JP3793076B2 - 有機重合体用硬化触媒およびそれを含有する湿気硬化型有機重合体組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、速硬化性を有し、毒性、環境汚染性の少ない有機重合体用硬化触媒およびそれを含有する湿気硬化型有機重合体組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
1液型の湿気硬化型ゴム組成物としては、シリコーン系ゴム、ウレタン系ゴム、ポリサルファイド系ゴム等のものが知られている。1液型の湿気硬化型ゴム組成物は、一般に硬化が速く、2液型のものに比べ、液の混合調整等の必要がない等、作業性の点で優れている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、シリコーン系ゴムの硬化型組成物は、周囲への汚染の可能性、硬化物の表面への塗装性の点で問題があり、ウレタン系ゴムのものは、貯蔵安定性、耐候性、耐発泡性、変色等の点で問題がある。さらに、ポリサルファイド系ゴムのものについても、硬化性、周囲への汚染の可能性の点で問題がある。
【0004】
変成シリコーン系ゴムは、ポリエーテルを主鎖とする架橋可能な加水分解性珪素官能基を有する重合体であり、硬化触媒を用いて密封下では長期間安定であるが、湿気にさらすと急速に硬化してゴム状物質に変わる1液型の硬化型組成物が得られる(特公昭62−35421号公報、特開昭61−141761号公報、特開平1−58219号公報)。この重合体の硬化型組成物は、ポリウレタン系ゴムのものに比べ貯蔵安定性、耐候性、耐発泡性、変色性が良好であり、ポリサルファイド系のものに比べ、硬化性に優れ、周囲への汚染性が少なく、毒性がない。また、通常のシリコーン系ゴムのものに比べ周囲への汚染性が少なく、硬化物表面への塗装性が良好である。
【0005】
この加水分解性珪素官能基を有する重合体の硬化触媒として、特開平8−41358号報で、カルボン酸とアミンの併用触媒、また特開平5−39428号報では、安全性の問題の少ないビスマス化合物を使用することが提案されているが、充分な硬化速度が得られないという問題点がある。また、特開昭60−1611457号公報、特公昭63−42942号公報では、チタン酸エステル化合物を触媒として使用することが提案されているが、組成物中の添加剤や充填剤中に含まれる水分で容易に分解され、また施工時の湿度により、硬化速度にばらつきが生じたり、安定した硬化物が得られない等の問題点がある。そのため、実用的な硬化速度を持ち、安定に働く硬化触媒の開発が望まれていた。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、毒性、環境汚染性が低く、かつ速硬化性を有し、耐水性に優れた硬化触媒および該硬化触媒を含有する硬化型組成物を開発すべく鋭意検討し、本発明に至った。
【0007】
すなわち本発明は次の有機重合体用硬化触媒および湿気硬化型有機重合体組成物を提供する。
【0008】
(1)一般式(1):
【0009】
【化3】
【0010】
(式中、R1、R2、R3、R4は相互に同一または異なって、炭素原子数1〜10の炭化水素基、nは1〜3の整数であり、nが2または3のとき、2つまたは3つのR1は相互に同一であっても、異なっていてもよい)で表される化合物からなることを特徴とする、分子末端または側鎖に加水分解性基と結合した珪素原子を1分子中に少なくとも1個有し、主鎖がアルキレンオキシド重合体、ポリエーテル、エーテル・エステルブロック共重合体、エチレン性不飽和化合物の重合体、またはジエン系化合物の重合体のいずれかである有機重合体用硬化触媒。
【0011】
(2)分子末端または側鎖に加水分解性基と結合した珪素原子を1分子中に少なくとも1個有し、主鎖がアルキレンオキシド重合体、ポリエーテル、エーテル・エステルブロック共重合体、エチレン性不飽和化合物の重合体、またはジエン系化合物の重合体のいずれかである有機重合体(A)100重量部に対して、硬化触媒(B)として一般式(1):
【0012】
【化4】
【0013】
(式中R1、R2、R3、R4は相互に同一または異なって、炭素原子数1〜10の炭化水素基、nは1〜3の整数であり、nが2または3のとき、2つまたは3つのR1は相互に同一であっても、異なっていてもよい)で表される化合物0.1〜20重量部を配合してなることを特徴とする湿気硬化型有機重合体組成物。
【0014】
(3)一般式(1)において、R1、R2、R3、R4が炭素原子数1〜4の炭化水素基(nが2または3のとき、2つまたは3つのR1は相互に同一であっても、異なっていてもよい)である前記(2)項に記載の湿気硬化型有機重合体組成物。
【0015】
(4)一般式(1)において、R1がイソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチルであり、R2、R3、R4が相互に同一または異なって、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチルである前記(3)項に記載の湿気硬化型有機重合体組成物。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明における、分子末端または側鎖に加水分解性基と結合した珪素原子を1分子中に少なくとも1個有し、主鎖がアルキレンオキシド重合体、ポリエーテル、エーテル・エステルブロック共重合体、エチレン性不飽和化合物の重合体、またはジエン系化合物の重合体のいずれかである有機重合体(以下、「主鎖に炭素原子を有する有機重合体」という場合がある)用の硬化触媒は、下記一般式(1):
【0017】
【化5】
【0018】
(式中、R1、R2、R3、R4は相互に同一または異なって、炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、nは1〜3の整数であり、nが2または3のとき、2つまたは3つのR1は相互に同一であっても、異なっていてもよい)で表されるチタン化合物の1種または2種以上からなるものである。
【0019】
R1、R2、R3、R4で示される炭素原子数1〜10の炭化水素基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシルなどの炭素原子数1〜10のアルキル基などがあげられる。
【0020】
好ましくは、R1、R2、R3、R4は相互に同一または異なって、炭素原子数1〜4の炭化水素基である。炭素原子数1〜4の炭化水素基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなどの炭素原子数1〜4のアルキル基などがあげられる。さらに好ましくは、R1はイソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、R2、R3、R4はメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルである。
【0021】
一般式(1)で表されるチタン化合物の具体例としては、イソプロポキシトリス(トリメチルシロキシ)チタン、ブトキシトリス(トリメチルシロキシ)チタン、イソプロポキシトリス(トリイソプロピルシロキシ)チタン、ブトキシトリス(トリイソプロピルシロキシ)チタン、ジイソプロポキシビス(トリメチルシロキシ)チタン、ジブトキシビス(トリメチルシロキシ)チタン、ジイソプロポキシビス(トリエチルシロキシ)チタン、ジブトキシビス(トリエチルシロキシ)チタン、ジイソプロポキシビス(トリブチルシロキシ)チタン、ジブトキシビス(トリブチルシロキシ)チタン、ジイソプロポキシビス(トリイソプロピルシロキシ)チタン、ジブトキシビス(トリイソプロピルシロキシ)チタン、トリイソプロポキシトリメチルシロキシチタン、トリブトキシトリメチルシロキシチタン、トリイソプロポキシトリイソプロピルシロキシチタン、トリブトキシトリイソプロピルシロキシチタンなどがあげられる。
【0022】
一般式(1)で表されるチタン化合物は、たとえばテトラアルコキシチタンとトリアルキルシラノールを、nが1、2または3の化合物が得られるように所定のモル比で反応させることにより製造できる。
【0023】
一般式(1)で表されるチタン化合物は毒性、環境汚染性が低く、前記有機重合体の硬化触媒として使用した場合に、速硬化性を有し、組成物中の添加剤や充填剤中に含まれる水分で分解されにくく、また、施工時の湿度により、硬化速度にばらつきが生じず、速やかに安定した硬化物を与える。したがって、前記有機重合体を主剤とする湿気硬化型組成物、とくに1液型の湿気硬化型組成物における硬化触媒として有用である。
【0024】
本発明の湿気硬化型組成物は、分子末端又は側鎖に加水分解性基と結合した珪素原子を1分子中に少なくとも1個有し、主鎖に炭素原子を有する有機重合体(A)100重量部に対して、硬化触媒(B)として、一般式(1)で表されるチタン化合物の1種または2種以上を0.1〜20重量部配合したものである。
【0025】
本発明に用いる有機重合体(A)は、分子末端または側鎖に加水分解性基と結合した珪素原子(以下、加水分解性珪素含有基という場合がある)を1分子中に少なくとも1個有し、主鎖に炭素原子を有する有機重合体である(一般に変性シリコーンといわれている)。
【0026】
炭素原子を有する主鎖としては、アルキレンオキシド重合体ないしポリエーテル、エーテル・エステルブロック共重合体等が挙げられる。また、エチレン性不飽和化合物、ジエン系化合物の重合体等が挙げられる。
【0027】
前記アルキレンオキシド重合体ないしポリエーテルとしては、
[CH2CH2O]m
[CH(CH3)CH2O]m
[CH(C2H5)CH2O]m
[CH2CH2CH2CH2O]m
等の繰り返し単位を有するものが例示される。ここで、mは2以上の整数である。
【0028】
また、エチレン性不飽和化合物、ジエン系化合物の重合体としては、エチレン、プロピレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の単独重合体またはこれらの2種以上の共重合体が挙げられる。より具体的には、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、エチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリイソプレン、スチレン−イソプレン共重合体、イソブチレン−イソプレン共重合体、ポリクロロプレン、スチレン−クロロプレン共重合体、アクリロニトリル−クロロプレン共重合体、ポリイソブチレン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル等が挙げられる。
【0029】
前記加水分解性珪素基は、湿気の存在下に、または硬化触媒を使用したときに湿気の存在下に縮合反応を起こす基である。具体的には、ハロゲン化シリル基、アルコキシシリル基、アルケニルオキシシリル基、アシロキシシリル基、アミノシリル基、アミノオキシシリル基、オキシムシリル基、アミドシリル基等があげられる。ここで、1つの珪素原子に結合したこれら加水分解性基の数は1〜3の範囲から選択される。また1つの珪素原子に結合した加水分解性基は1種であってもよく、複数種であってもよい。さらに加水分解性基と非加水分解性基が1つの珪素原子に結合していてもよい。加水分解性基と結合した珪素基としては、取り扱いが容易である点で、とくにアルコキシシリル基(モノアルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基、トリアルコキシシリル基を含む)が好ましい。加水分解性珪素含有基は、有機重合体分子の末端に存在していても、側鎖に存在していてもよい。加水分解性珪素含有基は、有機重合体の1分子当たり少なくとも1個あればよいが、硬化速度、硬化物性の点からは、1分子当たり平均して1.5個以上あるのが好ましい。加水分解性珪素含有基を前記主鎖重合体に結合させる方法としては公知の方法が採用できる。
【0030】
本発明で用いる有機重合体(A)の分子量は、とくに制約はないが、過度に高分子量のものは高粘度であり、硬化型組成物とした場合に使用上困難となるから、数平均分子量として30000以下が望ましい。このような有機重合体は、公知の方法によって製造することができるが、鐘淵化学工業(株)製のカネカMSポリマー等の市販品を使用してもよい。
【0031】
本発明の硬化型組成物において、チタン化合物(B)の含有量は、有機重合体(A)100重量部に対して0.1〜20重量部、特に0.5〜10重量部が好ましい。チタン化合物(B)の含有量が前記範囲未満では硬化性能が不十分であり、一方前記範囲を超えると硬化後の硬化物の復元率、耐候性などの物性、貯蔵中の安定性が低下することがある。
【0032】
本発明の湿気硬化型組成物には、硬化を促進し基材への密着性を良くするため、公知の種々のアミノ基置換アルコキシシラン化合物、またはその縮合物を使用することができる。具体的に例示すると、γ―アミノプロピルトリメトキシシラン、γ―アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、δ−アミノブチル(メチル)ジエトキシシラン、N,N’−ビス(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、およびこれらの部分加水分解物等が挙げられる。また、基材への密着性の向上のために、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン等のビニルアルコキシシラン化合物を使用できる。
【0033】
また本発明の湿気硬化型組成物には、さらに充填剤、着色剤、可塑剤、タレ防止剤、老化防止剤、溶剤等の硬化型組成物に通常添加される添加剤を加えてもよい。
【0034】
例えば、充填剤としては、具体的には、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、含水ケイ酸、クレー、焼成クレー、ガラス、ベントナイト、有機ベントナイト、シラスバルーン、ガラス繊維、石綿、ガラスフィラメント、粉砕石英、ケイソウ土、ケイ酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、二酸化チタン等が挙げられる。これら充填剤は単独で使用でき、また2種以上を併用できる。
【0035】
着色剤としては、具体的には、酸化鉄、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等が挙げられる。
【0036】
可塑剤としては、具体的には、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ブチルベンジルフタレート等のフタル酸エステル類、アジピン酸ジオクチル、コハク酸ジオクチル、コハク酸ジイソデシル、セバシン酸ジイソデシル、オレイン酸ブチル等の脂肪族カルボン酸エステル類、ペンタエリスリトールエステル等のポリオール化合物のエステル類、リン酸トリオクチル、リン酸トリクレジル等のリン酸エステル類、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ベンジル等のエポキシ系可塑剤、塩素化パラフィン等が挙げられる。
【0037】
タレ防止剤としては、具体的には、水添ヒマシ油、無水ケイ酸、有機ベントナイト、コロイド状シリカ等が挙げられる。
【0038】
また他の添加剤としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の接着付与剤、紫外線吸収剤、ラジカル連鎖禁止剤、過酸化物分解剤、各種の老化防止剤等が挙げられる。
【0039】
【実施例】
以下に本発明を実施例を用いて具体的に説明するが、本発明の範囲はこれによって限定されるものではない。
【0040】
製造例1
窒素導入管を取り付けた500mlナス型フラスコに、テトライソプロポキシチタン142g(0.5mol)、トリイソプロピルシラノール174.1g(1.0mol)を量り込み、マグネチックスターラーにて十分に混合した。発熱がおさまり、内温が室温付近になるまで攪拌を続けた後、生成したイソプロピルアルコールを減圧留去し、無色液体のチタン化合物Aの250g(収率98%)を得た。この化合物をFT−IRにて分析し、シラノールの吸収(3435cm-1)が存在しないことを確認した。また、次の元素分析の結果より、ジイソプロポキシビス(トリイソプロピルシロキシ)チタンであることを確認した。
【0041】
【0042】
製造例2
窒素導入管を取り付けた500mlナス型フラスコに、テトラブトキシチタン189g(0.54mol)、トリイソプロピルシラノール174.1g(1.0mol)を量り込み、マグネチックスターラーにて十分に混合した。発熱がおさまり、内温が室温付近になるまで攪拌を続けた後、生成したイソプロピルアルコールを減圧留去し、淡黄色液体のチタン化合物Bの256g(収率95%)を得た。この化合物をFT−IRにて分析しシラノールの吸収(3435cm-1)が存在しないことを確認した。また、次の元素分析の結果より、ジブトキシビス(トリイソプロピルシロキシ)チタンであることを確認した。
【0043】
【0044】
製造例3
窒素導入管を取り付けた500mlナス型フラスコに、テトライソプロポキシチタン142g(0.5mol)、トリメチルシラノール91g(1.0mol)を量り込み、マグネチックスターラーにて十分に混合した。発熱がおさまり、内温が室温付近になるまで攪拌を続けた後、生成したイソプロピルアルコールを減圧留去し、黄色液体のチタン化合物Cの168g(収率98%)を得た。この化合物をFT−IRにて分析しシラノールの吸収(3435cm-1)が存在しないことを確認した。また、次の元素分析の結果より、ジイソプロポキシビス(トリメチルシロキシ)チタンであることを確認した。
【0045】
【0046】
製造例4
窒素導入管を取り付けた500mlナス型フラスコに、テトライソプロポキシチタン142g(0.5mol)、トリエチルシラノール132g(1.0mol)を量り込み、マグネチックスターラーにて十分に混合した。発熱がおさまり、内温が室温付近になるまで攪拌を続けた後、生成したイソプロピルアルコールを減圧留去し、黄色液体のチタン化合物Dの210(収率98%)を得た。この化合物をFT−IRにて分析しシラノールの吸収(3435cm-1)が存在しないことを確認した。また、次の元素分析の結果より、ジイソプロポキシビス(トリエチルシロキシ)チタンであることを確認した。
【0047】
【0048】
製造例5
窒素導入管を取り付けた500mlナス型フラスコに、テトライソプロポキシチタン142g(0.5mol)、トリイソプロピルシラノール261.2g(1.5mol)を量り込み、マグネチックスターラーにて十分に混合した。発熱がおさまり、内温が室温付近になるまで攪拌を続けた後、生成したイソプロピルアルコールを減圧留去し、無色液体のチタン化合物Eの307g(収率98%)を得た。この化合物をFT−IRにて分析しシラノールの吸収(3435cm-1)が存在しないことを確認した。また、次の元素分析の結果より、イソプロポキシトリス(トリイソプロピルシロキシ)チタンであることを確認した。
【0049】
【0050】
製造例6
窒素導入管を取り付けた500mlナス型フラスコに、テトライソプロポキシチタン142g(0.5mol)、トリイソプロピルシラノール261.2g(0.5mol)を量り込み、マグネチックスターラーにて十分に混合した。発熱がおさまり、内温が室温付近になるまで攪拌を続けた後、生成したイソプロピルアルコールを減圧留去し、無色液体のチタン化合物Fの195g(収率98%)を得た。この化合物をFT−IRにて分析しシラノールの吸収(3435cm-1)が存在しないことを確認した。また、次の元素分析の結果より、トリイソプロポキシトリイソプロピルシロキシチタンであることを確認した。
【0051】
【0052】
製造例7
窒素導入管を取り付けた500mlナス型フラスコに、テトライソプロポキシチタン142g(0.5mol)、トリブチルシラノール216g(1.0mol)を量り込み、マグネチックスターラーにて十分に混合した。発熱がおさまり、内温が室温付近になるまで攪拌を続けた後、生成したイソプロピルアルコールを減圧留去し、無色液体のチタン化合物Gの292g(収率98%)を得た。この化合物をFT−IRにて分析しシラノールの吸収(3435cm-1)が存在しないことを確認した。また、次の元素分析の結果より、トリイソプロポキシビス(トリブチルシロキシ)チタンであることを確認した。
【0053】
【0054】
実施例1〜9
加水分解性珪素含有基を有し、主鎖がアルキレンオキシドである有機重合体(鐘淵化学工業(株)製MSポリマーS303)100重量部に対して、製造例1、2、3、4、5、6または7で得られたチタン化合物A、B、C、D、E、FまたはG、および表1に示される各種添加剤を表1に示される割合で配合し(ただし、実施例1、3では各種添加剤を配合しなかった)、混練して湿気硬化型組成物を調製した。
【0055】
得られた湿気硬化型組成物について、スナップタイム(半ゲル化し流動性のなくなるまでの時間)およびタックフリータイム(表面タックのなくなるまでの時間)を測定した。なお、材料の配合、混練、硬化までの操作は25℃、60%RHの雰囲気下で行った。結果を表1に示す。
【0056】
比較例1〜8
MSポリマーS303の100重量部に対して、シリコーンの硬化触媒として用いられている従来の錫化合物としてジブチル錫ジラウレートまたはジブチル錫ジアセテート、チタン化合物として、テトライソプロポキシチタン、チタンテトラアセチルアセトネートまたはジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセトナート)、および各種添加剤を表2に示される割合で配合し(ただし、比較例4、6、8では各種添加剤を配合しなかった)、混練して硬化型組成物を調製し、得られた硬化型組成物について実施例1〜9と同様にしてスナップタイムおよびタックフリータイムを測定した。結果を表2に示す。
【0057】
表1、2における材料の配合量は重量部である。
【0058】
また、表1、2に示す材料の詳細はつぎのとおりである。
炭酸カルシウム:充填剤
ノクラックNS−6:老化防止剤(大内新興化学工業(株)製)
スモイルP−350:流動パラフィン(村松石油(株)製)
A−171:ビニルアルコキシシラン化合物(日本ユニカー(株)製)
A−1100:アミノ基置換アルコキシシラン化合物(日本ユニカー(株)製)
ネオスタンU−200:ジブチル錫ジアセテート(日東化成(株)製)
ネオスタンU−100:ジブチル錫ジラウレート(日東化成(株)製)
テトライソプロポキシチタン:東京化成(株)製、特級試薬
チタンテトラアセチルアセトネート:東京化成(株)製、特級試薬
サニーキャットT−100:ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセトネート)(日東化成(株)製)
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
【発明の効果】
表1および表2から明らかなように、特定のチタン化合物を硬化触媒として含有する本発明の湿気硬化型組成物は、従来の湿気硬化型組成物に比べ早く硬化する。また、実施例1と2、実施例3と4の対比から明らかなように各種添加剤に微量に含まれる水分で失活することなく安定的に使用可能である。また、錫化合物を硬化触媒として使用しないため内分泌撹乱物質による生体への影響、環境への影響の心配のない硬化型組成物である。このような湿気硬化型組成物は、シーリング剤、コーティング剤、弾性接着剤として有用である。
Claims (4)
- 分子末端または側鎖に加水分解性基と結合した珪素原子を1分子中に少なくとも1個有し、主鎖がアルキレンオキシド重合体、ポリエーテル、エーテル・エステルブロック共重合体、エチレン性不飽和化合物の重合体、またはジエン系化合物の重合体のいずれかである有機重合体(A)100重量部に対して、硬化触媒(B)として、一般式(1):
- 一般式(1)において、R1、R2、R3、R4が炭素原子数1〜4の炭化水素基(nが2または3のとき、2つまたは3つのR1は相互に同一であっても、異なっていてもよい)である請求項2に記載の湿気硬化型有機重合体組成物。
- 一般式(1)において、R1がイソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチルであり、R2、R3、R4が相互に同一または異なって、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチルである請求項3に記載の湿気硬化型有機重合体組成物。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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