JP3884779B2 - 2’,3’−ジデヒドロ−2’,3’−ジデオキシヌクレオシド類の大量製造法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、例えば2’,3’−ジデヒドロ−3’−デオキシチミジン(d4T)のようなジデヒドロ−ジデオキシヌクレオシド類を製造するための改良された製造法に関するものであり、この製造法は大量に製造する場合に好適である。
【0002】
【従来の技術】
今までに、d4Tのような2’,3’−ジデヒドロ−2’,3’−ジデオキシヌクレオシド類についての合成法が幾つか報告されている。その多くは、無水ヌクレオシド中間体を経て合成されるものである。
ヌクレオシド誘導体、2’,3’−ジデヒドロ−3’−デオキシチミジン(d4T)は、以前にはいろいろな合成法で製造されていた。ホルビッツ(Horwitz)らは、Synthetic Procedures in Nucleic Acid Chemistry.1巻, ゾルバック(Zorbach)ら(編集);インターサイエンス社、ニューヨーク、344頁に、工程1(後記)の製造工程を記述しており、この工程は3’,5’−アンヒドロチミジンを出発物質として使用し、引火性で湿度に敏感なカリウム三級ブトキシド(KOtBu)のジメチルスルホキシド(DMSO)溶液を使用している。これらの物質は取扱にくいうえに、必要な高温処理、強塩基性条件下で長時間処理した場合、DMSO溶液からの単離段階で分解が起こる為に、大量合成には実用的ではない。
【0003】
【化6】
【0004】
マンスリ(Mansuri)らによるJ.Med.Chem.,1989,461頁(工程2)に記述された単離の改良法は、工程を進める前にDMSO反応混合物をトルエンで希釈してd4Tのカリウム塩を油状固体として得ることである。しかしながら、大量合成においては、その使用する量は手に負えない量であり、大量の廃溶媒を生じ、これらを回収するのは困難なことである。また、単離した塩は湿度及び過度の乾燥に非常に敏感である。最終物を得るには、再溶解し、中和した後、粗d4Tを単離し、乾燥し、そして再び溶媒中にスラリーにすることが必要である。
【0005】
【化7】
【0006】
スターレット(Starrett),Jr.らは、米国特許第4,704,770号中に、マンスリ合成法の変法、即ち3’,5’−アンヒドロ中間体を極性溶媒中強塩基、例えばKOtBu/DMSOで室温で反応させ、つづいて得られた2’,3’−ジデヒドロ−2’,3’−ジデオキシヌクレオシドのカリウム塩を有機溶媒中、例えば冷トルエン中で研磨する方法を開示した。再溶解し、中和した後、粗d4Tは、中和工程から単離された固体のアセトン抽出によって得られる。
【0007】
生成物の分解の問題を最少にする違った方法は、KOtBu/DMSO系を変えることであった。
ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPA)及びナトリウムヒドロキシドを使用するこの変法(工程3)は、HMPA溶媒がクロロホルム複合体として水溶液から除くことが出来ることにより上記の工程1及び2の生成物の分解の問題を解消した。しかしながら、HMPAやクロロホルムの様な発癌性物質とも言われる強い毒性試薬の使用は、大量合成の場合は非常に危険であり、避けなければならないことである。この工程は、アダチらによってCarbohydrate Reseach,1979,113頁に開示されている。
【0008】
【化8】
【0009】
コスフォード(Cosford)らは、J.Org.Chem.,1991,2161頁にトリチル化されたフェニルセレニルチミジン誘導体を使用したやや関連のある工程(工程4)を開示している。強い毒性のあるセレニウム廃棄物の生成、及びクロマトグラフ精製が必要であると言うことは望ましいものではなく、特に大量合成の場合には望ましくない。
【0010】
【化9】
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上記に述べた如く、今までに知られた2’,3’−ジデヒドロ−3’−デオキシチミジン(d4T)類の合成法は収量も悪くまた大量合成には安全性に欠ける点が多いものであった。これらの点を鑑み本発明は、2’,3’−ジデヒドロ−3’−デオキシチミジン類の大量合成に適した、収量の良い、容易でしかも安全な合成法を提供することを課題としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
〔発明の説明〕
本発明は、2’,3’−ジデヒドロ−2’,3’−ジデオキシヌクレオシド類、特にd4Tを、高収量、高純度で得る大量合成の改良された製造法に関するものである。本製造法は、d4Tのような化合物の大量合成に特に有用な製造法となす反応試薬、中間体及び生成物の選択、操作、工程及び精製についての様々な改良を包含している。
【0013】
〔詳細な説明〕
最も広い、一般的な展望としは、本発明は次式で表すことが出来る2’,3’−ジデヒドロ−2’,3’−ジデオキシヌクレオシドを製造する為の、大量合成するに適した改良法である。
【0014】
【化10】
【0015】
式中、塩基部分は、置換していない、又は置換している、ピリミジン、アザピリミジン、およびデアザピリミジンよりなる塩基の群より選ばれたものである。特に、XはN、およびC−Hから選ばれたものであり;YはC−R2およびNより選ばれたものであり;ZはC−HおよびNより選ばれたものであり;R1はOH、およびNH2より選ばれたものであり;R2はH、置換していない又はハロ置換の式CnH2nAであるアルキル基、および式−(CH2)m−CH=CHA(式中、mは0,1,2,および3より選ばれた整数であり、nは1,2,および3より選ばれた整数であり、AはH,F,Cl,Br,およびIより選ばれたものである)で示されるアルケニル基である。またこの改良法は以下の工程を包含する:
(a) 次式、
【0016】
【化11】
【0017】
で示される2’−デオキシヌクレオシドを次式、
【0018】
【化12】
【0019】
で示される活性な3’,5’−アンヒドロ−2’−デオキシヌクレオシド中間体に変換;及び
(b) 上記工程(a)から得られた反応性の3’,5’−アンヒドロ−2’−デオキシヌクレオシド(オキセタン中間体)を、強塩基の存在下2’,3’−ジデヒドロ−2’,3’−ジデオキシヌクレオシドに変換する。この工程の改良点は次の項目を含むものである:
◯ 工程(a)に於いて、3’,5’−ジ−O−メシルチミジンの合成に導く2’−デオキシヌクレオシドのメシル化の反応で、アセトンのような極性溶媒の使用;
◯ 工程(a)のメシル化の反応に於いて、pka5.5〜8.0の有機塩基の使用;
◯ 工程(b)に於いて、アルコール性ヒドロキシドの使用;
◯ 単離および精製を容易にする為に、ジデオキシ−ジデヒドロヌクレオシドの溶媒和を形成させるN−メチルピロリジノンの使用。
【0020】
d4Tの製造は以下の工程を包含する:
(a) チミジンとメシルクロリドより3’,5’−ジ−O−メシルチミジンを製造する、その改良法として、極性溶媒、好ましくはアセトンを使用し、ピリジンよりも塩基性が強く、トリエチルアミンよりは塩基性が弱い有機塩基、好ましくはN−メチルモルホリンを2〜4当量使用する;
(b) 3’,5’−ジ−O−メシルチミジンを水性ヒドロキシドで処理して3’,5’−アンヒドロチミジンを製造;
(c) 大量合成法としての改良法が、アルコール、好ましくはイソプロパノール中で3’,5’−アンヒドロチミジンとヒドロキシド、好ましくはカリウムヒドロキシドとの混合物を加熱することを包含する3’,5’−アンヒドロチミジンからd4Tの製造;
(d) その生成物をN−メチルピロリジノン(NMPO)溶媒和として単離し、それからその溶媒和をイソプロパノール中で加熱分解し、d4Tを高収量、高純度で収得することを包含する改良された単離/精製工程。
【0021】
効率よくスケールアップすることが出来るd4Tの改良された製造工程はスキームAに概説されている。本発明は又、3’,5’−アンヒドロチミジン(III)よりd4Tを製造すること、およびd4T・NMPO溶媒和(II)を経由して単離し、精製する、それぞれ分離可能な、独立した工程に関する。
【0022】
【化13】
【0023】
記号a)で示されているスキームAの最初の反応は、チミジン(V)の3’および5’−ヒドロキシ基のメシル化である。この工程の改良は、溶媒および有機塩基の選択である。工程a)に有用な溶媒はアセトニトリル、DMF、および、好ましくはアセトンである。有用な有機塩基は、ピコリン類、ルチジン類のようなものであり、好ましくはN−メチルモルホリン(NMM)である。これらすべてのものは、pka値5.5から8.0の間であり、ピリジンよりも強く、トリエチルアミンよりも弱い。この反応は、20℃から50℃の温度で行われ、好ましくは30℃から40℃であり、反応時間は0.5時間から2時間であり、好ましくは1時間である。以前のこのビスーメシレート(IV)の合成には塩基性溶媒としてピリジンが使用されていた。これらの製造は、大量のピリジン廃液が生じ、より長い反応時間が必要であり、次の工程に進むまえに(IV)の再結晶が必要であった。
【0024】
このビス−メシレート(IV)は、水性のヒドロキシド(ナトリウムヒドロキシドが好適である)と50℃から100℃で2時間から8時間加熱する(工程b)。好適な条件は、75℃から85℃で3時間から5時間加熱することである。中和は塩酸のような無機酸で効果的に行い、3’,5’−アンヒドロチミジン(オキセタン,III)が得られる。
【0025】
工程(c)および(d)はこのd4T改良製造法の主な貢献をしている工程である。工程(c)でのアルコール性KOHの使用および溶媒和化合物(II)の形成は大きな改良をもたらすこととなった。明記したように、工程(c)に於いて3’,5’−アンヒドロチミジン(III)は、アルコール性(イソプロパノールが好ましい選択である)カリウムヒドロキシド中で加熱してd4Tを収得する。驚くべきことに、d4Tがこの加熱、アルカリ性アルコール環境であるこの工程で安定であることである。塩酸のような無機酸で中和した後、アルコールは留去し、得られた混合物は濾過して不溶物を除く。濾液にN−メチルピロリジノンおよび非プロトン性エステル、アミド、又はケトン溶媒、好ましくはアセトンおよびブチル酢酸を30℃から60℃、好ましくは50℃の温度で加える。この混合物を−10℃から10℃の範囲で冷却し、そして、濾液中の除去困難な不純物を残して固体のd4T・NMPO溶媒和(II)を濾過により単離する。この溶媒和をアルコール中で0.5時間から2時間穏やかに還流して高収量、高純度でd4Tを収得する。
【0026】
この改良法は生成物の収量及び純度に於いてのみならず、使用したこの製造工程、及び反応試薬、反応条件による大量合成の適用性に多くの利点がある。多くの製造工程及び/又は反応は、今まで成されていたままの方法で大量合成をパイロットプラント或いは合成設備で行うことは不適切であるということは、大量化学合成熟練者によってよく理解されていることである。大量合成の典型的な問題は、危険な、或いは毒性の強い試薬及び溶媒の使用;激しい発熱反応及び吸熱反応、高圧反応或いは減圧蒸留が必要な場合のような高圧及び高減圧工程である。多くの溶媒を必要とする精製及び分別結晶、或いはクロマトグラフ法による分離もまた大量合成には問題の多い操作である。更に、多くの製造工程は大量合成に適用した場合、いろいろな理由で収量が減少したり副生成物が増加したりする。最近の廃棄物及び排水の規制と同じように、毒性物廃棄の防止及び使用した化学物質の安全な処理に関する最近の規制強化により、安全に取り扱わなければならない、又安全に処分しなければならない放出物又は廃棄物が発生する大量合成は、さらに費用がかかることを余儀なくされる。
【0027】
d4Tの今までの製造法は、前に列記した多くの理由により、他の工程から生じる問題、及び使用する試薬及び反応条件の特異性により、特に大量合成には適してはいなかった。これに対して本発明の工程は、毒性のある物質を使用したり又は発生することなく高収率、高純度で所望の化合物を提供する。反応時間は短縮され、反応中間体は余分な工程を行うことなくその合成工程で実施される。特に、我々は、以前の方法の場合とは違ってこのd4T生成物が、アルコール性カリウムヒドロキシ溶液中での加熱に対して驚く程安定であることを発見した。精製に効果的であり、毒性物質を使用する必要がなく、或いは危険な廃棄物を産生しないこのd4T・NMPO溶媒和の新規な使用は、本発明の工程がスケールアップによく適応することによく貢献している。d4Tの以前の工程に見られる非効率性は、本発明の改良された工程として組み入れられた工程の発見された変法によって克服されている。
【0028】
結論として、不純物及び生成物の分解の問題を最少にすると同時に、毒性であるか又は量が増大するかのいずれかである廃棄物が発生することなく、生成物を高収率、高純度で与えることに十分に効果を表すことになる、試薬、反応条件、単離/精製法の選択によって、d4T及びその関連化合物のこの新規な、改良された製造法は、大量合成に使用することによく適応している。
【0029】
【実施例】
実施態様の記述:
本発明に依る改良された製造法は、前に記述した製造工程の好ましい態様を示す以下の例によって、より詳細に説明されている。これらの例は、いかなる場合も本発明の範囲を限定するものではないことを理解すべきである。
【0030】
A.化合物IV:
実施例1: 3’,5’−ジ−O−メタンスルフォニルチミジン
5リットルの3頸丸底フラスコに、オーバーヘッド羽根付き攪拌機、500mlの滴下漏斗、熱電対熱センサーのついたクライゼンアダプターおよび還流冷却器を装着した。チミジン(363.3g,1.5モル)およびN−メチルモルホリン(508.3g,5.02モル)をアセトン(2.00L)と共にフラスコに加えた。この混合液に、メタンスルフォニルクロリド(498.3g,4.35モル)を、温度を30〜35℃を保つように冷却しながら約1時間かけてゆっくり滴下した。適宜な攪拌を保つために、さらに1.50Lアセトンを混合物に加えた。滴下が完了したのち、この混合物を30〜35℃で1時間攪拌した。この反応溶液は、20Lのポリエチレンタンク中の攪拌した水(9.66L)の中に滴下した。この水性スラリーのpHを、12NHClで2.5に調節し、さらに室温で2時間攪拌した。このスラリーを濾過し、固体は水(2.9L)およびイソプロパノール(1.45L)で洗浄した。固体は一夜風乾し、564.6g(94.5%)の表題の化合物を収得し、その純度は97.1%(重量で)であった。
【0031】
実施例2: 3’,5’−ジ−O−メタンスルフォニルチミジン
窒素でパージした乾燥丸底フラスコに、チミジン(10.0g,0.0412モル)およびアセトン(30ml)を加えた。このスラリーを攪拌し、3,5−ルチジン(17.7g,0.165モル)を加えた。それから、メタンスルフォニルクロリド(13.8g,0.124モル)を10分で、温度を40℃にあげながら加えた。45分後に反応は完了し、粘性のスラリーを150mlの水で希釈した。そのスラリーを25℃で30分攪拌し、そして0〜5℃で30分冷却した。固体を集め、水(80ml)、イソプロパノール(40ml)で洗浄し、乾燥し、16.1g(98.2%)の表題の化合物を得た。
【0032】
B.化合物III
実施例3: 3’,5’−アンヒドロチミジン
2Lの四頸フラスコに、オーバーヘッド攪拌機、自動滴定器に接続したpHセンサー、および温度調節器および加熱マントルに接続した熱電対センサーを装着した。水(350ml)をフラスコに加え、そして3’,5’−ジ−O−メタンスルフォニルチミジン(全量500g,1.255モル)の20〜25%部分を攪拌しながら加えた。pHは、30%ナトリウムヒロキシド水溶液で10.5に調節し、温度は50℃にした。温度を50〜55℃に、pHを10.5〜11.0に保ちながら残りの3’,5’−ジ−O−メタンスルフォニルチミジンを、固体が溶けるように、スラリーが攪拌出来るようにゆっくり加えた。合計502g(3.765モル)30%NaOH水溶液を加えた。それから反応混合物は70℃で1時間加熱し、それから10〜15℃に冷却した。結晶化が起こっている間、温度を10〜15℃に冷却して保ち、12NHClでpHを9.7〜9.8に調整した。最後に、そのスラリーを12NHClで6.0〜6.5に調整し、0〜5℃に冷却し、濾過した。固体を集め、冷水(0〜5℃)200mlで洗浄し、風乾すると211.6g(75.2%)の表題の化合物が得られ、このものの純度は99.8%(重量)であった。
【0033】
C.化合物II
実施例4: 2’,3’−ジデヒドロ−3’−デオキシチミジン N−メチルピロリジノン溶媒和(d4T・NMPO)
5Lの三頸フラスコにオーバーヘッド攪拌機、還流冷却器、温度センサー、及び加熱マントルを装備した。イソプロパノール(1.25L)およびカリウムヒドロキシド(198g,3.0モル)をフラスコに加え、50℃に攪拌しながら加熱した。それから、3’,5’−アンヒドロチミジン(168.2g,0.75モル)を滴下した。この溶液を78〜80℃で3.5時間加熱した。溶液を20〜25℃に冷却し、イソプロパノール(1.75L)希釈し、それから濃HClでpH4〜6とし0℃に冷却した。沈殿したKClは濾過して除き、イソプロパノール(200ml)で洗浄した。濾液と洗浄液を合し、これを三等分した。それぞれの部分にN−メチルピロリジノン(54ml)を加え、50℃/15−20mmHgで濃縮して粘稠な油状物質とし、それからアセトン(120ml)で希釈し、50℃で15分間温めた。この混合物を15℃に冷却し、濃スラリー溶液とした。固休は濾過して集め、全量65.96g(81.6%)の表題の化合物を得た。このものは68.5%(重量)のd4Tであった。
【0034】
実施例5: 2’,3’−ジデヒドロ−3’−デオキシチミジン N−メチルピロリジノン溶媒和(d4T・NMPO)
実施例4で用いたと同じ装置を使用し、イソプロパノール(1.235L)およびカリウムヒドロキシド(211.97g,3.211モル)をフラスコに加え、50℃に攪拌ながら加熱した。それから3’,5’−アンヒドロチミジン(180.0g,0.803モル)を滴下した。この溶液を78〜80℃で4時間加熱した。溶液を20〜25℃に冷却し、イソプロパノール(1.976L)で希釈し、濃HClでpH5.6とし、それから10℃に冷却した。沈殿したKclは濾去し、イソプロパノール(200ml)で洗浄した。濾液と洗浄液とを合し、二等分した。最初の部分にN−メチルピロリジノン(90ml)を加え、50℃/15〜20mmHgで粘稠な油状物質に濃縮し、それからアセトン(100mL)で希釈し、50℃で15分温めた。混合物は、<0℃に冷却し、粘稠なスラリーとした。固体は濾過して集め、104.47g(80.5%)の表題の化合物を得た。このものはd4Tとして69.1%(重量)であった。
第二の部分に、最初の部分の母液と新しいNMPO(31ml)を加えた。続いて上記と同じ操作を行い、固体を集め、107.93g(83%)の表題の化合物を得た。このものは70.0%のd4Tであった。
【0035】
D.化合物I(d4T)
実施例6: 2’,3’−ジデヒドロ−3’−デオキシチミジン(d4T)
ILの攪拌機のついた丸底フラスコに還流冷却器と加熱マントルを設置した。d4T・NMPO(55.25g,0.27モル)をイソプロパノール(550ml)、ダイカライト(濾過補助剤,5.5g)、及びダルコKB(活性炭,5.5g)と共に加えた。混合物を攪拌し、加熱還流し、熱時濾過し、炭素ケーキを熱イソプロパノール(165ml)で洗浄した。濾過と洗浄液を合し、200mlまでに蒸留して濃縮し、ゆっくり室温に冷却すると生成物は結晶した。0℃に冷却した後固体を集め、冷(0℃)イソプロパノール(50ml)で洗浄し、風乾すると34.6g(90.4%)の表題の化合物が得られた。このものは純度98%(重量)であった。
この分野に精通した熟練者であれば考えることが出来るであろう合理的な変法は、本発明の範囲を越えることなく行うことが出来る。
【0036】
E.スケールアップ
この製造工程をスケールアップした。化合物Vが350kgの規模の場合、工程(a)の収量は88.5%(活性を基本にして)であった。工程(b)では同様にしてオキセタン中間体(III)を75%の収率で収得した。NMPO溶媒和(II)は、76〜89%の収率で単離し、d4T生成物に90%の収率で変換された。
Claims (13)
- d4Tの製造であって:
a) チミジン(V)を、N−メチルモルホリン、ピコリン類、及びルチジン類の群より選ばれたひとつの有機塩基の存在下、メシルクロリドを反応させて3’,5’−ジ−O−メシルチミジン(IV)を収得し;
- 工程(a)における有機塩基がN−メチルモルホリンである請求項1記載の製造法。
- 工程(c)におけるd4T・NMPO溶媒和(II)がアセトンスラリー溶液から濾過によって単離することである請求項1記載の製造法。
- 工程(d)に於いて、イソプロパノール中でd4T・NMPO溶媒和(II)をd4T(I)に変換する請求項1記載の製造法。
- 請求項1記載の工程c)から得た反応混合物からd4TのN−メチルピロリジノン溶媒和(II)を形成し、単離し、つづいて単離したd4T・NMPO溶媒和(II)をアルコール性媒質中で加熱することにより精製されたd4T(I)を生成することを包含する粗d4Tの単離、及び精製法。
- アルコール性媒質がイソプロパノールである請求項5記載の製造法。
- d4Tの製造法であって:
(a) 3’,5’−アンヒドロチミジン(III)をアルコール性ヒドロキシ中で加熱する;
(b) 酸で中和し不溶の塩及びアルコールを除去する;
(c) N−メチルピロリジノン及びアセトンを加えてd4T・NMPO溶媒和(II)を沈殿させ、工程反応混合物から単離する;そして
(d) d4T・NMPO溶媒和(II)をアルコール中で加熱してd4T(I)を生成する:
工程を包含する3’,5’−アンヒドロチミジンから2’,3’−ジデヒドロ−3’−デオキシチミジン(d4T)を製造する改良された製造法。 - 工程(a)のアルコールがイソロパノールである請求項7記載の製造法。
- d4T・NMPO溶媒和(II)が工程(c)においてアセトンスラリーから濾過によって単離することのよる請求項7記載の製造法。
- 工程(d)のアルコールがイソロパノールである請求項7記載の製造法。
- 請求項1記載の工程c)から得た反応混合物から請求項11記載のd4T・NMPO溶媒和(II)の単離、つづいてd4Tへ転換することによるd4Tの単離及び精製法。
- 単離された請求項11記載のd4T・NMPO溶媒和(II)をアルコール中で加熱することを包含するd4T(I)の製造法。
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