JP3882334B2 - 磁気軸受装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、生産加工機械あるいは半導体装置のターボ分子ポンプなどで用いられる磁気軸受スピンドルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
以下、機械加工における高速スピンドルを例にとり、その課題について説明する。
【0003】
近年機械加工の分野において、高速切削加工に対する要請が強くなっている。高速切削は生産効率を向上させ、切削抵抗の減少により加工精度の向上と工具の寿命を延ばす、また一体の原料から形状を一気に削り出すことで鋳型などの費用を削減できかつ工程の短縮化がはかれる、などの効果が期待されている。
【0004】
また最近の製品品質に対する要求は、加工面の品質すなわち形状精度や面粗度だけでなく、加工表面下の欠陥や変質層の有無まで問われるようになってきており、金属除去に伴う発生熱の影響が低く、切削抵抗が小さくできる高速切削の期待が大きい。
【0005】
加工機の性能を決定的に支配するスピンドルには、従来から主に玉軸受による支持構造が用いられてきた。前述した高速切削の要請に対して、潤滑方式の改良、セラミックス軸受の採用などにより、高速化に応えるための開発がなされている。
【0006】
一方、磁気浮上により非接触で回転体を支持する能動制御型の磁気軸受スピンドルが、玉軸受方式の限界を超える可能性を持つものとして、近年注目されている。
【0007】
図15はその磁気軸受スピンドルの一例であり、500はスピンドルの主軸、501はモータロータ、502はモータステータである。503と504はフロント側ラジアル軸受、505と506はリア側ラジアル軸受、507と508はスラスト軸受であり、それぞれ回転側のロータと固定側のステータから構成される。509,510はフロント側とリア側のラジアル変位センサー、511はスラスト変位センサー、512,513は保護ベアリング、514はケーシングである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
加工用スピンドルの基本性能は、通常DN値(主軸径×回転数)の大きさで評価される。
【0009】
玉軸受スピンドルの場合、近年様々な改良がなされているが、機械的な摺動潤滑をともなうために、寿命という点を考慮すれば、実用的にはDN値は250万程度が限界とされている。
【0010】
一方磁気軸受の場合、半永久的に使用可能である非接触回転の特徴を活かすことにより、玉軸受のDN値を大きく上回るスピンドルが実現できる可能性がある。前述した加工側の高速・高剛性の要請に応えるために、スピンドルの主軸径をより大きく、またより高速で回転させる試みがなされている。大きな主軸径が要望される理由は、主軸径が大きい程、高速時の慣性剛性(主軸の軸中心が一方向を保とうとする力学的効果)が大きく、またより大きな外径の刃具を把持できるからである。
【0011】
しかし非接触であるがゆえに低損失であると期待された磁気軸受は、高DN値を追求する取組みの結果、予想外の大きな摩擦損失が生じることが明らかとなった。その主たる要因は、ラジアル軸受の渦電流損によるものである。
【0012】
図16(イ)(ロ)は従来から用いられているラジアル軸受の原理図を示すもので、600は電磁鋼板から構成される回転子鉄芯(図15の503に相当)、601は固定子鉄芯(図15の504に相当)、602は巻線である。図中に磁束の流れを矢印603で示す。ラジアル磁気軸受は、上下左右の方向から磁気の力で回転子600を吸引して回転子を非接触で中心に保持する。
【0013】
さて回転子鉄芯中の一点は回転によって、同図(イ)に示すように、N→S→S→N(後述するように N→S→N→Sの場合もある)と磁極604に面して磁束603の方向と大きさが変化するために、回転子鉄芯600には変動する誘起起電力が生じて渦電流が流れることになる。この渦電流損を小さくするために、回転子鉄芯600は、通常薄い電磁鋼板(珪素鋼板)を重ねあわせた積層構造が採用される。
【0014】
さて高DN値(大きな主軸径と高い回転数)のスピンドルの実現を見込み、磁気軸受の回転部を構成した場合、次のような課題が生じた。
【0015】
▲1▼渦電流損を低減するために、抵抗率が高く、鉄損が小さく、同じ材質ならば板厚の薄い電磁鋼板を採用した場合、遠心力によって発生する応力に対して、材料の機械的強度の限界から許容回転数に制約が生じた。遠心力によって発生する応力は、回転体の周速で決まるため、DN値にはおのずと限界が生ずる。
【0016】
▲2▼逆により高い回転数にまで耐える、同じ材質ならば板厚が大きく、抵抗率が低く、鉄損が大きい電磁鋼板を採用した場合、大きな渦電流損による発熱によって主軸に異常な温度上昇をもたらした。この温度上昇は、複合部品により構成される回転主軸の信頼性に多大な悪影響を与えた。磁気軸受の主軸は通常、モータ・磁気軸受の電磁鋼板とそれを側面から締結するリング、スラスト軸受の円盤、主軸内部を利用して設けられたツーリング部材等から構成される。主軸が高速・高温下の苛酷な条件下に晒されることにより、これらの複合部品の破壊・変形などのトラブルの要因となった。
【0017】
▲3▼ラジアル軸受の電磁石に流すバイアス電流を小さくする、あるいは電磁石の歯幅、軸方向の長さを小さくする、等によって損失を低減できる。しかし同時に剛性、負荷能力も低下してしまうため高DN値化は困難となる。
【0018】
本発明は渦電流損を低減させる上で、上記▲1▼〜▲3▼の方策では解消できなかった課題に対して、抜本的な解決策を与えるものである。すなわち本発明は、渦電流損失の大きさが磁極の形状で決まる磁界の分布に依存することに着目したもので、従来磁気軸受とほとんど変わらないシンプルな構成で、磁気軸受スピンドルの低損失化と高速・高剛性化(高DN値化)を同時に実現する極めて有力な手段を提供するものである。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明の磁気軸受装置は、ラジアル軸受のステータにはN極とS極の磁極が円周方向に複数個配置され、前記磁極と前記ラジアル軸受のロータとの間の磁束密度が、前記磁極の端部から前記磁極の中央部に向けて円周方向に増加すると共に、前記磁極の中央部では一定になるような磁極の形状になっている。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下まず最初に本発明の第一の実施例の概要を述べ、その原理と効果を渦電流損の理論解析を用いて説明する。
【0021】
I.電磁石の構成
[1]電磁石Aの場合
図1は、本発明によるラジアル磁気軸受電磁石の第一の実施例(電磁石Aと呼ぶ)の原理図を示すものである。1はロータ、2はステータ部であり、このステータ部2は8極の独立した磁極から構成されたNSNS型を採用している。すなわち、4つのN極3a〜3dと4つのS極4a〜4dが円周方向で交互に配置された構成となっている。ここでひとつのN極3aに注目すると、5、6は磁極3a内面の両端部に形成された傾斜部、7はロータ1と同芯の真円部、8、9はそれぞれの磁極を位置決めして締結するための連結部、10、11は巻き線の収納部、12、13は異極間の間隙部であるスロット部である。なお、これら5〜11は他の磁極にも同様に形成されている。
【0022】
図2に磁極3aの部分拡大図を示す。実施例では異極間の間隙部におけるスロット幅δを充分に小さく、δ=6度に設定した。また磁極の端部と同芯部7の間はゆるやかな傾斜面で結び、α=γ=10度の区間で傾斜部5、6を形成している。ここで角度:αの区間を磁束密度曲線の立ち上がり区間(助走区間)、角度:γの区間を立ち下がり区間(減速区間)と呼ぶことにする。また中央部の角度βの区間は、磁極の内面がロータと同芯円で形成されており、ロータと磁極の間隙(エアーギャップ)は均一である。
【0023】
[2]電磁石Bの場合
図11に、上記α=γ=0の場合のラジアル磁気軸受電磁石Bの原理図を示す。81はロータ、82はステータ部である。このステータ部も、4つのN極83a〜83dと4つのS極84a〜84dが円周方向で交互に配置されたNSNS型の構成となっている。ここで一つの磁極83aに注目すると、85は真円部であり、この部分でのロータと磁極の間隙は均一である。86、87は巻き線の収納部、88、89は異極間の間隙部であるスロット部である。図11の電磁石の形状は、本発明の上記実施例同様に通常用いられるラジアル軸受の形状と比べてスロット幅を小さく、δ=6度に設定した。これは以下示す渦電流損の解析により、本発明と従来構造の損失を同一の負荷能力と剛性の条件のもとで比較するためである。
【0024】
[3]従来の電磁石Cの場合
図13に、従来から一般的に用いられているラジアル磁気軸受電磁石Cの原理図を示す。101はロータ、102はステータ部である。このステータ部も、4つのN極103a〜103dと4つのS極104a〜104dが円周方向で交互に配置されたNSNS型の構成となっている。ここで一つの磁極103aに注目すると、105は真円部であり、この部分でのロータと磁極の間隙は均一である。106、107は巻き線の収納部、108、109は異極間の間隙部であるスロット部である。図13の従来電磁石の形状は、巻き線の収納部106、107に巻き線を収納するために、スロット幅を充分に大きく形成している。
【0025】
II.渦電流損の解析
磁気軸受の渦電流損失の絶対値を求める従来の研究例は、現段階では見当たらないため、まず最初に電磁誘導論から直接解析解を導く。
【0026】
[1]解析の基本モデル
図3において、速度:v=rωで移動する平板導体に座標をとり、かつこの平板導体には
【0027】
【数1】
Figure 0003882334
【0028】
で表される磁束が鎖交しているものとする。
上記(1)式において、ωはスピンドルの角加速度、rは主軸の半径、mは磁極配置で決まるもので、NSNS型の場合はm=4、NSSN型の場合はm=2である。
【0029】
[2]基礎式
電磁誘導論より
【0030】
【数2】
Figure 0003882334
【0031】
ここでJは電流密度(=Jxi+Jyj+Jzk)、σは導伝率である。電磁鋼板の一枚分に着目すると、板厚が十分に小さいために、y方向の電流密度:
【0032】
【数3】
Figure 0003882334
【0033】
またz方向は均一とすると、
【0034】
【数4】
Figure 0003882334
【0035】
となる。
【0036】
【数5】
Figure 0003882334
【0037】
渦電流損:Weが、厚みTの電磁鋼板(積層された全長では幅b)、円周方向の長さd、磁束が入る深さSの導体内で消費されるとして、時間平均とx方向及びy方向の平均をとると、
【0038】
【数6】
Figure 0003882334
【0039】
であるため
【0040】
【数7】
Figure 0003882334
【0041】
ここで、時間とx方向の平均の項は、
【0042】
【数8】
Figure 0003882334
【0043】
y方向の平均の項は
【0044】
【数9】
Figure 0003882334
【0045】
これらの値を用いると、ラジアル磁気軸受の磁束密度分布を円周方向で正弦波近似した場合の渦電流損失:Weが求まる。d=2πrであるため
【0046】
【数10】
Figure 0003882334
【0047】
[3]磁束密度分布が任意の周期関数の場合
以上、理解を容易にするため磁束密度分布曲線を正弦波で近似したが、実際の磁気軸受の磁束密度分布の周期関数は、図4あるいは図12に示すように方形波もしくは台形波に近い。この場合は、(1)式の代わりに
【0048】
【数11】
Figure 0003882334
【0049】
このときの渦電流損失:Weは、(8)式の代わりに次式になる。
【0050】
【数12】
Figure 0003882334
【0051】
また磁気軸受の回転子表面において、磁束の低い周波数成分は回転子内部まで入るが、高い周波数成分は入りにくい。そこで表皮深さ、すなわち損失を生じる体積は
【0052】
【数13】
Figure 0003882334
【0053】
に比例するとすると(10)式は
【0054】
【数14】
Figure 0003882334
【0055】
(11)式において、anは周期関数の種類(正弦波、台形波、方形波等)で決まるフーリエ係数である。
【0056】
III.実施例の低損失化の効果
上記結果から、磁束密度分布に任意の周期関数を与えたときの渦電流損失の絶対値を求める基礎式(11式)が求まったため、本発明の第一の実施例(図1の電磁石A)に適用して計算をおこなう。また磁束密度分布の立ち上がり・立ち下がり区間を持たない軸受構造(図11の電磁石B)との対比のもとで、その損失低減の効果を評価する。
【0057】
[1]磁束密度分布の比較
図4は、上記実施例(電磁石A)のロータ回転角が0〜90度の区間での磁束密度分布を示す。スロット幅δの区間では理論的にはB=0のはずであるが、(1)実施例では、スロット幅δを充分小さく形成している。(2)実際の電磁石では、漏れ磁束、電磁石のロータ内面端部の面取り加工などの影響により磁界の波形は幾分鈍化した波形になる、上記(1)(2)の理由ににより、立ち上がり区間α、立ち下がり区間βいっぱいに磁界の分布に傾斜角をもたせている。また実施例では、α=γとしている。
【0058】
本発明と比較する図11の電磁石Bの場合も、上記(1)(2)の理由により、図11に示すようにスロット幅δの区間で若干の傾斜角をもたせている。
【0059】
また従来の一般的な電磁石Cの磁束密度を、スロット幅δ=20degの場合について図14に示す。この場合も、0<ε<3degの範囲で傾斜角をもたせている。
【0060】
[2]渦電流損の計算結果
図5は、渦電流損失と立ち上がり区間の長さの関係を求めたものである。解析条件として、解析の対象とする電磁石A、B共、電磁鋼板の固有抵抗値(ρ=5.6×10-7Ωm)、磁束がロータに入る深度:sは、磁気軸受の電磁鋼板ロータの厚み(s=7mm)を用いる。また電磁鋼板は、高DN値化を狙いとして遠心力耐えるために、損失は大きいが敢えて高強度用(T=0.0035m)を用いている。また
b:磁気軸受の幅(0.05m),B0:磁束密度の最大値(=1.5T)、σ:導電率(=1/ρ),r:主軸の半径(=0.09/2m)、ω:回転数(=40000rpm×2×π/60)である。
【0061】
さて、図5の解析結果を要約すれば、
▲1▼磁束密度曲線の立ち上がり区間αと立ち下がり区間βをもたない電磁石B(図11)の場合、磁束密度の変化率(=∂B/∂θ)は極めて大きく、損失We=2.26kwである。
【0062】
▲2▼電磁石Aの立ち上がり区間:α(及びβ)を大きくして、磁束密度の変化率を小さくすると、損失動力は大幅に低下する。たとえばα=3deg(図5)から10degにすると、損失We=2.26→1.06kwに低下する。
【0063】
▲3▼但しこの場合総磁束が低下するために、図5の一点鎖線のグラフで示すように、磁束密度の最大値を、2割アップ(図4の(イ)から(ロ))させる必要がある。上記アップ分を考慮して損失の補正値(二点鎖線)を求めると、We=1.28kwになる。したがって本発明の適用により、立ち上がり区間:α=10degを選べば、同一の負荷能力と剛性を維持したままで、渦電流損失は1/2弱に低減できることがわかる。
【0064】
また従来の一般的な電磁石C(図13)について、その磁束密度分布(図14)を用いた場合の解析結果を、本発明の電磁石Aとの対比のもとで、表1に示す。
【0065】
【表1】
Figure 0003882334
【0066】
電磁石Cの結果▲1▼は、その磁束密度分布の最大値を前述した電磁石Aと同一にした場合(Bmax=B0)を示す。但し同一の剛性・負荷能力の条件下で損失の大きさを評価するためには、台形波に近い電磁石Aと比べて、方形波に近い電磁石Cの磁束密度の最大値をアップさせる必要がある。▲2▼がその補正した結果を示す。表1の結果を要約すれば、同じ剛性・負荷能力を得るという前提条件のもとで、本発明の上記実施例(電磁石A)は、従来の一般的な磁気軸受(電磁石C)と比べて、損失を1/2に低減できることがわかる。
【0067】
IV.本実施例の補足説明とその他の実施例
さてラジアル磁気軸受の設計の選択肢のなかで、回転数と主軸径が妥協できない条件であるとすれば、電磁鋼板の選択には強度と損失の点で、またバイアス電流、磁極の幅の選択では負荷能力・剛性と損失の点で相反する課題があることは前述した通りである。
【0068】
本発明は回転子鉄芯側ではなく、固定子のステータ側にある渦電流損の発生要因に着目したものである。渦電流損は回転子鉄芯の磁極に対向する面の磁束の方向と大きさが変化するために発生する誘起起電力によるものである。この誘起起電力による渦電流の電流密度は、磁束密度の変化分の振幅に比例する。したがってロータで消費される渦電流損は、電流密度の2乗すなわち磁束密度の変化分の2乗に比例することになる。従来磁気軸受では、ロータとステータの相対的な運動によって磁束密度の急峻な変化をもたらし、それが渦電流損の大きな要因となっていた。
【0069】
渦電流損失を求める基礎式(11式)を用いて説明するならば、磁束密度の変化率が大きい程、高調波成分を多く含むために、高い次数nでのフーリェ係数anが大きい。したがって、高調波成分の項:
【0070】
【数15】
Figure 0003882334
【0071】
は欠して無視出来ないオーダーとなるのである。
本発明の上記実施例では、回転子の一点がN→SあるいはS→Nに移り変わる際に、磁束密度はなだらかな勾配をもって変化する。すなわち磁束密度分布に、あたかもカム曲線のごとく、充分に長い立ち上がり区間(助走区間)と立ち下がり区間(減速区間)を設けることにより、渦電流損の発生を抑制して発熱の大幅な低減が図れるのである。
【0072】
また磁束密度分布に立ち上がり区間と立ち下がり区間を設ける効果は、損失の低減だけではない。磁気軸受の負荷能力と剛性は磁束密度分布の総面積で決まるために、磁束密度分布が方形波に近い従来磁気軸受と比べて、台形波に近い本実施例では総面積を大きくとれるために有利となる。
【0073】
図6は本発明の第二の実施例であり、磁極配置がNSSN型に本発明を適用した場合を示す。図7に図6の磁極の磁束密度分布を示す。
【0074】
51はロータ、52はステータ部であり、このステータ部52は8極の独立した磁極から構成されたNSSN型を採用している。すなわち、4つのN極53a〜53dと4つのS極54a〜54dで構成され、同極の磁極がペアーで隣り合わせに並び、円周方向で交互に配置された構成となっている。ここでふたつのN極53a,53bに注目すると、55、56は磁極53a内面の両端部に形成された傾斜部、57、58は真円部、59はスロット部、60〜62はそれぞれの磁極を位置決めして締結するための連結部、63、64は巻き線の収納部である。実施例では磁極の異極側では、磁極の端部から同芯部の間はゆるやかな傾斜部で結び、同極側では、磁束密度の変化は少ないために、磁極内面の形状は従来通りのロータの軸芯に同芯円にしている。上記構成により、図7と図4を比較すればわかるように、NSSN型の場合と比べて磁束密度分布の総面積が大きくできるため、損失、剛性、負荷能力の点で有利となる。
【0075】
またいずれの実施例も、磁極内面に形成する傾斜面をなだらかな曲面にすれば、高調波成分を低減できるため一層の低損失化が図れる。図8は前述した第一の実施例の磁極の内面に曲面を形成した例を示す。70は磁極、71は曲面部、72は真円部である。
【0076】
以上の実施例はいずれも磁極の内面に傾斜面を形成して、磁極とロータ間の間隙(エアーギャップ)を円周方向で変化させることにより、磁束密度分布に立ち上がり、立ち下がり特性を持たせたものであった。
【0077】
図9は本発明の第三の実施例を示すものであり、たとえばN極→エアーギャップ→ロータ→エアーギャップ→S極と形成される磁気回路のなかで、巻線部から磁極端部に至る経路で磁路の幅(面積)が小さくなる部分を形成することにより、磁束密度分布に長い区間での立ち上がり、立ち下がり特性を持たせたものである。したがって本実施例では、磁極の内面形状はロータと同芯円ででよい。
【0078】
31はロータ、32はステータ部であり、このステータ部32は8極の独立した磁極から構成されたNSNS型を採用している。すなわち、4つのN極33a〜33dと4つのS極34a〜34dが円周方向で交互に配置された構成となっている。ここでひとつのN極33aに注目すると、磁極のロータ側内面と巻き線の収納部37、38の間に、磁路の円周方向の幅が狭いくびれた部分:空隙部35,36が形成されている。39、40はスロット部、41、42はそれぞれの磁極を位置決めして締結するための連結部である。図9において、外周部に巻線を有する点aから磁極の端部bに至る経路で、角度αの区間で、磁路の幅がd1からd2に絞られている部分が磁極に形成されている。一方角度βの区間では、磁路の幅d1が磁束を通すのに有効な通路となっている。上記磁極の形状により、磁極内面とロータ21の間で形成される磁束密度分布は円周方向で均一とならず、疑似的な台形波となる。
【0079】
本発明の適用において、磁極がロータに面する部分以外の磁路形状の工夫、たとえば上記第三の実施例で示したように、磁路にくびれた部分(空隙部)を形成することにより、磁束密度分布を与えてもよいが、エアーギャップの設定で与える方法(第一、第二の実施例)と組み合わせてもよい(図示せず)。
【0080】
さて立ち上がり・立ち下がり区間の大きさをどの程度に設定したらよいか、という点について考察する。第一の実施例を例にとると、図5のグラフから角度α=0の状態からαを大きくしていくと、損失は急激に低減することがわかる。ラジアル電磁石は通常8コの磁極から構成されるが、高い精度を確保するためには、各磁極の損失(すなわち発熱量)を均一にしてスピンドルの熱変形を軸対称に保つ方が好ましい。したがって磁極形状の加工精度のばらつきなどを考慮すると、この急峻に変化する部分を避けて、曲線の変曲点であるα=7度以上で用いるのが好ましい。磁極の一個分がラジアル軸受として受け持つ角度をψ(=α+β+γ)として、実施例の場合のψ=45度の結果から得られる知見を一般化すれば、α/ψ>0.15となるように、立ち上がり・立ち下がり区間(たとえば傾斜面を形成する個所)を決めればよい。
【0081】
本発明を適用する磁気軸受のステータに、モータで用いられているの極分割コアー工法を利用すれば、歯幅が大きくすなわちスロット幅が小さく、かつ傾斜面を持つ異形の磁極を適用できる。たとえば、図2の拡大図に示すように傾斜面5、6を充分に長い区間に形成するために、歯幅B1を巻線部の幅B2よりも大きくとる場合でも、分割工法をもちいれば従来の磁気軸受電磁石ではできなかった巻線処理ができる。また磁極を単独のユニットで扱えるために、コイルを収納する空間いっぱいに高密度の巻線ができ、積層して組み立る作業も容易にできる。すなわち電磁石の歯幅を大きくとれることにより、磁極内面の傾斜面あるいは磁気抵抗に円周方向分布を与えるためのくびれた部分(図9の35)を充分に長い区間に余裕をもって形成できる。その結果、充分な長さの磁束密度の立ち上がり・立ち下がり区間を設けることができ、損失の大幅な低減が図れるのである。
【0082】
第10図は上記工法を第一の実施例(第1図)に用いる場合の磁極一個分の形状を示すもある。上記工法を用いれば、任意の形状の磁極を採用できる。なを電動モータでは上記分割工法は公知であるが、本発明で提示したような低損失化を目的とする特殊な形状の磁極から構成される磁気軸受に、上記工法を適用した前例は現在のところ見あたらない。ちなみに極分割工法の一例を上げると、固定子を複数個のコアーピースに分割して、たとえばレーザによる金型内積層固着工法により高精度のコアーピースを積層して、各ピースに高密度巻線を行った後、レーザにより再び、高精度に合体したものである。
【0083】
また実施例では、加工用スピンドルを例にあげて説明したが、ターボ分子ポンプなどにも本発明を適用できる。
【0084】
【発明の効果】
本発明を用いれば、従来磁気軸受とほとんど変わらないシンプルな構成で、磁気軸受の回転子に発生する渦電流損失による発熱を大幅に低減することができる。その結果、主軸の温度上昇を抑制できるため、多くの複合部品で構成されるスピンドルの信頼性を向上させると共に、主軸の軸方向の伸びを押さえ、高い振れ精度を確保できる。
【0085】
また本発明は、磁気軸受スピンドルの高いDN値(主軸径×回転数)の実現を図る上で、極めて有力な手段を提供するものである。従来磁気軸受の高速時の課題が解消されるため、磁気軸受スピンドルが本来持っている基本的能力(高速・高剛性)を一層活かした形で、高速切削加工の要請に応えることができ、その実用的効果は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる第一の実施の形態であるラジアル磁気軸受の電磁石Aの原理図
【図2】図1の電磁石の拡大図
【図3】渦電流損失解析のためのモデル図
【図4】本発明の第一の実施の形態である磁極の磁束密度分布を示す図
【図5】渦電流損失の解析結果で、損失と立ち上がり区間の長さの関係を示すグラフ
【図6】本発明にかかる第二の実施の形態であるラジアル磁気軸受の電磁石の原理図
【図7】本発明の第二の実施の形態である磁極の磁束密度分布を示す図
【図8】本発明の実施の形態である曲面形状の磁極を示す図
【図9】本発明にかかる第三の実施の形態であるラジアル磁気軸受の電磁石の原理図
【図10】極分割工法を用いた場合の磁極一個分の矢視図
【図11】立ち上がり、立ち下がり区間をゼロとした場合の電磁石Bの原理図
【図12】図9の電磁石の磁束密度分布を示す図
【図13】従来の一般的な磁気軸受の電磁石Cの原理図
【図14】図12の電磁石Cの磁束密度分布を示す図
【図15】従来の磁気軸受スピンドルの正面断面図
【図16】従来のラジアル磁気軸受を示す図で(イ)は正面図、(ロ)は側面図
【符号の説明】
1 ロータ
2 ステータ部
3−1 N極
4−1 S極

Claims (6)

  1. ラジアル軸受のステータにはN極とS極の磁極が円周方向に複数個配置され、前記磁極と前記ラジアル軸受のロータとの間の磁束密度が、前記磁極の端部から前記磁極の中央部に向けて円周方向に増加すると共に、前記磁極の中央部では一定になるような磁極の形状であることを特徴とする磁気軸受装置。
  2. 極と前記ロータの間で形成される間隙が、前記磁極の端部から円周方向の磁極の中央部に向けて円周方向で狭くなるように前記磁極に傾斜面が形成されていることを特徴とする請求項1記載の磁気軸受装置。
  3. 磁極中央部には、磁路の間隙が均一となるように前記ロータの同芯円が形成されていることを特徴とする請求項記載の磁気軸受装置。
  4. 磁極は複数のコアピースから構成されることを特徴とする請求項1記載の磁気軸受装置。
  5. 請求項1に記載の磁気軸受装置が搭載されることを特徴とする加工機。
  6. 請求項1に記載の磁気軸受装置が搭載されることを特徴とするターボ分子ポンプ。
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