JP3887275B2 - センサ回路 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ホール素子に設けられた2つの端子対を、それぞれ励磁電流を供給するための端子対とホール効果で得られた信号を検出するための端子対として交互に切り換えて使用するセンサ回路において、ノイズの影響を受け難くするための技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
ホール素子を内蔵したセンサ回路において、被検出量(外部磁界)に応じた精度の高い検出信号を得るには、ホール素子に印加される磁界がゼロの時の電圧、すなわちオフセット電圧の影響を排除する必要が有る。検出信号からオフセット電圧の影響を排除できるようにした従来のセンサ回路の一例を図5に示した。
図5において、2はホール素子であり、端子対を形成する端子T1、T3と、同様に端子対を形成する端子T2、T4を有している。ホール素子2の端子T1と端子T2はそれぞれ第1の切換スイッチSW1のa接点及びb接点に接続され、切換スイッチSW1の可動接点cは電流供給端子1に接続されている。またホール素子2の端子T3と端子T4はそれぞれ第2の切換スイッチSW2のa接点及びb接点に接続され、切換スイッチSW2の可動接点cはグランドに接続されている。
【0003】
ホール素子2の端子T1と端子T2はそれぞれ第3の切換スイッチSW3のa接点及びb接点にも接続され、端子T3と端子T4はそれぞれ第4の切換スイッチSW4のa接点及びb接点にも接続されている。第3の切換スイッチSW3の可動接点cは第1のトランスファーゲート(以下、ゲートと略す)TG1を介してパラレル出力型のセンスアンプAMPの非反転入力端子に接続され、第4の切換スイッチSW4の可動接点cは第2のゲートTG2を介してセンスアンプAMPの反転入力端子に接続されている。センスアンプAMPの非反転側出力端子はサンプルアンドホールド回路4の入力端子に接続され、センスアンプAMPの反転側出力端子はサンプルアンドホールド回路5の入力端子に接続されている。また、センスアンプAMPの出力端子間にはアッテネータATTが接続されている。
【0004】
サンプルアンドホールド回路4と5の各出力端子は信号合成回路6に接続され、信号合成回路6の出力端子はセンサ回路出力端子7に接続されている。
このセンサ回路内にはさらにクロック信号発生器3が設けられ、クロック信号発生器3から第1のクロック信号CK6が第1から第4の切換スイッチSW1〜SW4に供給され、第2のクロック信号CK7が2つのゲートTG1およびTG2に供給され、第3のクロック信号CK8がサンプルアンドホールド回路4に供給され、第4のクロック信号CK9がサンプルアンドホールド回路5に供給されるように構成されている。
以上のような構成とした図5のセンサ回路は、図6に示すような波形を持つ各クロック信号CK6〜CK9に応じて、次のような動作と信号処理を行う。
【0005】
第1のクロック信号CK6が“0”の状態の時、切換スイッチSW1〜SW4は可動接点cをa接点に接続する。すると、励磁電流がホール素子2の端子T1、T3間を流れ、端子T2、T4の間にはホール効果によって外部磁界に応じた電圧信号が発生する。ここで第2のクロック信号CK7が“1”の状態となるとゲートTG1とTG2がオン状態となり、センスアンプAMPの入力端子間に端子T2とT4の間に生じた電圧信号が供給される。そしてクロック信号CK7が“1”の状態の間に第3のクロック信号CK8が“1”となると、センスアンプAMPの非反転側出力端子に現れた信号(Va)はサンプルアンドホールド回路4に取り込まれ、蓄積されることになる。
【0006】
次に、第1のクロック信号CK6が“1”になると、切換スイッチSW1〜SW4は可動接点cをb接点に接続する。すると今度は、励磁電流が端子T2、T4間を流れ、端子T1、T3の間にはホール効果による電圧信号が発生する。ここで第2のクロック信号CK7が“1”の状態となるとゲートTG1とTG2がオン状態となり、センスアンプAMPの入力端子間に端子T1とT3の間に生じた電圧信号が供給される。そしてクロック信号CK2が“1”の状態の間に第4のクロック信号CK4が“1”となると、センスアンプAMPの反転側出力端子に現れた信号(−Vb)はサンプルアンドホールド回路5に取り込まれ、蓄積されることになる。
【0007】
ここで、端子T1、T3間、あるいは端子T2、T4間に生じた電圧信号のうち、外部磁界とホール効果によって誘起される電圧成分(以下、ホール電圧と略す)をV、ホール素子2特有のオフセット電圧成分をVOFSとすると、各サンプルアンドホールド回路4、5に蓄積された信号(Va)、(−Vb)は次式(1)、(2)のようになる。ただし、式の簡略化と理解の容易化のため、アッテネータATTの作用は無視し、さらにセンスアンプAMPやその他の回路部分の利得は1とする。
(Va)=(V+VOFS) (1)
(−Vb)=−(−V+VOFS) (2)
【0008】
信号合成回路6において各サンプルアンドホールド回路4、5に蓄積された信号を加算処理すると、それにより得られる合成信号は次のようになる。
Figure 0003887275
この式(5)から分かるように、以上に説明した動作と信号処理の結果、オフセット電圧の影響が排除された合成信号がセンサ回路の検出信号としてセンサ回路出力端子7から外部に提供されることになる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
図5の回路は、切換スイッチSW1〜SW4によって励磁電流を供給する端子対と電圧を検出する端子対を交互に切り換えるという動作を繰り返しながら、(Va)と(−Vb)の2つの電圧信号を得ている。このような回路では、切換スイッチSW1〜SW4を切り換える時、回路の内部には図6の2段目に示すようなスパイクノイズが発生する。そこで図5の回路は、センスアンプAMPの入力側にゲートTG1、TG2を設置し、スパイクノイズが発生する期間にはセンスアンプAMPの入力端子と各切換スイッチSW3、SW4の間を切り離している。またセンスアンプAMPの出力端子間にアッテネータATTを設置し、センスアンプAMPの出力側に侵入したノイズの低減も図っている。
【0010】
しかし、このようなノイズ対策では、ゲートTG1、TG2の状態をスパイクノイズ発生のタイミングに合わせて切り換える必要が有り、そのようなクロック信号CK7を発生するためのクロック信号発生器3の構成が複雑になる。また、ゲートTG1、TG2を構成する半導体素子によって、ホール素子特有のオフセット電圧とは別の新たなオフセット電圧が生じ、電圧信号の中のホール電圧成分の割合が相対的に減少して検出精度が落ちる。さらにアッテネータATTを設けると電圧信号のノイズ成分だけでなくホール電圧の成分まで減衰するといった弊害があった。
そこで本発明は、トランスファーゲートやアッテネータを設けずともノイズの影響を受け難くしたセンサ回路を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明は、ホール素子の第1と第2の端子対に生じる第1と第2の電圧信号を第1のクロック信号に従って順次検出し、検出した第1と第2の電圧信号に相当する各信号を合成してオフセットの影響の少ない検出信号を得るセンサ回路において、各入力端子がそれぞれ第1の端子対に接続され、第1の電圧信号を検出する第1のセンスアンプと、出力端子が第1のセンスアンプの出力端子に共通接続され、所定の電圧値で一定の信号を出力する第1のダミーアンプと、各入力端子がそれぞれ第2の端子対に接続され、第2の電圧信号を検出する第2のセンスアンプと、出力端子が第2のセンスアンプの出力端子に共通接続され、所定の電圧値で一定の信号を出力する第2のダミーアンプとを具備し、第1のクロック信号に同期した第2のクロック信号に従って第1のセンスアンプと第1のダミーアンプに各出力信号を交互に出力させ、第1のクロック信号に同期した第3のクロック信号に従って第2のセンスアンプと第2のダミーアンプに各出力信号を交互に出力させることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
ホール素子の第1の端子対に第1のセンスアンプの各入力端子を接続し、ホール素子の第2の端子対に第2のセンスアンプの各入力端子を接続する。第1のセンスアンプの出力端子には所定の電圧値の信号を出力する第1のダミーアンプの出力端子を接続し、第2のセンスアンプの出力端子には所定の電圧値の信号を出力する第2のダミーアンプの出力端子を接続する。そしてクロック信号発生回路を設け、ホール素子の第1と第2の端子対に交互に励磁電流を供給するための切換スイッチに第1のクロック信号を供給し、第1のセンスアンプと第1のダミーアンプに第2のクロック信号を供給し、第2のセンスアンプと第2のダミーアンプに第3のクロック信号を供給する。
【0013】
そして、第2のクロック信号に従って第1のセンスアンプと第1のダミーアンプに各出力信号を交互に出力させ、第3のクロック信号に従って第2のセンスアンプと該第2のダミーアンプに各出力信号を交互に出力させる。ここで、第2と第3のクロック信号は、第1のクロック信号に同期し、位相が互いに半周期遷移したような信号波形とする。また、第2と第3のクロック信号はダミーアンプに信号を出力させる期間の方がセンスアンプに信号を出力させる期間よりも長く、第1のクロック信号の状態が切り替わる時には第1と第2のダミーアンプに信号を出力させるような信号波形とする。
【0014】
【実施例】
ノイズの影響を受け難い本発明によるセンサ回路の実施例の回路を図1に示した。
図1において、端子T1、T3からなる端子対と端子T2、T4からなる端子対を持つホール素子2は、その端子T1と端子T2をそれぞれ第1の切換スイッチSW1のa接点及びb接点に接続し、端子T3と端子T4をそれぞれ第2の切換スイッチSW2のa接点及びb接点に接続している。切換スイッチSW1の可動接点cは電流供給端子1に接続し、切換スイッチSW2の可動接点cはグランドに接続している。
【0015】
さらにホール素子2の端子T2は第1のセンスアンプAs1の非反転入力端子に接続し、端子T4は第1のセンスアンプAs1の反転入力端子に接続する。ホール素子2の端子T1は第2のセンスアンプAs2の反転入力端子に接続し、端子T3は第2のセンスアンプAs1の非反転入力端子に接続する。第1と第2のセンスアンプAs1、As2の各出力端子は、それぞれ第1と第2のサンプルアンドホールド回路4、5を介して信号合成回路6の各入力端子に接続し、信号合成回路6の出力端子をセンサ回路出力端子7に接続している。
【0016】
そして本発明のセンサ回路の特徴として、第1と第2のダミーアンプAd1、Ad2を設け、第1のダミーアンプAd1の出力端子は第1のセンスアンプAs1の出力端子に接続し、第2のダミーアンプAd2の各出力端子は第2のセンスアンプAs2の出力端子に接続する。ダミーアンプAd1とAd2の入力側にはそれぞれ電圧源VR1とVR2を接続する。
さらに、クロック信号発生器3を設け、第1のクロック信号CK1を第2の切換スイッチSW1、SW2に供給し、第2のクロック信号CK2をセンスアンプAs1およびダミーアンプAd1に供給し、第3のクロック信号CK3をセンスアンプAs2およびダミーアンプAd2に供給し、第4のクロック信号CK4をサンプルアンドホールド回路4に供給し、第5のクロック信号CK5をサンプルアンドホールド回路5に供給するように接続している。
【0017】
以上のような構成とした図1のセンサ回路は、クロック信号発生器3において生じる図2に示すような波形を持った各クロック信号CK1〜CK5に応じて、次のような動作と信号処理を行う。
第1のクロック信号CK1が“0”の状態の時、切換スイッチSW1、SW2は可動接点cをa接点に接続する。すると、励磁電流がホール素子2の端子T1、T3の間を流れ、端子T2、T4の間には外部磁界に応じた電圧信号が発生する。
ここで第2のクロック信号CK2が“0”であると、ダミーアンプAd1は動作状態、センスアンプAs1は停止状態となる。この時、ダミーアンプAd1は電圧源VR1から供給される電圧に応じた一定の出力信号を出力する。
【0018】
第2のクロック信号CK2が“1”となると、今度は、ダミーアンプAd1が停止状態、センスアンプAs1が動作状態となる。するとダミーアンプAd1は出力を停止し、センスアンプAs1がホール素子2の端子T2、T4間に発生した電圧信号に応じた出力信号(Va)を出力する。そしてクロック信号CK2が“1”の状態の間に第4のクロック信号CK4が“1”となると、センスアンプAs1の出力信号(Va)はサンプルアンドホールド回路4に取り込まれ、蓄積されることになる。
【0019】
次に第1のクロック信号CK1が“1”となると、切換スイッチSW1、SW2は可動接点cをb接点に接続する。すると、励磁電流が端子T2、T4の間を流れ、端子T1、T3の間に外部磁界に応じた電圧信号が発生する。
ここで第3のクロック信号CK3が“0”であると、ダミーアンプAd2は動作状態、センスアンプAs2は停止状態となる。この時、ダミーアンプAd2は電圧源VR2から供給される電圧に応じた一定の出力信号を出力する。
しかし第3のクロック信号CK3が“1”となると、今度は、ダミーアンプAd2が停止状態、センスアンプAs2が動作状態となる。するとセンスアンプAs2はホール素子2の端子T2、T4間に発生した電圧信号に応じた出力信号(Vb)を出力する。そしてクロック信号CK3が“1”の状態の間に第5のクロック信号CK5が“1”となると、センスアンプAs2の出力信号(Vb)はサンプルアンドホールド回路5に取り込まれ、蓄積されることになる。
【0020】
ここで、ホール電圧をV、オフセット電圧成分をVOFSとし、各センスアンプやその他の回路部分の利得を全て1とすると、各サンプルアンドホールド回路4、5に蓄積された信号(Va)、(Vb)は次式(6)、(7)のようになる。
(Va)=(V+VOFS) (6)
(Vb)=−(−V+VOFS) (7)
信号合成回路6においてサンプルアンドホールド回路4、5に蓄積された信号を加算処理すると、それにより得られる合成信号は次の式(8)のようになる。
Figure 0003887275
【0021】
以上のような動作と信号処理の結果、オフセット電圧の影響が排除された合成信号がセンサ回路の検出信号としてセンサ回路出力端子7から外部に提供されることになる。
(6)、(7)、(8)式から分かるように、図1の回路の信号処理の形態は図4の回路と同じであり、図1の回路は、センスアンプの数を増やして切換スイッチSW3、SW4を省略したのと等価な回路であると言える。しかし、図1の回路は、ノイズ対策をダミーアンプAd1、Ad2によって行うようにした所が、単純に切換スイッチを省略し、センスアンプを増設した回路と大きく異なっている。
【0022】
つまり、図1の回路はセンスアンプAs1、As2の各入力端子がホール素子の端子T1〜T4に常時接続されている。このため、切換スイッチSW1、SW2の切り換え動作時に、センスアンプAs1、As2の入力端子間に比較的大きなノイズが印加されることは避けられない。しかし、切換スイッチSW1、SW2の切り換え動作時にダミーアンプAd1、Ad2を動作させておくと、センスアンプAs1、As2の出力端子はダミーアンプAd1、Ad2の出力信号が印加された状態となる。すると、センスアンプAs1、As2の出力側に侵入したノイズは、ダミーアンプAd1、Ad2の出力信号によってその相対的なレベルが低下し、回路に誤動作を起こさせたり信号に悪影響を及ぼすようなレベルでは無くなる。
【0023】
この時、ダミーアンプAd1、Ad2とは対称的にセンスアンプAs1、As2を停止状態にしておくと、ノイズがセンスアンプAs1、As2の出力側に侵入したとしても、そのレベルは非常に小さなものとなる。するとノイズはダミーアンプAd1、Ad2の出力信号の中に埋没し、センスアンプAs1、As2の出力端子の位置は実質的にノイズが生じていないのと同じ状態になる。
このように図1の回路は、ゲートやアッテネータに依らずとも、ダミーアンプを設けたことによってノイズの影響を受け難くなっている。また、新たなオフセット電圧の発生源が無く、電圧信号中のホール電圧成分を減衰させることも無いため、外部磁界の検出精度を高くすることができる。
【0024】
図3には図1の回路をさらに具体化したセンサ回路の構成を示した。
図3において、ホール素子2、切換スイッチSW1およびSW2の接続構成は図1の回路と同じである。ここで、ホール素子2の端子T2はパラレル出力型の第1のセンスアンプAs1Pの非反転入力端子に接続し、端子T4はセンスアンプAs1Pの反転入力端子に接続する。ホール素子2の端子T1はパラレル出力型の第2のセンスアンプAs2Pの反転入力端子に接続し、端子T3はセンスアンプAs1Pの非反転入力端子に接続する。そしてセンスアンプAs1P、As2Pの各非反転側出力端子は、それぞれサンプルアンドホールド回路14、15を介して信号合成回路16に接続している。
【0025】
また、センスアンプAs1P、As2Pの各反転側出力端子は、それぞれサンプルアンドホールド回路18、19を介して信号合成回路20に接続している。2つの信号合成回路16、20の各出力端子は第3の信号合成回路21に接続し、信号合成回路21の出力端子はセンサ回路出力端子17に接続している。
ここでサンプルアンドホールド回路14は、センスアンプAs1Pの出力端子と信号合成回路16の間に直列に設置され、クロック信号CK4に応じて動作するゲートTG11と、ゲートTG11の出力側とグランドとの間に接続されたコンデンサC11とから構成されている。他のサンプルアンドホールド回路15、18、19もサンプルアンドホールド回路14と同様な構成となっている。
【0026】
また信号合成回路14は、出力端子がサンプルアンドホールド回路14に接続されたバッファB11と、出力端子がサンプルアンドホールド回路15に接続されたバッファB21と、バッファB11とB21の出力端子間に直列接続された抵抗R11とR21とから構成されている。この信号合成回路14は加算回路の構成となっており、信号合成回路20も同様の構成となっている。そして信号合成回路21は差動回路の構成となっており、その2つの入力端子は信号合成回路16の抵抗R11とR21の接続点、信号合成回路20の抵抗R12とR22の接続点にそれぞれ接続されている。
【0027】
図3の回路では、さらに、パラレル出力型の第1と第2のダミーアンプAd1P、Ad2Pを設け、ダミーアンプAd1Pの反転側、非反転側の各出力端子をセンスアンプAs1Pの反転側、非反転側の各出力端子にそれぞれ接続する。同様に、ダミーアンプAd2Pの反転側、非反転側の各出力端子をセンスアンプAs2Pの反転側、非反転側の各出力端子にそれぞれ接続する。ダミーアンプAd1PとAd2Pの入力側にはそれぞれ電圧源VR11とVR12を接続する。
【0028】
そして、クロック信号発生器13を設け、第1のクロック信号CK1を切換スイッチSW1、SW2に供給し、第2のクロック信号CK2をセンスアンプAs1PおよびダミーアンプAd1Pに供給し、第3のクロック信号CK3を第2のセンスアンプAs2PおよびダミーアンプAd2Pに供給し、第4のクロック信号CK4をサンプルアンドホールド回路14と18に供給し、第5のクロック信号CK5をサンプルアンドホールド回路15と19に供給するように接続構成している。なお、クロック信号発生器13が出力する各クロック信号CK1〜CK5は、図1の回路と同様に、図2に示すような波形を持つものとする。
【0029】
このような構成のセンサ回路では、各センスアンプとダミーアンプがパラレル出力型で構成されていることにより、センスアンプより出力側の回路部分で、図1の回路で説明した動作が二重に行われることになる。
すなわち、第1のクロック信号CK1が“0”で第2のクロック信号CK2が“1”となると、センスアンプAs1Pは、ホール素子2の端子T2、T4間に生じた電圧信号に応じて、非反転側出力端子から信号(Va)を、反転側出力端子から信号(−Va)をそれぞれ出力する。そしてクロック信号CK2が“1”の状態の間に第4のクロック信号CK4が“1”となると、センスアンプAs1Pの各出力信号(Va)、(−Va)はそれぞれサンプルアンドホールド回路14と18に取り込まれ、蓄積されることになる。
【0030】
逆に第1のクロック信号CK1が“1”で第3のクロック信号CK3が“1”となると、センスアンプAs2Pは、ホール素子2の端子T2、T4間に生じた電圧信号に応じて、非反転側出力端子から信号(Vb)を、反転側出力端子から信号(−Vb)をそれぞれ出力する。そしてクロック信号CK3が“1”の状態の間に第5のクロック信号CK5が“1”となると、センスアンプAs2Pの各出力信号(Vb)、(−Vb)はそれぞれサンプルアンドホールド回路15と20に取り込まれ、蓄積されることになる。
【0031】
ここで、ホール電圧をV、オフセット電圧成分をVOFSとし、各センスアンプやその他の回路部分の利得を1とすると、各サンプルアンドホールド回路14、15、18、19に蓄積された信号(Va)、(−Va)、(Vb)、(−Vb)は次の式(9)〜(12)のようになる。
(Va)=(V+VOFS) (9)
(−Va)=−(V+VOFS) (10)
(Vb)=−(−V+VOFS) (11)
(−Vb)=(−V+VOFS) (12)
【0032】
信号合成回路16においてサンプルアンドホールド回路14、15に蓄積された信号を加算処理し、同様に、信号合成回路20においてサンプルアンドホールド回路18、19に蓄積された信号を加算処理すると、それにより得られる合成信号は次の式(13)、(14)のようになる。
Figure 0003887275
【0033】
そして、第3の信号合成回路21において各信号合成回路16、20の出力信号を減算処理すると、最終的に4Vなる合成信号が得られる。これが検出信号としてセンサ回路出力端子17から外部に提供されることになる。
式が複雑になるので詳細には示さなかったが、図3の回路を厳密に検証すると、各センスアンプAs1P、As2Pの各出力端子から第3の信号合成回路21に至る4つの信号伝達経路上には、それぞれホール素子特有のオフセット電圧とは別のオフセット電圧が生じる。例えば、センスアンプを構成するオペアンプやサンプルアンドホールド回路を構成するゲートにおいて、ホール素子のオフセット電圧とは別のオフセット電圧が現れると考えられる。
【0034】
ここで、図3の全回路を1チップ上に、しかもセンスアンプAs1PとAs2Pを同一形状に形成し、全てのサンプルアンドホールド回路15、16、18、19を同一形状に形成し、さらに信号合成回路16と20を同一形状に形成すれば、各信号伝達経路に生じた別のオフセット電圧は、それぞれ同じ符合で略同じ大きさとなる。すると、各信号伝達経路に生じた別のオフセット電圧は、第3の信号合成回路21において減算処理された際に互いに打ち消し合い、仮令、完全に消去されなくとも非常に小さな値となることは明らかである。これにより図3の回路は、図1の回路に比べて外部磁界の検出精度を高くすることが可能となっている。勿論、ダミーアンプAd1P、Ad2Pの作用によって図1の回路と同様にノイズの影響を受け難くなっていることは言うまでも無い。
【0035】
図1、図3の実施例は、ホール素子2の端子T1からT3の方向(0°の方向とする)に励磁電流を流した場合と、端子T2からT4の方向(時計回りで90°の方向とする)に励磁電流を流した場合について、外部磁界に応じた電圧信号を検出する回路構成となっている。オフセット電圧の影響を低減し、外部磁界の検出精度を一層向上させるには、さらに端子T3からT1の方向(0°と正反対なので180°とする)に励磁電流を流し、端子T4からT2の方向(90°と正反対なので270°とする)に励磁電流を流した上で、外部磁界に応じた電圧信号を検出するという方法が考えられる。センサ回路にこのような4方向検出動作を実行させるには、図4に示すような選択スイッチ回路SW11、SW12を使用する必要がある。
【0036】
詳しい説明は省くが、図4の回路の選択スイッチ回路SW11、SW12は、供給される制御信号に応じて内部スイッチK、L、M、Nのいずれか一つをオン状態にする。ここで、スイッチKがオン状態となった時には励磁電流は0°の方向に流れ、スイッチLがオン状態となった時には励磁電流は90°の方向に流れる。そして、スイッチMがオン状態となった時には励磁電流は180°の方向に流れ、スイッチNがオン状態となった時には励磁電流は270°の方向に流れるように接続構成されている。
【0037】
この図4の回路では、図3の回路で説明した0°と90°の方向に加えて、180°と270°の方向でもホール素子2に対し電圧信号の検出を行う。このため4方向検出動作を行うセンサ回路を実現するには、サンプルアンドホールド回路が図3の回路の2倍、つまり8系統必要となる。ちなみに、図4の回路を使用して4方向検出動作を行うセンサ回路を実現した場合、その回路の動作は図3の回路の動作を、励磁電流の方向を正反対にして2回実行しているかのような動作となる。
【0038】
【発明の効果】
以上に説明したように本発明によるセンサ回路は、ホール素子の第1の端子対に第1のセンスアンプの各入力端子を接続し、ホール素子の第2の端子対に第2のセンスアンプの各入力端子を接続する。第1のセンスアンプの出力端子には所定の電圧値の信号を出力する第1のダミーアンプの出力端子を接続し、第2のセンスアンプの出力端子には所定の電圧値の信号を出力する第2のダミーアンプの出力端子を接続した回路構成を有する。
【0039】
そして、第1のクロック信号に従ってホール素子の第1と第2の端子対に交互に励磁電流を供給するのに際し、第1のクロック信号に同期した第2のクロック信号に従って第1のセンスアンプと第1のダミーアンプの各出力信号を交互に出力させ、第1のクロック信号に同期した第3のクロック信号に従って第2のセンスアンプと第2のダミーアンプの各出力信号を交互に出力させる。ここで、第1のクロック信号の状態が切り替わる時には第1と第2のダミーアンプに信号を出力させるように動作することを特徴とする。
【0040】
このような構成と動作によれば、ダミーアンプが信号を出力している時、センスアンプの出力側に侵入したノイズの信号レベルは相対的に低減される。具体的に、励磁電流の供給先である端子対を切り換える時にダミーアンプを動作状態、センスアンプを停止状態としておくと、センスアンプの出力側に侵入したノイズはダミーアンプの出力信号に埋もれてしまい、回路や信号がノイズの影響を受けることが無くなる。また従来回路に比べて、電圧信号中のホール電圧成分が信号伝送線路中の別のオフセット電圧によって相対的に低下することが少なく、外部磁界の検出精度を向上させられるという付帯効果も得られる。これにより、ノイズの影響を受け難く、なおかつ外部磁界の検出精度を向上させたセンサ回路を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明によるセンサ回路の実施例の回路図。
【図2】 センサ回路を動作させるためのクロック信号の波形図。
【図3】 本発明によるセンサ回路の更に具体的な構成を示す回路図。
【図4】 検出精度を向上させる4方向検出動作を行わせるための選択スイッチをホール素子の接続構成を示す回路図。
【図5】 従来のセンサ回路の一例の回路図。
【図6】 従来のセンサ回路を動作させるためのクロック信号の波形図。
【符号の説明】
1:電流供給端子 2:ホール素子 3:クロック信号発生器 4、5:サンプルアンドホールド回路 6:信号合成回路 7:センサ回路出力端子 Ad1、Ad2:ダミーアンプ As1、As2:センスアンプ CK1:第1のクロック信号 CK2:第2のクロック信号 CK3:第3のクロック信号 SW1、SW2:切換スイッチ T1、T3:(第1の端子対を形成する)端子 T2、T4:(第2の端子対を形成する)端子 VR1、VR2:電圧源

Claims (5)

  1. ホール素子の第1と第2の端子対に生じる第1と第2の電圧信号を第1のクロック信号に従って順次検出し、検出した該第1と第2の電圧信号に相当する各信号を合成してオフセットの影響の少ない検出信号を得るセンサ回路において、
    各入力端子がそれぞれ該第1の端子対に接続され、該第1の電圧信号を検出する第1のセンスアンプと、出力端子が該第1のセンスアンプの出力端子に共通接続され、所定の電圧値で一定の信号を出力する第1のダミーアンプと、各入力端子がそれぞれ該第2の端子対に接続され、該第2の電圧信号を検出する第2のセンスアンプと、出力端子が該第2のセンスアンプの出力端子に共通接続され、所定の電圧値で一定の信号を出力する第2のダミーアンプとを具備し、
    該第1のクロック信号に同期した第2のクロック信号に従って該第1のセンスアンプと該第1のダミーアンプに各出力信号を交互に出力させ、該第1のクロック信号に同期した第3のクロック信号に従って該第2のセンスアンプと該第2のダミーアンプに各出力信号を交互に出力させる
    ことを特徴とするセンサ回路。
  2. 第1のクロック信号に従ってホール素子に設けられた第1と第2の端子対に交互に励磁電流を供給し、該第1の端子対への励磁電流供給時に該第2の端子対に生じた第1の電圧信号と、該第2の端子対への励磁電流供給時に該第1の端子対に生じた第2の電圧信号とを検出し、該第1と第2の電圧信号に相当する各信号を合成してオフセットの影響の少ない検出信号を得るセンサ回路において、
    各入力端子がそれぞれ該第1の端子対に接続され、該第1の電圧信号を検出する第1のセンスアンプと、出力端子が該第1のセンスアンプの出力端子に共通接続され、所定の電圧値で一定の信号を出力する第1のダミーアンプと、各入力端子がそれぞれ該第2の端子対に接続され、該第2の電圧信号を検出する第2のセンスアンプと、出力端子が該第2のセンスアンプの出力端子に共通接続され、所定の電圧値で一定の信号を出力する第2のダミーアンプとを具備し、
    該第1のクロック信号に同期した第2のクロック信号に従って該第1のセンスアンプと該第1のダミーアンプに各出力信号を交互に出力させ、該第1のクロック信号に同期した第3のクロック信号に従って該第2のセンスアンプと該第2のダミーアンプに各出力信号を交互に出力させ、ここで、該第1のクロック信号の状態が切り替わる時点では該第1と第2のダミーアンプに出力信号を出力させることを特徴とするセンサ回路。
  3. 前記第1のクロック信号の第1のパルス発生期間において前記第1の電圧信号が検出され、該第1のクロック信号の第2のパルス発生期間において前記第2の電圧信号が検出され、
    前記第2のクロック信号の第3のパルス発生期間において前記第1のセンスアンプが前記第1の電圧信号に応じた信号を出力し、
    前記第3のクロック信号の第4のパルス発生期間において前記第2のセンスアンプが前記第2の電圧信号に応じた信号を出力し、
    ここで該第1と該第2のパルス発生期間は交互に現れ、該第3のパルス発生期間は該第1のパルス発生期間の間に生じ、該第4のパルス発生期間は該第2のパルス発生期間の間に生じる
    ことを特徴とする、請求項1あるいは請求項2に記載したセンサ回路。
  4. 前記第2のクロック信号と前記第3のクロック信号は、互いに位相が半周期遷移したようなパルス波形を持つことを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれかに記載したセンサ回路。
  5. 前記第1と第2のセンサアンプがパラレル出力型の差動アンプより成り、
    該第1のセンサアンプの非反転出力は第1のサンプルアンドホールド回路に供給され、該第1のセンサアンプの反転出力は第2のサンプルアンドホールド回路に供給され、該第2のセンサアンプの反転出力は第3のサンプルアンドホールド回路に供給され、該第2のセンサアンプの非反転出力は第4のサンプルアンドホールド回路に供給され、
    該第1と第3のサンプルアンドホールド回路の各出力信号を第1の信号合成回路において加算処理し、該第2と第4のサンプルアンドホールド回路の各出力信号を第2の信号合成回路において加算処理し、該第1の信号合成回路の出力信号と該第2の信号合成回路の出力信号を合成して前記検出信号を得る
    ことを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれかに記載したセンサ回路。
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