面折返部とは、互いに斜めタイ材で結合されており、上記間伐材は、複数本並べられ間伐材壁面を構成しており、上記連結材は、上記複数本の間伐材の背面側において、上記複数本の間伐材との間で上記壁面材の前面折返部を挟着するように固定具で上記複数本の間伐材に固着され、上記複数本の間伐材を互いに結合していることを特徴とする補強土擁壁を提供することである。
【0010】
本発明は上記課題を解決するために、背後掘削面と底面地盤上に、盛土構造体を複数段積み重ねて形成される補強土擁壁であって、上記盛土構造体の夫々は、上記底面地盤の谷側の部分に設置され底面部と前面折返部とから成るL型の壁面材と、該前面折返部の前面に沿って設けた複数本の間伐材と、上記複数本の間伐材を互いに連結する連結材と、背後掘削面に敷設された背面敷網材と、底面地盤に敷設された底面敷網材と、盛土とを備えており、上記壁面材の底面部と前面折返部とは、互いに斜めタイ材で結合されており、上記間伐材は、その長手方向を上下方向に向けて縦置きされ、補強土擁壁の横幅方向に複数本並べられ間伐材壁面を構成しており、上記連結材は、上記複数本の間伐材の背面側で上記横幅方向に設けられ、該複数本の間伐材との間で上記壁面材の前面折返部を挟着するように固定具で上記複数本の間伐材に固着され、上記複数本の間伐材を互いに結合していることを特徴とする補強土擁壁を提供する。
【0011】
上記底面敷網材は、その前端部は、上記斜めタイ材に取り付けられている構成としてもよい。
【0012】
上記底面敷網材は、その前端部は底面地盤上に敷設され、さらに間伐材壁面の背面側に沿って上方に伸ばされ、上記盛土の上面において折り返され盛土を巻き込む構成としてもよい。
【0013】
本発明は上記課題を解決するために、底面地盤上に盛土構造体を複数段積み重ねて形成される補強土擁壁であって、上記盛土構造体の夫々は、上記底面地盤に設置され底面部と前面折返部とから成るL型の壁面材と、該前面折返部の前面に沿って設けた複数本の間伐材と、底面地盤に敷設された底面敷網材と、盛土とを備えており、上記間伐材は、複数本並べられ間伐材壁面を構成しており、上記複数本の間伐材の背面側において、上記壁面材の前面折返部を挟着するように、連結材及び押さえ座がねの両方又はいずれかを上記複数本の間伐材に固着し、上記複数本の間伐材を互いに結合していることを特徴とする補強土擁壁を提供する。
【0014】
本発明は上記課題を解決するために、背後掘削面と底面地盤上に、盛土構造体を複数段積み重ねて形成される補強土擁壁であって、上記盛土構造体の夫々は、上記底面地盤の谷側の部分に設置され底面部と前面折返部とから成るL型の壁面材と、該前面折返部の前面に沿って設けた複数本の間伐材と、背後掘削面に敷設された背面敷網材と、底面地盤に敷設された底面敷網材と、盛土とを備えており、上記間伐材は、その長手方向を上下方向に向けて縦置きされ、補強土擁壁の横幅方向に複数本並べられ間伐材壁面を構成しており、上記複数本の間伐材の背面側において、上記壁面材の前面折返部を挟着するように、連結材及び座がねの両方又はいずれかを上記複数本の間伐材に固着し、上記複数本の間伐材を互いに結合していることを特徴とする補強土擁壁を提供する。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明に係る補強土擁壁の実施の形態を実施例に基づいて図面を参照して説明する。
【0016】
(実施例1)
図1〜4は、本発明に係る補強土擁壁の実施例1を説明する図である。
図1は、本発明に係る補強土擁壁の実施例の全体構造を説明する図である。この補強土擁壁1は、例えば、道路擁壁、治山ダム、砂防ダム、あるいは柵工等の各種の擁壁に適用されるものであり、背後掘削面2の前方、且つ底面地盤3上に、盛土構造体4が複数段積み重ねられて構成される。図1に示される補強土擁壁1の構成を、以下詳細に説明する。
【0017】
底面地盤3の谷側(図1の左側)の部分の上に、壁面材5が設置されている。壁面材5は、適宜寸法(例えば、横幅が100cm、縦幅が90cm程度)で形成され、補強土擁壁1の全体の横幅(補強土擁壁1を前方から見た場合の左右方向、即ち図1中の紙面に垂直方向の幅。)に応じて、1又は2以上設置されている。
【0018】
壁面材5は、剛性のあるエキスパンドメタルや金網等が利用されるが、本実施例では、剛性のあるエキスパンドメタルを使用した例を示す。図2は、本実施例で使用する壁面材5(エキスパンドメタル)及び後述する連結材等を説明する図であり、図2(a)〜(c)は、壁面材5の正面、平面、側面を示す。
【0019】
図3は、図1の補強土擁壁1の一段の盛土構造体4の構造を詳細に示す図である。図2(a)〜(c)、図3に示すように、壁面材5は、底面部6と、この底面部6の前端から上方に折り返された前面折返部7とを有し、全体として断面略L型である。
【0020】
壁面材5の底面部6の下面には、上方(図2(c)中の上方)にU型に窪ませた底面凹溝部8がその壁面材5の横幅方向に伸びるように形成されている。又、前面折返部7の前面には、背面側(図2(c)中の右方向)にU型に窪ませた前面凹溝部9がその壁面材5の横幅方向に伸びるように形成されている。
【0021】
底面凹溝部8と前面凹溝部9の夫々に、図3、4に示すように、底面地盤3と壁面材5に沿った状態で棒鋼10、11が挿入されている。そして、底面凹溝部8と前面凹溝部9との間に、斜めタイ材12が架設されている。この斜めタイ材12は、鋼材やプラスチック材等で成形された長細い板(例.型鋼)や棒(例.棒鋼)等が利用される。本実施例の斜めタイ材12は、長細い板であり、その両端に夫々取り付け孔10’、11’が形成されている。
【0022】
図3、4に示すように、斜めタイ材12の下端は、その取り付け孔10’に底面凹溝部8に挿入された棒鋼10が挿通されて固定されている。同様に、斜めタイ材12の上端は、その取り付け孔11’にその前面凹溝部9に挿入された棒鋼11が挿通されて固定されている。このように壁面材5は、斜めタイ材12を架設して補強することにより、盛土により土圧がかかっても、斜めタイ材12はL型の形状を保てることができる。
【0023】
壁面材5の前面折返部7の前面に当接するように、複数本の間伐材15から成る間伐材壁面16が構築されている。この間伐材壁面16は、補強土擁壁1の各段における盛土構造体4を施工する際に、盛土17を支える腰の役目をする。この実施例では、複数本の間伐材15は、夫々が前面折返部7に沿って底面地盤3に対して縦方向に置かれ(上下方向に向けて縦置きされ)、補強土擁壁1の横幅方向に並べられている。
【0024】
なお、複数本の間伐材は、夫々が水平方向に置かれ(横置きされ)て上下方向に積み重ねられて間伐材壁面16が構成される構造も考えられる。この場合は、連結材18は、上下方向に向けて設け、横置きされて上下方向に積み重ねられた複数本の間伐材を互いに結合する。
【0025】
本実施例では、縦置きされて補強土擁壁1の幅方向に並べられた複数本の間伐材15は、これらの間伐材15の裏面側に配置された連結材18で互いに結合される。連結材18は、複数本の間伐材15にわたって補強土擁壁1の横幅方向に伸びるように水平に配置されている。そして、連結材18は、壁面材5の前面折返部7を間伐材15との間に挟持して、長手方向に間隔を置いて釘やねじ等の固定具19により壁面材5に固定される。
【0026】
この実施例では、連結材18は、図2(d)に示すように断面L型の山形鋼20を使用し、固定具19は、コーチスクリュー(長い釘の先端部から1/3〜2/3程度がねじとなっている固定具。)を使用する。具体的には、この山形鋼20は、その長手方向に一定間隔(例.50mm間隔)に複数の孔21があけられている。
【0027】
山形鋼20の孔21を通して固定具(コーチスクリュー)19を間伐材15にねじ込んでから打ち込み、前面折返部7を複数本の間伐材15との間に挟持し、山形鋼20を複数本の間伐材15に固定し、複数本の間伐材15を結合するとともに、前面折返部7を複数本の間伐材15と固定する。
【0028】
なお、本実施例では、連結材18は断面L型の山形鋼20を使用しているが、連結材18としては複数本の間伐材15を互いに結合できる部材であれば、どのような部材でもよい。例えば、連結材18として別途利用した間伐材を使用してもよい。
【0029】
具体的には、縦置きされた複数本の間伐材15の背後に、上記別途用意した間伐材を横置きして水平に配置し、この横置きした間伐材を補強土擁壁1の横幅方向に間隔を置いてボルト等により、前面折返部7を間伐材15との間に挟持して複数本の間伐材15に固定する構成としてもよい。
【0030】
さらに、連結材18とは別に、壁面材5の前面折返部7を複数本の間伐材15に、丸又は角座金31(押さえ座金)を使用して固定具(コーチスクリュー)19で固定する。丸又は角座金31は、固定具(コーチスクリュー)19の頭が壁面材5の網目を抜けないように壁面材5を押さえる押さえ座金として機能するから、本明細書では押さえ座金という。なお、この実施例1では、複数本の間伐材15の背後で、前面折返部7を間伐材15との間に挟持するように連結材18と押さえ座金31の両方を間伐材15に固定したが、連結材18又は押さえ座金31のいずれかだけ間伐材15に固定してももよい。
【0031】
背後掘削面2及び底面地盤3には、背面敷網材22及び底面敷網材23(水平に敷設するから「水平敷網材」とも言う。)がたるまないように密着して全体的に敷かれており、適宜箇所で、とめピン等により固定されている。施工される背後掘削面2の地形寸法に応じて複数の背面敷網材22が敷網連結材24で連結されている。敷網材としては、網目状を有するいろいろなもの、例えばジオグリッドやエキスパンドメタル等が利用される。
【0032】
背面敷網材22に、底面敷網材23が敷網連結材24で連結されている。底面敷網材も、底面地盤3の地形寸法に応じて複数の底面敷網材23が敷網連結材で必要に応じて、後述する実施例3に示すように連結される。
【0033】
本実施例の底面敷網材23は、図3、4に示すように、底面地盤3の背面掘削面側の端部近辺からL型壁面材5の底面部6の底面凹溝部8の近辺まで敷設されている。底面敷網材23の前端側(谷側)は、棒鋼10を引っ掛けて壁面材5に敷設されている。
【0034】
具体的には、図4に示すように、底面敷網材23の前端側(谷側)は、棒鋼10を引っ掛けて折り返され、その折返し部23’と底面敷網材23との相互の網目内に交互に、敷網連結材26(剛性を有する鋼やプラスチック製の長細い板材)を補強土擁壁1の横幅方向に挿通することで、折返し部23’を底面敷網材23に縫うようにして取り付ける。これにより、底面敷網材23を前方(谷側)に引っ張り、たるませないように取り付けられている。
【0035】
以上のような構成の間伐壁面16、背面敷網材22及び底面敷網材23によって囲まれたスペース内に、土砂を詰め、転圧ローラ等を利用して締固めを行いながら、ほぼ鉛直に90cm程度の高さまで盛土17を盛り立て、図1、図3に示すような1段目(最下段)の盛土構造4を構築する。
【0036】
このようにして構築された1段目の盛土構造体4の上に、同じ構造の盛土構造体4を必要な段数、順次積み重ねて構築することにより複数段の盛土構造体4を有する補強土擁壁1が構築される。この場合、図1に示すように、補強土擁壁1の傾斜程度を決める傾斜基準線Bに沿って徐々に山側に向けて傾斜するように各段の間伐壁面16の位置が決められる。
【0037】
具体的には、各段の壁面材5の底面部6と前面折返部の交点(壁面材5の底面部6の谷側端)を傾斜基準線B上に位置させて各段の盛土構造体4を構築する。又、2段目以上の盛土構造体4は、夫々の下位の盛土構造体4の上面が、上記底面地盤23に相当することとなる。
【0038】
なお、底面敷網材23は、本実施例では、底面地盤3の背面掘削面側の端部近辺からL型壁面材5の底面部6の底面凹溝部8の近辺まで敷設したが、その前端部をさらに谷側に伸ばして間伐材壁面16の背面側に沿って上方に伸ばし、土砂を詰め込み1段目の盛土17を盛り立ててから、その盛土17の上面において谷側から山側に向けて1m程度折り返し盛土17を巻き込み(袋状に包み込み)、底面敷網材23の終端部を背面側敷網材22に連結するように構成としてもよい。
【0039】
(実施例2)
図5、6は、本発明に係る補強土擁壁の実施例2を説明する図である。この実施例2に係る補強土擁壁1は、実施例1とほぼ同じであるが、斜めタイ材の取り付け構造、及び底面敷網材23の前端部の棒鋼10への取り付け構造が異なる。以下、実施例1と異なる構成についてのみ以下説明する。
【0040】
実施例2では、図5(a)、(b)に示すように、斜めタイ材12の下端は、クランプ13により底面凹溝部8に挿入された棒鋼10に固定されている。又、斜めタイ材12の上端は、クランプ14により前面凹溝部9に挿入された棒鋼11に固定されている。このように壁面材5は、斜めタイ材12を架設して補強することにより、盛土により土圧がかかっても、斜めタイ材12はL型の形状を保てることができる。
【0041】
さらに、実施例2の底面敷網材23は、図5(a)に示すように、底面地盤3の背面掘削面側の端部近辺からL型壁面材5の底面部6の底面凹溝部8の近辺まで敷設されている。底面敷網材23の前端側(谷側)は、壁面材5に取り付けられている。図6(a)に示すように、底面敷網材23の前端側の部分をクランプ25、連結杆26’、羽子板27及びアンカー鉄筋28により、底面凹溝部8内に挿入された棒鋼10に連結されている。これにより、底面敷網材23を前方(谷側)に引っ張り、たるませないように敷設されている。
【0042】
連結杆26’の前端(谷側端)は、クランプ25で棒鋼10に取り付けられ、連結杆26’の後端は羽子板27に固着されている。羽子板27には、その長手方向に複数の挿入孔29が隔設されている。アンカー鉄筋28は、図6(b)に示すように、底面敷網材23の網目30内を上下交互に縫うようにくぐらして取り付けるとともに、羽子板27の挿入孔29に挿入して横方向に設置する。
【0043】
(実施例3)
図7は、本発明に係る補強土擁壁の実施例3を説明する図である。この実施例3は、実施例1に比べて間伐材壁面16を含めてほぼ同じであるが、次の点を特徴とする。即ち、実施例1では、壁面材5の底面部6に、底面敷網材23の前端を取り付け、山側に向けて連続的に1つの底面敷網材23を配置しているが、実施例3は、図7(a)〜(c)に示すように、底面敷網材23を間隔をあけて壁面材5と連結部材32で連結し、さらに複数の底面敷網材23を互いに連結部材32で連結する構成とした。
【0044】
実施例3の底面敷網材3としては、ジオテキスタイル、鋼板、鉄筋メッシュ、樹脂ネット、エキスパンドメタル等が使用されている。そして、壁面材5と底面敷網材23、複数の底面敷網材23を互いに連結する連結部材32は、適度の機械強度を有する鋼線、棒鋼、型鋼、チェーン、ケーブル等が利用される。連結部材32は、鋼線等の場合は壁面材5と底面敷網材23に結着されたりして接続され、又棒鋼等の場合は、適宜の接続構造により接続される。
【0045】
実施例3では、壁面材5と連結部材32を介して、間伐材壁面16から山側の方向に水平方向に適度に離れた位置(これを「定着部」という。)に底面敷網材23を1又は2以上敷設し、定着されている。底面敷網材23の長さは、盛土17の安定のため及び底面敷網材23自体が定着部で定着に必要な長さを有している。
【0046】
この実施例3の特徴的構成は、土の安定及び土圧の軽減及び定着の必要から定着部に底面敷網材23が敷設されているが、底面地盤上に全面に連続的に敷設するものではなく、間隔をあけて底面敷網材23を敷設している点である。そして、壁面材5と或いは底面敷網材23を互いに連結部材32で連結することで、間伐材壁面16に作用する土圧や、底面敷網材23が土との摩擦によって作用される力を互いに伝達し、1つの底面敷網材23が独立的ではなく、壁面材5とともに、或いは複数の底面敷網材23が一体となって上記作用する力を受ける。
【0047】
この結果、盛土17がより安定するとともに、間伐材壁面16に作用する土圧に対しても大きな抗力を発揮し、土圧を効果的に低減する。そして、底面敷網材23を連続して敷設しなくてよいために、高価な底面敷網材23の敷設する数量を減じ、安価な連結部材32を底面敷網材23の一部に代用することにより、補強土擁壁構築に要するコストを低減することが可能となる。
【0048】
なお、図7(b)では、壁面材5に二つの底面敷網材23を連結部材32で連結しているが、図7(c)に示すように壁面材5と間隔をおいて一つの底面敷網材23を敷く構成でもよいし、逆に、底面敷網材23の長さの関係(短すぎて十分な強度が得られない場合)から二つに限らず三以上設けこれらを互いに連結部材32で連結する構成としてもよい。
【0049】
なお、上記本実施例1〜3では、背後掘削面2を前提とした傾斜地に本発明を適用した例であるが、本発明はこのような傾斜地形のみの適用に限定されるものではなく、例えば、造成地等のように平地に盛土をする盛土構造物にも適用可能である。この場合は、背後掘削面2はないので実施例1〜3で示した背面敷網材22は不要であり、底面敷網材23が間伐材壁面から見て奥の方向に必要長まで敷設される構造とすればよい。
【0050】
又、上記本実施例1〜3では、壁面材5を補強するために斜めタイ材12を設けたが、特に斜めタイ材で補強しない壁面材だけの構造も考えられる。特に、剛性の大きな壁面材、例えば棒鋼を溶着した金網、エキスパンドメタル、鉄板等では斜めタイ材を使用しない構成も考えられる。
【0051】
以上、本発明に係る補強土擁壁の実施形態を実施例に基づいて説明したが、本発明は特にこのような実施例に限定されることなく、特許請求の範囲記載の技術的事項の範囲内でいろいろな実施例があることはいうまでもない。
【0052】
【発明の効果】
以上のような構成の本発明に係る補強土擁壁によれば、次のような効果を奏する。
(1)本発明は、間伐材壁面の背後の盛土の土圧に対する腰の支えの役目をする壁面材を配置したので、間伐材が腐食した際に古い間伐材を取り除いても、壁面材が背後の土砂をささえ壁面の変形を防止するから、間伐材の交換を可能とする。
【0053】
(2)本発明では、複数本の間伐材を縦置きして補強土擁壁の横方向に並べて、一括して連結材で結合する構成を採用すれば、間伐材を横置きして積み重ねるための間伐材のガイド用の部材等必要とすることなく、間伐材壁の構築作業を簡単とし、しかも必要な部品点数を少なくすることができ、さら自然の樹木の方向と同じように間伐材を縦置きとすることで自然の景観を損ねないで見栄えの良い補強土擁壁を実現する。
【0054】
(3)コンクリート、鋼材等の工業資材の使用は必要最低限に止め、現地で調達可能な間伐材や、現場での施工中発生する土砂等を、擁壁構造物の主体として利用したので、山間部への工事資材の調達、運搬の手間が省かれ、間伐材の有効活用ができるとともに、工事現場から生じる残土の自前の処理ができ、その経済的効果は極めて大きく、又、林野事業、環境整備事業等への貢献も大である。
【0055】
(4)敷網材と間伐材とを相互補完的(相乗的)に組み合わせることにより、間伐材で壁面を形成し一種の土砂盛土用の型枠として機能し、柔軟な土砂補強用の敷網材とともに相互補完的に作用し、粘り強い、外部拘束型の極めて強度及び安定性の大きい盛土構造を特徴とする補強土擁壁が実現できる。
【0056】
(5)工業資材によらず、極力施工現場あるいはその周辺から得られる資材を利用しながらも、上記のとおり擁壁構造物としての構造強度、安定性が確保される構造とするとともに、仮に間伐材が朽ち果てても、ジオグリッドで拘束された盛土壁面での緑化が進行し周辺自然と混然一体となって同化し、人や自然に優しい新世代の擁壁が実現できる。よって、自然環境、景観との調和を図ることができ、将来的にも工業資材による擁壁構造物に多々見られような環境、景観破壊等の禍根を残すことがない。
【0057】
(6)壁面材と間隔をおいて敷網材を連結材で連結し、さらに複数の敷網材を連結材で連結することにより、間伐材壁面に作用する土圧や、底面敷網材が土との摩擦によって作用される力を、一体となって受け、土圧を効果的に低減し盛土がより安定するとともに、底面敷網材敷設する数量を減じ、補強土擁壁構築に要するコストを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の補強土擁壁の実施例1の全体構成を示す図である。
【図2】本発明の補強土擁壁の実施例1の壁面材及び連結材を説明する図であり、(a)は壁面材の正面図、(b)は壁面材の平面図、(c)は壁面材の側面図、(d)は連結材として使用される山形鋼の平面図、(e)は図1のA−A断面図であり、間伐材と壁面材及び連結材の取り付け構造を示す図である。
【図3】本発明の補強土擁壁の実施例1の1段目の盛土構造体説明する図である。
【図4】図3の要部を示す図である。
【図5】(a)は本発明の補強土擁壁の実施例2の1段目の盛土構造体説明する図であり、(b)はその要部を示す図である。
【図6】図5の要部を示す図であり、(a)は斜めタイ材の取り付け構造を示し、(b)は敷網の取り付け構造を示す。
【図7】本発明の補強土擁壁の実施例3を示し、(a)は全体構成であり、(b)、(c)は壁面材と敷網材の平面図を示す図である。
【図8】先行発明を説明する図である。
【符号の説明】
1 補強土擁壁
2 背後掘削面
3 底面地盤
4 盛土構造体
5 壁面材
6 壁面材の底面部
7 壁面材の前面折返部
8 壁面材の底面凹溝部
9 壁面材の前面凹溝部
10 壁面材の底面凹溝部に挿入される棒鋼
10’ 斜めタイ材の下端の取付孔
11 壁面材の前面凹溝部に挿入される棒鋼
11’ 斜めタイ材の上端の取付孔
12 斜めタイ材
13、14、25 クランプ
15 間伐材
16 間伐材壁面
17 盛土
18 連結材
19 固定具(コーチスクリュー)
20 連結材の一例である山形鋼
21 山形鋼の形成された複数の孔
22 背面敷網材
23 底面敷網材
24 敷網連結材
26 敷網連結材
26’ 連結杆
27 羽子板
28 アンカー鉄筋
29 アンカー鉄筋に形成された挿入孔
30 底面敷網材の網目
31 丸又は角座金(押さえ座金)
32 連結部材

Claims (4)

  1. 底面地盤上に盛土構造体を複数段積み重ねて形成される補強土擁壁であって、
    上記盛土構造体の夫々は、上記底面地盤に設置され底面部と前面折返部とから成るL型の壁面材と、該前面折返部の前面に沿って設けた複数本の間伐材と、上記複数本の間伐材を互いに連結する連結材と、底面地盤に敷設された底面敷網材と、盛土とを備えており、
    上記壁面材の底面部と前面折返部とは、互いに斜めタイ材で結合されており、
    上記間伐材は、複数本並べられ間伐材壁面を構成しており、
    上記連結材は、上記複数本の間伐材の背面側において、上記複数本の間伐材との間で上記壁面材の前面折返部を挟着するように固定具で上記複数本の間伐材に固着され、上記複数本の間伐材を互いに結合していることを特徴とする補強土擁壁。
  2. 背後掘削面と底面地盤上に、盛土構造体を複数段積み重ねて形成される補強土擁壁であって、
    上記盛土構造体の夫々は、上記底面地盤の谷側の部分に設置され底面部と前面折返部とから成るL型の壁面材と、該前面折返部の前面に沿って設けた複数本の間伐材と、上記複数本の間伐材を互いに連結する連結材と、背後掘削面に敷設された背面敷網材と、底面地盤に敷設された底面敷網材と、盛土とを備えており、
    上記壁面材の底面部と前面折返部とは、互いに斜めタイ材で結合されており、
    上記間伐材は、その長手方向を上下方向に向けて縦置きされ、補強土擁壁の横幅方向に複数本並べられ間伐材壁面を構成しており、
    上記連結材は、上記複数本の間伐材の背面側で上記横幅方向に設けられ、該複数本の間伐材との間で上記壁面材の前面折返部を挟着するように固定具で上記複数本の間伐材に固着され、
    上記複数本の間伐材を互いに結合していることを特徴とする補強土擁壁。
  3. 上記底面敷網材は、その前端部は、上記壁面材に取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の補強土擁壁。
  4. 上記底面敷網材は、その前端部は底面地盤上に敷設され、さらに間伐材壁面の背面側に沿って上方に伸ばされ、上記盛土の上面において折り返され盛土を巻き込むように構成されていることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の補強土擁壁。
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