JP3882596B2 - 樹脂成形品の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂成形品の製造方法の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の内装品であるインストルメントパネル等の樹脂成形品の製造方法としては、様々なものが提案、実用化されている。例えば、特開2000−351351号には、上型に基材、下型に液状ウレタン樹脂を塗布または吹き付け、型の閉鎖により液状ウレタン樹脂を硬化させて表皮とし、これを基材と接着して一体化する技術が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来の樹脂成形品の製造方法においては、アンダーカットのある成形品を成形する場合、意匠面にパーティングライン(PL)が形成され、意匠上好ましくないという問題があった。
【0004】
例えば、図14に示されるようなウレタン製のインストルメントパネルの場合、そのA−A断面は図15に示されるような形状となっている。図15に示された断面形状から分かるように、この成形品にはアンダーカット形状がある。したがって、金型は、図15に示される成形品の抜き方向にほぼ直角方向に分割できるものでないと、成形品を金型から抜き出すことができない。このため、金型の分割線に沿って、成形品にPLが形成されてしまう。
【0005】
このようなPLが形成されないようにするためには、表皮成形型でPLのない表皮を別途成形し、その表皮を成形型にセットして樹脂材料を充填することにより所望の表皮付樹脂成形品を成形する必要があった。
【0006】
しかし、表皮は一般にパウダースラッシュ成形により成形されるので、250℃程度の型温度が必要となり、表皮成形型として電鋳型を使用する必要があった。この電鋳型は、図16に示されるように、成形品表面の模様となるシボ11が貼り込まれた木型モデル10をシリコン等で1回反転させた凹型モデル12を成形し、この凹型モデル12をさらにエポキシ樹脂等で1回反転させた(木型モデル10から2回反転させた)凸型モデル14を成形し、凸型モデル14を使用してNi電鋳16を形成した後、凸型モデル14を破壊して除去し、電鋳型18が完成する。
【0007】
電鋳型18は、このような工程で製作されるので、製作期間が4ヶ月程度必要となる上、高価でもある。このため、樹脂成形品の製造コストが高くなるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記従来の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、アンダーカットのある樹脂成形品を、PLが形成されず且つ低コストで成形できる樹脂成形品の製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、樹脂成形品の製造方法であって、シボ貼込みで且つアンダーカットのある形状の原型モデルを二度反転させて形成された凸型モデルを用いて、シボ転写されたアンダーカットのあるフィルム型を成形し、フィルム型を、アンダーカット部分を分割成形された成形型にセットし、成形型にセットされたフィルム型上に樹脂材料を充填して所望の樹脂成形品を成形し、樹脂成形品とフィルム型とを成形型から脱型し、樹脂成形品をフィルム型から脱型することを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、低価格のフィルム型をアンダーカット部分を分割成形された成形型にセットして樹脂成形品を成形するので、PLが形成されず且つ低コストの成形が可能となる。
【0013】
また、上記樹脂成形品の製造方法において、フィルム型は、凸型モデルの形状に熱硬化性ウレタンエラストマーを吹き付けて所定形状に成形されることを特徴とする。
【0014】
また、上記樹脂成形品の製造方法において、フィルム型は、凸型モデルの形状にフィルム原反を倣い成形して所定形状に成形されることを特徴とする。
【0015】
上記各構成によれば、フィルム型を容易に成形できる。
【0016】
また、上記樹脂成形品の製造方法において、フィルム型には微細な穴が形成されていることを特徴とする。
【0017】
上記構成によれば、真空成形用に使用できるフィルム型を得ることができる。
【0020】
また、樹脂成形品の製造方法であって、シボ貼込みで且つアンダーカットのある形状の原型モデルを1度反転させて形成された凹型モデルを用いて、シボ転写されたアンダーカットのある表皮を成形し、表皮を、アンダーカット部分を分割成形された成形型にセットし、成形型にセットされた表皮上に樹脂材料を充填して所望の表皮付樹脂成形品を成形し、表皮付樹脂成形品を成形型から脱型することを特徴とする。
【0021】
上記構成によれば、表皮材をアンダーカット部分を分割成形された成形型にセットして樹脂成形品を成形するので、PLが形成されず且つ低コストの成形が可能となる。
【0022】
また、上記樹脂成形品の製造方法において、表皮は、凹型モデルに表皮の材料を吹き付けて所定形状に成形されることを特徴とする。
【0023】
また、上記樹脂成形品の製造方法において、表皮は、凹型モデルの形状にフィルム原反を倣い成形して所定形状に成形されることを特徴とする。
【0024】
上記各構成によれば、表皮を容易に成形できる。
【0025】
また、上記樹脂成形品の製造方法により製造される樹脂成形品は、インストルメントパネルであることを特徴とする。
【0026】
上記構成によれば、低コストでPLの存在しないインストルメントパネルを成形できる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0028】
実施形態1.
図1には、本発明に係る樹脂成形品の製造方法の実施形態1の工程図が示される。図1において、木型モデル10に、所定のシボ11を張り込み、これを1回反転させて、シリコン等により凹型モデル12を成形する。この凹型モデル12を更に反転させ、エポキシ等の樹脂を使用して凸型モデル14を成形する。以上に述べた木型モデル10は本発明に係る原型モデルに相当し、凸型モデル14は、この木型モデル10を二度反転させて形成された本発明の凸型モデルに相当する。
【0029】
次に、凸型モデル14に、熱硬化性ウレタンエラストマーをスプレーあるいは塗布し、凸型モデル14上にフィルムを成形して、木型モデル10の形状及びシボを付与する。この場合に必要な型温は65℃前後であるので、250℃前後の型温が必要なスラッシュ成形の場合のような高温耐久性は型に要求されない。このため、従来例のような電鋳型は不要である。また、熱硬化性ウレタンエラストマーのスプレーに使用されるスプレーノズル20は、例えばRecticel製SPR30等を使用することができる。
【0030】
次に、凸型モデル14上に形成されたフィルムを脱型し、本発明に係るフィルム型22とする。このようにして成形されたフィルム型22を、一体発泡用の下型24にセットする。この下型24は、本発明に係る成形型に相当する。この際フィルム型22には、離型剤を塗布しておくことが望ましい。また、下型24としては、上述した凹型モデル12を転用することも可能である。
【0031】
次に、別途用意した上型26に、別成形した基材28をセットする。また、上記下型24にセットされたフィルム型22上には、成形品の意匠面となる表皮30をスプレーノズル32により成形しておく、これにより、フィルム型22の表面に形成されたシボを成形品の意匠面に忠実に転写することが可能となる。
【0032】
なお、この場合の表皮30の材料としては、フィルム型22と同じ材料(熱硬化性ウレタンエラストマー)を使用できる。
【0033】
次に、上型26を開いたまま、あるいは上型26を閉じた後に、基材28と表皮30との間にウレタンフォーム34を注入し、一体発泡する。
【0034】
次に、上型26を開き、製品である樹脂成形品とフィルム型22とを下型24から脱型し、その後フィルム型22から製品36を脱型する。製品36が脱型されたフィルム型22は、次の製品の成形に再利用される。
【0035】
なお、本実施形態に示された樹脂成形品のように、突起形状等のアンダーカット38がある場合には、下型24からフィルム型22と製品36とを脱型する際に、下型24の分割が必要となる。しかし、本実施形態においては、製品36である樹脂成形品と下型24との間にフィルム型22が存在しているため、製品36の意匠面には下型24の分割線が転写されたPLは残らない。これにより、製品品質を向上させることができる。
【0036】
また、本実施形態においては、電鋳型を使用する必要がないので、製造コストも低減させることができる。
【0037】
本実施形態に係る樹脂成形品の製造方法により、例えば自動車用内装部品であるインストルメントパネル、コンソール、ドアトリム、ピラーガーニッシュなどを成形することができる。
【0038】
実施形態2.
図2には、本発明に係る樹脂成形品の製造方法の実施形態2の工程図が示される。図2において、木型モデル10を二度反転させて凸型モデル14を形成するまでは、図1に示された工程と同じである。
【0039】
次に、上記凸型モデル14の任意の位置に複数の針40を立てる。このように、複数の針40を立てた凸型モデル14に、スプレーノズル20により熱硬化性ウレタンエラストマーをスプレーする。またスプレーに替えて塗布してもよい。このようにして複数の針40を立てた凸型モデル14の表面にフィルムを成形することにより、木型モデル10の形状及びシボが付与され、複数の微細な穴が空いているフィルムを成形することができる。このフィルムの成形に必要な型温は65℃前後である。このため、フィルムを成形するための型の温度を高くする必要がないので、電鋳型を使用する必要もない。
【0040】
次に、上記フィルムを凸型モデル14から脱型し、フィルム型22とする。このように成形したフィルム型22を、一体発泡の下型となる真空成形型42にセットする。この真空成形型42は、成形表面に複数の穴があいており、真空引きによりフィルム形状の材料を成形することができる構成となっている。
【0041】
真空成形型42にセットされたフィルム型22の上に、TPOやPVCなどで形成された表皮30を配置し、真空成形により成形する。この際、フィルム型22には、上述のように穴があけられているため、真空引きが可能となる。これにより、フィルム型22のシボを製品である樹脂成形品の意匠面となる表皮30に忠実に転写することが可能となる。
【0042】
以後、上型26に基材28をセットし、ウレタンフォームを注入して一体発泡させ、その後真空成形型42及びフィルム型22から製品36である樹脂成形品を脱型する工程は図1と同様である。また、フィルム型22は図1と同様に再利用することが可能である。
【0043】
本実施形態においても、真空成形型42と製品36との間には、フィルム型22が存在しているので、真空成形型42がアンダーカット形状を脱型するための分割構造となっていても、製品36の意匠面にPLが生じることを防止できる。さらに、本実施形態においても、電鋳型を使用する必要がないので、製造コストも低減することができる。
【0044】
実施形態3.
図3には、本発明に係る樹脂成形品の製造方法の実施形態3の工程図が示される。図3において、木型モデル10を二度反転させて凸型モデル14を形成するまでは、図1と同様である。
【0045】
次に、上記凸型モデル14の表面の任意の位置にポリビニルアルコール等のエマルジョンを霧状に塗布する。これは、次工程で使用される熱硬化性ウレタンエラストマー44を溶かすためであり、同様の効果を有する他の材料も使用することができる。
【0046】
次に、ポリビニルアルコールのエマルジョンが霧状に塗布された凸型モデル14上に熱硬化性ウレタンエラストマー44をスプレーノズル20でスプレーする。この熱硬化性ウレタンエラストマー44はスプレーの代わりに塗布してもよい。このようにして凸型モデル14上にフィルムを成形し、木型モデル10の形状及びシボを付与する。また、このようなフィルムには、霧状にポリビニルアルコールが塗布された位置に微細な穴が空いている。この場合にも、フィルム形成に必要な型温は65℃程度であって、電鋳型を使用する必要はない。
【0047】
次に、凸型モデル14からフィルムを脱型し、フィルム型22とする。このように成形されたフィルム型22を一体発泡の下型となる真空成形型42にセットする。以後、図2に示された工程と同様の工程により製品36を成形することができる。
【0048】
なお、本実施形態においても、製品36の意匠面にPLが発生することを防止でき、電鋳型の使用の必要がないので、製造コストの低減を計ることができる。
【0049】
実施形態4.
図4には、本発明に係る樹脂成形品の製造方法の実施形態4の工程図が示される。図4においても、木型モデル10を二度反転させて凸型モデル14を形成し、この凸型モデルを用いてシボ11が転写されたフィルム型22を成形するまでの工程は、図1と同様である。
【0050】
次に、上記フィルム型22を、任意の位置に加熱された針40が立てられた凸真空成形型46により真空成形する。これにより、フィルム型22の任意の位置に多くの微細な穴が開けられる。
【0051】
次に、このように成形したフィルム型22を一体発泡の下型となる真空成形型42にセットする。以後の工程は、図2、図3と同様であり、意匠面にシボが忠実に転写された所定形状の製品36(樹脂成形品)を得ることができる。
【0052】
本実施型においても、製品36の意匠面にPLが生成せず、また電鋳型の使用の必要がないので製造コストを低減できる。
【0053】
実施形態5.
図5には、本発明に係る樹脂成形品の製造方法の実施形態5の工程図が示される。図5においても、木型モデル10を二度反転させて凸型モデルを形成し、この凸型モデル14を用いてシボ11が転写されたフィルム型22を成形する工程は、図1と同様である。
【0054】
上述のようにして成形されたフィルム型22にレーザ装置48から拡散レーザをあて、フィルム型22の任意の位置に多くの微細な穴を開ける。
【0055】
このようにして成形されたフィルム型22を使用し、図2〜図4と同様の工程により、意匠面にシボが忠実に転写された所定形状の製品36を得ることができる。
【0056】
本実施形態においても、フィルム型22を使用することにより、製品36の意匠面にPLが発生することを防止できる。また、電鋳型を使用する必要がないので、製造コストも低減することができる。
【0057】
実施形態6.
図6には、本発明に係る樹脂成形品の製造方法の実施形態6の工程図が示される。図6においても、シボ11が張り込まれた木型モデル10から二度反転させて凸型モデル14を形成する工程は、図1〜図5と同様である。
【0058】
次に、上記凸型モデル14を真空成形可能な仕様とする。このためには、例えば、凸型モデル14を中空構造とし、表面の任意の位置に微細な穴を開ける工程を行う。このような真空成形可能な仕様の凸型モデル14に、160℃前後にあらかじめ加温したTPOまたはPVCなどのフィルム50を被せ、真空引きすることにより倣い成形して木型モデル10の形状及びシボを付与する。この場合のフィルム50としては、例えば協和レザー製のTPOレザーK−1等を使用することができる。このフィルム50の倣い成形のために必要な型温は50〜80℃前後である。このため、電鋳型を使用する必要はない。
【0059】
上述のようにして成形したフィルムを凸型モデル14から脱型しフィルム型22とする。このフィルム型22を一体発泡の下型24にセットし、このフィルム型22の上に熱硬化性ウレタンエラストマーをスプレー20により吹き付け、製品の意匠面となる表皮30を成形する。これにより、フィルム型22に形成されたシボを製品である樹脂成形品の意匠面に忠実に転写することが可能となる。
【0060】
以後、図1と同様の工程により、意匠面にシボが忠実に転写された所定形状の製品36を得ることができる。
【0061】
本実施形態においても、フィルム型22を使用することにより、製品36の意匠面にPLが発生することを防止できる。また、電鋳型を使用する必要がないので製造コストを低減できる。
【0062】
実施形態7.
図7には、本発明係る樹脂成形品の製造方法の実施形態7の工程図が示される。図7においては、シボ11が張り込まれた木型モデル10から二度反転させて凸型モデル14を形成し、この凸型モデルを真空成形可能な仕様して、フィルム50からフィルム型22を成形するまでは、図6と同様の工程である。
【0063】
次に、上記フィルム型22を、任意の位置に加熱された針が立てられた凸型真空成形型46により、真空成形してフィルム型の任意の位置に多くの微細な穴を開ける。
【0064】
以後、図2〜図5と同様の工程により、意匠面にシボが忠実に転写された所定形状の製品36を得ることができる。
【0065】
本実施形態においても、フィルム型22を使用することにより、製品36の意匠面にPLが発生することを防止できる。また、電鋳型を使用する必要がないので製造コストも低減できる。
【0066】
実施形態8.
図8には、本発明に係る樹脂成形品の製造方法の実施形態8の工程図が示される。図8においては、図6、図7と同様の工程により、シボ11が張り込まれた木型モデル10から真空成形可能な仕様凸型モデル14を介してフィルム型22が成形される。
【0067】
このフィルム型22に、レーザ装置48により拡散レーザをあて、フィルム型22の任意の位置に多くの微細な穴を形成し、以後図2〜図5、図7と同様の工程により、意匠面にシボが忠実に転写された所定形状の製品36を得ることができる。
【0068】
本実施形態においても、フィルム型22を使用することにより、製品36の意匠面にPLを生じることを防止できる。また電鋳型を使用する必要がないので、製造コストも低減できる。
【0069】
実施形態9.
図9には、本発明に係る樹脂成形品の製造方法の実施形態9の工程図が示される。図9においては、図6〜図8と同様の工程により、シボ11が張り込まれた木型モデル10から真空成形可能な仕様の凸型モデル14を形成する。次に、この凸型モデル14の任意の位置に多くの針40を立てる。
【0070】
このように多くの針が立てられた凸型モデル14を使用し、図6〜図8と同様の工程により、フィルム50を真空成形により倣い成形する。この場合にも、必要な型温は50〜80℃前後であり、電鋳型は不要である。
【0071】
これにより、木型モデル10の形状及びシボが付与され、多くの微細な穴が開けられたフィルム型22を成形できる。
【0072】
このフィルム型22を一体発泡の下型となる真空成形型42にセットし、以後図2〜図5、図7、図8と同様の工程により意匠面にシボが忠実に転写された所定形状の製品36を得ることができる。
【0073】
本実施形態においても、フィルム型22を使用することにより、製品36の意匠面にPLが発生することを防止できる。また、電鋳型を使用する必要がないので製造コストも低減できる。
【0074】
実施形態10.
図10には、本発明に係る樹脂成形品の製造方法の実施形態10の工程図が示される。図10においては、木型モデル10を二度反転させ、図6、図7、図8と同様の真空成形可能な仕様の凸型モデル14を形成する。この凸型モデル14を使用してあらかじめシボを付与したフィルム50を真空成形により倣い成形する。この場合に必要な型温は50〜80℃前後であり、電鋳型は不要である。また、この場合、木型モデル10にはシボ11を貼込まなくてもよい。
【0075】
このようなフィルム50を凸型モデル14から脱型し、あらかじめ表面にシボが付与された表皮30とする。この表皮30を一体発泡の下型24にセットし、また上型26には基材28をセットする。
【0076】
次に、上型26を開いたまま、あるいは上型26を閉じた後ウレタンフォームを注入し、一体発泡する。次に上型26を開き製品36である樹脂成形品を下型24から脱型する。これにより、意匠面にシボを有する所定形状の表皮付製品36を得ることができる。
【0077】
本実施形態においては、あらかじめ成形した表皮30を下型24にセットしているので、製品36にアンダーカット形状があり、下型24の分割が必要であっても製品36の意匠面には、PLが残らない。また、本実施形態においても電鋳型を使用する必要がないので、製造コストを低減することができる。
【0078】
実施形態11.
図11には、本発明に係る樹脂成形品の製造方法の実施形態11の工程図が示される。図11において、シボ11が張り込まれた木型モデル10を、シリコン等により1度反転させ、凹型モデル12を形成する。
【0079】
凹型モデル12にスプレーノズル20により熱硬化性ウレタンエラストマーをスプレー(または塗布)し、製品の意匠面となる表皮30を成形する。これにより所望のシボを製品の意匠面に忠実に転写することができる。また、この場合に必要な型温は65℃前後であり、電鋳型は不要である。
【0080】
次に、凹型モデル12から表皮30を脱型し、この表皮30を一体発泡の下型24にセットする。また、上型26には基材28をセットする。上記上型26を開いたまま、あるいは上型26を閉じた後ウレタンフォームを注入し、一体発泡する。次に、上型26を開き、意匠面にシボが忠実に転写された所定形状の表皮付製品36を得ることができる。
【0081】
本実施形態においては、表皮30をあらかじめ成形した後、これを下型24にセットしているので、製品36にアンダーカット形状があり、下型24の分割が必要であっても、製品36の意匠面にはPLは残らない。
【0082】
また、本実施形態においても電鋳型を使用する必要がないので、製造コストも低減することができる。
【0083】
実施形態12.
図12には、本発明に係る樹脂成形品の製造方法の実施形態12の工程図が示される。図12において、シボ11が張り込まれた木型モデル10を、シリコン等により一度反転させて凹型モデル12を形成する。この凹型モデル12を下型として使用して、スプレーノズル20により熱可塑性ウレタンエラストマーをスプレー(または塗布)し、製品の意匠面となる表皮30を成形する。これにより、所望のシボを製品の表面に忠実に転写することができる。なおこの成形に必要な型温は65℃前後であり、シリコン等の材料、を十分に使用することができる。このため、電鋳型は不要である。
【0084】
次に、上型26に基材28をセットし、上型26を開いたまま、または上型26を閉じた後ウレタンフォームを注入して一体発泡する。
【0085】
次に上型26を開き、意匠面にシボが忠実に転写された所定形状の表皮付製品36を得ることができる。
【0086】
本実施形態においては、下型がシリコン等の柔らかい素材で形成された凹型モデル12であるので、製品36を抜く場合にも型を分割する必要がなく、製品36の意匠面にはPLが残らない。
【0087】
また、本実施形態においても電鋳型を使用する必要がないので、製造コストを低減することができる。
【0088】
実施形態13.
図13には、本発明に係る樹脂成形品の製造方法の実施形態13の工程図が示される。図13において、木型モデル10をシリコン等により一度反転させて凹型モデル12を形成する。この場合の木型モデル10にはシボの張り込みは不要である。
【0089】
次に、この凹型モデル12を真空成形可能な仕様とし、TPOあるいはPVCなどのあらかじめ表面にシボを付与したフィルム50を真空成形により倣い成形する。このように倣い成形することにより表皮30を成形する。この表皮30がセットされた状態の凹型モデル12を一体発泡の下型として使用する。
【0090】
上型26に基材をセットし、この上型26を開いたまま、あるいは上型26を閉じた後、ウレタンフォームを注入して一体発泡する。
【0091】
次に上型26を開き、意匠面にシボが忠実に転写された所定形状の表皮付製品36を得ることができる。
【0092】
本実施形態においては、図13と同様に製品36にアンダーカット形状があっても、下型がシリコン等の柔らかい素材で形成された凹型モデルであるため、型を分割せずに製品36を抜き出すことができる。このため、製品36の意匠面にはPLは残らない。
【0093】
また、本実施形態においても電鋳型を使用する必要がないので、製造コストを低減することができる。
【0094】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、低価格のフィルム型を使用して樹脂成形品を成形できるので、製造コストを低減でき、またそのフィルム型をアンダーカット部分が分割形成された成形型にセットしてから樹脂成形品を成形するので、PLが製品の意匠面に生ずることを防止できる。
【0095】
また、木型モデルを二度反転させた凸型モデルを使用することにより、上記フィルム型を容易に成形することができる。
【0096】
また、上記フィルム型に微細な穴を形成すれば、真空成形用に使用できるフィルム型を得ることができる。
【0097】
また、原型モデルを一度反転させた凹型モデルを使用すれば、上記フィルム型も使用する必要がなく、さらに低コストの成形が可能となる。
【0098】
また、上記凹型モデルは、シリコン等の柔らかい素材で形成されるので、製品の抜き型の際に下型を分割する必要がないので、製品の意匠面にPLが生じることを防止できる。
【0099】
また、上記凹型モデルを使用すれば、表皮を容易に成形することができる。
【0100】
また、本発明に係る樹脂成形品の製造方法によれば、低コストでPLの存在しないインストルメントパネルを成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る樹脂成形品の製造方法の実施形態1の工程図である。
【図2】 本発明に係る樹脂成形品の製造方法の実施形態2の工程図である。
【図3】 本発明に係る樹脂成形品の製造方法の実施形態3の工程図である。
【図4】 本発明に係る樹脂成形品の製造方法の実施形態4の工程図である。
【図5】 本発明に係る樹脂成形品の製造方法の実施形態5の工程図である。
【図6】 本発明に係る樹脂成形品の製造方法の実施形態6の工程図である。
【図7】 本発明に係る樹脂成形品の製造方法の実施形態7の工程図である。
【図8】 本発明に係る樹脂成形品の製造方法の実施形態8の工程図である。
【図9】 本発明に係る樹脂成形品の製造方法の実施形態9の工程図である。
【図10】 本発明に係る樹脂成形品の製造方法の実施形態10の工程図である。
【図11】 本発明に係る樹脂成形品の製造方法の実施形態11の工程図である。
【図12】 本発明に係る樹脂成形品の製造方法の実施形態12の工程図である。
【図13】 本発明に係る樹脂成形品の製造方法の実施形態13の工程図である。
【図14】 自動車のインストルメントパネルを示す図である。
【図15】 図14のA−A断面図である。
【図16】 従来における電鋳型の製造工程を示す図である。
【符号の説明】
10 木型モデル、12 凹型モデル、14 凸型モデル、16 電鋳、18電鋳型、20 スプレーノズル、22 フィルム型、24 下型、26 上型、28 基材、30 表皮、32 スプレーノズル、34 ウレタンフォーム、36 製品、38 アンダーカット、40 針、42 真空成形型、44 エマルジョン、46 凸真空成形型、48 レーザ装置、50 フィルム。

Claims (8)

  1. シボ貼込みで且つアンダーカットのある形状の原型モデルを二度反転させて形成された凸型モデルを用いて、シボ転写されたアンダーカットのあるフィルム型を成形し、
    前記フィルム型を、アンダーカット部分を分割成形された成形型にセットし、
    前記成形型にセットされたフィルム型上に樹脂材料を充填して所望の樹脂成形品を成形し、
    前記樹脂成形品とフィルム型とを前記成形型から脱型し、
    前記樹脂成形品を前記フィルム型から脱型することを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
  2. 請求項1記載の樹脂成形品の製造方法において、前記フィルム型は、前記凸型モデルの形状に熱硬化性ウレタンエラストマーを吹き付けて所定形状に成形されることを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
  3. 請求項1記載の樹脂成形品の製造方法において、前記フィルム型は、前記凸型モデルの形状にフィルム原反を倣い成形して所定形状に成形されることを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
  4. 請求項1から請求項のいずれか一項記載の樹脂成形品の製造方法において、前記フィルム型には微細な穴が形成されていることを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
  5. シボ貼込みで且つアンダーカットのある形状の原型モデルを1度反転させて形成された凹型モデルを用いて、シボ転写されたアンダーカットのある表皮を成形し、
    前記表皮を、アンダーカット部分を分割成形された成形型にセットし、
    前記成形型にセットされた表皮上に樹脂材料を充填して所望の表皮付樹脂成形品を成形し、
    前記表皮付樹脂成形品を前記成形型から脱型することを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
  6. 請求項5記載の樹脂成形品の製造方法において、前記表皮は、前記凹型モデルに前記表皮の材料を吹き付けて所定形状に成形されることを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
  7. 請求項5記載の樹脂成形品の製造方法において、前記表皮は、前記凹型モデルの形状にフィルム原反を倣い成形して所定形状に成形されることを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
  8. 請求項1から請求項のいずれか一項記載の樹脂成形品の製造方法により製造される樹脂成形品は、インストルメントパネルであることを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
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