JP3888520B2 - 車両用シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シートバックを水平に倒すフルフラット状態にしたときの居住性を改善した車両用シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、RV車、SUV車などでは、セカンドシートが前後方向にスライドしたり回転したりするようにして利便性を高めたマルチパーパスシートを備えたものがある。また、肩掛け式3点シートベルトを備えたセカンドシートにおいては、従来、車両への衝撃発生時に肩ベルトを引き込むリトラクタを車両側に備えていたが、最近では、上記のようなマルチパーパスシートに対応するために、リトラクタを車両用シートに備えたものも提供されてきている。
【0003】
図6はそのような車両用シートの一例を示す側面図である。この図に示す車両用シートは、車両の床に設置されたスライドレール1に、スライドフレーム2を摺動可能かつ上下方向の軸線回りに回転可能に設け、このスライドフレーム2に、シートクッションの骨組みであるクッションフレーム3をヒンジ4を介して支持するとともに、ヒンジ4に、シートバックの骨組みとなるシートバックフレーム5を回転可能に支持したもので、シートバックフレーム5は、図示しないリクライニング機構により前後方向に傾動するようになっている。このような車両用シートには、肩掛け式3点シートベルトが設けられ、その肩ベルトは、車両への衝撃発生時にスライドフレーム2の後端部に設置したリトラクタ6により引き込まれる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、図6に示すように、従来の車両用シートでは、シートバックフレーム5の下側にリトラクタ6が配置されているため、シートバックフレーム5は40゜程度しか傾けることができない。このため、上記のような車両用シートではシートバックをほぼ水平に倒すフラフラット状態にすることができないという問題があった。
【0005】
上記のような問題を解決するために、ヒンジ4の位置を高くすることにより、シートバックとリトラクタ6との干渉を避けることが考えられる。しかしながら、そのような手段では、シートバックを略水平に倒したときに、シートクッションとシートバックとの間に段差が生じ、フルフラット状態での居住性が低下するという欠点がある。なお、このような欠点は、リトラクタを備えた車両用シートに限らず、例えばフロントシートであっても、フルフラット状態でシートクッションとシートバックとの間に段差が生じることが往々にしてある。
【0006】
したがって、本発明は、シートバックを倒してフルフラット状態にしたときに、シートバックとシートクッションとの間に生じる段差を小さくすることができ、フルフラット状態での居住性を向上させることができる車両用シートを提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の車両用シートは、クッションパッドが装着されたクッションフレームと、このクッションフレームの後端部の位置に傾動可能に支持されたシートバックフレームと、このシートバックフレームを傾斜させてクッションフレームおよびシートバックフレームをフルフラット状態にすることができるリクライニング機構とを備えた車両用シートにおいて、シートバックフレームの基部に、シートバックフレームを傾斜させてフルフラット状態にしたときにクッションパッドの後端部を上昇させる係合部を設けたことを特徴としている。
【0008】
上記構成の車両用シートにあっては、シートバックフレームを傾斜させてフルフラット状態にしたときに、シートバックフレームの傾動に伴って係合部がクッションパッドの後端部を上昇させる。よって、シートバックフレームの傾動中心がクッションフレームに対して高い位置にあっても、クッションパッドの後端部が上昇することで高さの差が軽減される。したがって、シートバックの下側に配置したリトラクタとシートバックとの干渉をさけるためにシートバックの傾動中心の位置を高くしたような場合であっても、フルフラット状態でシートクッションとシートバックとの間の段差を小さくすることができ、その居住性を向上させることができる。
【0009】
ここで、クッションパッドの後端部を上昇させる構成として、具体的にはクッションパッド自体を持ち上げる態様と、クッションフレームの後端部を持ち上げる態様とが考えられる。前者の態様では、シートクッションの下側に、シートクッションの前後方向中間部で傾動可能に支持された支持部材を設け、シートバックフレームを傾斜させてフルフラット状態にしたときに、支持部材の後端側の自由端に係合部が係合するように構成することができる。この形態が本発明の主要な構成であり、すなわち本発明は、シートクッションの下側に、傾動軸が該シートクッションの前後方向中間部に配され、その傾動軸を支点に前後方向に傾動可能に支持部材を設け、シートバックフレームのクッションフレームへの支持端部である基部に、シートバックを傾斜させた際に支持部材に係合してシートクッションの後端部を上昇させ、かつ、シートクッションおよびシートバックをフルフラット状態とし得る係合部を設けたことを特徴とする。あるいは、係合部によってクッションパッド自体の後端部を直接持ち上げる構成とすることもできる。
【0010】
また、後者の態様では、クッションフレームをその前端部を中心に傾動可能に構成し、シートバックフレームを傾斜させてフルフラット状態にしたときに、クッションフレームの後端側の自由端に係合部が係合して持ち上げるように構成することができる。
【0011】
係合部は、シートバックフレームの傾動に伴って回動するものであればその構成は任意である。たとえば、シートバックフレームの基部、つまり傾動中心の近傍に、傾動中心に対して半径方向へ突出する爪部を取り付けて係合部とすることができる。この場合、シートバックフレームに対する爪部の角度位置を適宜設定することにより、シートバックフレームを傾動させてフルフラット状態になる手前で、爪部が上記した支持部材(クッションパッド)またはクッションフレームに係合するようにする。そして、シートバックフレームをさらに傾動させることにより、爪部が支持部材やクッションフレームの自由端を持ち上げる。
【0012】
本発明では、セカンドシートやサードシートに限らず、フロントシートにも適用可能である。一般に、フロントシートでは、シートクッションの傾斜が大きいために、フルフラット状態にしたときのシートクッションとシートバックとの間の段差が大きい。したがって、フロントシートにも本発明を適用することにより、フルフラット状態での居住性を向上させることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
1.第1実施形態
A.実施形態の構成
本発明の第1実施形態について図1〜図3を参照して説明する。図1は第1実施形態の車両用シートの全体構成を示す斜視図、図2は車両用シートを概念的に示す側面図である。図1において符号10はスライドレールであり、スライドレール10は車両の床に前後方向(X方向)に沿って配置されている。スライドレール10には、スライドフレーム20が前後方向に摺動可能に支持されている。スライドフレーム20の上端部にはテーブル21(図3参照)が設けられ、テーブル21は、上下方向(Y方向)に移動可能とされ、かつ、上下方向の軸線回り(P方向)に回転可能とされている。
【0014】
図1において符号30はシートクッション、40はシートバックである。シートバック40には、肩掛け式3点シートベルト50が設けられている。3点シートベルト50の肩ベルト51は、シートバック40の一方の肩部に挿入され、そこから出て図3に示すリトラクタ23に引き込まれている。
【0015】
図3に示すように、テーブル21には、シートクッション30の骨組みとなるクッションフレーム31が支持され、クッションフレーム31には、クッションパッド32が取り付けられている。そして、クッションパッド32の下側には、押上機構60が配置されている。以下、押上機構60の構成について図3を参照して説明する。
【0016】
テーブル21の前後方向中間部には、軸受61が取り付けられ、軸受61には、支持部材62の前端部(図3中右側の端部)が軸63によって傾動自在に支持されている。支持部材62は、シートパッド32の左右方向(図3中紙面と直交する方向)の中央部に配置され、左右方向に所定の幅を有する板や、左右方向に棒を連設したもので構成されている。その幅は、シートパッド32の左右方向の幅の例えば50%あるいはそれ以上に設定される。支持部材62の後端部には、左右方向に向けて延在するピン64が取り付けられている。そして、このような押上機構60にクッションパッド32の後端部32aが載置されている。
【0017】
テーブル21には、シートバック40の骨組みとなるシートバックフレーム41がヒンジ24を介して傾動自在に支持され、シートバックフレーム41にはバックパッド42が取り付けられている。このシートバックフレーム41は、図示しないリクライニング機構により前傾または後傾させることができ、また、傾斜させた状態を固定することができるようになっている。シートバックフレーム41の基部には、シートバック40の長手方向へ向けて突出する爪部43が取り付けられ、爪部43は、シートバックフレーム41の傾動に伴って回動する。また、爪部43の傾動軌跡には、上記押上機構60のピン64が配置され、これに爪部43が係合可能となっている。
【0018】
B.実施形態の動作
上記構成の車両用シートの動作を説明する。この車両用シートは、前後方向へのスライド、回転、上下位置の調整が可能であり、例えば180゜回転させてサードシートと対面させることもできる。また、シートバック40を倒してフルフラット状態にすることもできる。フルフラット状態にするためにシートバック40を後傾させると、爪部43が押上機構60のピン64に当接し、その状態からシートバック40をさらに傾動させると、爪部43がピン64を押し上げて支持部材62を上方へ向けて傾動させる。クッションパッド32の後端部32aは押上機構60に載置されているため、支持部材62の回動に伴って持ち上げられ、その結果、図3に示すように、シートクッション30とシートバック40との間の段差が浅くなる。したがって、フルフラット状態での居住性を向上させることができる。
【0019】
2.第2実施形態
図4および図5を参照して本発明の第2実施形態を説明する。なお、以下の説明においては、第1実施形態と同等の構成要素には同符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。第2実施形態は、クッションフレーム31を傾動可能に構成したものである。
【0020】
テーブル21の前端部には、軸受71が取り付けられ、軸受61には、クッションフレーム31の前端部が軸73によって傾動自在に支持されている。また、クッションフレーム31に後端部には、軸線を左右方向に向けたピン74が取り付けられている。ピン74は、爪部43の回動軌跡に位置している。
【0021】
上記のような車両用シートでは、フルフラット状態にするためにシートバック40を後傾させると、爪部43がピン74に当接し、その状態からシートバック40をさらに傾動させると、爪部43がピン74を押し上げてクッションフレーム31を上方へ向けて傾動させる。これにより、クッションパッド32の後端部32aが持ち上げられ、その結果、図5に示すように、シートクッション30とシートバック40との間の段差が浅くなる。したがって、この第2実施形態においてもフルフラット状態での居住性を向上させることができる。
【0022】
なお、前記第1実施形態において、爪部43によってクッションパッド32の後端部32aを直接持ち上げるように構成することもできる。たとえば、爪部43を左右に一対設けてそれらに板を架設し、シートバック40を倒したときに板がクッションパッド32の後端部32aを持ち上げるように構成することができる。
【0023】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、シートバックフレームを傾斜させてフルフラット状態にしたときに、シートバックフレームの傾動に伴って係合部がクッションパッドの後端部を上昇させるから、フルフラット状態でシートクッションとシートバックとの間の段差を小さくすることができ、その居住性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態の車両用シートを示す斜視図である。
【図2】 第1実施形態の車両用シートを示す側面図である。
【図3】 第1実施形態の車両用シートを示す側面図である。
【図4】 第2実施形態の車両用シートを示す側面図である。
【図5】 第2実施形態の車両用シートを示す側面図である。
【図6】 従来の車両用シートを示す側面図である。
【符号の説明】
20 スライドフレーム
21 テーブル
30 シートクッション
31 クッションフレーム
32 クッションパッド
40 シートバック
41 シートバックフレーム
43 爪部
60 押上機構
62 支持部材
Claims (1)
- クッションフレームにクッションパッドが装着されたシートクッションと、
前記クッションフレームの後端部の位置に傾動可能に支持されたシートバックフレームにバックパッドが装着されたシートバックと、
このシートバックを傾斜させて該シートバックおよび前記シートクッションをフルフラット状態にすることができるリクライニング機構とを備えた車両用シートにおいて、
前記シートクッションの下側に、傾動軸が該シートクッションの前後方向中間部に配され、その傾動軸を支点に前後方向に傾動可能に支持部材を設け、
前記シートバックフレームの前記クッションフレームへの支持端部である基部に、前記シートバックを傾斜させた際に前記支持部材に係合してシートクッションの後端部を上昇させ、かつ、シートクッションおよびシートバックをフルフラット状態とし得る係合部を設けたことを特徴とする車両用シート。
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