JP3883613B2 - 電気光学素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気光学素子に関し、特に電気光学効果を利用して光ビームの偏光状態を制御する電気光学素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、強誘電体の電気光学効果を利用した種々の光ビームの制御が盛んに行われている。電気光学効果は、その応答速度が高速であるため、その特性を用いて光ビームの高速な強度変調器や位相変調器などが作製されている。
【0003】
光ビームの偏光状態を制御する素子としては、異方性結晶を用いたλ/2、λ/4等の位相板がある。
【0004】
しかし、これらの位相板により光ビームの偏光状態を制御するためには、その位相板自体を回転させ、入射光の偏波面に対してその結晶軸を調整しているが、これは機械的な動作となってしまうため、その制御速度は遅く、また偏光状態の制御性が不十分となることがある。
【0005】
また、特定の偏光状態の光ビームを取り出す偏光器として、偏光子と検光子とを組み合わせて構成した装置がある。偏光子から出射される光ビームは、理想的には、偏光状態が一定した完全偏光であることが望ましいが、実際には他の偏光成分を含んでいるため、これをカットする検光子を用いている。
【0006】
しかし、このような偏光子と検光子との組み合わせにおいては、光ビームの強度(パワー)移行率が十分ではなく、またその強度の制御も容易ではない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、光ビームの偏光状態を高速で正確に制御でき、かつ、光ビームを所定の強度で所定の偏光状態に移行できる電気光学素子、例えば波長フィルタ、光強度変調器等を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、一方向に自発分極を有する強誘電性基体と、この強誘電性基体中に所定形状に形成されかつ前記強誘電性基体とは逆方向に自発分極を有する分極反転ドメインとが光ビームの伝搬方向に沿って積層配置され、前記分極反転ドメインのドメイン壁の少なくとも一つが前記強誘電性基体の主面に対して垂直もしくはほぼ垂直である電気光学素子において、
前記光ビームが前記強誘電性基体と前記分極反転ドメインとの積層体の一方の端面か ら入射し、他方の端面から出射し、この際に前記光ビームが前記ドメイン壁を少なくと も二つ通過するように構成され、
前記強誘電性基体の前記主面が、前記光ビームの前記伝搬方向とこれに直交する常光 線の屈折率方向とのなす平面と平行に存在し、
前記強誘電性基体及び前記分極反転ドメインに所定の電界を印加するための電極が、 前記強誘電性基体の前記主面と直交する異常光線の屈折率方向と平行であって前記常光 線の屈折率方向において対向する前記強誘電性基体の両側面に、設けられている
ことを特徴とする電気光学素子(以下、本発明の電気光学素子又は素子と称する。)に係るものである。
【0009】
ここで、上記の「前記強誘電性基体の両側面」とは、例えば図1に示すように、光ビームの伝搬方向をx、強誘電性基体の自発分極の方向をzとしたときの(x,y,z)直交座標系において、強誘電性基体のy軸方向における面(図1では側面5、6)を意味する。
【0010】
本発明の電気光学素子によれば、本発明の電気光学素子の、主面と直交する強誘電性基体の両側面に設けられた電極に所定の電圧を印加することによって、光ビームが分極反転ドメイン中で偏光状態が変化せしめられて、ドメイン壁を少なくとも二つ通過してドメインから出射するので、光ビームの偏光状態を高速で正確に制御することが可能であり、かつ、光ビームのパワーも所定の強度で移行させることができる。
【0011】
また、ドメイン壁が強誘電性基体の主面に垂直もしくはほぼ垂直になるように選ぶことにより、素子中の光ビームの伝搬方向が常に主面に平行になり、素子中で光ビームを安定して伝搬することができる。
【0012】
なお、本発明の電気光学素子は、上記の分極反転ドメイン及び電極を有する強誘電性基体のみで構成される場合に限らず、その前後に設けられた偏光子及び/又は検光子も含めてよい概念である。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の電気光学素子においては、伝搬する光ビームが前記ドメイン壁に対し所定の入射角で入射し、前記ドメイン壁が所定の周期で積層され、強誘電性基体の対向した両側面に設けられた電極間に電圧を印加することによって、出射される光ビームの偏光状態を変化させることが望ましい。
【0014】
この場合、分極反転ドメインの数及び厚み(即ち、積層周期)は、光ビームの波長及び周波数、かつ、その偏光角によって異なる(詳細は後述する)。
【0015】
また、本発明の電気光学素子においては、前記強誘電性基体の対向した両側面のほぼ全域に亘って電極がそれぞれ設けられ、これらの電極間に印加する電圧に応じて、出射される光ビームの偏光状態を変化させるようにすると、光ビームの伝搬方向を基体の側面と平行に安定に保ち、光ビームの不要な発散を防止できる。
【0016】
また、前記強誘電性基体がLiNbX Ta1-X O3 (但し、0≦x≦1)の結晶からなり、ドメイン壁の辺の方向が前記結晶のミラー面と平行であると、ドメイン壁の平面度を向上させ、偏光を良好に行わせることができる。
【0017】
この強誘電性基体は、LiNbX Ta1-X O3 (但し、0≦x≦1)の結晶であるニオブ酸リチウム(LiNbO3 )、タンタル酸リチウム(LiTaO3 )が使用可能であり、或いはKTP(KTiOPO4 )等の結晶を用いることもできる。
【0018】
本発明の電気光学素子では、前記強誘電性基体の光ビーム入射側に偏光子、光ビーム出射側に検光子をそれぞれ配置したものが好ましいが、いずれか一方に配置してもよい場合がある。
【0019】
本発明の電気光学素子として、上述の各構成において、前記強誘電性基体の光ビーム出射側に、直線偏波である入射光の偏波面方向と交差する偏波面を有する出射光が通過する検光子を設け、かつ印加電圧を所定の電圧値にすることにより、所定の波長を有する前記出射光のみを通過させる例えば透過型フィルタを構成できる。なお、検光子は直線偏波である入射光の偏波面方向と直交していてもよいし、それ以外の角度で設けられてもよい。
【0020】
また、本発明の電気光学素子によれば、強誘電性基体の光ビーム出射側に、直線偏波である入射光の偏波面方向と交差する偏波面を有する出射光が通過する検光子を設け、かつ、印加電圧を変化させることにより、前記出射光の強度を変調する例えば光強度変調器を構成できる。なお、この場合も、検光子は直線偏波である入射光の偏波面方向と直交していてもよいし、それ以外の角度で設けられてもよい。
【0021】
前記分極反転ドメインの形成に際しては、例えば、前記強誘電性基体の対向した両主面に電極をそれぞれ設け、少なくとも一方の主面には所定形状の電極が設けられ、前記両主面間に電圧を印加することによってそれぞれの分極反転ドメインが所定形状に形成される(所望の形状に分極が反転する)。
【0022】
或いは、強誘電性基体の自発分極の負側の面に、電子線又は負電荷を有する荷電粒子を照射することによってそれぞれの分極反転ドメインが所定形状に形成される(所望の形状に分極が反転する)。
【0023】
或いは、強誘電性基体の自発分極の正側の面に、正電荷を有する荷電粒子を照射することによってそれぞれの分極反転ドメインが形成される(所望の形状に分極が反転する)。
【0024】
【実施例】
以下、本発明を具体的な実施例により説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0025】
まず、本実施例による電気光学素子において光の偏光状態を制御するときの原理について述べる。
【0026】
図1に示すように、本実施例による電気光学素子10は、基本的には、強誘電体基板1と、この基板中に作製されかつ光の伝搬方向に沿って周期的に配置された直方体状の分極反転ドメイン2と、基板1の主面3、4に垂直であって光の伝搬方向に対して平行な両側面5、6の全面に設けられた矩形状の電極41、42と、これらの電極間に電圧を印加するための電気信号源21とから構成されている。
【0027】
基板1の結晶の方向(図中の上向き矢印で示す自発分極の方向)と分極反転ドメイン2の結晶の方向(図中の下向き矢印で示す自発分極の方向)とは、互いに180度反転している。そして、ドメイン2のドメイン壁2a、2bは強誘電体基板1の主面3、4に対してほぼ垂直であり、光ビーム(入射光)51はこれらのドメイン壁を2a、2b、2a、2b・・・と繰り返し通過する。
【0028】
光ビーム(入射光)51は、素子端面7から入射し、基板1とドメイン2とを交互に通過しながら、反対側の端面8から出射する。
【0029】
ここで、基板1は一軸性の異方性結晶、例えばニオブ酸リチウム(LiNbO3 )で形成されている。
【0030】
基板1の光学軸方向が図1のz軸方向であるとすると、x軸及びy軸方向の屈折率はno (即ち、常光線の屈折率)、z軸方向の屈折率はne (即ち、異常光線の屈折率)となり、異なった屈折率を有する。
【0031】
入射される光ビーム51において、y軸方向に偏光している光、即ち常光線は、x軸及びy軸方向の屈折率no を感じ、z軸方向に偏光している光、即ち異常光線は、z軸方向の屈折率ne を感じることとなる。即ち、両者は素子中を伝搬する際、伝搬速度が異なり、両者に位相差が生じることになる。
【0032】
この位相差はそのままでは後述する偏光状態の変化を得ることはできないため、両光線の位相を合わせること(位相整合)が必要となる。
【0033】
そこで、素子10の電極41及び42に電圧が印加されたとき、素子内部にはy軸方向において素子全体にわたって均一に電界Ey が生じる(Ex =Ez =0、Ey ≠0)。
【0034】
この電界Ey により、図2及び図3に示すように、電気光学効果により基板1の屈折率楕円体の主軸方向がy−z面内で回転するようになり、この回転角θは公知の次式で与えられる。
θ=(1/2)tan-1(2r51Ey/(ne -2−no -2))・・・(1)
(但し、r51は、物質の結晶の方向によって異なる電気光学定数である。)
【0035】
また、図3は、上記回転角θで回転したときの屈折率変化をベクトルを用いて概略的に示したものである。
【0036】
即ち、印加電界Eyによって、この屈折率楕円体の主軸が回転することにより、偏波面が直交する(即ち、y軸方向とz軸方向)二つの光波が結合するようになり、その結合係数κは近似的に以下の式で表される。
κ=(π/λ)×n3 ×r51×Ey・・・(2)
(ここで、λは伝搬光ビームの波長である。)
【0037】
しかし、この主軸回転はわずかであり、偏波面が直交する両光波は、素子中の伝搬定数が異なるため、両者の結合はわずかでしかない。
【0038】
そこで、基板1とドメイン2とでは、両者の結晶軸が反転しているため、図2の電界印加による主軸の回転方向は互いに反対になり、この回転による主軸のy軸方向成分は相加的に結合される。
【0039】
そして、基板1とドメイン2とを図1の如くに交互に繰り返して光ビーム搬送方向に配することにより、その繰り返し周期をグレーティングとして利用し、これによって、y軸方向の偏波光とz軸方向の偏波光との位相を整合させることのできるグレーティングとし、このグレーティングにより両偏波光は100%の結合が可能となる。
【0040】
上記の位相整合をなすためのグレーティング周期Λは以下の式で表される。
Λ=λ/(no −ne )・・・(3)
【0041】
これにより、波長λとグレーティング周期Λが式(3)を満たしていれば、光ビームが素子中を伝搬していくと、両偏波光がお互いに強度(パワー)移行する(即ち、位相整合する)ようになる。ここで、完全結合長L、常光線の強度(パワー)移行率η、異常光線の強度(パワー)移行率η0 とすれば、特に、位相整合が完全に満たされているときは公知の如く、
η=η0 =sin2(|κ|L)・・・(4)
の関係が成り立つ。
【0042】
この時のη及びη0 が最大、即ち、両偏波光が位相整合されたときの強度が最大のとき、最大完全結合長Lは、
L=π/2|κ|・・・(5)
となり、この長さを伝搬すると、或いは、この長さの奇数倍のとき、完全な強度(パワー)移行(位相整合)が起こる。
【0043】
即ち、例えば光ビームがz軸方向に偏波面を有する直線偏光であった場合、式(3)を満たしていれば、電界Eyがないときには、そのままz軸方向の直線偏波光が出射されるが、電界Eyが大きくなると、やがて出射光は両直交偏波光が次第に結合するようになり、z軸方向の偏波から直線偏波を保ったままy軸の方へ回転し始め、電界Eyが式(5)を満たす条件になると、出射光はy軸方向の偏波面を有する直線偏光へと変換され、100%結合(位相整合)する。なお、図1では、出射光52として偏波方向が入射光51とは異なった光ビームが得られる状態を示しているが、上記の説明に従えば、出射光52の偏波方向がy軸方向となるように設定できる。
【0044】
また、上記の入射光の偏波方向はy軸方向としてもよく、その場合の出射光はz軸方向偏波の直線偏波へと変換される。
【0045】
なお、上述した光ビームの位相整合等の偏光の原理は、文献:「光集積回路」(西原浩等、昭和60年2月発行)のP67〜P143を参照した。
【0046】
次に、本実施例の電気光学素子10の作製方法の例について説明する。
【0047】
素子の作製手順としては、まず、ドメイン2の形成、次に電極41、42の形成、更に端面7、8の光学研磨と無反射コートの被着であるが、以下に各工程について詳細に説明する。
【0048】
ドメイン2の形成方法として、第1の方法によれば、例えば図4にニオブ酸リチウム(LiNbO3 )基板1への電界印加方向を概念的に示すように、ニオブ酸リチウムのz板1の+z面(+c面)上に形成するドメインの形状の電極43を導電膜(例えばアルミニウム膜の被着と通常のリソグラフィ技術によるもの)で形成すると共に、z板1の−z面(−c面)上に平面電極44を形成し、+z面上の電極43が−z面上の電極44より高電位になるように、電源61によって例えば20kV/mm以上の電界を室温中で印加する。
【0049】
これによって、電極43の直下には、分極反転された複数のドメイン2を電極43とほぼ同一パターンに形成し、図1に示した如き素子10を作製する。この場合、電極43及び44は除去してもよいし、そのまま残してもよい。
【0050】
電極43及び44をそのまま残す場合は、電極除去の際のドメインに与えるダメージが全くなく、また電極除去の手間を省くことになる。
【0051】
なお、図4に示した外部電界印加によるドメイン形成方法と類似の方法が、文献(山田正裕等、”疑似位相整合導波路型SHG素子”、電子情報通信学会論文誌 C-I 、Vol. J77-C-I、No.5、pp. 206-213(1994))にも述べられている。但し、この公知の方法はSHG素子についてのものであるから、ドメイン形成後に分極反転用の電極も含めてすべての電極を除去しなければ、電極の領域で光が減衰してしまう。従って、このようなSHG素子に比べ、本実施例の電気光学素子では、ドメイン形成方法は同様であっても電気光学効果のために必ず電極が必要であることが著しく相違している。
【0052】
ドメイン2の形成方法として、第2の方法によれば、図5にニオブ酸リチウム(LiNbO3 )基板1への電子線照射による方法を概念的に示すように、ニオブ酸リチウム(LiNbO3 )のz板1の+z面(+c面)上に平面電極45を例えばアルミニウム膜の被着により形成し、これを接地した状態で−z面(−c面)上のドメイン2を形成したい部分に、20kV(加速電圧)×t(t:基板1の厚さt(mm))以上の電子線62を室温中で走査して照射する。
【0053】
これによって、基板1中には分極反転された複数のドメイン2(但し、分極方向は図4のものとは逆)を所定のパターンに形成する。この後は、基板の両側面に上述した電極41、42を設けるが、上記の平面電極45はそのまま残して用いてもよい。
【0054】
なお、図5に示した電子線照射によるドメイン形成方法と類似の方法が、文献(M.Yamada and K.Kishima、“Fabrication of periodically reversed domein structure for SHG in LiNbO3 by direct beam lithography at room temperature”、Electron. lett. 、Vol. 27, No.10, pp. 828-829(1991))にも述べられている。但し、この公知の方法もSHG素子を対象としている。
【0055】
上記した2種類のドメイン形成方法は、LiNbx Ta1-x O3 (但し、0≦x≦1)やKTP(KTiOPO4 )などの強誘電体材料に対して有効な方法である。
【0056】
上記のようにしてドメイン2を形成した基板1では、その形成工程中に蓄積した歪応力により発生した電界や、注入された電荷による電界の存在が、基板1の屈折率を不均一に変化させたり、信号電界をかかり難くすることがある。これを防ぐために、基板1を次工程に進める前に、ニオブ酸リチウムでは例えば150℃以上、700℃以下の温度で、タンタル酸リチウムではキュリー点以下の温度で、それぞれ数十分から数時間、できれば酸素雰囲気中又は空気中でアニール(熱処理)することが望ましい。
【0057】
次いで、基板1を所定の形状、つまり所定の長さ及び幅に切断し、切断された両側面5、6には、例えばアルミニウム等の導電性の膜を蒸着法やスパッタリング法等で被着することによって、電極41、42を形成するが、これらの両電極が短絡されないようにする必要がある。両側面5、6は予め平面研磨することが望ましい。
【0058】
次いで、基板1の端面7、8に光学研磨を施し、最後に両端面7、8に、使用するビームに対して無反射になるように例えば誘電体多層膜等を蒸着法などで被着して、素子10を完成する。
【0059】
このようにして、光ビームの偏光状態を高速かつ正確に制御でき、しかも光ビームを十分な強度でパワー移行できる電気光学素子を簡便かつ高精度に作製できる。
【0060】
次に、実際に作製した素子の諸特性について述べる。
【0061】
作製した素子10は、z板ニオブ酸リチウムを基板1に用いたものであって、長さ8mm、基板厚0.2mm、幅0.3mm、基板1とドメイン2のグレーティング周期10.8μmである。
【0062】
このとき、位相整合波長は約850nmであり、その位相整合波長を有しかつz軸方向に偏波面を有する直線偏波のレーザ光を入射光とした場合、印加電圧約200Vで、y軸方向に偏波面を有する直線偏波光へほぼ100%変換(パワー移行)することができる。このとき、印加電圧0〜200Vでは、直線偏波のまま、z軸方向からy軸方向へと偏波面が回転した。また、位相整合波長を有しかつy軸方向に偏波面を有する直線偏波のレーザ光を入射光とした場合も同様な条件で、z軸方向の直線偏波光に変換(パワー移行)することができる。
【0063】
印加電圧を200Vとし、z軸方向の直線偏波光を入射光としたときの、入射光波長に対する、z軸方向偏波からy軸方向偏波への変換効率(パワー移行率)を図6に示す。このとき、ピーク波長の半値幅は約1nmと優れた値である。
【0064】
この波長特性を利用すれば、図7に示すように、z軸方向の偏波面を有する光のみを通過する偏光子71を入射側に設け、入射側の偏光子71を通過する偏波方向と直交する偏波面を有する光のみを通過させる検光子72を出射側に設け、印加電圧(パルス電圧)を両偏波光がほぼ100%変換される電圧値に設定することにより、光ビームを位相整合し、偏波面がy軸方向の光ビーム52のみを高速かつ正確に取り出せる透過型波長フィルタを構成できる。
【0065】
また、ドメイン壁が強誘電性基板1の主面に垂直もしくはほぼ垂直になるように選んでいるので、素子中の光ビームの伝搬方向が常に主面に平行になり、素子中で光ビームを安定して伝搬することができる。
【0066】
また、図8に示すように、図7と同じ構成において、入射光51の波長を位相整合波長の近傍の値として、印加電圧(直流電圧)を変調すれば、出射光52の強度を変調でき、高速かつ正確に光強度変調が可能な光強度変調器を構成できる。
【0067】
以上、本発明の実施例を説明したが、上述の実施例は本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【0068】
例えば、ドメイン2は直方体以外の例えば三角柱等の形状としたり、電極43の形状を矩形以外の形状にすることができるし、他方の電極44も同様に変形してもよい。ドメイン壁の形状や個数も上述したものに限定されない。
【0069】
また、上述した電子線以外の負電荷を有する荷電粒子を照射したり、或いは、ドメインの自発分極の正側の面に、正電荷を有する荷電粒子(例えば陽子)を照射することによってそれぞれのドメインを形成することができる。
【0070】
さらに、光ビーム入射側に偏光子、光ビーム出射側に検光子を配置したものが好ましいが、いずれか一方のみを配置した場合でも、電気光学素子の動作は可能である。
【0071】
また、上述の透過型波長フィルタと光強度変調器とを直列に並べることによって、光ビームの位相整合と強度変調とを同時に行うことができる。
【0072】
【発明の作用効果】
本発明は上述した如く、一方向に自発分極を有する強誘電性基体と、この強誘電性基体中に所定形状に形成されかつ前記強誘電性基体とは逆方向に自発分極を有する分極反転ドメインとが光ビームの伝搬方向に沿って積層配置され、前記分極反転ドメインのドメイン壁の少なくとも一つが前記強誘電性基体の主面に対して垂直もしくはほぼ垂直である電気光学素子において、
前記光ビームが前記強誘電性基体と前記分極反転ドメインとの積層体の一方の端面か ら入射し、他方の端面から出射し、この際に前記光ビームが前記ドメイン壁を少なくと も二つ通過するように構成され、
前記強誘電性基体の前記主面が、前記光ビームの前記伝搬方向とこれに直交する常光 線の屈折率方向とのなす平面と平行に存在し、
前記強誘電性基体及び前記分極反転ドメインに所定の電界を印加するための電極が、 前記強誘電性基体の前記主面と直交する異常光線の屈折率方向と平行であって前記常光 線の屈折率方向において対向する前記強誘電性基体の両側面に、設けられているので、前記電極に所定の電圧を印加することによって、前記光ビームが前記分極反転ドメイン中で偏光状態が変化せしめられて、前記ドメイン壁を少なくとも二つ通過してドメインから出射し、前記光ビームの偏光状態を高速で正確に制御することが可能であり、かつ、前記光ビームのパワーも所定の強度で移行させることができる。
【0073】
また、前記ドメイン壁が前記強誘電性基体の主面に垂直もしくはほぼ垂直になるように選ぶことにより、素子中の光ビームの伝搬方向が常に主面に平行になり、素子中で光ビームを安定して伝搬することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例による電気光学素子の概略斜視図である。
【図2】同、電気光学素子の動作を説明するための原理図である。
【図3】同、電気光学素子の動作を説明するための原理図(拡大図)である。
【図4】同、電気光学素子のドメインの形成方法を示す概略斜視図である。
【図5】同、電気光学素子のドメインの他の形成方法を示す概略斜視図である。
【図6】同、電気光学素子の波長による偏波方向変換効率を示すグラフである。
【図7】同、電気光学素子からなる波長フィルタの概略斜視図である。
【図8】同、電気光学素子からなる光強度変調器の概略斜視図である。
【符号の説明】
1…強誘電性基板、2…分極反転ドメイン、2a、2b…ドメイン壁、
3、4、7、8…端面、5、6…側面、10…電気光学素子、
21、81…電気信号源、41、42、43、44、45…電極、
51…入射光ビーム、52…出射光ビーム、61、82…電源、
62…電子線、71…偏光子、72…検光子、θ…結晶主軸回転角
Claims (9)
- 一方向に自発分極を有する強誘電性基体と、この強誘電性基体中に所定形状に形成されかつ前記強誘電性基体とは逆方向に自発分極を有する分極反転ドメインとが光ビームの伝搬方向に沿って積層配置され、前記分極反転ドメインのドメイン壁の少なくとも一つが前記強誘電性基体の主面に対して垂直もしくはほぼ垂直である電気光学素子において、
前記光ビームが前記強誘電体基体と前記分極反転ドメインとの積層体の一方の端面か ら入射し、他方の端面から出射し、この際に前記光ビームが前記ドメイン壁を少なくと も二つ通過するように構成され、
前記強誘電性基体の前記主面が、前記光ビームの前記伝搬方向とこれに直交する常光 線の屈折率方向とのなす平面と平行に存在し、
前記強誘電性基体及び前記分極反転ドメインに所定の電界を印加するための電極が、 前記強誘電性基体の前記主面と直交する異常光線の屈折率方向と平行であって前記常光 線の屈折率方向において対向する前記強誘電性基体の両側面に、設けられている
ことを特徴とする電気光学素子。 - 伝搬する前記光ビームが前記ドメイン壁に対し所定の入射角で入射し、前記ドメイン壁が所定の周期で積層され、前記強誘電性基体の対向した前記両側面にそれぞれ設けられた前記電極間に電圧を印加することによって、出射される前記光ビームの偏光状態を変化させる、請求項1に記載した電気光学素子。
- 前記強誘電性基体の対向した前記両側面のほぼ全域に亘って前記電極がそれぞれ設けられ、これらの電極間に印加する電圧に応じて、出射される前記光ビームの偏光状態を変化させる、請求項1に記載した電気光学素子。
- 前記強誘電性基体がLiNbXTa1-XO3(但し、0≦x≦1)の結晶からなり、前記ドメイン壁の辺の方向が前記結晶のミラー面と平行である、請求項1に記載した電気光学素子。
- 前記強誘電性基体の光ビーム入射側に偏光子が配置されていることと、光ビーム出射側に検光子が配置されていることとの少なくとも一方を構成として有する、請求項1に記載した電気光学素子。
- 前記強誘電性基体の光ビーム出射側に、直線偏波である入射光の偏波面方向と交差する偏波面を有する出射光が通過する検光子を設け、かつ、印加電圧を所定の電圧値にすることにより、所定の波長を有する前記出射光のみを通過させるようにした、請求項1に記載した電気光学素子。
- 透過型波長フィルタとして構成された、請求項6に記載した電気光学素子。
- 前記強誘電性基体の光ビーム出射側に、直線偏波である入射光の偏波面方向と交差する偏波面を有する出射光が通過する検光子を設け、かつ、印加電圧を変化させることにより、前記出射光の強度を変調するようにした、請求項1に記載した電気光学素子。
- 光強度変調器として構成された、請求項8に記載した電気光学素子。
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