JP3896903B2 - 車両用空調装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、暖房時に圧縮機吐出ガス冷媒(ホットガス)を室内熱交換器(蒸発器)に直接導入することにより、室内熱交換器をガス冷媒の放熱器として使用するホットガス暖房機能を発揮する車両用空調装置において、特に、暖房モード時に室内熱交換器で凝縮水が蒸発して窓ガラスが曇ることを防止するシステムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両用空調装置では冬期暖房時に温水(エンジン冷却水)を暖房用熱交換器に循環させ、この暖房用熱交換器にて温水を熱源として空調空気を加熱するようにしている。この場合、温水温度が低いときには車室内への吹出空気温度が低下して必要な暖房能力が得られない場合がある。
【0003】
そこで、特開平5−272817号公報等において、ホットガスヒータサイクルにより暖房機能を発揮できる車両用空調装置が提案されている。この従来装置では、エンジン始動時のごとく温水温度が所定温度より低いときには、圧縮機吐出ガス冷媒(ホットガス)を凝縮器をバイパスして室内熱交換器(蒸発器)に導入して、室内熱交換器でガス冷媒から空調空気に放熱することにより、補助暖房機能を発揮できるようにしている。すなわち、上記の従来装置おいては、空調ケース内に設置された1個の室内熱交換器を冷房モード時の冷却器および暖房モード時の放熱器として切替使用している。
【0004】
ところで、車両用空調装置では冬期暖房時に汚染外気の導入防止のため内気モードを設定する場合がある。この場合は、窓ガラスの曇り止めのために、室内熱交換器の冷却、除湿作用を発揮する必要が生じるので、外気温が0°Cに低下するまで、冷凍サイクルを冷房モードで使用することがある。
【0005】
従って、外気温=0°C付近において、窓ガラスの曇り止めのために、冷凍サイクルを冷房モードで運転させた後に、暖房能力の向上のために冷凍サイクルをホットガスヒータサイクル(暖房モード)に切り替える場合が生じる。また、冷凍サイクルの前回の冷房モード運転後、冷凍サイクルを一旦停止し、その後、冷凍サイクルを今度はホットガスヒータサイクル(暖房モード)で起動する場合がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような場合には、冷凍サイクルの冷房モード時に発生した凝縮水が室内熱交換器の表面に残存しているので、冷凍サイクルを暖房モードで起動すると、室内熱交換器が冷媒ガスの放熱器として作用し、室内熱交換器の温度が急上昇する。このため、室内熱交換器表面の凝縮水が蒸発して高湿度の空気が車室内へ吹き出して、車両窓ガラスが曇るという不具合が発生する。
【0007】
また、冷房モードの運転により室内熱交換器で一度発生した凝縮水は冬期の低外気温時では蒸発しにくく、長期間残存することがあるので、冷房モードから暖房モードへの切替直後でなくても、冷凍サイクルの暖房モードの起動により車両窓ガラスの曇りを発生させることがある。
【0008】
そこで、本発明者らは、先に、特開2000−219034号公報においてホットガス暖房機能を発揮する車両用空調装置において、暖房モード時に室内熱交換器で凝縮水が蒸発して窓ガラスが曇ることを防止することを目的とした発明を提案している。
【0009】
この従来技術では、窓ガラスの温度や窓ガラス付近の室内空気湿度に関連する物理量を検出し、この物理量に基づいて窓ガラスが曇る状態か否かを判定し、窓ガラスが曇る状態であると判定されたときは、室内熱交換器の温度、具体的には室内熱交換器の吹出空気温度を抑制するように冷凍サイクルを制御し、これにより、室内熱交換器での凝縮水の蒸発を抑え、窓ガラスの曇りを防止するようにしている。
【0010】
ところで、車両用空調装置において空調機能を自動制御するオートエアコン方式のものでは、冬期暖房時におけるエンジン水温の低温時に、冷風が車室内へ吹き出すことを防止するためのウォームアップ制御を採用している。このウォームアップ制御では、空調用送風機を作動させるブロワスイッチ(あるいは空調の自動制御を始動するオートスイッチ)が投入されていても、エンジン水温が所定温度(例えば、30℃程度)に上昇するまでは空調用送風機を停止状態に維持し、そして、エンジン水温が所定温度に上昇した後に、空調用送風機を低風量(Lo)状態にて始動し、その後、エンジン水温の上昇に応じて空調用送風機の回転数、すなわち、風量を徐々に増加させる制御を行っている。
【0011】
上記のウォームアップ制御において、空調用送風機を停止状態に維持する期間に、冷凍サイクルをホットガス暖房モードにて起動し、ホットガスヒータサイクルを作動させると、室内熱交換器に空気が送風されないので、圧縮機吐出ガス冷媒(ホットガス)の放熱により室内熱交換器の温度が急上昇する。それに伴って、室内熱交換器の吹出直後に配置される温度センサの温度が空調用送風機の作動時に比較して高温に上昇するので、ホットガス暖房モードの作動を正常通り制御できない。
【0012】
なお、上記説明は、オートエアコン方式のものにおけるウォームアップ制御の場合について説明したが、マニュアル操作式の空調装置において、エンジン水温が所定温度に上昇するまでの間、乗員の判断によりブロワスイッチをオフ状態にして空調用送風機を停止状態に維持する場合にも、室内熱交換器吹出直後の温度センサの温度が高温に上昇してホットガス暖房モードの作動を正常通り制御できない。
【0013】
この結果、特開2000−219034号公報記載の従来技術では、空調用送風機の停止時(エンジン水温の低温時)にホットガス暖房モードの作動を停止せざるを得ない。従って、ホットガス暖房モードの作動→車両エンジンの圧縮機駆動負荷の増加→エンジン水温の上昇促進という効果を発揮できない。
【0014】
本発明は上記点に鑑みてなされたもので、空調用送風機の停止時にも、車両窓ガラスの曇り防止効果を確保しながらホットガス暖房モードを作動できるようにすることを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、室内熱交換器(18)を蒸発器として作動させる冷房用冷凍サイクル(C)と、室内熱交換器(18)を放熱器として作動させるホットガスヒータサイクル(H)とを切替可能に構成し、
室内熱交換器(18)を車室内へ向かって空気が流れる空調ケース(22)内に配置するとともに、空調ケース(22)内へ空気を送風する空調用送風機(23)を備え、
冷房用冷凍サイクル(C)により室内熱交換器(18)で冷却された空気を車室内へ吹き出すことにより冷房モードを実行し、また、ホットガスヒータサイクル(H)により室内熱交換器(18)で加熱された空気を車室内へ吹き出すことにより暖房モードを実行するようになっており、
暖房モードの設定時に、空調用送風機(23)が停止しているときは、室内熱交換器(18)における保水量の有無を判定し、保水量がないときは暖房モードを作動状態とし、保水量があるときは暖房モードを停止状態とすることを特徴とする。
【0016】
これによると、ホットガスヒータサイクル(H)による暖房モードの設定時に空調用送風機(23)が停止していても、室内熱交換器(18)の保水量があるときは暖房モードを停止状態とし、保水量がないときだけ暖房モードを作動状態としている。
【0017】
空調用送風機(23)の停止時には室内熱交換器(18)への通風がないので、室内熱交換器(18)の吹出空気温度が送風機作動時に比較して大幅に上昇する。しかし、室内熱交換器(18)の保水量がないときはホットガス暖房モードの作動により車両窓ガラスの曇りが発生しないから、暖房能力を曇り防止のために制限する必要がない。このため、送風機(23)停止時に保水量がないときは、室内熱交換器(18)の吹出空気温度に基づく能力制御なしでホットガス暖房モードの作動を継続できる。これにより、車両エンジンの圧縮機駆動負荷の増加→エンジン水温の上昇促進を図って、温水式暖房装置の暖房能力の立ち上がりを促進できる。
【0018】
また、空調用送風機(23)の停止時に室内熱交換器(18)の保水量があるときは暖房モードを停止するから、車両窓ガラスの曇りが発生する恐れはない。
【0019】
請求項2に記載の発明では、請求項1において、暖房モードの設定時に、空調用送風機(23)が作動しているときは、室内熱交換器(18)における保水量の有無を判定し、保水量がないときは暖房モードを作動状態とし、保水量があるときは空調ケース(22)からの吹出空気が車両窓ガラスにより冷却されても露点に到達しない範囲に室内熱交換器(18)の吹出空気温度を制御することを特徴とする。
【0020】
これによると、空調用送風機の作動時に保水量があると判定されたときは、空調ケース(22)からの吹出空気が車両窓ガラスにより冷却されても露点に到達しない範囲に室内熱交換器(18)の吹出空気温度を制御するから、送風機作動時における車両窓ガラスの曇り防止効果を確実に発揮できる。
【0021】
しかも、室内熱交換器(18)における保水量の有無を直接判定し、暖房モード時に保水量があると判定されたときに、室内熱交換器(18)の吹出空気温度を抑制する制御を行って、室内熱交換器(18)に保水量がない場合は室内熱交換器(18)の吹出空気温度の抑制制御を行わない。その結果、防曇制御の必要ないときにも室内熱交換器(18)の吹出空気温度を抑制することが無くなり、ホットガス暖房モードの暖房能力を有効に発揮できる。
【0022】
請求項3に記載の発明のように、請求項2において、圧縮機(10)の吐出能力を制御することにより室内熱交換器(18)の吹出空気温度を制御すればよい。ここで、圧縮機(10)の吐出能力は、より具体的には圧縮機作動の断続制御、圧縮機吐出容量の可変制御、圧縮機回転数の可変制御等により制御することができる。
【0023】
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つにおいて、少なくとも、冷房モード時における室内熱交換器(18)での凝縮水量と、暖房モード時における室内熱交換器(18)での凝縮水の蒸発量と、圧縮機(10)が停止状態にある放置時における空調ケース(22)の排水口(22a)からの凝縮水の排水量とに基づいて保水量を算出することを特徴とする。
【0024】
これにより、冷房モード時の凝縮水量から暖房モード時の蒸発量と放置時の排水量を減算することにより、保水量を正確に算出できる。
【0025】
請求項5に記載の発明のように、請求項1ないし3のいずれか1つにおいて、少なくとも、冷房モードの作動停止後の経過時間に基づいて保水量を算出すれば、室内熱交換器(18)での保水量有無の判定を簡易的に行うことができる。
【0026】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0027】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
図1は第1実施形態による車両用空調装置の全体構成を例示している。圧縮機10は、電磁クラッチ11を介して水冷式の車両エンジン12により駆動されるもので、例えば、固定容量型の斜板型圧縮機から構成される。
【0028】
圧縮機10の吐出側は冷房用電磁弁13を介して凝縮器14に接続され、この凝縮器14の出口側は冷媒の気液を分離して液冷媒を溜める受液器15に接続される。凝縮器14は圧縮機10等とともに車両エンジンルームに配置され、電動式の冷却ファン14aにより送風される外気(冷却空気)と熱交換する室外熱交換器である。
【0029】
そして、受液器15の出口側は冷房用減圧装置をなす温度式膨張弁16に接続されている。この温度式膨張弁16の出口側は逆止弁17を介して蒸発器18に接続されている。蒸発器18の出口側はアキュームレータ19を介して圧縮機10の吸入側に接続されている。
【0030】
上記した圧縮機10の吐出側から冷房用電磁弁13→凝縮器14→受液器15→温度式膨張弁16→逆止弁17→蒸発器18→アキュームレータ19を経て圧縮機10の吸入側に戻る閉回路により通常の冷房用冷凍サイクルCが構成される。
【0031】
温度式膨張弁16は周知のごとく通常の冷凍サイクル運転時(冷房モード時)に蒸発器18出口冷媒の過熱度が所定値に維持されるように弁開度(冷媒流量)を調整するものである。アキュームレータ19は冷媒の気液を分離して液冷媒を溜め、ガス冷媒および底部付近の少量の液冷媒(オイルが溶け込んでいる)を圧縮機10側へ吸入させる。
【0032】
一方、圧縮機10の吐出側と蒸発器18の入口側との間に、凝縮器14等をバイパスするホットガスバイパス通路20が設けてあり、このバイパス通路20には暖房用電磁弁21および絞り21aが直列に設けてある。この絞り21aは暖房用減圧装置をなすものであり、オリフィス、キャピラリチューブ等の固定絞りで構成することができる。圧縮機10の吐出側から暖房用電磁弁21→絞り21a→蒸発器18→アキュームレータ19を経て圧縮機10の吸入側に戻る閉回路により暖房用のホットガスヒータサイクルHが構成される。
【0033】
車両用空調装置の空調ケース22は車室内へ向かって空気が流れる空気通路を構成するもので、この空調ケース22内を電動式の空調用送風機23により空気が送風される。空調用送風機23は、図示の簡略化のために軸流式で示しているが、実際は遠心式ファンを持つ遠心式送風機である。
【0034】
この空調用送風機23は送風機駆動回路により制御されるブロワモータ23aにより回転駆動される。なお、本実施形態の送風機23の送風量は、ブロワモータ23aに印加するブロワ制御電圧を調整することにより、連続的または段階的に切り替え可能になっている。
【0035】
また、空調用送風機23の吸入側には、車室外空気(以下外気と言う)を吸い込むための外気吸込口70、車室内空気(以下内気と言う)を吸い込むための内気吸込口71、および内外気切替ドア72が設けられている。なお、内外気切替ドア72は内外気切替手段を構成するものであり、図示しないリンク機構を介してサーボモータ等のアクチュエータにより駆動されて、外気吸込口70から外気を吸い込む外気モードと内気吸込口71から内気を吸い込む内気モードとを少なくとも切り替える。
【0036】
蒸発器18は空調ケース22内に設置される室内熱交換器であって、冷房モード時には冷房用冷凍サイクルCにより冷媒が循環して、蒸発器18での冷媒蒸発(吸熱)により空調用送風機23の送風空気が冷却される。また、暖房モード時には、蒸発器18はホットガスバイパス通路20からの高温冷媒ガス(ホットガス)が流入して空気を加熱するので、放熱器としての役割を果たす。
【0037】
なお、空調ケース22において蒸発器18の下方部位には、蒸発器18で発生する凝縮水を排水する排水口22aが設けられ、この排水口22aに接続される図示しない排水パイプを通して凝縮水は車室外へ排水される。
【0038】
空調ケース22内において蒸発器18の空気下流側には、車両エンジン12からの温水(エンジン冷却水)を熱源として送風空気を加熱する温水式の暖房用熱交換器24が設置されている。この暖房用熱交換器24への温水回路には温水流れを制御する温水弁25が備えられている。
【0039】
ところで、温水式の暖房用熱交換器24は、車室内の暖房のための主暖房手段をなすものであり、これに対して、ホットガスヒータサイクルHによる放熱器をなす蒸発器(室内熱交換器)18は補助暖房手段を構成する。
【0040】
一方、空調ケース22の最も空気下流側には、車両フロント窓ガラスの内面に向けて空調風(主に温風)を吹き出すためのデフロスタ(DEF)吹出口31と、車両乗員の顔部(上半身)に向けて空調風(主に冷風)を吹き出すためのフェイス(FACE)吹出口32と、車両乗員の足元部(下半身)に向けて空調風(主に温風)を吹き出すためのフット(FOOT)吹出口33が設けられている。
【0041】
更に、これらの各吹出口31〜33を選択的に開閉する複数個のモード切替ドア34〜36が回動可能に設けられている。なお、このモード切替ドア34〜36は吹出モード切替手段を構成するものであって、図示しないリンク機構を介してサーボモータ等のアクチュエータにより駆動される。
【0042】
空調用電子制御装置(以下ECUという)26は、マイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、予め設定されたプログラムに従って所定の演算処理を行って、電磁弁13、21の開閉およびその他の電気機器(11、14a、23、25等)の作動を制御する。
【0043】
図2は第1実施形態の電気制御ブロック図であり、ECU26には、車両エンジン12の水温センサ27a、外気温センサ27b、蒸発器18の吹出空気温度センサ27c、圧縮機吐出圧力の圧力センサ27d、内気温センサ27e、車室内への日射量を検出する日射センサ27f等のセンサ群から検出信号が入力される。
【0044】
また、車室内計器盤付近に設置される空調操作パネル28から以下の操作スイッチ群の操作信号がECU26に入力される。すなわち、エアコンスイッチ29aは冷凍サイクルの圧縮機10の起動または停止を指令するものであり、冷房モードを設定する冷房スイッチの役割を果たす。ホットガススイッチ29bはホットガスヒータサイクルHによる暖房モードを設定するもので、暖房スイッチの役割を果たす。
【0045】
更に、空調操作パネル28には、空調の吹出モードを切り替える吹出モード切替スイッチ29c、車室内の温度を所望の温度に設定する温度設定スイッチ(温度設定手段)29d、送風機23のオン、オフおよび風量切替を指令するブロワスイッチ29e、外気モードと内気モードの切替を指令する内外気切替スイッチ29f等が設置されている。
【0046】
なお、本実施形態では、ブロワスイッチ29eを投入して送風機23のオン(作動)信号を出すと、空調の自動制御が開始されるようになっている。つまり、ブロワスイッチ29eが空調の自動制御を指令するオートスイッチの役目を兼ねている。
【0047】
次に、上記構成において本実施形態の作動を説明する。まず、最初に、冷凍サイクル部分の作動を説明すると、エアコンスイッチ29aが投入され、冷房モードが設定されると、ECU26により冷房用電磁弁13が開状態とされ、暖房用電磁弁21が閉状態とされる。従って、電磁クラッチ11が接続状態となり、圧縮機10が車両エンジン12にて駆動されると、圧縮機10の吐出ガス冷媒は開状態の冷房用電磁弁13を通過して凝縮器14に流入する。
【0048】
凝縮器14では、冷却ファン14aにより送風される外気にて冷媒が冷却されて凝縮する。そして、凝縮器14通過後の冷媒は受液器15で気液分離され、液冷媒のみが温度式膨張弁16で減圧されて、低温低圧の気液2相状態となる。
【0049】
次に、この低圧冷媒は逆止弁17を通過して蒸発器18内に流入して送風機23の送風する空調空気から吸熱して蒸発する。蒸発器18で冷却された空調空気は車室内へ吹き出して車室内を冷房する。蒸発器18で蒸発したガス冷媒はアキュームレータ19を介して圧縮機10に吸入され、圧縮される。
【0050】
冬期においてホットガススイッチ29bが投入され、ホットガスヒータサイクルHによる暖房モードが設定されると、ECU26により冷房用電磁弁13が閉状態とされ、暖房用電磁弁21が開状態とされ、ホットガスバイパス通路20が開通する。このため、圧縮機10の高温吐出ガス冷媒(過熱ガス冷媒)が開状態の暖房用電磁弁21を通って絞り21aで減圧された後、蒸発器18に流入する。つまり、圧縮機10からの過熱ガス冷媒(ホットガス)が凝縮器14等をバイパスして蒸発器18に直接導入される。
【0051】
このとき、逆止弁17はホットガスバイパス通路20からのガス冷媒が温度式膨張弁16側へ流れるのを防止する。従って、冷凍サイクルは、圧縮機10の吐出側→暖房用電磁弁21→絞り21a→蒸発器18→アキュームレータ19→圧縮機10の吸入側に戻る閉回路(ホットガスヒータサイクルH)にて運転される。
【0052】
そして、絞り21aで減圧された後の過熱ガス冷媒が蒸発器18にて送風空気に放熱して、送風空気を加熱する。ここで、蒸発器18にてガス冷媒から放出される熱量は、圧縮機10の圧縮仕事量に相当するものである。蒸発器18で放熱したガス冷媒はアキュームレータ19を介して圧縮機10に吸入され、圧縮される。
【0053】
なお、冬期においてエンジン12の始動直後のように温水温度(エンジン水温)が所定温度(例えば30℃)より低いときは、ブロワスイッチ29eが投入されていても空調用送風機23を停止状態に維持する。そして、温水温度が所定温度に上昇すると、空調用送風機23は低風量で始動し、その後、温水温度の上昇に応じて空調用送風機23の回転数(風量)が増加するようにウォームアップ制御される。
【0054】
温水式の暖房用熱交換器24に温水弁25を介して温水を流すことにより、蒸発器18で加熱された送風空気を熱交換器24において更に加熱することができる。従って、寒冷時においても、蒸発器18と温水式の暖房用熱交換器24の両方で加熱された、より温度の高い温風を車室内へ吹き出すことができる。
【0055】
次に、第1実施形態において、ホットガスヒータサイクルHによる暖房モード時の能力制御を図3により具体的に説明する。図3の制御ルーチンは車両エンジン12の始動(イグニッションスイッチの投入)によりスタートし、ステップS10にて空調操作パネル28のホットガススイッチ29bが投入(ON)されているか判定する。ここで、ホットガススイッチ29bが投入(ON)されていると、前述のように、冷房用電磁弁13を閉弁し、暖房用電磁弁21を開弁して、冷凍サイクルをホットガス暖房モードの設定状態にする。
【0056】
そして、このホットガス暖房モードの設定時にはステップS10からステップS20に進み、外気温が所定値(例えば、10°C)以下であるか判定する。外気温が所定値以下のときは、ステップS30にてエンジン水温が所定値(例えば、70°C)以下であるか判定する。
【0057】
ここで、ステップS20およびステップS30は、ホットガス暖房モードを必要とする環境条件にあるかどうかを判定するためのステップであり、外気温がが所定値(例えば、10°C)より高いときは暖房熱負荷が小さいため、ホットガス暖房モードが不要である。また、エンジン水温が所定値(例えば、70°C)より高い時は温水式暖房用熱交換器24の暖房能力が向上するので、やはりホットガス暖房モードが不要である。
【0058】
従って、ステップS20、ステップS30の判定がNOとなるとき、およびホットガススイッチ29bがOFFのときはステップS40に進み、電磁クラッチ11をOFFして、ホットガス暖房モードを停止(OFF)状態とする。
【0059】
一方、ステップS20およびステップS30の判定がYESの時は、ホットガス暖房モードを必要とする環境条件にある時であり、この場合にはステップS50に進み、空調用送風機23が作動(ON)状態にあるか判定する。この判定は、空調用送風機23の駆動用ブロワモータ23aに出力されるECU26の制御出力に基づいて判定できる。
【0060】
ここで、ECU26の制御出力により空調用送風機23が停止していると、ステップS50の判定がNOとなるのであるが、この空調用送風機23の停止は、ブロワスイッチ29eをマニュアル操作にてOFFしている場合と、ブロワスイッチ29eが投入(ON)されていても、ECU26の制御出力によって空調用送風機23を停止状態に維持するウォームアップ制御時の場合との両方がある。
【0061】
ステップS50の判定がNOであると、ステップS60に進み、蒸発器18の保水量がない状態であるか判定する。この保水量の具体的算出方法については図4、5により後述する。
【0062】
ステップS60では、蒸発器18の保水量が0に近い所定の最小量以下になると、蒸発器18の保水量がないと判定する。蒸発器18の保水量がないときは蒸発器18がホットガスの放熱器として作用しても蒸発器18での凝縮水の蒸発が発生せず、従って、窓ガラスの曇り発生の心配がない。そこで、ステップS70に進み、電磁クラッチ11に通電して電磁クラッチ11を接続(ON)状態とする。これにより、圧縮機10が作動(ON)状態となり、ホットガス暖房モードが作動状態となる。
【0063】
ステップS70によるホットガス暖房モードの作動時は、空調用送風機23が停止状態にあって、かつ、蒸発器18の保水量がないときであるから、温度センサ27cにより検出される蒸発器吹出温度Teに基づく暖房能力の制限を行わない。従って、空調用送風機23の停止、すなわち、蒸発器18への送風停止に伴って、温度センサ27cの検出温度が送風機作動時に比較して大幅に上昇しても、何ら問題なくホットガス暖房モードの作動を続行できる。
【0064】
そして、ホットガス暖房モードの作動を続行しても蒸発器18の保水量がないため、窓ガラスの曇りが発生しない。同時に、ホットガス暖房モードの作動によって、車両エンジン12に圧縮機10の駆動負荷が加わることにより、車両エンジン12の冷却水への放熱量が増加して、エンジン水温の上昇を促進する。そのため、温水式暖房用熱交換器24の暖房能力の早期立ち上げに貢献することができる。
【0065】
一方、ステップS60において、蒸発器18の保水量が所定の最小量より多いときは蒸発器18の保水量があると判定され、ステップS40に進み、電磁クラッチ11を遮断(OFF)状態として圧縮機10を停止(OFF)状態とし、ホットガス暖房モードを停止(OFF)状態とする。これにより、蒸発器18での凝縮水蒸発による窓ガラスの曇り発生を防止する。
【0066】
また、ステップS50において、空調用送風機23が作動(ON)状態にあると判定されると、ステップS80に進み、蒸発器18の保水量がない状態であるか判定する。この保水量の判定は、ステップS60の判定と同じ判定であり、蒸発器保水量の具体的算出方法も同じでよい。
【0067】
ステップS80にて蒸発器18の保水量がないと判定されると、ステップS90に進み、電磁クラッチ11を接続(ON)状態として圧縮機10を作動(ON)状態とし、ホットガス暖房モードを作動(ON)状態とする。
【0068】
これに対し、ステップS80にて蒸発器18の保水量があると判定されると、ステップS100に進み、蒸発器吹出空気温度Teが窓ガラスの温度Twsより高いか判定する。ここで、蒸発器吹出空気温度Teは温度センサ27cにより直接検出される温度であり、一方、窓ガラスの温度Twsはガラス内面温度であり、車両窓ガラスの内面に専用の温度センサを設置してガラス温度Twsを直接検出してもよいが、後述するように、外気温Tamと、車室内への吹出空気(温風)による温度上昇分とに基づいて算出(推定)するようにしてもよい。
【0069】
そして、Te>TwsであるときはステップS110に進み、電磁クラッチ11への通電を遮断(OFF)して圧縮機10を停止(OFF)させる。これにより、ホットガス暖房モードが停止(OFF)状態となって、蒸発器18での凝縮水蒸発による窓ガラスの曇り発生を防止する。一方、Te≦TwsであるときはステップS120に進み、電磁クラッチ11を接続(ON)状態として圧縮機10を作動(ON)状態とする。これにより、ホットガス暖房モードが作動状態となる。
【0070】
以上のように、空調用送風機23の作動時に蒸発器18の保水量があるときは、圧縮機10の作動を断続制御することにより、蒸発器吹出空気温度Teを窓ガラスの温度Tws以下の温度に制御できる。ここで、暖房時には窓ガラスの曇り止めのために、通常、内外気吸入モードは絶対湿度の低い外気を導入する外気モードが選択される。そして、ホットガスヒータサイクルHの暖房モード運転を必要とする寒冷時には0℃付近の低温外気が蒸発器18に導入される。低温外気は絶対湿度が低くても相対湿度は元々高くなっている。これに加えて、蒸発器18での凝縮水の蒸発が起きると、蒸発器吹出空気の相対湿度は85%〜90%程度の高い値となる。
【0071】
蒸発器吹出空気はその後、温水式熱交換器24で加熱されて温度上昇した後、車室内へ吹き出される。この吹出空気が低温の窓ガラスに接触して蒸発器吹出空気温度Teより低い温度に冷却されると露点に到達して結露し、窓ガラスに曇りを発生することになる。
【0072】
しかし、第1実施形態によると、空調用送風機23の作動時に蒸発器18の保水量があるときは上記ステップS100、S110、S120により圧縮機10の作動を断続制御して、蒸発器吹出空気温度Teを窓ガラスの温度Tws以下となるようにしているから、車室内への吹出空気が低温の窓ガラスに接触し、窓ガラスと同等の温度まで冷却されても、その相対湿度は蒸発器吹出後の値(85%〜90%程度)に上昇するだけである。
【0073】
つまり、上記ステップS100、S110、S120において、車室内への吹出空気が窓ガラスにより冷却されても露点に到達しない範囲に蒸発器吹出空気温度Teを制御できる。これにより、空調用送風機23の作動時に蒸発器18で凝縮水の蒸発が起きても、窓ガラスの曇り発生を確実に防止できる。
【0074】
次に、蒸発器18の保水量の算出方法について説明する。図4は蒸発器18の保水量算出の基本的考え方を説明するもので、図4(a)は冷凍サイクルの作動形態の変化とそれに伴う蒸発器保水量の変化との関係を示すもので、車両エンジン運転時において冷房モードが設定されたときには蒸発器18の冷却除湿作用により凝縮水が発生するので、蒸発器保水量は冷房モードの作動時間(圧縮機作動時間)に比例して増加する。
【0075】
なお、図4においては、蒸発器18における凝縮水の最大保持量(満水量)が250ccである場合の保水量変化を示している。蒸発器18は車両用空調装置において一般的に使用される積層型蒸発器であり、積層プレートにより構成された偏平チューブとコルゲートフィンとを組み合わせた熱交換器構造からなり、凝縮水はフィン表面等に付着して保持される。
【0076】
図4の例では満水量が250ccであるので、ECU26はその算出保水量が満水量(250cc)に到達すると、それ以上保水量を増大せず、保水量を一定に維持するようになっている。。
【0077】
図4(b)の▲1▼は冷房モード時における凝縮水量の具体例を示している。この凝縮水量は単位時間当たりの量(cc/min)であり、蒸発器18での凝縮水発生量から空調ケース22の排水口22aからの凝縮水排水量を減算した値である。図4(b)の▲1▼において、横軸の温度は蒸発器吸い込み空気の温度であり、%は蒸発器吸い込み空気の相対湿度である。蒸発器吸い込み空気の温度が高くなると、蒸発器吸い込み空気の絶対湿度が増大して凝縮水量が増加する。
【0078】
図4(b)の▲1▼において、横軸のMe2は、空調用送風機23の風量が第2中間風量(本例では280m3/h程度)であることを示している。なお、空調用送風機23の風量は低風量(Lo)、第1中間風量(Me1)、第2中間風量(Me2)、大風量(Hi)の4段階にマニュアル操作で切替可能になっており、第2中間風量(Me2)は、大風量(Hi)の次に大きい風量レベルである。
【0079】
次に、放置時は、車両エンジン12の運転時に圧縮機10を停止させ、冷房モードおよびホットガス暖房モードをいずれも設定しないときと、車両エンジン12の停止に伴って圧縮機10が停止するときの両方を包含する。従って、本発明における放置時とは要は圧縮機10の停止状態を言う。
【0080】
更に、放置時には、空調用送風機23の作動時と停止時の両方がある。車両エンジン12の運転時には、通常、空調用送風機23が作動状態になっているので、図4(a)の放置時のうち、空調用送風機23の停止時は車両エンジン12の停止時である。
【0081】
この放置時では、空調ケース22の排水口22aから凝縮水が排水されるので、この排水口22aからの排水量によって蒸発器保水量が減少することになる。図4(b)の▲2▼は、放置時のうち、空調用送風機23の停止時に、排水口22aからの排水量によって蒸発器保水量が放置時の経過時間とともに減少していく現象を概略図示している。
【0082】
本発明者の実験検討によると、放置時のうち、空調用送風機23の停止時では圧縮機10の停止後、所定時間、具体的には、1時間の間、排水口22aからの排水量が大きい状態が維持され、蒸発器保水量が急激に減少する。その後、排水量が僅少量に減少するので、保水量の減少が僅少となることが判明している。そして、放置時において、空調用送風機23を作動させる送風モードを設定すると、送風空気の風圧により凝縮水が蒸発器18から押し出されて排水量が再び増加するので、図4(a)の放置時の後半部分のように蒸発器保水量が再び減少する。
【0083】
次に、ホットガス暖房モードが設定されたときには蒸発器18の放熱作用により蒸発器18にて凝縮水が蒸発するので、その蒸発量の分だけ保水量が減少する。ここで、ホットガス暖房モード時にも、空調ケース22の排水口22aから凝縮水が排水されるので、図4(b)の▲3▼の蒸発量は排水口22aからの排水量を含む値である。ホットガス暖房モード時の蒸発量は蒸発器吹出空気温度Teが高くなるほど、増加する関係にある。
【0084】
以上の図4による検討から、蒸発器保水量は基本的には次の数式1により表すことができる。
【0085】
【数1】
蒸発器保水量=凝縮水量−蒸発量−放置時の排水量
ここで、放置時の排水量は、前述のように空調用送風機23の作動時、停止時の両方の排水量を包含している。
【0086】
次に、蒸発器保水量の具体的算出方法を図5により説明すると、図5の制御ルーチンは車両エンジン12の始動(イグニッションスイッチの投入)によりスタートし、車両エンジン12の運転中および車両エンジン12の停止後、一定時間(例えば、1時間)の間は常時、蒸発器保水量の算出を行い、所定の時間間隔で(例えば、1分毎に)蒸発器保水量の算出値を更新するようになっている。
【0087】
図5において、先ず、ステップS200にて記憶保水量を読み込む。この記憶保水量は、前回のエンジン運転停止後、一定時間経過時点において算出され、ECU26の記憶手段にて記憶されている蒸発器保水量である。この記憶手段はECU26への電源供給停止後も、保水量の情報を記憶保持できるものである。
【0088】
次のステップS210にて冷房モードが設定されているか判定する。具体的には、エアコンスイッチ29aの投入有無等により冷房モードの設定有無を判定できる。冷房モードの設定時にはステップS220に進み、冷房モード時の保水量を、保水量=記憶保水量+凝縮水量の式にて算出する。
【0089】
ここで、冷房モード時の凝縮水量は具体的には蒸発器吸い込み空気の絶対湿度が高い程、また、冷房モード時における圧縮機(電磁クラッチ)ON時間が大きい程、増加する関係にあるので、図4(b)の▲1▼のように蒸発器吸い込み空気の絶対湿度に関連する情報と圧縮機ON時間とにより凝縮水量を算出するようになっている。
【0090】
ステップS220では、上記のようにして冷房モード時の凝縮水量を算出し、この凝縮水量を記憶保水量に加えることにより、冷房モード時の保水量を算出する。
【0091】
なお、冷房モード時の凝縮水量は蒸発器吸い込み空気の風量とも相関があり、この風量が増加すれば凝縮水量が増加する関係にある。従って、凝縮水量算出の精度を高めるために、凝縮水量を風量の増加により増加するよう補正してもよい。
【0092】
一方、ステップS210の判定がNOであると、ステップS230に進み、ホットガス暖房モードが設定されているか判定する。具体的には、ホットガススイッチ29bの投入有無等によりホットガス暖房モードの設定有無を判定できる。ホットガス暖房モードの設定時にはステップS240に進み、ホットガス暖房モード時の保水量を、保水量=記憶保水量−蒸発量の式にて算出する。
【0093】
ここで、ホットガス暖房モード時の蒸発量は具体的には図4(b)の▲3▼のマップに基づいて算出する。蒸発器吹出温度Teが高くなれば、蒸発器周囲の空気の相対湿度が低下するので、単位時間当たりの蒸発量(cc/min)は蒸発器吹出温度Teの上昇に比例して増加する関係にある。
【0094】
一方、ステップS230の判定がNOであるときは、冷房モードでもホットガス暖房モードでもないとき、すなわち、圧縮機10が停止している放置時であり、このときはステップS250に進み、放置時の保水量を、保水量=記憶保水量−排水量の式にて算出する。ここで、放置時の排水量は排水口22aから空調ケース22外へ排水される凝縮水量である。
【0095】
なお、放置時において空調用送風機23が停止している場合は、車両エンジン12の運転時と車両エンジン12の停止時の両方があり、そして、車両エンジン12の停止時の場合は、車載バッテリの充電容量の減少を極力抑えるため、車両エンジン12の停止後におけるECU26の作動は極力短時間に制限すべきである。
【0096】
前述の図4(a)の特性によると、放置モード開始後(送風機停止後)の一定時間(例えば、1時間)にて排水量が僅少量に減少して蒸発器保水量の減少が僅少となる。そこで、車両エンジン12の停止後の放置時においては、ECU26によりエンジン停止後の一定時間(例えば、1時間)のみ、排水量算出の演算処理を行って、エンジン停止後の一定時間後における蒸発器保水量をECU26の記憶手段により記憶保持する。エンジン停止後の一定時間の計時は、ECU26のタイマ機能等により行えばよい。
【0097】
ところで、図3のステップS100の判定に用いる窓ガラス温度Twsは、窓ガラス内面に専用の温度センサを設置して、専用の温度センサにより直接検出するようにしてもよいが、この方式では専用の温度センサ追加によるコストアップが生じる。そこで、本第1実施形態では、空調装置の既存のセンサ信号を利用して窓ガラス温度Twsを算出(推定)するようにしている。
【0098】
すなわち、窓ガラス温度Twsは、空調始動前の初期状態では外気温Tamと同一温度になっている。その後、暖房モードの実行により温風が車室内へ吹き出されると、その温風吹出によって窓ガラス温度Twsが上昇する。従って、温風吹出による窓ガラス温度の上昇分をΔTwsとすると、窓ガラス温度Twsは、Tws=Tam+ΔTwsの式で算出できる。
【0099】
ここで、ホットガス暖房モード時に車室内へ吹き出す温風は蒸発器18を通過後に温水式暖房用熱交換器24にて加熱されるので、温風温度は温水温度に大きく依存する。そのため、温風吹出による窓ガラス温度の上昇分ΔTwsは、エンジン水温(温水式暖房用熱交換器24を循環する温水温度)の上昇に比例して増加する関係がある。従って、温風吹出による窓ガラス温度の上昇分ΔTwsはエンジン水温(温水温度)に基づいて算出することができる。
【0100】
温風吹出による窓ガラス温度の上昇分ΔTwsは、温風の温度の他に窓ガラス内側への温風風量の影響も受けるので、窓ガラス温度の上昇分ΔTwsの算出精度を高めるためには、温風の風量の影響を考慮した方がよい。この温風の風量の影響度は空調用送風機23の送風レベルと吹出モードとにより判定することができる。
【0101】
更に、車両窓ガラスは、車両走行による車速風(走行動圧による風)によって冷却されるので、この車速風の冷却効果による温度低下分をも考慮して、窓ガラス温度Twsを算出すれば、窓ガラス温度Twsの算出精度をより一層向上できる。
【0102】
(第2実施形態)
第1実施形態では、冷房モード時における蒸発器18での凝縮水量と、ホットガス暖房モード時における蒸発器18での凝縮水の蒸発量と、圧縮機10が停止状態にある放置時における空調ケース排水口22aからの凝縮水の排水量とに基づいて蒸発器18の保水量を算出し、この算出保水量により蒸発器18での保水量有無を判定しているが、第2実施形態では、蒸発器18での保水量有無の判定を冷房モードの作動履歴に基づいて簡易的に行おうとするものである。
【0103】
図6は第2実施形態による保水量判定の考え方を示す特性図であり、その横軸は冷房モードの作動が停止してからの経過時間tである。この経過時間tが長くなるにつれて空調ケース排水口22aからの凝縮水の合計排水量が増えるので、前述の図4(b)の▲2▼のように蒸発器18の保水量が減少する。
【0104】
また、前述の図4(b)の▲1▼のように蒸発器吸い込み空気の温度が高いほど蒸発器吸い込み空気の絶対湿度が高くなって、冷房モード時における凝縮水発生量が増加する。そして、蒸発器吸い込み空気温度と外気温は相関関係があるので、外気温が高くなるにつれて冷房モード時における凝縮水発生量が増加する。
【0105】
従って、上記経過時間tと外気温とに基づいて、蒸発器保水量有りの領域Xと蒸発器保水量無しの領域Yとを仕切り線Zにより仕切ることができる。
【0106】
ここで、蒸発器保水量有りの領域Xは、外気温度が高くなるほど、冷房モード停止後の経過時間tが大きくなる範囲まで広がり、そして、外気温度が低くなるほど、保水量有りの領域Xが経過時間tに対して早い時期に蒸発器保水量無しの領域Yへ移行する特性となる。
【0107】
第2実施形態によると、冷房モードの作動停止後の経過時間tと外気温とに基づいて蒸発器保水量有りの領域Xと蒸発器保水量無しの領域Yとを判定して、蒸発器18での保水量有無を簡易的に判定できる。
【0108】
送風機23の停止時に、蒸発器保水量有りの領域Xを判定したときはホットガス暖房モードを停止し、これに対し、蒸発器保水量無しの領域Yを判定したときはホットガス暖房モードを作動状態とする。この作動制御は、図3のステップS60、S40、S70による制御であるが、送風機23の作動時における図3のステップS80での保水量有無の判定を第2実施形態により行ってもよいことはもちろんである。
【0109】
(他の実施形態)
なお、上記の実施形態では、空調操作パネル28に乗員より手動操作される専用のホットガススイッチ29bを備え、このホットガススイッチ29bの投入によりホットガス暖房モードを設定しているが、このような手動操作の専用スイッチ29bを設けずに、例えば、ECU26にて最大暖房状態等を判定してホットガス暖房モードを自動的に起動するようにしてもよい。
【0110】
また、マニュアル操作式の空調装置においては、冷温風の風量割合を調整するエアミックスドア、ヒータコア温水流量を調整する温水弁等の温度調整手段を手動操作するためのダイアル状あるいはレバー状の温度調整操作部材を空調操作パネル28に装備するので、この温度調整操作部材を最大暖房位置に操作すると、これに連動してホットガススイッチ29bが投入されるようにしてもよい。これによれば、ホットガススイッチ29bのための専用の操作部材が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の全体構成を示すシステム構成図である。
【図2】第1実施形態の電気制御のブロック図である。
【図3】第1実施形態によるホットガス暖房モード時の圧縮機制御を示すフローチャートである。
【図4】第1実施形態による蒸発器保水量算出の考え方の説明図である。
【図5】第1実施形態による蒸発器保水量の算出方法を示すフローチャートである。
【図6】第2実施形態による蒸発器保水量有無を判定するための特性図である。
【符号の説明】
10…圧縮機、14…凝縮器(室外熱交換器)、
16…温度式膨張弁(冷房用減圧装置)、18…蒸発器(室内熱交換器)、
20…ホットガスバイパス通路、21a…絞り(暖房用減圧装置)、
C…冷房用冷凍サイクル、H…ホットガスヒータサイクル。
Claims (5)
- 圧縮機(10)より吐出された冷媒を、室外熱交換器(14)、冷房用減圧装置(16)および室内熱交換器(18)を通して前記圧縮機(10)に戻すことで、前記室内熱交換器(18)を蒸発器として作動させる冷房用冷凍サイクル(C)と、
前記圧縮機(10)より吐出された冷媒を、ホットガスバイパス通路(20)により前記室内熱交換器(18)に導入して前記圧縮機(10)に戻すことで、前記室内熱交換器(18)を放熱器として作動させるホットガスヒータサイクル(H)とを切替可能に構成し、
前記室内熱交換器(18)を車室内へ向かって空気が流れる空調ケース(22)内に配置するとともに、前記空調ケース(22)内へ前記空気を送風する空調用送風機(23)を備え、
前記冷房用冷凍サイクル(C)により前記室内熱交換器(18)で冷却された空気を車室内へ吹き出すことにより冷房モードを実行し、また、前記ホットガスヒータサイクル(H)により前記室内熱交換器(18)で加熱された空気を車室内へ吹き出すことにより暖房モードを実行するようになっており、
前記暖房モードの設定時に、前記空調用送風機(23)が停止しているときは、前記室内熱交換器(18)における保水量の有無を判定し、前記保水量がないときは前記暖房モードを作動状態とし、前記保水量があるときは前記暖房モードを停止状態とすることを特徴とする車両用空調装置。 - 前記暖房モードの設定時に、前記空調用送風機(23)が作動しているときは、前記室内熱交換器(18)における保水量の有無を判定し、
前記保水量がないときは前記暖房モードを作動状態とし、前記保水量があるときは前記空調ケース(22)からの吹出空気が車両窓ガラスにより冷却されても露点に到達しない範囲に前記室内熱交換器(18)の吹出空気温度を制御することを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。 - 前記圧縮機(10)の吐出能力を制御することにより前記室内熱交換器(18)の吹出空気温度を制御することを特徴とする請求項2に記載の車両用空調装置。
- 少なくとも、前記冷房モード時における前記室内熱交換器(18)での凝縮水量と、前記暖房モード時における前記室内熱交換器(18)での凝縮水の蒸発量と、前記圧縮機(10)が停止状態にある放置時における前記空調ケース(22)の排水口(22a)からの凝縮水の排水量とに基づいて前記保水量を算出することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
- 少なくとも、前記冷房モードの作動停止後の経過時間に基づいて前記保水量を算出することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
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