JP3892396B2 - シリル基含有有機重合体硬化性組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリル基含有有機重合体硬化性組成物に関する。さらに詳しくは、シリル基含有有機重合体と硬化触媒からなる、シーリング剤、接着剤などとして用いるのに好適なシリル基含有有機重合体の硬化性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
接着剤やシーリング剤に有用な硬化性組成物として、ポリエーテル、ポリエステル、あるいはエチレン性不飽和化合物やジエン系化合物の重合体などを主鎖とする架橋可能な加水分解性ケイ素含有基を有する有機重合体を主成分として用いるものが知られている。これら加水分解性ケイ素含有基を有する有機重合体は、触媒の存在下で、室温において大気中の水分により加水分解性ケイ素含有基が加水分解を起こし、シロキサン結合を形成することで硬化される。この加水分解性ケイ素含有基を有する有機重合体を用いる硬化性組成物は、ポリウレタン系硬化性組成物に比べ貯蔵安定性、耐候性、耐発泡性、耐変色性が良好であり、ポリサルファイド系硬化性組成物に比べ、硬化性に優れ、周囲への汚染性が少なく、毒性がない。また、通常のシリコーン系硬化性組成物に比べ周囲への汚染性が少なく、硬化物表面への塗装性が良好である。
【0003】
前記加水分解性ケイ素含有基を有する有機重合体の硬化触媒としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ビス(2−エチルヘキサン酸)錫、ビス(n−オクチル酸)錫、ビス(ナフテン酸)錫、ビス(ステアリン酸)錫、ビス(バーサチック酸)錫、ジブチル錫オキサイドなどの錫化合物、ビスマス化合物などの金属化合物、およびこれら金属化合物のアミン塩などが使用されてきた。なかでも、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)は、硬化速度および硬化物性に優れ、かつ、可使時間と硬化性のバランスが良いため、汎用されてきた(例えば特許文献1〜4参照)。
【0004】
しかし、これらの硬化触媒では、接着性、特に、耐水接着性が著しく劣り、プライマーなどを使用する必要がある(例えば特許文献6〜10参照)。また、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)を使用すると、硬化性組成物の配合によっては硬化物が淡黄色に着色するという問題点があった。
【0005】
これらの問題を解消できる硬化触媒として、ジブチル錫ビス(トリエトキシシリケート)などのオルガノ錫シリケート化合物が提案されている(例えば特許文献5参照)。これらのオルガノ錫シリケート化合物を使用すると、オルガノ錫カルボキシレートを使用する場合に比べて硬化速度が速くなり、硬化物の着色も少ない。しかし、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)と比べると硬化速度が十分ではないことから、さらに速い硬化速度を持つ触媒の開発が望まれていた。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−226789号公報
【特許文献2】
特開2001−107018号公報
【特許文献3】
特開平10−292057号公報
【特許文献4】
特開平5−331370号公報
【特許文献5】
特開平7−11155号公報
【特許文献6】
特公昭59−38989号公報
【特許文献7】
特公平1−58219号公報
【特許文献8】
特公平2−22105号公報
【特許文献9】
特開昭58−57460号公報
【特許文献10】
特公昭63−18975号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来技術に鑑みて、本発明は、ジブチル錫ビス(トリエトキシシリケート)などのオルガノ錫シリケート化合物を硬化触媒として使用する場合に比べて硬化速度が大きく、かつ従来より汎用されているジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)を硬化触媒として使用する場合にみられる硬化物の着色がなく、さらに接着性、とくに耐水接着性が優れているシリル基含有有機重合体硬化性組成物を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ジブチル錫ビス(トリエトキシシリケート)などのオルガノ錫シリケート化合物を硬化触媒として使用する場合に比べて硬化速度が大きく、かつ従来より汎用されているジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)を硬化触媒として使用する場合にみられる硬化物の着色がなく、さらに接着性、とくに耐水接着性が優れているシリル基含有有機重合体の硬化物を与える硬化触媒を見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明はつぎのシリル基含有有機重合体の硬化性組成物を提供する。
(1)加水分解性基と結合したケイ素原子を有する基を、分子末端または側鎖に、1分子当たり少なくとも1個有するシリル基含有有機重合体(a)100重量部、および硬化触媒として、一般式(I):
(R1)2Sn(OCOCH3)2 (I)
(式中、R1は炭素原子数1〜10の直鎖または分岐アルキル基であり、2個のR1は相互に同一であっても、異なっていてもよい)で表されるジアルキル錫アセテートと、
一般式(II):
Si(OR2)4 (II)
(式中、R2は炭素原子数1〜4の直鎖または分岐アルキル基であり、4個のR2は相互に同一であっても、異なっていてもよい)で表されるテトラアルコキシシランとを1/1〜1/1.5のモル比で反応させることにより得られる反応生成物(b)0.1〜20重量部からなることを特徴とするシリル基含有有機重合体硬化性組成物。
(2)前記ジアルキル錫アセテートがジブチル錫アセテートであり、テトラアルコキシシランがテトラエトキシシランである前記(1)項記載のシリル基含有有機重合体硬化組成物。
(3)さらに充填剤を含有する前記(1)または(2)項記載のシリル基含有有機重合体硬化性組成物。
(4)前記シリル基含有有機重合体(a)が、ポリエーテル、エチレン性不飽和化合物の重合体またはジエン系化合物の重合体を主鎖とするものである前記(1)〜(3)項のいずれかに記載のシリル基含有有機重合体硬化性組成物。
(5)前記反応生成物(b)が、一般式(I)で表されるジアルキル錫アセテートと一般式(II)で表されるテトラアルコキシシランとを、80〜130℃の温度で1〜3時間反応させて得られるものである前記(1)〜(4)項のいずれかに記載のシリル基含有有機重合体硬化性組成物。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に用いる有機重合体(a)は、加水分解性基と結合したケイ素原子を有する基(以下、加水分解性ケイ素含有基という場合がある)を、分子末端または側鎖に、1分子当たり少なくとも1個有する有機重合体であり、該重合物の主鎖としては、アルキレンオキシド重合体ないしポリエーテル、エーテル・エステルブロック共重合体などが挙げられる。また、エチレン性不飽和化合物、ジエン系化合物の重合体などが挙げられる。これら主鎖重合体は室温で液状のものが好ましい。
【0011】
前記アルキレンオキシド重合体ないしポリエーテルとしては、
〔CH2CH2O〕n
〔CH(CH3)CH2O〕n
〔CH(C2H5)CH2O〕n
〔CH2CH2CH2CH2O〕n
などの繰り返し単位の1種または2種以上を有するものが例示される。ここで、nは2以上の整数である。これらアルキレンオキシド重合体ないしポリエーテルは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、これらの2種以上の共重合体も使用できる。
【0012】
また、エチレン性不飽和化合物、ジエン系化合物の重合体としては、エチレン、プロピレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどの単独重合体、またはこれらの2種以上の共重合体が挙げられる。より具体的にはポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、エチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリイソプレン、スチレン−イソプレン共重合体、イソブチレン−イソプレン共重合体、ポリクロロプレン、スチレン−クロロプレン共重合体、アクリロニトリル−クロロプレン共重合体、ポリイソブチレン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、あるいは2種類以上を併用してもよい。
【0013】
前記加水分解性ケイ素含有基は、湿気や架橋剤の存在下、必要に応じて触媒などを使用することにより縮合反応を起こす基のことである。具体的には、ハロゲン化シリル基、アルコキシシリル基、アルケニルオキシシリル基、アシロキシシリル基、アミノシリル基、アミノオキシシリル基、オキシムシリル基、アミドシリル基などが挙げられる。ここで、1つのケイ素原子に結合した加水分解性基の数は1〜3の範囲から選択される。また、1つのケイ素原子に結合した加水分解性基は1種であってもよく、複数種であってもよい。さらに加水分解性基と非加水分解性基が1つのケイ素原子に結合していてもよい。加水分解性ケイ素含有基としては、取り扱いが容易である点で、特にアルコキシシリル基(モノアルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基、トリアルコキシシリル基を含む)が好ましい。加水分解性ケイ素含有基は重合体分子の末端に存在していても、側鎖に存在していてもよく、さらに末端と側鎖の両方に存在していてもよい。加水分解性ケイ素含有基は、重合体の1分子当たり少なくとも1個あればよいが、硬化速度、硬化物性の点からは、1分子当たり平均して1.5個以上あるのが好ましい。加水分解性ケイ素含有基を前記主鎖重合体に結合させる方法としては公知の方法が採用できる。
【0014】
本発明で用いる有機重合体(a)の分子量は、特に制約はないが、過度に高分子のものは高粘度であり、硬化性組成物とした場合の取扱い性に劣るので、数平均分子量として30000以下が望ましい。一方、過度に低分子量のものは、流動性が高いため施工性が劣るので、数平均分子量として1000以上が望ましい。このような有機重合体は、公知の方法によって製造することができるが、鐘淵化学工業(株)製のカネカMSポリマーなどの市販品を使用することができる。
【0015】
本発明で硬化触媒として使用するジアルキル錫アセテートとテトラアルコキシシランの反応生成物(b)は、ジアルキル錫アセテートとテトラアルコキシシランを1/1〜1/1.5のモル比で反応させることによって得られるものである。好ましくは、ジアルキル錫アセテートとテトラアルコキシシランを1/1〜1/1.5のモル比で混合し、80〜130℃、1〜3時間で反応を行った後、酢酸アルキルエステルを留去する方法により製造されるものである。前記反応は通常溶媒の不存在下で行なわれる。ジアルキル錫アセテートのテトラアルコキシシランに対するモル比が1/1より大きい範囲で反応させて得られた反応生成物は、触媒活性が劣り硬化速度が遅くなり、かつ接着性が低下するなどの問題点があるため、好ましくない。また、ジアルキル錫アセテートのテトラアルコキシシランに対するモル比が1/1.5より小さい範囲で反応させて得られた反応生成物は、分解速度が速く不安定であり、かつ過度に高粘度になるため、取り扱い性が劣る。
【0016】
ジアルキル錫アセテートは、対応するジアルキル錫オキシドと無水酢酸から容易に製造できる。
【0017】
反応生成物(b)は2種以上の反応生成物からなる混合物であり、常温で液状のものである。想定される反応生成物を具体的に構造式で示すと、たとえばつぎのものがあげられる。下式において、mは1以上の整数を示す。
【0018】
【化1】
【0019】
反応生成物(b)の製造に使用するジアルキル錫アセテートは一般式(I)で表されるものである。一般式(I)において、R1で表される炭素原子数1〜10の直鎖または分岐アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などがあげられる。そのうち炭素原子数4〜8のアルキル基が好ましく、特にブチル基が好ましい。ジアルキル錫アセテートの具体例としては、たとえば、ジメチル錫アセテート、ジエチル錫アセテート、ジプロピル錫アセテート、ジイソプロピル錫アセテート、ジブチル錫アセテート、ジペンチル錫アセテート、ジヘキシル錫アセテート、ジヘプチル錫アセテート、ジオクチル錫アセテート、ジノニル錫アセテート、ジデシル錫アセテート、メチルエチル錫アセテート、エチルプロピル錫アセテート、エチルブチル錫アセテートなどがあげられる。特にジブチル錫アセテートが好ましい。
【0020】
反応生成物(b)の製造に使用するテトラアルコキシシランは一般式(II)で表されるものである。一般式(II)において、R2で表される炭素原子数1〜4の直鎖または分岐アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基があげられる。特にエチル基が好ましい。テトラアルコキシシランの具体例としては、たとえば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、トリエトキシプロポキシシラン、ジエトキシジメトキシシラン、ジエトキシジブトキシシランなどがあげられる。特にテトラエトキシシランが好ましい。
【0021】
本発明において、硬化触媒(b)は、シリル基含有有機重合体(a)100重量部に対して0.1〜20重量部、特に1〜10重量部の割合で使用するのが好ましい。硬化触媒(b)の使用量が前記範囲未満では硬化性能が不十分であり、一方前記範囲を超えると硬化後の硬化物の復元率、耐候性などの物性、貯蔵中の安定性が低下することがある。
【0022】
本発明の硬化性組成物においては、通常、硬化物の用途に応じて、各種充填剤が配合される。充填剤としては、具体的には、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、含水ケイ酸、クレー、焼成クレー、ガラス、ベントナイト、有機ベントナイト、シラスバルーン、ガラス繊維、石綿、ガラスフィラメント、粉砕石英、ケイソウ土、ケイ酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、二酸化チタンなどがあげられる。これら充填剤は単独または2種以上を混合して使用することができる。充填剤の使用量は、硬化物の用途、要求性能に応じて広範に変わるものであるが、たとえば、シリル基含有有機重合体(a)100重量部に対して10〜300重量部程度の範囲で適宜配合される。
【0023】
さらに本発明の硬化性組成物では、硬化を促進し基材への密着性を良くするため、公知の種々のアミノ基置換アルコキシシラン化合物、またはその縮合物を配合することができ、具体的には、γ―アミノプロピルトリメトキシシラン、γ―アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、δ−アミノブチル(メチル)ジエトキシシラン、N,N’―ビス(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミンおよびこれらの部分加水分解物などがあげられる。また、基材への密着性の向上のために、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシランなどのビニルアルコキシシラン化合物などを配合することができる。これら添加剤は単独または2種以上を混合して使用することができる。
【0024】
本発明の硬化性組成物においては、さらに、着色剤、可塑剤、硬化遅延剤、タレ防止剤、老化防止剤、溶剤など、硬化性組成物に通常添加される各種添加剤を適宜選択して配合することができる。
【0025】
着色剤としては、具体的には、酸化鉄、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどがあげられる。
【0026】
可塑剤としては、具体的には、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ブチルベンジルフタレートなどのフタル酸エステル類、アジピン酸ジオクチル、コハク酸ジオクチル、コハク酸ジイソデシル、セバシン酸ジイソデシル、オレイン酸ブチルなどの脂肪族カルボン酸エステル類、ペンタエリスリトールエステルなどのポリオール化合物のエステル類、リン酸トリオクチル、リン酸トリクレジルなどのリン酸エステル類、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ベンジルなどのエポキシ系可塑剤、塩素化パラフィンなどがあげられる。
【0027】
タレ防止剤としては、具体的には、水添ヒマシ油、無水ケイ酸、有機ベントナイト、コロイド状シリカなどがあげられる。
【0028】
溶剤としては、具体的には、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系溶剤、ヘキサンなどの脂肪族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶剤などがあげられる。
【0029】
さらに他の添加剤として、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などの接着付与剤、紫外線吸収剤、ラジカル連鎖禁止剤、過酸化物分解剤、各種の老化防止剤などを適宜選択して配合することができる。
【0030】
本発明の硬化性組成物の硬化処理は、通常環境雰囲気下での湿気硬化による。本発明においては、前記特定の硬化触媒を用いることにより、速硬化性が発揮されるので、現場施工上有利である。
【0031】
本発明の硬化性組成物は1液型硬化性組成物として好適に使用できるが、2液型硬化性組成物としても使用できる。
【0032】
2液型硬化性組成物は、通常前記シリル基含有有機重合体(a)を含有する主剤成分と、前記硬化触媒(b)を含有する硬化触媒成分とで構成される。主剤成分には、前記シリル基含有有機重合体(a)の他に、前記アミノ基置換アルコキシシラン化合物、ビニルアルコキシシラン化合物、充填剤、着色剤、可塑剤、硬化促進剤、硬化遅延剤、タレ防止剤、接着付与剤、紫外線吸収剤、ラジカル連鎖禁止剤、過酸化物分解剤、老化防止剤、溶剤などの1種または2種以上を適宜配合することができる。硬化触媒成分には、前記硬化触媒(b)の他に、前記アミノ基置換アルコキシシラン化合物、ビニルアルコキシシラン化合物、充填剤、着色剤、可塑剤、硬化促進剤、硬化遅延剤、タレ防止剤、接着付与剤、紫外線吸収剤、ラジカル連鎖禁止剤、過酸化物分解剤、老化防止剤、溶剤などの1種または2種以上を適宜配合することができる。
【0033】
本発明の硬化性組成物は、シーリング剤、コーティング剤、弾性接着剤などの用途に好適に使用できる。
【0034】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明の範囲はこれによって限定されるものではない。
【0035】
製造例1
温度計、還流冷却器および攪拌機を備えた500mlの四ツ口フラスコに窒素気流下で、ジブチル錫オキシド49.8g(0.2mol)、無水酢酸20.8g(0.2mol)、およびトルエン200gを仕込み、112℃で2時間反応させた後、減圧下でトルエンを留去した。ついでテトラエトキシシラン41.7g(0.2mol)を仕込み、130℃で3時間反応させ、減圧下で生成した酢酸エチルを留去して、淡黄色液体の錫化合物Aの74.3gを得た。
【0036】
製造例2
温度計、還流冷却器および攪拌機を備えた500mlの四ツ口フラスコに窒素気流下で、ジブチル錫オキシド49.8g(0.2mol)、無水酢酸20.8g(0.2mol)、およびトルエン200gを仕込み、112℃で2時間反応させた後、減圧下でトルエンを留去した。ついでテトラエトキシシラン41.7g(0.2mol)を仕込み、100℃で3時間反応させ、減圧下で生成した酢酸エチルを留去して、淡黄色液体の錫化合物Bの91.4gを得た。
【0037】
製造例3
温度計、還流冷却器および攪拌機を備えた500mlの四ツ口フラスコに窒素気流下で、ジブチル錫オキシド49.8g(0.2mol)、無水酢酸20.8g(0.2mol)、およびトルエン200gを仕込み、112℃で2時間反応させた後、減圧下でトルエンを留去した。ついでテトラエトキシシラン62.5g(0.3mol)を仕込み、130℃で3時間反応させ、減圧下で生成した酢酸エチルを留去して、淡黄色液体の錫化合物Cの89.3gを得た。
【0038】
製造例4
温度計、還流冷却器および攪拌機を備えた500mlの四ツ口フラスコに窒素気流下で、ジブチル錫オキシド49.8g(0.2mol)、無水酢酸20.8g(0.2mol)、およびトルエン200gを仕込み、112℃で2時間反応させた後、減圧下でトルエンを留去した。ついでテトラエトキシシラン50g(0.24mol)を仕込み、130℃で3時間反応させ、減圧下で生成した酢酸エチルを留去して、淡黄色液体の錫化合物Dの81.8gを得た。
【0039】
製造例5
温度計、還流冷却器および攪拌機を備えた500mlの四ツ口フラスコに窒素気流下で、ジブチル錫オキシド49.8g(0.2mol)、無水酢酸20.8g(0.2mol)、およびトルエン200gを仕込み、112℃で2時間反応させた後、減圧下でトルエンを留去した。ついでテトラエトキシシラン62.5g(0.3mol)を仕込み、100℃で1時間反応させ、減圧下で生成した酢酸エチルを留去して、淡黄色液体の錫化合物Eの110.5gを得た。
【0040】
製造例6
温度計、還流冷却器および攪拌機を備えた500mlの四ツ口フラスコに窒素気流下で、ジブチル錫オキシド49.8g(0.2mol)、無水酢酸20.8g(0.2mol)、およびトルエン200gを仕込み、112℃で2時間反応させた後、減圧下でトルエンを留去した。ついでテトラエトキシシラン20.8g(0.1mol)を仕込み、130℃で3時間反応させ、減圧下で生成した酢酸エチルを留去して、淡黄色液体の錫化合物Fの54.4gを得た。
【0041】
製造例7
温度計、還流冷却器および攪拌機を備えた500mlの四ツ口フラスコに窒素気流下で、ジブチル錫オキシド49.8g(0.2mol)、無水酢酸20.8g(0.2mol)、およびトルエン200gを仕込み、112℃で2時間反応させた後、減圧下でトルエンを留去した。ついでテトラエトキシシラン83.4g(0.4mol)を仕込み、110℃で2時間反応させ、減圧下で生成した酢酸エチルを留去して、淡黄色液体の錫化合物Gの116.0gを得た。
【0042】
実施例1〜5
シリル基含有有機重合体(鐘淵化学工業(株)製MSポリマーA20)100重量部に対して、製造例1、2、3、4、5で得られた錫化合物A、B、C、D、Eおよび各種添加剤を表1に示される部数(重量部数)で配合し、混練した。材料の配合および混練は温度25℃、湿度60%RHの恒温室で行なった。
【0043】
得られた硬化性組成物について、下記の触媒活性試験、張引接着性試験を行ない、さらに色差計(東京電色(株)製、カラーエース MODEL TC−PIII)を用いて白色度、黄色度の測定を行った。結果を表1に示す。
【0044】
比較例1〜4
シリル基含有有機重合体(鐘淵化学工業(株)製MSポリマーA20)100重量部に対して、製造例6、7で得られた錫化合物F、G、従来からシリル基含有有機重合体の硬化触媒として用いられているジブチル錫ビスセチルアセトナート、ジブチル錫ジアセテート、および各種添加剤を表1に示される部数(重量部数)で配合し、混練した。材料の配合および混練は温度25℃、湿度60%RHの恒温室で行なった。
【0045】
得られた硬化性組成物について、実施例1〜5と同様にして触媒活性試験、張引接着性試験を行ない、さらに白色度、黄色度の測定を行った。結果を表1に示す。
【0046】
触媒活性試験
前記の各硬化性組成物について、硬化時間(半ゲル化し流動性のなくなるまでの時間)およびタックフリータイム(表面タックが解消されるのに要する時間)を測定した。測定は温度25℃、湿度60%RHの恒温室で行なった。
【0047】
張引接着性試験
前記の各硬化性組成物について、JIS A5758に準拠し引張接着性を試験した。
すなわち、各硬化性組成物を用いて所定の試験片を作製し、温度25℃、湿度60%RHの恒温室で48時間放置して硬化させた(標準養生)。得られた硬化試験片について、最大引張応力を測定し、かつ破断状況を観察した。また、硬化試験片を13日間常温で水中養生した後、温度25℃、湿度60%RHの恒温室で14日間放置した後に前記と同様にして最大引張応力を測定し、かつ破断状況を観察した。被着体としては、アルミニウム板を使用した。破断状況は、以下の略号で示した。
CF:材料破断
TCF:材料薄層破断
AF:被着体―材料界面剥離
【0048】
表1に示される材料の詳細はつぎのとおりである。
MSポリマーA20:主鎖重合体であるポリエーテルの末端に加水分解性ケイ素含有基を有するシリル基含有有機重合体
炭酸カルシウム:充填剤
二酸化チタン:充填剤
水添ヒマシ油:可塑剤
ノクラックNS−6:老化防止剤(大内新興化学工業(株)製)
ビニルアルコキシシラン:(日本ユニカー(株)製)
DOP:ジオクチルフタレート(可塑剤)
A−1100:アミノ基置換アルコキシシラン化合物(日本ユニカー(株)製)
ネオスタンU−200:ジブチル錫ジアセテート(日東化成(株)製)
ネオスタンU−220:ジブチル錫ビスアセチルアセトナート(日東化成(株)製)
【0049】
【表1】
【0050】
【発明の効果】
表1に示される結果から明らかなように、実施例1〜5の硬化性組成物は、比較例1〜4の硬化性組成物に比べ何れも硬化速度が速く、かつ通常の接着性に優れるばかりでなく、耐水接着性にも優れている。また、硬化物の着色についても、実施例1〜5の硬化性組成物は比較例2の硬化性組成物(硬化触媒として汎用のジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)を使用)の白色度より高い値を示し、黄色度は低い値であり、耐着色性が改善されている。
【0051】
このように本発明の硬化性組成物は、従来の硬化性組成物に比べ速硬化性であり、さらに接着性、特に耐水接着性に優れており、シーリング剤、コーティング剤、弾性接着剤として有用である。
Claims (4)
- 加水分解性基と結合したケイ素原子を有する基を、分子末端または側鎖に、1分子当たり少なくとも1個有するシリル基含有有機重合体であって、アルキレンオキシド重合体、ポリエーテル、エーテル・エステルブロック共重合体、エチレン性不飽和化合物の重合体またはジエン系化合物の重合体を主鎖とするシリル基含有有機重合体(a)100重量部、および硬化触媒として、一般式(I):
(R1)2Sn(OCOCH3)2 (I)
(式中、R1は炭素原子数1〜10の直鎖または分岐アルキル基であり、2個のR1は相互に同一であっても、異なっていてもよい)で表されるジアルキル錫アセテートと、
一般式(II):
Si(OR2)4 (II)
(式中、R2は炭素原子数1〜4の直鎖または分岐アルキル基であり、4個のR2は相互に同一であっても、異なっていてもよい)で表されるテトラアルコキシシランとを1/1〜1/1.5のモル比で反応させることにより得られる反応生成物(b)0.1〜20重量部からなり、前記ジアルキル錫アセテートがジブチル錫アセテートであることを特徴とするシリル基含有有機重合体硬化性組成物。 - 前記テトラアルコキシシランがテトラエトキシシランである請求項1記載のシリル基含有有機重合体硬化組成物。
- さらに充填剤を含有する請求項1または2記載のシリル基含有有機重合体硬化性組成物。
- 前記反応生成物(b)が、ジブチル錫アセテートと一般式(II)で表されるテトラアルコキシシランとを、80〜130℃の温度で1〜3時間反応させて得られるものである請求項1〜3のいずれかに記載のシリル基含有有機重合体硬化性組成物。
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