JP3892355B2 - シリル基含有有機重合体の硬化物の製造方法 - Google Patents

シリル基含有有機重合体の硬化物の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリル基含有有機重合体の硬化物の製造方法に関する。さらに詳しくは、特にシリル基含有有機重合体と硬化触媒成分を混合した後に短時間で硬化され、かつ表面タック(塗布物表面のべたつき)が解消される、シーリング剤、接着剤などとして使用するのに好適なシリル基含有有機重合体の硬化物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
接着剤やシーリング剤に有用な硬化性有機重合体として、ポリエーテル、ポリエステル、あるいはエチレン性不飽和化合物やジエン系化合物の重合体などを主鎖とする架橋可能な加水分解性珪素含有基を有する有機重合体を主成分として用いるものが知られている。これらは、シロキサン結合を形成することにより硬化させる。この加水分解性珪素含有基を有する有機重合体を用いる硬化型組成物は、硬化性、貯蔵安定性、耐候性などに優れている。前記加水分解性珪素含有基を有する有機重合体の硬化触媒としては、2−エチルヘキサン酸錫、n−オクチル酸錫などのカルボン酸錫(II)化合物、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレエートなどの有機錫(IV)化合物、ナフテン酸鉄、オクチル酸鉛などのその他の有機金属化合物が用いられる。中でも有機錫(IV)化合物、カルボン酸錫(II)化合物は、硬化速度および硬化物性に優れるので、汎用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、有機錫化合物、有機鉛化合物はいずれも環境、人体へ及ぼす影響が大きいことから、使用に際しては充分な注意が必要となる。また従来は、錫化合物として主に2−エチルヘキサン酸錫、n−オクチル酸錫などのカルボン酸錫(II)が用いられていた(特公昭61−60867号公報)が、いずれもカルボン酸のα位の炭素原子が第一級炭素または第二級炭素であるカルボン酸であり、空気中の湿気などで失活してしまい、表面タック(塗布物表面のべたつき)が長時間解消されないという問題があった。そのため実用的な硬化速度を持ち、かつ表面タックが解消される硬化触媒の開発が望まれていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、鋭意研究の結果、2−エチルヘキサン酸錫、n−オクチル酸錫などの従来の硬化触媒を用いる場合に匹敵する速い硬化速度で、かつ従来の硬化触媒を用いる場合に比べて表面タックが解消される、シリル基含有有機重合体の硬化方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち本発明はつぎのシリル基含有有機重合体の硬化物の製造方法を提供する。
【0006】
(1)加水分解性基と結合した珪素原子を有する基を、分子末端または側鎖に、1分子当たり少なくとも1個有するシリル基含有有機重合体(a)100重量部に、下記一般式(1):
【0007】
【化2】
Figure 0003892355
【0008】
(式中、R1、R2、R3はそれぞれ炭素原子数1〜19の直鎖または分岐アルキル基であり、R1、R2、R3は相互に同一であっても、異なっていてもよい)で表される、トリアルキル酢酸の錫化合物(b)0.1〜20重量部を混合し、硬化させることを特徴とするシリル基含有有機重合体の硬化物の製造方法。
【0009】
(2)前記シリル基含有有機重合体に、さらに充填剤を混合する前記(1)項に記載のシリル基含有有機重合体の硬化物の製造方法。
【0010】
(3)前記シリル基含有有機重合体に、さらにアミン系硬化促進剤をを混合する前記(1)または(2)項に記載のシリル基含有有機重合体の硬化物の製造方法。
【0011】
(4)前記シリル基含有有機重合体(a)が、ポリエーテル、エチレン性不飽和化合物の重合体またはジエン系化合物の重合体を主鎖とするものである前記(1)〜(3)項のいずれかに記載のシリル基含有有機重合体の硬化物の製造方法。
【0012】
(5)前記トリアルキル酢酸の錫化合物が、スタナスビスピバレート;炭素原子数の総数が9のトリアルキル酢酸の錫化合物の1種または2種以上の混合物;炭素原子数の総数が10のトリアルキル酢酸の錫化合物の1種または2種以上の混合物よりなる群から選ばれる1種または2種以上からなる前記(1)〜(4)項のいずれかに記載のシリル基含有有機重合体の硬化物の製造方法。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明に用いる有機重合体(a)は、加水分解性基と結合した珪素原子を有する基(以下、加水分解性基と結合した珪素基という場合がある)を、分子末端または側鎖に、1分子当たり少なくとも1個有する有機重合体であり、該重合物の主鎖としては、アルキレンオキシド重合体ないしポリエーテル、エーテル・エステルブロック共重合体などが挙げられる。また、エチレン性不飽和化合物、ジエン系化合物の重合体などが挙げられる。これら主鎖重合体は室温で液状のものが好ましい。
【0014】
前記アルキレンオキシド重合体ないしポリエーテルとしては、
〔CH2CH2O〕n
〔CH(CH3)CH2O〕n
〔CH(C25)CH2O〕n
〔CH2CH2CH2CH2O〕n
などの繰り返し単位の1種または2種以上を有するものが例示される。ここで、nは2以上の整数である。これらアルキレンオキシド重合体ないしポリエーテルは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
また、エチレン性不飽和化合物、ジエン系化合物の重合体としては、エチレン、プロピレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどの単独重合体、またはこれら2種以上の共重合体が挙げられる。より具体的にはポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、エチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリイソプレン、スチレン−イソプレン共重合体、イソブチレン−イソプレン共重合体、ポリクロロプレン、スチレン−クロロプレン共重合体、アクリロニトリル−クロロプレン共重合体、ポリイソブチレン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、あるいは2種類以上を併用してもよい。
【0016】
前記加水分解性基と結合した珪素基は、湿気や架橋剤の存在下、必要に応じて触媒などを使用することにより縮合反応を起こす基のことである。具体的には、ハロゲン化シリル基、アルコキシシリル基、アルケニルオキシシリル基、アシロキシシリル基、アミノシリル基、アミノオキシシリル基、オキシムシリル基、アミドシリル基などが挙げられる。ここで、1つの珪素原子に結合したこれらの加水分解性基の数は1〜3の範囲から選択される。また、1つの珪素原子に結合した加水分解性基は1種であってもよく、複数種であってもよい。さらに加水分解性基と非加水分解性基が1つの珪素原子に結合していてもよい。加水分解性基と結合した珪素基としては、取り扱いが容易である点で、特にアルコキシシリル基(モノアルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基、トリアルコキシシリル基を含む)が好ましい。加水分解性基と結合した珪素基は重合体分子の末端に存在していても、側鎖に存在していてもよい。加水分解性基と結合した珪素基は、重合体の1分子当たり少なくとも1個あればよいが、硬化速度、硬化物性の点からは、1分子当たり平均して1.5個以上あるのが好ましい。加水分解性基と結合した珪素基を前記主鎖重合体に結合させる方法としては公知の方法が採用できる。
【0017】
本発明で用いる有機重合体(a)の分子量は、特に制約はないが、過度に高分子のものは高粘度であり、硬化型樹脂組成物とした場合、使用上困難となるため、数平均分子量として30000以下が望ましい。このような有機重合体は、公知の方法によって製造することができるが、鐘淵化学工業(株)製のカネカMSポリマーなどの市販品を使用することができる。
【0018】
本発明に用いる硬化触媒(b)としては、一般式(1)で表される、トリアルキル酢酸(すなわち、カルボン酸のα位の炭素原子が第三級炭素であるカルボン酸)の錫化合物の1種または2種以上が使用される。一般式(1)において、R1、R2、R3で示される炭素原子数1〜19の直鎖または分岐アルキル基としては、たとえばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、エチルヘキシル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシルなどが挙げられる。
【0019】
一般式(1)で表されるトリアルキル酢酸錫化合物の中では、使用上の取扱い易さ、化合物の安定性などの点から、トリアルキル酢酸中の炭素原子数の総数が5〜19のものが好ましい。とりわけ、一般式(1)においてR1およびR2がそれぞれ炭素原子数1〜3のアルキル基から選択され、R3が炭素原子数1〜15のアルキル基から選択されるものが好ましい。
【0020】
前記トリアルキル酢酸錫化合物の具体例としては、スタナスビスピバレート(スタナスビス(2,2−ジメチルプロピオネート));炭素原子数の総数が7のトリアルキル酢酸の錫化合物〔スタナスビス(2,2−ジメチルペンタノアート)、スタナスビス(2−メチル−2−エチルブタノアート)など、およびそれらの2種以上の混合物〕;炭素原子数の総数が9のトリアルキル酢酸の錫化合物〔スタナスビス(2,2−ジメチルヘプタノアート)、スタナスビス(2−メチル−2−エチルヘキサノアート)、スタナスビス(2−メチル−2−プロピルペンタノアート)、スタナスビス(2,2−ジエチルペンタノアート)など、およびそれらの2種以上の混合物〕;炭素原子数の総数が10のトリアルキル酢酸の錫化合物〔スタナスビス(2−メチル−2−エチルヘプタノアート)、スタナスビス(2,2−ジメチルオクタノアート)、スタナスビス(2,5−ジメチル−2−エチルヘキサノアート)、スタナスビス(2−メチル−2−プロピルヘキサノアート)、スタナスビス(2,2−ジエチルヘキサノアート)、スタナスビス(2−エチル−2−プロピルペンタノアート)など、およびそれらの2種以上の混合物〕;スタナスビス(2,2−ジメチルブタノアート);スタナスビス(2,2−ジメチルノナノアート);スタナスビス(2,2−ジメチルヘプタデカノアート)などの1種または2種以上があげられる。とくに、スタナスビスピバレート;炭素原子数の総数が7のトリアルキル酢酸の錫化合物の1種または2種以上の混合物;炭素原子数の総数が9のトリアルキル酢酸の錫化合物の1種または2種以上の混合物;炭素原子数の総数が10のトリアルキル酢酸の錫化合物の1種または2種以上の混合物:およびこれらの2種以上の混合物が好ましい。
【0021】
前記トリアルキル酢酸の錫化合物は公知の方法によって製造することができる。たとえば、トリアルキル酢酸1モルと塩化第一錫約2モルとを、約2モルのアルカリ化合物の存在下で、溶媒中において40〜70℃程度の温度で加熱することによって、製造することができる。原料のトリアルキル酢酸としては、相当するトリアルキル酢酸の1種または2種以上の混合物を使用すればよい。市販品も使用でき、たとえば、ネオノナン酸(炭素原子数の総数が9のトリアルキル酢酸の構造異性体混合物)、ネオデカン酸PG、TG(炭素原子数の総数が10のトリアルキル酢酸の構造異性体混合物)、ネオ酸910(炭素原子数の総数が9のトリアルキル酢酸の構造異性体混合物と炭素原子数の総数が10のトリアルキル酢酸の構造異性体混合物の混合物)(以上、エクソンモービル化学(株)製)などが挙げられる。
【0022】
本発明において、硬化触媒(b)は、シリル基含有有機重合体(a)100重量部に対して0.1〜20重量部、特に0.5〜10重量部の割合で使用するのが好ましい。硬化触媒(b)の量が前記範囲に満たないと、硬化性能が劣り、表面タックが解消されないことがある。また、前記範囲を超えると硬化物の物性、安定性が低下することがある。
【0023】
本発明においては、前記硬化触媒(b)に加えて、さらに硬化促進剤を使用するのが好ましい。硬化促進剤としては、たとえば、ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、n−ヘキサデシルアミン、ジブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、オレイルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、キシリレンジアミン、トリエチレンジアミン、ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、グアニジン、ジフェニルグアニジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、モルホリン、N−メチルモルホリン、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7(DBU)などのアミン系有機化合物が挙げられる。これらアミン系有機化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。硬化促進剤の使用量は、硬化触媒(b)100重量部に対して、1〜200重量部が好ましく、とくに好ましくは10〜100重量部である。硬化促進剤の使用量が前記範囲未満では、硬化促進効果が充分に発揮されない傾向があり、一方前記範囲より多いと、可使時間が短くなりすぎ作業性の点から好ましくなく、また硬化後に表面タックが残存するなどの問題が生じる傾向がある。
【0024】
本発明においては、通常、シリル基含有有機重合体(a)の硬化物の用途に応じて、各種充填剤が使用される。充填剤としては、具体的には、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、含水ケイ酸、クレー、焼成クレー、ガラス、ベントナイト、有機ベントナイト、シラスバルーン、ガラス繊維、石綿、ガラスフィラメント、粉砕石英、ケイソウ土、ケイ酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、二酸化チタンなどが挙げられる。充填剤の使用量は、硬化物の用途、要求性能に応じて広範に変わるものであるが、たとえば、シリル基含有有機重合体(a)100重量部に対して10〜300重量部程度の範囲で使用される。
【0025】
さらに本発明では、硬化を促進し基材への密着性を良くするため、公知の種々のアミノ基置換アルコキシシラン化合物、またはその縮合物を使用することができ、具体的には、γ―アミノプロピルトリメトキシシラン、γ―アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、δ−アミノブチル(メチル)ジエトキシシラン、N,N’―ビス(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、およびこれらの部分加水分解物などが挙げられる。また、基材への密着性の向上のために、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシランなどのビニルアルコキシシラン化合物を使用できる。
【0026】
本発明においては、さらに、着色剤、可塑剤、硬化遅延剤、タレ防止剤、老化防止剤、溶剤など、硬化型組成物に通常添加される添加剤を加えることができる。
【0027】
着色剤としては、具体的には、酸化鉄、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどが挙げられる。
【0028】
可塑剤としては、具体的には、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ブチルベンジルフタレート等のフタル酸エステル類、アジピン酸ジオクチル、コハク酸ジオクチル、コハク酸ジイソデシル、セバシン酸ジイソデシル、オレイン酸ブチルなどの脂肪族カルボン酸エステル類、ペンタエリスリトールエステルなどのポリオール化合物のエステル類、リン酸トリオクチル、リン酸トリクレジルなどのリン酸エステル類、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ベンジルなどのエポキシ系可塑剤、塩素化パラフィンなどが挙げられる。
【0029】
タレ防止剤としては、具体的には、水添ヒマシ油、無水ケイ酸、有機ベントナイト、コロイド状シリカなどが挙げられる。
【0030】
さらに他の添加剤として、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などの接着付与剤、紫外線吸収剤、ラジカル連鎖禁止剤、過酸化物分解剤、各種の老化防止剤などを使用することができる。
【0031】
本発明のシリル基含有有機重合体の硬化物の製造方法においては、シリル基含有有機重合体(a)100重量部に、硬化触媒(b)0.1〜20重量部を混合し、硬化させて、シリル基含有有機重合体の硬化物を得る。硬化処理は、通常環境雰囲気下での湿気硬化による。本発明においては、前記特定の硬化触媒を用いることにより、速硬化性が発揮されると共に表面タックが解消されるので、現場施行上有利である。
【0032】
本発明における湿気硬化型組成物の主剤成分としては、シリル基含有有機重合体(a)の他に、前記アミノ基置換アルコキシシラン化合物、ビニルアルコキシシラン化合物、充填剤、着色剤、可塑剤、硬化促進剤、硬化遅延剤、タレ防止剤、接着付与剤、紫外線吸収剤、ラジカル連鎖禁止剤、過酸化物分解剤、老化防止剤、溶剤などの1種または2種以上を適宜配合することができる。硬化触媒成分としては、前記硬化触媒(b)の他に、前記アミノ基置換アルコキシシラン化合物、ビニルアルコキシシラン化合物、充填剤、着色剤、可塑剤、硬化促進剤、硬化遅延剤、タレ防止剤、接着付与剤、紫外線吸収剤、ラジカル連鎖禁止剤、過酸化物分解剤、老化防止剤、溶剤などの1種または2種以上を適宜配合することができる。
【0033】
本発明の方法により得られるシリル基含有有機重合体の硬化物は、シーリング剤、コーティング剤、弾性接着剤などの用途に使用できる。
【0034】
【実施例】
以下、本発明を実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明の範囲はこれによって限定されるものではない。
【0035】
製造例1
窒素導入管を取り付けた1000mlナスフラスコに、ネオデカン酸PG(エクソンモービル化学(株)製、2−メチル−2−エチルヘプタン酸を主成分とする炭素原子数の総数が10のトリアルキル酢酸の構造異性体混合物、酸価:325mgKOH/g)339.3gと水酸化ナトリウム水溶液170g(水酸化ナトリウム:2モル)を量り込み、マグネチックスターラーにて充分に混合した後、塩化第一錫225g(1モル)を加え、60℃で20分反応させ、反応混合物をトルエンにて抽出し、減圧下で濃縮して淡黄色透明液体の錫化合物aを得た。
【0036】
この化合物をFT−IRにて分析し、ネオデカン酸PGのカルボニル基の吸収1738cm-1が消失し、1650cm-1に−CO−O−Sn−O−CO−中のカルボニル基の吸収を確認した。また、次の元素分析の結果より、ネオデカン酸PGの錫塩であることを確認した。
【0037】
Figure 0003892355
【0038】
製造例2
窒素導入管を取り付けた1000mlナスフラスコにピバリン酸204g(2モル)と水酸化ナトリウム水溶液170g(水酸化ナトリウム:2モル)を量り込み、マグネチックスターラーにて充分に混合した後、塩化第一錫225g(1モル)を加え、60℃で20分反応させ、反応混合物をトルエンにて抽出し、減圧下で濃縮して淡黄色透明液体の錫化合物bを得た。
【0039】
この化合物をFT−IRにて分析し、ピバリン酸のカルボニル基の吸収1738cm-1が消失し、1650cm-1に−CO−O−Sn−O−CO−中のカルボニル基の吸収を確認した。また、次の元素分析の結果より、スタナスビスピバレートであることを確認した。
【0040】
Figure 0003892355
【0041】
製造例3
窒素導入管を取り付けた1000mlナスフラスコに、ネオ酸910(エクソンモービル化学(株)製、炭素原子数の総数が9のトリアルキル酢酸の構造異性体混合物と炭素原子数の総数が10のトリアルキル酢酸の構造異性体混合物との混合物、酸価:327mgKOH/g)343gと水酸化ナトリウム水溶液170g(水酸化ナトリウム:2モル)を量り込み、マグネチックスターラーにて充分に混合した後、塩化第一錫225g(1モル)を加え、60℃で20分反応させ、反応混合物をトルエンにて抽出し、減圧下で濃縮して淡黄色透明液体の錫化合物cを得た。
【0042】
この化合物をFT−IRにて分析し、ネオ酸910のカルボニル基の吸収1738cm-1が消失し、1650cm-1に−CO−O−Sn−O−CO−中のカルボニル基の吸収を確認した。
【0043】
実施例1〜11
シリル基含有有機重合体(鐘淵化学工業(株)製MSポリマーS810)100重量部に対して、表1に示される各種添加剤を表1に示される部数(重量部数)添加し、混練して主剤成分を調製した。一方、製造例1〜3で得られた錫化合物a〜cおよび各種添加剤を表1に示される部数〔シリル基含有有機重合体(鐘淵化学工業(株)製MSポリマーS810)100重量部に対する重量部数〕で混合し、混練して硬化触媒成分を調製した。
【0044】
得られた主剤成分と硬化触媒成分とを混合した湿気硬化型組成物について、硬化時間(両成分の混合後半ゲル化し流動性のなくなるまでの時間)、およびタックフリータイム(表面タックが解消されるのに要する時間)を測定した。なお主剤成分および硬化触媒成分の調製、両成分の混合から硬化まで、室温25℃、湿度60%の恒温室にて行った。結果を表1に示す。
【0045】
比較例1〜4
シリル基含有有機重合体(鐘淵化学工業(株)製MSポリマーS810)100重量部に対して、表1に示される各種添加剤を表1に示される部数(重量部数)添加し、混練して主剤成分を調製した。一方、従来から用いられている2−エチルヘキサン酸錫またはn−オクチル酸錫および各種添加剤を表1に示される部数〔シリル基含有有機重合体(鐘淵化学工業(株)製MSポリマーS810)100重量部に対する重量部数〕で混合し、混練して硬化触媒成分を調製した。
【0046】
得られた主剤成分と硬化触媒成分とを混合した湿気硬化型組成物について、実施例1〜11と同様にして硬化時間およびタックフリータイムを測定した。結果を表1に示す。
【0047】
表1に示される材料の詳細はつぎのとおりである。
MSポリマーS810:シリル基末端ポリエーテル
炭酸カルシウム:充填剤
ノクラックNS−6:老化防止剤(大内新興化学工業(株)製)
スモイルP−350:流動パラフィン(村松石油(株)製)
チヌビン327:紫外線吸収剤(東京ファインケミカル(株)製LF−101)
A−171:ビニルアルコキシシラン化合物(日本ユニカー(株)製)
A−1100:アミノ基置換アルコキシシラン化合物(日本ユニカー(株)製)
ラウリルアミン:関東化学(株)製1級試薬
ビス(2−エチルヘキサン酸)錫:日東化成(株)製
ビス(n−オクチル酸)錫:日東化成(株)製
【0048】
【表1】
Figure 0003892355
【0049】
【発明の効果】
表1から明らかなように、本発明の方法によると、シリル基含有有機重合体を、従来の硬化触媒を用いる場合と同等か、それ以上に速い硬化速度で硬化させることができ、かつ従来の硬化触媒を用いる場合に比べて表面タックが解消できた。

Claims (4)

  1. 加水分解性基と結合した珪素原子を有する基を、分子末端または側鎖に、1分子当たり少なくとも1個有するシリル基含有有機重合体であって、アルキレンオキシド重合体、ポリエーテル、エーテル・エステルブロック共重合体、エチレン性不飽和化合物の重合体またはジエン系化合物の重合体を主鎖とするシリル基含有有機重合体(a)100重量部に、下記一般式(1):
    Figure 0003892355
    (式中、R1、R2、R3はそれぞれ炭素原子数1〜19の直鎖または分岐アルキル基であり、R1、R2、R3は相互に同一であっても、異なっていてもよい)で表される、トリアルキル酢酸の錫化合物(b)0.1〜20重量部を混合し、硬化させることを特徴とするシリル基含有有機重合体の硬化物の製造方法。
  2. 前記シリル基含有有機重合体に、さらに充填剤を混合する請求項1に記載のシリル基含有有機重合体の硬化物の製造方法。
  3. 前記シリル基含有有機重合体に、さらにアミン系硬化促進剤を混合する請求項1または2に記載のシリル基含有有機重合体の硬化物の製造方法。
  4. 前記トリアルキル酢酸の錫化合物が、スタナスビスピバレート;炭素原子数の総数が9のトリアルキル酢酸の錫化合物の1種または2種以上の混合物;炭素原子数の総数が10のトリアルキル酢酸の錫化合物の1種または2種以上の混合物よりなる群から選ばれる1種または2種以上からなる請求項1〜のいずれかに記載のシリル基含有有機重合体の硬化物の製造方法。
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