JP3905639B2 - フジツボ第5接着蛋白質遺伝子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は水中や湿潤な環境で使用できる接着剤の原料となる蛋白質を組み換えDNA技術を用いて製造するために用いるDNAに関する。接着蛋白質をコードするDNAを組み込んだ組み換え体DNAを含む微生物や培養細胞を培養液中で培養し、該培養物中に蓄積される蛋白質は接着剤の原料や細胞培養の基質として広い用途で利用されることが期待される。
【0002】
【従来の技術】
乾燥条件下で強い接着力を示す接着剤は様々な種類のものが開発されている。そのうちの多くのものは一旦乾燥条件下で接着してしまえば湿潤環境におかれてもその強度を維持できる。しかし、湿潤な条件下や水中で接着を開始した場合、有効な強度に達することができる接着剤は存在しなかった。
フジツボは、セメントと呼ばれる蛋白質を主成分とする物質を基盤に分泌して、海水中で強く接着することができる。この蛋白質のアミノ酸組成は調べられており、一般的な不溶性の蛋白質とは異なることが示唆されていた(G.Walker,J.mar.biol.Ass.U.K.(1972)52,429-7435)。アカフジツボのセメントからは4つの接着蛋白質の遺伝子がクローニングされ、その構造が決定されているが、その他の蛋白質成分については未だわかっていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、遺伝子工学の手法を用いてセメント中に含まれる第5接着蛋白質を生産すべく、その生産のもととなる遺伝子を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、セメント中に含まれる第5接着蛋白質遺伝子の全配列を得るために、タテジマフジツボのセメントのグアニディン水溶液可溶性画分のSDS-PAGE上約40kDaの蛋白質を単離し、その部分アミノ酸配列をまず決定し、それをもとに第5接着蛋白質をコードするcDNAを単離することに成功し、さらにその塩基配列を決定して本発明を完成した。
即ち、本発明は、以下の(a) 又は(b) の蛋白質をコードする遺伝子である。
(a) 配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質
(b) 配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ接着性を有する蛋白質
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の遺伝子は、(a) 配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質、又は(b) 配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ接着性を有する蛋白質をコードする。ここで、欠失、置換若しくは付加は、本願の出願時において常用される技術、例えば、部位特異的変異誘発法(Nucleic Acids Res. 10, 6487-6500, 1982)により生じさせることができる。
【0006】
本発明遺伝子は、例えば、以下の手順で得ることができる。まず、フジツボの底殻より分泌されるセメントを集め6Mグアニディン塩酸/燐酸緩衝液(PH6)により可溶化される画分を遠心により集める。この可溶性画分を電気泳動にて分離し、分離された40kDa近辺の蛋白質を、そのままPVDF膜に電気的に転写した後、切り出し、プロテインシークエンサーによりアミノ末端からのアミノ酸配列を決定する。
また、電気泳動によって分離された上記の蛋白質をPVDF膜に電気的に転写した後、ポンソーS染色してから切り出し、脱色後PVP-40によるブロッキングを経て、適当なプロテアーゼにより断片化する。これを逆相HPLCによる分取後、プロテインシークエンサーによりアミノ酸配列を決定する。これにより内部のアミノ酸配列を決定することができる。
【0007】
一方、フジツボ全組織をチオシアン酸グアニディン等により可溶化し、フェノール/クロロホルムによる抽出を行い、イソプロパノールにより沈殿させることにより全RNAを得ることができる。全RNAを得る方法はこの方法に限定されるものではなく、LiCl沈殿法や塩化セシウム溶液に重層して遠心することによっても得られる。全RNAから、オリゴdTセルロースカラムを用いてポリアデニル酸鎖を有するRNA(ポリA-RNA)を調製する。このポリA-RNAを鋳型として逆転写酵素を用いて2本鎖DNAを調製する。この2本鎖DNAの合成はS1ヌクレアーゼ法やオカヤマーバーグ法により行ないえるが、市販のcDNA合成キットを用いて合成することも可能である。次いで、得られたcDNAを適当なベクターに挿入し、このベクターを適当な宿主に導入して増幅させると共に目的のDNAを持つクローンを選択する。ベクターはλファージ由来の各種ベクターたとえばλgt10やλZapII など、あるいはpBR322等のプラスミドベクターを用いることができる。目的クローンの選択には、第5接着蛋白質の部分アミノ酸配列の一部に相当するオリゴヌクレオチドを合成してプローブとして用い、これに強く結合するクローンを選択すればよい。配列の決定はサンガー法やマキサム−ギルバート法等の一般的な方法によって決定できる。以上の手順により翻訳開始コドンから終始コドン、さらにポリアデニル酸鎖付加シグナルを含む第5接着蛋白質cDNAの全長を単離することができる。
【0008】
また、第5接着蛋白質をコードするcDNAの全塩基配列は、配列番号1に示すように既に決定されているので、これを利用して本発明の遺伝子を得ることも可能である。例えば、配列番号1の5'末端側及び3'末端側の配列に基づき、プライマーを合成し、タテジマフジツボから調製されたDNA あるいはRNA を鋳型としてPCR を行うことによっても本発明の遺伝子を得ることができる。
なお、本発明の遺伝子を導入した大腸菌は、工業技術院生命工学工業技術研究所に受託番号FERM P-16823として寄託されている(寄託日:平成10年5月25日)。
単離した本発明の遺伝子は適当な発現ベクターに挿入し、微生物や培養細胞に導入して発現させることにより、当該ペプチドを大量調製することが可能である。
【0009】
【実施例】
〔実施例1〕 第5接着蛋白質の部分アミノ酸配列の決定
静岡県駿河湾岸で採取したタテジマフジツボの底殻より分泌されるセメントを集め、グアニディン塩酸水溶液(pH6)に懸濁し、可溶性画分を回収、SDS-電気泳動により分離後、0.1% SDS存在下でPVDF膜に電気的に転写し、CBBにより染色して第5接着蛋白質を得た。また、断片ペプチドを得るため、電気泳動によって分離されたセメント第5接着蛋白質をPVDF膜に電気的に転写した後、ポンソーS染色してから切り出し、脱色後PVP-40によるブロッキングを経て、リジン特異的プロテアーゼにより断片化し、逆相HPLCによりセメント第5接着蛋白質の断片ペプチドを分取した。それぞれプロテインシークエンサーにより、アミノ酸配列を決定した。
【0010】
〔実施例2〕 cDNAライブラリーの作製
静岡県駿河湾岸で採取した底殻直径1cmのタテジマフジツボ10個体をチオシアン酸グアニディン、クエン酸ナトリウム、N-ラウリルザルコシン酸ナトリウム、2−メルカプトエタノール等の溶液中で組織を機械的に破砕し、フェノール及びクロロホルムによる抽出を行なって、蛋白質などを除去した後、イソプロパノールを加えて沈殿させることにより全RNAを抽出し、オリゴdTセルロースカラムに導通してポリアデニル酸鎖を有するRNA(ポリA-RNA)を調製した。この操作により約2μgのポリA-RNAが得られた。次にこのポリA-RNAを鋳型として逆転写酵素を用いて2本鎖cDNAを調製した。この操作はアマシャム社のcDNA合成キットを用いて添付のプロトコールに従って行なった。次いで得られた2本鎖DNAにEcoRI −NotI−BamHI アダプターを付加し、ファージベクターλZapII に挿入した。この操作は、アマシャム社のcDNA合成システムを用いて添付のプロトコールに従って行なった。挿入の完了したファージベクターは同キットに添付のインビトロパッケージング溶液を用いて組み換えDNAをファージ内に封入させた。封入の完了した組み換えファージは、大腸菌XL-I blueに感染させ、増幅した。
【0011】
〔実施例3〕 第5接着蛋白質cDNAを含む組み換えファージの選択
実施例2で得られた組み換えファージを増幅させ、得られた5万個のプラークをナイロンメンブレン ハイボンドN(Amersham社)上に固定した。次いで、実施例1で決定したペプチド断片のアミノ酸配列に相当するオリゴヌクレオチドプローブCA(T,C)TT(T,C)GC(A,T,G,C)GG(A,T,G,C)AT(A,T,C)GA(T,C)(T,C)TをミリジェンサイクロンDNA合成機により合成し、α32P-ATPによる末端ラベルにより標識して、プラークハイブリダイゼーションを行なった。その結果、1万クローンより、プローブと結合する20個以上のプラークが得られた。これらのうち10個のプラークを任意に選び、挿入されているcDNAの長さをアガロース電気泳動により調べて、最も長い挿入断片を持つものについてファージベクターからEXASSIST system(Stratagene社)を用いてプラスミドベクターを切り出した。
【0012】
〔実施例4〕 第5接着蛋白質遺伝子の配列決定
実施例3で得られた挿入断片の配列をアプライドバイオシステムズ社製373A-DNAシーケンサー及びシーケンシングキットを用いて配列を決定した。その結果、この挿入断片が第5接着蛋白質の成熟体の全長を含む配列であることが判明した。得られた接着蛋白質遺伝子は配列番号1に示した通り、388 残基のアミノ酸配列をコードする全長1308bpの配列であり、最上流から16残基はシグナルペプチドにあたる。下流側の非翻訳領域にはポリアデニル酸鎖が存在した。
【0013】
【発明の効果】
本発明はフジツボ第5接着蛋白質遺伝子を提供する。本発明の遺伝子から作られる蛋白質は、接着剤の原料として極めて有用である。
【0014】
【配列表】
【0015】
Claims (1)
- 配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む蛋白質をコードする遺伝子。
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