JP3653292B2 - 5−メチルウリジンを用いる2’,3’−ジデヒドロ−3’−デオキシチミジン(d4T)の大量製造法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、抗HIV薬剤であるd4Tの大規模製造に好適な製造法に関する。この製造法は、出発物質として5−メチルウリジンを使用する。
【0002】
【従来の技術】
化合物d4T(2’,3’−ジデヒドロ−3’−デオキシチミジン)はAIDSの治療に用いるものとして承認されている。この薬剤は、USANによってスタブジン(stavudine)と命名され、ゼリット(ZERITTM)として市販されている。今までのところ、d4Tは高価な出発物質、チミジンより合成されている。大量の、市販薬剤として必要なd4Tをより経済的に製造できる方法となるであろう低コスト工程を発見する為に、この抗ウイルス剤合成法の別法が研究開発されてきた。この点から、出発物質、反応試薬の価格を考慮するのみならず、製造工程、製造時間、使用する物質に加えて生態環境への問題、これに係わる健康や安全性の問題をも考慮に入れなければならない。
【0003】
今までには、高価でないリボヌクレオシド、5−メチルウリジン(5−MU)をd4Tに変換する為に、下記の四つの主たる方法が使用されてきた:
(1) 5−MUのサイクリックチオノカルボネート誘導体をトリアルキル亜リン酸によるコリィーウインター(Corey−Winter)熱分解。L.ドゥジックツ(Dudycz),Nucleosides and Nucleotides,8(1),35−41(1989)参照;
(2) 5−MUフラグメントのサイクリックオルトエステルがこれに対応したd4T誘導体に変換するイーストウッド(Eastwood)反応。H.シラガマイ(Shiragamai)ら,J.Org.Chem.,53,5170−5173(1988)参照;
(3) 5−MUの2’,3’−ビスザンテート誘導体の水素化トリブチルスズによる還元分解。C.K.チュウ(Chu)ら,J.Org.Chem.,54,2217−2225(1989)参照;および
(4) シス−2’−ハロ−3’−カルボン酸エステルの、2’,3’−オレフィンヌクレオシド類への亜鉛還元脱離反応。M.マンスリ(Mansuri)ら,J.Org.Chem.,54,4780−4785(1989)参照。
【0004】
これらの方法はいくつかの不利な点がある。方法(2)及び(4)の主な欠点は、核結合が切れて、除去しにくいチミンが生成することである。その他の欠点として方法(1)及び(2)は両者とも5’−OH基を前保護しなければならないことである。
【0005】
隣接するブロム基−トシレート基を亜鉛還元してオレフィンにすることは、クリストル及びラドメイチャー(Cristol&Rademacher)ら,J.Am.Chem.Soc.,81,1600−1602(1959)に開示されている。
2’−ブロモ−3’−メタンスルフォニルエステルの亜鉛還元は、2’,3’−ジデオキシ−2’,3’−ジデヒドロウリジン誘導体を合成するのに用いられる。石田ら,公開公報5−097847A〔1993〕参照。
【0006】
古川らは、2’−ブロモ−2’−デオキシ−3’−メシルウリジン誘導体のPd水素化による2’,3’−ジデオキシウリジンの合成を、Chem.Pharm.Bull.,18,554(1970)に記述している。しかしこの方法は、d4Tのような2’位、3’位間が二重結合である化合物を生成することにはならないだろう。
【0007】
あまり重要でないものとして、D−キシロースを出発物質としてAZTを合成することを記載している米国特許第4,921,950号中のウイルソン(Wilson)の記述がある。出発物質、合成中間体、及び生成物は本発明の製造法とは同じではない。
【0008】
結論として、上記のいずれの参照例も、d4Tを大量合成する場合、効果的な、またより低コストの製造工程を提供している本発明の経済的なd4T製造法が自明である事を証するものではない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、低価格の5−メチルウリジンを出発物質として、2’,3’−ジデヒドロ−3’−デオキシチミジン(d4T)を効果的に、またより低コストで製造する方法を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
〔発明の説明〕
本発明は、より高価な出発物質であるチミジンに代えて5−メチルウリジンを出発物質としてd4Tを合成するより経済的な製造法に関する。この製造法はまた、大量生産に用いることが出来る、特に有用な工程となる反応工程と操作、反応試薬と生成物の処理と精製、などの選択に於いてなされるさまざまな修飾を包含している。特に重要な合成中間体であるチミジンのシス−2’α−ハロ−3’α−スルフォン酸エステル誘導体が本製造法に使用されていることが開示されている。
【0011】
〔詳細な説明〕
最も広い観点として、本発明はd4Tを製造する大量生産に良く適した、より高価でない製造法である。この製造法は5−メチルウリジン(5−MU)から出発し、一般式(V)で示される新規な化合物である5−MUのシス−2’α−ハロ−2′−デオキシ−3’α−スルフォン酸エステル誘導体を経て進められる。
【0012】
【化8】
【0013】
式中、R5は水素、またはヒドロキシ基保護基;R3はC1−6アルキル基、C6−30アリール基、C1−6アルコキシ基、またはC6−30アリールオキシ基;及びXはCl、Br、Iであってもよい。「ヒドロキシ基保護基」とは、5’−酸素基が反応に預からない方が望ましい場合、反応から5’−酸素基を保護し、またそれから続いて容易に脱離して元のヒドロキシ基になる酸素に結合した保護基を意味する。使用することが出来る好ましいヒドロキシ保護基は、C1−6アルキルまたはC6−30アリール残基をもつアルキルまたはアリールカルボン酸エステル基に加えて、トリアルキルシリル基及びアルキルオキシカルボニル基である。本発明の製造法に於いて用いられているベンゾイル基は、好ましいR5であり、好ましいR3はメチル基、Xはブロムである。
【0014】
より狭い観点に於いては、本発明は、d4Tの大規模生産に採用する事が出来る実用的、経済的工程によるd4Tの製造法に係わる。全体として、この製造工程は5−MU(式X)から出発し、スキーム1に示した反応にしたがって行われる。
【0015】
スキーム1に記述したように、d4Tの合成は次のような化学反応依りなっている:
(a) 5−MUから2’,3’,5’−トリ−O−メシル−5−メチルウリジン(IX)の合成;この工程の改良点は、アセトンの様な極性溶媒の使用、及び2〜4当量のピリジンより強く、トリメチルアミンより弱い有機塩基の使用を含んでいる。有用な有機塩基としては、ピコリン類、ルチジン類、及び好ましくはN−メチルモルフォリンである;効果のあるものとしては、pka値が5.5〜8.0である塩基である。反応は室温から65℃の間で行われ、0.5〜2.0時間以内で完了する。
(b) 化合物(IX)を6NNaOHのような強ヒドロキシド溶液で処理することによりジ−メシル化された2,2’−アンヒドロ−5−メチルウリジン(VIII)の合成。
(c) 化合物(VIII)は、DMF中ベンゾエートアニオンとの反応により5’−メシル基が置換して5’−ベンゾエートエステル中間体(VII )を与える。カリウム及びナトリウムベンゾエートが好ましい試薬である。
(d) メタノール中のアセチルハライド、又は酢酸中の水素化ハロゲン酸を用いたハロゲン化反応は、一般式(V)で示される中間体を与える。特に、化合物(VII)をHBr/HOAcで処理すると、新規なシス−2’α−ブロモ−3’α−メシル中間体(VI)を提供する。
(e) 化合物(VI)を金属還元試薬、好ましくは亜鉛またはZn−Cuのような亜鉛−結合物で還元脱離反応を行うと、d4Tの5−ベンゾエートエステル(III)が生成する。この特異的な還元脱離反応の利点は、生成物からの分離が非常に難しい分解物チミンが殆ど、または全く生成せず、副産物のない高収量で反応が進むことである。
(f) 5’−ベンゾエートエステル中間体(III)はn−ブチルアミンによる容易な反応で、きれいに脱保護される。N−メチルピロリジノン(NMPO)の酢酸ブチル溶液を加えると、反応混合物からd4T・NMPO溶媒和物(II)が分離する。このd4T・NMPO溶媒和物を介した分離は、生成物からの分離が困難な、特に大量合成の場合には困難である不純物を効果的に除く。
(g) 溶媒和物(II)はイソロパノール中で加熱することにより分解してd4Tを高収量、高純度で与える。
【0016】
本発明は、スキーム1に示された全反応工程のみならず、新規な化合物、式(VI)の中間体からd4Tの合成、d4T・NMPO溶媒和物(II)を経由しての単離/精製を、それら自身分離可能であり、それぞれ別個の工程として包含する。
【0017】
5−MUからd4Tの商業的な大規模生産を行う工程として、製造工程や中間体の単離及び/又は精製の段階数を最も少なくすることができる利点がある。この点に関して、スキーム1の塩基反応は、スキーム2に示した様にd4Tに導く幾つかの経路を企画することができる。本発明のもう一つの観点は、反応工程において、中間体の単離及び/又は精製操作を少なくすると共に、反応の組み合わせによって大量合成の効果を最大にする合成経路の選択である。研究及び実験を行った後、以下の新規な製造工程が開発され、これらはスキーム3に纏められている。
【0018】
スキーム3の製造工程は、以下の工程を包含している:
(a) ルチジン類、ピコリン類または好適なN−メチルモルフォリンの存在下、5−MUの2’,3’及び5’ヒドロキシ基のメシルクロリドの反応によるメシル化;続いて水性ヒドロキシドで処理して2,2’−アンヒドロチミジン誘導体(VIII)を生成する。
(b) 5’−メシル基のベンゾエートアニオン置換、及びこれに続くヒドロブロム化により5’−ベンゾイル−2’α−ブロモ−3’α−メシルチミジン化合物(VI)の生成、続いて化合物(VI)を還元金属、好ましくは亜鉛、または亜鉛−銅結合化合物で還元的脱離反応を行って、d4Tの5’−ベンゾエートエステル(III )を生成。
(c) 化合物(III )の5’−ヒドロキシ位をブチルアミンにより脱保護、続いてN−メチルピロリジノンの酢酸ブチル溶液で処理してd4T・NMPO溶媒和物(II)を沈殿させ、それを反応溶液から濾過によって単離。
(d) d4T・NMPO溶媒和物(II)をアルコール性媒質、好ましくはイソロパノール中で加熱することにより脱溶媒和して高純度のd4T(I)を高収量で生成。
【0019】
この工程に於いてベンゾイル基(又は他のアシル基)を5’−位から除去することはn−ブチルアミンを用いることにより成就される。このようなアミンとエステルの反応は、通常過激な反応条件(特に反応温度と反応時間)が要求されるので、しばしば用いられる反応ではない。反応副生物も問題があり、それらはしばしば生成物からの分離が困難なものである。
【0020】
d4Tから5’−アシル基の除去を複雑にしているもう一つの問題は、d4Tが水及びアルコール類に非常に良く溶けることである。水及びアルコール類又はそれらの混合物は、5’−脱保護反応に使用される典型的な溶媒である。d4Tの先行技術の合成法は、通常ナトリウムメトキシドのメタノール溶液を用い、5’−脱保護を行っている。水性抽出液は、この水溶性の生成物から副生成物のナトリウム塩を分離することが出来ないので、脱保護反応で生成したナトリウム塩を分離する為に通常強酸レジンが使用される。これに続いてメタノールが除去され、次にメチレンクロリド混合物からd4Tが単離される。
【0021】
大規模製造の場合、強酸レジンの使用、メタノール溶媒をメチレンクロリドに置き換えることは、これらの単離及び精製工程の他の好ましくない性状を考慮するまでもなくそれ自身、またそれだけで好ましくない操作である。
【0022】
これに対して、本発明によるこの新規な脱保護/単離/精製工程は以下の工程を包含する:
○ 5’−アシルd4T中間体をブチルアミン中70℃で6時間攪拌;
○ NMPOおよび酢酸ブチルを加える;
○ 減圧下、過剰のブチルアミン(および少量の酢酸ブチル)を除去;
○ 一10℃に冷却し、沈殿を濾取し、その沈殿を冷酢酸ブチルで洗い、必要であれば50℃で減圧下オブン中で乾燥する。
【0023】
この工程は、より効果的であるばかりではなく、水溶性のd4Tに除去する事が難しい無機塩が混入する問題をなくしている。
【0024】
5−MUからd4Tを合成するこのより効果的な製造工程は、生成物の収量、および純度に関して利点があるのみならず、その工程で使用される企画された製造工程および試薬、反応条件が、大規模生産によく適応しているという利点がある。
【0025】
要約すれば、d4Tおよびその関連化合物を製造するこの新規な、低コストである製造法は、製造工程および試薬、反応条件、および毒性であるかまたは大量排出するかのいずれかである廃液を生成することなく、高収量、高純度の生成物を提供するばかりではなく、不純物の問題、生成物の分解の問題を最小限にする効果的な方法となる単離/精製の形式を選択することによって大規模製造によく適応したものである。
【0026】
【実施例】
実施態様の説明:
本発明による改良された製造法は、前に記述した製造工程の好ましい態様を示す以下の例によってより詳細に説明されている。これらの例はいかなる場合も本発明の範囲を限定するものと理解すべきではない。例示したいくつかの化合物は実際に単離したものではないものもあるが、いずれも本発明の製造工程で使用されたものである。これに続く他の実施例は今までに使用されていた工程であり、本発明による工程と比較する目的で示されている。
【0027】
A. 化合物IX:
実施例1: 2’,3’,5’,−トリス(メタンスルフォニル)−5−メチルウリジン
(a) ピリジン工程:
攪拌した5−メチルウリジン(12.8g,50mmol)とピリジン(75ml)の混合物中にメタンスルフォニルクロリド(17.4ml,225mmol)を0℃で加えた。この反応混合物を0℃で5時間攪拌し、氷水(500ml)中に攪拌しながら加えた。トリス(メタンスルフォニル)−5−メチルウリジン(IX)が沈殿し、この混合物を5分間攪拌した。固体生成物を濾過して集め、水(3×200ml)で洗い、乾燥した。収量21.6g,89%。
1HNMR(DMSO−d6)δ1.77(S,3H),3.24(s,3H),3.34(s,3H),3.36(s,3H),4.47−4.60(m,2H),5.33(m,1H),5.54(m,1H),5.97(d,J=4.5Hz,1H),7.56(s,1H),11.56(s,1H).
【0028】
(b) N−メチルモルホリン工程:
5−メチルウリジンヘミヒドレート(15.64g,58.5mmol)のアセトン(68ml)中のスラリーにN−メチルモルホリン(29.6ml,266mmol)を加え、この混合物を5℃に冷却した。アセトン(30ml)中のメタンスルフォニルクロリド(20.1ml,255mmol)を45分で加えると、反応温度は45〜50℃になった。更に1.4時間攪拌した後N−メチルモルホリン塩酸塩を濾過して除き、濾過ケーキはアセトン(2×30ml)で洗浄した。合した濾液および洗液は、10〜15℃で水(1l)に加えた。1.1時間攪拌した後、白色の沈殿を濾取し、水(2×75ml)で洗い、減圧下乾燥した。収量27.95g(97%)。
【0029】
B. 化合物VIII:
実施例2: 3’,5’−ジ−O−メタンスルフォニル−2,2’−アンヒドロ−5−メチルウリジン
アセトン(400ml)中の攪拌した5−メチルウリジン(200g,0.748mol)の溶液に、N−メチルモルホリン(NMM,380ml,3.46mol)を5℃で加えた。それからアセトン(40ml)中のメシルクロリド(256ml,3.31mol)溶液を10分間で加え、反応温度が65℃に上昇した。滴下の間温度を60〜65℃に保った。反応混合物は温度が漸次25℃になるまで2時間攪拌した。NMM−HCl塩を濾去し、濾過ケーキはアセトン(3×350ml)で洗浄した。濾液と洗液を合し、水(400ml)を加えた。6NNaOHを自動滴定器を用いて加え、反応混合物のpHを8.8〜9.0に調節した。その間反応混合物を50〜55℃に温めた。pH9で30分保った後、この溶液を50℃で1時間攪拌した。得られた濃いスラリーを2〜5℃に冷却し、濾過した。濾過ケーキは水(3×600ml)で洗い、乾燥して中間体(VIII)266g(89.7%)を得た。
1HNMR(DMSO−d6)δ1.80(s,3H),3.16(s,3H),3.41(s,3H),4.16(m,1H),4.34(m,1H),4.70(m,1H),5.44(s,1H),5.62(d,J=5.7Hz,1H),6.40(d,J=5.7Hz,1H),7.80(s,1H).
【0030】
C.化合物VII:
実施例3: 5’−ベンゾイル−3’−メタンスルフォニル−2、2’−アンヒドロ−5−メチルウリジン
アセトアミド(50g)中の安息香酸ナトリウム(10g,69.3mmol)のスラリーに、115℃で2’,3’,5’,−トリス(メタンスルフォニル)−5−メチルウリジン(IX,10g,20.3mmol)を加えた。反応混合物を115℃で65分攪拌し、それから氷水(2l)中にあけた。混合物は0℃で15分攪拌した。白色固体を濾取し、水洗(2×50ml)し、乾燥して化合物(VII)を7.76g(90%)得た。
1HNMR(DMSO−d6)δ1.74(s,3H),3.44(s,3H),4.16−4.33(m,2H),4.78(m,1H),5.63(s,1H),5.68(d,J=5.7Hz,1H),6.45(d,J=5.7Hz,1H),7.79(s,1H),7.47−7.89(m,5H).
【0031】
D. 化合物VI:
実施例4: 5’−ベンゾイル−3’α−メタンスルフォニル−2’α−ブロモチミジン
(a) 5’−ベンゾイル−3’−メタンスルフォニル−2、2’−アンヒドロ−5−メチルウリジン(VII)からの合成
酢酸メチル(100ml)およびメタノール(10ml)中の5’−ベンゾイル−3’−メタンスルフォニル−2、2’−アンヒドロ−5−メチルウリジン(VII)(4.0g,9.5mmol)の混合物にアセチルブロミド(5ml,67.7mmol)を加えた。この反応混合物を1時間加熱還流し、それから冷却した。
反応混合物を分液漏斗に移した。酢酸エチル(150ml)を加えた。この溶液を飽和重炭酸ソーダ(100ml)で洗浄し、続いてブライン(100ml)で洗浄した。有機層を分離し、MgSO4で乾燥した。溶媒を除いて固体生成物(VI)を得た。収量4.86g(100%)
1HNMR(DMSO−d6)δ1.63(s,3H),3.37(s,3H),4.50−4.55(m,1H),4.60−4.64(m,2H),5.09(t,J=6.0Hz,1H),5.47(m,1H),6.14(d,J=7.2Hz,1H),7.49(s,1H),7.50−8.04(m,5H),11.56(s,1H).
【0032】
(b) 2’,3’,5’,−トリス(メタンスルフォニル)−5−メチルウリジン(IX)からの合成
DMF(25ml)中の粉末にした安息香酸ナトリウム(3.5g,24.3mmol)のスラリーに90℃で、2’,3’,5’,−トリス(メタンスルフォニル)−5−メチルウリジン(IX,5.0g,10.2mmol)を加えた。この反応混合物を90℃で5.5時間攪拌した。HBr/HOAc(30−32%,5ml,25.1mmol)を加え、この混合物を1時間攪拌した。冷却した後、反応混合物は、500mlの酢酸エチルと100mlの水で希釈した。層を分離し、有機層は100mlの水、50mlのブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥した。溶媒を除去して化合物(VI)を5.01g(98%)得た。
【0033】
E. 化合物III:
実施例5: 5’−ベンゾイル−2’,3’−ジデヒドロ−3’−デオキシチミジン(5’−ベンゾイルd4T)
(a) 5’−ベンゾイル−3’α−メタンスルフォニル−2’α−ブロモチミジン(VI)からの合成
5’−ベンゾイル−3’α−メタンスルフォニル−2’α−ブロモチミジン(VI,6.0g,11.9mmol)を、酢酸エチル(112.5ml)およびメタノール(37.5ml)の混合物の中に懸濁させた。このスラリーに酢酸(0.68ml)と亜鉛末(1.36g)を18℃で加えた。3.5時間後、過剰の亜鉛末を濾過して除き、濾過ケーキは酢酸エチル/メタノール混合溶液(3:1,2×30ml)で洗浄した。溶媒は減圧下除去し、さらに3:1酢酸エチル/メタノール混合溶液(20ml)を加えた。このスラリーに水(225ml)を加えた。得られたスラリーを濾過し、生成物は水洗し、乾燥した。中間体生成物(III)の収量:3.8g(97%)。
1HNMR(DMSO−d6)δ1.35(s,3H),4.41−4.48(m,2H),5.10(m,1H),6.04(d,J=5.8Hz,1H),6.53(d,J=5.8Hz,1H),6.80(s,1H),7.10(s,1H),7.51−7.95(m,5H),11.37(s,1H).
【0034】
(b) 3’,5’−ビス(メタンスルフォニル)−2,2’−アンヒドロ−5−メチルウリジン(VIII)からの合成
DMF(600ml)中の3’,5’−ビス(メタンスルフォニル)−2,2’−アンヒドロ−5’メチルウリジン(VIII,200g,0.505mol)の攪拌した混合物に、95〜97℃で粉末の安息香酸ナトリウム(79.56g,0.552mol)を少しづつ、1時間で加えた。得られた混合物を更に5時間95〜97℃で攪拌した。80℃に冷却した後、アセチルブロミド(3.8ml)を加え、続いてHBr/HOAc(30−32%,120ml,0.605mol)を加えた。反応混合物を1時間から2時間攪拌し、それから0−5℃に冷却した。亜鉛末(42.8g,0.655mol)を少量づつ加え、反応は発熱して50−55℃になった。反応混合物はそれから18−25℃で1時間攪拌した。ブロモ酢酸(21.0g)を加え、反応混合物を2から3時間攪拌し、過剰の亜鉛を消費させた。次に、得られた澄明な溶液に水(1.5−2.0ml)加え、反応混合物を2℃に冷却した。スラリーを濾過し、濾過ケーキを氷水(6×600ml)で洗い、それから冷IPA(−10℃,400ml)で洗浄した。濾過ケーキを一定になるまで乾燥した。収量136.9g(87.9%)。
【0035】
(c) 2′,3′,5′−トリス(メタンスルフォニル)−5−メチルウリジン(IX)からの合成
DMF(25ml)中の粉末にした安息香酸ナトリウム(3.5g,24.3mmol)のスラリーに、2′,3′,5′−トリス(メタンスルフォニル)−5−メチルウリジン(IX,5.0g,10.2mmol)を90℃で加えた。反応混合物を90℃で5.5時間攪拌した。HBr/HOAc(30−32%,5ml,25.1mmol)を加え、反応混合物を1時間攪拌した。反応混合物を25℃に冷却し、亜鉛末(2.0g,30.6mmol)を加えた。反応混合物を30分攪拌した。過剰の亜鉛を濾過して除き、メタノール(2×100ml)で洗浄した。濾液に100mlの氷水を加えた。得られたスラリーを0℃で30分攪拌し、それから濾過し、乾燥すると5′−ベンゾイル−d4T(III)が2.34g(71%)得られた。
【0036】
F. 化合物II:
実施例6: 2’,3’−ジデヒドロ−3’−デオキシチミジン・N−メチルピロリジノン溶媒和物
n−ブチルアミン(133ml)に、5′−ベンゾイル−d4T(III ,70.0g)を加えた。反応混合物を6時間、70℃に加熱した。20−25℃に冷却した後、N−メチルピロリジノン(NMPO,41.3ml)及び酢酸ブチル(350ml)を加えた。過剰のn−ブチルアミン(〜112.4ml)を、175mlの酢酸ブチルと共に50℃で減圧蒸留することにより除いた。得られたスラリーは、20−25℃で1時間冷却し、30分間攪拌した。このスラリーは、それから−10から−15℃に冷却し、1.5時間攪拌した。濾過ケーキを濾取し、冷酢酸ブチル(−10〜−15℃,2×50ml)で洗い、そして乾燥すると、d4T・NMPO溶媒和物(II)が、59.0g(85.6%)得られた。
【0037】
G. 化合物I:
実施例7: 2’,3’−ジデヒドロ−3’−デオキシチミジン(d4T)
(a) メトキシドを用いた合成
メタノール(24ml)中の5′ベンゾイル−d4T(III)(2.4g,7.31mmol)の攪拌したスラリーに、ナトリウムトキシド溶液(4.8ml,25%,21mmol)を加えた。得られた溶液を室温で3時間攪拌した。反応混合物を強酸性レジン(Dowex 50x8−200,メタノールで前洗浄)でpH4に中和した。レジンを濾去し、濾過ケーキをメタノール(2×10ml)で洗浄した。メタノールを除いて得た固体にメチレンクロリド(10ml)を加えた。得られた混合物を30分攪拌し、それからd4T生成物(I)を濾過して集め、メチレンクロリド(2×5ml)で洗浄し、乾燥した。収量1.29g(79%)。
1HNMR(DMSO−d6)δ1.71(s,3H),3.59(m,2H)4.76(m,1H),5.02(s,1H),5.89(d,J=5.7Hz,1H),6.38(d,J=5.7Hz,1H),6.80(s,1H),7.63(s,1H),11.27(s,1H).
【0038】
(a) d4T・NMPO溶媒和物(II)からの合成
500mlのイソプロパノールに、50.0gのd4T・NMPO溶媒和物(II)、5.0gのダイカライト、5.0gのダルコ(Darco)KBを加えた。この混合物を加熱還流し、熱時ダイカライト床を通して濾過した。濾過ケーキは150mlの熱イソプロパノールで濯いだ。濾液及び濯液を合し、減圧下200mlまでに濃縮した。濃縮した混合溶液は加熱還流して溶液にし、それから50℃にゆっくり冷却して生成物のスラリーにした。このスラリーを0℃に冷却し、30分保った。ケーキを濾取し、冷イソプロパノール(0℃)で洗い、乾燥するとd4T(I)が30.5g(87.9%)得られた。
Claims (8)
- 工程:
(a) 式(X):
(d) アルコール性媒質中でd4T・NMPO溶媒和物(II)を脱溶媒和してd4T生成物(I)を産生する;
を包含する2’,3’−ジデヒドロ−3’−デオキシチミジン(d4T)の製造法。 - 工程(a)に於ける有機塩基がN−メチルモルホリンである請求項1記載の製造法。
- 工程(b)のヒドロブロム化反応が、酢酸中のHBrで行われる請求項1記載の製造法。
- 工程(b)の還元金属が亜鉛である請求項1記載の製造法。
- 工程(c)のアルコール性媒質がイソプロパノールである請求項5記載の製造法。
- R 3 がメチル基、そしてR 5 がフェニル基である請求項5記載の製造法。
- 工程(b)のアルキルアミンがn−ブチルアミンである請求項5記載の製造法。
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