JP3905741B2 - 光学部材検査方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、レンズ等の光学部材の品質を検査するための画像検査装置における検査方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、レンズ等の光学部材(以下、被検物という)の品質を検査する画像検査装置が知られている。
【0003】
該画像検査装置を使用すると被検物は以下のように検査される。まず、画像検査装置は、光源からの光で照明された被検物をCCDカメラ等で撮影し、撮影された画像に所定の処理を施すことにより被検物に存在する不良要因を抽出し、その形状ごとに分類する。一般的に、不良要因の形状としては、ゴミやキズ、ケバ(糸くず)、汚れ等がある。また、画像検査装置によっては、撮影された被検物を複数のエリアで分割しており、不良要因を、該不良要因が発生した位置に対応するエリアごとに分類する。
【0004】
抽出された不良要因を形状やエリアによって分類すると、画像検査装置は、各不良要因を数値(品質点数)化する。そして画像検査装置は、各不良要因の合計点数によって、被検物の良否判定を行う。なお本明細書では、撮影された画像の任意の場所での明るさのことを輝度という。
【0005】
具体的には、CCDカメラ等によって撮影した画像、またはエリアごとに分割された画像を2値化し、さらにこの2値化画像をラベリングして不良要因を一つ一つ抽出したうえでこれらの不良要因の評価を行う。
【0006】
しかしながら、例えばレンチキュラーレンズのように、被検物の種類によっては特にゴミやキズ等がなくても撮影した画像に周期的な濃淡模様が現れる。このような濃淡模様は、そのレベルによっては2値化後も縞模様として残る場合があり、この縞模様を不良要因として評価してしまったり、或いは縞模様と二値化された不良要因とが重なり(例えばゴミを傷として評価してしまうといった)不良要因の評価ミスが発生する可能性がある。
【0007】
このような問題を解決するため、従来は2値化後の縞模様を抽出したうえで消去していた。従って、不良要因が濃淡模様と重なっているような場合は、その不良要因を評価できず、被検物を厳密に評価することができなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は上記の事情に鑑み、撮影した画像に周期的な濃淡模様が現れるような被検物に対しても不良要因の評価をより厳密に行うことが可能な光学部材検査方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
以上の目的を達成するため、本発明の光学部材検査方法は、周期的な濃淡模様が現れるような撮影画像を生成する画像生成ステップと、画像の濃淡模様の濃淡変化の方向と平行な分割線により画像を複数枚に分割する分割ステップと、分割ステップにて分割された画像のそれぞれについて濃淡模様の濃淡変化に垂直な方向の平均値を取って1次元のデータを生成する1次元化ステップと、1次元化ステップにて生成された1次元のデータを1次元スペクトル分布に変換する、スペクトル分布変換ステップと、1次元スペクトル分布から所定周波数以上の周波数帯に発生する卓越成分を除去するフィルタリングステップと、卓越成分が除去された1次元スペクトル分布から1次元のデータを復号する逆変換ステップとを有し、逆変換ステップにて復号された1次元のデータを用いて被検物の品質を評価する。
【0010】
周期的な濃淡模様は、スペクトル分布においては濃淡模様の周波数の整数倍のところに現れる急激なピークとなるため、このスペクトル分布から所定周波数以上の周波数帯に発生する卓越成分を除去したうえで逆変換することにより、周期的な濃淡模様のみ除去することができる。
【0011】
また、本発明によれば、1次元スペクトル分布の変換を分割された画像の枚数分行えばよいので、たとえば画像を直接2次元スペクトル分布に変換する場合と比べて処理時間を大幅に短縮することができる。
【0012】
なお、1次元スペクトル分布に変換する方法としては、フーリエ変換、離散コサイン変換、ウエーブレット変換等が考えられる。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の光源部材検査方法を使用する画像検査装置1の概略構成図である。画像検査装置1は、画像撮影部100と画像処理システム200とを有する。
【0014】
画像撮影部100は、CCDカメラ101、光源102、ホルダ104を有する。ホルダ104の上面は、被検物Sが載置されるテーブル部104aとして構成される。またホルダ104の下部は、画像撮影部100のステージ103の上面に形成されたレール103a上に設置され、レール103aに沿って水平方向に移動可能な駆動部104bとして構成されている。また、CCDカメラ101および光源102は、それぞれ画像撮影部100のフレーム部105に固定されている。CCDカメラ101は対物レンズユニット101aとCCD101bとを有する。光源102は、複数の光ファイバを有している。各光ファイバは、各々から射出された光は、被検物Sに斜めに入射するように、かつ射出端面が環状に並ぶように配設されている。
【0015】
画像処理システム200は、画像撮影部100より送信された画像データを処理して、後述する被検物Sの良否判定を行うプロセッサ201と、画像撮影部100より送信された画像データやプロセッサ201による画像処理結果等を表示可能なモニタ202とを有する。なお、本実施形態における「プロセッサ201による画像処理結果」には、二値化や細線化等の処理が行われた後の画像と、被検物Sが良品であるか不良品であるかどうかの判定結果等の画像計測結果との双方が含まれる。
【0016】
以上のように構成された画像検査装置1による、被検物Sの検査手順を図面を用いて説明する。図2は画像検査装置1による画像検査フローである。なお、画像検査装置1の起動時、ホルダ104は、図1中破線で示すように画像撮影部100のフレーム部105の外側の所定位置(供給位置)に位置している。
【0017】
画像検査装置1が起動すると、最初にS101が実行され、光源102が点灯する。次いでS103に進み、図示しない機構により被検物Sをホルダ104のテーブル部104a上に載置する。次いでS105に進む。
【0018】
S105では、画像検査装置1のコントローラはホルダ104の駆動部104bを制御して、供給位置にあるホルダ104を画像検査装置1のフレーム部105の中に向かって一定速度で移動させる。なお、ホルダ104の移動量は画像検査装置1のコントローラによってカウントされている。次いでS107に進む。
【0019】
ホルダ104に載置された被検物Sは、光源102からの光によって照明される領域を通過する。被検物Sは光を透過する透明な部材であるので、光源102からの光によって照明された被検物Sにゴミやキズ等がある場合はその傷や汚れのみが光を反射して明るく浮かび上がる。CCDカメラ101の対物レンズユニット101aによるこの被検物Sの像は、CCDカメラ101のCCD101bの受光面上で結像する。CCD101bの受光面は受光画素がホルダ104の移動方向と直交かつ水平に並んでおり、CCD101bはラインセンサとして機能する。従って、光源102によって被検物Sを照射しながらホルダ104を移動させることにより被検物Sの走査が行われる。
【0020】
S107では、この走査が終了したかどうかの判定が行われている。すなわち、ホルダ104の移動量が一定量に達したかどうかの判定が行われる。被検物Sの走査が終了したのであれば(S107:YES)、S109に進みホルダ104の動作を停止した上でS111に進む。一方、被検物Sの走査がまだ終了していないのであれば(S107:NO)、S107を引き続き実行する。すなわち、被検物Sの走査が終了するまで待機する。
【0021】
被検物Sを上記のように走査することによって得られる画像はモノクロ256階調のディジタル画像データとして画像処理システム200のプロセッサ201に送信される。
【0022】
S111では、プロセッサ201はこのディジタル画像データを処理して、被検物S上の不良要因を抽出し、品質点数化する。次いで、算出した品質点数の合計が許容範囲内であるかどうかの判定処理(以下、良否判定処理という)を行う。次いでS113に進む。本発明の光学部材検査方法は、S111で行われる良否判定処理に関するものである。この点については、後に詳述する。
【0023】
S113では画像検査装置1のコントローラはホルダ104の駆動部104bを制御してホルダ104を画像撮影部100のフレーム部105の外側、つまり供給位置に向かって反転移動させる。
【0024】
次いで図示しない機構により被検物Sをホルダ104のテーブル部104aから取りだし、プロセッサ201による判定結果をもとに被検物Sを所定の棚に収納する(S115)。すなわち、被検物Sが良品であると判定されれば(S115:OK)、被検物Sは良品棚に収納される(S117)。一方、被検物Sが不良品であると判定されれば(S115:NG)、被検物Sは不良品棚に収納される(S119)。
【0025】
以上が画像検査装置1および該装置を用いた被検物Sの検査手順の概説である。次に、本発明の実施形態である光学部材検査方法(すなわち図2のフローチャートにおけるステップS111の処理内容)について詳説する。
【0026】
図3は画像検査装置1によって取り込まれた被検物Sの画像の一例である。なお、以下に示す図中に例示される被検物Sの画像においては、図中左右方向をX軸(図中右向きを正とする)、上下方向をY軸(図中下向きを正とする)と定義している。また画像座標軸の原点は図中左上隅であり、画像における座標(m,n)の画素は「原点からm画素分右かつn画素分下の画素」を意味する。また、実際の画像においては不良要因は背景よりも明るく示されるが、図面の簡略化のため、明暗を逆転して不良要因を暗部として示している。
【0027】
図3中には不良要因F1、F2、F3が図示されている。F1は所定以上の面積を有するゴミ状の不良要因、F2は曲線として示されるケバ状の不良要因、F3は略直線として示されるキズ状の不良要因である。また画像の背景部BにはX軸方向に周期的な濃度変動する濃淡模様Aが発生している。なお、実際の濃淡模様は明部から暗部へ、また暗部から名部へと徐々に輝度が変動する濃淡模様である。
【0028】
不良要因F1、F2、F3の輝度に濃淡模様Aの輝度が加算されてしまうため、同じ不良要因であっても濃淡模様Aのどの部分と重なっているかによって輝度が変わってしまい、正確に評価をすることができない。従って、不良要因の評価を行うのに当たって、まずこのノイズ成分を除去する必要がある。
【0029】
なお、本発明の実施の形態においては、濃淡模様の濃淡の変化方向が水平(X軸方向)となるようにあらかじめ画像が撮影されているが、一旦画像を撮影した後に濃淡模様の濃淡の変化方向がX軸方向になるよう画像回転処理を行う構成としても良い。
【0030】
ノイズ成分除去ルーチンのフローチャートを図4に示す。本ルーチンが開始すると、最初にステップS301が実行される。ステップS301では、濃淡模様の濃淡の変化方向に平行な方向すなわちX軸方向に走る分割線D(図3)によって画像がY軸方向に分割される。なお、図3中には分割線Dは2本しか記載されていないが、実際は分割線Dは8画素毎の間隔で画像全体に定義されており、8画素ごとに画像を分割している。分割前の画像の大きさはX軸方向がM画素、Y軸方向がN画素となっているので、ステップS301によってX軸方向がM画素、Y軸方向が8画素の画像gd(x,y)が(N/8)枚生成される。なお、gd(m,n)は分割された画像の座標(m,n)の画素の輝度を示す(0≦m≦M−1,0≦n≦7)。次いでステップS302に進む。
【0031】
ステップS302では、ステップS301で分割された画像の一次元化が行われる。すなわち、分割後の画像gd(x,y)に対して、数1に基づいてY軸方向に平均化を行い、X軸方向がM画素、Y軸方向が1画素の画像gl(x)を求める(0≦x≦M−1)。次いで、ステップS303に進む。
【0032】
【数1】
【0033】
本実施形態においては、濃淡模様の濃淡の変化方向がX軸方向となっているので、一次元化された画像gl(x)にも濃淡模様が含まれる。例えば、図3の破線I−I近傍の分割された画像を一次元化すると、図5のように濃淡模様による正弦波状部に不良要因による高輝度部が加算されたgl(x)が得られる。
【0034】
ステップS303では、このgl(x)から濃淡模様による正弦波状部のみを除去するために、gl(x)をフーリエ変換する。フーリエ変換の演算式を数2に示す。なお、フーリエ変換の結果はを周波数領域の大きさがMとなるよう標本化された周波数kの関数Gl(k)で示す。
【0035】
【数2】
【0036】
さらに、スペクトル分布P(k)をGl(k)の実数成分R(k)と虚数成分I(k)より数3を用いて演算する。次いでステップS304に進む。
【0037】
【数3】
【0038】
なお、本実施形態においてはフーリエ変換を用いてスペクトル分析を行っているが1次元のスペクトル分布が得られるような他の変換手段を利用しても良い。このような変換手段としては、例えば離散コサイン変換やウエーブレット変換等がある。
【0039】
数3に示されるように、スペクトル分布P(k)は標本化された周波数kで表される。図6に示すように、本実施形態におけるノイズ成分はX軸に対して周期的な変動を持っている。このようなノイズ成分のスペクトル分布P(k)は、図6に示すように、このノイズ成分の周波数の整数倍のところにデルタ関数状の急激なピークPを有する。なお、本実施の形態においてはもともとのノイズ成分が正弦波上の濃淡変化であるため、ノイズ成分の周波数の1倍成分のみにピークが現れるようになっているが、濃淡変化が矩形波状などの他の形態の周期的な変動であれば、ノイズ成分の周波数のn倍成分にもピークPが発生する。なお、図6左端に発生しているピークは直流成分であり、ノイズ成分によるものではない。
【0040】
ノイズ成分のおおよその変動周期は既知であるため、ノイズ成分によるピークPが発生しうる周波数領域は既知である。そこで、ステップS304においては「ピークPが発生しうる空間周波数領域が含まれ、かつ不良要因自身による成分が含まれえない」空間周波数領域faを実験等によりあらかじめ求め、この空間周波数領域faに含まれるピーク成分の周波数を検出する。次いで、検出した周波数におけるGl(k)の値に0を代入し、Gl(k)に含まれるピーク成分Pを除去する。次いでステップS305に進み、ピーク成分除去後のGl(k)を数4を用いて逆フーリエ変換して一次元化画像gl(x)に戻すと、ノイズ成分のみが除去された一次元化画像gl(x)が得られる。次いでステップS306に進む。
【0041】
【数4】
【0042】
ステップS306では、ステップS301にて分割した全ての画像について、1次元スペクトル分布を利用したノイズ成分の除去が終了したかどうかの範囲を行っている。全ての画像について処理が終了したのであれば(S306:YES)、ステップS307に進み、未処理の画像が残っているのであれば(S306:NO)ステップS302に戻り、次の画像の処理を実施する。
【0043】
ステップS307では、ステップS302で分割され、ステップS302−305でノイズ成分を除去した各一次元画像をY軸方向に再結合し、X軸方向がM画素、Y軸方向がN/8画素の画像gf(x,y)を生成する。
【0044】
このようにしてノイズが除去された画像gf(x,y)に対して不良要因の評価が行われる。以下、図面を用いてその方法について説明する。図7は本実施形態による、不良要因評価ルーチンのフローチャートである。本ルーチンがスタートすると、最初にステップS201にて画像の2値化が行われる。なお、この2値化に当たっては経験則による閾値を一意に用いる、画像のヒストグラムから好適な閾値を演算する、或いは各座標につきその周囲の画素の輝度から動的に閾値を求める構成としても良い。
【0045】
次いでステップS202に進み、2値化画像のラベリングが行われる。この結果、各不良要因ごとにユニークなラベル番号が付与され、不良要因の総数Qが得られる。次いでステップS203に進む。
【0046】
ステップS203ではラベル番号がLである不良要因の評価が行われる。なお、変数Lの初期値は0である。具体的な評価手順については後述する。次いで、ステップS204に進む。
【0047】
ステップS204では、全ての不良要因について評価が行われたかどうかの判定が行われる。すなわち、L<Qが満足されているかどうかチェックされる。ここで、まだ全ての不良要因について評価が行われていないのであれば(S204:NO)ステップS205に進む。
【0048】
ステップS205では変数Lに1が加算され、ステップS203に戻る。
【0049】
一方、ステップS204において、全ての不良要因について評価が行われたと判断されたのであれば(S204:YES)、ステップS206に進む。ステップS206では各不良要因についてステップS203にて演算された評価値の合計値を演算し、この合計値を被検物Sの評価値とする。次いで本ルーチンを終了する。
【0050】
上記のステップS202にて抽出された不良要因の評価方法を以下に示す。不良要因はその特徴に応じて異なる評価基準に基づいて評価される。このような特徴としては、例えば不良要因の形状やその発生位置(エリア)といったものがある。特徴付けは、不良要因の形状およびエリアで特定される項目のいずれかに不良要因を分類し、各項目別に異なる評価点演算方法を用いて不良要因の評価点を求める。
【0051】
まず、不良要因の形状分類について詳説する。本実施形態は、不良要因を、所定の条件要素の大小によって、汚れ、ゴミ、キズ、ケバの四種類の特定形状に分類する。
【0052】
抽出された不良要因が、「ゴミまたは汚れ」または「キズまたはケバ」のいずれであるかは、該不良要因の円度の大小によって判断される。円度は、不良要因の面積を該不良要因の外接円の面積で除算することにより求められる。不良要因は、その円度が大きくなればなるほど円形状により近い形状になり、小さくなればなるほど線状により近くなる。そして本実施形態の検査方法では、円度に関する閾値Cを設定している。そして不良要因の円度C0が、閾値Cを上回れば該不良要因は「ゴミまたは汚れ」に分類され、閾値Cを下回れば該不良要因は「キズまたはケバ」に分類される。
【0053】
上記の手段によって不良要因が「ゴミまたは汚れ」に分類された場合、この不良要因がゴミ、汚れのいずれであるかは、該不良要因の面積の大小によって判断される。本実施形態の検査方法では、ゴミと汚れの分類の指標として、面積に関する閾値Hを設定する。そして不良要因の面積H0が、閾値Hを上回ればゴミに分類され、閾値Hを下回れば汚れに分類される。
【0054】
なお、一般に面積が閾値Hを下回りかつ円度が閾値Cを上回るような不良要因は所定距離内に集団形成されている場合が多い。一方、他の特定形状の不良要因が集団形成されているケースはごくまれである。本実施形態では、閾値Hを下回る面積の不良要因を汚れ要素として捉え、検出された該汚れ要素の重心から所定距離内に含まれる不良要因の数U0が所定値Uを上回る場合は該汚れ要素を「集合汚れ要素」と定義し、そうでない場合は該汚れ要素を「単独汚れ要素」と定義している。なお、単一汚れか集合汚れかについての判断はあくまでも特定形状である汚れに分類された不良要因(汚れ要素)に対してのみ行われるものであり、ゴミと判定された不良要因に関しては、単一汚れか集合汚れかについての判断は行わない。
【0055】
前述の手段によって不良要因が「キズまたはケバ」に分類された場合、抽出された不良要因が、キズ、ケバのいずれの形状であるかは、該不良要因の方向性のばらつきの大小によって判断される。不良要因の方向性は該不良要因を細線化した後にチェイン符号化処理して得られる、細線化後の各画素の方向ベクトルの分布から判断することができる。すなわち、例えばその不良要因は略一直線状である場合は、「上と右上と右」や「左上と左と左下」のように隣接する3ベクトルの全ベクトルに対する割合が(以下、直線度と称す)が極端に高くなる。例えば、左上−左−左下の間の90度の中のある方向に向かって走る一直線状の不良要因のベクトル分布を取ると、「左上と左と左下」のベクトルがほとんどとなる。一方、ケバのような曲線状の不良要因のベクトル分布は、直線度が低くなる。本実施形態の検査方法では、キズとケバの分類の指標としてこの直線度を使用し、ある不良要因の直線度R0が閾値Rよりも大きければ該不良要因はキズと判断され、小さければケバと判断される。
【0056】
不良要因は、上記形状のいずれかに分類されると、該分類結果に基づいて以下の式によって品質点数化される。
【0057】
所定の特定形状Tに分類された不良要因の品質点数PTは、数5によって求められる。
【0058】
【数5】
【0059】
ただし、
B0は、該不良要因の相対輝度、
NTEは、該不良要因の特定形状および重心の座標に応じて分類された、該不良要因に対するエリア重み付け係数をそれぞれ表す。
【0060】
ここで、不良要因の相対輝度とは、不良要因自身の平均輝度から不良要因近傍の平均輝度を減算した値である。
【0061】
また、重み付け係数NTEは、被検物Sの良否判定に与える影響の程度を示す値であり、特定形状および重心の座標に応じてにユーザが予め設定する。本実施形態においては、ケバが最も被検物Sの性能に影響を与えるとしてケバ、集合汚れ要素、単独汚れ要素、ゴミ、キズの順に係数NTEが小さくなるように設定されている。
【0062】
また、被検物Sの性能にとって重要な箇所における不良要因をより厳しく評価する必要があるため、同じ不良要因であっても位置に応じて重み付け係数NTEを変えている。本実施形態においては、被検物Sすなわち画像の中心部における係数NTEが最も大きくなるようにし、この中心部から離れるに従って係数NTEが小さくなるようにしている。
【0063】
本実施例で使用される重み付け係数NTEは、不良要因の形状TとそのエリアEに依存する。本実施形態の場合特定形状は5種類であり、また特定エリアは画像中心部、画像外縁部、そして該中心部と該外縁部の中間の中間部の3種類であるので、NTEは2次元配列N(T,E)として、表1に示す15種類が設定される。
【0064】
【表1】
【0065】
以上が本発明の実施形態である。本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく趣旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0066】
上記実施形態で説明した、不良要因の形状の種類は、あくまでも例示である。従って、汚れ、ゴミ、キズ、ケバの4種類以上の特定形状を設定してもよい。また、不良要因が分類されるエリアも、例示である。従って、中心部、中間部、外縁部の三種類以上の特定エリアを設定してもよく、また中心部以外の部分(例えば画像右上隅など)の重み付け係数が最も大きくなるような構成としても良い。形状やエリアの種類を上記実施形態よりも増やせば、それだけより緻密な品質点数化が行われ、精度の高い良否判定を行うことができる。また、形状やエリアの種類を上記実施形態よりも少なめに設定すれば、迅速な良否判定を行うことができる。
【0067】
また、不良要因の形状を特定せず、不良要因の画素数または明るさ(コントラスト)で良否判定を行う構成としても良い。すなわち、ステップS305で逆フーリエ変換された一次元化画像gl(x)の各画素について前後それぞれF画素の(すなわちgl(x−F)からgl(x+F)までの2F+1画素分の)移動平均値を取った平均1次元データgfm(x)を数6を用いて演算し、この平均1次元データgfm(x)とステップS305で逆フーリエ変換された一次元化画像gl(x)を比較して不良要因の抽出を行う。
【0068】
【数6】
【0069】
平均1次元データgfm(x)とステップS305で逆フーリエ変換された一次元化画像gl(x)とを比較して不良要因を抽出しその不良要因の面積を品質点数PTとして求める方法としては、数7を用いて一次元化画像gl(x)のそれぞれと平均1次元データgfm(x)との差分が所定の閾値b’を上回っているときはその画素を不良要因と判定してカウントアップする方法がある。
【0070】
【数7】
【0071】
または、不良要因の面積(画素数)に関係なく明るさ、すなわちgl(x)-gfm(x)が閾値c’を超えるかどうかで良否判定する方法がある。
【0072】
或いは、一次元化画像gl(x)のうち平均1次元データgfm(x)を上回っている各区間についてその各区間のgl(x)−gfm(x)の合算が閾値a’を超えている区間があるかどうかで良否判定する方法がある。このときの品質点数PTは、数8によって求められる。
【0073】
【数8】
【0074】
【発明の効果】
このように本発明の光学部材検査方法によれば、画像の濃淡模様の濃淡変化の方向に平行に画像を複数枚に分割し、分割された画像のそれぞれについて濃淡模様の濃淡変化に垂直な方向の平均値を取って1次元のデータを生成し、生成された1次元のデータをスペクトル分布に変換し、この1次元スペクトル分布からから不良要因ではない周期的な濃淡模様を抽出し、その濃淡模様を消去可能とすると共に、その濃淡模様と重なっている不良要因の画像は保持される。従って、周期的な濃淡模様が現れるような被検物に対しても不良要因の評価をより厳密に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光学部材検査方法を使用する画像検査装置の概略構成図である。
【図2】画像検査装置による画像検査に関するフローチャートである。
【図3】画像検査装置によって取り込まれた被検物の画像の一例である。
【図4】本発明の実施の形態のノイズ成分除去ルーチンのフローチャートである。
【図5】図3の破線I−I近傍の分割された画像を一次元化した画像のX軸を横軸に、輝度を縦軸にとったグラフである。
【図6】図5のグラフのスペクトル分布である。
【図7】本発明の実施の形態の不良要因評価ルーチンのフローチャートである。
【符号の説明】
1 画像検査装置
100 画像撮影部
101 CCDカメラ
102 光源
104 ホルダ
104a テーブル部
200 画像処理システム
Claims (12)
- 光学部材の品質を検査するための画像検査装置における光学部材検査方法であって、特に撮影した画像に周期的な濃淡模様が現れる被検物の品質を検査する方法であり、該光学部材検査方法が、
前記周期的な濃淡模様が現れるような撮影画像を生成する、画像生成ステップと、
前記画像の濃淡模様の濃淡変化の方向と平行な分割線により前記画像を複数枚に分割する、分割ステップと、
前記分割ステップにて分割された画像のそれぞれについて、濃淡模様の濃淡変化に垂直な方向の平均値を取って1次元のデータを生成する、1次元化ステップと、
前記1次元化ステップにて生成された1次元のデータを1次元スペクトル分布に変換する、スペクトル分布変換ステップと、
前記1次元スペクトル分布から、所定周波数以上の周波数帯に発生する卓越成分を除去するフィルタリングステップと、
前記卓越成分が除去された前記1次元スペクトル分布から1次元のデータを復号する、逆変換ステップと、
前記逆変換ステップにて復号された1次元のデータを用いて、所定の評価基準に基づいて前記被検物の品質を評価する、評価ステップと、を有し、
前記分割ステップは、前記画像に含まれる不良要因の寸法に比べて充分に小さい画素数ごとに前記画像を分割することを特徴とする、光学部材検査方法。 - 前記スペクトル分布変換ステップは、フーリエ変換により前記1次元のデータを1次元スペクトル分布に変換することを特徴とする、請求項1に記載の光学部材検査方法。
- 前記スペクトル分布変換ステップは、ウェーブレット変換により前記1次元のデータを1次元スペクトル分布に変換することを特徴とする、請求項1に記載の光学部材検査方法。
- 前記スペクトル分布変換ステップは、離散コサイン変換により前記画像を1次元のデータを1次元スペクトル分布に変換することを特徴とする、請求項1に記載の光学部材検査方法。
- 前記評価ステップは、前記分割ステップにて分割された画像の前記逆変換ステップにて復号された1次元のデータを濃淡模様の濃淡変化に垂直な方向に結合して2次元の画像にする、結合ステップと、
前記結合ステップにて生成された画像を2値化して2値化画像を生成する2値化ステップと、を有し、
前記評価ステップは前記2値化画像を用いて前記被検物の品質を評価することを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれかに記載の光学部材検査方法。 - 前記評価ステップは、前記2値化画像内の各連結成分のそれぞれにユニークなラベルを付与するするラベリングステップと、
前記ラベリングステップによってラベルが付与された各連結成分のそれぞれを不良要因と特定しこの不良要因毎の不良の度合いを示す品質点数を算出する、品質点数算出ステップと、
全ての不良要因の品質点数から前記光学部材の品質を示す品質評価値を算出する、品質評価値算出ステップと、を有することを特徴とする、請求項5に記載の光学部材検査方法。 - 前記評価ステップは、前記逆変換ステップにて復号された1次元のデータに一定以上の強度のピークが存在するかどうかで不良要因を検出することを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれかに記載の光学部材検査方法。
- 前記評価ステップは、前記逆変換ステップにて復号された1次元のデータを平均して得られた平均1次元データを演算する、平均データ生成ステップと、
前記逆変換ステップにて復号された1次元のデータと前記平均1次元データとの輝度の差分を演算する、輝度差分演算ステップと、を有し、
前記評価ステップは、前記1次元のデータと前記平均1次元データとの輝度の差分が所定値以上となる部分を前記一定以上の強度のピークと判断することを特徴とする、請求項7に記載の光学部材検査方法。 - 前記平均1次元データは、前記逆変換ステップにて復号された1次元のデータの各画素について前後それぞれ所定画素分の移動平均値をとることによって求められることを特徴とする、請求項8に記載の光学部材検査方法。
- 前記評価ステップは、前記逆変換ステップにて復号された1次元のデータに存在するピークの内、ある一定以上の面積をもつピークが存在するかどうかで不良要因を検出することを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれかに記載の光学部材検査方法。
- 前記評価ステップは、前記逆変換ステップにて復号された1次元のデータを平均して得られた平均1次元データを演算する、平均データ生成ステップと、
前記逆変換ステップにて復号された1次元のデータと前記平均1次元データとの輝度の差分を演算する、輝度差分演算ステップと、
前記輝度差分演算ステップの演算結果から、前記1次元のデータが前記平均1次元データよりも連続して大きくなる区間を抽出する、区間抽出ステップと、を有し、
前記評価ステップは、前記区間抽出ステップにて抽出された区間のうち、その区間の輝度の合計が所定値を超える区間を前記ある一定以上の面積をもつピークと判断することを特徴とする、請求項10に記載の光学部材検査方法。 - 前記平均1次元データは、前記逆変換ステップにて復号された1次元のデータの各画素について前後それぞれ所定画素分の移動平均値をとることによって求められることを特徴とする、請求項11に記載の光学部材検査方法。
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