JP3909445B2 - 板材の補強方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は間隔調整兼用添接部材、これを用いた板材の補強構造および板材の補強方法にかかるもので、とくに橋梁や鉄塔などの桁材、あるいはその他の鋼構造物に利用されるI形断面や箱型断面を有するI形鋼やプレートガーダーその他一般的な板材の間隔調整兼用添接部材、これを用いた板材の補強構造および板材の補強方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の、たとえば桁橋などの橋梁の桁材には、I形鋼やプレートガーダーなどI形断面あるいは箱形断面の鋼材による桁材が用いられているが、長年の使用により桁材の溶接部その他の部位に発生した亀裂、あるいは非溶接部の摩耗を補修するための補強構造および補強方法について、構造上および作業上、各種の問題がある。
【0003】
図12ないし図15にもとづき、橋梁(桁橋)の場合を例に取って概説する。
図12は、一般的なI形桁橋1の概略斜視図であって、このI形桁橋1は、複数本の主桁2と、連結材3と、コンクリート板などによるスラブ4と、を有する。
【0004】
主桁2は、鋼材からなる桁材たとえばI形鋼5(あるいはプレートガーダー)を橋軸方向に平行に並列させて、これを構成している。
【0005】
I形鋼5は、ウェブプレート6(腹板)と、ウェブプレート6の上下両端部にそれぞれ固定した上フランジ7および下フランジ8と、を有し、ウェブプレート6の側面に補剛材9を取り付けてある。
補剛材9は、ウェブプレート6の側面において、上フランジ7および下フランジ8の間に配置し、たとえば溶接あるいはボルトやリベットなどによってI形鋼5に固定することによりI形鋼5を補剛している。
【0006】
図13は、橋軸方向のI形鋼5の要部断面図、図14は、橋軸方向に直角な方向からみたI形鋼5の側面図であって、ウェブプレート6と上フランジ7との間を第1の溶接部10により固定してあり、ウェブプレート6と補剛材9との間を第2の溶接部11により固定してあり、補剛材9と上フランジ7との間を第3の溶接部12により固定してある。第2の溶接部11は、これを設けない場合もある。
なお補剛材9には、円弧状の切欠きからなるスカラップ13を形成し、第1の溶接部10との重なりを避けている。
また、下フランジ8部分の構成も同様であるので、以下、上フランジ7の部分について述べる。
【0007】
連結材3は、I形鋼5の間に水平、垂直あるいは斜めにこれを固定することにより、複数の主桁2(I形鋼5)にかかる負荷について横分配効果を受け持っている。
すなわち、連結材3としては、たとえば補剛材9に固定したガセットプレート14と、ガセットプレート14に固定して隣接する補剛材9に張り渡した水平材15および斜め材16と、を有する。
【0008】
こうした構成のI形桁橋1において、長年にわたって、車両による荷重、風による横荷重などを受けることにより、応力集中が生じやすい第1の溶接部10、第2の溶接部11、第3の溶接部、およびスカラップ13の近傍の主桁2(I形鋼5)の部分に亀裂を生ずる。
たとえば図13に示すように、典型的には、ウェブプレート6面内の水平方向における第1の亀裂17、補剛材9面内の垂直方向における第2の亀裂18、および補剛材9面内の水平方向における第3の亀裂19、などがある。
また、補剛材9と上フランジ7との間の接触部の摩耗なども発生する。
【0009】
これらの亀裂17、18、19は、I形桁橋1の種類により、あるいは受ける荷重の状態により、それぞれの方向あるいは大きさや形状が異なるが、基本的な原因として、スラブ4を介して伝えられる直上載荷、スラブ4のたわみ、および連結材3によって連結された主桁2間のたわみ差、などがある。
【0010】
とくに、I形鋼5の製作時に、上フランジ7の下面7Aと、補剛材9の上端面9Aとの間にわずかな間隙20があってこれらが互いに密着していないままで溶接された場合には、補剛材9に対して上フランジ7が上下の力で揺動するような動きにより(図13中の矢印Vを参照)、第3の溶接部12に過大な負荷が生じるため、上記各原因による亀裂17、18、19の発生を助長しやすい。
また、摩耗した上フランジ7からの力が補剛材9の上端面9Aの狭い面積部分に作用することにより、亀裂17、18、19が発生しやすい。
【0011】
さらに、図14に示すように、連結材3は通常、補剛材9の片面側のみに固定されて偏心するため、主桁2間の力の伝達により補剛材9がその偏心によって左右に面外の板曲げ作用を呈するような動きをするために(図14中の矢印Hを参照)、同じく上記各原因による亀裂17、18、19の発生を助長しやすい。
【0012】
こうした亀裂17、18、19が発生した場合に、I形鋼5を補強する必要があるときは、補剛材9の両面あるいは片面に補強用当て板を設けることが行われている。
すなわち図15は、橋軸方向に直角な方向からみたI形鋼5の側面図であって、図示のように、補剛材9を挟んでその左右側面に第1の補強用当て板21(添接板)を当てがって補剛材9と上フランジ7との間の第3の溶接部12を左右外側に避け、さらに、その外側から第2の補強用当て板22(添接板)を当てがうとともにボルト23により全体を締め付けて、I形鋼5の補強構造24としている。
【0013】
しかしながら、第2の補強用当て板22の上端面22Aが上フランジ7の下面7Aに密着して必要かつ十分な力を分担するようにしていなければ、図13に示した下面7Aと上端面9Aとの間の間隙20があることに変わりはなく、上フランジ7の揺動を防止することは困難であり、第2の補強用当て板22による補強機能が事実上大幅に限定されてしまうという問題がある。
【0014】
実際の補強作業においては、第2の補強用当て板22の下部をたたくなどして上フランジ7方向にこれをできるだけ押し付けるようにすることも考えられるが、人力による押付け力では十分ではない。
また、ジャッキ25を設けることにより、第2の補強用当て板22を上フランジ7の下面7Aに密着させることも考えられる。しかしながら、主桁2の下部にI形桁橋1の基盤26などがある場合にはジャッキ25からの反力をこの基盤26が受けることができるが、基盤26がないI形桁橋1の中間部などにおいては下フランジ8に負担がかかることになるため、実際には実行困難であるという問題がある。
【0015】
しかも、こうした補強作業は、I形鋼5およびスラブ4はもちろんI形桁橋1全体を破壊せずにこれを行う必要があり、とくに第2の補強用当て板22を如何に上フランジ7の下面7Aに密着させるかの補強構造および補強方法が要請されていた。
【0016】
つぎに図16は、一般的なトラス橋30の概略側面図であり、このトラス橋30は、橋脚31と、トラス構造を構成する下弦材32、上弦材33および斜め材34と、を有する。
こうした構成のトラス橋30において、長年の使用により斜め材34部分に生じた亀裂が広がって、間隔Lの破断部35が発生することがある。
【0017】
図17は、この破断部35を修復するための従来の補強構造ないし補強方法の一例を示す要部側面図であり、破断部35が生じた斜め材34の両側の下弦材32および上弦材33に設けた取付け部材36にターンバックル37を取り付け、これを締め付けることにより、斜め材34を互いに近接させる。
この近接状態で、当て板38を当てがい、ボルト39によってボルト締めして固定するものである。
【0018】
しかしながら、こうした補強方法では、ターンバックル37の取付け作業が大がかりになるとともに、斜め材34を互いに接近させる方法としてはそれほど有効なものではないという問題がある。
【0019】
なお、橋脚31における支点部分をすべてジャッキアップして破断部35に外力を及ぼさないようにした上で斜め材34を元位置に復帰させて固定する方法もあるが、トラス橋30全体を支持する必要があり、現実的な方法ではないという問題がある。
【0020】
さらに、図18は、一般的なアーチ橋40の概略側面図であって、アーチ橋40は、アーチ状の下弦材41と、上弦材42と、垂直材43および斜め材44と、を有する。
【0021】
こうした構成のアーチ橋40において、斜め材44が本来の直線部(図中仮想線)からずれて、曲がり部45を生じることがある。
【0022】
図19は、この曲がり部45を補修するための方法を示す概略側面図であって、曲がり部45を含む斜め材44の両端部に締付け固定部材46を設けて、この斜め材44にプレストレストコンクリート鋼棒47(PC鋼棒)をナット48で締めた状態で、曲がり部45を交互に加熱・冷却することにより曲がり部45部分を収縮させ、もとの直線状態とするものである(焼きばめ法)。
【0023】
しかしながら、こうした焼きばめ法では、一回の加熱・冷却で収縮する長さはごくわずかであり、所定長さの曲がり部45をもとの直線に直すためには非常に能率が低いという問題がある。
なお、曲がり部45の部分において斜め材44を所定長さ分だけ切除した上で、切除した部分の両側の斜め材44を接近させることも考えられるが、この方法では、図17にもとづいて説明した場合と同様の問題がある。
【0024】
さらに、図示は省略するが、橋梁の部位によっては、その桁材などの板材どうしを離間させる必要が生ずる場合もある。
【0025】
以上述べたように、たとえば橋梁に例を取ってみても、長年の使用にともなって各種の板材に発生する亀裂あるいは破損を補強・補修する際に、橋梁全体を分解するわけにはいかないために、非常な低能率あるいは低効率さらにコストがかかる方法で、行っているのが現実である。
板材を互いに直角に付き合わせる場合(たとえば図15を参照)、板材どうしを接近させる場合(たとえば図17、図19を参照)、さらに、板材同士を離間させる場合などにおいて、短時間で、特別な機材あるいは大かがりな設備を必要とせずに、板材どおしの間の距離を調整し、これを補強することができる部材、あるいは補強構造ないし補強方法が要請されている。
【0026】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は以上のような諸問題にかんがみなされたもので、亀裂あるいは摩耗が発生したI形鋼やプレートガーダーその他の板材を、有効に、かつ短時間に、特別な機械あるいは大かがりな設備などを用いることなく、低コストで、補強することができる間隔調整兼用添接部材、これを用いた板材の補強構造および板材の補強方法を提供することを課題とする。
【0027】
また本発明は、桁材その他の板材を補強するにあたって、板材との間の間隔を調整するとともに、これを補強することができる間隔調整兼用添接部材、これを用いた板材の補強構造および板材の補強方法を提供することを課題とする。
【0028】
また本発明は、桁材その他の板材を補強するにあたって、板材どうしの間の間隔を調整するとともに、これを補強することができる間隔調整兼用添接部材、これを用いた板材の補強構造および板材の補強方法を提供することを課題とする。
【0029】
また本発明は、橋梁その他の鋼構造物を破壊することなく、わずかな作業空間で間隔調整作業および補強作業を行うことができる間隔調整兼用添接部材、これを用いた板材の補強構造および板材の補強方法を提供することを課題とする。
【0030】
また本発明は、橋梁その他の鋼構造物に荷重をかけることなく、簡単な操作で間隔調整作業および補強作業を行うことができる間隔調整兼用添接部材、これを用いた板材の補強構造および板材の補強方法を提供することを課題とする。
【0031】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、板材に対して添接する添接部材にテーパー面を形成してボルト締めすることによりその平面方向に移動する分力を生じさせること、この分力の方向および大きさを他の板材あるいは添接部材に対して制御することにより、両部材の間の間隔を所望の長さに接近させたり離間させたりすること、こうした間隔調整の状態で板材とともに固定することにより板材の補強を可能とすることに着目したものである。
すなわち、第一の発明は、互いに連結される第1の板材および第2の板材の少なくとも一方に添接することができるとともに、その板材の平面方向に対して傾斜するテーパー面を有し、その板材とともにボルト締めして該板材の平面方向においてこのテーパー面を押すことにより、他方の板材に対して移動可能として、この他方の板材との間の間隔を調整可能であるとともに、これら板材に固定することにより該板材を補強可能としたことを特徴とする間隔調整兼用添接部材である。
この第一の発明は、板材に対して移動可能とした間隔調整兼用添接部材に関するものである。
【0032】
第二の発明は、第一の発明とは異なり、板材どうしの間において互いに移動可能とする間隔調整兼用添接部材に関するものである。
すなわち、第二の発明は、互いに連結される第1の板材および第2の板材の少なくとも一方に添接することができるとともに、その板材の平面方向に対して傾斜するテーパー面を有し、その板材とともにボルト締めして該板材の平面方向においてこのテーパー面を押すことにより、上記少なくともいずれか一方の板材を他方の板材に対して移動可能として、これら板材の間隔を調整可能であるとともに、これら板材に固定することにより該板材を補強可能としたことを特徴とする間隔調整兼用添接部材である。
【0033】
第三の発明は、板材に対して移動可能とする間隔調整兼用添接部材を用いた補強構造に関するものである。
すなわち、第三の発明は、互いに連結される第1の板材および第2の板材の少なくとも一方に添接部材を添接することにより、これら第1の板材および第2の板材を補強する板材の補強構造であって、上記添接部材は、上記板材の少なくとも一方の板材の平面方向に対して傾斜するテーパー面を有し、前記添接部材は、これをその板材とともにボルト締めして該板材の平面方向においてこのテーパー面を押すことにより、他方の板材に対して移動可能として、この他方の板材との間の間隔を調整可能であるとともに、これら板材に上記添接部材を固定することにより該板材を補強可能としたことを特徴とする板材の補強構造である。
【0034】
第四の発明は、第三の発明とは異なり、板材どうしの間において互いに移動可能とする間隔調整兼用添接部材を用いた補強構造に関するものである。
すなわち、第四の発明は、互いに連結される第1の板材および第2の板材の少なくとも一方に添接部材を添接することにより、これら第1の板材および第2の板材を補強する板材の補強構造であって、上記添接部材は、上記板材の少なくとも一方の板材の平面方向に対して傾斜するテーパー面を有し、前記添接部材は、これをその板材とともにボルト締めして該板材の平面方向においてこのテーパー面を押すことにより、上記少なくともいずれか一方の板材を他方の板材に対して移動可能とするとともに、これら板材に上記添接部材を固定することにより該板材を補強可能としたことを特徴とする板材の補強構造である。
【0035】
第五の発明は、板材に対して移動可能とする間隔調整兼用添接部材を用いた補強方法に関するものである。
すなわち、第五の発明は、互いに連結される第1の板材および第2の板材の少なくとも一方に添接部材を添接することにより、これら第1の板材および第2の板材を補強する板材の補強方法であって、上記添接部材は、上記板材の少なくとも一方の板材の平面方向に対して傾斜するテーパー面を有しており、前記添接部材は、これをその板材とともにボルト締めして該板材の平面方向においてこのテーパー面を押すことにより、他方の板材に対して移動可能として、この他方の板材に対して移動可能とするボルト締め移動工程と、これら板材に上記添接部材を固定することにより該板材を補強可能とする固定工程と、を有することを特徴とする板材の補強方法である。
【0036】
第六の発明は、第五の発明とは異なり、板材どうしの間において互いに移動可能とする間隔調整兼用添接部材を用いた補強方法に関するものである。
すなわち、第六の発明は、互いに連結される第1の板材および第2の板材の少なくとも一方に添接部材を添接することにより、これら第1の板材および第2の板材を補強する板材の補強方法であって、上記添接部材は、上記板材の少なくとも一方の板材の平面方向に対して傾斜するテーパー面を有しており、前記添接部材は、これをその板材とともにボルト締めして該板材の平面方向においてこのテーパー面を押すことにより、上記少なくともいずれか一方の板材を他方の板材に対して移動可能とするボルト締め移動工程と、これら板材に上記添接部材を固定することにより該板材を補強可能とする固定工程と、を有することを特徴とする板材の補強方法である。
【0037】
上記第1の板材および第2の板材が、互いに直交している場合、互いに同一平面内にある場合、互いに平行である場合などにおいて、本発明を適用することができる。
【0038】
上記添接部材(間隔調整兼用添接部材)は、上記ボルト締めにともなう上記少なくともいずれか一方の板材との間の反力を利用することができる。
【0039】
上記添接部材(間隔調整兼用添接部材)は、上記少なくともいずれか一方の板材に添接する添接板と、この添接板にボルト締めする固定ボルトと、を有するとともに、これら添接板、あるいは固定ボルトの少なくともいずれか一方が、上記テーパー面を有することができる。
【0040】
上記添接部材(間隔調整兼用添接部材)は、上記少なくともいずれか一方の板材に添接する添接板と、この添接板にボルト締めする固定ボルトと、この固定ボルトに係合する固定ナットと、を有するとともに、これら添接板、固定ボルト、あるいは固定ナットの少なくともいずれかひとつが、上記テーパー面を有することができる。
【0041】
上記添接部材(間隔調整兼用添接部材)は、上記少なくともいずれか一方の板材に添接する添接板と、この添接板にボルト締めする固定ボルトと、この固定ボルトに係合するカラーと、を有するとともに、これら添接板、固定ボルト、あるいはカラーの少なくともいずれかひとつが、上記テーパー面を有することができる。
【0042】
上記少なくともいずれか一方の板材に添接する添接板と、この添接板にボルト締めする固定ボルトと、この固定ボルトに係合する固定ナットと、この固定ボルトあるいは固定ナットの少なくともいずれか一方に係合するカラーと、を有するとともに、これら添接板、固定ボルト、固定ナット、あるいはカラーの少なくともいずれかひとつが、上記テーパー面を有することができる。
【0043】
上記カラーは、これを分割構造とすることができる。
【0044】
上記第1の板材および第2の板材を互いに直交状態として付き当てることができるようにすることができる。
【0045】
上記第1の板材および第2の板材を互いに接近させることができるようにすることができる。
【0046】
上記第1の板材および第2の板材を互いに離間させることができるようにすることができる。
【0047】
本発明による間隔調整兼用添接部材、これを用いた板材の補強構造および板材の補強方法においては、固定ボルト、固定ナット、カラー、さらには添接板などから構成した添接部材(間隔調整兼用添接部材)がテーパー面を有するので、この添接部材を所定の板材にボルト締めにより固定する際の締付け方向の力により、板材の平面内における分力を発生させて添接部材自体あるいはいずれか一方の板材を他の板材に対して移動させることができる。
したがって、添接部材と板材との間、あるいは板材どうしの間の間隔を調整することができるとともに、添接部材そのものを板材にそのまま固定することにより板材の補強を行うことができる。
【0048】
つまり、固定ボルト、固定ナット、カラーなどの固定部材による固定操作後(ボルト締め後)、添接部材をそのまま板材に固定するようにすれば、板材自体を補強することができる。
【0049】
とくに添接部材と板材との間の移動を実現してその間の間隔を調整可能とする第一の発明、第三の発明、第五の発明は、板材どうしが互いに直交している図12ないし図15の場合に有効である。
すなわち、荷重載荷および外力によるフランジ(板材)の揺動、および補剛材の揺動を防止して、実質的な補強機能を発揮させることができる。
【0050】
しかも、固定ボルト、固定ナット、カラーなどの固定部材による固定操作時(ボルト締め時)に補剛材ないしウェブプレート(板材)のみに締付け反力がかかり、I形鋼やプレートガーダーなど桁材のフランジには反力をかけることがないので、桁材の他の部分に影響を及ぼすことがない。
【0051】
さらに、主桁の他の部分、およびコンクリートなどによるスラブなどには手を加えずに補強作業を行うことができるとともに、ジャッキその他の大がかりな補強作業用の機器を必要としないので、補強コストの低減とともに、既設のI形桁橋その他の橋梁および鋼構造物などの補強に至便である。
【0052】
とくに板材どうしの間の移動を実現してその間の間隔を調整可能とする第二の発明、第四の発明、第六の発明は、板材どうしが互いに同一平面内あるいは互いに平行である図16ないし図19の場合に有効である。
すなわち、斜め材などの板材どうしのいずれかに添接部材をボルト締めするだけで、そのテーパー面による板材の平面方向の分力を発生させることができる。したがって、テーパー面の傾斜方向ないしその相対関係により、板材を互いに接近させたり、離間させたりするようにその間の間隔を調整可能であり、板材の外部に反力の基盤を別途設けなくても、間隔の調整を実現することができる。
【0053】
もちろん、固定ボルト、固定ナット、カラーなどの固定部材による固定操作後(ボルト締め後)、添接部材をそのまま板材に固定するようにすれば、板材自体を補強することができるとともに、既設のI形桁橋、トラス橋、アーチ橋その他の橋梁および鋼構造物などの補強に至便である。
【0054】
いずれの発明の場合においても、とくに間隔調整兼用添接部材は、そのテーパー面の大きさないし角度、さらに、添接板、固定ボルト、固定ナットおよびカラーの各設計数値あるいはカラーの摩擦係数、さらに、ボルト締めの程度を制御することにより各種の間隔調整および補強作業に適用することができる。とくにこうした数値管理および締付け管理ないし制御が容易であるため、上述のように特別な機器を必要としないことと相俟って、低コストで実用的な間隔調整作業および補強作業を行うことができる。
【0055】
【発明の実施の形態】
つぎに本発明(第一の発明、第三の発明、第五の発明)の第1の実施の形態による板材の補強構造50、間隔調整兼用添接部材51および板材の補強方法について、図1にもとづき説明する。ただし、図12ないし図19と同様の部分には同一符号を付し、その詳述はこれを省略する。
図1は、図15と同様の、橋軸方向に直角な方向からみたI形鋼5などにおける、板材の補強構造50の一部切欠き側面図であり、板材の補強構造50は、補強用当て板(添接板)を補剛材に固定する固定部材52を有し、この固定部材52は、固定ボルト53と、固定ナット54と、円錐状のボルト側カラー55と、円錐状のナット側カラー56と、を有する。
間隔調整兼用添接部材51は、この固定部材52と、前記第2の補強用当て板22(以後「添接板57」と称す)とからこれを構成してある。
【0056】
この添接板57ないし間隔調整兼用添接部材51と関連する補剛材9および上フランジ7が、「第1の板材」および「第2の板材」に相当する。
【0057】
補剛材9、第1の補強用当て板21および添接板57(第2の補強用当て板22)を貫通して、図示のような取付け孔58を形成し、この取付け孔58に固定ボルト53を通す。
なお固定ボルト53には、その先端部に必要な長さのネジ部53Aを形成し、固定ナット54とのネジ結合を行うようにしてある。
【0058】
ボルト側カラー55およびナット側カラー56は、任意の材料からこれを構成することができるとともに、互いに同一の構造を有しているが、それぞれのテーパー面55Aおよびテーパー面56Aを取付け孔58の内方に向けてある。
【0059】
また取付け孔58において、第1の補強用当て板21の上方内壁面21A(上フランジ7側の内壁面)および補剛材9の上方内壁面9Bには固定ボルト53を接触させず、補剛材9の下方内壁面9Cおよび第1の補強用当て板21の下方内壁面21B(上フランジ7とは反対側の内壁面)に固定ボルト53を接触載置する。
【0060】
添接板57の上端面57Aは、上フランジ7の下面7Aにこれを付き当ててある。
さらに取付け孔58において、添接板57の上方内壁面57B(上フランジ7側の内壁面)にボルト側カラー55のテーパー面55Aおよびナット側カラー56のテーパー面56Aをそれぞれ接触させ、添接板57の下方内壁面57C(上フランジ7とは反対側の内壁面)にはボルト側カラー55およびナット側カラー56を接触させていない。
【0061】
こうした構成の板材の補強構造50において、補剛材9の左右側面に第1の補強用当て板21および添接板57を当てた状態で、ボルト側カラー55およびナット側カラー56を介して固定ボルト53を固定ナット54に係合して締め付けていくと、ボルト側カラー55のテーパー面55Aおよびナット側カラー56のテーパー面56Aが添接板57の上方内壁面57Bに接触し、さらに固定ボルト53および固定ナット54の締付け操作によりこれらが互いに接近してゆくと、テーパー面55A、56Aにより添接板57を図中上方に押し上げる分力を発生する。
【0062】
また、固定ボルト53は補剛材9の下方内壁面9Cおよび第1の補強用当て板21の下方内壁面21Bを基盤としてその反力を受け、固定ボルト53、ボルト側カラー55およびナット側カラー56を介して添接板57を上フランジ7方向に押し付ける力を発生する。
したがって、添接板57の上端面57Aを上フランジ7の下面7Aに必要な押付け力で密着させることができる(ボルト締め移動工程)。
【0063】
この密着状態で、必要な数のボルト23により、補剛材9、第1の補強用当て板21および添接板57を固定すれば、板材の補強構造50による適切な補強機能を持たせることができる(固定工程)。
また、必要であれば、他のボルト23(図示せず)により補剛材9、第1の補強用当て板21、添接板57を固定部材52とは別位置において固定しておき、上述の補強作業後に固定部材52を取り除いて他のボルト23により取付け孔58部分を固定することもできる。
【0064】
なお、亀裂17、18、19の発生状態、あるいは補剛材9の構成などによっては、補剛材9の片面のみに第1の補強用当て板21および添接板57を固定するように構成することもできる。
【0065】
図2は、本発明(第一の発明、第三の発明、第五の発明)の第2の実施の形態による板材の補強構造59の一部切欠き側面図であり、板材の補強構造59においては、板材の補強構造50のボルト側カラー55およびナット側カラー56の部分にさらにボルト側補助カラー60およびナット側補助カラー61を設けてある。
したがって間隔調整兼用添接部材62は、添接板57と、固定部材63と、からこれを構成する。
【0066】
固定部材63は、固定ボルト53、固定ナット54、ボルト側カラー55、ナット側カラー56、ボルト側補助カラー60およびナット側補助カラー61からなる。
【0043】
ボルト側補助カラー60およびナット側補助カラー61は、ともにその外形は円筒形状であるが、それぞれその内壁面側に外方に向かってテーパー面60Aおよびテーパー面61Aを有する。
テーパー面60Aがボルト側カラー55のテーパー面55Aに当接し、テーパー面61Aがナット側カラー56のテーパー面56Aに当接する。
【0067】
こうした構成の板材の補強構造59において、ボルト側補助カラー60およびナット側補助カラー61が添接板57の上方内壁面57Bの全面に均等に当接することができるので、上方内壁面57Bに不均一な外力をかけることなく、上フランジ7側への押付け力を発生させることができる。
【0068】
本発明においては、ボルト側カラー55およびナット側カラー56を補剛材9の内方部にまで延ばすことができる。
すなわち、図3は、本発明(第一の発明、第三の発明、第五の発明)の第3の実施の形態による板材の補強構造70の一部切欠き側面図であって、板材の補強構造70における間隔調整兼用添接部材71は、添接板57と、固定部材72と、からこれを構成している。
【0069】
この固定部材72は、固定ボルト53および固定ナット54に加えて、取付け孔58において補剛材9にまで延びるボルト側カラー73およびナット側カラー74を設けてある。
【0070】
ボルト側カラー73のテーパー面73Aおよびナット側カラー74のテーパー面74Aが、それぞれ添接板57の上方内壁面57Bおよび第1の補強用当て板21の下方内壁面21Bに当接している。
【0071】
こうした構成の板材の補強構造70においても、固定ボルト53および固定ナット54のネジを締め付けていけば、ボルト側カラー73およびナット側カラー74が添接板57を上フランジ7側に押し付ける分力を発生させることができる。
【0072】
さらに、ボルト側カラー73およびナット側カラー74が、取付け孔58において補剛材9にまで延びているため、それぞれのテーパー面73A、74Aの傾斜角を図1のテーパー面55A、56Aの傾斜角より小さくすることが可能となって、テーパー面73A、74Aによる上方への押付け分力が、より円滑に添接板57を上フランジ7側に押し付けることができる。
【0073】
もちろん、図2の板材の補強構造59の場合と同様に、ボルト側補助カラー60およびナット側補助カラー61に相当するカラーを設けることができる。
【0074】
本発明においては、ボルト側カラー55を固定ボルト53に直接形成することもできる。
すなわち、図4は、本発明(第一の発明、第三の発明、第五の発明)の第4の実施の形態による板材の補強構造80の一部切欠き側面図であって、板材の補強構造80における間隔調整兼用添接部材81は、添接板57と、固定部材82と、からこれを構成している。
【0075】
この固定部材82では、固定ボルト53の代わりに固定ボルト83を設けてある。
この固定ボルト83は、固定ボルト53とボルト側カラー73とを一体としたもので、テーパー面83Aを有している。
【0076】
こうした構成の板材の補強構造80においても、固定ボルト83および固定ナット54のネジ結合により、添接板57を上フランジ7方向に押し付けることができる。
【0077】
もちろん、固定ナット54側にテーパー面を一体に形成することもできし、図2の板材の補強構造59の場合と同様に、ボルト側補助カラー60およびナット側補助カラー61に相当するカラーを設けることができる。
【0078】
本発明においては、ボルト側カラー55およびナット側カラー56の形状を押付け側のみ、テーパー面とすることができる。
すなわち、図5は、本発明(第一の発明、第三の発明、第五の発明)の第5の実施の形態による板材の補強構造90の一部切欠き側面図であって、板材の補強構造90における間隔調整兼用添接部材91は、添接板57と、固定部材92と、からこれを構成している。
【0079】
この固定部材92では、ボルト側カラー55およびナット側カラー56の代わりにボルト側カラー93およびナット側カラー94を設けてある。
【0080】
ボルト側カラー93およびナット側カラー94は、互いに同一の構造を有しているが、ボルト側カラー93は、上フランジ7側方向のみにテーパー面93Aおよび反対側は平坦面93Bを有し、ナット側カラー94は同じく上フランジ7方向のみにテーパー面94Aおよび反対側は平坦面94Bを有し、それぞれのテーパー面93Aおよびテーパー面94Aを取付け孔58の内方に向けてある。
【0081】
ボルト側カラー93のテーパー面93Aおよびナット側カラー94のテーパー面94Aが、それぞれ添接板57の上方内壁面57Bに当接するとともに、平坦面93B、94Bが、それぞれ第1の補強用当て板21の下方内壁面21Bおよび補剛材9の下方内壁面9Cに当接している。
【0082】
こうした構成の板材の補強構造90においても、固定ボルト53および固定ナット54のネジ結合により、添接板57を上フランジ7に密着させることができる。
【0083】
本発明においては、カラーをたとえば二つ割りなどの分割構造とすることにより、取付け孔58の大きさに合わせて融通性をもたせて固定ボルト53および固定ナット54をネジ結合させることができる。
すなわち、図6は、本発明(第一の発明、第三の発明、第五の発明)の第6の実施の形態による板材の補強構造100の一部切欠き側面図であって、板材の補強構造100における間隔調整兼用添接部材101は、添接板57と、固定部材102と、からこれを構成している。
【0084】
この固定部材102では、図1の円錐状のボルト側カラー55を二つ割りとした円錐状のボルト側カラー103と、円錐状のナット側カラー56を二つ割りとした円錐状のナット側カラー104と、を設けてある。
【0085】
ボルト側カラー103およびナット側カラー104のそれぞれの上側テーパー面103A、104Aが添接板57の上方内壁面57Bに当接するとともに、それぞれの下側テーパー面103B、104Bが添接板57の下方内壁面57Cに当接する。
【0086】
こうした構成の板材の補強構造100においては、ボルト側カラー103およびナット側カラー104がそれぞれ上下に分かれて取付け孔58部分に係合するので、固定ボルト53および固定ナット54の直径、および添接板57部分の取付け孔58の図中縦方向の長さを厳密に設計することなく、上フランジ7方向の分力を発生させることができる。
【0087】
本発明においては、間隔調整兼用添接部材51における添接板57自体にテーパー面を形成することもできる。
すなわち、図7は、本発明(第一の発明、第三の発明、第五の発明)の第7の実施の形態による板材の補強構造110の一部切欠き側面図であって、板材の補強構造110における間隔調整兼用添接部材111は、添接板57に相当する添接板112と、前記固定部材52(図1)と、からこれを構成している。
固定部材52は、固定ボルト53、固定ナット54、ボルト側カラー55およびナット側カラー56を有する
【0088】
添接板112の上端面112Aは、上フランジ7の下面7Aにこれを付き当ててある。
さらに、取付け孔58において、添接板112の上方テーパー面112Bにボルト側カラー55のテーパー面55Aおよびナット側カラー56のテーパー面56Aをそれぞれ接触させ、添接板112の下方テーパー面112Cにはボルト側カラー55およびナット側カラー56を接触させていない。
上方テーパー面112Bおよび下方テーパー面112Cは、図示のように、取付け孔58の内方に向かうにしたがって小径となるようにこれを形成してある。
【0089】
上方テーパー面112Bおよび下方テーパー面112Cのテーパー角度は、ボルト側カラー55のテーパー面55Aおよびナット側カラー56のテーパー面56Aに合わせて設計することができる。
ただし、添接板112自体に上方テーパー面112Bおよび下方テーパー面112C(この場合とくに上方テーパー面112B)を形成してあるので、ボルト側カラー55およびナット側カラー56は、図示のようなテーパー形状にせず、単純な円筒形状のものとすることもできる。
【0090】
こうした構成の板材の補強構造110においては、固定ボルト53によるボルト締め作用により、上述の各実施の形態の場合と同様に、添接板112を上フランジ7に向けて移動させ、上端面112Aと上フランジ7の下面7Aとの間の間隔を縮め、必要な押付け力で当接させることができる。
【0091】
上述のような、添接部材(間隔調整兼用添接部材)と板材との間の移動を実現してその間の間隔を調整可能とする第一の発明、第三の発明、第五の発明とは別に、本発明(第二の発明、第四の発明、第六の発明)においては、板材どうしの間の間隔を調整することもできる。
以下、図16および図17における破断した斜め材34の間の間隔を調整する場合を例に取って説明する。
すなわち、図8は、本発明(第二の発明、第四の発明、第六の発明)の第8の実施の形態による板材の補強構造120の一部切欠き側面図であって、板材の補強構造120における間隔調整兼用添接部材121は、添接板57に相当する添接板122と、前記固定部材52(図1)と、からこれを構成している。
固定部材52は、固定ボルト53、固定ナット54、ボルト側カラー55およびナット側カラー56を有する。
【0092】
この添接板122ないし間隔調整兼用添接部材121と関連する、図中上下方向に破断した一対の斜め材34が、「第1の板材」および「第2の板材」に相当する。
【0093】
添接板122は、斜め材34の間の破断部35を挟んで斜め材34の部分をその両側から挟むようにこれをボルト23により取り付けてその一方の端部(図中の下端側)を固定する。
破断部35の一方側(図中上側)において、斜め材34および添接板122に、取付け孔58(図1)に相当する取付け孔123を形成する。
【0094】
この取付け孔123において、斜め材34の上方内壁面34A(破断部35とは反対側の内壁面)には固定ボルト53を接触させず、斜め材34の下方内壁面34B(破断部35側の内壁面)に固定ボルト53を接触載置する。
さらに取付け孔123において、添接板122の上方内壁面122A(破断部35とは反対側の内壁面)にボルト側カラー55のテーパー面55Aおよびナット側カラー56のテーパー面56Aをそれぞれ接触させ、添接板122の下方内壁面122B(破断部35側の内壁面)にはボルト側カラー55およびナット側カラー56を接触させていない。
【0095】
こうした構成の板材の補強構造120において、ボルト側カラー55およびナット側カラー56を介して固定ボルト53を固定ナット54に係合して締め付けていくと、ボルト側カラー55のテーパー面55Aおよびナット側カラー56のテーパー面56Aが添接板122の上方内壁面122Aに接触し、さらに固定ボルト53および固定ナット54の締付け操作によりこれらが互いに接近してゆくと、テーパー面55A、56Aにより添接板122を図中上方に押し上げる分力を発生する。
【0096】
また、固定ボルト53は斜め材34の下方内壁面34Bを基盤としてその反力を受け、固定ボルト53、ボルト側カラー55およびナット側カラー56を介して添接板122を上側の斜め材34方向に押し付ける力を発生する(ボルト締め移動工程)。
したがって、添接板122とともに下側の斜め材34を上側の斜め材34方向に移動させ、破断部35の間隔Lを必要な長さに調整することができる。
【0097】
この調整状態で、必要な数のボルト23によって、斜め材34および添接板122を固定すれば、板材の補強構造120による適切な補強機能を持たせることができる(固定工程)。
【0098】
なお、間隔調整兼用添接部材121および固定部材52のかわりに、既述した各実施の形態における間隔調整兼用添接部材62および固定部材63(図2)、間隔調整兼用添接部材71および固定部材72(図3)、間隔調整兼用添接部材81および固定部材82(図4)、間隔調整兼用添接部材91および固定部材92(図5)、間隔調整兼用添接部材101および固定部材102(図6)、ならびに間隔調整兼用添接部材111および固定部材52(図7)などを任意に組み合わせて利用することが可能である。
【0099】
本発明においては、上述の固定部材52および取付け孔123を破断部35を挟んで二箇所に設けることもできる。
すなわち、図9は、本発明(第二の発明、第四の発明、第六の発明)の第9の実施の形態による板材の補強構造130の一部切欠き側面図であって、板材の補強構造130においては、破断部35を中心として対象位置に一対の取付け孔123を形成するとともに、これらの取付け孔123にそれぞれ固定部材52を設け、添接板122を介して斜め材34を互いに接近することができるようにしてある。
【0100】
具体的には、図8で説明したように添接板122および上側の固定部材52における固定ボルト53のボルト締めによって下側の斜め材34が上側の斜め材34に接近するとともに、添接板122および下側の固定部材52における固定ボルト53のボルト締めより上側の斜め材34が下側の斜め材34に接近するので、上下一対の斜め材34どうしを互いに接近させることができる。
したがって、より効率的に斜め材34の間の間隔Lを調整可能であるとともに、それぞれの斜め材34の移動量を制御することができる。
【0101】
本発明においては、斜め材34どうしを離間させることもできる。
すなわち、図10は、本発明(第二の発明、第四の発明、第六の発明)の第10の実施の形態による板材の補強構造140の一部切欠き側面図で、板材の補強構造140における間隔調整兼用添接部材141は、添接板57に相当する添接板142と、前記固定部材52(図1)と、からこれを構成している。
固定部材52は、固定ボルト53、固定ナット54、ボルト側カラー55およびナット側カラー56を有する。
【0102】
添接板142は、斜め材34の間の破断部35を挟んで斜め材34の部分をその両側から挟むようにこれをボルト23により取り付けてその一方の端部(図中の下端側)を固定する。
破断部35の一方の側(図中上側)において斜め材34および添接板142に、取付け孔58(図1)に相当する取付け孔143を形成する。
【0103】
この取付け孔143において、斜め材34の上方内壁面34Aに固定ボルト53を接触載置し、斜め材34の下方内壁面34Bには固定ボルト53を接触させていない。
さらに、取付け孔143において、添接板142の上方内壁面142Aにはボルト側カラー55のテーパー面55Aおよびナット側カラー56のテーパー面56Aをそれぞれ接触させず、添接板142の下方内壁面142Bにボルト側カラー55およびナット側カラー56を接触させてある。
【0104】
こうした構成の板材の補強構造140において、ボルト側カラー55およびナット側カラー56を介して固定ボルト53を固定ナット54に係合して締め付けていくと、ボルト側カラー55のテーパー面55Aおよびナット側カラー56のテーパー面56Aが添接板142の下方内壁面142Bに接触し、さらに固定ボルト53および固定ナット54の締付け操作によりこれらが互いに接近してゆくと、テーパー面55A、56Aにより添接板142を図中下方に押し下げる分力を発生する。
【0105】
また、固定ボルト53は斜め材34の上方内壁面34Aを基盤としてその反力を受け、固定ボルト53、ボルト側カラー55およびナット側カラー56を介して添接板142を下側の斜め材34方向に押し付ける力を発生する(ボルト締め移動工程)。
したがって、添接板142とともに上側の斜め材34を下側の斜め材34から離間させる方向に移動させ、破断部35の間隔Lを必要な長さに調整することができる。
【0106】
この調整状態で、必要な数のボルト23によって、斜め材34および添接板142を固定すれば、板材の補強構造140による適切な補強機能を持たせることができる(固定工程)。
【0107】
本発明においては、上述の固定部材52および取付け孔143を破断部35を挟んで二箇所に設けることもできる。
すなわち、図11は、本発明(第二の発明、第四の発明、第六の発明)の第11の実施の形態による板材の補強構造150の一部切欠き側面図であり、板材の補強構造150においては、破断部35を中心として対象位置に一対の取付け孔143を形成するとともに、これらの取付け孔143にそれぞれ固定部材52を設け、添接板142を介して斜め材34を互いに離間することができるようにしてある。
【0108】
具体的には、図10で説明したように、添接板142および上側の固定部材52における固定ボルト53のボルト締めにより下側の斜め材34が上側の斜め材34から離間するとともに、添接板142および下側の固定部材52における固定ボルト53のボルト締めにより上側の斜め材34が下側の斜め材34から離間するので、上下一対の斜め材34どうしを互いに離間させることができる。
したがって、より効率的に斜め材34の間の間隔Lを調整可能であるとともに、それぞれの斜め材34の移動量を制御することができる。
【0109】
上述の各実施の形態においては、第1の板材と第2の板材とが互いに直交している場合(図1ないし図7)、および互いに同一平面内にある場合(図8ないし図11)について説明したが、このほかにも互いに平行である場合にもその間に他の板材あるいは当て板を介在させるとともに、本発明の間隔調整兼用添接部材を添接して所要の間隔調整機能および補強機能を発揮させることができる。
【0110】
また、本発明においては、添接部材の固定ボルトを壁材などに直接締め付けるようにすることにより、固定ナットを不要とする場合にも応用することができる。
【0111】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、添接部材におけるテーパー面によって板材方向の分力を発生させるとともにこれを制御することができるようにしたので、ジャッキその他の特別な機器を用いることなく、またフランジなどの既設の橋体に反力をかけることなく添接部材と板材との間の間隔、あるいは板材どうしの間隔を調整することができ、低コストで有効な補強構造および補強方法とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明(第一の発明、第三の発明、第五の発明)の第1の実施の形態による板材の補強構造50の、橋軸方向に直角な方向からみたI形鋼5などにおける、板材の補強構造50の一部切欠き側面図である。
【図2】本発明(第一の発明、第三の発明、第五の発明)の第2の実施の形態による板材の補強構造59の一部切欠き側面図である。
【図3】本発明(第一の発明、第三の発明、第五の発明)の第3の実施の形態による板材の補強構造70の一部切欠き側面図である。
【図4】本発明(第一の発明、第三の発明、第五の発明)の第4の実施の形態による板材の補強構造80の一部切欠き側面図である。
【図5】本発明(第一の発明、第三の発明、第五の発明)の第5の実施の形態による板材の補強構造90の一部切欠き側面図である。
【図6】本発明(第一の発明、第三の発明、第五の発明)の第6の実施の形態による板材の補強構造100の一部切欠き側面図である。
【図7】本発明(第一の発明、第三の発明、第五の発明)の第7の実施の形態による板材の補強構造110の一部切欠き側面図である。
【図8】本発明(第二の発明、第四の発明、第六の発明)の第8の実施の形態による板材の補強構造120の一部切欠き側面図である。
【図9】本発明(第二の発明、第四の発明、第六の発明)の第9の実施の形態による板材の補強構造130の一部切欠き側面図である。
【図10】本発明(第二の発明、第四の発明、第六の発明)の第10の実施の形態による板材の補強構造140の一部切欠き側面図である。
【図11】本発明(第二の発明、第四の発明、第六の発明)の第11の実施の形態による板材の補強構造150の一部切欠き側面図である。
【図12】一般的なI形桁橋1の概略斜視図である。
【図13】同、橋軸方向のI形鋼5の要部断面図である。
【図14】同、橋軸方向に直角な方向からみたI形鋼5の側面図である。
【図15】同、橋軸方向に直角な方向からみたI形鋼5の側面図である。
【図16】一般的なトラス橋30の概略側面図である。
【図17】同、破断部35を修復するための従来の補強構造ないし補強方法の一例を示す要部側面図である。
【図18】一般的なアーチ橋40の概略側面図である。
【図19】同、曲がり部45を補修するための方法を示す概略側面図である。
【符号の説明】
1 I形桁橋(図12)
2 主桁(I形鋼)
3 連結材
4 コンクリート板などによるスラブ
5 I形鋼
6 ウェブプレート(腹板)
7 上フランジ
7A 上フランジ7の下面
8 下フランジ
9 補剛材
9A 補剛材9の上端面(図1、図13)
9B 補剛材9の上方内壁面(図1)
9C 補剛材9の下方内壁面(図1)
10 ウェブプレート6と上フランジ7との間の第1の溶接部
11 ウェブプレート6と補剛材9との間の第2の溶接部
12 補剛材9と上フランジ7との間の第3の溶接部
13 スカラップ
14 ガセットプレート
15 水平材
16 斜め材
17 ウェブプレート6面内の水平方向における第1の亀裂(図13)
18 補剛材9面内の垂直方向における第2の亀裂(図13)
19 補剛材9面内の水平方向における第3の亀裂(図13)
20 上フランジ7の下面7Aと補剛材9の上端面9Aとの間の間隙
21 第1の補強用当て板(添接板)
21A 第1の補強用当て板21の上方内壁面(上フランジ7側の内壁面、図1)
21B 第1の補強用当て板21の下方内壁面(上フランジ7と反対側の内壁面、図1)
22 第2の補強用当て板(添接板)
22A 第2の補強用当て板22の上端面(図15)
23 ボルト
24 板材の補強構造(図15)
25 ジャッキ
26 基盤
30 トラス橋(図16)
31 橋脚
32 下弦材
33 上弦材
34 斜め材
34A 斜め材34の上方内壁面(破断部35と反対側の内壁面、図8)
34B 斜め材34の下方内壁面(破断部35側の内壁面、図8)
35 破断部
36 取付け部材
37 ターンバックル
38 当て板
39 ボルト
40 アーチ橋(図18)
41 アーチ状の下弦材
42 上弦材
43 垂直材
44 斜め材
45 曲がり部
46 締付け固定部材
47 プレストレストコンクリート鋼棒(PC鋼棒)
48 ナット
50 板材の補強構造(第1の実施の形態、図1)
51 間隔調整兼用添接部材(第1の実施の形態、図1)
52 固定部材
53 固定ボルト
53A 固定ボルト53のネジ部
54 固定ナット
55 円錐状のボルト側カラー
55A ボルト側カラー55のテーパー面
56 円錐状のナット側カラー
56A ナット側カラー56のテーパー面
57 添接板(第2の補強用当て板)
57A 添接板57の上端面
57B 添接板57の上方内壁面(上フランジ7側の内壁面)
57C 添接板57の下方内壁面(上フランジ7と反対側の内壁面)
58 取付け孔
59 板材の補強構造(第2の実施の形態、図2)
60 ボルト側補助カラー
60A ボルト側補助カラー60のテーパー面
61 ナット側補助カラー
61A ナット側補助カラー61のテーパー面
62 間隔調整兼用添接部材(第2の実施の形態、図2)
63 固定部材
70 板材の補強構造(第3の実施の形態、図3)
71 間隔調整兼用添接部材(第3の実施の形態、図3)
72 固定部材
73 ボルト側カラー
73A ボルト側カラー73のテーパー面
74 ナット側カラー
74A ナット側カラー74のテーパー面
80 板材の補強構造(第4の実施の形態、図4)
81 間隔調整兼用添接部材(第4の実施の形態、図4)
82 固定部材
83 固定ボルト
83A 固定ボルト83のテーパー面
90 板材の補強構造(第5の実施の形態、図5)
91 間隔調整兼用添接部材(第5の実施の形態、図5)
92 固定部材
93 ボルト側カラー
93A ボルト側カラー93のテーパー面
93B ボルト側カラー93の平坦面
94 ナット側カラー
94A ナット側カラー94のテーパー面
94B ナット側カラー94の平坦面
100 板材の補強構造(第6の実施の形態、図6)
101 間隔調整兼用添接部材(第6の実施の形態、図6)
102 固定部材
103 二つ割りとした円錐状のボルト側カラー
103A ボルト側カラー103の上側テーパー面
103B ボルト側カラー103の下側テーパー面
104 二つ割りとした円錐状のナット側カラー
104A ナット側カラー104の上側テーパー面
104B ナット側カラー104の下側テーパー面
110 板材の補強構造(第7の実施の形態、図7)
111 間隔調整兼用添接部材(第7の実施の形態、図7)
112 添接板
112A 添接板112の上端面
112B 添接板112の上方テーパー面
112C 添接板112の下方テーパー面
120 板材の補強構造(第8の実施の形態、図8)
121 間隔調整兼用添接部材(第8の実施の形態、図8)
122 添接板
122A 添接板122の上方内壁面(破断部35と反対側の内壁面)
122B 添接板122の下方内壁面(破断部35側の内壁面)
123 取付け孔
130 板材の補強構造(第9の実施の形態、図9)
140 板材の補強構造(第10の実施の形態、図10)
141 間隔調整兼用添接部材(第10の実施の形態、図10)
142 添接板
142A 添接板142の上方内壁面
142B 添接板142の下方内壁面
143 取付け孔
150 板材の補強構造(第11の実施の形態、図11)
補剛材9に対して上フランジ7が上下に揺動する方向(図13)
補剛材9が水平面内で揺動する方向(図14)
L 斜め材34部分に生じた破断部35の間隔(図8、図16)

Claims (2)

  1. 互いに連結されているとともに互いの間にわずかな間隙があいている第1の板材および第2の板材の少なくとも一方にその外側から添接部材を添接することにより、これら第1の板材および第2の板材を補強する板材の補強方法であって、
    前記添接部材は、前記板材の少なくとも一方の板材の平面方向に対して傾斜するテーパー面を有しており、
    この一方の板材および前記添接部材に貫通して形成した取付け孔に挿通するボルトにより、前記添接部材をこの板材とともにボルト締めし、このボルト締めにともなうこの一方の板材の前記取付け孔の内壁面と前記ボルトとの間の反力を利用して該板材の平面方向においてこのテーパー面を押すことにより、他方の板材に対して前記添接部材を移動可能な分力を発生させるボルト締め移動工程と、
    これら板材に前記添接部材を固定することにより該板材を補強可能とする固定工程と、
    を有することを特徴とする板材の補強方法。
  2. 添接部材により互いに連結されるとともに互いの間に破断部が発生した第1の板材および第2の板材の少なくとも一方にその外側から当該添接部材を添接することにより、これら第1の板材および第2の板材を補強する板材の補強方法であって、
    前記添接部材は、前記板材の少なくとも一方の板材の平面方向に対して傾斜するテーパー面を有しており、
    この一方の板材および前記添接部材に貫通して形成した取付け孔に挿通するボルトにより、前記添接部材をこの板材とともにボルト締めし、このボルト締めにともなうこの一方の板材の前記取付け孔の内壁面と前記ボルトとの間の反力を利用して該板材の平面方向においてこのテーパー面を押すことにより、前記少なくともいずれか一方の板材を他方の板材に対して移動可能な分力を発生させるボルト締め移動工程と、
    これら板材に前記添接部材を固定することにより該板材を補強可能とする固定工程と、
    を有することを特徴とする板材の補強方法。
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