JP3896717B2 - 逐次比較a/d変換器 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電荷再分配型の逐次比較A/D変換器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、逐次比較A/D変換器の一つとして、荷重容量回路を備えた電荷再分配型のA/D変換器が知られている。
荷重容量回路は、nビットのデジタル値を得る際には、n+1個の容量素子(コンデンサ)にて構成される。そして、図9(a)に例示するように、これらn+1個のコンデンサは、一端が互いに接続されており、その内、n個(図では3個)のコンデンサ52,54,56の容量が、基準容量Cを2の累乗値(20 ,21 ,22 )にて重み付けした容量C,2C,4Cに設定され、残りのコンデンサ50の容量が基準容量Cに設定される。
【0003】
また、荷重容量回路において、各コンデンサ50〜56の接続点は、オペアンプ等からなる比較器(コンパレータ)62の反転入力端子(−)に接続され、各コンデンサ50〜56の接続点とは反対側の開放端は、夫々、CMOSトランジスタ等のスイッチング素子からなる切換部64を介して、入力線INPUTを介して入力されるアナログ入力信号Vin、正の電源線AVDDを介して供給される直流電源の正極側電位Vdd、及び、負の電源線AVSSを介して供給される直流電源の負極側電位(一般にグランド電位)GNDの一つを選択的に印加できるようにされる。
【0004】
一方、コンパレータ62の非反転入力端子(+)には、基準電位Vref が印加されており、更に、コンパレータ62の非反転入力端子と反転入力端子との間には、これら端子間を導通・遮断するためのアナログスイッチSW1が設けられる。
【0005】
そして、こうした荷重容量回路を備えた電荷再分配型の逐次比較A/D変換器では、図示しないコントローラによる制御の下に、以下の手順で、アナログ入力信号Vinをデジタル値に変換する。
即ち、図9(b)に示す如く、まずアナログスイッチSW1をオンして、コンパレータ62の非反転入力端子(延いては各コンデンサの接続点)に反転入力端子側の基準電位Vref を印加し、切換部64を介して、各コンデンサ50〜56の開放端にアナログ入力信号Vinを印加することにより、荷重容量回路内の全コンデンサ50〜56に、アナログ入力信号Vinと基準電位Vref との電位差(Vin−Vref )に対応した電荷を蓄積させる、サンプリング動作を行う。
【0006】
次に、このサンプリング動作が完了すると、アナログスイッチSW1をオフして、各コンデンサ50〜56の接続点への基準電位Vref の印加を遮断する。そして、荷重容量回路において容量が2の累乗値にて重み付けされたn個のコンデンサ52,54,56に対して、容量が最も大きいコンデンサ56側から順に対象となるコンデンサを変更しつつ、対象となるコンデンサ56(54,52)の開放端に正の電源線AVDD(電位Vdd)を接続し、接続先が未確定のコンデンサ54,52,50の開放端に負の電源線AVSS(電位GND)を接続することにより、各コンデンサ50に蓄積された電荷の再分配を行い、そのとき得られるコンパレータ62からの出力信号に基づき、各コンデンサ50〜56の接続点電位Vcが基準電位Vref に近づくように、対象となるコンデンサ56(54,52)の開放端への接続先(換言すれば開放端の電位)を、正の電源線AVDD(電位Vdd)及び負の電源線AVSS(電位GND)のいずれかに確定してゆく、逐次比較動作を行う。
【0007】
ここで、逐次比較動作時のコンデンサ50〜56の接続点電圧Vcは、荷重容量回路を構成するn+1個のコンデンサ50〜56の総容量を「2n ・C」、開放端が正の電源線AVDDに接続されるコンデンサの容量を「x・C」とすると、次式で表すことができる。
【0008】
Vc=−(Vin−Vref )+Vdd(x・C/2n ・C)
そして、逐次比較動作では、接続点電位Vcが基準電位Vref よりも低く、コンパレータ62からの出力がHighレベルとなる場合には、対象となるコンデンサ56(54,52)の開放端への接続先を、電位Vddの正の電源線AVDDに確定し、接続点電位Vcが基準電位Vref 以上で、コンパレータ62からの出力がLow レベルとなる場合には、対象となるコンデンサ56(54,52)の開放端への接続先を、電位GNDの負の電源線AVSSに確定する。
【0009】
尚、逐次比較動作は、荷重容量回路において容量が2の累乗値にて重み付けされたn個のコンデンサ56,54,52に対してのみ順に実行されるため、残りのコンデンサ50の開放端には、常に、直流電源の負極側電位GNDが印加されることになる。また、基準電位Vref は、通常、電源線AVDD−AVSS間の中心の電位に設定され、例えば、電源電圧が5Vであれば、2.5Vとなる。
【0010】
そして、この逐次比較動作によってn個のコンデンサ56,54,52の開放端への印加電位が確定すると、開放端が正の電源線AVDDに接続されたコンデンサを値「1」、開放端が負の電源線AVSSに接続されたコンデンサを値「0」として、最大容量(この場合4C)のコンデンサ56を最上位ビット(MSB)、最小容量(基準容量C)のコンデンサ52を最下位ビット(LSB)とするnビットのデジタル値を生成し、これをアナログ入力信号VinのA/D変換値として出力する。
【0011】
このように、従来の電荷再分配型逐次比較A/D変換器では、サンプリング動作によって、アナログスイッチSW1をオン状態にして、荷重容量回路を構成する各コンデンサ50〜56に、アナログ入力信号Vinと基準電位Vref との電位差に応じた電荷Q(図9のものでは、Q=8C(Vin−Vref )となる)を蓄積させ、その後、アナログスイッチSW1をオフ状態に切り換えた後、逐次比較動作によって、各コンデンサ52〜56の開放端への接続先(換言すれば開放端の電位)を、容量の大きいコンデンサ56側(換言すればMSB側)から順に確定してゆくことにより、アナログ入力信号Vinに対応したnビットのデジタル値を生成する。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来の逐次比較A/D変換器において、5Vの直流電源を用いて、アナログ入力信号Vinを0Vから5Vまで変化させた場合、逐次比較動作によるMSB確定時の接続点電圧Vcは、本来、図10に実線で示すように、アナログ入力信号Vinに応じて、5Vから0Vまで変化する。
【0013】
つまり、例えば、図9(a)に示した荷重容量回路を備えたA/D変換器の場合、MSB確定のための逐次比較動作時には、切換部64を介して、容量4Cのコンデンサ56の開放端が正の電源線AVDD(電位5V)に接続され、残りのコンデンサ50〜54の開放端が負の電源線AVSS(電位0V)に接続されることから、各コンデンサ50〜56の接続点電位Vcは、
となり、アナログ入力信号Vinが0Vのときには、Vc=5V、アナログ入力信号Vinが5Vのときには、Vc=0Vとなる。
【0014】
しかしながら、実際には、MSB確定のための逐次比較動作時に、切換部64を介して各コンデンサ50〜56の開放端を電源線AVDD又はAVSSに接続すると、配線のインピーダンスや切換部64内で発生したスイッチングノイズ等によって、接続点電位Vcが5Vを越えるオーバーシュートや、接続点電位Vcが0Vを下回るアンダーシュートが発生することがある。
【0015】
そして、こうしたオーバーシュートやアンダーシュートが発生すると、コンパレータ62の入力端子間に設けられたアナログスイッチSW1によって、各コンデンサ50〜56の接続点から電荷が抜けたり、逆に接続点に電荷が誤注入(ミスチャージ)されてしまうことがある。
【0016】
即ち、電荷再分配型逐次比較A/D変換器において、アナログスイッチSW1(切換部64内のスイッチング素子も同じである)は、通常、図11(a)に示す如ように、PチャネルMOSFET(PchTr)とNチャネルMOSFET(NchTr)とにより構成され、一方のFET(図ではPchTr)には、図示しないコントローラからの切換信号を直接入力し、他方のFET(図ではNchTr)には切換信号をインバータINVを介して入力することにより、そのオン・オフ状態を切り換えるようにしている。
【0017】
また、図11(b)に示す如く、PchTr及びNchTrは、夫々、半導体基板の表面に拡散形成されたNウェル及びPウェルの中に夫々形成されており、しかも、PchTrが形成されるNウェルには、PchTrと基板とを電気的に絶縁するためのバックゲート72が形成され、NchTrが形成されるPウェルには、NchTrと基板とを電気的に絶縁するためのバックゲート74が形成されている。そして、PchTr及びNchTrのソースには、接続点電位Vcが印加され、PchTr及びNchTrのソドレインには、基準電位Vref が印加され、PchTr側のバックゲート72には、電源電圧Vdd(5V)が印加され、NchTr側のバックゲート74はグランド(0V)に接地される。
【0018】
このため、上記のように、MSB確定のための逐次比較動作時に、接続点電位Vcが5Vを越えるオーバーシュートが発生すると、PchTrのソースからバックゲート72へと電流が流れ、サンプリング動作時にコンデンサ50〜56に蓄積された電荷の一部が抜けてしまい、逆に、接続点電位Vcが0Vを下回るアンダーシュートが発生すると、バックゲート72が接地されたグランド側からNchTrのソースへと電流が流れ、コンデンサ50〜56がミスチャージされることになる。
【0019】
また、こうした電荷抜けやミスチャージは、切換部64において、MSBのコンデンサ56を正の電源線AVDDへ接続するスイッチング素子の応答速度と、他のコンデンサ50〜54を負の電源線AVSSへ接続するスイッチング素子の応答速度との違いによっても発生する。
【0020】
つまり、切換部64において、正の電源線AVDD側への切換が、負の電源線AVSSへの接続よりも早く行われると、接続点電位Vcは、図10に点線で示す如く「Vc=−2(Vin−Vref )」となり、アナログ入力信号Vinが、2.5V<Vin≦5Vであるとき、接続点電位Vcが電源線AVSSの電位(グランド電位)GNDよりも低い負電位(換言すればアンダーシュート)となって、ミスチャージ(電荷誤注入)が発生する。
【0021】
また、逆に、負の電源線AVSS側への切換が、正の電源線AVDDへの接続よりも早く行われると、接続点電位Vcは、図10に一点鎖線で示す如く「Vc=Vdd−2(Vin−Vref )」となり、アナログ入力信号Vinが、0≦Vin<2.5であるとき、接続点電位Vcが電源線AVDDの電位(電源電圧)Vddよりも高い高電位(換言すればオーバーシュート)となって、電荷抜けが発生する。
【0022】
そして、このように電荷抜けやミスチャージが発生すると、その後の逐次比較動作によって、アナログ入力信号を正常にA/D変換することができなくなり、A/D変換精度が低下する。
そこで、従来では、電荷再分配型逐次比較A/D変換器において、こうした電荷抜けやミスチャージを発生させることなく、良好なA/D変換を行うことができるようにするために、最上位ビットMSB用のコンデンサを、荷重容量回路を構成する全コンデンサの容量の4分の1の容量を有する2つのコンデンサにて構成し、MSB確定のための逐次比較動作では、この2つのコンデンサの電源線AVDDへの接続を時間差を設けて行うようにすることが考えられている。
【0023】
しかし、このような対策では、荷重容量回路の構成が複雑になり、しかも、切換部のスイッチ操作を時間を空けて行う必要があることから、A/D変換に要する時間も長くなる、という問題があった。
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、電荷再分配型の逐次比較A/D変換器において、逐次比較動作時に、荷重容量回路からの電荷抜け及び電荷の誤注入を発生させることなく、良好にA/D変換を行うことができ、しかも、A/D変換を高速に行うことができるようにすることを目的とする。
【0024】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するためになされた請求項1記載の逐次比較A/D変換器には、既述した従来の電荷再分配型逐次比較A/D変換器と同様、一端が互いに接続されたn+1個の容量素子を備え、n個の容量素子が、夫々、基準容量を2の累乗値(20 ,21 ,22 …)にて重み付けした容量に設定され、残りの容量素子が基準容量に設定された荷重容量回路が設けられる。そして、比較器が、この荷重容量回路を構成する全容量素子の一端を互いに接続した接続点の電位と、基準電位とを大小比較する。
【0025】
また、比較器の入力に接続される各容量素子の接続点と、前記基準電位の入力経路との間には、これらを導通・遮断するためのアナログスイッチが設けられる。そして、アナログ入力信号をA/D変換する際には、制御回路が、まず、このアナログスイッチをオンして各容量素子の接続点に基準電位を印加し、各容量素子の接続点とは反対側の開放端にアナログ入力信号を印加することにより、荷重容量回路内の全容量素子に、アナログ入力信号と前記基準電位との電位差に対応した電荷を蓄積させる、サンプリング制御を行う。
【0026】
また、制御回路は、サンプリング制御終了後、アナログスイッチをオフして各容量素子の接続点への基準電位の印加を遮断した状態で、荷重容量回路において容量が2の累乗値にて重み付けされたn個の容量素子に対して、容量が最も大きい容量素子側から順に対象となる容量素子を変更しつつ、対象となる容量素子の開放端に直流電源の正極側を接続し、接続先が未確定の容量素子の開放端に直流電源の負極側を接続することにより、各容量素子に蓄積された電荷の再分配を行い、そのとき得られる前記比較器からの出力信号に基づき、前記接続点の電位が前記基準電位に近づくように、対象となる容量素子の開放端への接続先を前記直流電源の正極側又は負極側に確定してゆく、逐次比較制御を行う。
【0027】
そして、逐次比較A/D変換器からは、この制御回路による逐次比較制御によって確定したn個の容量素子の開放端への直流電源の接続状態位に対応したデジタル値が、アナログ入力信号のA/D変換値として出力される。
一方、本発明(請求項1)の逐次比較A/D変換器には、A/D変換すべきアナログ入力信号が、電源電圧の正極側電位と負極側電位と間の中心となる中間電位よりも大きいか否かを判定する判定回路と、基準電位として、中間電位と電源電圧の正極側電位との間の第1電位、及び、中間電位と電源電圧の負極側電位との間の第2電位、のいずれかを選択的に出力可能な基準電位発生回路とが備えられる。
【0028】
そして、制御回路は、判定回路による判定結果に基づき、基準電位発生回路から出力される基準電位を、アナログ入力信号が中間電位よりも高い場合には第1電位、アナログ入力信号が中間電位よりも低い場合には第2電位となるよう設定した後、サンプリング制御及び逐次比較制御を行う。
【0029】
つまり、本発明(請求項1)の逐次比較A/D変換器においては、既述した従来の電荷再分配型逐次比較A/D変換器と同様に、サンプリング動作及び逐次比較動作を行うことによって、アナログ入力信号をデジタル値に変換するだけでなく、サンプリング動作に入る前に、判定回路によって、アナログ入力信号が、従来装置において基準電位として設定されている直流電源の正極側電位と負極側電位との間の中心電位(中間電位)よりも大きいか否かを判断し、その判定結果に従い、アナログ入力信号が中間電位よりも高い場合には、基準電位発生回路から出力される基準電位を、中間電位と直流電源の正極側電位との間の第1電位に設定し、アナログ入力信号が中間電位よりも低い場合には、基準電位発生回路から出力される基準電位を、中間電位と直流電源の負極側電位との間の第2電位に設定する。
【0030】
このため、本発明の逐次比較A/D変換器においては、サンプリング動作時に荷重容量回路に蓄積される電荷量(Q=荷重容量回路の総容量×(アナログ入力信号−基準電位))が、基準電位を中間電位に固定する従来装置に比べて少なくなり、逐次比較動作開始後に、荷重容量回路の各容量素子の接続点電位が直流電源の正極側電位を越えるオーバーシュートや、接続点電位が直流電源の負極側電位を下回るアンダーシュートが発生するのを抑制することができる。
【0031】
よって、本発明によれば、逐次比較動作時に、荷重容量回路に蓄積された電荷の一部が抜ける電荷抜けや、荷重容量回路を構成する容量素子に電荷が誤注入されるミスチャージが発生するのを抑制でき、アナログ入力信号のA/D変換精度を確保することができる。
【0032】
また、電荷抜けやミスチャージの発生を防止するために、従来のように、荷重容量回路に、MSB確定のための容量素子として、荷重容量回路の総容量の1/4の容量を有する2つの容量素子を設け、逐次比較動作によるMSB確定時に、この2つの容量素子の開放端を、段階的に正極側電源ラインに接続する必要はないため、高精度なA/D変換を短時間で実行できる。また、nビットのA/D変換を行う場合、荷重容量回路は、n+1個の容量素子にて構成すればよいため、荷重容量回路が複雑になることはなく、その構成を簡単にすることができる。
【0033】
ここで、逐次比較動作は、従来装置と同様、荷重容量回路において、最大容量に設定(基準容量Cの2(nー1) 倍に重み付け)されたMSB確定用の容量素子から順に、その開放端に電源電圧の正極側電位を印加することにより行うようにしても良い。
【0034】
しかし、本発明では、サンプリング動作に入る前に、判定回路を用いて、アナログ入力信号が中間電位よりも大きいか否かを判断しており、この判定回路から、アナログ入力信号が中間電位よりも大きければ「MSB=1」、アナログ入力信号が中間電位以下であれば「MSB=0」として、MSBの値を確定することができるによる判定結果から、アナログ入力信号の最上位ビットを確定することができる。
【0035】
そこで、本発明(請求項1)の逐次比較A/D変換器は、請求項2に記載のように、制御回路を、逐次比較制御の開始時に、判定回路による判定結果に基づき、荷重容量回路を構成する最大容量の容量素子の開放端への印加電位を確定し、逐次比較制御では、荷重容量回路において2番目に容量が大きい容量素子から順に、各容量素子への印加電位を確定するように構成してもよい。
【0036】
そして、逐次比較A/D変換器を請求項2に記載のように構成した場合、請求項1と同様の効果が得られるだけでなく、逐次比較制御では、比較器を用いたMSB確定のための判定動作を実行する必要がなくなるため、A/D変換に要する時間を短くすることができる。
【0037】
また、本発明(請求項1)の逐次比較A/D変換器においては、請求項3に記載のように、基準電位発生回路を、中間電位と正極側電位との間の中心電位を第1電位、中間電位と負極側電位との間の中心電位を第2電位、として夫々出力可能で、しかも、これら第1電位及び第2電位に加えて、中間電位を出力可能に構成し、制御回路を、サンプリング制御終了後に、基準電位発生回路から出力される基準電位を、第1電位又は第2電位から前記中間電位に変更し、逐次比較制御を行うようにしてもよい。
【0038】
ここで、請求項3に記載の逐次比較A/D変換器において、逐次比較制御の際に、基準電位を、第1電位又は第2電位から中間電位に変更するのは、逐次比較制御開始直後の接続点電位を、基準電位を中間電位に固定する従来の逐次比較A/D変換器において、荷重容量回路に設けたMSB確定用容量素子の開放端の接続先を確定したときと同電位にするためである。
【0039】
つまり、例えば、図9に示した3ビットA/D変換用の荷重容量回路では、基準電位を中間電位に固定してサンプリング動作を実行した後の逐次比較制御で、コンデンサ56の開放端が、切換部64を介して正の電源線AVDDに接続されているとき(換言すればMSBが値「1」に確定されているとき)、A/D変換値(デジタル値)の上位2ビット目を確定するために、コンデンサ54の開放端を、正の電源線AVDDに接続すると(このとき、コンデンサ52,50の開放端は、負の電源線AVSSに接続される)、接続点電位Vcは、
Vc=−(Vin−Vref )+Vdd(6C/8C)
となり、Vin=5V、Vref =中間電位=2.5V、Vdd=5Vとすると、Vc=1.25Vとなる。
【0040】
一方、図9に示した荷重容量回路において、最大容量のコンデンサ56及びこれに対応する切換部64内のスイッチング素子を除去し、判定回路による判定結果(MSB=1)に対応して、基準電位を第1電位Vref1(Vdd=5Vの場合、3.7Vとなる)に設定してサンプリング動作を行い、その後の逐次比較制御で、基準電位を中間電位(Vdd=5Vの場合、2.5Vとなる)に変更して、コンデンサ54の開放端を、正の電源線AVDDに接続すると(このとき、コンデンサ52,50の開放端は、負の電源線AVSSに接続される)、接続点電位Vcは、
Vc=−(Vin−Vref1)+Vdd(2C/4C)
となり、Vin=5V、Vref1=3.75、Vdd=5Vとすると、Vc=1.25Vとなる。
【0041】
従って、請求項3に記載の逐次比較A/D変換器において、逐次比較制御の際の接続点電位の変化は、基準電位を中間電位に固定した従来装置において、上位2ビット目からLSBまでのデジタル値を確定するときと同じであり、従来と同様の逐次比較制御によって、A/D変換値(デジタル値)の上位2ビット目からLSBまでを確定できることがわかる。
【0042】
このように、請求項3に記載の逐次比較A/D変換器では、判定回路の動作によって得られたMSBの値に応じて設定した基準電位(第1電位又は第2電位)にてサンプリング制御を行い、逐次比較制御の際には、基準電位を中間電位に切り換えることにより、逐次比較制御開始直後の接続点電位を、MSBの値に応じて重み付けし、その後の逐次比較制御によって、MSBを除く上位2ビット目からLSBまでの値を順次確定する。
【0043】
このため、請求項3記載の逐次比較A/D変換器によれば、請求項1と同様の効果が得られるだけでなく、荷重容量回路として、n+1個の容量素子からなるnビットA/D変換用の荷重容量回路を用いた場合には、この荷重容量回路にて得られるnビットのデジタル値に、判定回路にて得られたデジタル値(1又は0)をMSBとする「n+1」ビットのA/D変換器を構成することができ、同一の荷重容量回路を備えた請求項1又は請求項2に記載の逐次比較A/D変換器に比べて、得られるデジタル値の分解能を、1ビット分増加することができる。
【0044】
また、請求項1又は請求項2に記載の逐次比較A/D変換器と同じ分解能のA/D変換器を構成する際には、荷重容量回路に設ける容量素子及びこの容量素子の開放端への印加電位切換用の回路を、1ビット分減らすことができることから、A/D変換器の構成を簡素化できることになる。そして、この場合、請求項1記載の逐次比較A/D変換器に対しては、比較器を用いたMSB確定のための判定動作を実行する必要がなくなるため、請求項2記載のものと同様、A/D変換に要する時間を短くすることができる。
【0045】
次に、請求項4記載の逐次比較A/D変換器は、請求項3記載の逐次比較A/D変換器と同様の原理で、nビットA/D変換用の荷重容量回路を用いて、m+nビットのA/D変換器を構成したものである。
つまり、請求項4記載の逐次比較A/D変換器においては、請求項1〜請求項3に記載の逐次比較A/D変換器に設けられる判定回路に代えて、アナログ入力信号を、2の累乗値にて重み付けした電圧と同時に比較することによりA/D変換するフラッシュA/D変換回路を備え、基準電位発生回路が、このフラッシュA/D変換回路によるA/D変換結果に応じて重み付けした負極側電位から前記正極側電位までの範囲内の重み付け電位と、電源電圧の正極側電位と負極側電位と間の中心となる中間電位とのいずれかを選択的に出力可能に構成される。
【0046】
そして、制御回路は、フラッシュA/D変換回路による判定結果に基づき、基準電位発生回路から重み付け電位を基準電位として出力させた後、サンプリング制御を行い、サンプリング制御が終了すると、基準電位発生回路から出力される基準電位を中間電位に変更して、逐次比較制御を行う。
【0047】
即ち、請求項4に記載の逐次比較A/D変換器では、フラッシュA/D変換回路の動作によって得られたmビットのデジタル値に応じて設定した基準電位にてサンプリング制御を行い、逐次比較制御の際には、基準電位を中間電位に切り換えることにより、逐次比較制御開始直後の接続点電位を、フラッシュA/D変換回路によるA/D変換値に応じて重み付けし、その後の逐次比較制御によって、フラッシュA/D変換回路によるmビットのA/D変換値を上位ビットデータとする、下位nビットの値を順次確定するのである。
【0048】
このため、請求項4記載の逐次比較A/D変換器によれば、請求項1と同様の効果が得られるだけでなく、荷重容量回路として、n+1個の容量素子からなるnビットA/D変換用の荷重容量回路を用いた場合には、この荷重容量回路にて得られるnビットのデジタル値に、フラッシュA/D変換回路にて得られたmビット分のデジタル値を上位ビットデータとして加えた、「m+n」ビットのA/D変換器を構成することができるようになる。
【0049】
そして、フラッシュA/D変換回路は、電源電圧を2の累乗値にて重み付けした複数の基準電圧を抵抗分圧等によって生成し、各基準電圧とアナログ入力信号とを同時に比較するものであるため、基準電圧生成用抵抗のばらつき等によりA/D変換精度は低くなるものの、アナログ入力信号のA/D変換は短時間で行うことができることから、荷重容量回路を用いた電荷再分配だけでA/D変換を行う場合に比べて、A/D変換に要する時間を極めて短くすることができる。また、A/D変換値の下位nビットは、荷重容量回路を用いた逐次比較制御によって確定するため、フラッシュA/D変換回路を用いることにより、A/D変換精度が低下することもない。
【0050】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施例を図面と共に説明する。
図1は、本発明(詳しくは請求項2)が適用された第1実施例の逐次比較A/D変換器の構成を表すブロック図である。
【0051】
図1に示すように、本実施例の逐次比較A/D変換器は、4種類のアナログ入力信号を選択的に取り込みA/D変換できるように、チャンネル0(CH0)からチャンネル3(CH3)までの入力ポート10と、入力ポート10の各チャンネルに入力された4種類のアナログ入力信号を選択的に取り込むマルチプレクサ12とを備える。そしてマルチプレクサ12により選択的に取り込まれた特定チャンネルのアナログ入力信号Vinは、オペアンプからなるバッファ回路14を介して、荷重容量回路16に入力される。
【0052】
荷重容量回路16は、容量が基準容量Cに設定された1個の容量素子と、容量が基準容量Cに2の累乗値(20 ,21 ,…,2(n-1) )を乗じた値に設定された(換言すれば2の累乗値にて重み付けされた)n個の容量素子(コンデンサ)とからなる周知のものである。
【0053】
そして、この荷重容量回路16は、図9に示した従来のものと同様、各コンデンサの一端が互いに接続されており、この接続点は、オペアンプ等からなる比較器(コンパレータ)18の反転入力端子(−)に接続されている。また、各コンデンサの接続点とは反対側の開放端は、CMOSトランジスタ等のスイッチング素子からなる切換部(図9の切換部64参照)を介して、バッファ回路14からアナログ入力信号Vinを受ける入力線INPUT、直流電源の正極側から電源供給を受ける電位Vddの電源線AVDD、及び、直流電源の負極側から電源供給を受けるグランド電位GNDの電源線AVSSのいずれかに選択的に接続できるようにされている。
【0054】
一方、コンパレータ18の非反転入力端子(+)には、基準電位発生回路20にて生成された基準電位Vref が印加されており、更に、コンパレータ18の非反転入力端子と反転入力端子との間には、これら端子間を導通・遮断するためのアナログスイッチSW1が設けられている。
【0055】
尚、基準電位発生回路20は、例えば、図2に示すように、抵抗値が同じ4個の抵抗R1〜R4からなる抵抗直列回路を、電源線AVDD−AVSS間に接続し、各抵抗R1〜R4の接続点電位を、スイッチング素子S1,S2,S3を介して選択的に出力できるようにしたものである。このため、直流電源の負極側電位GNDを「0V」とした場合、基準電位発生回路20からは、正極側電位Vddの4分の1の電位VL(=Vdd/4;以下、第2電位という)、正極側電位Vddの2分の1の電位Vo(=Vdd/2;以下、中間電位という)、及び、正極側電位Vddの4分の3の電位VH(=Vdd×3/4;以下、第1電位という)のいずれかが出力されることになる。
【0056】
次に、マルチプレクサ12,荷重容量回路16,基準電位発生回路20及びアナログスイッチSW1は、制御回路としてのコントローラ30により制御される。
コントローラ30は、マルチプレクサ12への出力信号により、マルチプレクサ12がバッファ回路14側に出力するアナログ入力信号Vinを確定した後、荷重容量回路16,アナログスイッチSW1及び基準電位発生回路20を制御することにより、前述のサンプリング制御及び逐次比較制御を行い、逐次比較制御によって得られたデジタル値を、アナログ入力信号VinのA/D変換値として外部に出力するものである。
【0057】
そして、本実施例の逐次比較A/D変換器には、各CH0〜CH3のアナログ入力信号Vinが、電源線AVDD−AVSS間の中心となる中間電位Voよりも大きいか否かを判定する判定回路(コンパレータ)22,24,26,28が備えられ、これら各コンパレータ22〜28による電圧判定値(High又はLow )も、コントローラ30に入力される。
【0058】
次に、コントローラ30がアナログ入力信号VinをA/D変換するために実行する制御動作を、図3に示すフローチャートに沿って説明する。尚、コントローラ30は、レジスタや各種ゲート回路からなるロジック回路にて構成されるが、ここでは、その動作を解り易く説明するために、フローチャートを用いて説明する。
【0059】
図3に示す如く、コントローラ30は、A/D変換対象となるチャンネルのアナログ入力信号Vinの電圧判定値を、対応するチャンネルのコンパレータ22〜28から読み込む(S110;Sはステップを表す)。
そして、この読み込んだ電圧判定値に基づき、基準電位発生回路20から出力される基準電位Vref を設定し、マルチプレクサ12からバッファ回路14を介して荷重容量回路16に入力されるアナログ入力信号Vinを、A/D変換対象となるチャンネルのアナログ入力信号に設定する(S120)。
【0060】
尚、このS120では、アナログ入力信号Vinの電圧判定値がLow レベルで、アナログ入力信号Vinが中間電位Voよりも大きい場合には、基準電位発生回路20内のスイッチング素子S3をオンして、基準電位発生回路20から出力される基準電位Vref を、直流電源の正極側電位Vddの4分の3の電位である第1電位VHに設定し、逆に、読み込んだ電圧判定値がHighレベルで、A/D変換対象となるアナログ入力信号Vinが中間電位Vo以下であれば、基準電位発生回路20のスイッチング素子S1をオンして、基準電位発生回路20から出力される基準電位Vref を、直流電源の正極側電位Vddの4分の1の電位である第2電位VLに設定する。
次に、コントローラ30は、アナログスイッチSW1をオンして、コンパレータ18の反転入力端子(換言すれば加重容量回路16内の各コンデンサの接続点)に基準電位Vref を印加すると共に、加重容量回路16内の切換部を制御して全てのコンデンサの開放端に入力線INPUTを接続することにより、各コンデンサの開放端にアナログ入力信号Vinを印加し(S130)、その後、予め設定されたサンプリング時間が経過するのを待つ(S140)。
【0061】
このS130,S140の動作は、前述のサンプリング制御を実行するための動作であり、この動作によって、荷重容量回路16内の各コンデンサには、アナログ入力信号Vinと基準電位Vref との電位差(Vin−Vref )に応じた電荷が蓄積されることになる。
【0062】
こうして、荷重容量回路16に電荷が蓄積されると、今度は、アナログスイッチSW1をオフすると共に、加重容量回路16内の切換部を制御して各コンデンサの開放端への入力線INPUTの接続を遮断することにより、各コンデンサへのアナログ入力信号Vinの印加を停止する(S150)。
【0063】
そして、その後は、S120で読み込んだ電圧判定値に基づき、荷重容量回路16において容量が最も大きいMSB側のコンデンサ(容量;2(n-1) ×C)の開放端を、正・負の電源線AVDD及びAVSSのいずれかに接続する(S160)。具体的には、電圧判定値がLow レベルで、A/D変換対象となるアナログ入力信号Vinが中間電位Voよりも大きい場合には、MSB側コンデンサの開放端に正の電源線AVDDを接続することにより、電位Vddを印加し、逆に、電圧判定値がHighレベルで、A/D変換対象となるアナログ入力信号Vinが中間電位Vo以下であれば、MSB側コンデンサの開放端に負の電源線AVSSを接続することにより、その開放端をグランド電位GNDに設定する。
【0064】
尚、この動作によって、荷重容量回路16は、最大容量のコンデンサの開放端の接続先が確定した状態となり、その接続状態から、A/D変換値のMSBの値が解る。つまり、このコンデンサの接続先が正の電源線AVDDであれば、MSBは「1」、負の電源線AVSSであれば、MSBは「0」となる。
【0065】
このようにS120で読み込んだ電圧判定値から、A/D変換値のMSBを確定すると、今度は、A/D変換値の上位2ビット目からLSBまでを確定するための逐次比較制御を行う(S170)。
具体的には、荷重容量回路16において容量を2の累乗値にて重み付けしたn個のコンデンサの内、開放端への接続先が確定していないコンデンサ(この場合、上位2ビット目に対応した容量が2番目に大きいコンデンサからLSBに対応した基準容量Cのコンデンサ)に対して、容量の大きいコンデンサ側から順に、その開放端を一旦正の電源線AVDDに接続し、そのとき、コンパレータ18の出力がHighレベルであれば、その開放端の接続先を正の電源線AVDDに確定し、コンパレータ18の出力がLow レベルであれば、その開放端の接続先を負の電源線AVSSに確定する、といった手順で、各コンデンサの開放端への接続先を正・負の電源線AVDD,AVSSのいずれかに確定してゆく。
【0066】
そして、この逐次比較制御によって、荷重容量回路16を構成するn個のコンデンサの開放端の接続先が全て確定すると、その接続状態に応じたデジタル値を、アナログ入力信号VinのA/D変換値として出力する(S180)。
以上説明したように、本実施例の逐次比較A/D変換器においては、図4に示す如く、まずA/D変換対象となるアナログ入力信号Vinが中間電位Voよりも大きいか否かを表す電圧判定値を、判定回路であるコンパレータ22〜28のいずれかから読み込み、その電圧判定値に応じて、アナログ入力信号Vinが中間電位Voよりも大きい場合には、基準電位Vref を中間電位Voと直流電源の正極側電位Vddとの中心電位である第1電位VHに設定し、アナログ入力信号Vinが中間電位Vo以下である場合には、基準電位Vref を中間電位Voと直流電源の負極側電位GNDとの中心電位である第2電位VLに設定する(時点t1)。尚、電源電圧が5Vの場合、Voは2.5V、第1電位VHは3.75V、第2電位VLは1.25Vとなる。
【0067】
このため、本実施例の逐次比較A/D変換器において、サンプリング動作時に荷重容量回路16に蓄積される電荷量(Q=荷重容量回路の総容量×(アナログ入力信号−基準電位))は、基準電位を中間電位Voに固定する従来装置に比べて半分になり、電源電圧を5Vとした場合、逐次比較動作開始後にコンパレータの反転入力端子への入力電圧範囲(接続点電圧Vcの変化範囲)は、図5に示す如く、アナログ入力信号Vinが0Vから中間電位Vo(2.5V)までの領域、及びアナログ入力信号Vinが中間電位Voから電源電圧(5V)までの領域で、夫々、基準電位Vref (2.5V)を中心として、Vref ±1.25Vの範囲で変化することになる。
【0068】
従って、本実施例の逐次比較A/D変換器によれば、逐次比較制御の際に、接続点電位Vcが直流電源の正極側電位を越えるオーバーシュートや、接続点電位Vcが直流電源の負極側電位を下回るアンダーシュートが発生するのを防止し、荷重容量回路16に蓄積された電荷の一部が抜ける電荷抜けや、荷重容量回路16を構成するコンデンサに電荷が誤注入されるミスチャージが発生するのを防止することが可能になり、アナログ入力信号VinのA/D変換精度を確保することができる。
【0069】
また、電荷抜けやミスチャージの発生を防止するために、従来のように、荷重容量回路16に、MSB確定のためのコンデンサとして、荷重容量回路16の総容量の1/4の容量を有する2つの容量素子を設け、逐次比較動作によるMSB確定時に、この2つの容量素子の開放端を、段階的に正極側電源ラインに接続する必要はないため、高精度なA/D変換を短時間で実行できる。また、荷重容量回路16を用いてnビットのA/D変換を行う場合、荷重容量回路16は、n+1個のコンデンサにて構成すればよいため、荷重容量回路16が複雑になることはなく、その構成を簡単にすることができる。
【0070】
また、図4に示すように、本実施例の逐次比較A/D変換器では、基準電位Vref を第1電位VH又は第2電位VLに設定した状態で、サンプリング制御を行い、サンプリング制御終了後、荷重容量回路16側でMSBに対応した最大容量のコンデンサの開放端の接続先を、電圧判定値に基づき確定した後、逐次比較制御を開始する(時点t2)。
【0071】
このため、時点t2以降の逐次比較制御では、荷重容量回路16において容量が2番目に大きい上位2ビット目(n−1)のコンデンサからLSBのコンデンサへと順に逐次比較制御が成されることになり、MSBのコンデンサから順に逐次比較制御を行う従来装置に比べて、逐次比較制御に要する時間を短縮し、アナログ入力信号VinのA/D変換をより短い時間で行うことが可能になる。
【0072】
以上、本発明の一実施例について説明したが、本実施例は上記実施例に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。
例えば、上記第1実施例では、請求項2記載の発明を適用することにより、サンプリング制御終了後、逐次比較制御を開始するまでの間に、荷重容量回路16において容量が最大となるMSBのコンデンサの開放端の接続先を、判定回路としてのコンパレータ22〜28によるアナログ入力信号Vinの電圧判定値に応じて確定するものとして説明したが、コントローラ30によるA/D変換の制御動作を、図6に示す手順で実行するようにしてもよい。
【0073】
以下、この図6に示すフローチャート及び図7に示すタイムチャートを用いて、請求項3記載の発明を適用した第2実施例の逐次比較A/D変換器について説明する。尚、この第2実施例の逐次比較A/D変換器のハード構成は、図1に示した第1実施例のものと同じであり、コントローラ30の動作のみが異なる。
【0074】
図6に示す如く、第2実施例の逐次比較A/D変換器において、コントローラ30は、第1実施例と同様の手順(S110〜S140)で、A/D変換対象となるアナログ入力信号Vinの電圧判定値を読み込み、その読み込んだ電圧判定値に応じて、基準電位発生回路20から出力される基準電位Vref を設定し、サンプリング制御を開始する(図7時点t1参照)。
【0075】
次に、このサンプリング制御によって荷重容量回路16にアナログ入力信号Vinと基準電位Vref との電位差に応じた電荷が蓄積されると、S150にて、アナログスイッチSW1をオフし、加重容量回路16内の切換部を制御して各コンデンサの開放端への入力線INPUTの接続を遮断することにより、サンプリング制御を終了し、逐次比較制御に移行するが、逐次比較制御の開始時(図7時点t2参照)には、基準電位発生回路20から出力される基準電位Vref を中間電位Voに変更する(S260)。
【0076】
そして、続く逐次比較制御(S270)では、S110で読み込んだ電圧判定値をA/D変換値のMSBとして、上位2ビット目からLSBまでのA/D変換値を確定すべく、荷重容量回路16において容量を2の累乗値にて重み付けしたn個のコンデンサに対して、最大容量のコンデンサから基準容量Cのコンデンサへと順に、その開放端を一旦正の電源線AVDDに接続し、そのとき、コンパレータ18の出力がHighレベルであれば、その開放端の接続先を正の電源線AVDDに確定し、コンパレータ18の出力がLow レベルであれば、その開放端の接続先を負の電源線AVSSに確定する、といった手順で、各コンデンサの開放端への接続先を正・負の電源線AVDD,AVSSのいずれかに確定してゆく。
【0077】
そして、この逐次比較制御によって、荷重容量回路16を構成するn個のコンデンサの開放端の接続先が全て確定すると、その接続状態に応じたnビットのデジタル値に、S110で読み込んだ電圧判定値をMSBとして加えた「n+1」ビットのデジタル値を、アナログ入力信号VinのA/D変換値として出力する(S280)。
【0078】
このように、第2実施例の逐次比較A/D変換器では、逐次比較制御の際に、基準電位Vref を、第1電位VH又は第2電位VLから中間電位Voに変更することにより、逐次比較制御開始直後の接続点電位Vcを、基準電位Vref を中間電位Voに固定する従来の逐次比較A/D変換器において、荷重容量回路内の最大容量のコンデンサの開放端への接続先を確定したときと同電位にし、その後、荷重容量回路16を用いた従来と同様の逐次比較制御を実行することにより、アナログ入力信号VinのA/D変換値の上位2ビット目からLSBを確定する。
【0079】
従って、第2実施例の逐次比較A/D変換器によれば、サンプリング制御実行時に荷重容量回路16に蓄積される電荷量を少なくして、逐次比較制御開始後に電荷抜けやミスチャージが発生するのを防止することができるだけでなく、n+1個のコンデンサからなるnビットA/D変換用の荷重容量回路16を用いて、「n+1」ビットのA/D変換器を構成することが可能になり、第1実施例の逐次比較A/D変換器に比べて、得られるA/D変換値の分解能を、1ビット分高めることができる。
【0080】
一方、第2実施例の逐次比較A/D変換器のように、サンプリング制御と逐次比較制御とで基準電位Vref を変更することにより、A/D変換値の上位ビットを、アナログ入力信号Vinの電圧判定値にて確定し、A/D変換値の下位nビットを、荷重容量回路を用いて確定する場合、このA/D変換値の上位ビットを、フラッシュA/D変換回路を用いて確定するようにすれば、A/D変換器の分解能をより高めることができる。以下、このように構成した逐次比較A/D変換器を、本発明の第3実施例として、図8を用いて説明する。
【0081】
図8に示す逐次比較A/D変換器は、請求項4記載の発明を適用したものであり、図1に示した第1実施例或いは第2実施例の逐次比較A/D変換器と異なる点は、
(1) 各チャンネルのアナログ入力信号Vinを中間電位Voと大小比較するコンパレータ22〜28に代えて、各チャンネルのアナログ入力信号Vinを、選択的に取り込んでmビットのデジタル値にA/D変換可能なフラッシュA/D変換回路40を設けた点。
【0082】
(2) 基準電位発生回路20を、フラッシュA/D変換回路40にて得られるmビットのデジタル値に対応した電圧信号を発生可能なD/A変換回路にて構成した点。
の2点であり、それ以外の構成要素は、図1に示したものと同じである。
【0083】
また、コントローラ30の動作手順は、基本的には、図6に示した第2実施例の動作と同じであり、異なる点は、下記▲1▼〜▲3▼の3点である。
▲1▼ S110において、電圧判定値を読み込む代わりに、フラッシュA/D変換回路40を制御して、A/D変換対象となるチャンネルのアナログ入力信号VinをA/D変換させ、得られたA/D変換値を、アナログ入力信号Vinの上位mビット分のA/D変換値として読み込む点。
【0084】
▲2▼ S120において、基準電位発生回路20に対して、S110で読み込んだmビットのA/D変換値を出力することにより、基準電位発生回路20から、そのA/D変換値に対応したアナログ電圧を基準電位Vref として出力させる点。
【0085】
▲3▼ S280において、荷重容量回路16を構成するn個のコンデンサの開放端への電源線AVDD又はAVSSの接続状態に応じたnビットのデジタル値を下位nビットとし、これに、S110で読み込んだmビットのA/D変換値を、上位mビットとして加えた「m+n」ビットのデジタル値を、アナログ入力信号VinのA/D変換値として出力する点。
【0086】
つまり、第3実施例の逐次比較A/D変換器では、フラッシュA/D変換回路40の動作によって得られたmビットのデジタル値に応じて設定した基準電位Vref にてサンプリング制御を行い、逐次比較制御の際には、基準電位Vref を中間電位Voに切り換えることにより、逐次比較制御開始直後の接続点電位Vcを、フラッシュA/D変換回路40によるA/D変換値に応じて重み付けし、その後の逐次比較制御によって、フラッシュA/D変換回路40によるmビットのA/D変換値を上位ビットデータとする、下位nビットの値を確定するのである。
【0087】
このため、本実施例の逐次比較A/D変換器によれば、第1実施例及び第2実施例のものと同様、サンプリング制御実行時に荷重容量回路16に蓄積される電荷量を少なくして、逐次比較制御開始後に電荷抜けやミスチャージが発生するのを防止することができるだけでなく、例えば、第1実施例或いは第2実施例と同じ荷重容量回路16を用いて、より高分解能のA/D変換器を構成することが可能になる。また、A/D変換値の上位mビットは、フラッシュA/D変換回路40を用いて確定するので、A/D変換に要する時間を極めて短くすることができ、しかも、A/D変換値の下位nビットは、荷重容量回路16を用いた逐次比較制御によって確定するため、A/D変換精度を確保することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1実施例の逐次比較A/D変換器の構成を表す概略構成図である。
【図2】 図1に示す基準電位発生回路の構成を表す電気回路図である。
【図3】 第1実施例のコントローラによる制御手順を説明するフローチャートである。
【図4】 第1実施例のA/D変換動作を説明するタイムチャートである。
【図5】 第1実施例のコンパレータ(比較器)への入力電圧範囲とアナログ入力信号Vinとの関係を表す説明図である。
【図6】 第2実施例のコントローラによる制御手順を説明するフローチャートである。
【図7】 第2実施例のA/D変換動作を説明するタイムチャートである。
【図8】 第3実施例の逐次比較A/D変換器の構成を表す概略構成図である。
【図9】 逐次比較A/D変換器を構成する荷重容量回路の構成例及びこれを用いた従来のA/D変換動作を表す説明図である。
【図10】 従来の逐次比較A/D変換器におけるコンパレータ(比較器)への入力電圧(Vc)とアナログ入力信号Vinとの関係を表す説明図である。
【図11】 コンパレータ(比較器)の入力端子間に設けられるアナログスイッチSW1の構成を説明する説明図である。
【符号の説明】
10…入力ポート、12…マルチプレクサ、14…バッファ回路、16…荷重容量回路、18…コンパレータ(比較器)、20…基準電位発生回路、22〜28…コンパレータ(判定回路)、30…コントローラ、40…フラッシュA/D変換回路、50〜56…コンデンサ、62…コンパレータ(比較器)、64…切換部。
【発明の属する技術分野】
本発明は、電荷再分配型の逐次比較A/D変換器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、逐次比較A/D変換器の一つとして、荷重容量回路を備えた電荷再分配型のA/D変換器が知られている。
荷重容量回路は、nビットのデジタル値を得る際には、n+1個の容量素子(コンデンサ)にて構成される。そして、図9(a)に例示するように、これらn+1個のコンデンサは、一端が互いに接続されており、その内、n個(図では3個)のコンデンサ52,54,56の容量が、基準容量Cを2の累乗値(20 ,21 ,22 )にて重み付けした容量C,2C,4Cに設定され、残りのコンデンサ50の容量が基準容量Cに設定される。
【0003】
また、荷重容量回路において、各コンデンサ50〜56の接続点は、オペアンプ等からなる比較器(コンパレータ)62の反転入力端子(−)に接続され、各コンデンサ50〜56の接続点とは反対側の開放端は、夫々、CMOSトランジスタ等のスイッチング素子からなる切換部64を介して、入力線INPUTを介して入力されるアナログ入力信号Vin、正の電源線AVDDを介して供給される直流電源の正極側電位Vdd、及び、負の電源線AVSSを介して供給される直流電源の負極側電位(一般にグランド電位)GNDの一つを選択的に印加できるようにされる。
【0004】
一方、コンパレータ62の非反転入力端子(+)には、基準電位Vref が印加されており、更に、コンパレータ62の非反転入力端子と反転入力端子との間には、これら端子間を導通・遮断するためのアナログスイッチSW1が設けられる。
【0005】
そして、こうした荷重容量回路を備えた電荷再分配型の逐次比較A/D変換器では、図示しないコントローラによる制御の下に、以下の手順で、アナログ入力信号Vinをデジタル値に変換する。
即ち、図9(b)に示す如く、まずアナログスイッチSW1をオンして、コンパレータ62の非反転入力端子(延いては各コンデンサの接続点)に反転入力端子側の基準電位Vref を印加し、切換部64を介して、各コンデンサ50〜56の開放端にアナログ入力信号Vinを印加することにより、荷重容量回路内の全コンデンサ50〜56に、アナログ入力信号Vinと基準電位Vref との電位差(Vin−Vref )に対応した電荷を蓄積させる、サンプリング動作を行う。
【0006】
次に、このサンプリング動作が完了すると、アナログスイッチSW1をオフして、各コンデンサ50〜56の接続点への基準電位Vref の印加を遮断する。そして、荷重容量回路において容量が2の累乗値にて重み付けされたn個のコンデンサ52,54,56に対して、容量が最も大きいコンデンサ56側から順に対象となるコンデンサを変更しつつ、対象となるコンデンサ56(54,52)の開放端に正の電源線AVDD(電位Vdd)を接続し、接続先が未確定のコンデンサ54,52,50の開放端に負の電源線AVSS(電位GND)を接続することにより、各コンデンサ50に蓄積された電荷の再分配を行い、そのとき得られるコンパレータ62からの出力信号に基づき、各コンデンサ50〜56の接続点電位Vcが基準電位Vref に近づくように、対象となるコンデンサ56(54,52)の開放端への接続先(換言すれば開放端の電位)を、正の電源線AVDD(電位Vdd)及び負の電源線AVSS(電位GND)のいずれかに確定してゆく、逐次比較動作を行う。
【0007】
ここで、逐次比較動作時のコンデンサ50〜56の接続点電圧Vcは、荷重容量回路を構成するn+1個のコンデンサ50〜56の総容量を「2n ・C」、開放端が正の電源線AVDDに接続されるコンデンサの容量を「x・C」とすると、次式で表すことができる。
【0008】
Vc=−(Vin−Vref )+Vdd(x・C/2n ・C)
そして、逐次比較動作では、接続点電位Vcが基準電位Vref よりも低く、コンパレータ62からの出力がHighレベルとなる場合には、対象となるコンデンサ56(54,52)の開放端への接続先を、電位Vddの正の電源線AVDDに確定し、接続点電位Vcが基準電位Vref 以上で、コンパレータ62からの出力がLow レベルとなる場合には、対象となるコンデンサ56(54,52)の開放端への接続先を、電位GNDの負の電源線AVSSに確定する。
【0009】
尚、逐次比較動作は、荷重容量回路において容量が2の累乗値にて重み付けされたn個のコンデンサ56,54,52に対してのみ順に実行されるため、残りのコンデンサ50の開放端には、常に、直流電源の負極側電位GNDが印加されることになる。また、基準電位Vref は、通常、電源線AVDD−AVSS間の中心の電位に設定され、例えば、電源電圧が5Vであれば、2.5Vとなる。
【0010】
そして、この逐次比較動作によってn個のコンデンサ56,54,52の開放端への印加電位が確定すると、開放端が正の電源線AVDDに接続されたコンデンサを値「1」、開放端が負の電源線AVSSに接続されたコンデンサを値「0」として、最大容量(この場合4C)のコンデンサ56を最上位ビット(MSB)、最小容量(基準容量C)のコンデンサ52を最下位ビット(LSB)とするnビットのデジタル値を生成し、これをアナログ入力信号VinのA/D変換値として出力する。
【0011】
このように、従来の電荷再分配型逐次比較A/D変換器では、サンプリング動作によって、アナログスイッチSW1をオン状態にして、荷重容量回路を構成する各コンデンサ50〜56に、アナログ入力信号Vinと基準電位Vref との電位差に応じた電荷Q(図9のものでは、Q=8C(Vin−Vref )となる)を蓄積させ、その後、アナログスイッチSW1をオフ状態に切り換えた後、逐次比較動作によって、各コンデンサ52〜56の開放端への接続先(換言すれば開放端の電位)を、容量の大きいコンデンサ56側(換言すればMSB側)から順に確定してゆくことにより、アナログ入力信号Vinに対応したnビットのデジタル値を生成する。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来の逐次比較A/D変換器において、5Vの直流電源を用いて、アナログ入力信号Vinを0Vから5Vまで変化させた場合、逐次比較動作によるMSB確定時の接続点電圧Vcは、本来、図10に実線で示すように、アナログ入力信号Vinに応じて、5Vから0Vまで変化する。
【0013】
つまり、例えば、図9(a)に示した荷重容量回路を備えたA/D変換器の場合、MSB確定のための逐次比較動作時には、切換部64を介して、容量4Cのコンデンサ56の開放端が正の電源線AVDD(電位5V)に接続され、残りのコンデンサ50〜54の開放端が負の電源線AVSS(電位0V)に接続されることから、各コンデンサ50〜56の接続点電位Vcは、
となり、アナログ入力信号Vinが0Vのときには、Vc=5V、アナログ入力信号Vinが5Vのときには、Vc=0Vとなる。
【0014】
しかしながら、実際には、MSB確定のための逐次比較動作時に、切換部64を介して各コンデンサ50〜56の開放端を電源線AVDD又はAVSSに接続すると、配線のインピーダンスや切換部64内で発生したスイッチングノイズ等によって、接続点電位Vcが5Vを越えるオーバーシュートや、接続点電位Vcが0Vを下回るアンダーシュートが発生することがある。
【0015】
そして、こうしたオーバーシュートやアンダーシュートが発生すると、コンパレータ62の入力端子間に設けられたアナログスイッチSW1によって、各コンデンサ50〜56の接続点から電荷が抜けたり、逆に接続点に電荷が誤注入(ミスチャージ)されてしまうことがある。
【0016】
即ち、電荷再分配型逐次比較A/D変換器において、アナログスイッチSW1(切換部64内のスイッチング素子も同じである)は、通常、図11(a)に示す如ように、PチャネルMOSFET(PchTr)とNチャネルMOSFET(NchTr)とにより構成され、一方のFET(図ではPchTr)には、図示しないコントローラからの切換信号を直接入力し、他方のFET(図ではNchTr)には切換信号をインバータINVを介して入力することにより、そのオン・オフ状態を切り換えるようにしている。
【0017】
また、図11(b)に示す如く、PchTr及びNchTrは、夫々、半導体基板の表面に拡散形成されたNウェル及びPウェルの中に夫々形成されており、しかも、PchTrが形成されるNウェルには、PchTrと基板とを電気的に絶縁するためのバックゲート72が形成され、NchTrが形成されるPウェルには、NchTrと基板とを電気的に絶縁するためのバックゲート74が形成されている。そして、PchTr及びNchTrのソースには、接続点電位Vcが印加され、PchTr及びNchTrのソドレインには、基準電位Vref が印加され、PchTr側のバックゲート72には、電源電圧Vdd(5V)が印加され、NchTr側のバックゲート74はグランド(0V)に接地される。
【0018】
このため、上記のように、MSB確定のための逐次比較動作時に、接続点電位Vcが5Vを越えるオーバーシュートが発生すると、PchTrのソースからバックゲート72へと電流が流れ、サンプリング動作時にコンデンサ50〜56に蓄積された電荷の一部が抜けてしまい、逆に、接続点電位Vcが0Vを下回るアンダーシュートが発生すると、バックゲート72が接地されたグランド側からNchTrのソースへと電流が流れ、コンデンサ50〜56がミスチャージされることになる。
【0019】
また、こうした電荷抜けやミスチャージは、切換部64において、MSBのコンデンサ56を正の電源線AVDDへ接続するスイッチング素子の応答速度と、他のコンデンサ50〜54を負の電源線AVSSへ接続するスイッチング素子の応答速度との違いによっても発生する。
【0020】
つまり、切換部64において、正の電源線AVDD側への切換が、負の電源線AVSSへの接続よりも早く行われると、接続点電位Vcは、図10に点線で示す如く「Vc=−2(Vin−Vref )」となり、アナログ入力信号Vinが、2.5V<Vin≦5Vであるとき、接続点電位Vcが電源線AVSSの電位(グランド電位)GNDよりも低い負電位(換言すればアンダーシュート)となって、ミスチャージ(電荷誤注入)が発生する。
【0021】
また、逆に、負の電源線AVSS側への切換が、正の電源線AVDDへの接続よりも早く行われると、接続点電位Vcは、図10に一点鎖線で示す如く「Vc=Vdd−2(Vin−Vref )」となり、アナログ入力信号Vinが、0≦Vin<2.5であるとき、接続点電位Vcが電源線AVDDの電位(電源電圧)Vddよりも高い高電位(換言すればオーバーシュート)となって、電荷抜けが発生する。
【0022】
そして、このように電荷抜けやミスチャージが発生すると、その後の逐次比較動作によって、アナログ入力信号を正常にA/D変換することができなくなり、A/D変換精度が低下する。
そこで、従来では、電荷再分配型逐次比較A/D変換器において、こうした電荷抜けやミスチャージを発生させることなく、良好なA/D変換を行うことができるようにするために、最上位ビットMSB用のコンデンサを、荷重容量回路を構成する全コンデンサの容量の4分の1の容量を有する2つのコンデンサにて構成し、MSB確定のための逐次比較動作では、この2つのコンデンサの電源線AVDDへの接続を時間差を設けて行うようにすることが考えられている。
【0023】
しかし、このような対策では、荷重容量回路の構成が複雑になり、しかも、切換部のスイッチ操作を時間を空けて行う必要があることから、A/D変換に要する時間も長くなる、という問題があった。
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、電荷再分配型の逐次比較A/D変換器において、逐次比較動作時に、荷重容量回路からの電荷抜け及び電荷の誤注入を発生させることなく、良好にA/D変換を行うことができ、しかも、A/D変換を高速に行うことができるようにすることを目的とする。
【0024】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するためになされた請求項1記載の逐次比較A/D変換器には、既述した従来の電荷再分配型逐次比較A/D変換器と同様、一端が互いに接続されたn+1個の容量素子を備え、n個の容量素子が、夫々、基準容量を2の累乗値(20 ,21 ,22 …)にて重み付けした容量に設定され、残りの容量素子が基準容量に設定された荷重容量回路が設けられる。そして、比較器が、この荷重容量回路を構成する全容量素子の一端を互いに接続した接続点の電位と、基準電位とを大小比較する。
【0025】
また、比較器の入力に接続される各容量素子の接続点と、前記基準電位の入力経路との間には、これらを導通・遮断するためのアナログスイッチが設けられる。そして、アナログ入力信号をA/D変換する際には、制御回路が、まず、このアナログスイッチをオンして各容量素子の接続点に基準電位を印加し、各容量素子の接続点とは反対側の開放端にアナログ入力信号を印加することにより、荷重容量回路内の全容量素子に、アナログ入力信号と前記基準電位との電位差に対応した電荷を蓄積させる、サンプリング制御を行う。
【0026】
また、制御回路は、サンプリング制御終了後、アナログスイッチをオフして各容量素子の接続点への基準電位の印加を遮断した状態で、荷重容量回路において容量が2の累乗値にて重み付けされたn個の容量素子に対して、容量が最も大きい容量素子側から順に対象となる容量素子を変更しつつ、対象となる容量素子の開放端に直流電源の正極側を接続し、接続先が未確定の容量素子の開放端に直流電源の負極側を接続することにより、各容量素子に蓄積された電荷の再分配を行い、そのとき得られる前記比較器からの出力信号に基づき、前記接続点の電位が前記基準電位に近づくように、対象となる容量素子の開放端への接続先を前記直流電源の正極側又は負極側に確定してゆく、逐次比較制御を行う。
【0027】
そして、逐次比較A/D変換器からは、この制御回路による逐次比較制御によって確定したn個の容量素子の開放端への直流電源の接続状態位に対応したデジタル値が、アナログ入力信号のA/D変換値として出力される。
一方、本発明(請求項1)の逐次比較A/D変換器には、A/D変換すべきアナログ入力信号が、電源電圧の正極側電位と負極側電位と間の中心となる中間電位よりも大きいか否かを判定する判定回路と、基準電位として、中間電位と電源電圧の正極側電位との間の第1電位、及び、中間電位と電源電圧の負極側電位との間の第2電位、のいずれかを選択的に出力可能な基準電位発生回路とが備えられる。
【0028】
そして、制御回路は、判定回路による判定結果に基づき、基準電位発生回路から出力される基準電位を、アナログ入力信号が中間電位よりも高い場合には第1電位、アナログ入力信号が中間電位よりも低い場合には第2電位となるよう設定した後、サンプリング制御及び逐次比較制御を行う。
【0029】
つまり、本発明(請求項1)の逐次比較A/D変換器においては、既述した従来の電荷再分配型逐次比較A/D変換器と同様に、サンプリング動作及び逐次比較動作を行うことによって、アナログ入力信号をデジタル値に変換するだけでなく、サンプリング動作に入る前に、判定回路によって、アナログ入力信号が、従来装置において基準電位として設定されている直流電源の正極側電位と負極側電位との間の中心電位(中間電位)よりも大きいか否かを判断し、その判定結果に従い、アナログ入力信号が中間電位よりも高い場合には、基準電位発生回路から出力される基準電位を、中間電位と直流電源の正極側電位との間の第1電位に設定し、アナログ入力信号が中間電位よりも低い場合には、基準電位発生回路から出力される基準電位を、中間電位と直流電源の負極側電位との間の第2電位に設定する。
【0030】
このため、本発明の逐次比較A/D変換器においては、サンプリング動作時に荷重容量回路に蓄積される電荷量(Q=荷重容量回路の総容量×(アナログ入力信号−基準電位))が、基準電位を中間電位に固定する従来装置に比べて少なくなり、逐次比較動作開始後に、荷重容量回路の各容量素子の接続点電位が直流電源の正極側電位を越えるオーバーシュートや、接続点電位が直流電源の負極側電位を下回るアンダーシュートが発生するのを抑制することができる。
【0031】
よって、本発明によれば、逐次比較動作時に、荷重容量回路に蓄積された電荷の一部が抜ける電荷抜けや、荷重容量回路を構成する容量素子に電荷が誤注入されるミスチャージが発生するのを抑制でき、アナログ入力信号のA/D変換精度を確保することができる。
【0032】
また、電荷抜けやミスチャージの発生を防止するために、従来のように、荷重容量回路に、MSB確定のための容量素子として、荷重容量回路の総容量の1/4の容量を有する2つの容量素子を設け、逐次比較動作によるMSB確定時に、この2つの容量素子の開放端を、段階的に正極側電源ラインに接続する必要はないため、高精度なA/D変換を短時間で実行できる。また、nビットのA/D変換を行う場合、荷重容量回路は、n+1個の容量素子にて構成すればよいため、荷重容量回路が複雑になることはなく、その構成を簡単にすることができる。
【0033】
ここで、逐次比較動作は、従来装置と同様、荷重容量回路において、最大容量に設定(基準容量Cの2(nー1) 倍に重み付け)されたMSB確定用の容量素子から順に、その開放端に電源電圧の正極側電位を印加することにより行うようにしても良い。
【0034】
しかし、本発明では、サンプリング動作に入る前に、判定回路を用いて、アナログ入力信号が中間電位よりも大きいか否かを判断しており、この判定回路から、アナログ入力信号が中間電位よりも大きければ「MSB=1」、アナログ入力信号が中間電位以下であれば「MSB=0」として、MSBの値を確定することができるによる判定結果から、アナログ入力信号の最上位ビットを確定することができる。
【0035】
そこで、本発明(請求項1)の逐次比較A/D変換器は、請求項2に記載のように、制御回路を、逐次比較制御の開始時に、判定回路による判定結果に基づき、荷重容量回路を構成する最大容量の容量素子の開放端への印加電位を確定し、逐次比較制御では、荷重容量回路において2番目に容量が大きい容量素子から順に、各容量素子への印加電位を確定するように構成してもよい。
【0036】
そして、逐次比較A/D変換器を請求項2に記載のように構成した場合、請求項1と同様の効果が得られるだけでなく、逐次比較制御では、比較器を用いたMSB確定のための判定動作を実行する必要がなくなるため、A/D変換に要する時間を短くすることができる。
【0037】
また、本発明(請求項1)の逐次比較A/D変換器においては、請求項3に記載のように、基準電位発生回路を、中間電位と正極側電位との間の中心電位を第1電位、中間電位と負極側電位との間の中心電位を第2電位、として夫々出力可能で、しかも、これら第1電位及び第2電位に加えて、中間電位を出力可能に構成し、制御回路を、サンプリング制御終了後に、基準電位発生回路から出力される基準電位を、第1電位又は第2電位から前記中間電位に変更し、逐次比較制御を行うようにしてもよい。
【0038】
ここで、請求項3に記載の逐次比較A/D変換器において、逐次比較制御の際に、基準電位を、第1電位又は第2電位から中間電位に変更するのは、逐次比較制御開始直後の接続点電位を、基準電位を中間電位に固定する従来の逐次比較A/D変換器において、荷重容量回路に設けたMSB確定用容量素子の開放端の接続先を確定したときと同電位にするためである。
【0039】
つまり、例えば、図9に示した3ビットA/D変換用の荷重容量回路では、基準電位を中間電位に固定してサンプリング動作を実行した後の逐次比較制御で、コンデンサ56の開放端が、切換部64を介して正の電源線AVDDに接続されているとき(換言すればMSBが値「1」に確定されているとき)、A/D変換値(デジタル値)の上位2ビット目を確定するために、コンデンサ54の開放端を、正の電源線AVDDに接続すると(このとき、コンデンサ52,50の開放端は、負の電源線AVSSに接続される)、接続点電位Vcは、
Vc=−(Vin−Vref )+Vdd(6C/8C)
となり、Vin=5V、Vref =中間電位=2.5V、Vdd=5Vとすると、Vc=1.25Vとなる。
【0040】
一方、図9に示した荷重容量回路において、最大容量のコンデンサ56及びこれに対応する切換部64内のスイッチング素子を除去し、判定回路による判定結果(MSB=1)に対応して、基準電位を第1電位Vref1(Vdd=5Vの場合、3.7Vとなる)に設定してサンプリング動作を行い、その後の逐次比較制御で、基準電位を中間電位(Vdd=5Vの場合、2.5Vとなる)に変更して、コンデンサ54の開放端を、正の電源線AVDDに接続すると(このとき、コンデンサ52,50の開放端は、負の電源線AVSSに接続される)、接続点電位Vcは、
Vc=−(Vin−Vref1)+Vdd(2C/4C)
となり、Vin=5V、Vref1=3.75、Vdd=5Vとすると、Vc=1.25Vとなる。
【0041】
従って、請求項3に記載の逐次比較A/D変換器において、逐次比較制御の際の接続点電位の変化は、基準電位を中間電位に固定した従来装置において、上位2ビット目からLSBまでのデジタル値を確定するときと同じであり、従来と同様の逐次比較制御によって、A/D変換値(デジタル値)の上位2ビット目からLSBまでを確定できることがわかる。
【0042】
このように、請求項3に記載の逐次比較A/D変換器では、判定回路の動作によって得られたMSBの値に応じて設定した基準電位(第1電位又は第2電位)にてサンプリング制御を行い、逐次比較制御の際には、基準電位を中間電位に切り換えることにより、逐次比較制御開始直後の接続点電位を、MSBの値に応じて重み付けし、その後の逐次比較制御によって、MSBを除く上位2ビット目からLSBまでの値を順次確定する。
【0043】
このため、請求項3記載の逐次比較A/D変換器によれば、請求項1と同様の効果が得られるだけでなく、荷重容量回路として、n+1個の容量素子からなるnビットA/D変換用の荷重容量回路を用いた場合には、この荷重容量回路にて得られるnビットのデジタル値に、判定回路にて得られたデジタル値(1又は0)をMSBとする「n+1」ビットのA/D変換器を構成することができ、同一の荷重容量回路を備えた請求項1又は請求項2に記載の逐次比較A/D変換器に比べて、得られるデジタル値の分解能を、1ビット分増加することができる。
【0044】
また、請求項1又は請求項2に記載の逐次比較A/D変換器と同じ分解能のA/D変換器を構成する際には、荷重容量回路に設ける容量素子及びこの容量素子の開放端への印加電位切換用の回路を、1ビット分減らすことができることから、A/D変換器の構成を簡素化できることになる。そして、この場合、請求項1記載の逐次比較A/D変換器に対しては、比較器を用いたMSB確定のための判定動作を実行する必要がなくなるため、請求項2記載のものと同様、A/D変換に要する時間を短くすることができる。
【0045】
次に、請求項4記載の逐次比較A/D変換器は、請求項3記載の逐次比較A/D変換器と同様の原理で、nビットA/D変換用の荷重容量回路を用いて、m+nビットのA/D変換器を構成したものである。
つまり、請求項4記載の逐次比較A/D変換器においては、請求項1〜請求項3に記載の逐次比較A/D変換器に設けられる判定回路に代えて、アナログ入力信号を、2の累乗値にて重み付けした電圧と同時に比較することによりA/D変換するフラッシュA/D変換回路を備え、基準電位発生回路が、このフラッシュA/D変換回路によるA/D変換結果に応じて重み付けした負極側電位から前記正極側電位までの範囲内の重み付け電位と、電源電圧の正極側電位と負極側電位と間の中心となる中間電位とのいずれかを選択的に出力可能に構成される。
【0046】
そして、制御回路は、フラッシュA/D変換回路による判定結果に基づき、基準電位発生回路から重み付け電位を基準電位として出力させた後、サンプリング制御を行い、サンプリング制御が終了すると、基準電位発生回路から出力される基準電位を中間電位に変更して、逐次比較制御を行う。
【0047】
即ち、請求項4に記載の逐次比較A/D変換器では、フラッシュA/D変換回路の動作によって得られたmビットのデジタル値に応じて設定した基準電位にてサンプリング制御を行い、逐次比較制御の際には、基準電位を中間電位に切り換えることにより、逐次比較制御開始直後の接続点電位を、フラッシュA/D変換回路によるA/D変換値に応じて重み付けし、その後の逐次比較制御によって、フラッシュA/D変換回路によるmビットのA/D変換値を上位ビットデータとする、下位nビットの値を順次確定するのである。
【0048】
このため、請求項4記載の逐次比較A/D変換器によれば、請求項1と同様の効果が得られるだけでなく、荷重容量回路として、n+1個の容量素子からなるnビットA/D変換用の荷重容量回路を用いた場合には、この荷重容量回路にて得られるnビットのデジタル値に、フラッシュA/D変換回路にて得られたmビット分のデジタル値を上位ビットデータとして加えた、「m+n」ビットのA/D変換器を構成することができるようになる。
【0049】
そして、フラッシュA/D変換回路は、電源電圧を2の累乗値にて重み付けした複数の基準電圧を抵抗分圧等によって生成し、各基準電圧とアナログ入力信号とを同時に比較するものであるため、基準電圧生成用抵抗のばらつき等によりA/D変換精度は低くなるものの、アナログ入力信号のA/D変換は短時間で行うことができることから、荷重容量回路を用いた電荷再分配だけでA/D変換を行う場合に比べて、A/D変換に要する時間を極めて短くすることができる。また、A/D変換値の下位nビットは、荷重容量回路を用いた逐次比較制御によって確定するため、フラッシュA/D変換回路を用いることにより、A/D変換精度が低下することもない。
【0050】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施例を図面と共に説明する。
図1は、本発明(詳しくは請求項2)が適用された第1実施例の逐次比較A/D変換器の構成を表すブロック図である。
【0051】
図1に示すように、本実施例の逐次比較A/D変換器は、4種類のアナログ入力信号を選択的に取り込みA/D変換できるように、チャンネル0(CH0)からチャンネル3(CH3)までの入力ポート10と、入力ポート10の各チャンネルに入力された4種類のアナログ入力信号を選択的に取り込むマルチプレクサ12とを備える。そしてマルチプレクサ12により選択的に取り込まれた特定チャンネルのアナログ入力信号Vinは、オペアンプからなるバッファ回路14を介して、荷重容量回路16に入力される。
【0052】
荷重容量回路16は、容量が基準容量Cに設定された1個の容量素子と、容量が基準容量Cに2の累乗値(20 ,21 ,…,2(n-1) )を乗じた値に設定された(換言すれば2の累乗値にて重み付けされた)n個の容量素子(コンデンサ)とからなる周知のものである。
【0053】
そして、この荷重容量回路16は、図9に示した従来のものと同様、各コンデンサの一端が互いに接続されており、この接続点は、オペアンプ等からなる比較器(コンパレータ)18の反転入力端子(−)に接続されている。また、各コンデンサの接続点とは反対側の開放端は、CMOSトランジスタ等のスイッチング素子からなる切換部(図9の切換部64参照)を介して、バッファ回路14からアナログ入力信号Vinを受ける入力線INPUT、直流電源の正極側から電源供給を受ける電位Vddの電源線AVDD、及び、直流電源の負極側から電源供給を受けるグランド電位GNDの電源線AVSSのいずれかに選択的に接続できるようにされている。
【0054】
一方、コンパレータ18の非反転入力端子(+)には、基準電位発生回路20にて生成された基準電位Vref が印加されており、更に、コンパレータ18の非反転入力端子と反転入力端子との間には、これら端子間を導通・遮断するためのアナログスイッチSW1が設けられている。
【0055】
尚、基準電位発生回路20は、例えば、図2に示すように、抵抗値が同じ4個の抵抗R1〜R4からなる抵抗直列回路を、電源線AVDD−AVSS間に接続し、各抵抗R1〜R4の接続点電位を、スイッチング素子S1,S2,S3を介して選択的に出力できるようにしたものである。このため、直流電源の負極側電位GNDを「0V」とした場合、基準電位発生回路20からは、正極側電位Vddの4分の1の電位VL(=Vdd/4;以下、第2電位という)、正極側電位Vddの2分の1の電位Vo(=Vdd/2;以下、中間電位という)、及び、正極側電位Vddの4分の3の電位VH(=Vdd×3/4;以下、第1電位という)のいずれかが出力されることになる。
【0056】
次に、マルチプレクサ12,荷重容量回路16,基準電位発生回路20及びアナログスイッチSW1は、制御回路としてのコントローラ30により制御される。
コントローラ30は、マルチプレクサ12への出力信号により、マルチプレクサ12がバッファ回路14側に出力するアナログ入力信号Vinを確定した後、荷重容量回路16,アナログスイッチSW1及び基準電位発生回路20を制御することにより、前述のサンプリング制御及び逐次比較制御を行い、逐次比較制御によって得られたデジタル値を、アナログ入力信号VinのA/D変換値として外部に出力するものである。
【0057】
そして、本実施例の逐次比較A/D変換器には、各CH0〜CH3のアナログ入力信号Vinが、電源線AVDD−AVSS間の中心となる中間電位Voよりも大きいか否かを判定する判定回路(コンパレータ)22,24,26,28が備えられ、これら各コンパレータ22〜28による電圧判定値(High又はLow )も、コントローラ30に入力される。
【0058】
次に、コントローラ30がアナログ入力信号VinをA/D変換するために実行する制御動作を、図3に示すフローチャートに沿って説明する。尚、コントローラ30は、レジスタや各種ゲート回路からなるロジック回路にて構成されるが、ここでは、その動作を解り易く説明するために、フローチャートを用いて説明する。
【0059】
図3に示す如く、コントローラ30は、A/D変換対象となるチャンネルのアナログ入力信号Vinの電圧判定値を、対応するチャンネルのコンパレータ22〜28から読み込む(S110;Sはステップを表す)。
そして、この読み込んだ電圧判定値に基づき、基準電位発生回路20から出力される基準電位Vref を設定し、マルチプレクサ12からバッファ回路14を介して荷重容量回路16に入力されるアナログ入力信号Vinを、A/D変換対象となるチャンネルのアナログ入力信号に設定する(S120)。
【0060】
尚、このS120では、アナログ入力信号Vinの電圧判定値がLow レベルで、アナログ入力信号Vinが中間電位Voよりも大きい場合には、基準電位発生回路20内のスイッチング素子S3をオンして、基準電位発生回路20から出力される基準電位Vref を、直流電源の正極側電位Vddの4分の3の電位である第1電位VHに設定し、逆に、読み込んだ電圧判定値がHighレベルで、A/D変換対象となるアナログ入力信号Vinが中間電位Vo以下であれば、基準電位発生回路20のスイッチング素子S1をオンして、基準電位発生回路20から出力される基準電位Vref を、直流電源の正極側電位Vddの4分の1の電位である第2電位VLに設定する。
次に、コントローラ30は、アナログスイッチSW1をオンして、コンパレータ18の反転入力端子(換言すれば加重容量回路16内の各コンデンサの接続点)に基準電位Vref を印加すると共に、加重容量回路16内の切換部を制御して全てのコンデンサの開放端に入力線INPUTを接続することにより、各コンデンサの開放端にアナログ入力信号Vinを印加し(S130)、その後、予め設定されたサンプリング時間が経過するのを待つ(S140)。
【0061】
このS130,S140の動作は、前述のサンプリング制御を実行するための動作であり、この動作によって、荷重容量回路16内の各コンデンサには、アナログ入力信号Vinと基準電位Vref との電位差(Vin−Vref )に応じた電荷が蓄積されることになる。
【0062】
こうして、荷重容量回路16に電荷が蓄積されると、今度は、アナログスイッチSW1をオフすると共に、加重容量回路16内の切換部を制御して各コンデンサの開放端への入力線INPUTの接続を遮断することにより、各コンデンサへのアナログ入力信号Vinの印加を停止する(S150)。
【0063】
そして、その後は、S120で読み込んだ電圧判定値に基づき、荷重容量回路16において容量が最も大きいMSB側のコンデンサ(容量;2(n-1) ×C)の開放端を、正・負の電源線AVDD及びAVSSのいずれかに接続する(S160)。具体的には、電圧判定値がLow レベルで、A/D変換対象となるアナログ入力信号Vinが中間電位Voよりも大きい場合には、MSB側コンデンサの開放端に正の電源線AVDDを接続することにより、電位Vddを印加し、逆に、電圧判定値がHighレベルで、A/D変換対象となるアナログ入力信号Vinが中間電位Vo以下であれば、MSB側コンデンサの開放端に負の電源線AVSSを接続することにより、その開放端をグランド電位GNDに設定する。
【0064】
尚、この動作によって、荷重容量回路16は、最大容量のコンデンサの開放端の接続先が確定した状態となり、その接続状態から、A/D変換値のMSBの値が解る。つまり、このコンデンサの接続先が正の電源線AVDDであれば、MSBは「1」、負の電源線AVSSであれば、MSBは「0」となる。
【0065】
このようにS120で読み込んだ電圧判定値から、A/D変換値のMSBを確定すると、今度は、A/D変換値の上位2ビット目からLSBまでを確定するための逐次比較制御を行う(S170)。
具体的には、荷重容量回路16において容量を2の累乗値にて重み付けしたn個のコンデンサの内、開放端への接続先が確定していないコンデンサ(この場合、上位2ビット目に対応した容量が2番目に大きいコンデンサからLSBに対応した基準容量Cのコンデンサ)に対して、容量の大きいコンデンサ側から順に、その開放端を一旦正の電源線AVDDに接続し、そのとき、コンパレータ18の出力がHighレベルであれば、その開放端の接続先を正の電源線AVDDに確定し、コンパレータ18の出力がLow レベルであれば、その開放端の接続先を負の電源線AVSSに確定する、といった手順で、各コンデンサの開放端への接続先を正・負の電源線AVDD,AVSSのいずれかに確定してゆく。
【0066】
そして、この逐次比較制御によって、荷重容量回路16を構成するn個のコンデンサの開放端の接続先が全て確定すると、その接続状態に応じたデジタル値を、アナログ入力信号VinのA/D変換値として出力する(S180)。
以上説明したように、本実施例の逐次比較A/D変換器においては、図4に示す如く、まずA/D変換対象となるアナログ入力信号Vinが中間電位Voよりも大きいか否かを表す電圧判定値を、判定回路であるコンパレータ22〜28のいずれかから読み込み、その電圧判定値に応じて、アナログ入力信号Vinが中間電位Voよりも大きい場合には、基準電位Vref を中間電位Voと直流電源の正極側電位Vddとの中心電位である第1電位VHに設定し、アナログ入力信号Vinが中間電位Vo以下である場合には、基準電位Vref を中間電位Voと直流電源の負極側電位GNDとの中心電位である第2電位VLに設定する(時点t1)。尚、電源電圧が5Vの場合、Voは2.5V、第1電位VHは3.75V、第2電位VLは1.25Vとなる。
【0067】
このため、本実施例の逐次比較A/D変換器において、サンプリング動作時に荷重容量回路16に蓄積される電荷量(Q=荷重容量回路の総容量×(アナログ入力信号−基準電位))は、基準電位を中間電位Voに固定する従来装置に比べて半分になり、電源電圧を5Vとした場合、逐次比較動作開始後にコンパレータの反転入力端子への入力電圧範囲(接続点電圧Vcの変化範囲)は、図5に示す如く、アナログ入力信号Vinが0Vから中間電位Vo(2.5V)までの領域、及びアナログ入力信号Vinが中間電位Voから電源電圧(5V)までの領域で、夫々、基準電位Vref (2.5V)を中心として、Vref ±1.25Vの範囲で変化することになる。
【0068】
従って、本実施例の逐次比較A/D変換器によれば、逐次比較制御の際に、接続点電位Vcが直流電源の正極側電位を越えるオーバーシュートや、接続点電位Vcが直流電源の負極側電位を下回るアンダーシュートが発生するのを防止し、荷重容量回路16に蓄積された電荷の一部が抜ける電荷抜けや、荷重容量回路16を構成するコンデンサに電荷が誤注入されるミスチャージが発生するのを防止することが可能になり、アナログ入力信号VinのA/D変換精度を確保することができる。
【0069】
また、電荷抜けやミスチャージの発生を防止するために、従来のように、荷重容量回路16に、MSB確定のためのコンデンサとして、荷重容量回路16の総容量の1/4の容量を有する2つの容量素子を設け、逐次比較動作によるMSB確定時に、この2つの容量素子の開放端を、段階的に正極側電源ラインに接続する必要はないため、高精度なA/D変換を短時間で実行できる。また、荷重容量回路16を用いてnビットのA/D変換を行う場合、荷重容量回路16は、n+1個のコンデンサにて構成すればよいため、荷重容量回路16が複雑になることはなく、その構成を簡単にすることができる。
【0070】
また、図4に示すように、本実施例の逐次比較A/D変換器では、基準電位Vref を第1電位VH又は第2電位VLに設定した状態で、サンプリング制御を行い、サンプリング制御終了後、荷重容量回路16側でMSBに対応した最大容量のコンデンサの開放端の接続先を、電圧判定値に基づき確定した後、逐次比較制御を開始する(時点t2)。
【0071】
このため、時点t2以降の逐次比較制御では、荷重容量回路16において容量が2番目に大きい上位2ビット目(n−1)のコンデンサからLSBのコンデンサへと順に逐次比較制御が成されることになり、MSBのコンデンサから順に逐次比較制御を行う従来装置に比べて、逐次比較制御に要する時間を短縮し、アナログ入力信号VinのA/D変換をより短い時間で行うことが可能になる。
【0072】
以上、本発明の一実施例について説明したが、本実施例は上記実施例に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。
例えば、上記第1実施例では、請求項2記載の発明を適用することにより、サンプリング制御終了後、逐次比較制御を開始するまでの間に、荷重容量回路16において容量が最大となるMSBのコンデンサの開放端の接続先を、判定回路としてのコンパレータ22〜28によるアナログ入力信号Vinの電圧判定値に応じて確定するものとして説明したが、コントローラ30によるA/D変換の制御動作を、図6に示す手順で実行するようにしてもよい。
【0073】
以下、この図6に示すフローチャート及び図7に示すタイムチャートを用いて、請求項3記載の発明を適用した第2実施例の逐次比較A/D変換器について説明する。尚、この第2実施例の逐次比較A/D変換器のハード構成は、図1に示した第1実施例のものと同じであり、コントローラ30の動作のみが異なる。
【0074】
図6に示す如く、第2実施例の逐次比較A/D変換器において、コントローラ30は、第1実施例と同様の手順(S110〜S140)で、A/D変換対象となるアナログ入力信号Vinの電圧判定値を読み込み、その読み込んだ電圧判定値に応じて、基準電位発生回路20から出力される基準電位Vref を設定し、サンプリング制御を開始する(図7時点t1参照)。
【0075】
次に、このサンプリング制御によって荷重容量回路16にアナログ入力信号Vinと基準電位Vref との電位差に応じた電荷が蓄積されると、S150にて、アナログスイッチSW1をオフし、加重容量回路16内の切換部を制御して各コンデンサの開放端への入力線INPUTの接続を遮断することにより、サンプリング制御を終了し、逐次比較制御に移行するが、逐次比較制御の開始時(図7時点t2参照)には、基準電位発生回路20から出力される基準電位Vref を中間電位Voに変更する(S260)。
【0076】
そして、続く逐次比較制御(S270)では、S110で読み込んだ電圧判定値をA/D変換値のMSBとして、上位2ビット目からLSBまでのA/D変換値を確定すべく、荷重容量回路16において容量を2の累乗値にて重み付けしたn個のコンデンサに対して、最大容量のコンデンサから基準容量Cのコンデンサへと順に、その開放端を一旦正の電源線AVDDに接続し、そのとき、コンパレータ18の出力がHighレベルであれば、その開放端の接続先を正の電源線AVDDに確定し、コンパレータ18の出力がLow レベルであれば、その開放端の接続先を負の電源線AVSSに確定する、といった手順で、各コンデンサの開放端への接続先を正・負の電源線AVDD,AVSSのいずれかに確定してゆく。
【0077】
そして、この逐次比較制御によって、荷重容量回路16を構成するn個のコンデンサの開放端の接続先が全て確定すると、その接続状態に応じたnビットのデジタル値に、S110で読み込んだ電圧判定値をMSBとして加えた「n+1」ビットのデジタル値を、アナログ入力信号VinのA/D変換値として出力する(S280)。
【0078】
このように、第2実施例の逐次比較A/D変換器では、逐次比較制御の際に、基準電位Vref を、第1電位VH又は第2電位VLから中間電位Voに変更することにより、逐次比較制御開始直後の接続点電位Vcを、基準電位Vref を中間電位Voに固定する従来の逐次比較A/D変換器において、荷重容量回路内の最大容量のコンデンサの開放端への接続先を確定したときと同電位にし、その後、荷重容量回路16を用いた従来と同様の逐次比較制御を実行することにより、アナログ入力信号VinのA/D変換値の上位2ビット目からLSBを確定する。
【0079】
従って、第2実施例の逐次比較A/D変換器によれば、サンプリング制御実行時に荷重容量回路16に蓄積される電荷量を少なくして、逐次比較制御開始後に電荷抜けやミスチャージが発生するのを防止することができるだけでなく、n+1個のコンデンサからなるnビットA/D変換用の荷重容量回路16を用いて、「n+1」ビットのA/D変換器を構成することが可能になり、第1実施例の逐次比較A/D変換器に比べて、得られるA/D変換値の分解能を、1ビット分高めることができる。
【0080】
一方、第2実施例の逐次比較A/D変換器のように、サンプリング制御と逐次比較制御とで基準電位Vref を変更することにより、A/D変換値の上位ビットを、アナログ入力信号Vinの電圧判定値にて確定し、A/D変換値の下位nビットを、荷重容量回路を用いて確定する場合、このA/D変換値の上位ビットを、フラッシュA/D変換回路を用いて確定するようにすれば、A/D変換器の分解能をより高めることができる。以下、このように構成した逐次比較A/D変換器を、本発明の第3実施例として、図8を用いて説明する。
【0081】
図8に示す逐次比較A/D変換器は、請求項4記載の発明を適用したものであり、図1に示した第1実施例或いは第2実施例の逐次比較A/D変換器と異なる点は、
(1) 各チャンネルのアナログ入力信号Vinを中間電位Voと大小比較するコンパレータ22〜28に代えて、各チャンネルのアナログ入力信号Vinを、選択的に取り込んでmビットのデジタル値にA/D変換可能なフラッシュA/D変換回路40を設けた点。
【0082】
(2) 基準電位発生回路20を、フラッシュA/D変換回路40にて得られるmビットのデジタル値に対応した電圧信号を発生可能なD/A変換回路にて構成した点。
の2点であり、それ以外の構成要素は、図1に示したものと同じである。
【0083】
また、コントローラ30の動作手順は、基本的には、図6に示した第2実施例の動作と同じであり、異なる点は、下記▲1▼〜▲3▼の3点である。
▲1▼ S110において、電圧判定値を読み込む代わりに、フラッシュA/D変換回路40を制御して、A/D変換対象となるチャンネルのアナログ入力信号VinをA/D変換させ、得られたA/D変換値を、アナログ入力信号Vinの上位mビット分のA/D変換値として読み込む点。
【0084】
▲2▼ S120において、基準電位発生回路20に対して、S110で読み込んだmビットのA/D変換値を出力することにより、基準電位発生回路20から、そのA/D変換値に対応したアナログ電圧を基準電位Vref として出力させる点。
【0085】
▲3▼ S280において、荷重容量回路16を構成するn個のコンデンサの開放端への電源線AVDD又はAVSSの接続状態に応じたnビットのデジタル値を下位nビットとし、これに、S110で読み込んだmビットのA/D変換値を、上位mビットとして加えた「m+n」ビットのデジタル値を、アナログ入力信号VinのA/D変換値として出力する点。
【0086】
つまり、第3実施例の逐次比較A/D変換器では、フラッシュA/D変換回路40の動作によって得られたmビットのデジタル値に応じて設定した基準電位Vref にてサンプリング制御を行い、逐次比較制御の際には、基準電位Vref を中間電位Voに切り換えることにより、逐次比較制御開始直後の接続点電位Vcを、フラッシュA/D変換回路40によるA/D変換値に応じて重み付けし、その後の逐次比較制御によって、フラッシュA/D変換回路40によるmビットのA/D変換値を上位ビットデータとする、下位nビットの値を確定するのである。
【0087】
このため、本実施例の逐次比較A/D変換器によれば、第1実施例及び第2実施例のものと同様、サンプリング制御実行時に荷重容量回路16に蓄積される電荷量を少なくして、逐次比較制御開始後に電荷抜けやミスチャージが発生するのを防止することができるだけでなく、例えば、第1実施例或いは第2実施例と同じ荷重容量回路16を用いて、より高分解能のA/D変換器を構成することが可能になる。また、A/D変換値の上位mビットは、フラッシュA/D変換回路40を用いて確定するので、A/D変換に要する時間を極めて短くすることができ、しかも、A/D変換値の下位nビットは、荷重容量回路16を用いた逐次比較制御によって確定するため、A/D変換精度を確保することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1実施例の逐次比較A/D変換器の構成を表す概略構成図である。
【図2】 図1に示す基準電位発生回路の構成を表す電気回路図である。
【図3】 第1実施例のコントローラによる制御手順を説明するフローチャートである。
【図4】 第1実施例のA/D変換動作を説明するタイムチャートである。
【図5】 第1実施例のコンパレータ(比較器)への入力電圧範囲とアナログ入力信号Vinとの関係を表す説明図である。
【図6】 第2実施例のコントローラによる制御手順を説明するフローチャートである。
【図7】 第2実施例のA/D変換動作を説明するタイムチャートである。
【図8】 第3実施例の逐次比較A/D変換器の構成を表す概略構成図である。
【図9】 逐次比較A/D変換器を構成する荷重容量回路の構成例及びこれを用いた従来のA/D変換動作を表す説明図である。
【図10】 従来の逐次比較A/D変換器におけるコンパレータ(比較器)への入力電圧(Vc)とアナログ入力信号Vinとの関係を表す説明図である。
【図11】 コンパレータ(比較器)の入力端子間に設けられるアナログスイッチSW1の構成を説明する説明図である。
【符号の説明】
10…入力ポート、12…マルチプレクサ、14…バッファ回路、16…荷重容量回路、18…コンパレータ(比較器)、20…基準電位発生回路、22〜28…コンパレータ(判定回路)、30…コントローラ、40…フラッシュA/D変換回路、50〜56…コンデンサ、62…コンパレータ(比較器)、64…切換部。
Claims (4)
- 一端が互いに接続されたn+1個の容量素子を備え、n個の容量素子が、夫々、基準容量を2の累乗値(20 ,21 ,22 …)にて重み付けした容量に設定され、残りの容量素子が基準容量に設定された荷重容量回路と、
該荷重容量回路を構成する全容量素子の一端を互いに接続した接続点の電位と、基準電位とを大小比較する比較器と、
該比較器の入力に接続される前記各容量素子の接続点と前記基準電位の入力経路とを、導通・遮断するためのアナログスイッチと、
該アナログスイッチをオンして前記接続点に基準電位を印加し、前記各容量素子の前記接続点とは反対側の開放端にアナログ入力信号を印加することにより、前記荷重容量回路内の全容量素子に、前記アナログ入力信号と前記基準電位との電位差に対応した電荷を蓄積させるサンプリング制御を行い、その後、前記アナログスイッチをオフして前記接続点への基準電位の印加を遮断した状態で、前記荷重容量回路において容量が2の累乗値にて重み付けされたn個の容量素子に対して、容量が最も大きい容量素子側から順に対象となる容量素子を変更しつつ、対象となる容量素子の開放端に直流電源の正極側を接続し、接続先が未確定の容量素子の開放端に直流電源の負極側を接続することにより、各容量素子に蓄積された電荷の再分配を行い、そのとき得られる前記比較器からの出力信号に基づき、前記接続点の電位が前記基準電位に近づくように、対象となる容量素子の開放端への接続先を前記直流電源の正極側又は負極側に確定してゆく逐次比較制御を行う制御回路と、
を備え、前記制御回路の動作によって確定したn個の容量素子の開放端への直流電源の接続状態に対応したデジタル値を、前記アナログ入力信号のA/D変換値として出力する電荷再分配型の逐次比較A/D変換器において、
前記アナログ入力信号が、前記直流電源の正極側電位と負極側電位と間の中心となる中間電位よりも大きいか否かを判定する判定回路と、
前記基準電位として、前記中間電位と前記正極側電位との間の第1電位、及び、前記中間電位と前記負極側電位との間の第2電位、のいずれかを選択的に出力可能な基準電位発生回路と、
を備え、前記制御回路は、前記判定回路による判定結果に基づき、前記基準電位発生回路から出力される基準電位を、アナログ入力信号が前記中間電位よりも高い場合には前記第1電位、アナログ入力信号が中間電位よりも低い場合には前記第2電位となるよう設定した後、前記サンプリング制御及び前記逐次比較制御を行うことを特徴とする逐次比較A/D変換器。 - 前記制御回路は、前記逐次比較制御の開始時に、前記判定回路による判定結果に基づき、前記荷重容量回路を構成する最大容量の容量素子の開放端への印加電位を確定し、前記逐次比較制御では、前記荷重容量回路において2番目に容量が大きい容量素子から順に、各容量素子への印加電位を確定することを特徴とする請求項1記載の逐次比較A/D変換器。
- 前記基準電位発生回路は、前記中間電位と前記正極側電位との間の中心電位を前記第1電位、前記中間電位と前記負極側電位との間の中心電位を前記第2電位、として夫々出力可能で、しかも、該第1電位及び第2電位に加えて、前記中間電位を出力可能に構成され、
前記制御回路は、前記サンプリング制御終了後に、前記基準電位発生回路から出力される基準電位を、前記第1電位又は第2電位から前記中間電位に変更し、前記逐次比較制御を行うことを特徴とする請求項1記載の逐次比較A/D変換器。 - 一端が互いに接続されたn+1個の容量素子を備え、n個の容量素子が、夫々、基準容量を2の累乗値(20 ,21 ,22 …)にて重み付けした容量に設定され、残りの容量素子が基準容量に設定された荷重容量回路と、
該荷重容量回路を構成する全容量素子の一端を互いに接続した接続点の電位と、基準電位とを大小比較する比較器と、
該比較器の入力に接続される前記各容量素子の接続点と前記基準電位の入力経路とを、導通・遮断するためのアナログスイッチと、
該アナログスイッチをオンして前記接続点に基準電位を印加し、前記各容量素子の前記接続点とは反対側の開放端にアナログ入力信号を印加することにより、前記荷重容量回路内の全容量素子に、前記アナログ入力信号と前記基準電位との電位差に対応した電荷を蓄積させるサンプリング制御を行い、その後、前記アナログスイッチをオフして前記接続点への基準電位の印加を遮断した状態で、前記荷重容量回路において容量が2の累乗値にて重み付けされたn個の容量素子に対して、容量が最も大きい容量素子側から順に対象となる容量素子を変更しつつ、対象となる容量素子の開放端に直流電源の正極側を接続し、接続先が未確定の容量素子の開放端に直流電源の負極側を接続することにより、各容量素子に蓄積された電荷の再分配を行い、そのとき得られる前記比較器からの出力信号に基づき、前記接続点の電位が前記基準電位に近づくように、対象となる容量素子の開放端への接続先を前記直流電源の正極側又は負極側に確定してゆく逐次比較制御を行う制御回路と、
を備え、前記制御回路の動作によって確定したn個の容量素子の開放端への直流電源の接続状態に対応したデジタル値を、前記アナログ入力信号のA/D変換値として出力する電荷再分配型の逐次比較A/D変換器において、
前記アナログ入力信号を、2の累乗値にて重み付けした電圧と同時に比較することによりA/D変換するフラッシュA/D変換回路と、
該フラッシュA/D変換回路によるA/D変換結果に応じて重み付けした、前記負極側電位から前記正極側電位までの範囲内の重み付け電位と、前記直流電源の正極側電位と負極側電位と間の中心となる中間電位と、のいずれかを選択的に出力可能な基準電位発生回路と、
を備え、前記制御回路は、
前記フラッシュA/D変換回路によるA/D変換結果に基づき、前記基準電位発生回路から該A/D変換結果に対応した重み付け電位を前記基準電位として出力させた後、前記サンプリング制御を行い、該サンプリング制御が終了すると、前記基準電位発生回路から出力される基準電位を前記中間電位に変更して、前記逐次比較制御を行うことを特徴とする逐次比較A/D変換器。
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