JP3908397B2 - 内燃エンジンのエンジンブレーキ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃エンジンの排気バルブの作動特性を制御して、ブレーキ力を得るエンジンブレーキ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種のエンジンブレーキ装置として、例えば実開平2−96406号公報には、ロッカーアームを介して作動される1対の排気バルブを設け、これら1対の排気バルブの一方をエンジンの圧縮行程の上死点近傍でストッハーアームによって僅かに開動作させるようにした装置が提案されている。
【0003】
前記公報記載の装置は、排気バルブの一方をエンジンの圧縮行程の上死点近傍でストッハーアームによって僅かに開動作させることにより、燃焼室内に吸入された気体の一部が排出され、圧縮行程に続く膨張行程において、燃焼室内の吸入気体の体積が減じられていることによってピストンに作用する力が減じられることにより、ブレーキ力が得られるものである。
【0004】
即ち、前記排気バルブの一方がエンジンの圧縮行程の上死点近傍で開動作しない場合には、圧縮行程に続く膨張行程において、燃焼室内に吸入されたすべての吸入気体の反力がピストンに作用して、クランクシャフトを正方向に回転させる力が与えられるのであるが、排気バルブの一方が僅かに開動作した場合には、燃焼室内に吸入された気体の一部が排出され、膨張行程においてピストンに作用してクランクシャフトを正方向に回転させる力が減じられるから、結果としてエンジンの回転にブレーキ力が与えられるのである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来例にあっては、1対の排気バルブを設け、これら1対の排気バルブをロッカアームで作動させる形式の動弁機構を備えたエンジンにのみ適用可能であって、排気バルブが1つの場合や、ロッカーアームを用いることなく回転カムで排気バルブを直接的に作動させる形式の所謂直動型の動弁機構を備えたエンジンへの適用については考慮されるところはない。
【0006】
本発明は前記従来の実情に鑑みて案出されたもので、直動型の動弁機構を備えた内燃エンジンへ有利に適用可能な、内燃エンジンのエンジンブレーキ装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明は、内燃エンジンの排気ポートを開閉し、常時閉止方向に付勢されている排気バルブと、前記排気バルブを開閉する排気リフト部とブレーキ力を発生させるために前記排気バルブを開閉するブレーキリフト部とを有するリフト部を備えた排気カムと、前記排気カムと前記排気バルブのバルブステムとの間に配置され、前記バルブステムの端部を収容するバルブシリンダと前記バルブシリンダ内に出没自在に収容されて前記バルブステムに接するプランジャと、前記プランジャを前記バルブシリンダ内に導かれる作動油によって出没させることによって前記バルブステムと前記排気カムとの間でその軸方向寸法を変化させるバルブリフタと、前記バルブシリンダへ開口する連通孔と前記連通孔の両端側に前記作動油を導入する導入孔と前記作動油を排出するドレン孔とがそれぞれ開口し、前記バルブシリンダの軸方向に対して略直交する方向に前記バルブリフタ内に形成されているバルブ穴と、前記導入孔が開口している油導入室と前記ドレン孔が開口しているドレン室とを区分けし、前記バルブ穴内に摺動自在に挿入されるバルブピストンと、前記バルブピストンに設けられた貫通孔が前記連通孔に臨む前記バルブピストンの所定位置で前記油導入室の前記作動油を前記バルブシリンダ内への移動を許容し、前記バルブシリンダから前記油導入室への移動を阻止する、前記バルブピストンの軸方向に移動可能に設けられたチェック弁と、前記バルブピストンを常時油導入室側に付勢する、前記ドレン室内に収容されてなるリターンスプリングとから構成され、前記バルブリフタの前記バルブシリンダ内への作動油の給排を制御する油圧制御手段とを備え、エンジンブレーキ力が必要なとき、前記油圧制御手段によって、前記バルブシリンダ内に前記作動油を供給して前記バルブリフタの軸方向寸法を伸長させ、前記バルブリフタを介して前記排気カムの前記排気リフト部と前記ブレーキリフト部とで前記排気バルブを開閉して、エンジンブレーキ力を発生させる構成にしてある。
【0010】
ここで、前記排気カムの排気リフト部及びブレーキリフト部は、それぞれ基準円から放射方向に所定寸法だけ突出して形成されており、ブレーキリフト部の突出寸法は排気リフト部の突出寸法よりも小さく形成してある。また、前記排気カムの排気リフト部はエンジンの排気行程で排気バルブを開操作可能であり、ブレーキリフト部はエンジンの圧縮行程の上死点近傍で排気バルブを開操作可能である。
【0011】
斯かる構成において、エンジンブレーキ力を必要とせず、前記バルブリフタのバルブシリンダ内に作動油が導かれない状態においては、排気バルブのバルブステムと排気カムとの間におけるバルブリフタの軸方向寸法は、最も短い寸法を有しており、このバルブリフタの排気カム側の端面は排気カムの排気リフト部のみに接触可能な状態にある。
【0012】
このため、前記排気バルブは、エンジンの排気行程において、排気カムの排気リフト部のみによってバルブリフタを介して開動作し、排気ポートを所定量開ける。
【0013】
この状態では、前記排気バルブは排気カムの排気リフト部によって開閉動作されるのみで、ブレーキリフト部はバルブリフタに接触せず、或いは接触してもブレーキリフト部のリフト量は専らバルブリフタの軸方向の短縮動作のために利用され、排気バルブを開動作させることはない。
【0014】
次に、エンジンブレーキ力が必要なとき、前記油圧制御手段によってバルブシリンダ内に作動油を供給してバルブリフタの軸方向寸法を伸長させる。前記バルブリフタの軸方向寸法の伸長は、バルブリフタの排気カム側の端部が排気カムの基準円に接するまで行われる。つまり、前記バルブリフタは排気バルブのバルブステムと排気カムとの間の間隔を充足することになる。
【0015】
このため、前記排気バルブは、エンジンの圧縮行程の上死点近傍において、排気カムのブレーキリフト部によってバルブリフタを介して開動作し、排気ポートを僅かに開ける。
【0016】
また、前記排気バルブは、エンジンの排気行程において、排気カムの排気リフト部によってバルブリフタを介して開動作し、排気ポートを所定量開ける。
【0017】
前記排気カムのブレーキリフト部が排気バルブを僅かに開動作することによって、エンジンの圧縮行程の上死点近傍において、燃焼室内に吸入された気体が筈かに排気ポートに釈放される。このため、圧縮行程に続く膨張行程において、燃焼室内の吸入気体の体積が減じられていることによってピストンに作用する力が減じられることにより、ブレーキ力が得られる。
【0018】
即ち、前記排気バルブがエンジンの圧縮行程の上死点近傍で開動作しない場合には、圧縮行程に続く膨張行程において、燃焼室内に吸入されたすべての吸入気体の反力がピストンに作用して、クランクシャフトを正方向に回転させる力が与えられるのであるが、排気バルブが僅かに開動作した場合には、燃焼室内に吸入された気体の一部が排出され、膨張行程においてピストンに作用してクランクシャフトを正方向に回転させる力が減じられるから、結果としてエンジンの回転にブレーキ力が与えられるのである。
【0019】
ここに、本発明の動弁機構は、前記排気バルブが、ロッカーアームを用いることなく、回転カムによってバルブリフタを介して直接的に作動される形式であるところの直動型の動弁機構である。
【0020】
したがって、直動型の動弁機構を備えた内燃エンジンへ有利に適用可能な、内燃エンジンのエンジンブレーキ装置が得られる。
【0021】
また、前記バルブピストンに、作動油の油導入室からバルブシリンダ内への移動を許容し、逆方向の移動を阻止するチェック弁が設けられているから、排気カムによって排気バルブが開動作する場合に、バルブピストンに設けたチェック弁が閉じることによってバルブシリンダ内には排気カムの操作力に応じた油圧反力が得られることになり、バルブシリンダ内には比較的低圧の作動油を導くことで足りる。
【0022】
即ち、ブレーキ力が必要で、前記バルブリフタのバルブシリンダ内に作動油が導入された状態において、排気カムによって排気バルブが開動作する場合には、バルブリフタには排気バルブを閉止方向に付勢するバルブスプリングのばね力と排気バルブの慣性力が作用するから、バルブシリンダ内の油圧力はそれらの力に対応する大きな油圧力を必要とすることになる。このため、前記バルブシリンダ内には圧力の高い作動油を必要とするところ、本発明においては、バルブシリンダ内に必要量(バルブリフタが伸長する量)の作動油を導くことにより、バルブピストンに設けたチェック弁の作用によってバルブシリンダ内には大きな油圧反力が得られることになるのである。
【0023】
また、前記バルブ穴が、バルブシリンダの軸方向に対して直交する方向に形成されているから、バルブリフタの軸方向寸法を可及的に短縮化することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて詳述する。
【0025】
図1は本発明の実施の形態を示す内燃エンジンのエンジンブレーキ装置の説明図、図2は図1の要部を拡大して示す図面、図3はバルブシリンダに作動油を導入した状態を示す図2と同様な図面、図4はバルブシリンダに作動油を供給した状態で、排気カムのブレーキリフト部によって排気バルブが開動作した状態を示す図1と同様な図面、図5はバルブシリンダに作動油を供給した状態で、排気カムの排気リフト部によって排気バルブが開動作した状態を示す図1と同様な図面である。
【0026】
図において、1は内燃エンジンのシリンダヘッドで、このシリンダヘッド1にはシリンダ室2に連通する排気ポート3が形成してある。
【0027】
4は前記排気ポート3を開閉可能な排気バルブである。前記排気バルブ4は、バルブステム5に固定したスプリングリテーナ6に一端が接するバルブスプリング7によって、常時排気ポート3を閉止する方向に付勢されている。なお、8は前記排気バルブ4の開閉動作を案内するブッシュである。
【0028】
10は図外のカムシャフトによって回転駆動される排気カムである。前記排気カム10は排気バルブ4を開操作可能な、排気リフト部11及びブレーキリフト部12との2つのリフト部を備えている。前記排気リフト部11及びブレーキリフト部12はそれぞれ排気カム10の基準円13から放射方向に所定寸法だけ突出して形成されており、ブレーキリフト部12の突出寸法は排気リフト部11の突出寸法よりも小さく形成してある。また、前記排気リフト部11はエンジンの排気行程で排気バルブ4を開操作可能であり、ブレーキリフト部12はエンジンの圧縮行程の上死点近傍で排気バルブ4を開操作可能である。
【0029】
15はバルブリフタで、このバルブリフタ15は前記排気カム10によって排気バルブ4を操作可能に、排気カム10と排気バルブ4のバルブステム5との間に配置されている。
【0030】
前記バルブリフタ15は、シリンダヘッド1に形成した収容孔16内に摺動自在に収容されたボディ17と、このボディ17に形成したバルブシリンダ18内に出没自在に収容されてバルブステム5に接するプランジャ19とを備えており、このプランジャ19をバルブシリンダ18内に導かれる作動油によって出没させることにより、バルブステム5と排気カム10との間でその軸方向寸法を変化可能である。
【0031】
即ち、前記収容孔16及びバルブシリンダ18はそれぞれバルブステム5の軸方向に形成され、それらの軸心は略同心に斉合配置してあり、バルブシリンダ18内に作動油を給排してボディ17とプランジャ19とが軸方向に相対移動することによって、バルブステム5と排気カム10との間でバルブリフタ15の軸方向寸法が変化可能となっている。
【0032】
前記プランジャ19は段付き状に形成されており、この段付き部がバルブシリンダ18の開口端側に設けた止め輪20当接することによってバルブシリンダ18内からの抜脱が防止されている。
【0033】
また、前記バルブリフタ15の排気カム10と接する側には、カムフォロアとしてのシム21が設けられている。前記シム21はバルブクリアランスを調整することが可能なように、厚さの異なる複数のシム21が準備され、選択して使用される。
【0034】
23は前記バルブリフタ15のバルブシリンダ18内への作動油の給排を制御する油圧制御手段である。前記油圧制御手段23はバルブリフタ15内に設けられており、バルブ穴24と、このバルブ穴24内に挿入されたバルブピストン25と、このバルブピストン25設けられたチェック弁26と、バルブピストン25を付勢するリターンスプリング27とを主要素として、次のように構成してある。
【0035】
即ち、前記バルブ穴24は、ボディ17に一端が封止された盲穴状に形成され、かつバルブシリンダ18の軸方向に対して略直交する方向に形成されており、その解放端は椀状のプラグ28によって封止されている。また、前記バルブ穴24には、軸方向の略中央位置にバルブシリンダ18への連通孔29が開口し、両端側に作動油の導入孔30とドレン孔31とがそれぞれ開口している。前記導入孔30はシリンダヘッド1に形成したオイルギャラリ32に連通しており、ドレン孔31はバルブリフタ15のボディ17の内部に大気解放している。
【0036】
前記バルブピストン25は、バルブ穴24内に摺動自在に挿入され、このバルブ穴24内を作動油の導入孔30が開口する油導入室33と、ドレン孔31が開口するドレン室34とに区画している。
【0037】
前記バルブピストン25は有底筒状のピストン本体35と、このピストン本体35の開口端を封止する板状の蓋体36とを有している。前記ピストン本体35には、その底部に軸方向の貫通孔37が形成され、胴部に半径方向の貫通孔38が形成してある。また、蓋体36はリターンスプリング27のばね受けとなっている。
【0038】
前記バルブピストン25はドレン室34内に収容されたリターンスプリング27によって常時油導入室33側に付勢されており、このバルブピストン25の油導入室33側への移動は、油導入室33内に設けた止め輪39によって制限されている。また、前記バルブピストン25のドレン室34側への移動は、ドレン室34内に形成した段部34aによって制限されている。前記バルブピストン25が段部34aに当接してドレン室34側への移動を停止する位置は、ピストン本体35の胴部に形成した貫通孔38が連通孔29に臨む位置となっている。
【0039】
前記チェック弁26はバルブピストン25の内部、詳しくはピストン本体35の筒状内部に収容されており、球弁41をリテーナ42に支持されたチェックスプリング41で押圧して、ピストン本体35に形成した貫通孔37の弁座に適合させた構成としてある。
【0040】
45は前記油圧制御手段23に作動油を導く油圧ユニットで、この油圧ユニット45は、作動油通路46を介してオイルギャラリ32に作動油を供給可能なポンプ47と、作動油通路油46の途中に設けられてポンプ47からの作動油を作動油通路46とドレン通路48とに切替え制御する切替え弁49及びドレン通路48に設けられたリリーフ弁50からなる弁ユニット51と、から構成してある。前記切替え弁49は制御装置52によって作動し、ポンプ47からの作動油を切替え制御するようになっており、この制御装置52にはアクセルペダルの踏み込み量などの車両の運転情報が入力されるようになっている。なお、53は貯油タンクである。
【0041】
斯かる構成において、エンジンブレーキ力を必要とせず、前記バルブリフタ15のバルブシリンダ18内に作動油が導かれない状態においては、排気バルブ4のバルブステム5と排気カム10との間におけるバルブリフタ15の軸方向寸法は、最も短い寸法を有しており、このバルブリフタ15の排気カム10側の端面(シム21)は排気カム10の排気リフト部11のみに接触可能な状態にある(図1及び図2参照)。
【0042】
即ち、エンジンブレーキ力を必要としない場合は、前記制御装置52が車両の運転状態の情報に基づいて切替え弁49を切替え制御して、ポンプ47からの作動油はリリーフ弁50を介してドレン通路48に導かれて貯油タンク53に還流するようになっている。このため、前記作動油圧通路46からオイルギャラリ32及び導入孔30を介してバルブ穴24の油導入室33に導かれる作動油の圧力はリリーフ弁50のリリーフ圧力に等しい小さな圧力であり、バルブピストン25はリターンスプリング27のばね力抗して移動することなく、また、チェック弁26は貫通孔37を開口することがない。また、前記バルブシリンダ18内は連通孔29、バルブ穴24のドレン室34、ドレン孔31を介してボディ17内に解放している。その結果、バルブシリンダ18内にはポンプ47からの高圧の作動油が供給されることがないから、バルブリフタ15はその軸方向寸法が最も短い状態となり、図1及び図2に示す状態にある。
【0043】
このため、前記排気バルブ4は、エンジンの排気行程において、排気カム10の排気リフト部11のみによってバルブリフタ15を介して開動作し、排気ポート3を所定量開ける。
【0044】
この状態では、前記排気バルブ4は排気カム10の排気リフト部11によって開閉動作されるのみで、ブレーキリフト部12はバルブリフタ15に接触せず、或いは接触しても、バルブシリンダ18内がドレン室34に解放しているから、ブレーキリフト部12のリフト量は専らバルブリフタ15の軸方向の短縮動作のために利用され、排気バルブ4を開動作させることはない。
【0045】
次に、エンジンブレーキ力が必要なとき、前記油圧制御手段23によってバルブシリンダ18内に作動油を供給してバルブリフタ15の軸方向寸法を伸長させる。
【0046】
即ち、エンジンブレーキ力を必要とする場合は、前記制御装置52が車両の運転状態の情報に基づいて切替え弁49を切替え制御して、ポンプ47からの作動油が作動油通路46からオイルギャラリ32に導かれ、導入孔30を介してバルブ穴24の油導入室33内に導かれる。これによって、前記バルブピストン25がリターンスプリング27のばね力に抗してドレン室34側に移動し、段部34aに当接してその移動を停止する。前記バルブピストン25がその移動を停止することによって、油導入室33内の油圧力はチェック弁26に作用するから、球弁41がチェックスプリング43のばね力に抗して移動し、貫通孔37を開口する。ここに、前記バルブピストン25が段部34aに当接して移動を停止する位置は、ピストン本体35の胴部に形成した貫通孔38が連通孔29に臨む位置となっているから、油導入孔33内の作動油は、貫通孔37及び貫通孔38を介し、更に連通孔29を介してバルブシリンダ18内に導入されることになる。その結果、前記バルブシリンダ18内にポンプ47からの高圧の作動油が導かれ、プランジャ19がバルブシリンダ18内から突出することによってバルブリフタ15の軸方向寸法が伸長するのである。
【0047】
前記バルブリフタ15の軸方向寸法の伸長は、バルブリフタ15の排気カム10側の端部(シム21)が排気カム10の基準円13に接するまで行われる。つまり、前記バルブリフタ15は排気バルブ4のバルブステム5と排気カム10との間の間隔を充足することになる(図3参照)。
【0048】
このため、前記排気バルブ4は、エンジンの圧縮行程の上死点近傍において、排気カム10のブレーキリフト部12によってバルブリフタ15を介して開動作し、排気ポート3を僅かに開ける(図4参照)。
【0049】
また、前記排気バルブ4は、エンジンの排気行程において、排気カム10の排気リフト部11によってバルブリフタ15を介して開動作し、排気ポート3を所定量開ける(図5参照)。
【0050】
前記排気カム10のブレーキリフト部12が排気バルブ4を僅かに開動作することによって、エンジンの圧縮行程の上死点近傍において、燃焼室(シリンダ室2)内に吸入された気体が筈かに排気ポート3に釈放される。このため、圧縮行程に続く膨張行程において、燃焼室(シリンダ室2)内の吸入気体の体積が減じられていることによって図外のピストンに作用する力が減じられることにより、ブレーキ力が得られる。
【0051】
即ち、前記排気バルブ4がエンジンの圧縮行程の上死点近傍で開動作しない場合には、圧縮行程に続く膨張行程において、燃焼室(シリンダ室2)内に吸入されたすべての吸入気体の反力がピストンに作用して、クランクシャフトを正方向に回転させる力が与えられるのであるが、排気バルブ4が僅かに開動作した場合には、燃焼室(シリンダ室2)内に吸入された気体の一部が排出され、膨張行程においてピストンに作用してクランクシャフトを正方向に回転させる力が減じられるから、結果としてエンジンの回転にブレーキ力が与えられるのである。
【0052】
ここに、本発明の動弁機構は、前記排気バルブ4が、ロッカーアームを用いることなく、回転カム(排気カム10)によってバルブリフタ15を介して直接的に作動される形式であるところの直動型の動弁機構である。
【0053】
したがって、直動型の動弁機構を備えたエンジンへ有利に適用可能な、内燃エンジンのエンジンブレーキ装置が得られる。
【0054】
また、前記バルブピストン25に、作動油の油導入室33からバルブシリンダ18内への移動を許容し、逆方向の移動を阻止するチェック弁26が設けられているから、排気カム10によって排気バルブ4が開動作する場合に、バルブピストン25に設けたチェック弁26が閉じることによってバルブシリンダ18内には排気カム10の操作力に応じた油圧反力が得られることになり、バルブシリンダ18内には比較的低圧の作動油を導くことで足りる。
【0055】
即ち、ブレーキ力が必要で、前記バルブリフタ15のバルブシリンダ18内に作動油が導入された状態において、排気カム10によって排気バルブ4が開動作する場合には、バルブリフタ15には排気バルブ4を閉止方向に付勢するバルブスプリング7のばね力と排気バルブ4の慣性力が作用するから、バルブシリンダ18内の油圧力はそれらの力に対応する大きな油圧力を必要とすることになる。このため、前記バルブシリンダ18内には圧力の高い作動油を必要とするところ、本発明においては、バルブシリンダ18内に必要量(バルブリフタ15が伸長する量)の作動油を導くことにより、バルブピストン25に設けたチェック弁26の作用によってバルブシリンダ18内には大きな油圧反力が得られることになるのである。
【0056】
また、前記バルブ穴24が、バルブシリンダ18の軸方向に対して直交する方向に形成されているから、バルブリフタ15の軸方向寸法を可及的に短縮化することができる。
【0057】
以上、実施の形態を図面に基づいて説明したが、具体的構成はこの実施の形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。例えば、前記切替え弁49を車両の運転状態が入力される制御装置52によって制御するようにしたが、運転者が操作可能な切替えスイッチ等によって切替え弁49を制御するようにしてもよい。
【0058】
また、前記バルブ穴24を一端が封止された盲穴状に形成して、解放端をフラグ28によって封止した態様について説明したが、両端を解放とし、これら両端をプラグによって封止する構成としてもよい。
【0059】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、直動型の動弁機構を備えた内燃エンジンへ有利に適用可能な、内燃エンジンのエンジンブレーキ装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示す内燃エンジンのエンジンブレーキ装置の説明図である。
【図2】図1の要部を拡大して示す図面である。
【図3】バルブシリンダに作動油を導入した状態を示す図2と同様な図面である。
【図4】バルブシリンダに作動油を供給した状態で、排気カムのブレーキリフト部によって排気バルブが開動作した状態を示す図1と同様な図面である。
【図5】バルブシリンダに作動油を供給した状態で、排気カムの排気リフト部によって排気バルブが開動作した状態を示す図1と同様な図面である。
【符号の説明】
3 排気ポート
4 排気バルブ
5 バルブステム
10 排気カム
11 排気リフト部
12 ブレーキリフト部
15 バルブリフタ
18 バルブシリンダ
19 プランジャ
23 油圧制御手段
Claims (1)
- 内燃エンジンの排気ポートを開閉し、常時閉止方向に付勢されている排気バルブと、
前記排気バルブを開閉する排気リフト部とブレーキ力を発生させるために前記排気バルブを開閉するブレーキリフト部とを有するリフト部を備えた排気カムと、
前記排気カムと前記排気バルブのバルブステムとの間に配置され、前記バルブステムの端部を収容するバルブシリンダと前記バルブシリンダ内に出没自在に収容されて前記バルブステムに接するプランジャと、
前記プランジャを前記バルブシリンダ内に導かれる作動油によって出没させることによって前記バルブステムと前記排気カムとの間でその軸方向寸法を変化させるバルブリフタと、
前記バルブシリンダへ開口する連通孔と前記連通孔の両端側に前記作動油を導入する導入孔と前記作動油を排出するドレン孔とがそれぞれ開口し、前記バルブシリンダの軸方向に対して略直交する方向に前記バルブリフタ内に形成されているバルブ穴と、
前記導入孔が開口している油導入室と前記ドレン孔が開口しているドレン室とを区分けし、前記バルブ穴内に摺動自在に挿入されるバルブピストンと、
前記バルブピストンに設けられた貫通孔が前記連通孔に臨む前記バルブピストンの所定位置で前記油導入室の前記作動油を前記バルブシリンダ内への移動を許容し、前記バルブシリンダから前記油導入室への移動を阻止する、前記バルブピストンの軸方向に移動可能に設けられたチェック弁と、
前記バルブピストンを常時油導入室側に付勢する、前記ドレン室内に収容されてなるリターンスプリングとから構成され、前記バルブリフタの前記バルブシリンダ内への作動油の給排を制御する油圧制御手段とを備え、
エンジンブレーキ力が必要なとき、前記油圧制御手段によって、前記バルブシリンダ内に前記作動油を供給して前記バルブリフタの軸方向寸法を伸長させ、前記バルブリフタを介して前記排気カムの前記排気リフト部と前記ブレーキリフト部とで前記排気バルブを開閉して、エンジンブレーキ力を発生させることを特徴とする内燃エンジンのエンジンブレーキ装置。
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