JP3903490B2 - コバール封着用ガラス - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、コバール(=Westinghouse Ele.Corp.社の商標名でFe−Ni−Co系合金。本願においては、住友特殊金属社製KV−2、東芝社製KOVなど、他社の同等製品も含む。)封着用ガラスに関し、より具体的には、液晶表示素子等の照明装置の光源となる細径蛍光ランプのガラス管に使用されるコバール封着用ガラスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示素子は、光源の利用法によって自然光や室内照明の光を利用する反射型液晶表示素子と、専用の照明装置、例えばバックライトの光を用いる透過型液晶表示素子とに大別される。腕時計や、小型の電子卓上計算機等の特に低消費電力タイプのものには反射型液晶表示素子が用いられるが、TFT液晶表示素子等によるカラー表示や、車載用計器等の高品位な表示が要求される用途には、蛍光ランプを光源とするバックライトを用いた透過型液晶表示素子が主として使用されている。
【0003】
バックライト用蛍光ランプの発光原理は、一般の照明用蛍光ランプと同様で、電極間の放電によって封入された水銀ガス等が励起し、励起したガスから放射される紫外線によってガラス管の内壁面に塗られた蛍光体が可視光線を発光するというものである。しかし、一般用の蛍光ランプとの大きな違いは、ガラス管の径が細く、肉厚が薄いところにある。従来、この蛍光ランプのガラス管には、加工の容易さや照明用ガラスとしてのこれまでの実績から鉛ソーダ系の軟質ガラスが使用され、導入金属としては安価なジュメットが使われていた。
【0004】
ところが液晶表示素子の薄型化、軽量化、低消費電力化に伴い、バックライト用の蛍光ランプにもより一層の細径化、薄肉化が要求されているが、蛍光ランプの細径化は構造的に機械的強度の低下やランプの発熱の増加を伴うため、ガラス管にはより高強度、且つ低膨張であることが必要となる。また発光効率の向上のために点灯回路の高周波化が進められ、これに伴って絶縁体であるガラス管には低誘電損失化も求められている。このため、従来の鉛ソーダ系の軟質ガラス材質ではこれらの要求を満足させることができなくなってきている。
【0005】
そこで、鉛ソーダ系の軟質ガラスよりも熱的、機械的に強度が高く、低誘電損失の点でも有利なホウケイ酸系の硬質ガラスを用いて蛍光ランプを作製することが検討された。その結果、気密封止可能な硬質ガラスと金属の組合せとして、従来より知られているコバール封着用ガラスとコバール金属を用いた蛍光ランプが開発され、商品化されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記したバックライト用蛍光ランプのガラス管は、従来からある電子管やフォトキャップ等の電子部品の気密封止やレンズとして一般に使われているホウケイ酸系のコバール封着用ガラス材質をそのまま使用し、これを単に細管状に成形、加工したものであるため、励起された水銀ガス等から放出される紫外線によってガラスが変色(いわゆる、紫外線ソラリゼーション)してしまう。ガラスが変色すると、輝度の低下や発光色のずれが起こり、液晶表示素子に表示の暗さや演色性の劣化といった品質の劣化を与えることになる。
【0007】
この対策として、ガラス管内面に紫外線を反射又は吸収する成分であるAl2 O3 やTiO2 のコーティングを行い、その上に蛍光体を塗布して多層膜を形成し、ガラスに達する紫外線の強度を弱めるといった方法が一部では実施されているが、この方法においては、生産コストの上昇を伴うばかりか、より細径化が進むにつれて均質な多層膜を形成することが困難になる。このような事情から、蛍光ランプ用ガラス管として使用可能な耐紫外線ソラリゼーション性を持ったコバール封着用ガラスの開発が強く求められている。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、コバールと封着可能であり、しかも十分な耐紫外線ソラリゼーション性を有するため、液晶表示素子用照明装置の光源等に用いられる細径蛍光ランプ用ガラス管として好適なコバール封着用ガラスを提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明のコバール封着用ガラスは、重量百分率で、SiO2 55〜73%(但し73%を除く)、B2 O3 15.2〜25%、Al2 O3 1〜10%、Li2 O+Na2O+K2 O 4〜16%、ZrO2 0.01〜5%、TiO 2 を必須成分としてTiO2 +PbO+Sb2O3 0.05〜11%の組成を有し、30〜380℃の温度範囲における線膨張係数が43〜55×10-7/℃であることを特徴とする。
【0010】
また本発明のコバール封着用ガラスは、蛍光ランプ用ガラス管として使用されることを特徴とする。
【0011】
【作用】
本発明のコバール封着用ガラスを構成する各成分の含有量を上記のように限定した理由は以下の通りである。
【0012】
SiO2 は、ガラスの骨格を構成するために必要な主成分であり、その含有量は55〜73%(但し73%は除く)、好ましくは61〜72%である。SiO2が73%より多いと線膨張係数が低くなりすぎると共に溶解性が悪化し、55%より少ないと化学的耐久性が悪化し、これによってガラス表面にヤケ等が生じた場合には蛍光ランプの輝度低下の原因になる。
【0013】
B2 O3 は溶解性の向上や粘度の調整のために必要な成分であり、その含有量は15.2〜25%、好ましくは16〜24%である。B2 O3 が25%より多いと粘度が下がり過ぎたり、蒸発によって均質なガラスが得られなくなったり、化学的耐久性が悪化するといった問題が発生し、15.2%より少ないと溶解が困難になり、且つ、コバール封着用としては粘度が高くなりすぎる。
【0014】
Al2 O3 は、ガラスの安定性を向上するのに著しい効果があり、その含有量は1〜10%、好ましくは1〜4.9%である。Al2 O3 が10%より多いとガラスの溶解が困難になり、1%より少ないと、ガラスが失透し易くなり、均質なガラスの製造や安定した成形が困難になる。
【0015】
アルカリ金属酸化物であるLi2 O、Na2 O、及びK2 Oはガラスの溶解を容易にし、膨張係数や粘度を調節するために添加する成分であり、その含有量は合量で4〜16%、好ましくは5.1〜13%である。これら成分の合量が16%以上では膨張係数が高くなりすぎ、また粘度が下がり過ぎてコバール封着には適さず、且つ化学的耐久性の大幅な低下を招き、4%未満では逆に膨張係数が小さくなり過ぎる。なお各成分の含有量は、Li2 O 0〜4%(好ましくは0〜3%)、Na2 O 0〜4.5%(好ましくは0〜3.9%)、K2 O 0〜15%(好ましくは0〜13%)の範囲が好適である。Li2 Oが4%より多いと失透性が悪化し易くなるとともに熱膨張係数が高くなり過ぎ、Na2 Oが4.5%より多いと蛍光ランプ製造時の熱工程においてNaイオンが蛍光体を汚染し、輝度の低下を引き起こしたり、熱膨張係数が高くなり過ぎる可能性がある。K2 Oが15%を越えると熱膨張係数が高くなり過ぎることがある。
【0016】
ZrO2 は化学的耐久性を向上させる成分であり、その含有量は0.01〜5%、好ましくは0.1〜3%である。ZrO2 が5%より多いと失透性が悪化してガラスが不均一になり、寸法精度が悪くなったり、外観上の欠陥が生じ、高品質のガラスが得られない。一方、0.01%より少ないと化学耐久性が悪化する。このため蛍光ランプ用ガラス管として使用すると、アルカリ吹きが起こって蛍光体を均一に塗布できなかったり、ヤケ等の問題が生じる。
【0017】
TiO2 、PbO及びSb2 O3 は何れもガラスに高い耐紫外線ソラリゼーション性を付与する成分であり、その合量は0.05〜11%、好ましくは0.1〜5.5%である。これら成分の合量が11%を越えるとガラスの失透や蒸発等の影響が強くなり、均質で寸法精度の良い管状ガラスが得難くなる。一方、0.05%未満の場合はその効果が殆どない。なおTiO2 を必須成分として含む場合、各成分の含有量は、TiO2 0.05〜5%(好ましくは0.1〜3%)、PbO 0〜10%(好ましくは0〜5.5%)、Sb2 O3 0〜4%(好ましくは0〜1%)である。PbOを必須成分として含む場合、各成分の含有量は、TiO2 0〜5%(好ましくは0〜2%)、PbO 0.05〜10%(好ましくは0.1〜5.5%)、Sb2 O3 0〜4%(好ましくは0〜1%)である。またSb2 O3 を必須成分として含む場合、各成分の含有量は、TiO2 0〜5%(好ましくは0〜2%)、PbO 0〜10%(好ましくは0〜5.5%)、Sb2 O3 0.1〜4%(好ましくは0.2〜1%)の範囲が好適である。なお何れの場合もTiO2 が所定量を越えるとガラス自身が着色し易くなり、また失透性も急激に悪化するため透明で均質なガラスが得難くなる。PbOが所定量を越えるとTiO2 と同様にガラス自身が着色し易くなり、また溶融時に蒸発して均質なガラスが得難くなるとともに環境上好ましくない。Sb2 O3 が所定量を越えると均質なガラスを得ることが難しくなる。またPbOやSb2 O3 がガラス中に過剰に含有されていると、蛍光ランプの製造工程における熱加工によってガラスが茶色や黒色に着色してしまい、外観品位が劣化する。しかも蛍光ランプに使用する場合は、有効発光部分に着色が生じると輝度の低下に直接つながるため好ましくない。
【0018】
さらに上記ホウケイ酸ガラスは、ガラスの粘度の調整や耐候性、溶解性、清澄性を改善する目的で、SrO、BaO、CaO、MgO、ZnO、P2 O5 、As2 O3 、SO3 、F2 、Cl2 等の成分を適量添加することが可能である。
【0019】
また本発明において、30〜380℃の温度範囲における線膨張係数を43〜55×10-7/℃に限定した理由は、線膨張係数がこの範囲から外れるとコバール金属の膨張係数との不整合により、スローリークやクラックが発生し、蛍光ランプとしての機能が損なわれるためである。
【0020】
【実施例】
次に本発明のコバール封着用ガラスを実施例に基づいて説明する。
【0021】
表1乃至表4は本発明の実施例(試料No.1〜8、16及び18)参考例(試料No.9〜15及び17)及び比較例(試料No.19)を示している。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】
【表3】
【0025】
【表4】
【0026】
表に示したNo.1〜19の各試料は、次のようにして調製した。
【0027】
まず表に示す組成となるようにガラス原料を調合した後、白金坩堝を用いて1550℃で5時間溶解した。溶解後、融液を所定の形状に成形、加工して各ガラス試料を作製し、それらの30〜380℃の温度範囲における線膨張係数、及び紫外線照射前後の分光透過率を測定し、各特性を表に示した。
【0028】
表から明らかなように、本発明の実施例であるNo.1〜8、16及び18の各試料は、線膨張係数が45.4〜54.6×10-7/℃であり、コバールのそれと近似しており、また紫外線照射による透過率の低下が1.0%以下と殆どないため、高い耐紫外線ソラリゼーション性を有していることが理解できる。
【0029】
それに対し比較例であるNo.19の試料は、線膨張係数はコバールと封着可能である43〜55×10-7/℃の範囲内にはあるが、TiO2 、PbO、Sb2 O3 を何れも全く含有していないため紫外線照射による透過率の低下が7%以上と大きく、耐紫外線ソラリゼーション性が非常に低かった。
【0030】
なお表中の線膨張係数は、ガラスを直径約3mm、長さ約50mmの円柱に加工した後に、自記示差熱膨張計で、30〜380℃の温度範囲における平均線膨張係数を測定したものである。
【0031】
耐紫外線ソラリゼーション性は次のようにして評価した。まず厚さ1mmの板状ガラスの両面を鏡面研磨して試料を得た。次いで紫外線照射前の試料の透過率が80%を示す光の波長を測定した。さらにその試料に40Wの低圧水銀ランプによって主波長253.7nmの紫外線を60分間照射した後、照射前に透過率80%を示した波長における透過率を改めて測定することによって、紫外線照射による透過率の低下を求めた。この時、耐紫外線ソラリゼーション性の劣るガラスほどこの透過率低下が大きくなるが、液晶バックライト等の蛍光ランプ用ガラス管としては、この低下が殆どないことが重要である。
【0032】
【発明の効果】
以上のように本発明のコバール封着用ガラスは、コバール金属との封着に適した43〜55×10-7/℃の線熱膨張係数を有し、しかも優れた耐紫外線ソラリゼーション性を有するため、蛍光ランプ用ガラス管、特に液晶表示素子用照明装置の光源となる細径蛍光ランプのガラス管用材質として好適である。
【0033】
また本発明のコバール封着用ガラスを用いて作製した液晶表示素子用照明装置の細径蛍光ランプ用ガラス管は、耐紫外線ソラリゼーション性が高いため、ガラスの変色に起因する液晶表示素子の品質の劣化を防止することができる。
Claims (22)
- 蛍光ランプ用ガラス管として使用されるコバール封着用ガラスであって、重量百分率で、SiO2 55〜73%(但し73%を除く)、B2 O3 15.2〜25%、Al2O3 1〜10%、Li2 O+Na2 O+K2 O 4〜16%、ZrO20.01〜5%、TiO 2 を必須成分としてTiO2 +PbO+Sb2 O30.05〜11%含有し、30〜380℃の温度範囲における線膨張係数が43〜55×10-7/℃であることを特徴とするコバール封着用ガラス。
- 重量百分率で、SiO2 61〜72%、B2 O3 16〜24%、Al2O3 1〜4.9%、Li2 O+Na2 O+K2 O 5.1〜13%、ZrO20.1〜3%、TiO2 +PbO+Sb2 O3 0.1〜5.5%含有することを特徴とする請求項1のコバール封着用ガラス。
- Li2Oの含有量が0〜4重量%、Na2Oの含有量が0〜4.5重量%、K2Oの含有量が0〜15重量%であることを特徴とする請求項1のコバール封着用ガラス。
- TiO2 が0.05〜5%、PbOが0〜10%、Sb2 O3 が0〜4%であることを特徴とする請求項1のコバール封着用ガラス。
- PbOが0.05〜10%、Sb2 O3 が0〜4%であることを特徴とする請求項1のコバール封着用ガラス。
- PbOが0〜10%、Sb2 O3 が0.1〜4%であることを特徴とする請求項1のコバール封着用ガラス。
- 重量百分率で、SiO2 62.8〜70.9%、B2 O3 16.0〜21.7%、Al2O3 1.3〜8.6%、Li2 O 0〜3.1%、Na2 O 0〜3.2%、K2O 2.6〜11.0%、Li2 O+Na2 O+K2 O 5.7〜11.0%、ZrO20.01〜1.0%、TiO2 0〜5.0%、PbO 0〜5.0%、Sb2O3 0〜0.5%、TiO2 +PbO+Sb2O3 0.1〜5.5%含有することを特徴とする請求項1のコバール封着用ガラス。
- さらにSrO、BaO、CaO、MgO、ZnO、P2 O5 、As2 O3、SO3 、F2 、Cl2 から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項1のコバール封着用ガラス。
- BaOの含有量が0〜2.4重量%であることを特徴とする請求項8のコバール封着用ガラス。
- 紫外線照射による透過率の低下量が1%以下であることを特徴とする請求項1のコバール封着用ガラス。
- 重量百分率で、SiO2 55〜73%(但し73%を除く)、B2O3 15.2〜25%、Al2 O3 1〜10%、Li2 O+Na2O+K2 O 4〜16%、ZrO2 0.01〜5%、TiO 2 を必須成分としてTiO2+PbO+Sb2 O3 0.05〜11%含有し、30〜380℃の温度範囲における線膨張係数が43〜55×10-7/℃であるガラスからなることを特徴とする蛍光ランプ用ガラス管。
- 重量百分率で、SiO2 61〜72%、B2 O3 16〜24%、Al2O3 1〜4.9%、Li2 O+Na2 O+K2 O 5.1〜13%、ZrO20.1〜3%、TiO2 +PbO+Sb2 O3 0.1〜5.5%含有するガラスからなることを特徴とする請求項11の蛍光ランプ用ガラス管。
- Li2Oの含有量が0〜4重量%、Na2Oの含有量が0〜4.5重量%、K2Oの含有量が0〜15重量%であるガラスからなることを特徴とする請求項11の蛍光ランプ用ガラス管。
- TiO2 が0.05〜5%、PbOが0〜10%、Sb2 O3 が0〜4%であるガラスからなることを特徴とする請求項11の蛍光ランプ用ガラス管。
- PbOが0.05〜10%、Sb2 O3 が0〜4%であるガラスからなることを特徴とする請求項11の蛍光ランプ用ガラス管。
- PbOが0〜10%、Sb2 O3 が0.1〜4%であるガラスからなることを特徴とする請求項11の蛍光ランプ用ガラス管。
- 重量百分率で、SiO2 62.8〜70.9%、B2 O3 16.0〜21.7%、Al2O3 1.3〜8.6%、Li2 O 0〜3.1%、Na2 O 0〜3.2%、K2O 2.6〜11.0%、Li2 O+Na2 O+K2 O 5.7〜11.0%、ZrO20.01〜1.0%、TiO2 0〜5.0%、PbO 0〜5.0%、Sb2O3 0〜0.5%、TiO2 +PbO+Sb2O3 0.1〜5.5%含有するガラスからなることを特徴とする請求項11の蛍光ランプ用ガラス管。
- さらにSrO、BaO、CaO、MgO、ZnO、P2 O5 、As2 O3、SO3 、F2 、Cl2 から選ばれる1種以上を含有するガラスからなることを特徴とする請求項11の蛍光ランプ用ガラス管。
- BaOの含有量が0〜2.4重量%であるガラスからなることを特徴とする請求項18の蛍光ランプ用ガラス管。
- 紫外線照射による透過率の低下量が1%以下であるガラスからなることを特徴とする請求項11の蛍光ランプ用ガラス管。
- 導入金属がコバールである蛍光ランプに用いられることを特徴とする請求項11の蛍光ランプ用ガラス管。
- 液晶バックライトの光源となる蛍光ランプに用いられることを特徴とする請求項11の蛍光ランプ用ガラス管。
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