JP3908505B2 - 水性インク - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性ボールペン、万年筆、水性サインペンなどの筆記具や、サーマルジェット方式やピエゾ方式などのオンデマンドタイプのインクジェットプリンターに好適に使用できる水性インク(水性記録液)に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、印刷インキの黒色色材として耐水性や耐光性などの堅牢性に優れたカーボンブラックが広く用いられているが、カーボンブラックを水性インクとして用いるには、カーボンブラックを水性媒体中で分散安定化させる必要がある。しかし、カーボンブラックは一般的には分散性が良くないため、均一分散系を得る手段として、水性インクに分散剤を添加してカーボンブラックを水性媒体中に分散させる方法や、酸化などによりカーボンブラック表面を親水化処理する方法が採られている。
【0003】
しかし、分散剤を添加して高い分散性を得る方法では、カーボンブラックを分散安定化するためには多量の分散剤が必要となるため、水性インクの粘性が高くなり、水性インクの吐出安定性が悪くなる。また、カーボンブラック表面を親水化処理する方法では、紙上に印字した際の水性インクの定着性が悪く、得られる画像の耐擦過性や耐マーカー性などが十分でない。
【0004】
これらを改善するために、特開平10−36726号公報に開示されるように、自己分散カーボンブラックを含有する水性インクにカチオン性ポリマーを添加する方法がとられている場合では、同じ水性インク内に極性が異なるポリマーとカーボンブラックとが存在するため、カーボンブラックが凝集しやすく、水性インクの吐出安定性の面で不安定な場合が多く見られた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、ノズルやペン先からの吐出安定性や耐目詰り性を低下させることなく、形成される画像の耐擦過性、耐水性、耐マーカー性を向上させた水性インクを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、色材と樹脂と有機溶媒とを含む水性インクにおいて、前記色材が、表面にアニオン性の親水性基を持つ自己分散性カーボンブラックであり、該カーボンブラックの粒度分布をキュムラント法で解析して求めた多分散指数が0.2以下であり、前記樹脂が、水溶性ポリアミドポリ尿素系樹脂であることを特徴とする水性インクを提供する。
【0007】
また、本発明は、前記色材と前記樹脂との質量比率が、固形分比で1:0.01〜1:2である前記の水性インク;脱塩後の前記樹脂のpHが7〜10である前記の水性インク;およびインクジェットプリンター用である前記の水性インクを提供する。
【0008】
【発明の実施の形態】
次に好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明で色材として使用するカーボンブラックは、表面にアニオン性の親水性基(カルボキシル基やスルホン酸基など)を持つ自己分散性カーボンブラックであり、該カーボンブラックとしては、過硫酸塩などの公知の酸化剤を用いてカーボンブラックの表面を酸化処理したカーボンブラックまたはアニオン性の親水性基を表面に付与したカーボンブラックであることが好ましい。
【0009】
本発明において水性インクの色材として上記の如き自己分散性カーボンブラックを用いることにより、本発明の水性インク中に添加する顔料分散剤などの添加量を減少させても、あるいは分散剤を添加しなくても、上記カーボンブラックは水性インク中で安定に分散しており、その結果として上記した分散剤の使用量の減少または分散剤を不要とする効果に加えて、ノズルやペン先からの水性インクの吐出安定性や耐目詰まり性も良好となる。
【0010】
上記本発明で使用する自己分散性カーボンブラックは、その粒度分布をキュムラント法で解析して求めた多分散指数が0.2以下である。ここでいう「多分散指数」とは、電気泳動光散乱法で求められる値であり、u/G2の計算式から得られる値である。uとはキュムラント法の2次の係数の値であり、Gとはキュムラント法の減衰定数を表す。多分散指数が0.2を超えると自己分散性カーボンブラックの粒子径分布が広く、粒子径の大きなカーボンブラックが水性インク中に存在することになり、水性インクの吐出安定性が悪くなる傾向にあるために好ましくない。
【0011】
また、レーザーゼータ電位計にて測定した上記の自己分散性カーボンブラックの表面のゼータ電位が−100〜−30mvの範囲であることが好ましい。ゼータ電位が−30mvより大きい場合、水性インク中で自己分散性カーボンブラックの沈降を生じるなどの欠点が生じる場合がある。また、ゼータ電位が−100mvより小さいと画像の耐水性が劣るなどの欠点が生じる場合がある。
【0012】
また、レーザー粒径解析システムにて測定した上記のカーボンブラックの平均粒子径が、20〜200nmの範囲であることが好ましい。平均粒子径が小さすぎると、水性インクによって形成される画像の画像濃度が低下し、一方、平均粒子径が大きすぎると、ノズルやペン先からの水性インクの吐出安定性や耐目詰まり性が低下する場合がある。
【0013】
以上の如き自己分散性カーボンブラックは、従来公知の方法で水中で製造して水分散液とし、この分散液の状態またはプレスケーキの状態で使用することが好ましい。また、市販品を使用する場合にも分散液またはプレスケーキの状態で使用することが好ましい。これらの分散液またはプレスケーキを一旦乾燥して粉末にすると、自己分散性カーボンブラックの粒子が凝集してしまい、再度の微分散が容易ではないことによる。
【0014】
本発明で使用する樹脂は、水性インクが紙などの記録材に付与された後は、記録材に対して自己分散性カーボンブラックを固着させる作用をするものであり、水溶性ポリアミドポリ尿素系樹脂である。
【0015】
これらの水溶性ポリアミドポリ尿素系樹脂は、例えば、スミレーズレジン633やスミレーズレジン636などの商品名で住化ケムテックス社から入手して本発明で使用することができる。
【0016】
また、上記で使用する樹脂のpHは7〜10であることが好ましい。ここで「樹脂のpH」とは、樹脂1gを脱イオン水45mlに溶解してイオン交換樹脂により脱塩し、樹脂水溶液の樹脂濃度0.3質量%に調整したときの該水溶液pHを測定し、該pH値を樹脂のpHとした。樹脂のpHに影響を及ぼす塩類などの不純物を除去する方法としては、イオン交換樹脂や限外ろ過などを用いる方法が挙げられる。樹脂のpHが7より小さい値であると、画像の耐水性の向上があまりみられないなどの点で好ましくなく、一方、樹脂のpHが10より大きい値であると、水性インク中の自己分散性カーボンブラックの分散安定性が不安定となるために好ましくない。
【0017】
以上の自己分散性カーボンブラックと樹脂との水性インク中における質量比率は、固形分比で1:0.01〜1:2であることが好ましい。樹脂量が少なすぎると、本発明の水性インクによって形成される画像の耐擦過性、耐水性、耐マーカー性など、水性インクの記録材への定着性が十分でない場合があり、また、樹脂量が多すぎると、水性インクの粘性が高くなり、水性インクの吐出安定性や耐目詰まり性が低下する場合がある。
【0018】
本発明の水性インクは、前記のカーボンブラックおよび樹脂を分散または溶解させる液媒体が必要であり、該液媒体は少なくとも水溶性の有機溶剤を含むことが必要である。好ましくは水と水溶性有機溶剤との混合溶剤を水性インクの液媒体として使用する。本発明において水性インク全質量に占める水溶性有機溶剤の割合は、例えば、5〜50質量%、さらには5〜40質量%であることが好ましい。
【0019】
上記水溶性有機溶剤は、本発明の水性インクに、ノズルやペン先部分での乾燥による水性インクの固化を防止するために使用するものであって、具体的には、炭素数1から4のアルキルアルコール類(例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコールなど)、ケトンまたはケトアルコール類(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類、アセトン、ジアセトンアルコールなど)、エーテル類(例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサンなど)、ポリアルキレングリコール類(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなど)、アルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコールなど)、多価アルコールなどのアルキルエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなど)、さらにはN−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどが挙げられる。
【0020】
特に好ましい水溶性有機溶媒は、グリセリン、多価アルコール(例えば、ジエチレングリコールやエチレングリコールなど)であり、グリセリン以外の多価アルコールとしては、例えば、ジエチレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコールやプロピレングリコールなどが挙げられる。水性インク中にはこれらの水性有機溶媒を2種類以上混合して用いてもよい。
【0021】
本発明の水性インクは上記水溶性有機溶剤とともに水を含有する。水性インク全質量に占める水の割合としては、例えば、20〜95質量%、特には40〜95質量%、さらには60〜95質量%であることが好ましい。また、水には純水またはイオン交換水を用いることが好ましい。
【0022】
本発明の水性インクは、上記の成分を混合して、自己分散性カーボンブラックを水性媒体中に十分に分散させ、該カーボンブラックの粒度分布がキュムラント法で解析して求めた多分散指数が0.2以下になるようにする。分散方法としては、自己分散性カーボンブラックの分散液中に他の成分を添加して混合する方法でよい。必要であれば従来公知の分散装置が使用でき、また、必要に応じて遠心分離や濾過方法などにより、水性インク中に残っている可能性のある粗大粒子を除去することが好ましい。
【0023】
本発明の水性インク中における自己分散性カーボンブラックの水性インク全質量に占める割合は、例えば、0.1〜20質量%、さらには1〜10質量%であることが好ましい。自己分散性カーボンブラックの量が0.1質量%未満では印字画像に十分な画像濃度が得られず、該カーボンブラックの量が20質量%を超えると、ノズルやペン先における水性インクの目詰りなどの吐出安定性が低下するだけで、画像の濃度が特別向上するわけでもない。
【0024】
また、本発明の水性インク中における前記樹脂の水性インク全質量に占める割合は、例えば、0.001〜40質量%、さらには0.01〜20質量%であることが好ましい。前記樹脂の量が0.001質量%未満では得られる画像の耐擦過性、耐マーカー性などが低下し、一方、前記樹脂の量が40質量%を超えると、水性インクの粘性が高くなり、ノズルやペン先における水性インクの目詰りなどの吐出安定性が低下する。
【0025】
なお、本発明の水性インクには、前記成分以外にも、例えば、界面活性剤、pH調整剤、酸化防止剤、防黴剤などの各種の添加剤を添加してもよい。また、本発明の水性インクの粘度は25℃において1.0m・Pas〜5.0m・Pasであることが好ましい。
【0026】
【実施例】
次に実施例および比較例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り、下記実施例により限定されるものではない。なお、以下の記載で「部」または「%」とあるものは特に断らない限り質量基準である。また、以下の実施例において平均粒子径は動的光散乱法(商品名:レーザー粒径解析システムPAR−III;大塚電子(株)社製を使用)を、ゼータ電位は電気泳動光散乱法(商品名:レーザーゼータ電位計ELS−6000;大塚電子(株)社製を使用)、樹脂のpHはpHメーター(堀場製作所(株)製)を用いて測定した値である。
【0027】
まず、実施例および比較例に使用する自己分散性カーボンブラックの分散液CB−1およびCB−2の作成方法を説明する。
(CB−1)
市販のカーボンブラック「MA8」[三菱化学社製]250gをイオン交換水(以下水と記載する)1000mlによく混合および分散した後、これにペルオキソ二硫酸アンモニウムを1000g投入して、60〜70℃で8時間攪拌した。得られたスラリーを分画分子量10000の限外ろ過膜[東洋濾紙社製]で濾過し、ろ液の電導度が0.5ms/cm以下まで脱塩した。さらに、固形分濃度を20質量%まで濃縮し、25%の水酸化カリウムを20g滴下し、分散液のpHを8に調整した。最終的には水を加えて15質量%に固形分濃度を調整した。得られた分散液中のカーボンブラックは平均粒子径85nm、多分散指数0.15、ゼータ電位−50mvであった。
【0028】
(CB−2)
キャボット社製自己分散性カーボンブラックCAB−O−JET200(固形分濃度20質量%、表面親水性基としてはスルホン酸基を有する)を使用した。平均粒子径は130nm、多分散指数0.13、ゼータ電位−70mvであった。
【0029】
実施例1〜5および比較例1、2
水性インクの作成方法としては、実施例1〜5では、上記のようにして準備した自己分散性カーボンブラック分散体とポリアミドポリ尿素系樹脂とを、各固形分が表1に示す割合になるように10分間攪拌した後、ジエチレングリコール20質量%、アセチレノールEH0.15質量%を添加し、最終的に水性インク中の自己分散性カーボンブラックの固形分が5質量%になるように水を加え、1時間攪拌を行った。
【0030】
さらに得られた水性インクを3μmのメンブランフィルター[東洋濾紙社製]を用いて減圧ろ過を行い、実施例の水性インクを調製した。比較例1、2では、自己分散性カーボンブラック分散体(樹脂なし)、ジエチレングリコール20質量%、アセチレノールEH0.15質量%を添加し、最終的に水性インク中の自己分散性カーボンブラックの固形分が5質量%になるように水を加え、1時間攪拌を行った。さらに得られた水性インクを3μmのメンブランフィルター[東洋濾紙社製]を用いて減圧ろ過を行い、水性インクを調製した。表1に示すC.B/樹脂(カーボンブラック/ポリアミドポリ尿素系樹脂)は、得られた水性インクの最終固形分濃度を表している。
【0031】
【0032】
また、水性インクに使用する樹脂の特性であるpHは以下のように求めた。以上で使用した樹脂1gを脱イオン水45mlに溶解してイオン交換樹脂により脱塩し、樹脂水溶液の樹脂濃度0.3質量%に調整したときの該水溶液pHを測定し、該pH値を樹脂のpHとした。その結果、スミレーズレジン633のpHは8.0であり、スミレーズレジン636のpHは8.8であった。
【0033】
前記実施例および比較例の水性インクを用いて、市販コピー用紙(普通紙)NP−PB[日本製紙社製]および光沢紙PR101[キヤノン社製]に記録を行った。画像形成(印字)は、水性インクジェットプリンターF660[キヤノン社製]を用いて行った。印字物の評価は以下のように行った。
【0034】
(耐擦過性)
印字から12時間以上放置後、印字した紙上にキムワイプを載せ、さらにその上に500g/12.56cm2の重りを載せ、5往復したときの白紙部の汚れや、黒べた画像、文字印字部の擦れ具合から目視にて観察した。評価基準は下記の通りとして、評価結果を下記表2に示す。
○:白紙部に汚れがなく、黒べた画像、文字印字部の擦れなし。
△:白紙部にやや汚れがあり、黒べた画像および文字印字部にやや擦った跡がある。
×:白紙部に汚れがあり、黒べた画像および文字印字部の一部が擦り取られている。
××:白紙部の汚れがひどく、黒べた画像および文字印字部が全体的に擦り取られている。
【0035】
(耐水性)
印字から12時間以上放置後、印字物を5分間水道水中に静止し、水を乾燥させた後の画像の反射濃度を測定し、耐水性試験前と耐水性試験後の反射濃度の残存率を求め耐水性の尺度とした。評価基準は下記の通りとして、評価結果を下記表2に示す。
○:画像濃度の残存率が90%以上。
△:画像濃度の残存率が80%以上90%未満。
×:画像濃度の残存率が70%以上80%未満。
××:画像濃度の残存率が70%未満。
【0036】
(耐マーカー性)
ZEBRA社製イエロー蛍光ペンを用い文字印字後12時間以上放置した後に、文字部を通常の筆圧で一度マークし、耐マーカー性を下記の評価基準で評価した。評価結果を下記表2に示す。
○:印字部に滲みや白地部分の汚れが認められず、ペン先も汚れていない。
△:白地部分にやや汚れがあり、印字部の滲みもややある。
×:白地部分に汚れ、印字部の滲みがある。
【0037】
【0038】
【発明の効果】
本発明の水性インクは、普通紙のみならず、光沢紙において画像を形成した場合でも、耐擦過性、耐水性、耐マーカー性に優れ、また、目詰まりがなく画像形成ができたことから、ノズルでの吐出安定性の良好な水性インクである。
Claims (4)
- 色材と樹脂と有機溶媒とを含む水性インクにおいて、前記色材が、表面にアニオン性の親水性基を持つ自己分散性カーボンブラックであり、該カーボンブラックの粒度分布をキュムラント法で解析して求めた多分散指数が0.2以下であり、前記樹脂が、水溶性ポリアミドポリ尿素系樹脂であることを特徴とする水性インク。
- 前記色材と前記樹脂との質量比率が、固形分比で1:0.01〜1:2である請求項1に記載の水性インク。
- 脱塩後の前記樹脂のpHが7〜10である請求項1または2に記載の水性インク。
- インクジェットプリンター用である請求項1〜3の何れか1項に記載の水性インク。
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