JP3909127B2 - ゴルフボール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、外層カバーと外層カバーより低硬度の内層カバーとを有するゴルフボールに関し、さらに詳述すると、高い反発性を維持しつつ高弾道を得ることができ、しかも打感が良好なゴルフボールに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ゴルフボールの打出し角は、ボールが柔らかいほど大きくなる。したがって、打出し角の大きい高弾道特性のゴルフボールを得る場合、従来、ボールを構成する層の1つ以上を柔軟な材料で形成する手法、例えばコアを比較的柔軟なゴムで作製する手法や、内層カバー又は外層カバー(中間層又はカバーといってもよい)を比較的柔軟な樹脂で形成する手法等が採られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、コアを柔軟なゴムで作製する手法では、コアをあまり柔らかくしすぎるとボールが柔らかくなりすぎ、高弾道は得られても、ボールの反発性が低下して飛距離が小さくなるとともに、フルショット(強打)を行ったときに芯がないボールであるという印象をプレーヤーに与えてしまう。また、パターでの打撃時に打音が低くなり、多くのプレーヤーに好ましくない印象を与える。
【0004】
内層カバー又は外層カバーを柔軟な樹脂で形成する手法では、柔軟な樹脂層を形成する樹脂が柔らかすぎたり、柔軟な樹脂層が厚すぎたりすると、ボールが柔らかくなりすぎ、高弾道は得られても、ボールの反発性が低下して飛距離が小さくなるとともに、フルショット(強打)を行ったときに芯がないボールであるという印象をプレーヤーに与えてしまう。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、高い反発性を維持しつつ大きい打出し角を得ることができ、しかもフルショット時に芯を感じる打感が得られるゴルフボールを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記目的を達成するため、外層カバーと外層カバーより低硬度の内層カバーとを有し、外層カバーの内面に突部が形成されているとともに、内層カバーの外面に前記突部に相応する凹部が形成され、前記突部が前記凹部に入り込んだ状態で内層カバーと外層カバーとが接合されているゴルフボールであって、突部の法線方向の長さが内層カバーの凹部非形成箇所の厚みの60%以上であり、内層カバー及び全突部の合計体積に対する全突部の合計体積の比率が10〜70%であり、外層カバーの突部と内層カバーとの硬度差がショアD硬度で5〜40であることを特徴とするゴルフボールを提供する。
【0007】
本発明のゴルフボールでは、高硬度の外層カバーに形成した突部が低硬度の内層カバー内に入り込んでおり、いわば低硬度の内層カバーに高硬度部分(突部)が多数埋設された状態となっている(以下、内層カバーと内層カバーに埋設された突部とからなる層を中間層ということもある)。この中間層は、上記構成により、柔軟な層としての機能と、高硬度層としての機能とを併有している。
【0008】
そのため、本発明のゴルフボールに対し、例えばドライバーやロングアイアンによってボールに極めて強い外力が加わるフルショット(強打)を行った場合、中間層の柔軟な層としての機能によって大きい打出し角が得られるとともに、突部が反力によりボールに加わった外力を強く受け止め、中間層の高硬度層としての機能が強く働くため、十分な反発性と、芯を感じる打感が得られる。
【0009】
また、本発明のゴルフボールに対し、例えばミドルアイアンによってボールに加わる外力がフルショットに較べてやや弱い通常のショットを行った場合、突部に生じる反力がフルショットの場合に較べて小さくなり、ソフトな打感が得られるが、中間層の高硬度層としての機能はかなりの程度働くため、十分な反発性が得られる。
【0010】
さらに、本発明のゴルフボールに対し、例えばショートアイアンでボールに加わる外力が弱いコントロールショットを行った場合、突部に生じる反力が小さく、中間層の高硬度層としての機能は強く働かないため、ソフトな打感と、高スピン特性が得られるものである。
【0011】
以下、本発明につきさらに詳しく説明する。本発明のゴルフボールにおいて、コアの材質に限定はなく、例えばポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、天然ゴム、シリコーンゴム等を主成分とする加硫ゴムを用いることができるが、ポリブタジエンゴムを主成分とする加硫ゴムを用いることが特に好ましい。なお、コアは一種の材料からなる単層構造としてもよく、異種の材料からなる層を積層した2層以上の多層構造としてもよい。
【0012】
内層カバー及び外層カバーの材質にも限定はなく、例えばアイオノマー樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂とポリエステル系樹脂との混合物等から選ばれるものを用いることができる。なお、内層カバー及び外層カバーはそれぞれ一種の材料からなる単層構造としてもよく、異種の材料からなる層を積層した2層以上の多層構造としてもよい。
【0013】
本発明のゴルフボールでは、外層カバーの内面に突部、内層カバーの外面に突部に相応する凹部が形成され、突部が凹部に入り込んだ状態で内層カバーと外層カバーとが接合されている。この場合、突部の形状は任意の形状とすることができるが、略円柱状、略多角柱状、略円筒状、略円錐状又は略多角錐状に形成することが適当である。突部の外径は通常1.2〜3.5mm程度とするが、これに限定されるものではない。
【0014】
本発明のゴルフボールでは、突部の法線方向の長さを内層カバーの凹部非形成箇所の厚みの60%以上とする。この比率が60%未満であると、中間層の高硬度層としての機能が不十分となり、フルショット時や通常のショット時に十分な反発性が得られなかったり、フルショット時に芯を感じる打感が得られなくなったりする場合が生じる。該比率のより好ましい値は、80%以上、特に100%である。
【0015】
また、本発明のゴルフボールでは、内層カバー及び全突部の合計体積に対する全突部の合計体積の比率、すなわち下記式で求められる比率Aを10〜70%とする。
A(%)=[C/(B+C)]×100
B:内層カバーの体積
C:全突部の合計体積
上記比率Aが10%未満であると、中間層の高硬度層としての機能が不十分となり、フルショット時や通常のショット時に十分な反発性が得られなかったり、フルショット時に芯を感じる打感が得られなくなったりする場合が生じる。また、上記比率Aが70%を超えると、中間層の柔軟な層としての機能が不十分となり、フルショット時に大きい打出し角を得られなくなることがある。比率Aのより好ましい範囲は、20〜50%、特に25〜40%である。
【0016】
さらに、本発明のゴルフボールでは、外層カバーの突部と内層カバーとの硬度差をショアD硬度で5〜40とする。この硬度差が上記の範囲外であると、内層カバーが硬すぎたり、外層カバーが柔らかすぎたり、あるいは内層カバーが柔らかすぎたり、外層カバーが硬すぎたりすることになり、いずれの場合も中間層が柔軟な層としての機能と高硬度層としての機能とを併有しなくなり、本発明の目的を達成できない。上記硬度差のより好ましい範囲は、ショアD硬度で10〜30、特に15〜25である。なお、外層カバーの突部の硬度と突部以外の部分の硬度は通常は等しい。
【0017】
また、外層カバーはショアD硬度が55以上、好ましくは55以上70以下の材質により形成し、内層カバーはショアD硬度が55未満、好ましくは55未満20以上の材質で形成することが高弾道特性、良好な打感を得る点で適当である。さらに、外層カバーの突部非形成箇所の厚みは0.5〜4.0mm、特に1.0〜2.0mmとし、内層カバーの凹部非形成箇所の厚みは0.5〜4.0mm、特に1.0〜2.0mmとすることが適当であるが、これに限定されるものではない。
【0018】
本発明において、突部はゴルフボールの法線方向にほぼ沿って形成することが、ゴルフボールに加わる外力に対して突部の反力が適切に働く点や、ボールのシンメトリー性の点などで好ましい。この場合、法線とは、ゴルフボール表面のある点をPとした場合に、点Pを通り、点Pにおける接平面に垂直な直線をいうもので、この法線は点Pとゴルフボールの中心とを結ぶ線(径線)に該当する。したがって、ほぼ法線方向に沿った突部とは、軸線が実質的にゴルフボールの径線に沿った突部である。
【0019】
なお、本発明のゴルフボールの大きさ及び重量はゴルフ規則に従うものであり、直径42.67mm以上、重さ45.93g以下に形成することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
図1は本発明に係るゴルフボールの一実施形態例を示す断面図である。図1に示すゴルフボール2は、コア3と、コア3の周囲に形成されたショアD硬度55未満の樹脂からなる低硬度の内層カバー4と、内層カバー4の周囲に形成されたショアD硬度55以上の樹脂からなる高硬度の外層カバー6とを相互に接合してなる3層構造のマルチピースソリッドゴルフボールである。
【0021】
本例のゴルフボール2では、法線X方向に沿った多数の突部12が外層カバー6の内面に形成されているとともに、突部12に相応する形状の多数の凹部14が内層カバー4の外面に形成され、突部12が凹部14に入り込んだ状態で内層カバー4と外層カバー6とが接合されている。突部12の法線方向の長さは内層カバー4の凹部非形成箇所の厚みの60%以上であり、内層カバー4及び全突部12の合計体積に対する全突部12の合計体積の比率は10〜70%であり、突部12と内層カバー4との硬度差はショアD硬度で5〜40である。
【0022】
本例のゴルフボール2は、例えば次の手順で製造することができるが、これに限定されるものではない。
(1)加硫ゴムからなるコア3を圧縮成形によって作製した後、コア3の周面上に、多数の凹部14を有する内層カバー4を成形する。内層カバー4の成形は、例えば、キャビティ面に多数の凹部形成用突起を有する金型を用いてコア3の周囲に内層カバー4を射出成形する方法、外面に多数の凹部14を有する半球カップ体を射出成形又は圧縮成形によって作製した後、この半球カップ体2個を用いてコア3の周囲に内層カバー4を圧縮成形する方法等によって行うことができる。
(2)内層カバー4の周囲に外層カバー6を射出成形し、同時にディンプルを形成する。この場合、必要に応じ、凹部14内に外層カバー6の樹脂がよく流れ込むように、金型内を真空ポンプで吸引して負圧にする。
【0023】
図2は、図1に示したゴルフボール2の作用効果を模式的に示す断面図である。図2では、突部12等の状態がわかり易くなるように、内層カバー4、外層カバー6の厚みや突部12の長さ等を強調している。本例のゴルフボール2は、図2に示すように、ドライバー20等によってボール2に対して極めて強い外力が加わるフルショット(強打)を行った場合、中間層30の柔軟な層としての機能によって大きい打出し角が得られるとともに、突部12が反力によりボール2に加わった外力を強く受け止め、中間層30の高硬度層としての機能が強く働くため、十分な反発性と、芯を感じる打感が得られるものである。なお、図示しないが、ミドルアイアン等によってボールに加わる外力がフルショットに較べてやや弱い通常のショットを行った場合、ショートアイアン等でボールに加わる外力が弱いコントロールショットを行った場合の作用効果は前述したとおりである。
【0024】
【実施例】
表1に示した実施例1〜3及び比較例1〜4のゴルフボールを製造した。表1中の基材ゴムとしては日本合成ゴム社製のポリブタジエンゴムJSR BR01と同BR11とを重量比50:50で配合したもの、加硫剤としてはジクミルパーオキサイド(日本油脂社製パークミルD)、硬化剤としてはアクリル酸亜鉛を用いた。また、表1中の内層カバー配合のポリエステルとしては東レ・デュポン社製ハイトレルH4047を単独で用い、アイオノマーBとしてはデュポン社製サーリン8120と三井・デュポンポリケミカル社製ハイミラン1855とを重量比65:35でブレンドしたもの、アイオノマーCとしてはサーリン8120とハイミラン1855とを重量比50:50でブレンドしたものを用いた。外層カバー配合のアイオノマーAは、ハイミラン1605と同1706とを重量比50:50でブレンドしたものである。なお、表1中のボール硬度は100kg荷重時のボールのたわみ量である。
【0025】
【表1】
【0026】
実施例、比較例のゴルフボールの飛び試験及び打感試験を下記のようにして実施した。
【0027】
[飛び試験]
打撃試験機を用いて下記の値を測定した。
・1番ウッド(W1)によりヘッドスピード50m/s(HS50)で打撃を行ったときの初速、打出し角及びスピン量
・1番ウッド(W1)によりヘッドスピード45m/s(HS45)で打撃を行ったときの打出し角及びスピン量
・5番アイアン(I5)によりヘッドスピード40m/s(HS40)で打撃を行ったときの打出し角及びスピン量
・サンドウエッジ(SW)によりヘッドスピード25m/s(HS25)で打撃を行ったときの打出し角及びスピン量
【0028】
[打感試験]
プロゴルファー3名にゴルフボールを試打させ、打感の官能評価を行った。評価基準は下記の通りである。
○:通常のショットではソフトな打感、フルショットでは芯を感じる打感であった。
×1:通常のショットではソフトな打感であったが、フルショットで芯を感じ る打感が得られなかった。
×2:通常のショット及びフルショットのいずれでもやや硬い打感であった。
【0029】
結果を表1に示す。表1より、実施例1〜3の本発明ゴルフボールは、柔軟な内層カバーを有する従来型の高弾道特性のゴルフボールである比較例4のボールとほぼ同等の打出し角、スピン特性が得られ、しかも比較例4のボールよりも反発性が向上して初速が大きいともに、フルショット時に芯を感じる打感が得られることがわかる。
【0030】
これに対し、突部の法線方向の長さが内層カバーの凹部非形成箇所の厚みの60%未満である比較例1のボールは、内層カバーと内層カバーに埋設された突部とからなる中間層の硬質層としての機能が不十分となり、フルショット時に芯を感じる打感が得られなかった。外層カバーの突部と内層カバーとの硬度差がショアD硬度で5未満である比較例2のボールは、内層カバーが硬すぎるために中間層の柔軟な層としての機能が不十分となり、通常のショット及びフルショットのいずれでも打感が硬くなるものであった。内層カバー及び全突部の合計体積に対する全突部の合計体積の比率が10%未満である比較例3のゴルフボールは、中間層の硬質層としての機能が不十分となり、フルショット時に芯を感じる打感が得らなかった。
【0031】
【発明の効果】
本発明のゴルフボールは、高い反発性を維持しつつ大きい打出し角を得ることができ、しかもフルショット時に芯を感じる打感が得られるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るゴルフボールの一例を示す断面図である。
【図2】図1に示したゴルフボールの作用効果を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
2 ゴルフボール
3 コア
4 内層カバー
6 外層カバー
12 突部
14 凹部
Claims (4)
- 外層カバーと外層カバーより低硬度の内層カバーとを有し、外層カバーの内面に突部が形成されているとともに、内層カバーの外面に前記突部に相応する凹部が形成され、前記突部が前記凹部に入り込んだ状態で内層カバーと外層カバーとが接合されているゴルフボールであって、突部の法線方向の長さが内層カバーの凹部非形成箇所の厚みの60%以上であり、内層カバー及び全突部の合計体積に対する全突部の合計体積の比率が10〜70%であり、外層カバーの突部と内層カバーとの硬度差がショアD硬度で5〜40であることを特徴とするゴルフボール。
- 外層カバーの突部のショアD硬度が55以上、内層カバーのショアD硬度が55未満である請求項1に記載のゴルフボール。
- 突部がほぼ法線方向に沿って形成されている請求項1又は2に記載のゴルフボール。
- 突部が略円柱状、略多角柱状、略円筒状、略円錐状又は略多角錐状に形成されている請求項1、2又は3に記載のゴルフボール。
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