JP3886608B2 - 直流アーク溶接用電源装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、商用交流を整流してアーク溶接に適した出力電圧・電流の直流を得るようにした直流アーク溶接用電源装置の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図6に単相の商用交流電源から電力を得る方式の従来の直流アーク溶接用電源装置の例を示す。同図において、1は単相の商用交流電源、2は電力加工部、4は電極4aおよび被溶接物4bからなるアーク溶接負荷である。電力加工部2は両波整流回路REC1、この両波整流回路REC1の出力を平滑するコンデンサC1、スイッチングトランジスタTR1ないしTR4およびダイオードD1ないしD4からなるインバータ回路、インバータ回路の出力電圧をアーク溶接に適した電圧に変換する変圧器T1、変圧器T1の出力電圧を再度整流する整流回路REC2、この整流回路REC2と出力端子との間に設けられた直流リアクトルL1、出力電流を検出する電流検出器CT1、出力電流設定器21、出力電流設定器21の出力Irと電流検出器CT1の検出値Ifとを比較し差信号ΔI=Ir−Ifを出力する比較器22および比較器22の出力信号ΔIを入力として入力信号に応じた導通時間率のパルス信号を出力してインバータ回路を構成するスイッチングトランジスタTR1とTR4およびスイッチングトランジスタTR2とTR3とをそれぞれ1組として各組のトランジスタを同時にかつ各組毎に交互にON−OFFさせる信号を出力するパルス幅制御回路(以後PWM制御回路という)23からなる。
【0003】
図6の装置においては、商用交流電源1からの電力は両波整流回路REC1にて整流されて直流となり、コンデンサC1にて平滑された後にスイッチングトランジスタTR1ないしTR4にて高周波の交流に変換されて変圧器T1にて所望の電圧に変換された後に整流回路REC2にて再度整流されて直流となり直流リアクトルL1を介してアーク溶接負荷4に供給される。この出力電流は電流検出器CT1にて検出されて出力電流設定器21の設定値Irと比較器22にて比較されて、差信号ΔI=Ir−Ifが得られる。この差信号ΔIはPWM制御回路23に供給されてこの差信号ΔIが減少する方向にスイッチングトランジスタTR1ないしTR4の導通時間率が調整されて、出力電流が設定値に保たれるように制御される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記の方式の従来装置においては、商用交流電源1からの入力電流が大きく歪むために商用交流電源側に悪影響を及ぼす。その理由を図7の波形図にて説明する。図7(a)は図6の装置における商用交流電源1の電圧波形を示し、同図(b)はコンデンサC1の端子電圧、(c)は入力電流波形を示す。図7から容易にわかるように、正弦波の入力電力に対して、入力電流は平滑用コンデンサC1の端子電圧が入力電圧の両波整流波形よりも低い期間においてのみ流れる。このために、入力電流は入力電圧位相のピーク点附近の限られた期間のみ流れるパルス状の波形となり、極端な歪波電流となる。このために商用交流電源1に対しては、この期間にのみ大きな負担がかかることになり、電圧降下もこの期間にのみ発生するので、同図(a)に破線にて示すように電圧波形を大きく歪ませることになって、商用交流電源側に過大な負担をかけ、電源の過負荷防止用遮断器をトリップさせたり同一電源に接続されている他の機器に悪影響を及ぼし、甚しい場合にはこれらを誤動作させることも発生する。また、入力電圧波形に対して入力電流波形の位相が極端にずれることから、商用周波交流電源に対する力率が極めて低いものとなる。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記従来装置の課題を解決するために、商用交流電源を整流して脈動する直流とする整流回路と、前記整流回路の出力側に接続された変圧器の一次巻線と高周波スイッチング素子とからなる直列回路と、前記変圧器の二次巻線に接続された前記高周波スイッチング素子の導通によって前記変圧器の一次巻線が励磁されるときの出力を阻止する極性に定められたダイオードとコンデンサとからなる直列回路と、前記コンデンサの一方の端子に直列に接続された直流リアクトルと、前記高周波スイッチング素子を出力設定値に対応した導通時間率でON−OFF制御するスイッチング素子制御回路とを備え、前記直流リアクトルの他方の端子と前記コンデンサの他方の端子とから出力電力を取り出す直流アーク溶接用電源装置、を提案したものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
図1に本発明の実施の形態を接続図にて示す。同図において、1は単相商用交流電源、20は電力加工部、4はアーク溶接負荷であり、電極4aおよび被溶接物4bからなる。電力加工部20において、REC21は両波整流回路、T21は変圧器、TR21は変圧器T21の一次巻線Npと直列に接続された高周波スイッチング素子であり、スイッチング用トランジスタや類似の素子が利用できる。D21は高周波スイッチング素子TR21と逆並列に接続された保護用ダイオード、D22は変圧器T21の二次巻線Nsの出力側に直列に設けられたダイオード、C21はダイオードD22と二次巻線Nsとに直列に接続されたコンデンサ、R21は抵抗器、L21は出力回路に直列に設けられた直流リアクトルであり、直流アーク溶接に適した出力電流変化の時定数を与える。CT21は電流検出器、21は出力電流設定器、22は出力電流設定器21の設定値Irと電流検出器CT21の出力Ifとを入力として差信号ΔI=Ir−Ifを出力する比較器、23は比較器22の出力ΔIを入力とし、入力信号に対応した導通時間率の高周波パルス信号を高周波スイッチング素子TR21に供給して、これをON−OFF制御するPWM制御回路である。またLF21は入力側高周波フィルタ、R21は抵抗器である。
【0007】
また、変圧器T21の一次巻線Npと二次巻線Nsとは図中に・印で示したように相互の極性が定めてあり、これらに対して、ダイオードD22の極性を図のように定めてある。このダイオードD22の極性は、高周波スイッチング素子TR21が導通したときに変圧器T21の一次巻線Npに図の矢印方向に電流が流れたときに二次巻線Nsに発生する矢印方向の出力電圧を阻止する極性に定める。
【0008】
図1の装置において、商用交流電源1からの電力は両波整流回路REC21にて整流されて脈動する直流となり、変圧器T21の一次巻線Npと高周波スイッチング素子TR21とからなる直列回路に供給される。高周波スイッチング素子TR21が導通すると両波整流回路REC21の出力の瞬時値に応じた電流が変圧器T21の一次巻線を通して流れる。変圧器T21はこれによって励磁されて二次巻線Nsに図示の極性の出力電圧を発生するが、この出力電圧に対して、ダイオードD22は逆極性であるので変圧器T21の二次巻線には電流は流れられず、このために一次巻線Npに流れた電流はすべて変圧器T21に磁気エネルギーとして蓄えられる。次に高周波スイッチング素子TR21を遮断すると、それまで一次巻線に流れていた電流が急減しようとするのを阻止する方向の電圧、即ち図中矢印と逆の方向の電圧が誘起する。この誘起電圧はダイオードD22に対して順方向であり、このためそれまで一次巻線に流れていた電流に代って二次巻線に電流が流れ、ダイオードD22を通してコンデンサC21を充電する。(一部はアーク溶接負荷4および抵抗器R21にも流れる。)このとき、二次巻線Npから流れ出す電力は高周波スイッチング素子TR21が導通していた期間に変圧器T21に蓄えられた電磁エネルギーであり、二次巻線Nsの出力電圧はこの蓄積されていた電磁エネルギーと一次巻線に接続されているダイオードD21、コンデンサC21、抵抗器R21およびアーク溶接負荷4によって定まる電圧となり、例えばコンデンサC21の端子電圧が零に近いときは低く、高いときにはそれ以上の高電圧となる。
【0009】
変圧器T21に蓄えられていた電磁エネルギーの放出が完了した頃に再び高周波スイッチング素子TR21を導通させると、変圧器T21に対する電磁エネルギーの蓄積が再開され、以後上記の動作をくりかえすことにより、コンデンサC21の充電が進行し、この両端から直流リアクトルL21を介して出力端子(a)、(b)を引出してアーク溶接負荷4を接続するとこれに電力が供給されることになる。
【0010】
ここで出力電流は電流検出器CT21で検出されて信号Ifとなり、出力電流設定器21の出力信号Irと比較器22にて比較されて、差信号ΔI=Ir−Ifが得られる。この差信号ΔIはPWM制御回路に入力され、PWM制御回路23はこの入力信号に応じた導通時間率(ON−OFF1周期に対するON時間の比率)のパルス信号を発生し、高周波スイッチング素子TR21をON−OFFさせる。このとき、変圧器T21は高周波スイッチング素子の導通期間中(ON時間)に磁気エネルギーを蓄積し、遮断期間中(OFF時間)にこの蓄積エネルギーをすべて放出する必要があることから、高周波スイッチング素子TR21の導通時間率は50%以下とするのが安全であり、また変圧器T21は電磁エネルギーを蓄積するために鉄心の一部に空隙を設ける必要がある。
【0011】
図2は図1の装置の動作中の各部の波形を示す線図であり、同図(a)は商用交流電源1の電圧波形、(b)はPWM制御回路23の出力波形、(c)は変圧器T21の一次電流波形、(d)は変圧器T21の二次巻線Nsの出力電圧波形、(e)はコンデンサC21の端子電圧波形、(f)は商用交流電源1からの入力電流波形をそれぞれ時間の経過とともに示してある。
なお、図1の装置において、変圧器T21の一次電流は図2(c)に示すように高周波成分を含み、この電流を供給する両波整流回路REC21を流れる電流も当然高周波成分を含むので商用交流電源1にこれが影響しないように交流入力側にバイパスコンデンサのような簡単な高周波フィルタLF21を設ける。
【0012】
また、アーク溶接負荷4は常時接続されているとは限らないので、充電されたコンデンサC21の電荷をゆるやかに放電して作業終了後は出力端子(a)、(b)間に危険な高電圧が現出しないようにこれを放電するための抵抗器R21を接続しておくことが望ましい。この抵抗器R21の抵抗値としては、コンデンサC21の充電電荷を数秒程度の間に放電する値に選定しておくと、先の溶接終了直後のアーク再起動時はいまだコンデンサC21には相当量の電荷が充電されているのでアークの再起動が容易となるので都合がよい。
【0013】
また、図1の装置において、変圧器T21は高周波スイッチング素子TR21の導通期間中のみ励磁され、その後の遮断時間中に鉄心の励磁はリセットされるので高周波スイッチング素子TR31のON−OFFの繰返し周波数を数10KHzに設定することにより、この周波数に応じた電力を変圧する高周波変圧器とすることができるので図6に示した従来のインバータ式の電源と同様に小形のものとなる。
【0014】
図3に本発明を3相商用交流電源に適用したときの例を示す。図3の装置は図1の装置を3回路並列にしたものに相当し、REC31ないしREC33は3相商用交流電源3の各相を両波整流して直流を得る両波整流回路、T31ないしT33は変圧器、TR31ないしTR33は高周波スイッチング素子、D31ないしD33およびD34ないしD36はダイオード、C31ないしC33はコンデンサ、L32ないしL34は直流リアクトル、R31は抵抗器、LF31は3相高周波フィルタである。同図のその他の部分は図1の同符号の部分と同機能のものを示す。
【0015】
同図において、PWM制御回路23は差信号ΔIに応じた導通時間率のパルスを発生し、このパルスを各高周波スイッチング素子に同時に供給するものでもよいが、このパルスを発生順に順次高周波スイッチング素子TR31、TR32、TR33に分配するものを用いてもよい。
【0016】
図4は、図3の装置のコンデンサC31ないしC33を1個のコンデンサC31に置きかえたもので、その他は図3の装置と同様である。
【0017】
図5は、図3の装置のコンデンサC31ないしC33を直列にしたもので比較的高電圧の出力が必要な、例えばプラズマアーク溶接に適用するときにとき都合がよい。
【0018】
上記各実施例においては、高周波スイッチング素子の制御はくりかえし周波数を一定とした誤差信号に応じて導通時間率を変化させるようにしたパルス幅制御(PWM制御)により行う例を示したが、本発明はこれに限らず導通時間を一定としてくりかえし周波数を誤差信号に対応して変化させて導通時間率を調整するパルス周波数制御(PFM制御)により行うものでもよい。
【0019】
また、出力電流を検出してこれを設定値に倣わせる定電流制御にかえて、出力電圧を検出して、これを出力電圧設定値と比較することにより、設定値に倣わせる定電圧制御にも本発明は適用できる。その場合には、上記各実施例において、出力電流設定器21にかえて出力設定器を、また電流検出器CT21またはCT31にかえて電圧検出器をそれぞれ設け、比較器22として、出力電圧設定器の設定値Vrと電圧検出器の検出値Vfとの差ΔV=Vr−Vfを得る比較器を設けて、この差信号ΔVに応じて高周波スイッチング素子の導通時間率を決定するように構成すればよい。
【0020】
さらにまた、出力電流と出力電圧とを設定し、これらの設定値と検出値とを比較し、両方の差信号に夫々係数を乗じて加算し、この加算値に応じてスイッチング素子の導通時間率を制御するようにして、所望の電圧・電流特性の直流アーク溶接用電源装置を得るようにしてもよい。この場合、出力電圧設定値Vrと電圧検出器の検出値Vfとの差ΔVと、出力電流設定値Irと電流検出値Ifとの差ΔIと、これらに係数a及びbを乗じて合成信号Δs=a・ΔV+b・ΔI(ただし、0≦a≦1、0≦b≦1で、かつa+b=1)をPWM制御回路の入力信号とすればよい。ここでa=0なら出力電流だけが比較されて定電流特性となり、逆にb=0とすれば出力電圧だけが比較されて定電圧特性となる。係数aおよびbが0と1との間にあるときは出力電流の変化に対して出力電圧が傾きV/I=b/aの傾斜特性の直流アーク溶接用電源装置とすることができる。
【0021】
【発明の効果】
本発明は、上記の通り商用交流電源からの入力電流が電圧波形とほぼ同位相でかつ同波形となるので過大な電圧降下を発生させることがなく、商用交流電源回路の過負荷防止用の遮断器を誤動作させたり、波形歪のために同一電源に接続された他の機器を誤動作させることもない。また装置自体の力率も1に近くなるので無効電力の発生がなく高力率の装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態を示す接続図。
【図2】図1の装置の動作を説明するための各部の波形を示す線図。
【図3】別の実施の形態を示す接続図。
【図4】 別の実施の形態を示す接続図。
【図5】別の実施の形態を示す接続図。
【図6】従来の装置の例を示す接続図。
【図7】図6の従来装置の動作を説明するための各部の波形を示す線図。
【符号の説明】
1,3 商用交流電源
2,20 電力加工部
31〜33 電力加工部
4 アーク溶接負荷
4a 電極
4b 被溶接物
21 出力電流設定部
22 比較器
23 PWM制御回路
REC1 両波整流回路
REC2,REC21 整流回路
REC31〜REC33 整流回路
C1,C21 コンデンサ
C31〜C33 コンデンサ
TR1〜TR4 スイッチングトランジスタ
TR21 高周波スイッチング素子
TR31〜TR33 高周波スイッチング素子
D1〜D4 ダイオード
D21,D22 ダイオード
D31〜D36 ダイオード
T1,T21 変圧器
T31〜T33 変圧器
L1、L21 直流リアクトル
L31〜L34 直流リアクトル
CT1,CT21,CT31 電流検出器
R21,R31 抵抗器
LF21,LF31 高周波フィルタ
Claims (3)
- 商用交流電源を整流して脈動する直流とする整流回路と、前記整流回路の出力側に接続された変圧器の一次巻線と高周波スイッチング素子とからなる直列回路と、前記変圧器の二次巻線に接続された前記高周波スイッチング素子の導通によって前記変圧器の一次巻線が励磁されるときの出力を阻止する極性に定められたダイオードとコンデンサとからなる直列回路と、前記コンデンサの一方の端子に直列に接続された直流リアクトルと、前記高周波スイッチング素子を出力設定値に対応した導通時間率でON−OFF制御するスイッチング素子制御回路とを備え、前記直流リアクトルの他方の端子と前記コンデンサの他方の端子とから出力電力を取り出す直流アーク溶接用電源装置。
- 前記変圧器の鉄心には磁気エネルギー蓄積のための空隙を設けてある請求項1に記載の直流アーク溶接用電源装置。
- 前記コンデンサの端子間または出力端子間には前記コンデンサの蓄積電荷を放電するための抵抗器を並列に接続してある請求項1または2のいずれかに記載の直流アーク溶接用電源装置。
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