JP3890535B2 - 2−クロロピリジン誘導体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、N−メチリジン−2−クロロ−5−ピリジンメタンアミン、その製造方法及びそれを出発物質とする2−クロロ−5−アミノメチルピリジンの製造方法に関する。
【0002】
N−メチリジン−2−クロロ−5−ピリジンメタンアミンは、医薬、農薬の中間体、特に殺虫剤の中間体である2−クロロ−5−アミノメチルピリジンの合成原料として有用な新規化合物である。
【0003】
【従来の技術】
2−クロロ−5−アミノメチルピリジンの製造方法としては従来より種々の方法が知られている。例えば、ドイツ公開特許第3727126号明細書には、2−クロロ−5−クロロメチルピリジンをフタルイミドカリウムと反応させ、次いで得られるN−2−クロロ−5−ピリジルメチル−フタルイミドをヒドラジンと反応させて、2−クロロ−5−アミノメチルピリジンを製造する方法が記載されている。また特開平3−271273号公報には、2−クロロ−5−ピリジルメチルヘキサメチレンテトラアンモニウムクロリドを低級アルコールの存在下、水溶媒中鉱酸を用いて加水分解して、2−クロロ−5−アミノメチルピリジンを製造する方法が記載されている。
【0004】
しかしながら、これら従来の方法は次に示すような欠点を有している。
【0005】
即ち、ドイツ公開特許第3727126号明細書に記載の方法は、原料化合物に比較的高価なフタルイミドカリウムを用い、また無水のジメチルホルムアミドの回収にコストを要するため、経済的に不利である。更に、上記の方法は、ヒドラジン分解の際の後処理操作が煩雑であり、多量に副生するヒドラジドの廃棄も工業的には問題となる。
【0006】
また、特開平3−271273号公報に記載の方法は、上記ドイツ公開特許第3727126号明細書に記載の方法の欠点を解消したものであるが、この方法にも次のような欠点があり、工業的製造法として不適当である。即ち、該公報記載の方法によれば、加水分解時に2−クロロ−5−ピリジルメチルヘキサメチレンテトラアンモニウムクロリドに対して6倍モルのホルムアルデヒドが生成し、その生成するホルムアルデヒドを2倍モル以上の低級アルコールと反応させてジ低級アルコキシメタンに転化せしめ、更に転化されたジ低級アルコキシメタンを反応系外へ留去している。上記方法では、生成するホルムアルデヒド量が2−クロロ−5−ピリジルメチルヘキサメチレンテトラアンモニウムクロリドに対して6倍モルであるので、低級アルコールを2−クロロ−5−ピリジルメチルヘキサメチレンテトラアンモニウムクロリドに対して実に12倍モル以上必要とし(上記公報の実施例では18倍モル以上使用している)、更にジ低級アルコキシメタンの生成量も2−クロロ−5−ピリジルメチルヘキサメチレンテトラアンモニウムクロリドに対して6倍モルとなる。このように上記公報に記載の方法は、多量の低級アルコールを必要とするため、反応の容積効率が悪く、しかも反応系外に取り出される多量のジ低級アルコキシメタンを廃棄処分する必要があり、工業的に不利になるのは避けられない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の一つの課題は、反応の容積効率を改善すると共に、廃棄物の生成量を減少せしめて2−クロロ−5−アミノメチルピリジンを工業的に有利に製造することを可能にする、新規な原料化合物を提供することにある。
【0008】
本発明の他の一つの課題は、斯かる新規な原料化合物の製造方法を提供することにある。
【0009】
本発明の他の一つの課題は、斯かる原料化合物から2−クロロ−5−アミノメチルピリジンを工業的に有利に製造し得る方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明のN−メチリジン−2−クロロ−5−ピリジンメタンアミンは、文献未記載の新規化合物であって、下記式(1)で示される。
【0011】
【化4】
【0012】
本発明の式(1)のN−メチリジン−2−クロロ−5−ピリジンメタンアミンを出発原料とし、次の方法に従うことにより、式
【0013】
【化5】
【0014】
で示される2−クロロ−5−アミノメチルピリジンが工業的に有利に製造され得る。即ち、酸の存在下に式(1)のN−メチリジン−2−クロロ−5−ピリジンメタンアミンを加水分解するに当たり、反応系内に低級アルコールを存在させ、副生するホルムアルデヒドを低級アルコールとの反応生成物であるジ低級アルコキシメタンとして反応系外に除去しつつ加水分解反応を行うことにより式(2)の2−クロロ−5−アミノメチルピリジンが工業的に有利に製造される。
【0015】
N−メチリジン−2−クロロ−5−ピリジンメタンアミンを低級アルコールの存在下で酸加水分解を行うと、N−メチリジン−2−クロロ−5−ピリジンメタンアミンと等モルのホルムアルデヒドが副生し低級アルコールと反応してジ低級アルコキシメタンになるので、低級アルコールの使用量はN−メチリジン−2−クロロ−5−ピリジンメタンアミンに対して最低2倍モルで充分であり、しかもジ低級アルコキシメタンの生成量はN−メチリジン−2−クロロ−5−ピリジンメタンアミンに対して等モルである。またN−メチリジン−2−クロロ−5−ピリジンメタンアミンの酸加水分解によって高収率で2−クロロ−5−アミノピリジンメタンアミンを製造することができる。従ってN−メチリジン−2−クロロ−5−ピリジンメタンアミンを原料化合物として用いると、反応の容積効率を改善し且つ廃棄物量を減少せしめて2−クロロ−5−アミノピリジンメタンアミンを製造することができる。
【0016】
本発明の式(1)のN−メチリジン−2−クロロ−5−ピリジンメタンアミンは、(A)水及び水素化触媒の存在下に、2−クロロ−5−トリクロロメチルピリジン、ヘキサメチレンテトラミン及び水素を反応させるか、又は(B)式
【0017】
【化6】
【0018】
で示される2−クロロ−5−ピリジルメチルヘキサメチレンテトラアンモニウムクロリドと水とを反応させることにより製造される。
【0019】
【発明の実施の形態】
まず(A)の方法につき説明する。
【0020】
(A)の方法によれば、式(1)のN−メチリジン−2−クロロ−5−ピリジンメタンアミンは、水及び水素化触媒の存在下に、2−クロロ−5−トリクロロメチルピリジン、ヘキサメチレンテトラミン及び水素を反応させることにより製造される。
【0021】
(A)の方法で用いられるヘキサメチレンテトラミンの使用量は、特に限定されるものではないが、通常2−クロロ−5−トリクロロメチルピリジン1モルに対して0.5〜5モル、好ましくは1〜3モルとするのがよい。ヘキサメチレンテトラミンの使用量を上記範囲内で用いれば、目的化合物を経済的に収率よく製造できる。
【0022】
(A)の方法では、水及び水素化触媒を使用することが必須である。これらを使用しないと、目的化合物が製造され得ない。水素化触媒としては、従来公知のものを広く使用でき、ラネーニッケル、ラネーコバルト等のラネー触媒、ルテニウムカーボン、ロジウムカーボン、プラチナカーボン等の貴金属触媒等を例示できる。これらの中でもラネーニッケルが特に好ましい。ラネーニッケルを使用すると、水素還元雰囲気下でのピリジン核の2位のクロロ基の脱クロロ化が生じ難く、実質的に側鎖のトリクロロメチル基のみが脱クロロ化される。斯かる水素化触媒の使用量は、2−クロロ−5−トリクロロメチルピリジンに対して通常1〜50重量%、好ましくは5〜20重量%である。また水の使用量としては、2−クロロ−5−トリクロロメチルピリジン1モルに対して通常5〜20モル、好ましくは8〜15モルとするのがよい。
【0023】
上記(A)の方法では、反応により脱離した塩素原子が水素と反応し、副生成物として塩化水素が生じる。副生する塩化水素は、水素化触媒の失活の原因となるため、塩化水素を中和して水素化触媒の失活を防止する目的で、反応系内に第3級アミンを共存させるのが好ましい。また第3級アミンの共存下で反応を行うことにより、N−メチリジン−2−クロロ−5−ピリジンメタンアミンの収率を向上させることができる。
【0024】
第3級アミンは、副生する塩化水素を中和し、中和による以外の変質が起こらないものである限り、従来公知のものを広く使用できる。第3級アミンとしては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、ジメチルブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、メチルジオクチルアミン等のトリアルキルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロピレンジアミン等の第3級ポリメチレンポリアミン、ピリジン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、2−エチルピリジン、3−エチルピリジン、4−エチルピリジン、2−イソプロピルピリジン、3−イソプロピルピリジン、4−イソプロピルピリジン、2−フェニルピリジン、3−フェニルピリジン、4−フェニルピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、4−ピペリジノピリジン等のピリジン塩基類等が挙げられる。第3級アミンの使用量としては、2−クロロ−5−トリクロロメチルピリジン1モルに対して通常1〜6モル、好ましくは2〜4モルとするのがよい。
【0025】
上記第3級アミンの中でもpKaが8以上、好ましくはpKaが8を越える、より好ましくはpKaが9〜11の第3級アミンの存在下で反応を行うと、目的とするN−メチリジン−2−クロロ−5−ピリジンメタンアミンの収率をより一層向上させることができる。ここで第3級アミンのpKaは、水中、25℃における値である。pKaが8を越える第3級アミンとしては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、ジメチルブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、メチルジオクチルアミン等のトリアルキルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロピレンジアミン等の第3級ポリメチレンポリアミン、4−ジメチルアミノピリジン、4−ピペリジノピリジン等の第2級アミンで置換されたピリジン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
(A)の方法を実施するに当たっては、通常2−クロロ−5−トリクロロメチルピリジンを溶媒に溶解して行われる。使用される溶媒は、上記原料化合物を溶解し、しかもこの反応で変質しないものである限り従来公知のものを広く使用できる。斯かる溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソアミルアルコール、ヘキシルアルコール等のアルコール類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、アニソール、エチルフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類等が挙げられる。これらの中でも、芳香族炭化水素類が好適である。これら溶媒は、1種単独で又は2種以上混合して使用される。
【0027】
上記溶媒の使用量は、使用する溶媒に対する2−クロロ−5−トリクロロメチルピリジンの溶解度に応じて決まり、一概に言えるものではないが、通常2−クロロ−5−トリクロロメチルピリジン1重量部当たり、2−クロロ−5−トリクロロメチルピリジンを溶解する溶媒を0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜3重量部使用するのがよい。
【0028】
上記(A)の方法の実施に際しては、反応器に2−クロロ−5−トリクロロメチルピリジン、ヘキサメチレンテトラミン、水、第3級アミン、水素化触媒及び溶媒を仕込み、導入管を通じて水素を導入しながら加熱撹拌して反応を行えばよい。具体的には、反応圧が常圧〜5×106Pa、好ましくは常圧〜5×105Paとなるように水素を導入しながら、反応温度5〜100℃、好ましくは25〜65℃で反応を行なうのがよい。2−クロロ−5−トリクロロメチルピリジン1モルに対して水素が2〜3モル消費されると反応は完結する。
【0029】
上記反応で生成したN−メチリジン−2−クロロ−5−ピリジンメタンアミンの単離、精製は、常法に従い、反応終了後抽出、蒸留等を行うことにより容易に行うことができる。例えば、反応終了後、触媒を濾過し、水及び水と混合しない有機溶媒で抽出すると、有機層にN−メチリジン−2−クロロ−5−ピリジンメタンアミンが抽出される。次いで有機層から再結晶等によりN−メチリジン−2−クロロ−5−ピリジンメタンアミンを単離することができる。
【0030】
次に(B)の方法につき説明する。
【0031】
(B)の方法によれば、式(1)のN−メチリジン−2−クロロ−5−ピリジンメタンアミンは、式(3)で示される2−クロロ−5−ピリジルメチルヘキサメチレンテトラアンモニウムクロリドと水とを反応させることにより製造される。
【0032】
(B)の方法を実施するに当たっては、まず2−クロロ−5−ピリジルメチルヘキサメチレンテトラアンモニウムクロリドを水に溶解し、好ましくはこの溶液に塩基性物質及び/又は有機溶媒を添加する。
【0033】
水の使用量としては、原料の2−クロロ−5−ピリジルメチルヘキサメチレンテトラアンモニウムクロリド1モルに対して通常5〜50モル、好ましくは15〜30モルとするのがよい。
【0034】
塩基性物質は、2−クロロ−5−ピリジルメチルヘキサメチレンテトラアンモニウムクロリドと水との反応を促進せしめ、しかもN−メチリジン−2−クロロ−5−ピリジンメタンアミンの収率を向上させるものである。塩基性物質としては、従来公知のものを広く使用でき、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア、アミン類を例示できる。アミン類としては、上述した第3級アミン類をいずれも使用することができる。斯かる塩基性物質の使用量としては、原料の2−クロロ−5−ピリジルメチルヘキサメチレンテトラアンモニウムクロリド1モルに対して通常0.1〜5モル程度、好ましくは0.5〜3モル程度とするのがよい。
【0035】
有機溶媒は、生成するN−メチリジン−2−クロロ−5−ピリジンメタンアミンを溶解して2−クロロ−5−ピリジルメチルヘキサメチレンテトラアンモニウムクロリドと水との反応を円滑にするものである。有機溶媒としては、N−メチリジン−2−クロロ−5−ピリジンメタンアミンを溶解し得るものである限り従来公知のものを広く使用でき、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン等の脂環式化合物、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類等を挙げることができる。有機溶媒の使用量としては、原料の2−クロロ−5−ピリジルメチルヘキサメチレンテトラアンモニウムクロリド1重量部当たり通常0.1〜5重量部程度、好ましくは0.5〜2重量部程度とするのがよい。
【0036】
上記(B)の方法を実施するに当たり、反応温度は通常30〜100℃、好ましくは50〜80℃であり、また反応時間は通常1〜10時間程度である。
【0037】
上記方法で生成するN−メチリジン−2−クロロ−5−ピリジンメタンアミンの単離、精製は、常法に従い、反応終了後抽出、蒸留等の処理を施すことにより容易に行うことができる。
【0038】
次に本発明のN−メチリジン−2−クロロ−5−ピリジンメタンアミンから2−クロロ−5−アミノメチルピリジンを製造する方法(以下「(C)の方法」という)につき説明する。
【0039】
(C)の方法を実施するに当っては、まずN−メチリジン−2−クロロ−5−ピリジンメタンアミンを好ましくは溶媒に溶解し、この溶液に酸を含有する水溶液を添加する。
【0040】
溶媒としては、N−メチリジン−2−クロロ−5−ピリジンメタンアミンを溶解し得るものである限り、従来公知のものを広く使用でき、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン等の脂環式化合物、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類等を例示できる。斯かる溶媒の使用量としては、原料のN−メチリジン−2−クロロ−5−ピリジンメタンアミン1重量部に対して通常1〜5重量部程度、好ましくは1〜2重量部程度とするのがよい。酸としては、従来公知のものを広く使用でき、例えば塩酸、硫酸、リン酸等の鉱酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸等を挙げることができる。これら酸の使用量は、原料のN−メチリジン−2−クロロ−5−ピリジンメタンアミンに対して通常1〜5当量、好ましくは2〜3当量とするのがよい。また水の使用量は、原料のN−メチリジン−2−クロロ−5−ピリジンメタンアミン1モル当り、通常1モル以上、好ましくは5〜11モルとするのがよい。
【0041】
(C)の方法では、酸含有水溶液が添加された混合物に、更に低級アルコールを添加し、攪拌下に加熱する。この際の加熱温度は、特に限定されるものではないが、室温〜還流温度の範囲内から適宜選択すればよい。好ましい加熱温度は、40℃〜還流温度付近である。また加熱時間も特に制限されないが、通常1〜2時間程度でよい。用いられる低級アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。低級アルコールの添加量としては、原料のN−メチリジン−2−クロロ−5−ピリジンメタンアミン1モルに対して通常4〜12モル程度、好ましくは6〜10モル程度とするのがよい。
【0042】
(C)の方法では、上記加熱処理は、通常、反応系内から未反応の低級アルコール及びジ低級アルコキシメタンを留去させつつ行われる。低級アルコール及びホルムアルデヒドからのジ低級アルコキシメタンの生成反応は平衡反応であるので、ジ低級アルコキシメタンの留去が不十分であると、目的物の2−クロロ−5−アミノメチルピリジンの収率が低下することになる。そのため本発明では、特に反応系内からジ低級アルコキシメタンをできる限り留去させるのがよい。留去は、常法に従って行えばよく、常圧下で行ってもよいし、減圧下で行ってもよい。
【0043】
(C)の方法の化学反応式を下記に示す。
【0044】
【化7】
【0045】
〔式中Rは炭素数1〜4の直鎖又は分枝鎖状アルキル基を示す。〕
(C)の方法で回収された未反応の低級アルコールは、再使用される。
【0046】
上記(C)の方法において、反応系内に低級アルコールを添加してN−メチリジン−2−クロロ−5−ピリジンメタンアミンの酸加水分解を行うと、副生するホルムアルデヒドは低級アルコールと反応してジ低級アルコキシメタンになる。このジ低級アルコキシメタンを反応系外に除去すれば、結果として副生ホルムアルデヒドを反応系外に除き得るので、ホルムアルデヒドと2−クロロ−5−アミノメチルピリジンとの副反応を抑制することができる。従って、(C)の方法によれば、目的とする2−クロロ−5−アミノメチルピリジンを高収率で製造し得る。
【0047】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明をより一層明らかにするが、本発明はこれらの実施例になんら限定されるものではない。
【0048】
実施例1
容量500mlの電磁撹拌式オートクレーブに2−クロロ−5−トリクロロメチルピリジン46.2g(0.2モル)、ヘキサメチレンテトラミン56.0g(0.4モル)、トリエチルアミン(pKa=10.7)60.6g(0.6モル)、ラネーニッケル4.6g、水84.5g及びトルエン46.2gを仕込んだ。ここに水素を導入しながら反応圧を3×105Paに保ち、撹拌下45℃で5時間反応を行った。反応終了後反応液を室温まで冷却し、反応液にメタノールを加えて均一にした後、高速液体クロマトグラフィーにて分析したところ、N−メチリジン−2−クロロ−5−ピリジンメタンアミンの収率は65.4%であった。尚、2−クロロ−5−ピリジルメチルヘキサメチレンテトラアンモニウムクロリドが収率12.0%で副生していた。
【0049】
メタノールが加えられた反応液からメタノールを留去して、水層と有機層とを得た。次に有機層を濃縮して残渣を得た。残渣をトルエンで再結晶して白色結晶のN−メチリジン−2−クロロ−5−ピリジンメタンアミンを得た。
【0050】
N−メチリジン−2−クロロ−5−ピリジンメタンアミンの融点及び1H−NMRデータを次に示す。
【0051】
融点:113〜116℃
1H−NMR(CDCl3,TMS)δppm:
8.2−8.3(d,1H),7.45−7.7(dd,1H),7.1−7.3(d,1H),3.6(s,2H),3.35(s,2H)。
【0052】
実施例2
容量100mlの電磁撹拌オートクレーブに2−クロロ−5−トリクロロメチルピリジン11.5g(0.05モル)、ヘキサメチレンテトラミン14g(0.1モル)、4−ジメチルアミノピリジン(pKa=9.65)18.3g(0.1.5モル)、ラネーニッケル1.15g、水21g及びトルエン11.5gを仕込み、反応を7時間行った以外は実施例1と同様に行った。N−メチリジン−2−クロロ−5−ピリジンメタンアミンの収率は53.0%であった。また2−クロロ−5−ピリジルメチルヘキサメチレンテトラアンモニウムクロリドの収率は8.6%であった。
【0053】
実施例3
反応を25℃で行う以外は実施例1と同様に行った。N−メチリジン−2−クロロ−5−ピリジンメタンアミンの収率は27.0%であった。また2−クロロ−5−ピリジルメチルヘキサメチレンテトラアンモニウムクロリドの収率は44.5%であった。
【0054】
実施例4
4−ジメチルアミノピリジンを使用しない以外は実施例2と同様に行った。2−クロロ−5−ピリジルメチルヘキサメチレンテトラアンモニウムクロリドの収率は7.9%、N−メチリジン−2−クロロ−5−ピリジンメタンアミンの収率は4.2%であった。また水素化触媒のラネーニッケルからニッケルの溶出が認められた。
【0055】
実施例5
2−クロロ−5−ピリジルメチルヘキサメチレンテトラアンモニウムクロリド9.1g(30.1ミリモル)、28%アンモニア水1.83g(30.1ミリモル)、水11.5g(0.64モル)及びトルエン6.9gを反応器に仕込み、60℃で2時間反応させた。反応液を高速液体クロマトグラフィーにて分析したところ、N−メチリジン−2−クロロ−5−ピリジンメタンアミンの収率は99.4%であった。尚、2−クロロ−5−ピリジルメチルヘキサメチレンテトラアンモニウムクロリドの未反応率は0.6%であった。
【0056】
実施例6
28%アンモニア水を使用しない以外は実施例5と同様に行った。N−メチリジン−2−クロロ−5−ピリジンメタンアミンの収率は46.3%であった。尚、2−クロロ−5−ピリジルメチルヘキサメチレンテトラアンモニウムクロリドの未反応率は36.8%であった。
【0057】
実施例7
28%アンモニア水の代わりにトリエチルアミン6.1g(60.3ミリモル)を使用し、反応温度を45℃、反応時間を8時間とする以外は実施例5と同様に行った。N−メチリジン−2−クロロ−5−ピリジンメタンアミンの収率は88.0%であった。尚、2−クロロ−5−ピリジルメチルヘキサメチレンテトラアンモニウムクロリドの未反応率は12.0%であった。
【0058】
実施例8
28%アンモニア水の代わりに48%水酸化ナトリウム2.5g(30.0ミリモル)を使用し、反応温度を50℃、反応時間を3時間とする以外は実施例5と同様に行った。N−メチリジン−2−クロロ−5−ピリジンメタンアミンの収率は88.0%であった。尚、2−クロロ−5−ピリジルメチルヘキサメチレンテトラアンモニウムクロリドの未反応率は12.0%であった。
【0059】
実施例9
N−メチリジン−2−クロロ−5−ピリジンメタンアミン7.7g(50ミリモル)をトルエン11.5gに懸濁し、この懸濁液に攪拌しながら36%塩酸15.6g(塩化水素として154ミリモル)を30℃、10分間で滴下した。滴下終了後、メタノール12.8gを加えて66℃で1時間攪拌し、更に反応液からメタノール(400ミリモル)及びジメトキシメタンを常圧で反応液の温度が100℃に達するまで留去しながら反応を行った。残渣にクロロホルムを加え、水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和した後、抽出した。得られたクロロホルム層からクロロホルムを留去して、純度98%の2−クロロ−5−アミノメチルピリジン7.0g(収率96%)を得た。
【0060】
実施例10
36%塩酸の代りに濃硫酸5g(50ミリモル)及び水5g(278ミリモル)を使用し、メタノールの使用量を9.6g(300ミリモル)とした以外は、実施例9と同様に処理して、純度97%の2−クロロ−5−アミノメチルピリジン6.9g(収率94%)を得た。
Claims (7)
- 水及び水素化触媒の存在下に、2−クロロ−5−トリクロロメチルピリジン、ヘキサメチレンテトラミン及び水素を反応させることを特徴とする請求項1記載のN−メチリジン−2−クロロ−5−ピリジンメタンアミンの製造方法。
- 反応系内に第3級アミン類を共存させる請求項2記載の製造方法。
- 第3級アミン類が、pKaが8以上の第3級アミン類である請求項3記載の製造方法。
- 塩基性物質及び/又は有機溶媒の存在下で反応を行う請求項5記載の製造方法。
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