JP3910851B2 - 簾織物、ゴム付き布、それを用いたタイヤ用プライ材料の製造方法、及びそのプライ材料を用いたタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気入りタイヤのカーカスプライやベルトプライなどへのプライ材料として好適に使用でき、重ね継ぎによるタイヤコード密度の不均一を軽減し、タイヤのユニフォミティーを向上しうる簾織物、ゴム付き布、それを用いたタイヤ用プライ材料の製造方法、及びそのプライ材料を用いたタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
前記タイヤ用のプライ材料として、従来、図6(A)に示すように、タイヤコードaを縦糸として互いに平行に配列した配列体を、細い横糸bにより簾織りした簾織物cの表裏を、トッピングゴムgにより被覆したゴム付き布dが一般に使用されている。
【0003】
このゴム付き布dは、いったん前記タイヤコードaに対して角度α(ラジアルタイヤのカーカスプライでは略75〜90度)で順次裁断片d1に裁断される。そして、各裁断片d1の非裁断側の側縁領域de、deを順次重ね継ぎすることによって、タイヤコードaをタイヤ赤道COに対して前記角度αで配列させた長尺なプライ材料fを形成している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記ゴム付き布dを用いて形成したプライ材料fでは、図6(B)に示すように、前記重ね継ぎ部jにおいて、タイヤコードaが二重に積層されるため、他の部分に比べてコード密度が高くなる。その結果、コードの伸びや張力が不均一となるなど、タイヤのユニフォミティーが損なわれるとともに、例えばカーカスプライの場合には、所謂ジョイントデントと呼ばれる外観不良が発生するという問題を招いていた。
【0005】
なお、この問題を解決するため、特開昭56−154532号公報には、重ね継ぎされる側縁領域deの少なくとも一方において、タイヤコードと高伸度の縦糸とを交互に配列することが提案されている。しかし、タイヤの高性能化が促進される今日、前記重ね継ぎに起因するユニフォミティーの低下をさらに抑制することが強く望まれている。
【0006】
そこで本発明は、前記側縁領域の少なくとも一方に、タイヤコードと放射線崩壊型ポリマーからなる補助コードとを混在して配列させることを基本として、放射線の照射処理によって補助コードを崩壊させることができ、重ね継ぎによるユニフォミティーの低下をより効果的に抑制しうる簾織物、ゴム付き布、それを用いたタイヤ用プライ材料の製造方法、及びそのプライ材料を用いたタイヤの提供を目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本願の請求項1の発明は、互いに平行に縦糸を配列した縦糸配列体を横糸により簾織りした簾織物であって、
前記縦糸は、放射線によって崩壊しない素材からなるタイヤコードと、放射線の照射によって崩壊する放射線崩壊型ポリマーからなる補助コードとを含み、
かつ前記縦糸配列体は、両側の側縁領域のうちの少なくとも一方の側縁領域を、前記タイヤコードと補助コードとが混在して配列する混合配列域とするとともに、他の領域を、前記タイヤコードのみが配列するタイヤコード配列域とし、
しかも補助コードは、タイヤコードの太さの0.5〜1.5倍の太さとしたことをことを特徴としている。
【0008】
又請求項2の発明は、ゴム付き布であって、前記請求項1に記載の簾織物の少なくとも一面をトッピングゴムにより被覆したことを特徴としている。
【0009】
又請求項3の発明は、タイヤ用プライ材料の製造方法であって、前記請求項2のゴム付き布が縦糸に交わる向きに裁断された各裁断片の前記側縁領域を、順次重ね継ぎしてタイヤ用プライ材料を形成するとともに、この重ね継ぎしたタイヤ用プライ材料に、又は裁断前の前記ゴム付き布に、放射線の照射処理をおこなうことにより、前記補助コードを崩壊させたことを特徴としている。
【0010】
なお前記放射線の照射処理は、1〜6Mradの電子線照射処理であることが好ましい。
【0011】
又請求項5の発明は、タイヤであって、前記請求項3又は4に記載の製造方法によって製造されたタイヤ用プライ材料を用いたことを特徴としている。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の一形態を、図示例とともに説明する。図1は、タイヤ用プライ材料1を形成するためのゴム付き布2を示す正面図である。
【0013】
図1において、前記該ゴム付き布2は、簾織物3の少なくとも一面、本例では両面をトッピングゴムGにより被覆することによって形成される。
【0014】
又前記簾織物3は、互いに平行に縦糸4を配列した縦糸配列体5を、横糸6によって簾織りしてなり、本発明では、図2にその断面を示すように、
▲1▼ 前記縦糸4を、放射線によって崩壊しない素材からなるタイヤコード4Aと、放射線の照射によって崩壊する放射線崩壊型ポリマーからなる補助コード4Bとで構成すること、および
▲2▼ 前記縦糸配列体5において、その両側の側縁領域Yeのうちの少なくとも一方を、前記タイヤコード4Aと補助コード4Bとが混在して配列する混合配列域7とするとともに、他の領域を、前記タイヤコード4Aのみが配列するタイヤコード配列域8としたこと、
に大きな特徴を有している。
【0015】
ここで、前記簾織物3では、本例の如く、両側の側縁領域Ye、Yeを、前記混合配列域7として形成することが好ましく、このとき、他の領域をなす側縁領域Ye、Ye間の中央領域Ycを、タイヤコード配列域8として形成する。又、一方の側縁領域Yeのみが混合配列域7として形成される場合には、他の領域をなす他方の側縁領域Yeと中央領域Ycとをタイヤコード配列域8として形成する。
【0016】
なお前記混合配列域7は、重ね継ぎ部J(図5に示す)における重なり巾WJを考慮し、20mm以下、好ましくは10mm以下の巾Wで形成するのが好ましく、特に前記重なり巾WJと同等又は多少せまい範囲に設定するのが好ましい。なお混合配列域7の前記巾Wは、前記簾織物3の側縁から、最も内方に配される補助コード4Bまでの距離を意味する。
【0017】
また混合配列域7では、例えば、図3に例示するように、タイヤコード4Aの1本と補助コード4Bのm本とを交互に(図3(A)にはm=1、図3(B)にはm=3の場合が例示されている)配列させる、或いは逆に、タイヤコード4Aのm本と補助コード4Bの1本とを交互に(図示しない)配列させることもできる。さらには、タイヤコード4Aのn本と補助コード4Bのn本とを交互に(図3(C)にはn=2の場合が例示されている)に配列させる他、図3(D)に示すように規則性を有することなくランダム配列させることもできる。
【0018】
しかし、両側の側縁領域Yeを混合配列域7とする場合には、タイヤコード4Aのn本と補助コード4Bのn本とを交互に配列する、即ち各コード4A、4Bを同数とするのが好ましく、このとき、前記整数nは5以下とするのが望ましい。又、一方の側縁領域Yeのみを、混合配列域7とする場合には、補助コード4Bの本数をタイヤコード4Aの本数よりも多く配置するのが好ましい。
【0019】
次に、前記タイヤコード4Aとしては、従来的なタイヤコードのうち、放射線によって崩壊しない素材、例えば、有機繊維コードであれば放射線架橋型ポリマーからなるものが使用できる。この放射線架橋型ポリマーとして、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、及びそれらの誘導体が挙げられ、これらから選択されるものであるならば、その材質、撚り構造、太さなどは、要求するタイヤ性能、及び使用する部位、目的等に応じて自在に設定できる。
【0020】
又前記補助コード4Bは、放射線によって崩壊する放射線崩壊型ポリマーからなり、この放射線崩壊型ポリマーとして、セルロース及びその誘導体、ポリイソブチレン、ポリα−メチルスチレン、ポリメタクリレート、ポリメタクリルアミド、ポリビニリデンクロライド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリトリフルオロクロロエチレン、ポリアクリロニトリル、イソブチレン−イソプレン共重合ゴム等からなる群から選択することができる。
【0021】
この補助コード4Bは、前記群から選択される放射線崩壊型ポリマーのフィラメントの複数本を互いに撚り合わせて形成する所謂マルチフィラメントコード、或いは1本のフィラメントによるモノフィラメントコードが使用できる。なおマルチフィラメントコードの時、異なる種類の放射線崩壊型ポリマーのフィラメントを組み合わせた複合コードとすることもできる。又要求により、放射線崩壊型ポリマーのフィラメントと放射線架橋型ポリマーのフィラメントとを組み合わせた複合コードとすることもできるが、係る場合には、放射線崩壊型ポリマーのフィラメントを、50%以上でできるだけ多く用いるのが好ましい。
【0022】
なお補助コード4Bでは、簾織物3を製織する際の作業性、及び簾織物3の形状安定性などの観点から、前記タイヤコード4Aと略同じ太さ、具体的には、タイヤコード4Aの太さの0.5〜1.5倍の太さとする。
【0023】
又前記横糸6としては、例えばポリエステルPOY糸など、放射線架橋型ポリマーからなる従来的な糸が使用できるが、例えばレーヨン(セルロース及びその誘導体)等の放射線崩壊型ポリマーからなる糸を採用するのが、加硫成型時におけるタイヤコード4Aのコード乱れを防止する等の観点から好ましい。
【0024】
そして、このような簾織物3に、トッピングゴムGとの接着力を強化するための接着剤塗布処理(所謂ディップ処理)を施しかつ乾燥させたのち、少なくともその一面、本例では両面をトッピングゴムGで被覆することによって、前記ゴム付き布2を形成する。
【0025】
ここでトッピングゴムGとしては、前記放射線により崩壊しない放射線架橋型ゴムを用いることが好ましい。この放射線架橋型ゴムとしては、例えばイソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム、シリコンゴム(Q)、フッ素系ゴム、塩素化ポリエチレン(CPE)などを挙げることができる。この中で、特にIR、NR、BR、SBRから選択される1種又は2種以上を混合したゴムは、タイヤ性能或いはタイヤ構成部材との接着性等の観点から好適である。なお表1に、トッピングゴムGとして好ましいゴム組成の一例を示す。
【0026】
【表1】
【0027】
又トッピングゴムGで被覆された前記ゴム付き布2は、図4に示すように、いったん縦糸4に対して傾き角αで裁断され、各裁断片2Aをその非切断側となる前記側縁領域Yeで、順次重ね継ぎすることによって、タイヤコード4Aをタイヤ赤道COに対して前記傾き角αで配列させたバイアスジョイントのプライ材料1を形成する。
【0028】
そして、このプライ材料1では、この重ね継ぎされたプライ材料1に対して、或いは裁断前のゴム付き布2に対して放射線の照射処理をおこない、前記補助コード4Bを崩壊させることに特徴を有する。
【0029】
この放射線としては、X線、γ線、電子線、陽子線、重陽子線、α線、β線等を挙げることができるが、これらの中でも、電子線は放射線管理が容易で操作しやすいことから好ましい。又電子線照射の照射量もしくは吸収線量は、前記補助コード4Bが電子線照射によってある程度崩壊してその引っ張り強度を低減させうるレベルであることが必要であり、好ましくは、吸収線量は1.0Mrad以上とする。なお6.0Mradを越えての放射線照射は経済的にも非効率的であるし、タイヤコード4Aが過度に架橋して硬化し、強度低下を招く恐れがあるため好ましくない。従って、吸収線量の上限は、6.0Mrad以下であり、好ましくは4.0Mrad以下である。この時の加速電圧は、通常300〜700kV程度である。
【0030】
このように、前記プライ材料1は、前記放射線の照射処理により、トッピングゴムGやタイヤコード4Aにダメージを与えることなく、前記補助コード4Bの引っ張り強度を著減せしめ、この補助コード4Bの拘束力、即ち補強部材としての機能を実質的に喪失させることができる。その結果、図5に示すように、前記重ね継ぎ部Jとその他の部分との間のコード密度の差を、実質的に減ずることができ、タイヤのユニフォミティーを向上させるとともに、例えばカーカスプライとして使用する際には、所謂ジョイントデントと呼ばれる外観不良も抑制しうる。
【0031】
又本例の如く、簾織物3の横糸6を放射線崩壊型ポリマーを用いて形成した場合には、前記放射線の照射処理によって、この横糸6の拘束力も同時に喪失させることができ、加硫成型時のコード乱れを抑制しうるなどユニフォミティーをさらに向上させることが可能になる。なお前記放射線の照射処理により、前記トッピングゴムGに架橋がある程度進行しモジュラスが適度に上昇する。従って、横糸6による拘束力が喪失しているにも係わらず、以後の移送などの取り扱いに際しても、このタイヤコード配列の乱れなどが防止され、品質精度を高く維持できる。
【0032】
なお、この放射線の照射処理は、プライ材料1の形成後に行っても、或いは裁断前のゴム付き布2に対して行っても良い。
【0033】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【0034】
【実施例】
簾織物の表裏をトッピングゴムで被覆してなるゴム付き布を、表2の仕様に基づき試作するとともに、試供のゴム付き布に放射線照射処理を行い、混合配列域における補助コードの引っ張り強度を測定した。
【0035】
又このゴム付き布から得たプライ材料をカーカスプライとして使用した空気入りタイヤ(タイヤサイズ165/SR13)を表3の仕様で試作した。そして、このタイヤの重ね継ぎ部及びその近傍におけるコード乱れの有無、並びに、新品時及び走行試験後のタイヤ表面の凹凸(外観不良)の発生の有無を確認した。
【0036】
(1)コード乱れ;
タイヤを解体し、重ね継ぎ部及びその近傍におけるコード乱れの有無を、目視によって確認した。
(2)新品時の凹凸;
使用前のタイヤにJIS規定内圧を充填し、ジョイントデントに起因するタイヤ表面の凹凸(外観不良)の発生の有無を目視によって確認した。
(3)走行試験後の凹凸;
ドラム試験機を用い、荷重(560kgf)、速度(80km)の条件にて5000kmの距離を走行した後の、タイヤ成長によるタイヤ表面の凹凸(外観不良)の発生の有無を目視によって確認した。
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
実施例のタイヤには、コード乱れ、並びに新品時及び走行試験後の凹凸(外観不良)の発生がなく、ユニフォミティーを向上しうるのが確認できる。
【0040】
【発明の効果】
叙上の如く本発明は、プライ材料の簾織物において、その側縁領域の少なくとも一方を、タイヤコードと放射線崩壊型ポリマーからなる補助コードとを混在させた混合配列域としているため、放射線の照射処理によって前記補助コードを崩壊させることができる。その結果、重ね継ぎ部とその他の部分との間のタイヤコード密度の差を、実質的に著減することができ、タイヤのユニフォミティー及び外観性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のプライ材料を形成するゴム引き布の一実施例を簾織物とともに示す正面図である。
【図2】簾織物の断面図である。
【図3】(A)、(D)は、混合配列域におけるコード配列を例示する線図である。
【図4】ゴム引き布からのプライ材料の形成を説明する線図である。
【図5】その重ね継ぎ部を説明する断面図である。
【図6】(A)、(B)は、従来技術を示す断面図である。
【符号の説明】
1 タイヤ用プライ材料
2 ゴム付き布
2A 裁断片
3 簾織物
4 縦糸
4A タイヤコード
4B 補助コード
5 縦糸配列体
6 横糸
7 混合配列域
8 タイヤコード配列域
G トッピングゴム
Ye 側縁領域
Claims (5)
- 互いに平行に縦糸を配列した縦糸配列体を横糸により簾織りした簾織物であって、
前記縦糸は、放射線によって崩壊しない素材からなるタイヤコードと、放射線の照射によって崩壊する放射線崩壊型ポリマーからなる補助コードとを含み、
かつ前記縦糸配列体は、両側の側縁領域のうちの少なくとも一方の側縁領域を、前記タイヤコードと補助コードとが混在して配列する混合配列域とするとともに、他の領域を、前記タイヤコードのみが配列するタイヤコード配列域とし、
しかも補助コードは、タイヤコードの太さの0.5〜1.5倍の太さとしたことを特徴とする簾織物。 - 請求項1に記載の簾織物の少なくとも一面をトッピングゴムにより被覆してなるゴム付き布。
- 請求項2のゴム付き布が縦糸に交わる向きに裁断された各裁断片の前記側縁領域を、順次重ね継ぎしてタイヤ用プライ材料を形成するとともに、この重ね継ぎしたタイヤ用プライ材料に、又は裁断前の前記ゴム付き布に、放射線の照射処理をおこなうことにより、前記補助コードを崩壊させたことを特徴とするタイヤ用プライ材料の製造方法。
- 前記放射線の照射処理は、1〜6Mradの電子線照射処理であることを特徴とする請求項3記載のタイヤ用プライ材料の製造方法。
- 請求項3又は4に記載の製造方法により製造されたタイヤ用プライ材料を用いてなるタイヤ。
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