JP3899354B2 - 免震建物 - Google Patents
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特許文献1に記載された免震建物は、地盤に貫入した支持杭、この支持杭頭部に固定された基礎フーチング、および基礎フーチング同士を連結する基礎梁からなる建物基礎と、基礎フーチング上に固定された免震装置と、この免震装置上に固定された建物本体とを備えて構成されている。そして、逆梁とされた基礎梁下端位置に形成された基礎スラブと建物本体の最下階の床スラブとの間には、免震ピット(空間)が形成されており、地震時に地盤と建物本体との間に水平方向に相対変位が生じても建物本体が地盤にぶつかることなく、免震装置がせん断変形することで免震効果が得られるようになっている。
また、基礎フーチング下面位置および基礎スラブ下面位置まで地盤を掘削する必要があることから、掘削深さが深くなって排土量が多くなり、残土処理のための手間とコストが増大するという問題もある。
また、鋼管杭の杭頭部同士が連結部材で連結されているので、地震による水平力を受けた場合でも、複数の鋼管杭がばらばらに水平変位することなく同一方向に変位するので、複数の鋼管杭全体で水平力に抵抗することができ、耐震性を確保することができる。この際、連結部材としては、杭頭の変位を同一にできるものであればよいため、従来の基礎梁のように大きな梁成は必要なく、例えば、鉄筋コンクリート製の基礎スラブで構成されたものでもよく、また鉄骨製の梁やブレース等で構成されたものでもよい。
また、杭頭部にアンカー部材を挿入した状態でコンクリートを注入するとともに、このコンクリートをベースプレート下面まで充填することによって、アンカー部材およびコンクリートを介してベースプレートが鋼管杭に一体化され、免震装置からベースプレートに作用する建物本体の鉛直荷重および水平荷重を適切に鋼管杭まで伝達することができる。この際、コンクリートを鋼管杭の全長に渡って注入する必要はなく、アンカー部材との付着強度および鋼管杭内周面との付着強度が確保できる程度の量(高さ寸法)だけ注入されていればよい。
なお、隙間の寸法としては、30〜100mmとすることが望ましいが、隙間寸法が小さい程、固定部材と鋼管杭との一体性が高まることから、隙間寸法を30〜60mmとすることがより望ましい。
また、PC鋼線に導入した張力により柱同士および大梁同士が緊結されるとともに、柱主筋および梁主筋が柱梁接合部の現場打ちコンクリート内に定着される、または柱と大梁とがPC鋼線の張力で互いに圧着(摩擦接合)されていることで、建物本体の強度や剛性を高めることができる。そして、建物本体の剛性を高めることでより大きな免震効果を得ることができる。
以上のように、鋼管杭の杭頭に固定した免震装置と、プレキャスト(PCa)鉄筋コンクリート製の柱および大梁をPC鋼線の張力により緊結するPCaPC構造の建物本体とを組み合わせたことで、建物全体の施工に係る工期短縮およびコスト低減をより一層促進させることができる。
このような構成によれば、前述と同様の効果を有した免震倉庫を構築することができる。この際、倉庫は、一般的に柱スパンや階高が規格化されていることが多く、前述のようなPCaPC構造を採用すれば、工期短縮やコスト低減の効果を十分に得ることができる。
図1は、本発明の実施形態に係る免震建物1の基準階を示す見上げの平面図である。図2は、免震建物1を示す断面図である。図3は、免震建物1の基礎部分を示す断面図である。
図1〜図3において、免震建物1は、建物本体である上部構造10と、この上部構造10の荷重を地盤2に伝達して支持する建物基礎20と、この建物基礎20に固定され上部構造10を支持する免震装置30とを備えて構成された免震倉庫である。上部構造10には、各階に渡って車両が昇降するためのスロープ(斜路)3が2箇所に併設されており、これらのスロープ3と上部構造10とは連結され、スロープ3の下側にも免震装置30が設けられている。
鋼管杭21は、回転圧入工法により地盤2に貫入されるものであり、上部構造10の規模や地盤2の条件に応じて杭径が設定(400〜1000mm)されている。基礎スラブ22は、上部構造10の下方略全面に設けられ、掘削した地盤2上に砕石や捨てコンを施した上に形成されるもので、200〜400mmの厚さ寸法を有している。そして、基礎スラブ22は、鋼管杭21の杭頭部側面に溶接固定されたスタッドボルト21Aにより鋼管杭21と連結されており、これにより、複数の鋼管杭21の杭頭部同士が連結されている。すなわち、基礎スラブ22によって本発明の連結部材が構成されている。
免震アイソレータ31は、鉛直方向には高い剛性を有して上部構造10の鉛直荷重を鋼管杭21に伝達するとともに、水平方向の剛性が小さいゴムシートのせん断変形により、地震による上部構造10と地盤2との水平方向の相対変位(水平変位)に追従できるようになっている。
鋼材ダンパー32は、全体略U字形の鋼材で形成され、上部構造10と地盤2との水平変位によって鋼材が塑性変形することで履歴減衰を生じさせ、地震エネルギを吸収して上部構造10の揺れを低減させるものである。
固定部材33は、免震装置30における免震アイソレータ31の下側フランジ31Bが固定されるベースプレート33Aと、このベースプレート33A下面に固定されたアンカー部材であるアンカーボルト33Bとを有して構成されている。そして、固定部材33は、鋼管杭21の杭頭部にアンカーボルト33Bを挿入した状態で、杭頭部に注入されて硬化したコンクリート35(後述)により鋼管杭21に一体化されている。
定着板34は、免震アイソレータ31の上側フランジ31Aに固定される定着板本体34Aと、この定着板本体34Aの上面に突設された複数の定着金物であるスタッドボルト34Bとを有して構成され、スタッドボルト34Bがフーチング13のコンクリート中に定着されてフーチング13と一体化されている。
図4は、免震装置30と鋼管杭21および上部構造10との固定方法を示す断面図である。
先ず、地盤2に貫入した鋼管杭21の杭頭部に固定部材33のアンカーボルト33Bを挿入するとともに、ベースプレート33Aの上面を水平方向および鉛直方向の所定位置に位置決めして、固定部材33を仮固定する。この際、ベースプレート33A下面と杭頭上面との間には、隙間Sが形成されており、この隙間Sは、鋼管杭21の施工状態に応じて30〜100mmとなるように設定されている。
次に、ベースプレート33Aの略中央に設けられた注入孔33Cから鋼管杭21内部へコンクリート35を注入する。この際、鋼管杭21の内部には、コンクリート35が杭頭から所定の高さ位置まで充填されるようにコンクリート止め等が設けられるとともに、コンクリート35と鋼管杭21の内周面との付着力を高めるためのズレ止め板21Bが設けられている。そして、コンクリート35をベースプレート33A下面まで充填することで、隙間Sがコンクリートで埋められ、硬化したコンクリート35により鋼管杭21と固定部材33とを一体化させる。
その後に、定着板34のスタッドボルト34Bをフーチング13内部に挿入した状態で、フーチング13の配筋工事、型枠工事およびコンクリート打設を行い、定着板34とフーチング13とを一体化させる。
以上により、鋼管杭21と免震装置30とが固定され、免震装置30と上部構造10のフーチング13とが固定されることになる。
図5は、上部構造10における柱11および大梁12の構築方法を示す断面図である。
柱11および大梁12は、プレキャスト(PCa)鉄筋コンクリート製であって、予めPC工場等で製造されて建設現場に搬入される。そして、柱11には、柱主筋11Aが内部に配設(配筋)されており、この柱主筋11Aは、柱11の上端部から突出されている。また、柱11の内部には、長手方向に沿って鞘管(シース)11Bが配設されており、この鞘管11B内にPC鋼線11Cが挿通されるようになっている。柱11と同様に、大梁12には、梁主筋12Aが内部に配設(配筋)されており、この梁主筋12Aは、大梁12の長手方向両端部から突出され、大梁12の内部には、PC鋼線12Cが挿通される鞘管12Bが配設されている。
これらの柱11および大梁12は、現場打ちコンクリート製の柱梁接合部17を介して一体化されるようになっている。
次に、隣接する柱11同士に渡って柱11上の端縁に大梁12を載置し、このような複数の大梁12同士の間に小梁15および床スラブ16のデッキプレートを架設した上で、床スラブ16のコンクリートを打設するとともに、柱梁接合部17にコンクリートを打設する。これにより、柱11および大梁12の端部から突出した柱主筋11Aおよび梁主筋12Aが柱梁接合部17のコンクリート内に定着される。
以上のようにして、最下階の柱11、その上階の大梁12、柱梁接合部17、小梁15、および床スラブ16が一体に形成される。
これに続いて、上下階の柱11に渡って鞘管11B中に挿通されたPC鋼線11Cを上階から緊張して定着させ、各階の柱11にプレストレスを導入して柱11同士を互いに緊結する。また、複数スパンに渡って大梁12の鞘管12B中にPC鋼線12Cを挿通するとともに、このPC鋼線12Cを端部から緊張して定着させ、複数スパンの大梁12にプレストレスを導入して大梁12同士を互いに緊結する。
以上により、上部構造10の構築が完了し、免震建物1の主要構造部分の施工が完了する。
(1)すなわち、免震装置30を鋼管杭21の杭頭部上に固定し、この免震装置30上に上部構造10を固定したことで、従来の基礎梁や基礎フーチングに要する施工手間や地盤の掘削量を削減することができ、建物基礎20の施工に係る工期短縮およびコスト低減を実現することができる。
例えば、前記各実施形態においては、免震建物1の用途が倉庫の場合について説明したが、本発明の免震建物は倉庫に限らず、工場や事務所ビル、住宅、劇場等、任意の用途の建物に適用することができる。さらに、建物の規模や高さなども特に限定されない。
また、上部構造30の構造種別や構造形式は、PCaPC構造の鉄筋コンクリート造ラーメンに限定されるものではなく、鉄骨造や鉄骨鉄筋コンクリート造等の任意の構造種別が選択可能であり、壁式構造等の任意の構造形式が選択可能である。
また、前記実施形態では、ベースプレート33Aおよびアンカーボルト33Bを有した固定部材33を用いて免震装置30を鋼管杭21に固定したが、これに限らず、鋼管杭21の杭頭部に直接、免震装置30の下側フランジ31Bを固定するようにしてもよい。この際、杭の施工誤差を補正するための手段を別途付加すればよい。
さらに、固定部材33と鋼管杭21との固定方法は、コンクリート35を注入する方法に限らず、固定部材33のベースプレート33Aを杭頭部に溶接してもよく、ボルト等の固定手段を用いて固定してもよい。
さらに、前記実施形態では、地下を有していない免震建物について説明したが、本発明
の免震建物は、地下を有して構成されていてもよい。この際、建物本体が地下部分および地上部分を有して構成されるとともに、この建物本体の地下部分における最下階の大梁が免震装置に直接支持されるような構成となる。
図6は、本発明の変形例に係る免震建物1Aを示す断面図である。
免震建物1Aは、前記実施形態と同様の上部構造10における最下階の大梁14の下側に免震装置30が固定され、この免震装置30は、鋼管杭21の杭頭部上に固定されている。そして、免震装置30よりも下側の鋼管杭21で囲まれた地盤2が掘削されて、地下階20Aが構築されている。この地下階20Aは、隣り合う鋼管杭21の杭頭部分を連結する地中梁23と、この地中梁23に支持された床スラブ24とによって、免震ピットと上下に区画されている。すなわち、地中梁23および床スラブ24によって、連結部材が構成されている。そして、地下階20Aには、建物外周の鋼管杭21を連結して設けられた地下外壁25と、鋼管杭21の所定の深さ位置に架設された梁26および床スラブ27とで地下空間が形成されている。
また、このような免震建物1Aの構築方法としては、逆打ち工法が好適である。この逆打ち工法とは、先ず鋼管杭21を地盤2に打ち込んでから、杭頭部に地中梁23および床スラブ24を構築し、その後に、免震装置30のセットおよび上部構造10の構築を行う工程と平行して、地盤2の掘削、地下外壁25、梁26および床スラブ27構築を行う施工方法である。このような逆打ち工法により免震建物1Aを構築すれば、地下階20Aを設けて建物の床面積を拡大したとしても、工事にかかる全体工期が長期化することなく、本発明の目的を実現することができる。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
Claims (5)
- 建物本体と、この建物本体の荷重を地盤に伝達して支持する建物基礎と、この建物基礎に固定され前記建物本体を支持する免震装置とを備えた免震建物であって、
前記建物基礎は、地盤に貫入された複数の鋼管杭と、これら複数の鋼管杭の杭頭部同士を連結する連結部材とを有して構成され、前記鋼管杭の杭頭部上に前記免震装置が固定され、この免震装置上に前記建物本体の最下階の大梁が直接固定され、
前記免震装置は、前記鋼管杭の杭頭部に設置された固定部材を介して当該鋼管杭に固定されており、
前記固定部材は、前記免震装置が固定されるベースプレートと、このベースプレート下面に固定されたアンカー部材とを有して構成され、
前記鋼管杭の杭頭部に前記アンカー部材を挿入し、かつ前記ベースプレートを位置決めした状態で、前記杭頭部にコンクリートを注入して前記ベースプレート下面まで充填することで、硬化したコンクリートにより前記鋼管杭と前記固定部材とが一体化されることを特徴とする免震建物。 - 請求項1に記載の免震建物において、
前記ベースプレートは、当該ベースプレート下面と前記杭頭上面との間に30〜100mmの隙間を有した状態で位置決めされ、この隙間に前記コンクリートが充填されていることを特徴とする免震建物。 - 請求項1または請求項2に記載の免震建物において、
前記建物本体は、プレキャスト鉄筋コンクリート製の柱および大梁を有して構成され、これらの柱および大梁は、現場打ちコンクリート製の柱梁接合部を介して一体化されており、
前記柱および大梁の内部に配設された柱主筋および梁主筋は、それぞれ当該柱および大梁の端部から突出して前記柱梁接合部の現場打ちコンクリート内に定着され、
前記柱には、上下階に渡ってPC鋼線が配設され、前記大梁には、複数スパンに渡ってPC鋼線が配設され、これらのPC鋼線にポストテンションにより張力を導入することで、当該複数階の柱および複数スパンの大梁が互いに緊結されていることを特徴とする免震建物。 - 請求項1または請求項2に記載の免震建物において、
前記建物本体は、プレキャスト鉄筋コンクリート製の柱および大梁を有して構成され、これらの柱および/または大梁には、PC鋼線が配設され、このPC鋼線にポストテンションにより張力を導入することで、当該柱と大梁とが互いに圧着されていることを特徴とする免震建物。 - 請求項1から請求項4のいずれかに記載の免震建物において、
前記建物本体は、複数の階数を有した倉庫であることを特徴とする免震建物。
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