JP3885864B2 - 車両用ロングシート - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の技術分野】
本発明は、鉄道車両などの内壁に沿って取り付け固定される車両用ロングシートに関する。
【0002】
【従来技術およびその問題点】
鉄道車両の内壁に沿って取り付け固定される車両用ロングシートは、車両内壁に取り付け固定される、2以上の座受けフレームを、連結棒によって連結固定し、骨組みとして車両工場に運搬している。そして車両工場において、先ず、この骨組みを車両内壁にボルトなどによって固定する。その後、クッション支持板を取り付け、その上にシートクッション、シートバックを取り付けていた。
【0003】
ここで、従来の車両用ロングシートを図5に示した。この従来のロングシートは、先ずシート工場において、少なくとも2個の略L字型の座受けフレーム101を組み立て位置に配置して、座受けフレーム101の垂直部の上部にシートバック固定用のシートバックパイプ103を溶接し、座受けフレーム101の略水平部の先端部にシートパン107固定用の先端パイプ105を溶接して骨組み形成していた。そしてこのように溶接した骨組み(座受けフレーム101、シートバックパイプ103、先端パイプ105)、シートパン107、シートクッション109およびシートバック(図示せず)など必要な部材を必要数トラックに積載し、車両工場まで運搬する。
そして車両工場において、まず、座受けフレーム101を車両の内壁に固定し、固定した座受けフレーム101にシートパン107をねじまたはリベット111で固定し、固定したシートパン107にシートクッション109を装着し、またシートバック(図示せず)を装着していた。
【0004】
しかしながら、従来のこのロングシートの構造は、車両工場とは別の工場において、座受けフレーム101に対してシートバックパイプ103、先端パイプ105を溶接するので、熱変形等によって組み立て誤差を生じやすかった。しかも溶接した後の座受けフレーム101、シートバックパイプ103および先端パイプ105の外形がL字形になり、平面ないし直方体にならないので運搬の際の積載効率が悪かった。
さらに車両への取り付けの際には、座受けフレーム101に対してパイプ103、105がすでに固定されているので重く、複数人によらなければ取り付けができなかった。
【0005】
【発明の目的】
本発明は、かかる従来の車両用ロングシートの問題に鑑みてなされたもので、運搬、組み立てが容易な車両用ロングシートを提供することを目的とする。
【0006】
【発明の概要】
この目的を達成する本発明は、車両の車体内壁に沿って横長に設置される車両用ロングシートであって、背受けフレームと、該背受けフレームとは分割して形成された座受けフレームと、クッション部材を支持するクッション支持板とを備え、前記背受けフレームおよび座受けフレームはそれぞれ、車体内壁に取り付け固定され、前記クッション支持板は、上縁部が前記背受けフレームに支持され、前縁部が前記座受けフレームの先端部に支持されて、前記上縁部と前記前縁部のみによって支持されることに特徴を有する。このように、車両内壁にロングシートを取り付け固定する背当てフレームおよび座受けフレームを分割形成し、背当てフレームおよび座受けフレームを車両内壁に取り付け固定した後にクッション支持板など他の部材をこれらのフレームに取り付け可能に形成したので、部品の運搬および組み立てが容易になった。
【0007】
前記背受けフレームに上縁部支持部材が設けられ、前記クッション支持板は、上縁部に前記上縁部支持部材に係止されるフック部を有し、前縁部に、前記座受けフレームの先端部に形成された凹部に係止される前縁部支持部材を備え、前記クッション支持板の上縁部は、前記フック部に形成されたばか穴からねじを差し込んで前記上縁部支持部材に支持されることが望ましい。この構成によれば、クッション支持板が上縁部と前縁部とで支持され、この間が撓むので、座面のクッションがクッション部材のクッションだけでなくクッション支持板の撓みによっても得られるので、快適な座り心地を得ることができる。さらに本発明のクッション支持板は、一人分ずつまたは複数人分ずつに分割形成した複数のクッション支持板からなり、各クッション支持板は、互いに離反した状態で、前記背受けフレームおよび前記座受けフレームに支持されるように形成できる。このようにクッション支持板を独立形成すれば、各座席の独立性が増し、座り心地をさらに改善できる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下図面に基づいて本発明を説明する。図1は、本発明を適用した車両用ロングシートの実施の形態の要部を分解して示す斜視図、図2は同車両用ロングシートを分解した側面図、図3は同車両用ロングシート組み立て後の側面図である。
【0009】
この実施の形態は、ロングシートを車体内壁(車両の支柱、フレームまたは梁)に固定するためのフレームを、背受けフレーム20および座受けフレーム30の2個に分割形成したことを特徴の一つとする。背受けフレーム20は、車体内壁に固定される背受けブラケット21と、複数の背受けブラケット21が固定支持されるパイプ23と、このパイプ23に支持板24を介して連結固定される、上縁部支持部材としての上縁部支持パイプ25を備えている。
さらにこの実施の形態は、クッション部材(シートクッション)を支持するクッション支持板としてのシートパン40の前縁部を前縁部支持部材としての断面方形の前縁部支持パイプ43に固定し、前縁部支持パイプ43を車両内壁に固定された座受けフレーム30の先端部に固定すること、シートパン40の上縁部を、背受けフレーム20の上縁部支持パイプ25に係合し、支持させることにも特徴の一つを有する。
【0010】
背受けブラケット21は、図1に示すように横断面コ字形状に形成されていて、コ字形状の一対の側壁にはシートバック支持用のパイプ23を係合するための略円形の切り欠き21aが形成されている。背受けブラケット21のコ字形状の底部には車両内壁11にボルト固定するためのボルト穴(図示せず)が形成されている。
座受けフレーム30は、側面略T字形状に形成されていて、車両内壁に固定するためのボルト穴を有する固定板31と、固定板31と一体に形成され、水平よりもやや上方に向かって延びる支持アーム32とを備えている。支持アーム32の先端部には、前縁部支持パイプ43の下縁部、後縁部を支持するための凹部33が形成されている。この実施の形態の座受けフレーム30は、車両内壁11の補助板12に、ボルト31aによって固定されている。
【0011】
パイプ23は断面円形のパイプであって、複数の支持板24を介して断面方形の上縁部支持パイプ25が固定されている。パイプ23と支持板24、支持板24と上縁部支持パイプ25はそれぞれ、溶接によって連結されている。このパイプ23は、背受けブラケット21の切り欠き21aに係合され、背受けブラケット21に溶接によって固定される。
【0012】
シートパン40は、側面略L字形状に形成されていて、略水平な座面部の先端部下面に断面略方形の前縁部支持パイプ43が、ばか穴42bから差し込まれるねじ(またはリベット)46によって固定される。シートパン40の背当て部の上端部は、上縁部支持パイプ25に係合するために折り曲げられてフック部42が形成されている。このシートパン40は、例えば金属製の薄板によって形成されている。
【0013】
次に、以上の構成からなる本発明の実施の形態のロングシートの組み立てについて説明する。まず、シート工場における予備加工、組み立てを行う。
背受けフレーム20は、次のように組み立てる。まず、パイプ23と上縁部支持パイプ25を、複数枚の連結板24を介して連結固定する。これらの連結板24とパイプ23、25とは、溶接によって固定する。さらに、パイプ23の所定位置に背受けブラケット21の切り欠き21aを嵌合し、接触部を溶接して複数の背受けブラケット21を所定間隔でパイプ23に固定する。なお、これらの組み立て順は任意である。
シートパン40はまず、金属板からプレス成形される。プレス成形されたシートパン40の前縁部に、前縁部支持パイプ43をねじ46によって固定する。フック部42は、プレス成形時に形成される。
シートバック50は、図3に示すように背当てパン51とこの背当てパン51に被せられる背当てクッション53を主要部材としている。本実施の形態では、背当てクッション53を背当てパン51に被せる前に背当てパン51の背面に、この背当てパン51をパイプ23に取り付けるための一対のクリップ52を所定間隔で複数組溶接する。
以上のように予備加工した背受けフレーム20(背受けブラケット21、パイプ23、上縁部支持パイプ25)、座受けフレーム30、シートパン40、シートバック50などのシート部品を、装着する車両近傍まで運ぶ。
【0014】
車両への組み付け作業は、次の通りである。まず、背受けフレーム20、および座受けフレーム30を車体内壁の所定位置に固定する。例えば図3に示すように、背受けフレーム20は、パイプ23で連結された各背受けブラケット21を車両内の内壁11の取り付け位置に位置合わせし、ボルトによって固定する。座受けフレーム30も同様に車両内の補助板12の取り付け位置に位置合わせし、ボルト31aによって固定する。背受けフレーム20と座受けフレーム30はそれぞれ独立しているので、軽量であり、位置決めおよび固定をそれぞれ単独で行えるので、取り付け固定作業が容易である。
【0015】
次にシートパン40を、フック部42を上縁部支持パイプ25に係合し、前縁部支持パイプ43を凹部33に係合する。そして、前縁部支持パイプ43の下端部に溶接されたフランジ44のばか穴からねじ46を差込み、凹部33の下方に形成されたねじ穴にねじ込んで、フランジ44を座受けフレーム30に対して固定する。さらに、フック部42に形成されたばか穴42aからねじ47を差し込み、上縁部支持パイプ25に形成されたねじ穴25aにねじ込んでフック部42を上縁部支持パイプ25に固定する(図3参照)。
次に、シートクッション45をシートパン40に被せる。この状態のシートパン40は、前縁部支持パイプ43およびフック部42によって張設された状態で、座受けフレーム30の支持アーム32との間に空間を有する状態にある。つまりシートパン40は、前縁部および上縁部だけで、いわゆるハンモック状に支持されている。したがってシートクッション45は、その弾力性だけでなく、シートパン40の撓みによる弾力性も加わって、シートクッション45の座り心地を改善できる。
【0016】
最後に、シートバック50を装着する。この実施の形態では、クリップ52をパイプ23に対して押せば、クリップ52の弾性力によってクリップ52が一旦開いてから閉じてパイプ23を挟み込むので、簡単に装着できる。
【0017】
図4には、シートパンの別の実施の形態を示してある。図1に示した第1の実施の形態のシートパン40は、2座席分またはそれ以上の座席分連続していたが、第2の実施の形態のシートパンは、一座席毎に独立していることに特徴を有する。つまり、一座席毎にシートパン401、402、・・・を形成し、各シートパン401、402の先端部を単一の前縁部支持パイプ43に固定し、上縁部421、422を単一の上縁部支持パイプ25に係合可能に形成してある。
【0018】
このように各座席ごとにシートパン401、402、・・・を形成することにより、各座席ごとに独立してシートクッションを支持することが可能なので、隣の座席の状態に影響されず、良好な座り心地を提供することができる。
なお、この第2の実施の形態の場合、上縁部支持パイプ25もシートパン401、402、・・・に対応させて独立して揺動可能に形成してもよい。このように形成すれば、各座席の背当て部も独立して支持されるので、シートバックに関しても他の座席の影響を受けず、座り心地が向上する。
【0019】
以上本発明について鉄道車両用のロングシートに適用した実施の形態について説明したが、本発明は鉄道に限定されず、バス、船舶を含む車両のロングシートに適用できる。
【0020】
【発明の効果】
以上の説明から明らかな通り本発明は、ロングシートを車両の車体内壁に固定する部材を背受けフレームと座受けフレームとに分割して独立して形成したので、移送、車両内壁への装着、組み立てが容易になった。
さらに本発明は、クッション支持板は、その上縁部と前縁部とが背受けフレームの上縁部支持部材と座受けフレームの先端部とに、上縁部と前縁部との間の部分が撓み得るように支持されているので、座面のクッションがクッション部材のクッションだけでなくクッション支持板の撓みによっても得られるので、快適な座り心地を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の車両用ロングシートの実施形態の要部を分解して示す斜視図である。
【図2】 同実施の形態の車両用ロングシートの要部を分解して示す側面図である。
【図3】 同実施の形態の車両用ロングシートの組み立て状態で要部を示す側面図である。
【図4】 本発明の車両用ロングシートの第二の実施形態の要部を分解して示す斜視図である。
【図5】 従来の車両用ロングシートの要部の分解斜視図である。
【符号の説明】
11 車両内壁
12 補助板
20 背受けフレーム
21 背受けブラケット
23 パイプ
24 支持板
25 上縁部支持パイプ(上縁部支持部材)
30 座受けフレーム
31 固定板
32 支持アーム
33 凹部
40 シートパン(クッション支持板)
42 フック部
43 前縁部支持パイプ
45 シートクッション

Claims (3)

  1. 車両の車体内壁に沿って横長に設置される車両用ロングシートであって、
    背受けフレームと、
    該背受けフレームとは分割して形成された座受けフレームと、
    クッション部材を支持するクッション支持板とを備え、
    前記背受けフレームおよび座受けフレームはそれぞれ、車体内壁に取り付け固定され、
    前記クッション支持板は、上縁部が前記背受けフレームに支持され、前縁部が前記座受けフレームの先端部に支持されて、前記上縁部と前記前縁部のみによって支持されること、を特徴とする車両用ロングシート。
  2. 請求項1記載の車両用ロングシートにおいて、前記背受けフレームに上縁部支持部材が設けられ、前記クッション支持板は、上縁部に前記上縁部支持部材に係止されるフック部を有し、前縁部に、前記座受けフレームの先端部に形成された凹部に係止される前縁部支持部材を備え、前記クッション支持板の上縁部は、前記フック部に形成されたばか穴からねじを差し込んで前記上縁部支持部材に支持されている車両用ロングシート。
  3. 請求項1または2記載の車両用ロングシートにおいて、前記クッション支持板は、一人分ずつまたは複数人分ずつに分割形成された複数のクッション支持板からなり、各分割されたクッション支持板は、互いに離反した状態で、前記背受けフレームおよび前記座受けフレームに支持される車両用ロングシート。
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